「最弱魔王の決戦」(839)


前スレ

「最弱魔王様」「最弱魔王様」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1377877329/)

の続きです。


――――
――

翌日 朝食時


少女「……」モグ……モグ……

魔王「どうした少女? 何だか元気がないように見えるが……何処か具合でも悪いのか?」

少女「あ、ううん魔王様、何でもないよ!」ブンブン

側近「魔王様……何時この城に勇者が来るかわからない今、少女がこのような状態に陥るのも無理はないでしょう」

魔王「むう……成程な」

姫「少女さん、あまりご無理はなさらないでくださいね?」

妖精「」パタパタ オロオロ

少女「ほ、本当に大丈夫だから! ほら、食欲だってちゃんと……」ムグムグ

側近(やはり昨夜は吸い過ぎたか……本当にすまない、少女……!)グッ


少女「そ、そう言えばお姫様! すっかり聞きそびれちゃってたけど」

姫「はい?」

少女「お姫様は、その……力のある勇者様とその仲間について他に知っている事はないの?」

魔・側「!」

姫「あ……そうですわね。考えてみればこちらへ来てすぐにでも皆さんにお話ししておくべきでした」

魔王「まあ、あの時は我らも貴女が来た事やその後の準備に気を取られていたからな……失念してしまうのも無理はない」

側近「だが姫君。貴女は直接彼らを見たわけでは……」

姫「仰るとおりですわ、側近さん……ですが、だからと言って情報が皆無なわけではありません」

少女「そうなの?」

姫「ええ。心強い協力者がいますからね」ニッ

少女「! ……そうだね」ニコッ


魔王「では姫、改めてお聞かせ願おう……どれ程小さな事であろうと情報があるに越した事はないからな」

姫「そうですね……何処からお話ししたものか……まず情報によれば、勇者様ご一行の人数は彼を入れて4人とのことです」

妖精「」パタパタ ムグムグ

少女「……魔王様、できればご飯を食べ終わってからにしない? 妖精さんが慌ててお口に詰め込んでるよ」

魔王「む……それもそうだな。では続きは食後にしよう」モグモグ

姫「ええ、わかりました」

側近「……何だか緊張感が感じられんな」

少女「良いじゃない。腹が減っては戦はできぬって言うでしょ? ……妖精さん、ゆっくり食べていいからね?」ニコッ

妖精「」コクン……モグモグ

側近「全く……」モグモグ


申し訳ありません、>>1の前スレ修正です。

「最弱魔王様」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1377877329/)


