【モバマス】工藤忍「ラブソングを あなたに」 (17)

工藤忍ちゃんのSSです
Pドルものなので苦手な方はご注意ください

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―――――ある日の事務所

忍「プロデューサーさん、ただいま」ガチャッ

P「おかえり、忍」

忍「……はぁ」

P「戻って来て早々にため息なんてついてどうした」

忍「今日のレッスンが全然うまくいかなくってさ……」

P「今日は確かボーカルレッスンだったよな。喉の調子でも悪かったのか?」

忍「いや、声はしっかり出ていたんだけど……気持ちがこもってない、もっと聴かせる相手のことを考えて歌えって、トレーナーさんに言われちゃった……」

P「そうか……今度歌う曲はラブソングだったよな」

忍「うん」

P「ラブソングだと、恋する女の子の気持ちが歌詞に込められているから、それをイメージしながら聴かせる相手を想像してみよう」

忍「恋する女の子、ねぇ……あんまりイメージできないかも」

P「そうか……青森にいた頃に、好きな男の子とかいなかったのか?」

忍「いなかったね。上京する前は「アイドルになりたい」って言っても「工藤がアイドルなんてなれるわけない」って男子からはバカにされてたし」

P「見る目がないな、そいつら。今じゃこんなに立派なアイドルになったっていうのに」

忍「昔の話だから……」

P「それもそうだな……好きな男の子がいないなら、好きな男性のタイプとかないのか?」

忍「好きな男性のタイプ、か……うーん、すぐには思い浮かばないなぁ」

P「じゃあ、まずはそれを考えてみよう。そうしたら、きっとうまく歌えるイメージが掴めるはずだ」

忍「うん、分かった。この歌、アタシのものにしてみせるよ」

P「おう」

忍「いつもアドバイスありがとね。やっぱりプロデューサーさんは頼りになるよ」

P「そりゃもちろん、俺は忍の……プロデューサーだからな」

―――――その日の夜、忍の部屋


忍「好きな人のことを考えながら、か……アタシの初恋っていつだっけ」

忍「ずっと都会に憧れていたから、初恋の相手は……都会?」

忍「って、人ですらないし!こんなんじゃダメだよね……好きな人のタイプ、タイプ……」

忍「クラスの男子……どれもちょっと違うかなぁ」

忍「仕事で会う人……カメラマンさんとかディレクターさんは歳が離れすぎてるかな」

忍「漫画やアニメのキャラクター……うーん、これもすぐには思いつかないなぁ」

忍「後は……プロデューサーさん、とか?プロデューサーさんもアタシとはちょっと歳が離れているけど……」

忍「プロデューサーさんは、アタシがオーディション中に倒れても、アタシの夢を信じてくれて、アタシを選んでくれて」

忍「初レッスンや宣材写真の撮影で失敗しても、見捨てずにアドバイスをしてくれて」

忍「初LIVEの前日にひどいこと言っても、まだ信じてくれて……」

忍「プロデューサーさんに出会ってなかったら、アタシは今頃、アイドルになれずに青森に帰ってたかもしれない」

忍「そんなプロデューサーさんのことを、アタシは……」

忍「あれ、もしかして……アタシってプロデューサーさんのことが……好き……なの?」

忍「アタシの好みのタイプってプロデューサーさんみたいな人……なの?」

忍「……プロデューサーさんはアタシのことどう思ってるのかな」

忍「アタシがLIVEを成功したら誰より喜んでくれるし、アタシが少しでも無茶をするとすごく心配するし、困ったときには何でも相談に乗ってくれるし」

忍「……って、それがプロデューサーさんの仕事だから当たり前か……」

忍「うう、プロデューサーさんのことを考え始めたら頭から離れなくなっちゃった……」

忍「何だろう、心がチクチクして、でも嫌じゃない、そんな気持ち……」

忍「何だか、プロデューサーさんの声が聞きたくなってきたな」

忍「今から電話でも……って、もうこんな時間……寝ないとね」

忍「……プロデューサーさんに、おやすみってメールしたらどんな反応されるかな」

忍「あぁでも、もう寝ちゃってるかもしれないし……」

忍「でもやっぱり、送ってみたいな……どうしようかな……」

忍「でも……」

―――――翌日、事務所前


忍「メール送ろうか迷ってる間に時間が経っちゃって、寝るの遅くなっちゃったな」

忍「結局、メール送れてないし……」

忍「でも、しょうがない!気持ちを入れ替えて今日も頑張ろう」

忍「って、扉を開けたらプロデューサーさんがいるんだよね……ドキドキしてきた」

忍「大丈夫大丈夫、いつも通りのアタシで……!」

忍「おはようございますっ」ガチャッ

P「おう、おはよう忍……ってどうしたその顔」

忍「へへっ、昨日言われたことを考えてたら夜更かししちゃって、ちょっとだけ寝不足なんだ」

P「おいおい、無茶はするなって何度も言ってるだろ……」

忍「心配してくれてるの?」

P「そりゃ心配するよ。忍の身に何かあったら俺は……」

忍「お気遣いありがとっ。でも大丈夫、アタシはこれくらいで倒れるほど軟じゃないから」

P「いやしかしだな……」

忍「プロデューサーさんは心配性だなぁ」

忍「(ホントはちょっとフラフラするけど、これくらいで休んでいられない!)」

P「やっぱり心配だ。この仕事が一区切りついたら、レッスンの様子を見に行くよ」

忍「ええっ!?」

P「なんだ、そんなに驚くことか?」

忍「いや、別に驚いたわけじゃないんだけど……」

忍「(プロデューサーさんのことを想って歌おうと思ってたから、それを聞かれるのは恥ずかしいな)」

P「まぁいいや。レッスン中でも体調が悪くなったらすぐに休むんだぞ」

忍「うん」

P「ところで、好きな男性のタイプの件だが……何か掴めたか?」

忍「バッチリ!アタシの好みのタイプ、分かったよ」

P「おおっ、どんなのなんだ?」

忍「それは……内緒!」

P「ええっ!まぁいいけど……」

忍「アタシの好みのタイプ、気になるの?」

P「そりゃ気になるよ。俺は忍のこと……」

忍「(あれっ、もしかしてプロデューサーさんもアタシのこと……)」

P「……大事な担当アイドルだと思ってるからな。知れることは知っておきたい」

忍「……そっか(やっぱり、アタシのことはアイドルとして見ているだけ、だよね)」

忍「じゃあ、気が向いたら話そうかな。それじゃ、レッスン行ってきますっ」ガチャッ

P「おう」

P「(忍の好みのタイプ……一体どんな男性なんだ……)」

P「(もしも好みのタイプが……いや、考えるのはよそう。今は仕事に集中だ)

