魔王「平和主義も、お墓に埋めましょう」(61)

むかしむかし


とある大陸では、

人間族が治める連合国と

魔族たちのナワバリである魔王国が

いつ終わるとも知れない戦争を、長きに渡り続けていた



物語は、連合国の英雄“勇者”が


魔王国の総大将、“魔王”の暗殺を試み、


刃を交わした瞬間から始まる


<プロローグ>


ズバン! ズバン!!


勇者「ィ痛ぅ、やったか!」

勇者(てか反撃のスピードがパネェ!)


魔王「クッ! わらわが剣撃を貰うとは……!」

魔王(こんな男がおったのか!)


ゥワアアアアアアアアアアアアアアア!!!


副官「なんてことだ!」

副官「衛生兵! エイセイヘーイ!!!」


トロル「こいつ! いきなり現れて魔王さまを斬りつけるとは!!」

ガシッ!

勇者「放せ! この野郎!!!」

リザードマン「放すか、この人間族め! 大罪人は死刑だ!!!」




妖精「魔王さま、お気を確かに!!!」

魔王「不覚をとったとは言え、ぐぅ……」

妖精「いけない、すぐに応急処置を」


副官「ヨロイとカブトで致命傷は防いだものの、出血がヒドイ…………!」

副官「すぐに、上級魔法師を呼べ! 大至急だ!!!」


ケンタウロス「はっ!」


ミイラ「勇者よ、お前には全身の血液を吸い出され、干からびる死がお似合いだ!」

吸血鬼「その血は俺に頂戴ね♪」

骸骨「いやいや、皮と肉をそぎ落とし、骨だけにするのがいいだろう!」

デュラハン「我らが女神を傷つけた罪を数えろ。首をスパッと落としてやる!」


勇者「うぅぅ、魔王さえ殺せば、あいつさえ死ねば!」

勇者「こんな戦争は終わるってのに……!!!」


魔王「……」


魔王「おい、皆のもの!」

魔物たち「はっ!」


魔王「わらわは暫し休む。後は頼んだぞ」

魔物たち「はいっ!」


魔王「それから、その人間族の男だが……」

エルフ「すぐに処分いたしますわ、魔王サマァ!」

魔王「いや、傷の手当てをし、あとでわらわの部屋に連れてこい」


魔物たち「ええっ!??」

勇者「????」


魔王「その男、おそらく英雄の“勇者”」


魔王「我々にとって、大きな利用価値がある。有効に使いたい……」


副官「かしこまりました!」


勇者「魔王からの施しなんぞいるか!」

勇者「くっ、殺せ!!」


オーク「あーモウ、そういうのいいから」


錬金術師「魔王様の命令なので、とりあえず、これを嗅いでくださいネ」


ぽふっ♪


勇者(このタオルに滲みこませた薬品は……!)


勇者(ク、クロロホルムっ……!!?)








ガクッ


翌日・夜



勇者「…………」


勇者「はっ!」


魔王「おお、目覚めたか勇者どの」


勇者「なっ、お前は、魔王!??」


魔王「見ての通り、ここはわらわの部屋じゃ」


魔王「お互い、傷の処置は万全」


魔王「武器のたぐいも置いておらぬ。安心なされよ」

勇者「…………」


勇者「魔王、お前って」


魔王「ん?」


勇者「最初は、ヨロイとカブトで気づかなかったが、」

勇者「女の子だったのかよ、しかもラビット族の……」

魔王「ラビット族と言うでない、うさぎ族と言え!!」

勇者「……うさぎ族の、女の子だったのかよ」


魔王「いかにも!」

魔王「わらわこそ、魔族10万人の頂点に君臨する、魔王である!」

勇者(うさぎなのに、魔王って)