――――
――

姫「では、改めて先程の続きですが……4人は勇者様の他にそれぞれ戦士さん、魔法使いさん、僧侶さんというそうです」

魔王「ふむ……やはり少数精鋭か」

側近「昔を思い出しますね」

魔王「ああ……あの時は直接対峙するような事はなかったがな」

少女「……」

姫「それから僧侶さんは都の教会出身で、旅の途中でも教会の教えを説いて回っていたとか」

魔王「そうなのか……随分と熱心な事だな」

姫「ええ。何でも都を出る際に何冊も聖書を持って行かれたそうで、布教には事欠かなかったそうですわ」

側近「ほ、ほう……ところで姫君、一行の特徴はわからないか? 容姿や、性別は……」


姫「詳しい容姿まではわかりませんが……勇者様と戦士さんが男性で、魔法使いさんと僧侶さんが女性らしいです」

魔王「む……後は己で見極めるしかないか。魔力の大きさでわかるとは思うが……」

少女「ねえ魔王様。結界を張ったなら入って来た人だけに注意すれば良いんじゃないの?」

側近「基本的にはそうだが……万が一手違いで勇者一行以外に入られたら不味いからな。余計な犠牲が出てしまう」

魔王「うむ。念には念をという奴だ。何時想定外の事が起きるかわからぬからな」

少女「そっか……」

妖精「」パタパタ

姫「ごめんなさい、大した情報を持ち合わせていなくて……」シュン……

魔王「いや、充分だ。ありがとう姫」

姫「……」


少女「ありがとうお姫様! お姫様が知っている事はこれで全部なんだね?」

姫「ええ……あ、そうだわ! これは役に立つかはわかりませんが……」

側近「教えてほしい」

姫「勇者様も、そのお仲間も、力は絶対的に信用に足るとの事ですわ。それぞれ異名がつく程に……それに」

少女「それに?」

姫「……皆さん中々に個性的だそうです」クスッ

少女「そうなんだ。何だか楽しみだな」クスクス

妖精「」コクコク

側近「全くお前達は……」ハア……

魔王「まあ、少女が元気であれば良いではないか……それに、笑っていてくれれば……」


少女(こうしてこの日は何事もなく過ぎていった)

少女(表面上は……今までと変わらずに)

少女(でも次の日は、ほんの少しだけ人が集まっていたから外に出られなくなった)


少女「……」

姫「少女さん……ずっと窓を見ていても仕方ありませんわ」ギュッ

少女「お姫様」

姫「私がついています。ですからどうか気をしっかり持って下さいな」

少女「……うん、ありがとう」

妖精「」パタパタ……ピトッ

少女「妖精さんも、ありがとう」ナデナデ

妖精「♪」


――――
――

魔王の部屋

側近「……魔王様」

魔王「ああ。恐らくもうすぐ来るだろうな……本当に待ち侘びたよ」

側近「……」

魔王「予定通り、頼むぞ……側近」

側近「……御意」




少女(そして……そのまた次の日は――)


