【モバマス・デレステSS】です
――――12月1日、プロダクション、事務室
飛鳥「いきなり現れて誰が子猫だ天才娘。そもそも、猫キャラはキミのほうだろう」
志希「にゃーん♪ にゃはは、そんなに呆れた……あー、ちょっと怒った顔しない。ステイステイ!」
飛鳥「まったく……ところでこんなところにいて良いのかい。仕事は」
志希「抜け出してきた♪」
飛鳥「……ちょっと待っていろ、すぐプロデューサーに電話して」
志希「ちょ、冗談冗談! 今日はちゃんとお仕事終わらせて来たから~! 連絡するのはナシナシ!」
飛鳥「それじゃあなにか、暇潰しでもするために、ここに顔を見せに来たのか」
志希「そーそー。なにか面白そうなこと起きてないかなーって見回ってたら、妙に深刻そうな顔した飛鳥ちゃんを見つけたってとこ!」
飛鳥「そうか。面白いことなら今丁度アニバーサリーのイベントをやっている。そっちに行くと良い。じゃあな」
志希「飛鳥ちゃんつめたーい。で、ほんとのとこは何見てたのか見せてよ。というか見ちゃおう! そーれ!」シュッ
飛鳥「あっ、こら勝手に!」
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志希「ふむふむ……むっ……これは……映画館のギフトカード? こんなの見て悩んでたの飛鳥ちゃん?」キョトン
飛鳥「……『今日は映画の日だから、記念になにか観に行くといいわよ』って奏さんから貰ったんだ」
志希「へぇ、奏ちゃんが飛鳥ちゃんにもねぇ」
飛鳥「別にいいだろう? さぁさっさと返し……ボク『も』?」
志希「そ♪ 奏ちゃん、同世代の子だと見ないような映画も見る関係で、映画コラムを書くお仕事やってるらしくてさー」ピラッ
志希「この通り、そのお仕事で貰ったギフトカードを、志希ちゃんにも譲ってくれたのだー!」
飛鳥「なんだ、そうだったのか……」
志希「おやおや~? もしかして自分だけ特別にプレゼントされた物じゃないと知って、ちょっとがっかりしちゃったかにゃ~?」
飛鳥「……そんなことは、ない。ないから、返せ」
志希「はーい、どぞどぞ」
パシッ
飛鳥「どうも。さぁ、用が済んだだろ。帰ったらどうだい?」
志希「いやいやまだまだ♪ 飛鳥ちゃんが悩んでた理由も聞かないとねー?」
飛鳥「キミには関係ないことだ志希」
志希「んーどうだろ。まぁあたしの予想では、せっかく奏ちゃんから貰ったギフトカードを使おうと思ったけど」
志希「一人で映画館に今の時間から行くのは心細い。だから蘭子ちゃんを誘おうとしたのに蘭子ちゃんはお仕事で」
志希「ならばプロデューサーはと思ったけど、そっちもお仕事。他にも飛鳥ちゃんが誘えそうな子はみーんな予定が入っちゃってた!」
志希「あぁどうしよう! このままでは奏さんから貰ったカードが無駄になってしまう! でも一人で映画館は……うーんうーん!」
志希「ってな感じで悩んでたと見るけど、実際のとこはどーなのかな飛鳥ちゃんっ!」ニコニコ
飛鳥「………………キミのそういうところ、時々本当に困るんだが」
志希「んっふっふ。顔を赤くして、目線が泳いでるところを見ると当たりかにゃー? うーん、今の飛鳥ちゃんいい匂いしそう~!」
飛鳥「や、やめろ近づくな!」///
志希「ハスハス~! おぉー」
飛鳥「嗅ぐな!」///
ドンッ
志希「にゃ!?」ヨロヨロ
飛鳥「あ、す、すまない……! 突き飛ばすつもりは……」
志希「いたた……やや、あたしもちょっとだけ調子乗りすぎちゃったね。飛鳥ちゃん悩んでたのに。ごめんごめん」
飛鳥「……キミに素直に謝られると、逆に困るんだが……なにか、悪い物でも食べたのかい?」
志希「志希ちゃんだって謝る時は謝るからね? で、それはともかく、どうするの飛鳥ちゃんそのカード」
