モバP「裕美に弱みを握られた」 (9)

P「――以上が次回の撮影のスケジュールだ。何か質問は?」

裕美「今のところは大丈夫かな。また何か思いついたら、その時に聞いてもいい?」

P「もちろん。最近は裕美の人気もうなぎのぼりだし、次の仕事もばっちり成功させていこう」

裕美「うなぎのぼりだなんて……でも、たくさんの人に応援してもらえるのはうれしいかな。……うん、頑張る」ニコ

P「………裕美も、目つきが柔らかくなったな」

裕美「そうかな」

P「昔は、今みたいなタイミングでしかめっ面になってたからな。仕事の本番を想定して緊張していたのが原因だろうけど」

裕美「うーん。我ながら、簡単に想像できちゃうね」

P「今は、緊張感を適度に持ちつつ、楽しむ気持ちがメインになっているように見える」

裕美「お仕事を通して、今まで知らなかった新しい世界が見られると思うと、なんだかわくわくしちゃって……これは、いいことなんだよね?」

P「ああ」

裕美「そう……よかった。Pさんがそう言ってくれるなら、安心だね」

P「信頼されているようでなによりだ」

裕美「信じてるから。もう一度確認するけど、私の目つき、柔らかくなったんだよね?」

P「ああ、柔らかくなった」

裕美「……うん、そっか」フフッ

P「ついでに身体つきも柔らかくなって肉つきがよくなった」

裕美「その『ついで』必要?」ジトーー

P「目つきが険しくなった」




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P「他意はないぞ。女らしくなったと褒めているんだ」

裕美「ふーん………」

P「不満か?」

裕美「不満というか……本当に、身体が女らしくなったのかなって。私、そんなに胸も大きくないし、お、お尻だって……他の子に比べたら」

P「その未熟な果実感がいいんじゃないか。14歳という子どもから大人へと移りゆく時期、それを表すかのような発展途上の身体つき。この一年間君を見てきた俺は、関裕美という少女の外見的成長をはっきりと感じている。それはきっと君のファンも同じだ」

P「自信を持て! 裕美の身体は魅力的だと!」

裕美「………ありがとう。そういう考え方があるなんて、盲点だった。Pさんのおかげで、自信が持てそう」

P「ならよかった」

裕美「でも、ひとつだけ言わせて?」

P「うん?」

裕美「……えっち」ジロ

P「あふん」

裕美「えっ、なに今の声」

P「破壊力がすごかったから」

裕美「前から思ってたんだけど、Pさんって変態?」

P「さらっと以前から不名誉な疑惑をかけられていたことが判明したんだが」

裕美「さっきのセリフもそうなんだけど、たまにそう思わせるようなことを言うんだもん」

P「誤解のないようにはっきり言っておくけど、俺は変態ではない」

裕美「ふーん………」

P「わかってくれたか? ならそろそろレッスンの時間だから」

裕美「えっち」ジロ

P「あふん」

裕美「………やっぱり変態?」

P「違う違う」

裕美「えっち」ジロ

P「あふん」

裕美「………続きは、レッスンの後で。ね?」

P(嫌な予感がする)

レッスン終了後


P「今日もありがとうございました。どうですか、裕美のダンスは」

ベテトレ「ええ、いい感じですよ。一部課題も残っていますが、今のペースならライブ本番までには仕上げられます」

P「そうですか。それはよかった」

ベテトレ「今日は冬にしては暑いですから、水分補給を忘れないように言ってあげてください」

P「わかりました。トレーナーさんもお疲れ様です」

ベテトレ「それはお互い様でしょう。プロデューサーさんも、体調には気をつけて」

P「ありがとうございます」

ベテトレ「ふう……しかし、昨日は寒かったのに今日はこうも暖かいというのはやりにくい」フキフキ

P(汗をぬぐうトレーナーさん、絵になるなあ……)


裕美「………じーーー」

P「………」

P「コホン。さあ裕美、戻るぞ」

裕美「えっち」

P「あふん」

ベテトレ「……あふん?」

P「なんでもないです、なんでも」

その後


裕美「Pさんって……もしかして、私に睨まれると怖がってるの?」

P「怖がっているわけじゃない。ただ……少しゾクゾクするだけだ」

裕美「ゾクゾクするんだ……」

P「そこに裕美の『えっち』という単語が有機的に絡み合うととてつもない破壊力を生み出してしまうんだ」

裕美「生み出した結果、変な喘ぎ声も生み出されちゃうんだね」

P「そういうことになる」

裕美「そう………そうなんだ。へえ」

P「なんだかうれしそうな顔をしているな」

裕美「さっきまでのPさんの反応を思い出したら、なんだか愉しくなっちゃって」

P「俺、普段君にストレスとかかけてないか心配になってきたぞ」

裕美「胸の奥がスカッとするような」

P「本当にストレスかけてないよな? なにか不満があったら言っていいんだぞ?」

裕美「くすっ……今のはさすがに冗談」

P「あふん」

裕美「あははっ。Pさん、ビビりすぎ」

P「裕美が悪い子になっている……」

裕美「いつの間にか、こんな顔で笑えるようにもなったね」

P「とても悪い笑顔なんだが」

裕美「弱みを握ったような気がして、つい」

P「こっちは弱みを握られて戦々恐々だ」

裕美「えっち」ジトー

P「あふん」

裕美「ふふっ」

夕方 帰り道


P「今日は散々からかわれたなあ」

裕美「えっと……ごめんね? ちょっとやりすぎちゃった……」

P「裕美にしては珍しくはしゃいでいたな」

裕美「その……いつもPさんには頼りっぱなしだから。強い人の弱点を見つけたと思ったら、つい……子どもっぽいよね。私」

P「子どもっぽくてもいいじゃないか。まだ14歳なんだから」

P「それに。いつもと違う裕美を見られて、俺も新鮮だった」

裕美「……ありがとう。今度、お気に入りのお店のシュークリーム、持ってくるから」

P「楽しみにしておく」

裕美「それで、話は変わるんだけど……もうすぐ、クリスマスだね」

P「そうだな」

裕美「Pさん……用事とか、ある?」

P「おそらく予定は埋まると思う」

裕美「………そっか。予定、あるんだ」シュン

P「これから裕美を誘おうと思っていたから、裕美が了承してくれればクリスマスの予定は埋まる」

裕美「………あっ」

P「びっくりした?」ニヤニヤ

裕美「も、もうっ……Pさん!」

P「昼間のしかえしだな」

裕美「えっち!」

P「あふん! って、今はえっち関係ないだろう」

裕美「関係なくても言いたくなったから」

P「それは理不尽だろう」

裕美「理不尽じゃなくて……」

P「それより、クリスマスの件の返事はどうだ?」

裕美「………」



裕美「……オッケー、だよ」ニコ



おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
関ちゃんに睨まれたいところあります

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