森久保「じ、じゃあ、変装するとか……」

笑美「あたしたち、入れかわってるー！？……ってアホ！　ウチら身長も顔も、何もかも違いすぎるわ！」

森久保「そこをなんとか……身長なら、これくらい、きっとバレませんけど……」

笑美「無理に決まっとるやろ！　10cmくらい差あるで！」

森久保「10cm差なんて、そんなの些細なものです……絶対バレませんよ、もりくぼの手にかかれば……」

笑美「なんでそこだけ自信満々やねん！　その自信仕事に向けーや！」

森久保「顔は……二人で美鈴さんの眼帯をつければ……」

笑美「ごまかせる訳あらへんやろ！　ええ加減にせえ！」

笑美「そもそも、せっかくお仕事貰ったんに、自分、何が嫌やねん。言うてみ」

森久保「だって、この写真見てください……こんな高いところでターザンやるなんて、怖すぎて、むりくぼですけど……」

笑美「あー、確かにこれはウチでも怖いなあ」

森久保「ですよね……怖すぎて、笑美さんも魂ぬけくぼになりますよね……」

笑美「あー、いや、ウチは魂ぬけくぼにはならんけどな？　ウチ、森久保やなくて難波やし」

森久保「……魂ぬけんば……」

笑美「語呂悪ぅ！　山姥（やまんば）みたいで嫌やわ！」

森久保「却下されちゃいました……へこみくぼです……」

笑美「"○○くぼ"って便利やなあ。なんとなく羨ましいわ」

森久保「えっ、今、ターザンロープのお仕事が羨ましいって……」

笑美「言うてへんわ！　都合のいい耳やなあ、これアレか、都合いいくぼか？」

森久保「語呂わるくぼですね」

笑美「即ダメ出しすんなや！　ヘコむわ！　難波笑美やなくて"へこみえみ"になるわ！」

森久保「おお、ちょっぴり上手いです……」

笑美「へへっ、そうやろか？」

森久保「その調子で、ターザンロープのお仕事、やりませんか……？」

笑美「そこまで言われちゃやらん訳には、ってやるかドアホ！　誰が騙されるか！　そもそもスケジュール的に出来ない言うてるやろ！」

笑美「そうや、自分、森が好きなんやろ？」

森久保「ええ、まあ……」

笑美「ここ一面森やし、ほら、"森久保の聖域（サンクチュアリ）"言うんちゃうか？」

森久保「森久保の聖域には、こんな恐ろしいターザンロープ、ありませんけど……。もっとみぢかな公園にある、ちっちゃいのしかないです……」

笑美「なら新設しようや！」

森久保「撤去ですけど！？」

笑美「撤去すな！」

森久保「なら焼き討ちですけど！」

笑美「森ごと燃えるわ！」

笑美「うーん、一面森やし、案外落ちてもなんとかなると考えたら、どうや？」

森久保「あ、あんな高いところから落ちて、なんとかなるわけ、ないんですけど……絶対、むーりぃー……」

笑美「ほら、あれや。枝と葉がクッションになって、助かったー、っちゅー話。物語でよくあるやろ？」

森久保「現実なら助かるわけないんですけど……　本当に魂ぬけくぼになって、戻ってこれなくなっちゃいますけど……」

笑美「せやろなぁ。十中八九、命落とすなぁ」

森久保「そもそも、落ちるとか助かるとか、そういうのじゃなくて……命綱が絶対切れないと分かっていても、怖くてですね……」

笑美「うーん……ほんなら、ちょっぴり怖いことに挑戦して、慣らすんはどうや？」

森久保「怖いこと……例えば、なんでしょう？」

笑美「えーと……あれや、幸子ちゃんがやっとった、スカイダイビングとか、どうや？」

森久保「そっちの方が究極に恐怖なんですけど！？」

笑美「ダメかー……ん？　なんやPさん、ええ案があるんか？」

森久保「『笑美さんと漫才して、度胸をつけよう』……？　ひっ……！？」

笑美「お、めっちゃええやん！」

森久保「なんでそうなるんですか！？　うぅ……恥ずかしすぎて、そんなの、むーりぃー……」

笑美「その『むぅーりぃー』いう持ちネタもあるし、『〇〇くぼ』もあるし、元から天然でおもろいしな！　絶対ウケるでー！」

森久保「これ持ちネタじゃないんですけど！？」

笑美「『今の会話も漫才みたいだしいける』って、Pさんも言っとるで！」

森久保「うぅ……そんな、漫才やるくらいなら……か、覚悟決めて、ターザン、やりますけど……」

笑美「お、そうか。一件落着やな！」

笑美「『ターザンで度胸をつけて、スカイダイビングも漫才をやろう』……？　Pさん、それええな！」

森久保「もうやってられませんけど……」

笑美「どうも、ありがとうございましたー！」ﾍﾟｺﾘ

森久保「っえ！？　あう……ぺこり」ﾍﾟｺﾘ

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

森久保「って、Pさん、笑美さん、漫才じゃないんですけど……」