二宮飛鳥「キングオブコンビニストとネコミミとプロデューサーホモ疑惑」 (19)

梨沙「うー、さぶっ」

飛鳥「今日は一段と冷えるね。すっかり冬のようだ」

梨沙「まだ冬には早いわよ」

飛鳥「そうかな。もう11月も後半だよ。晩秋から冬へ季節がうつろう時期だ」

梨沙「この前まで暑い日がちょこちょこ続いてた気がするんだけど……今年って秋、あった?」

飛鳥「秋らしい気候はあまり続かなかった気はするね。おかげで衣替えの時期にも迷った」

梨沙「それよ! オシャレな女の子の敵だわ、こういうキコウは!」

飛鳥「珍しく意見が合ったね」

梨沙「ついでに寒い日に迎えに来てくれないプロデューサーも敵!」

飛鳥「そこは許してあげないか。彼の身体はひとつなんだ。複数のアイドルを担当している以上、全員の送迎をするのは難しい」

梨沙「わかってるけどさ……撮影のお仕事、バッチリ頑張って疲れてるの!」

飛鳥「………ああ、ひょっとして。Pに頑張っている姿を見てもらえなかったのが不満なのかい?」

梨沙「………」

飛鳥「おっと、図星か」

梨沙「あっ、そうだ! そこにコンビニがあるから事務所に戻る前になんか買っていきましょ!」

飛鳥「……ふふっ、そうしようか」



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梨沙「疲れた体にはやっぱり甘いジュースよね。どれにしようかしら……」

飛鳥(事務所のお菓子のストック、少なくなっていたような……適当に買い足しておこう)