飛鳥「ギフトカードか……しょうがない、奏さんの好意を無駄にしてしまうようで悪いが、誘える相手がいないからな……今日は……」
志希「あれ?」
飛鳥「今日の所は諦めよう。うん、そうしよう」
志希「おーい」ツンツン
飛鳥「また後日蘭子でも誘って行けばいいんだ。カードの有効期限はまだある、大丈夫さ」
志希「まだここに誘われてない人残ってるよ~?」ツンツン プニプニ
飛鳥(無視しろボク、気にしちゃダメだ。志希と行くと絶対大変な目に会う。そうとも、経験から判断しろ。だから)
志希「飛鳥ちゃーん、志希ちゃんいますよー」ツンツン プニプニ ハスハス
飛鳥「……どさくさに紛れて嗅がないでくれ! あぁもう、キミなら他にいくらでも相手がいるだろう! ボクと行く必要はない!」
志希「んー、でもあたしもギフトカード持ってるよ?」
飛鳥「それは……」
志希「まーあたしはこの後一人でも映画を見に行けるから大丈夫だけど、飛鳥ちゃんはこのままだとどうなっちゃうのかな?」
飛鳥「っ……」
志希「せっかく今日映画を観てほしくて券を渡したのに、飛鳥ちゃんが使ってくれなかったと知ったら奏ちゃん悲しむかもね~」
志希「奏ちゃん可哀想……可愛がってる年下から冷たくされて……きっと傷ついて……」
飛鳥「わ、わかったよ……キミに頼るのは避けたかったが……奏さんのためだ、協力してほしい」
志希「ん? よく聞こえなかったにゃ? 志希ちゃんにほら、どうしてほしいのかなー?」ニコニコ
飛鳥「ああもう! 一緒に映画を見に行ってくれ! これでいいかい!?」///
志希「いいよー♪ ふふっ、今の飛鳥ちゃんの姿録画して、プロデューサーや蘭子ちゃんに見せたら面白いことに」
飛鳥「や、やめろっ!」
志希「大丈夫、冗談だってば。ほら飛鳥ちゃん落ち着いて、どうどう」
飛鳥「……くっ、やはりキミに本気でからかわれるとボクの調子は乱されっぱなしか……」ズーンッ
志希「そうやって真面目に相手してくれるのが飛鳥ちゃんのいいとこだよ。それで、映画を見に行くとして、なに観る?」
飛鳥「待て、調べる。近くの映画館でもうすぐ上映時間で、席がまだ取れそうな映画となると……」ツー タッ
飛鳥「あった……いやまて、だがこれは……」
志希「ん? なになに、どういう映画?」
飛鳥「あ、あぁいや……この映画は天才娘が観るには少し退屈のはずさ。だから、他になにか……」
志希「いーからいーから。飛鳥ちゃんと一緒に観るならなんだっていいよ。それで、その映画のタイトルは?」
飛鳥「本当にいいのか? 『gifted/ギフテッド』という映画なんだが……」
志希「……へぇ?」
――――数十分後、渋谷、映画館
飛鳥「……来てしまって、もう席も選んだ後で聞くのもどうかと思うが、本当に見る気なのか志希」
志希「そーだよ? ほらほら飛鳥ちゃん、せっかく映画館に来たんだからポップコーンとジュース買おー♪」
飛鳥「売店のを買うつもりならやめておいたほうがいい。酷い詐欺の値段だと思う。あんな物を買うならボクは静かに映画を」
志希「ありゃ? 一緒に映画見に来たから奢ってあげようかなーって思ってたけど、そっかー飛鳥ちゃんはいらないかー」
飛鳥「え」
志希「んー、ならあたしの分だけ買っちゃおっと♪」
飛鳥「ま、まて! …………ポップコーンのセット……頼んでも良いのか?」
志希「もちろんもちろん! 飲み物は?」
飛鳥「む……ええと……やはりここはコーヒ――」
志希「ちなみに奏ちゃんが言うには、映画を見る時にポップコーンとコーラを恥ずかしがる必要はないんだってさ!」
飛鳥「……奏さんが言ったのなら仕方がない。詳しい人の意見は尊重すべきだ。その組み合わせでボクも楽しもう」