――――
――

魔王城前

ザワ……ザワ……

『魔王城に着いたは良いが……』

『一体何なんだこの結界は! 幾ら攻撃してもびくともしねえ!!』ガンッガンッ

『くそっ、こうしている間にも姫様は……!』

?「はあ……ほんっと無能ね、あんた達」

『! 何だと……!』

?「魔王復活の知らせと聞いて来てみれば、群がるだけ群がってこの有様……無能と言う他ないじゃない」

『なっ……』


?「こんなのも壊せないなら、侵入できたとしても無駄死にするだけ。わかりやすい選別だわ全く……つまりお呼びじゃないのよあんた達は」

『ローブで顔隠して好き放題言ってくれるなこの小娘……一体どんな面してやがる!』グイッ

?「……こんな面ですけど?」ジロリ

『ッ、ひ、ひいいっ……!』ドタッ

?「何よ、良い大人が小娘相手にみっともない」ハアッ

『その瞳……まさかお前』

『更なる力を得るために竜を殺し、その目を抉って自分の物にしたという女魔法使い……』

『四つ目の魔女か!?』ガタガタ


魔法使い「だったら何? こちとら魔の殲滅に執念燃やしてんのよ。そのためなら何だってする」ギロリ

『う、ああ……』

魔法使い「ここにいるだけしか能がないなら……とっとと失せろ役立たず共」ギンッ

?「おう魔法使い、最近魔物を殺ってないからって他人に八つ当たりすんのは良くないぞー!」

魔法使い「黙れ」クルッ ゴンッ

?「痛っ、ちょっ、杖で殴るのは止めろって何時も言ってんじゃねえか! 頭が馬鹿になっちまう!」バッ

魔法使い「あんたはそれ以上馬鹿にはならないから良いのよ」ガンッゴンッ

『じゃああの殴られてる馬鹿でかい戦士は……』

『生まれながらに魔族と渡り合える異常な体格と身体能力を持っている……』

『人から生まれた魔、か……?』

戦士「ちょ、もうギブ! 頼むから止めろって!!」ワーワー

『……とてもそうは見えないけどな』


?「もう、魔法使いさんったら……それ以上やっては流石に戦士さんが可哀想ですよ」ススッ

魔法使い「……けっ」プイッ

戦士「はあ……助かったぜ僧侶」グッタリ

僧侶「いえいえ、お気になさらず。何時もの事ですもの……ところで回復魔法は要りますか?」ニコッ

戦士「いんや、これぐらいなら平気だ」

『あの僧侶は……癒しの鬼か。種族を問わずに助けを求める声は誰でも拒まないという』

『浄化の鬼とも呼べるな……可憐な見た目とは裏腹に、かつて数百年もの間人を寄せ付けない程の瘴気に満ちていた地を、僅か3日足らずで元に戻した強者らしい』

『え? 俺は1日でって聞いたぞ?』

『回復だって、死んでさえいなければどんなに酷い怪我でも治せるんだよな……』ゴクリ


僧侶「な、何だかやたらと大袈裟に私達の噂が伝わっているような気がしますね……」

魔法使い「概ね真実なんだから別に良いじゃない」

戦士「はっはっは、まあ俺達は皆あいつにくっついてきただけなんだけどなー」チラッ

?「……魔法使い」

魔法使い「……ん」

?「この状況……やはり俺はおかしいと思う。お前の『眼』にはあの城はどう映っている?」ジッ

魔法使い「そうね……確かに忌々しい気配は感じるけど、魔王城にしてはどうも数が少な過ぎる。物足りない位にね」ギョロリ


『お、おい……何を言ってるんだ?』

?「……そもそも、最初に入ってきた情報からしておかしいと思っていたんだ」

?「仮に、本当に魔王が再出現したとしたら、魔物の動きはもっと活発になっていても良い筈だろ? だが目撃された魔物がその1体だけというのは妙だ」

