息子「誰が生んでくれって頼んだよ!」父「お前だよ」 (23)

父「おい、練習はどうした?」

息子「やらねえよ、あんなの」

父「他にやりたいことがあるのか」

息子「……ねえよ」

父「勉強もせず、俺の後も継がずで、どうやって生きてくっていうんだ!」

息子「うるせえな、俺のことは放っておいてくれよ!」

父「せっかくこの世に生まれたのに、そんな自堕落でどうするというんだ!」

息子「誰が生んでくれって頼んだよ!」

父「お前だよ」

息子「!?」

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息子「い……意味が分からねえよ。どういう意味だよ」

父「俺に『生んでくれ』と頼んだのは、他ならぬお前なんだ」

息子「だからどういう意味……」

父「お前にもこの話をしなきゃならない日が来たようだな」

母「するのね? あの話を……」

父「ああ」

息子「……」ゴクッ

父「当たり前だが、あれはお前が生まれる前のことだ……」

……

…………

男「あ~……今日はムラムラしてしょうがないな」

男「寝る前に抜くとするか!」

≪抜くな!≫

男「へ?」

男「なんだ今の声は……どこから……?」キョロキョロ

≪ここだ≫

男「どこだ!?」

≪お前の股だよ!≫

男「え!?」

≪もっといえばキンタマだ≫

男「えええええ!?」

男「お前は何者なんだ!?」

≪俺はお前の精子だ!≫

男「マジで!?」

男「なにが目的なんだ!?」

≪そんなもん決まってるだろうが≫

≪俺を生んでくれ!≫

男「生んでくれって……俺には子作りできる相手がいないし」

≪それを探すんだよ! お前の役目だ!≫

男「せ、せめて一ヶ月待って」

≪そんなに精子が生きられるか!≫

男「んなこといわれても」

≪早くしろーっ! 間に合わなくなっても知らんぞ!≫

男「わ、分かった!」

≪誰かものになりそうな女はいないのか?≫

男「一人だけ……いる」

≪よし、そいつと子作りしろ! 三日以内な!≫

男「えええ……もっとじっくり親しくなる予定だったのに……」

≪うるせえ! ヤれ! ヤッちまえ!≫

男「分かったよぉ……」

……

男「こんにちは」

女「あら、こんにちは」

男(本当はもっとじっくりいきたかったが、しかたない)

男「いつも観に来てくれてありがとう。こんなしがない芸人のために」

女「いえ、私あなたのファンですから!」

男「ところで、今晩お食事でもどうです?」

女「ぜひ!」

女「おいしかったぁ~」

男「……」

女「どうしました?」

男「あの……」

女「はい?」

男「まことにぶしつけなお願いなんですけど」

女「はい」

男「俺と子作りしてくれませんか」

女「はい!?」

男「お願いします! お願いします! お願いします!」

女「いきなりそんなこといわれても、事情を説明して下さい!」

男「なんと説明したらいいのか――」

≪こういうことさ≫

女「え……なに、この声!?」

≪今あんたの目の前に立ってる男の精子だ!≫

女「精子!?」

男「こいつ……俺のキンタマの中の精子です」

≪よろしくな!≫

女「よ、よろしく」

男「どうしても生まれたいみたいなんです……」

男「だから俺は、だったら相手はあなたにしたい、と思ったんです」

男「お願いします!」

≪俺を生んでくれ!≫

女「……」

女「……ふふっ、分かりました」

女「あなたの子供、生ませていただきます!」

男「……ありがとう!」

≪やったな!≫

男「ああ!」

女「じゃ、さっそくホテルに入りましょうか」

男「は、は、ははははい!」

女「結婚したら、子供は二人欲しいですね!」

男「そ、そ、そそそうですね!」

≪おいおい、リードされてんじゃねえよ!≫

…………

……

父「――というわけだったんだ」

母「これが私たちが結婚するきっかけだったの」

息子「そ、そんな……」

息子「オヤジのキンタマにいた頃の俺は、そんなにアグレッシブだったなんて……」

息子「でも、ウソだろ!? 精子がしゃべるなんて……とても信じられない……」

息子「だけど、お袋も声を聞いてるはずだし……」

父「……」ニヤニヤ

母「……」ニヤニヤ

息子「なんだよ、二人して!?」

父「なんちゃってな!」

母「精子がしゃべるわけないでしょ!」

息子「!?」

息子「じゃあ、オヤジのキンタマから聞こえた声はなんだったんだよ!?」

母「お父さんの職業はなんだったっけ?」

息子「腹話術師……」ハッ

息子「そうか、そういうことか!」

父「その通り!」

母「後で種明かししてもらったんだけど」

母「お父さんたら、腹話術を利用して私にあんなアプローチをかけてきたのよ」

母「精子が生んでくれっていうから~ってね」

父「ってわけだ。お前が生まれたきっかけは腹話術だったんだ」

息子「腹話術ってすげえんだな……こんなこともできるんだ」

父「だろう?」

息子「俺……オヤジを超える腹話術師になれるよう修行するよ!」

父「頑張れよ! といっても女の子をナンパするために使うなよ!」

息子「分かってるって! 純粋にオヤジの技量を見直したんだよ!」

……

……

父(息子のやつ、精子時代の記憶なんてすっかり残ってないようだな)

父(まあ、今さら思い出されても困るわけなんだが……)

父(さっき息子に話したことは全て本当のことだ)

父(母さんに嘘の種明かしをしたのは、やっぱりしゃべる精子なんてのは不気味だし)

父(俺は腹話術師だから、実は腹話術でしたってことにした方が母さんも喜ぶと思ったからだ)

父(もしも息子がこの話を聞いて精子時代の記憶を思い出したのなら、打ち明けようと思ったが)

父(思い出さないのなら……“腹話術”のままでいい)

父(この真実は……最後まで自分の中にしまっておこう)

≪ねえねえ、あたしを生んでよ!≫

父「!?」

≪お願~い! あたし生まれたいのよ!≫

父「……」

父「母さーん、そろそろ二人目を作らないか?」







おわり

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