志希「うんうん、飛鳥ちゃんが隠しきれない嬉しそうな顔するのも、奏ちゃんの意見だからしょうがないよね~」
飛鳥「う、うるさいな……! も、もうすぐ上映時間なんだ、さっさと買ってきたらいいだろ天才娘!」///
志希「はいはーい♪ それじゃあポップコーンセット2つってことで行ってきまーす!」ニコニコ
――――1時間後、映画館、『gifted/ギフテッド』上映スクリーン
飛鳥(……こうして志希が買ってきてくれたポップコーンを時折口にしながら、ボクは今、映画を観ている)
飛鳥(彼女の言動に振り回された結果観に来ることになってしまった映画だが、実際の内容はボクもとても満足するものだ)
飛鳥(ただ少しだけ、劇中の少女のことを、隣にいる奴と似ていると感じてしまうのが……悔しくもあった)
飛鳥(稀に見る天才であるがゆえに、その才能を伸ばすため普通の生活を捨てさせようとする祖母)
飛鳥(そんな才能のことなどよりも、普通の日常を過ごすことが少女にとって大事だと考える叔父)
飛鳥(……ボクなら、普通とは違う才能を持って生まれたのなら、普通とは違う生活をするほうに憧れがあるが)チラッ
飛鳥(隣で、映画が始まる前にポップコーンを食べきってしまった後、いつの間にか静かになった奴はどう考えているんだろうか)
志希「……」ジーッ
飛鳥(寝ている訳でなく、いつもの様に飄々としているわけでもなく、驚くほど真剣に映画を観る天才娘)
飛鳥(その姿は、このトラブルメーカーがとても美人だったことを思い出さすにはいられない。そして……)
飛鳥(……かつて、失踪に付き合ったときも、志希のこんな真面目な表情を見た覚えがあるが……あれは、どこで……――)
――――2時間半後、渋谷、ファミレス
志希「にゃはーっ! 面白い映画だったねー飛鳥ちゃん!!」
飛鳥「……そう、だな」
飛鳥(映画を鑑賞し終わって、しばらく立ち上がらなかった志希を心配していたが、どうやら杞憂だったようだ)
飛鳥(やはり物静かな志希など似合わない。ファミレスでなにか適当に食べさせれば治る程度のことなら、ボクが気にするまでも)
志希「ところで飛鳥ちゃん。映画を観ている間、あたしのほう何度も見てたのはなんで?」
飛鳥「んぐっ!?」ゴホゴホッ
志希「わわっ!? そんな急いでコーヒー飲むから~……ダイジョブ?」
飛鳥「ゴホッ……だ、大丈夫だ……し、しかし、その、なんのことだ? ボクがキミを見ていた? 冗談だろう?」
志希「えー? でも志希ちゃんに対して、あつーい視線を向けてきてる感覚が確かに隣から」
飛鳥「熱い視線を向けたつもりはない! ただ少し気になっ……あ」
志希「ふふっ、やっぱり飛鳥ちゃん見てたんだー。黙って見なくても飛鳥ちゃんなら好き放題見ていんだよ? ほらほら」クイクイッ
飛鳥「やめろ。キミも一応アイドルなんだぞ。人が周りにいるところでグラビア撮影の時みたいなポーズをするな」
志希「だって飛鳥ちゃんが見たいって」
飛鳥「言ってない」
志希「じゃああたしを見てたのはなんでかなー?」
飛鳥「……別に、変な意味で見ていたわけではないさ。ただ、キミが妙に真面目な顔で、静かに映画を見ていたのが不思議でね」
志希「……飛鳥ちゃんは志希ちゃんのことをなんだと思ってるのかにゃ?」
飛鳥「天才だが匂いフェチで猫のように勝手気ままで、常識なんて通用しない手のかかる面倒くさい美人」
志希「あたし飛鳥ちゃんに嫌われてるんだっけ? 尊敬されてるんだっけ?」
飛鳥「……さぁね」プィ
志希「そこで顔を背けられると判断に困る~」
飛鳥「いいから、真面目に映画を見ていた理由を答えたらどうだい? あの映画、そんなに気に入ったとでも言うのか」
志希「んー……」