梨沙「ねえ、飛鳥はどれにする?」

飛鳥「ボクはホットコーヒーと……そうだな、ホットスナックでも買っていこうか」

梨沙「ホットスナックかあ。いいわね、アタシも買うわ。寒い日はああいうのがおいしいのよね~」

飛鳥「そうだね。冬に真価を発揮する、人類の叡智さ」

梨沙「エイチ……? まあいいわ。ええと……肉まんに、ピザまんに、フランクフルト……」

梨沙「キングオブコンビニストの飛鳥、おススメは?」

飛鳥「キングオブデュエリストのような二つ名だ」

梨沙「でもコンビニ好きなんでしょ?」

飛鳥「好きというか、よく行くのは確かだが……いや、よそう」

飛鳥「そうだな……ボクはチキンにしようかと思っているけど」

梨沙「共食い?」

飛鳥「そのネタは14年間で70回以上聞いた」

梨沙「ただいまー」

心「おかえりー♪ ふたりともおっつスウィーティー☆」

飛鳥「ただいま、心さんもお疲れ様」

心「むー、たまにはノリよく『おっつスウィーティー☆』してくれてもいいんじゃない?」

飛鳥「ボクのキャラじゃない」

梨沙「アタシも」

心「マセガキどもめ……あれ、飛鳥ちゃんその袋は?」

飛鳥「帰りにコンビニに寄ってお菓子を買ってきたんだ。そろそろ補充したほうがいいと思ってね」

心「おー♪ さっすがお姉ちゃん! ちょうどじゃがりこ切れてて困ってたんだよね☆」ガサゴソ

梨沙「ハートさんのほうが年上でしょーが」

心「言葉のあやってやつよん♪」

飛鳥「……しかし。心さん、寒くないのかい? その格好」

梨沙「確かに、アタシより薄着に見えるけど」

心「ふっふっふ☆ はぁとのこの格好が寒そうに見える?」

梨沙「見える。肩出してるし」

心「笑っちゃうほどスウィーティーだな☆ 実ははぁと、見えないところにカイロを貼りまくってるのだ☆」

梨沙「カイロ……なるほど。それで寒さ対策とオシャレを両立してるってわけね」

心「若さで賄えないぶん、こういう創意工夫でカバーしていかないとね♪」

梨沙「なかなかやるわね……!」

飛鳥「優雅に泳いでいるように見える白鳥も、見えない水中で必死にバタ足している、ということか」

心「そうそう♪」

梨沙「そのたとえでいいの? ハートさん」

心「白鳥ってたとえられた時点で許せる☆」

梨沙「単純……」

心「いっそ仁奈ちゃんとかと一緒に白鳥の衣装で踊るのもいいかも☆」

飛鳥「あっちは着ぐるみに近いと思うが……いいのかい、それで」

心「着ぐるみかあ……うーん。着ぐるみなしでももともと白鳥っぽいイメージとかでセーフにならない?」

梨沙「ならない」

心「だよねー♪ 知ってた☆」

飛鳥「せめて鳥型の帽子くらいは被らないといけないだろうね」

梨沙「まあ、ハートさんがどれくらい白鳥のイメージに近いかは置いといて……アタシはどう? なにかの動物のイメージとか、ある?」

心「梨沙ちゃんの? そうだなぁ……」

飛鳥「エミューと競争させられたイメージ」

心「トナカイに乗せられて下ろしてもらえなくなったイメージ」

飛鳥「イグアナに執拗にスカートを狙われていたイメージ」

梨沙「そういうイメージじゃないわよ! 過去を掘り返すのはやめなさいってば!」

飛鳥「冗談だ。そうだな、梨沙を動物にたとえるなら……やはり豹じゃないかな」

心「あー、わかる! 狙った獲物は逃さないってカンジ♪ 目の色もなんだか似てるし」

梨沙「ヒョウ……ふふん、結構いい感じね! かっこいいしセクシーっぽいし!」

小春「うちのヒョウくんを呼びましたか~?」

梨沙「イグアナのほうじゃなくて」

小春「違いましたか~」

梨沙「アタシはヒョウだとして、飛鳥はどうかしら」

飛鳥「ボクかい? そうだな……他の動物にたとえるなら、鷹とか――」

心「口小さいからウサギとかじゃない?」

梨沙「あー、いいわねウサギ。飛鳥ウサギ」

飛鳥「鷹……」

心「鷹は常勝球団だしトップアイドルになるまで我慢だぞ☆」

飛鳥「それを言うならウサギだって少し前までは常勝球団だっただろう」

梨沙「なんで野球の話になってるのよ」

心「というわけで! 梨沙ちゃんが豹、飛鳥ちゃんがウサギ、はぁとが白鳥ってことで決まり☆」

飛鳥「鷹……」

梨沙「ていうかハートさんが白鳥なの、ギロンの余地があると思うんだけど」

心「難しい言葉知ってるなぁ」

梨沙「アタシ勉強できるもん」

飛鳥「服装以外は先生にいつも褒められているらしいね」

心「はぁとは皆勤賞だけ褒められてたぞ♪」

梨沙「元気だけは昔からあったってことね」



ガチャ

P「ただいま」

飛鳥「あぁ、Pか。おかえり」

梨沙「ねえプロデューサー。プロデューサーは、ハートさんを動物にたとえるならなんだと思う?」

P「動物? 心さんを?」

心「当然白鳥だよね? ねっ」

P「威圧を感じるんですが……そうですねー」

P「心さんはウサギじゃないですか?」

梨沙「ウサギ? なんで?」

P「寂しがりだから」

心「やーんプロデューサー、はぁと別に寂しがりなんかじゃないぞぉ♪ ね、ふたりとも?」

飛鳥「確かにウサギだ」

梨沙「確かにウサギね」

心「ってオイ☆ 納得すんな!」

梨沙「でも、ウサギだと飛鳥と被っちゃうわね……ってあれ?」

雪美「………」オロオロ

梨沙「雪美、なにしてるの? さっきからキョロキョロして……探し物?」

雪美「………ペロ……迷子……」

飛鳥「飼い猫が行方知れずのようだね」

心「ペロちゃん意外とやんちゃだからなー。勝手にどこか行っちゃったのかも」

P「雪美、心当たりとかはないのか?」

雪美「………」フルフル

P「そうか……困ったな」

梨沙「餌を置いておけば近づいてくるんじゃない?」

雪美「………」フルフル

梨沙「あ、もう試してるんだ。今はお腹空いてないのかも」

飛鳥「なら、ほかにペロの好きそうなものを用意するのはどうかな」

心「猫の好きそうなもの……猫じゃらしとか?」

雪美「……持ってない……」

心「じゃあ似たようなものでなにか!」

梨沙「飛鳥のエクステでいいんじゃない?」

心「それだ☆」

飛鳥「待って」

梨沙「なによ。飛鳥はペロが見つからなくてもいいの?」

飛鳥「いや、そうではないけど……おかしくないか?」

心「ものは試しだぞ☆」

雪美「ペロ………飛鳥……」ジーー

飛鳥「………いいだろう」

飛鳥「しかし、これで猫が寄ってくるはずが」エクステフリフリ


ペロ「にゃあ」


雪美「ペロ……!」

飛鳥「amazing……」

心「うわ、ホントに寄ってきた」

梨沙「エクステってすごいのね」

雪美「これ……どこで買える……?」キラキラ

飛鳥「どこでって、普通に駅前の……理解った。今度案内するよ」

ペロ「にゃ」


P「………」

P「飛鳥と猫……ネコミミ……ライブ……これだ!」

飛鳥「待って」

梨沙「飛鳥は猫で確定ね」

心「めでたしめでたし♪ ……まてまて、はぁとが寂しがりのウサギっていうの取り消せってば☆」

別の日


梨沙「パパ、誰と電話してたの?」

的場パパ「ああ、プロデューサーさんとだよ」

梨沙「プロデューサーと? どんな話してたの?」

的場パパ「今度一緒に飲みに行こうかと思ってね。お互いのスケジュールを確認していたんだ」

梨沙「一緒に!? アタシも行きたい!」

的場パパ「お酒の店だから、梨沙は来ても楽しくないんじゃないかなあ」

梨沙「ぐぬぬ……」



翌朝


梨沙「最近パパとプロデューサーの関係が怪しい」

心「梨沙ちゃん定期的にその話題出してない?」

梨沙「今度こそホントのホントに怪しいのよ! アタシに内緒でお酒飲みに行く約束したりして、電話でも楽しそうで……」

飛鳥「男同士、何かと話が合うんじゃないのかい」

梨沙「じゃあアタシも男になる!」

心「ステイステイ☆ 落ち着いて」

心「だいたい、男になったらパパと結婚できないよ?」

梨沙「む。確かに」

飛鳥(今の段階でも親子同士の時点で結婚できないと思うんだが)