―――――レッスン場


忍「~~~♪」

トレーナー「いい調子だ。昨日と比べて見違えたな」

忍「ありがとうございますっ」

忍「(プロデューサーさんのことを考えたらうまく歌えた。アタシは、プロデューサーさんのことが……)」

トレーナー「どうやらコツをつかめたようだな」

忍「へへっ、聴かせる相手のことを考えながら歌ったら、うまく気持ちを込められるようになりました」

トレーナー「ああ、その気持ちを大事にするんだぞ」

忍「はいっ!」

トレーナー「それじゃあ最後にもう1度通して今日は終わりに……」

P「調子はどうだ、忍」ガチャッ

忍「プロデューサーさん!」

トレーナー「プロデューサー殿!ちょうどよかった。今から工藤に通して歌わせようとしていたところです」

P「おお、それはぜひ聞きたいですね」

忍「ちょっと恥ずかしいな……」

P「レッスンの成果を見せてくれ、忍」

忍「分かった……いくよっ」

忍「~~~♪」

P「(これは……)」

P「(忍が俺を真っ直ぐに見つめて、ラブソングを……)」

P「(忍、すごくいい表情をしてるな……少し顔が赤いけど)」

忍「……どうだった?」

P「ああ、いい歌声だったぞ。忍の気持ちが伝わってきた」

忍「アタシの気持ちが?」

P「ああ。バッチリ伝わったぞ」

忍「そ、そっか……よかった……」フラッ

バタリ

P「忍!?」

トレーナー「工藤!大丈夫か!」

忍「大丈夫、ちょっとふらっとしただけですから……っ!」

P「やっぱり無茶してたのか……」

忍「そんなことないって」

P「いや、顔からも疲れが見えるぞ……ちょっと失礼」ヒョイッ

忍「えっ!?」

トレーナー「プロデューサー殿!?一体何を……」

P「何って……お姫様抱っこですよ。忍を休ませるために、仮眠室まで連れて行きますね」

トレーナー「わ、わかりました……」

忍「プロデューサーさん離して!アタシ一人で歩けるから!」ジタバタ

P「いいから黙って運ばれてろ」

忍「ううう……」

P「……そんなに嫌なら降ろすけど」

忍「嫌じゃない!嫌じゃないけど……恥ずかしくって」カアァ

P「じゃあ大丈夫だな。このまま連れて行く」

忍「ううう~~~!(プロデューサーさんの顔がこんな近くに……!)」

トレーナー「(見せつけてくれる……)」

―――――仮眠室


P「ほら、着いたぞ」

忍「ありがとう……」

忍「(こんなにドキドキしてたら、寝れないんだけど……)」

P「じゃあ俺は事務所に戻るから」

忍「あっ……」

忍「(ここでプロデューサーさんに気持ちを伝えられなかったら……次はいつになるか分からない……)」

P「しっかり寝るんだぞー。それじゃ、おやすみ」

忍「(言わなきゃ、アタシの気持ち)」

忍「待って!」

P「うん?どうした?」

忍「その……プロデューサーさんに聞いておきたいことがあって」

P「俺に?」

忍「プロデューサーさんって……アタシのことどう思ってるの?」

P「聞くまでもないだろう、忍のことは大切に思ってるぞ。だからさっきもお姫様抱っこで丁重に……」

忍「それはプロデューサーとして、でしょ。アタシが聞きたいのはそうじゃなくって……一人の女の子として、どう思ってるのかって」

P「……」

忍「昨日、アタシの好きな男性のタイプって何だろうって考えてたら、途中からプロデューサーさんのことばかり考え始めちゃって」

忍「プロデューサーさんはいつもアタシに優しくしてくれるし、アタシの夢をずっと信じてくれているから……」

忍「だから、もしかしたらプロデューサーさんみたいな人が好きなのかも、って思い始めたら全然眠れなくって」