飛鳥「渋い顔をしてもダメだからな」
志希「ダメかー……まぁ、飛鳥ちゃんだしいっか。ほら、あたしってキミにたまに天才娘って言われてる通りギフテッドでしょ」
飛鳥「ああ、非常に残念なことに」
志希「ほんとほんと。だから、やっぱり小さい頃はあの映画の女の子みたいなことあったんだ」
飛鳥「……ボクも予想していたが、本当にあるんだな、あんなことが」
志希「でも、嬉しいことじゃなかったよ? パパとママはあたしのことで揉めるし、周りの大人が信用出来なくなっちゃうし」
飛鳥(……思い出した! 前に真面目な志希の表情を見たときも、話題にしていたのはこんな、両親の……)
志希「結局パパはあたしから離れていって、ママとの仲も悪くなって……一人になって、好き勝手出来るようになって」
志希「それであたしはいいって納得したけど、でもやっぱり、ああいう映画の展開見ちゃうと考えちゃうな」
志希「二人に喜ばれるような態度を取り続けてたら、今もあたしは海の向こうで楽しく生活してたのかな」
志希「それとも、二人の考えが少しでも変わって、普通の生活を許してくれていたなら、まだ家族揃って仲良く暮らしてたのかな」
飛鳥「それは……ifの話だ。もう絶対にありえない、終わったことなんだ、志希」
志希「うん。分かってる。わかってるけど……でも、ああいう物語もあるんだって、見たら、どうしてもね……」
志希「…………仲良く…………」
飛鳥(また志希が暗く……!? もしかして、ボクが気にしていたことを分かって無理に明るく振る舞ってくれていただけか……?)
飛鳥(いや、この天才娘がそんな気の利いたことをするはずが……しかしこう落ち込まれると……くっ……まったく世話のかかる!)
飛鳥「らしくないな天才娘! キミはそんなことで悩むような奴じゃなかっただろう」
志希「む……飛鳥ちゃん? あのね、あたしだって」
飛鳥「過去がどうであれ、今こうしてキミはボクの目の前にいて、それだけじゃない、共にアイドルをしている」
飛鳥「それは全てキミが選んできたことだ。違う生き方のほうが良かったと言っても、今更どうすることもできないさ」
飛鳥「そもそも、違う人生が良かったなどと言われたら、キミに出会えて良かったと思ったボクはどうなる。それを否定はさせないぞ」
志希「……え……」
飛鳥「少なくともここに一人、今のキミで良かったと思っている人間がいるんだ。映画のように家族仲睦まじくとはいかなくても」グイッ
飛鳥「ボクが側にいるってことを忘れないで欲しいんだ……が…………うん?」
志希「……うん」
飛鳥「……今、ボクもの凄く恥ずかしいことを言わなかったか?」
志希「言ったと思う」
飛鳥「……忘れてもらうことは?」
志希「いやーそれは無理……でも、飛鳥ちゃんが勇気づけてくれたのは分かる……ありがとう♪」ニッコリ
飛鳥「えっ……あ、あぁ、それはその、ボクとしても志希が暗いままだとさらに調子が狂うからであって」
志希「だから――さっき飛鳥ちゃんが言ってくれたこと、皆に言いふらしちゃおっと!」
飛鳥「それだけは絶対にやめてくれーッ!?」
――その後、志希を口止めするためにファミレスで散財する羽目になった飛鳥であったが、最後には今日のことを
二人だけの楽しい思い出として秘密にすると、お互い心の底から笑顔を浮かべて約束しあうのであった。
〈終〉
映画の日なのでなんとなく『ギフテッド』を見に行ったらとても良かったので
あと志希にゃんが自分の身の上話をした数少ない相手に飛鳥くんがいるの最高だと思うんですよ
読んでくださった方ありがとうございました
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