勇者「なんかもっと、魔王ってイカツイ奴だと思ってたが……」

勇者「あんま人間と変わらない、小柄な少女とは」


魔王「先代魔王はそうじゃの。わらわの大叔父でダークエルフだったが、」

魔王「半年前の合戦で、膝に毒矢を受けてしまってな、戦えなくなってしまった」


勇者「マジか。全然知らんかったぞ」


魔王「けっきょく、先代はひそかに引退」

魔王「王位継承順や本人の希望から、わらわが魔王に選ばれることになった!」


勇者「へー」


魔王「おっと、花も恥じらう乙女とはいえ、侮るでないぞ!」


魔王「これでも国で10年に1人の剣術達人!」

魔王「魔王軍、当代最強の剣士なのだから!!!」


勇者「……」


魔王「なんじゃ、イマほんとかよって顔したな?!」


勇者「いや、別に」

勇者「斬りきれなかったし、俺もカウンター貰ったし、強いと思うぞ」


魔王「むふふふ♪」



勇者「ところで、俺を生かしてくれた様だが……」

魔王「あぁ、お主に頼みたいことがいくつかあっての」


勇者「……礼は言わねぇぞ」

魔王「構わんよ。むしろ、わらわも斬りつけたから、おアイコじゃ」


勇者「じゃぁ、俺に頼みって、何だよ」

魔王「う、うむ。それなんじゃが……///」モジモジ


勇者「?」

魔王「んとな、勇者どの……///」


魔王「わ、わらわのこと、どう思う///」


勇者「は?」


魔王「その、やっぱし殺したいほど憎んでおるか……?」


勇者「……」


勇者「いや。『魔王』や『魔王国』そのものは憎いけれど」

勇者「お前みたいな女の子は、なんかもう斬る気にはなれねぇなぁ……」


魔王「おぉ、とりあえず嫌われてはおらんのか。よかった!」


勇者「……?」


魔王「あ、あのな///」


魔王「勇者どの、わらわはお主のことが、好きになった!」


勇者「」


勇者「ええっ!!?」


魔王「わらわは強い男がタイプでのぅ……v」



魔王「お主が天井裏から飛び降りて、間髪入れずに近づき、」

魔王「わらわを斬りつけようとした刹那、想ったのじゃ!」


魔王「『この男を待っていた』、と///」


勇者「うえええええ」


魔王「そしてその想いは、反撃に転じたが間に合わず、」

魔王「一太刀くらってしまった時、確信に変わった///」


魔王「『このムネの痛み、まさしく恋v』、と!」キャー///


勇者「……」

勇者「胸の痛みって、刀傷じゃねーの?」


魔王「なにをいう! 刀傷だけじゃないやい!!」


勇者「で、俺は結局どうすりゃいいんだよ」

魔王「とりあえず、今日はもう遅いし……」



魔王「いろいろと大仕事が待っていて、忙しくなるし……」



魔王「その、わらわがお主に好意を持ち、敵意が無いこととか知ってほしいし///」



魔王「……な!」

勇者「だから何だよ」


魔王「ええい、このトーヘンボクめ!」

魔王「乙女になんてことを言わすのじゃ!」


勇者「!」

勇者「おいおい」


魔王「むふふふ~///」


魔王「いいじゃろ、な♪」


勇者「……マジで?」


梟「ホーホー」
















雀「チュンチュン」


翌朝

魔王「ムニャ」zzz



勇者「……やってしまった」


勇者「殺そうとしてた相手と、こんなことになるたぁ」

勇者「……この先、どうしよ。国に帰れない」


魔王「はっ!」パチクリ


魔王「おぉ、おはよ。ダーリン♪」

勇者「ダーリン!?」


魔王「いやー、わらわはうさぎ族だが、」

魔王「ダーリンも中々に、××××だったなv」


勇者「……その言い方は止めてくれ。マジで!」


魔王「むぅ~。よいではないか」


魔王「じゃぁ勇者殿、着替えて朝食を摂ろう」

勇者「んん」


魔王「そのあと大事な話がある。いいかな」

勇者「……あぁ」


朝食後


勇者「ごちそうさんでした」

魔王「どうじゃ勇者殿、魔王城の飯は旨かったか?」

勇者「まぁ、あの材料でこの味は悪くねぇな」

魔王「うむ。なりよりじゃ!」


魔王「特に、雑草のサラダとかよかったろ」

勇者「おぅ」


魔王「だがホントはなー、ニンジンがあればな~」


勇者「にんじん」


魔王「戦争が長引いて、新鮮な野菜がもぅ手に入らん」

勇者「……あんたらも、苦労してんだな」


魔王「さて、そこでじゃ勇者どの!」

勇者「えっ」


魔王「われわれ魔王軍は、お主らのいる連合国と和平を結びたい!」

勇者「……詳しく、話せ。理由は」


魔王「まずは、戦争第一で国が動いてるせいで、畑仕事もできず]