『だがそれでも魔物は魔物だ! それに連れていた人間に噛みついてこれ見よがしに血を啜ったって話だぞ!?』

?「逆に言うなら、そいつは連れていた人間以外には一切手出しはしていないという事になるな。魔王の部下らしくもない」

『ぐ……っ』

?「その人間だって、俺からしてみれば本物かどうか疑わしい……こちらを挑発する為の魔物の悪戯だという可能性もある」

?「解釈によっては魔王を騙る者にからかわれたんじゃないかとも取れる」


『はぁ? だったら何だよ!』

『都での騒ぎの話がデマだって言いたいのかお前は!?』

?「いや、別にそうは思っていないが気を悪くさせたなら謝る。しかし何にせよ……俺は魔王をこの目で見なくては納得できない」ザッザッ

『何だこいつ……ぐだぐだと口ばっかり』

?「……まあ、どの道姫への手掛かりもここしかないのは確かだ」スッ……

『ふん、無駄だ。どんな打撃も魔法も通じなかったんだぞ? ちょっと触っただけじゃ何も……』

?「……」スーッ

『!?』ザワッ……

『俺達が何をやっても変化のなかった結界が……奴らが触れた場所だけ開いた……!』


魔法使い「へえ、どうやらあたし達は歓迎されているみたいね。ま、これ位壊してやっても良かったけど」スーッ

戦士「お、おおっ、そうなのか?」スーッ

僧侶「どうやら私達以外立ち入り禁止のようですね……」スーッ

?「そうだな……とりあえずあんた達は、もしもの時のために別の場所で待機していてくれないか?」クルッ

『なっ……』

?「この結界がある限り、恐らく俺達以外は何もできない。そう遠くない場所に小さな村があっただろ? そこから魔王城を監視していてほしい」

『てめっ……最後に来た癖に偉そうに指図してんじゃ……!』

『おいやめとけよ、お仲間の異名が異名ならあいつは……』


魔法使い「そーいうこと。言っとくけどこいつの勘は中々当たるからね」ニッ

戦士「おっちゃん達心配すんな。俺達は必ず帰ってくるからよ~」ニカッ

僧侶「お気持ちはわかりますが、どうか従ってはいただけませんか? その方が私達も安心して全力を発揮できますし……お願いします」ペコリ

『……』

?「……頼む」

『……しょ、しょーがねーな』

『お前は気に入らねーが……まあ、僧侶ちゃんに免じて聞き入れてやるよ』

?「……感謝する」ペコッ


『良いからさっさと行って来い』

『これで何も収穫がなかったらただじゃおかねえからな!』

?「ああ……行くぞ」クルッ ザッザッザッ

魔法使い「りょうかーい」スタスタ

戦士「おうっ」ザッザッ

僧侶「あ……ご協力感謝します!」ペコリ テテテッ

『……それにしても、確かにご立派な剣は持っていたが』

『本当にあんな変な奴が……』

『勇者、なのか……?』


――――
――

魔法使い「それにしても勇者、あんたよくもまああんな出まかせを言えたもんね」クスクス

勇者「……何の事だ」

魔法使い「どの道ここには来る気だったんでしょ? 今回の騒ぎはその切っ掛けに過ぎない……」

勇者「……」

魔法使い「あんたは別にお姫様の事なんてどうでもいいのよ。『見』てればわかる」

戦士「え、そうなのか勇者!?」

僧侶「魔法使いさん、幾ら勇者さんでもそれは……」

勇者「……姫の事がどうでもいいという事以外は肯定しておく」

魔法使い「! ……ふふ、じゃあそういう事にしといてあげる。あたしは魔物さえぶっ殺せればそれで良いしね」

勇者「それはありがたい」

勇者(何と言われようが俺は知りたいんだ……真実がな)