忍「今日、プロデューサーさんのことを考えながら歌ったら、すごくうまくいって」

忍「プロデューサーさんも、アタシの気持ちが伝わったって言ってくれて」

忍「さっきお姫様抱っこされた時も恥ずかしかったけど、なんだか嬉しくなって」

忍「アタシは、プロデューサーさんの担当アイドルだから、こんなに優しくしてくれるんだって……頭の中では分かってるんだけど」

忍「それでも、アタシはプロデューサーさんのこと……好き」

忍「だから……聞かせて?プロデューサーさんの、ホントの気持ち」

P「参ったな……そんなにしっかり考えてくれていたとは思ってなかった」

P「そこまで言われたら、俺も答えるしかないな」

P「……俺は忍のこと大好きだよ。……一人の女の子として、な」

忍「!」

P「トップアイドル目指してひたむきに努力する姿勢が好きだ」

P「集中してレッスンに取り組んでる時の眼差しが好きだ」

P「ステージに立った時に見せてくれる最高の笑顔が好きだ」

P「LIVEが終わって、ほっと一息ついてる顔が好きだ」

P「おまけ集めに躍起になるところが好きだ」

P「両親と喧嘩したまま上京したけれど、本当は親想いなところも……」

忍「わーっ!分かった、もういいから!」

P「何だ、まだまだ序の口なのに」

忍「えぇ……?」

P「俺の気持ち、伝わったか?」

忍「伝わったよ!ここまで言われると恥ずかしいのも通り越して何も言えないよ!」

P「そうか、それならいいんだ」

忍「でも普段はこんなこと言わないし、態度には出さないのはどうして?」

P「プロデューサーって立場の問題もあるけれど、忍は俺の事、そういう目で見ていないって思ってたからな。……ありがとな、俺の事を好きって言ってくれて」

忍「あ、あれは……つい勢いで……」テレッ

P「照れてる忍もかわいくて好きだぞ」

忍「もうっ、さっきから何なのさ!普段のプロデューサーさんのキャラじゃないよっ」

P「普段は言えないからな……明日からはいつも通り、忍のプロデューサーに戻るよ。だから、今だけは忍のファンとして隣にいさせてくれ」

忍「……別に、今だけじゃなくてもいいよ」

P「えっ?」

忍「アタシもプロデューサーさんのこと好きだし……誰も見ていないところでなら、たまにならこうやってお互いの気持ちを確かめ合ってもいいっていうか……」

P「忍……」

忍「アイドルは恋愛禁止だけど、恋をすると女の子はキレイになるっていうし……だから、その……」

P「はは、やっぱり忍はかわいいな」

忍「もうっ、茶化さないでよっ」

P「すまんすまん。じゃあこのことは忍がアイドルをやめるまで、二人だけの秘密にしような」

忍「うん、明日からは普段通りね。でも、これからはたまにでいいから……好きって言ってほしいな」

P「ああ。……忍からも言ってくれよ?」

忍「う、うん……頑張る。それとね……」

P「なんだ?」

忍「これからもずっと、アタシのことを隣で見守っててね……!」

おしまい

以上となります、ありがとうございました。
総選挙も近くなり、工藤忍ちゃんには上位に入賞してボイスを獲得してほしい……!と思い
先月の工藤忍生誕祭の時に某所で書いたものを投下させていただきました。
忍ちゃんはトップアイドルになるために努力を重ねる、とても真っすぐな女の子です。
デレステのメモリアルコミュがとても良い内容となっておりますので、読んだことない方はぜひ一読ください……!

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