魔王「まともな食料を口にできん!」

勇者「……」


魔王「先代魔王みたく、大物や有力武将も討たれて、軍力も弱っとる」

勇者「……」


魔王「民草も、戦争で身内を三つ四つ、二つ三つと失い、いくつもの村々も滅び」

魔王「部族ごとの滅亡も珍しくない。戦争当初とくらべ、厭戦気分も髙まっとる」


勇者「……」



魔王「戦争を続けられる状況じゃないし、わらわも、もう同胞を失うのはイヤなのじゃ」


魔王「お主ら、人間の国でもそうじゃろう?」


勇者「まぁ、俺ら連合国でも似たようなもんだ」


勇者「魔王国の資源を狙って攻め込んだものの、戦争コストが割に合わねぇ」



勇者「死傷率も高く、徴兵制で次々と若者が軍にとられるために、労働力も不足している」


勇者「増税に次ぐ増税で、庶民の生活はギリギリ。治安も悪化してる」


勇者「今日のパンを得るために、隣人をぶっ殺す事件も度々起きている」


勇者「こちらも、戦争はもうできない。俺も仲間を失うのは耐えられねぇ」




魔王「決まりじゃな!」


魔王「勇者どの、そなた連合国の首脳に掛け合って、停戦の呼びかけを頼む」


魔王「わらわも、魔王軍を取りまとめ、すぐに停戦状態に入ろう」


勇者「……呼びかけはいいが、双方の主戦論者に信じて貰えるかね?」


魔王「いかにも。だから皆を納得させるため、儀式を行いたい!」


勇者「儀式?」


魔王「むふふv」



魔王「……結婚しよ、そなたとわらわで///」


勇者「ぶほっ!」


勇者「まじかよ」

魔王「この血で血を洗う戦国の世、婚姻関係で同盟を結ぶのは鉄則じゃろ」

勇者「まぁ、確かにそうだけど……」


魔王「あ、もしかしてアレか、恋人とかおったりしたか??」


勇者「いや、俺はフリーだから…………もう、いいや」



勇者「いいぜ、和平でも結婚でも、戦争が終わるなら、なんでもする!」

魔王「ふぉぉぉぉ!」


勇者「だけどまぁ、これはこれで生半な方法じゃねーぜ」

魔王「おうともよ!」

勇者「覚悟はいいか」

魔王「ガッテンしょうちじゃ!」

勇者「ん!」


魔王「それからそれから、夫婦になるんだったらば……///」

勇者「だったらば?」


魔王「勇者殿のこと、やっぱ“ダーリン”って呼んでいいかのぅv」

勇者「……///」


勇者「いいぜ、好きにしな!」

魔王「わーいv ダーリン大好き~♪」ギュッ


勇者(なんか、戦いばっかの人生だったが)

勇者(……俺もこういうの、案外キライじゃねーのな)





勇者(生きるためには、敵を殺して身を守るしかないと思ってたが)

勇者(誰も殺さず、分かり合うことで、生きてくこともできるのかな……?)