とりあえず今回はここまで。
2スレ目にしてようやく勇者一行登場です(笑)
魔法使いの異名は『狂気の魔女(クレイジーウィッチ)』とギリギリまで迷いました←

待ちわびたぜ


こんばんは。
油断していたらこんなに間が……!
恐らく今年最後の更新になるかと思います。

>>26ありがとうございます!
そう言っていただけて大変嬉しく思います。


――――
――

城内

僧侶「それにしても……中に入れたのは良いですが、何だか外から見た印象とは違いますね」キョロキョロ

戦士「ん? そうか?」キョロキョロ

僧侶「ええ。魔王城にしてはその、何というか……綺麗過ぎるというか、瘴気が足りないというか……隅々までお掃除が行き届いている感じがします」

魔法使い「はっ、じゃあ何? 僧侶……あんたは魔物達がここで人間の真似ごとをして平和に暮らしてるんじゃないかって言いたいの? ばっかみたい」

僧侶「魔法使いさん……」

魔法使い「この中で邪悪な気配を感じるのは事実よ? あたしの『眼』の力……あんたはよーく知ってる筈だけど」

僧侶「……確かにそうですが……」

魔法使い「お願いだから、それ以上あたしにとって不愉快になるような事は言わないでくれる? 士気が下がるから」ジロリ

僧侶「……わかり、ました」


僧侶(魔法使いさん……その苛立ちは魔物への憎しみ故ですか? 本当においたわしい事です……)ギュッ

戦士「ひーめーさーまー! どこにいるんでーすーかー!? 助けに来まーしたー!!」ゴオオオオッ

魔法使い「うるさい。敵に見つかるでしょ」ボカッ

戦士「ぐおおおおお……!!」ゴロゴロゴロ……

僧侶「せ、戦士さん……流石に空気読みましょうよ」

勇者「……この扉の先が恐らく謁見の間だな」ピタッ

魔法使い「こんな時でもほんっとブレないわねあんた……ちょっと羨ましいわ」

僧侶(同感です、魔法使いさん)ウンウン

勇者「……開けるぞ。準備は良いな?」スッ

魔・僧「……」コクン

戦士「お、おう……」サスサス


勇者「……」スッ ギィィィッ……

――――
――

謁見の間

少女「魔王様しっかりして! 魔王様あああ!!」ヒシッ

魔王「ぐ、うぅ……っ」グッタリ

少女「お願い……死な、ないで……」ポロポロ

『!?』

僧侶「なっ……」

戦士「なんだあ? 玉座の前で魔王っぽい奴が倒れてて、それに女の子が縋りついてるぞ?」

魔法使い「……あんたにもそう見える? あれ……どんな茶番よ」

勇者「……」


少女「……あ」ハッ

『!』

少女「……あなた達は……勇者様と、その仲間?」

魔法使い「ッ……だったら何? このふざけた状況説明してくれるの?」

僧侶「ちょっと魔法使いさん!」

少女「……うう」ゴシゴシ

戦士「お前……流石にそれはないわ」

魔法使い「うるさい」

勇者「……落ち着いてくれ。できれば幾つか質問に答えてくれないか? 俺達も状況が知りたい」

少女「……」コクン


勇者「よし。じゃあまず……君の傍に倒れているのは魔王か?」

少女「……」コクン

勇者「次に、君は……魔王の部下、もしくはそれに近い者か?」

少女「……」フルフル

勇者「違うのか?」

少女「……私は、魔王様の部下じゃなくて、家族」

戦士「いっ!?」

魔法使い「はあ? 何言ってんのあんた」

勇者「少し黙っててくれ魔法使い。……では最後の質問だ、何故このような状態に?」

少女「! あ、ああ……」ガタガタ

僧侶「落ち着いてください! 初対面の者から言われても説得力はないかもしれませんが……!」

少女「お、お願い、勇者様達……魔王様と……あの人を……側近さんを助けて!!」ジワッ


短いですが今回はここまで。
どうにか年内に進めておきたい所までいけました……!

少し早いですが、良いお年を!

魔王様どうしたんだよおいいいい!

気になるとこで来年に続くかよ!


明けましておめでとうございます!
去年は読んでいただき、そして更新の励みになる様々なお言葉を本当にありがとうございました。
これからも完結に向けて頑張りますので、今年もどうかよろしくお願いします。

本編の状況とは裏腹に、>>1の脳内では魔王が餅を喉に詰まらせ、側近は炬燵で眠りこけ……妖精がその顔に落書きをしております←
そして姫は魔王の背中をさすり、少女はお節などを用意しているというカオスっぷり……なんじゃこりゃ。
とにかく、落ち着いたらすぐにでも更新を再開するので、今しばらくお待ちください。

>>35はい、今年に続いてしまいました……もう少し進めておくべきでしたかね?
気になると言ってくださってありがとうございます。

あれほど餅は小さく切れと…
期待


こんばんは。
予定よりやや遅れましたが、今年最初の更新です。

>>37どうやら兎型の餅を頬張るのに夢中でうっかりやらかしたようです(笑)
なお、妖精はこの後側近によって雑煮の具にされかけました←


――――
――

謁見の間(勇者一行が来る少し前)

魔王「いよいよだな。結界で覆われていても感じる……彼らの来訪を」ピリ……ッ

少女「……」

魔王「側近。姫は安全な場所に隠れてくれたか?」

側近「……はい。最初は中々首を縦に振りませんでしたが、最終的にはどうにか説得する事ができました」

魔王「そうか。御苦労……少女、首飾りはちゃんと着けているな?」

少女「うん。それから魔王様がくれた杖と……側近さんがくれた髪飾りもね」ギュッ

魔王「うむ」

側近「少女、大丈夫か?」

少女「大丈夫だよ、側近さん……その鎧姿、久しぶりだね」ニコッ

側近「っ、そう、だな……」


少女(何でだろう? この頃体調がおかしい……朝起きる時は何ともないのに、活動を始めると途端に気分が悪くなる)

少女(あれから毎晩、側近さんに血をあげているからかな? その時は割と楽なのに……)

