海水浴客「海水浴の季節だ! やったーっ!」タタタタタッ
海水浴客「あれ!?」
カラッ…
海水浴客「う、海が……」
海水浴客「海が干上がってるじゃないですか! やだーっ!!!」
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釣り人「今日も穴場で釣るぞ~」ルンルン
釣り人「こないだみたいにでかい鯛が釣れればいいが……」
釣り人「ん!?」
カラッ…
釣り人「海が……ないッ!」
漁師「さぁ~て、今日も漁に出かけるべか」
漁師「ありゃ!?」
カラッ…
漁師「海が……なくなってるでねえか!」
漁師「泊めてあったオラの船も消えちまってる! どうなってんだこれ!?」
兵士「申し上げます!」
上官「どうした?」
兵士「洋上で訓練をしていた我が海軍が、音信不通になってしまいました!」
兵士「空母、戦艦、潜水艦、いずれともコンタクトが取れません!」
上官「なんだと!?」
兵士「さらに、恐るべきことに、時を同じくして海の水が全て干上がってしまったそうなのです!」
上官「なんだとォォォォォ!?」
キャスター「ここで臨時ニュースです」
キャスター「現在、沿岸部各地から海が干上がってしまったという報告が相次いでおります」
キャスター「また、干上がってしまったと思われる時刻に海上や海中にいた人々とは」
キャスター「まったく連絡のつかない状況が続いており……」
キャスター「ただいまの状況を、現場から中継でお送りいたします」
バババババ…
リポーター「ヘリコプターからお送りいたします!」
リポーター「ご覧下さい! 今、我々は海の上空を飛んでいるのですが――」
リポーター「飛んでいるはずなのですが――」
リポーター「このように、海から水がなくなってしまいました! 一滴も残っていません!」
リポーター「ごつごつとした地球の肌が、むき出しになっております!」
リポーター「海が、一夜にして干上がってしまったのです!」
リポーター「この現象は、世界各地で報告されており……」
総理大臣「国民の皆さま、全世界の海が干上がってしまったというこの怪現象について」
総理大臣「政府としては他の国々とも連携して、調査を進めております」
総理大臣「どうか皆さま、パニックにならないで下さい」
総理大臣「我々の海は、国が、全世界が威信をかけて、必ず取り戻してみせます!」
女「ねえ、どう思う? 海が干上がっちゃった事件」
男「うーん……」
女「自然現象なのかな?」
男「なんの前触れもなく海が干上がるなんて自然現象、聞いたこともないよ」
女「だったら人為的なもの?」
男「全世界の海を一夜にして干上がらせるなんて、今の科学力じゃ無理な話さ」
女「じゃあ、あなたはこの現象についてどう思ってるの?」
男「こんなことができるのは……神しかいないよ」
女「か、神様が!?」
男「ああ、そうとしか考えられない」
女「神様はなぜ、こんなことを?」
男「おそらく、人類は神の逆鱗に触れたんだ」
男「有史以来、人類は海を汚しすぎた……」
男「海の資源を乱獲したり、産業廃棄物を投棄したり、核爆弾の実験場にしたり……」
女「だから怒って、海を生き物もろとも干上がらせたっていうの?」
男「その通りさ」
男「海がなくなった以上、人類はもはや絶滅するしかない」
男「全人類がカラカラに干上がって死ぬか……海がなくなったことで異常気象が起こるか……」
男「あるいは湖や池などのわずかな水をめぐって殺し合った末の滅亡か……」
男「いずれにせよ、数年以内に滅ぶだろう」
女「そんな……」
男「僕には、愚かな人類を蔑んでる神様の表情が目に浮かぶよ」
男「人類は……終わりだ」
『あ~テステス……』
男「ん!?」
女「なに、この声!?」
『この惑星に住まう者たちよ……』
『私は今、君たち全ての頭の中に話しかけている』
男「まさか……神様!?」
女「きっとそうよ!」
『このたびは大変なお騒がせをした。まもなく、君たちの海を返還したいと思う』
男「海を……返してくれるのか!?」
女「よ、よかった……」
『なお、海水については海水から汚染物質を除き、全てキレイにしておいた』
『さらに、海上や海中にいた生物たちも、一切命は奪っていない』
『ようするに、なにもかもキレイになった上で元通りになるということなので、安心して欲しい』
男「すごい! そんなことできるのか!」
女「さすが神様だわ!」
『海があった地点で調査などをしている者は、危ないので陸に移させてもらうが、ビックリしないように』
『では、海を返還する!』
ザバァァァァァ…
海水浴客「海が戻った! やったーっ!!!」
釣り人「以前より透き通った海になったようだ……」
漁師「おお、海とオラの船が戻ってきたべ!」
兵士「海軍と連絡がつきました! 全員無事なようです!」
上官「そうか!」
リポーター「あっ、海が! 先ほどの声の通り、海の水が元に戻りました!」
男「人類は助かったのか……」
女「よかったわね……」
男「神は……身勝手な人類に怒り、海を干上がらせたんじゃなかったんだ」
男「汚れてしまった海をキレイにしたかっただけなんだ……!」
女「うん……!」
男「神よ……ありがとうございます……!」
――
――――
宇宙人「というわけで、今回の企画、地球人からは大変感謝していただくことができました!」
宇宙人「銀河チャンネルの特番『海の水ぜんぶ抜く』、いかがでしたでしょうか?」
宇宙人「ではまた、次の機会にお会いいたしましょう! さようなら~!」
― 終 ―
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