こうして状況は一変した


連合国と魔王国は、停戦に合意。

戦争は終結した。




いくつかイザコザがあったものの、

勇者と魔王の婚礼をして、同盟関係を構築。


両国の住人は、戦争からの復興に着手

停戦から暫くは、いがみ合う状態がまだ続いたものの

徐々に、技術交流、経済支援、文化の相互理解も進み





婚姻同盟から10年後には、両国は合併

魔王を君主、勇者を元帥とする“連合王国”が設立した




争いのない、『戦後平和主義』に包まれた時代の中で、




国も、国民たちも大いに栄えた


<プロローグ、終わり>

<本編>

物語は、連合王国の建国から五十年後の、

勇者没後から、さらに十年後


玉座の間から再び始まる

月末の金曜日 正午


伝令「伝令、デンレイです!」


側近「む、どうした」

魔王(88)「報告なさい」


伝令「はっ、連合王国の南方、ベイエリアで大規模な暴動が発生!」

伝令「さらに北部国境近くで、帝国軍と共和国軍の戦闘があったとの報告が!」


側近「なんだと!」

魔王「……」


伝令「現地の行政官から、中央に支援要請が入っております」

伝令「元老院でも緊急会議が開かれる模様です」


側近「予兆はあったものの、この様な事態になるとは……」


魔王「……」


伝令「また状況が入り次第、ご連絡いたしますが」


魔王「待ちなさい、対応は元老院で協議するのよね」


伝令「はい、そのようです」


魔王「ならば伝えなさい。君主の命として、」



魔王「『どんな事態が起きても、軍の出動はなりません』と」



伝令「はっ」

側近「!」


側近「お待ちください魔王さま」

魔王「どうしたのです?」

側近「軍の派遣を禁止するのは、いささか悪手かと」


魔王「なんですって!」


側近「南部の暴動ですが、ここにきて人間族と魔族との対立先鋭化が原因と推測されます」

側近「早急に、軍事力を持って制圧せねば、他の各地にも広がる恐れが」


側近「また、北方で起きた帝国と共和国の戦闘。超大国同士の衝突は」

側近「流動的な状況を発生させ、軍でなくては対応が……」


魔王「ゼッタイになりません!」


魔王「いいこと側近」

側近「はっ」


魔王「軍というのは、昔から災いを呼ぶ装置です」


魔王「我が連合王国も、昔は連合国と魔王国に別れて戦争し、多くの犠牲を出しました」


魔王「しかし双方は和解し、以来70年、国も民にも大いなる繁栄を手にしました」


魔王「これぞ、『戦後平和主義』がもたらした、素晴らしい功績!」

側近「……」


魔王「……南部での、人間族と魔族の衝突も、」


魔王「北部での、帝国と共和国の戦闘も、きっと同じく」


魔王「話し合うことで、話し合うコトだけで、充分に解決できるものです!」



側近「……」

魔王「それが我々、連合王国が生み育てた、哲学。理想の姿!」


魔王「これまで70年、ずっとして来たのと同じように」

魔王「軍は動かさず、調停団を派遣するように指示なさい、いいわね」


伝令「はっ!」


側近(……これはマズイ)


2時間後


伝令「申し上げます! 来客として、防衛大臣が参られました」


側近「防衛大臣が!」

魔王「私の孫が、どうしたのかしら?」


側近「お招きした方がよいかと!!」

魔王「そうね、久しぶりに彼女の顔が見たくなったわ」


伝令「では、お通しいたします!」


側近(よし、あの方なら魔王様を説得してくれるハズだ)


衛兵「防衛大臣、おなーりぃぃぃ!!!」




防衛大臣「ご機嫌麗しゅう、おばあ様。いえ、魔王様!」


魔王「ほんとに久しぶりね、我が孫ナバちゃん。いえ、防衛大臣!」


側近(頼むぞ、ナバちゃん……!)