少女(それとも、魔王様が今日……死んじゃうかもしれないから?)クラッ……

側近「少女……!」バッ

少女「だ、駄目だよ側近さん! 首飾りが発動しちゃう……こうして杖で体を支えていれば大丈夫だから」カツンッ

側近「だが……」

魔王「少女が大丈夫だと言っておるのだ。それ以上構うな」フイッ

側近「……」キッ

魔王「……それにしても、小妖精はまだ眠っておるのか?」

少女「うん……朝ご飯を食べた後から全然起きる気配がないの。幾らなんでも長過ぎるよね?」

側近「まあ、ある意味では好都合かもしれんな。あの小ささではもしもの時に気付かずうっかり傷つけかねん」

少女「確かに、今みたいにずっと私の部屋で寝かせておくのが……1番安全、かもね」

魔王「……」


側近「……魔王様、そろそろご準備を」

魔王「うむ……側近、そして少女」

側・少「はい」

魔王「……今日まで、ここでお前達と過ごした日々は、本当に楽しかった」

魔王「勇者一行がここに来た時、我の命運が一体どう転ぶのかは正直わからぬ。だが何があってもどうか見届けてほしい……酷かもしれぬが」

少女「魔王様……」

魔王「まあ何にせよ、今日で封印に変化が訪れる事に変わりはない。決まっていた事だ……そうであろう? 側近」

側近「……ええ」

魔王「……それなのに、我の体は震えている。情けない事にな……少女、この震えを止めるためにどうか、お前を少しの間抱き締めさせてほしい。良いか?」

少女「! ……うん、良いよ」シャラッ……カタン コツ……コツ……

少女(多分、今から魔王様は……私の記憶を消すつもりなんだ)コツ……コツ……


魔王「……このような時でも、こんな調子で……我は本当に弱い魔王だな」

少女「そんな事ないよ。どれだけ弱くても、私は優しい魔王様が大好きだよ」コツ……ッ

魔王「っ……ありがとう、少女」スッ

少女(側近さん……ッ!)ギュッ



側近「……失礼する、魔王様。いや……兄上」ザザザッ

ジャキッ……ザクッ


魔王「なっ……!?」グラ……バタンッ

少女「……え?」パチッ

側近「……貴方の『鎖』を断ち切らせてもらった。心臓までは届いていない筈だ」

少女「あ、あ……どうして……側近さん」カタカタ

側近「これで兄上と奴の命は再び分かたれる。同時に封印も緩むが……もう奴を斬っても、兄上が同時に死ぬ事はない」

少女「何、を……言ってるの……?」

側近「……良かった、血は飛び散ってはいないようだな」スッ

少女「う、ああ……」ブルブル

側近「嗚呼、恐がらせてしまってすまない……少女」ギュッ ナデナデ

少女「そ、そんな事より、魔王様が……魔王様が……!」

側近「大丈夫だ。命に別状はない……ただ、すべてが元に戻るのに少し時間がかかるだろうが」ナデナデ


少女「でも……!」

側近「少女……」


側近「後は俺に任せろ」スッ カシャンッ


少女(! 兜を……)

側近「兄上を、頼んだぞ」

少女(どうして……どうしてこんな時に笑ってるの?)

少女(初めての筈なのに、なんでそんなに優しい笑顔が……)


側近「少女、お前をずっと……―――――」

少女「……ッ!!」


魔王「! がああっ……!」ビクッ……ガクンッ

少女「魔王様ッ! しっかりして!!」ガバッ

魔王「う、ぐ……あああああ!!」ドクッ……ドクンッ……

側近「……」クルッ カシャンッ ザッザッザッ……

少女「! あ……まさか……」

少女(あの部屋へ……?)バッ

少女(止めないと! でも……魔王様をこのままにはしておけない!!)

少女(どうすれば……!)