梨沙「でも心配なのよね……プロデューサーがパパを狙ってるんじゃないかって」

心「ほーもー?」

飛鳥「梨沙の中ではPはロリコンじゃなかったのかい」

梨沙「両立もありえるわ」キリッ

飛鳥「真顔で言われるとすごいセリフだ」

心「心配すんなって♪ プロデューサーは普通に女好きよん☆」

飛鳥「その呼び方も若干不名誉な響きだと思うよ」

心「特に26歳ツインテールでいつも元気でみんなに笑顔を与える天使系スウィーティーなアイドルが好きよん☆」

梨沙「ああ、パパが心配だわ……」

心「聞けよ☆」



梨沙「とにかく、せめてプロデューサーをロリコンだけにとどめておかないと……」

飛鳥「ロリコンなのはいいの?」

梨沙「パパを守るためならアタシが犠牲になるわ……!」

心「おお、悲壮な決意☆」

梨沙「もしくは晴かありすか桃華あたりが犠牲になるわ……」

飛鳥「生贄を差し出す気満々に聞こえるけど」

心「一部喜びそうな子も混じってるけどね♪」

飛鳥「そんなに嫌なら、パパとPが必要以上に会わないように釘を刺せばいいんじゃないか?」

梨沙「それは………パパってプロデューサーと会うの楽しいみたいだし……パパの笑顔を奪うようなことしたくないし……」

心「いい子だ」

飛鳥「いい子だ」



梨沙「こうなったらもう、さっさとプロデューサーに身を固めてもらうしかないわね!」

飛鳥「まあ、梨沙が安心したいならそうするしかないだろうね」

梨沙「とりあえずお見合いとかしてきなさいよって言ってくるわ!」ダダダ

心「え? ちょ、ちょっと待って」

飛鳥「梨沙、行ってしまったね」

心「………」


心「ウチも外堀から埋めていくか……家族ぐるみの付き合いしていこ」

飛鳥「貴重な心さんの真顔をこんな場面で見たくなかった」

その日の夕方


P「なるほど。それで梨沙が急にお見合いだのなんだの言ってきたのか」

飛鳥「ロリコンの次は男色家とは、キミもなかなか苦労するね」

P「俺はいたってノーマルな好みをしているんだけどな……梨沙も思い込みが激しいところがあるから」

飛鳥「恋は盲目、というヤツさ」

P「そうだな。ちなみに、飛鳥も俺が早く所帯を持った方がいいと思うか?」

飛鳥「……なんとも言えないね。ボクの立場からでは」

飛鳥(心さんのこともあるし)

P「?」

飛鳥「逆に聞くけど、Pは家庭を持ちたいと思っているのかい」

P「そうだなあ。今は、仕事に集中したいって気持ちが強いかな」

飛鳥「そうか。なら、いいじゃないか」

P「けど、男友達で結婚している奴も増えてきたし……そういう連中の話を聞いていると、俺も嫁さんに優しく支えられたいとか思わないわけじゃないんだよなぁ」

飛鳥「複雑な心境だね……まあ、今はこれで我慢してくれ」スッ

P「これは」

飛鳥「勤労感謝の日に勤労しているキミに、ささやかな贈り物。缶コーヒーだ」

P「ありがとう。しかも俺の好きなやつじゃないか」

飛鳥「本当はもっとちゃんとしたものを贈ろうかと思ったんだが、それはそれでキミが遠慮すると思ってね」

P「するする。誕生日とかならともかく、勤労感謝の日に中学生アイドルから値の張るプレゼントをされるのは申し訳ない」

飛鳥「だろうね。だから今は、そのコーヒーを存分に味わってくれ」

P「そうさせてもらうよ。ありがとう、飛鳥」

飛鳥「どういたしまして。じゃあ、ボクはそろそろ帰るよ」

P「お疲れ様」

飛鳥「お疲れ様。キミもほどほどにね」


ガチャ、バタン



飛鳥「……さて、帰って宿題を――」


心「………」ジーーー


飛鳥「……その視線はなに?」

心「正妻ムーブを見習おうかと思って」

飛鳥「正妻ムーブではない」



おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
ロリコンかホモかの二択しかないプロデューサーの未来はどっちだ

シリーズ前作:的場梨沙「いついつまでも、ロリコンプロデューサー」

その他過去作
大石泉「誕生日でもプロデューサーはすけべ」
北沢志保「プロデューサーさんが……ロリコン……?」
佐城雪美「ペロス」

などもよろしくお願いします

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