魔王「すがすがしい日だわね。外は。小鳥は歌い、花は咲き乱れ……」

防衛大臣「こんな日こそは、ですね」


魔王「今日はどうしたの?」

防衛大臣「はい、近所に用事があったので、」

防衛大臣「ついでに、おばあ様の御尊顔を拝見しようかと」

魔王「あらまぁ」


防衛大臣「……いえ、時間もないため、もう単刀直入に申し上げます」


防衛大臣「魔王様、どうか此度の一件、軍の派遣許可をお願いしたく!」


魔王「…………どうして?」


防衛大臣「まず、南部の暴動ですが、とっくの昔に調停団を派遣し」

防衛大臣「人間族、魔族双方のリーダーに自重を呼びかけているものの」

防衛大臣「対立が激しく、一向に収まる気配がありません」


魔王「お互いがお互いを、尊重することはできないの?」


防衛大臣「経済格差や文化の隔たりがあるため、難しいでしょう」


防衛大臣「また、帝国と共和国の戦闘も看過できません」


防衛大臣「二国間の領土対立もあり、戦闘は不可避」


防衛大臣「片方が背後からの援軍を恐れ、我が国に侵攻してくることも予想されます」



魔王「……戦争が、始まるのね」


防衛大臣「……はい」



魔王「どうして、どうしてみんな戦うのよ……」


魔王「戦いや争いなんて、同胞や仲間を失うだけなのに……」


魔王「もう、『戦後平和主義』は、通用しないの……?」


防衛大臣「……」


防衛大臣「軍事に頼らず、戦わず、双方が生き残る道を探る」

防衛大臣「この『戦後平和主義』が続いたのは、偉大な奇跡だったでしょう」


魔王「……」


防衛大臣「ですが、『戦後平和主義』を成り立たせていたのは」

防衛大臣「おばあ様世代の方々が持っていた、“戦争のトラウマ”が共有されていたから」


魔王「“戦争のトラウマ”……?」


防衛大臣「誰かを傷つけ、誰かから傷つけられ、家族を失う痛み」

防衛大臣「これを皆が知っていたら、誰もが戦うのを躊躇う、」

防衛大臣「不戦の契りが、社会全体で成立するでしょう」


魔王「ええ、その筈よね」


防衛大臣「ですが、平和を享受できたおかげで」

防衛大臣「私たち戦後世代は、“戦争のトラウマ”、傷つけあう痛み を知りません」


魔王「……そう、戦後世代は、知らないわよね」


防衛大臣「一方、おばあ様世代の方々は年齢を重ね、着実に鬼籍に入ることに」

防衛大臣「その度に、国民の心全体から“戦争のトラウマ”が、毎年少しづつ消えていきます」


防衛大臣「また、毎年新たな命が生まれ若者が育つにおいても、“戦争のトラウマ”は薄まります」

防衛大臣「学校の教科書などには、歴史として載りますが、人々の心の中までは」

防衛大臣「現実感のある痛みが、伴なうことは、ありません」


魔王「そうね……」


魔王「思えば、和平を結んだあの頃……」

魔王「当時を知るメンバーは、この城ではもう私1人になってるわ」

防衛大臣「…………」


魔王「“戦争のトラウマ”を知る者は去っていき、忘れ去られ」

魔王「私たちの『戦後平和主義』も、もう、同じく消え去る運命ということね」


防衛大臣「……心中、お察しいたします」


防衛大臣「ですがいま、まさに訪れているのは、」


防衛大臣「いわば、正真正銘の“国難”!」



魔王「分かりました、軍の派遣を許可します」

魔王「トラウマに捕われた、悲しい平和主義には、どの道もう頼れないのよね」


防衛大臣「ありがとうございます、魔王様」


魔王「それに、戦って国民が殺されるのも真っ平だけれど、」

魔王「戦わずに国民が殺され、死んでしまうのも、許容できないわ」


魔王「けれど、誰かを傷つけた痛みは、必ず自分に返って来るもの」


魔王「武力を用いるのは、最後の手段にして頂戴」


防衛大臣「はっ、私の命に代えても!!!」


魔王「それから、軍の編成はベテラン中心でお願いね」


魔王「戦争当時は徴兵制を敷かれ、碌に訓練のない素人の新兵たちが」


魔王「戦場に出て、でもなすすべなく、死んでいったものだから」


防衛大臣「はい、そちらも必ず!」



魔王「あと現場がどうなっているか、日々の報告も、包み隠さずお願い」



魔王「頼んだわよナバちゃん。いえ、イナバ防衛大臣!」

防衛大臣「ははーっ」


――――――――――――

――――――

―――


魔王「……少し、疲れたわ」

側近「大丈夫ですか?」


魔王「申し訳ないけれど、今日はこれで休むことにするわ」

側近「はい、後のことはお任せを」


魔王「よろしくね」


魔王「ただいま」


骨壺「」


魔王「あら、『今日はいやに早いじゃないか』って言いたそうね」


魔王「むふふ」


魔王「月末の金曜日だからね。プレミアムなフライデーというやつよ」


骨壺「」


骨壺「」

魔王「……思い返せば、あの出会いがあった時の、」


魔王「魔王城に居たみんなは、もうとっくの昔にお墓に入っているのね」

骨壺「」


魔王「何だか寂しくて、片時も忘れたくなくて、骨壺として部屋に置いてる人もいるけれど」

骨壺「」


魔王「むふふ」


魔王「沢山居たはずなのに、当時を知る老人世代は」

魔王「気づけばもう、この世から居なくなりつつある」


魔王「よし、貴方と共に、」

魔王「平和主義も、お墓に埋めましょう」



骨壺「」



魔王「2人が出会った、あの頃とは違った、」


魔王「戦わなければ、生き残れない時代になったのだから」


魔王「でも、それでも」



魔王「私たちが出会えたことと、一緒に生きた70年の平和は」



魔王「決して、無駄じゃぁなかったわよね」



魔王「ねぇ、ダーリン……」

骨壺「」



そういう時代なのかなーと思い、書きました。



以前書いたSSです。

こちらも良ければご覧ください。お願いします


ジン「選挙について教えてほしい?」ウォッカ「へい!」
ジン「選挙について教えてほしい?」ウォッカ「へい!」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1468023186/)


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大臣「消費税ゼロで、この国を成長へ!」 男「よし、投票しよ!」 - SSまとめ速報
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