側近「……」ザッザッザッ

少女「! ま、待って、お願い……行かないで側近さん!!!!」

ガチャッ……バタン


――――
――

魔王「はあ……はあ……」グタッ……

少女「……」ギュッ

僧侶「そのような事が……」

戦士「なあ……その側近って奴が行った部屋ってそんなにやばいのか?」

少女「うん……扉の前に近付くだけでぞわぞわする」ブルッ

魔法使い「……嘘を吐いているわけでも、魔物に操られているわけでもないみたいね。めんどくさい」ポリポリ

少女「!?」

魔法使い「優しい魔物? そんなのいるわけないでしょ。あんたが腕に抱えてるそいつだって腹の中じゃ何考えてるか……」

少女「魔王様の事を……悪く言わないで!!」キッ

魔法使い「どうせ何か取引でもしたんでしょ? 家族ごっこに付き合ってやる代わりに言う事を聞くとか」

少女「っ、確かに最初はそんな感じだったけど……」

魔法使い「ほら見なさい」


少女「でも、それでも今では本当の家族と変わらないよ! 私は寧ろ、人間の方が怖い位……」

魔法使い「幼いうちからの洗脳、教育か……おっぞましいこと」

僧侶「魔法使いさん、あんまりです!」

魔法使い「僧侶、何時も思うけどあんたは魔物に毒され過ぎなのよ。幾ら教義でも誰かれ構わず救うなんて人が良過ぎるわ」

僧侶「ですが……」

勇者「……魔法使い。やはりお前は黙っていてくれ」

魔法使い「勇者、あんただってあたしの生い立ちは知ってるでしょ?」ギョロッ

勇者「確かにそうだが、今はそれを持ち出すべきではない……話が拗れる」

少女「……」

勇者「お前のお陰でまだ警戒されているようだしな」

魔法使い「……はいはい、わかりましたよ勇者サマ」プイッ


勇者「……すまない。俺達全員が魔法使いのような考えを持っているわけではないんだ。それをどうかわかってほしい」

少女「……は、い」

僧侶「私は信じますからね、その方の優しさを」ニコッ

少女「あ……あり、がとう」

僧侶「……ふふっ」

戦士「なあ、それよりこれからどうするんだ? その子が言ったおっかない部屋にでも行ってみるか?」

勇者「そうだな……幾ら俺でもこのような事態は予想外だったからな。少し考えさせてくr」

ガチャッ……

姫「……話は、すべて聞かせて頂きました」

少女「!」

戦士「へあっ!?」

僧侶「ひ……姫様!」

勇・魔「!」


今回はここまでです。
細かい展開を何度も確認し、書き溜め・修正しながら少しずつ投下しているのでこんな状態です。
完全番外編として幼女時代の話を別スレ立てて書きたいと思う今日この頃←

おやすみなさい。

そういうことか、てっきりホントに喉に餅詰まらせたのかと思った


こんばんは、また間が開いてしまいましたね……。
少しだけですが続きを投下します。

>>50さ、流石にそれは洒落にならんですよ←


少女「お姫様……どうして? 側近さんに説得された筈じゃ」

姫「ふふ……少女さん、貴女から見る私は素直に安全な場所へ隠れていられるとお思い? 自ら進んで魔王城へ来るような人間ですよ?」

少女「! ……ごもっともです」

魔法使い「ちょっと……流石に今のは聞き捨てならなかったわよ?」

僧侶「た、確かにさらりととんでもない事を仰いましたね」

戦士「姫様……本物か……?」ボーゼン

勇者「十中八九な。まあ、顔を知っている僧侶は勿論、魔法使いが警戒していない所を見れば確実にそうなんだろうが」

戦士「すごくきれーだな……あの女の子もだけどさ」ジーッ

勇者「……嗚呼、お前はそういう奴だったな」

姫「そういえば直接お会いするのは初めてでしたわね……姫です。以後お見知り置きを」ペコリ

勇者「……勇者です。この度貴女がここに攫われたと聞いて馳せ参じましたが……」

姫「その件ですが……ごめんなさい、嘘なんです。私はこの方を救うために進んで皆さんを誘き寄せる囮となりました」


魔法使い「え、何なの、何が起こっているのよ一体……わけわかんない」

僧侶「えーっと、とりあえず姫様が無事である事を喜びましょう」

少女「お姫様、魔王様は……!」

姫「存じております。側近さんも無茶な事をなさいますね……って、こうして悠長にお話している場合ではありませんわ!」バッ

少女「! そうだ、側近さん……!」

魔法使い「あのーお姫様? ちょっと説明していただけます? あたし達には何が何やら……」

姫「早く行ってください少女さん! 魔王様の事はどうか私に任せて!!」

少女「お姫様……」

姫「あの方を説得できるのは貴女だけですわ!!」

魔法使い「もしもーし。そっちで勝手に盛り上がらないでくれませんかねー?」

少女「……ありがとうお姫様。お願いするね」ダッ

魔法使い「おいこら待て無視すんな……って行っちゃったし。どうする勇者?」チラッ


勇者「……魔法使い、戦士、それに僧侶……彼女を追ってくれ。嫌な予感がするんだ」

戦士「なっ……お前はどうするんだ!?」

勇者「俺は魔王に用がある……それを終えたらすぐに行く」チラッ

僧侶「勇者さん、貴方のそれは今、何よりも優先されるべきものですか?」

勇者「……ああ。事情は何時か必ず話すから、今は何も訊かずに行ってくれ……頼む」ジッ

魔法使い「……やっぱりあたしが言った事、当たってたんじゃない」ボソッ

僧侶「魔法使いさん……」

魔法使い「まあ、魔王には勇者。これは昔からのお約束よね? めちゃくちゃ悔しいけど今回は譲ってあげるわ」テクテク

勇者「すまないな」

魔法使い「謝らない! あたし達のリーダーはあんたよ。不満はあれど指示には大体従うわ」ビシッ

戦士「……魔法使いの言うとおりだな。ま、お前なら大丈夫だろ」

僧侶「で、ですが戦士さん……」


戦士「今までもそうだったしな。違うか? 僧侶」

僧侶「! ……そうですね。ですがくれぐれも無理だけはなさらないでくださいね? 回復魔法は私の方が上ですから」ニコッ

勇者「わかってる……腕輪は着けているな?」

魔・戦・僧「」コクッ

勇者「よし。じゃあ後でな」

魔・戦・僧「」タタタッ

姫「……あ! お待ちください!」バッ

僧侶「? 何でしょう姫様」ピタッ

姫「これをどうか、少女さんに渡してください……魔除けの首飾りですわ。肌身離さず着けているよう言われていた筈ですが、魔王様へ近付く際に外してしまったんでしょう」シャラッ

僧侶「……承知しました。では」スッ タタタッ


勇者「……あの首飾りは、姫の着けている物とほぼ同一に見えましたが」

姫「どちらも魔王様から護身にと賜った物ですわ。効果は確認済みです」

勇者「魔王から、ですか……」

姫「……それより腕輪とは何の事ですか」

勇者「魔力の込められた、通信用の装備です。あいつらに何かあればすぐに連絡が来るでしょう」ザッザッ

姫「成程……お噂に違わず、互いに信頼されているんですね、お力を」

勇者「そのようですね……お話は、まだ続きますか?」ザッザッ……ピタッ

姫「!」ギュッ


ここまでです。
書き溜め分の丁度良い切れ目がわからない……←
中途半端だったらすいません!

おやすみなさい。


こんばんは。
何とかある程度まで書ける位に構想がまとまってきました。
後は部分部分で本当に進行が早くなったり遅くなったりするのをどうにかしたい……!

というわけで更新再開です。


勇者「ご安心を。魔王に危害を加えるような事は致しません……今はまだ」

姫「今は……?」

勇者「……彼に訊きたい事があるんですよ。当代の勇者として」

姫「!? それはどういう……」

魔王「……うっ……」ピクッ

姫「! 魔王様、大丈夫ですか!?」バッ

魔王「っく……ぁ……ひ、め?」パチッ

姫「はい。お体の具合は如何ですか?」

魔王「何故……ここに」

姫「ごめんなさい。1人だけ安全な場所にいる事に耐えられずに……出てきてしまいました」

魔王「……嗚呼、貴女はそういう人だったな……そういえば、2人は……」

姫「あ……あのお部屋、に」

魔王「! ま、不味い、我も行かねば……!」ググッ


勇者「俺の仲間も向かっている。何がどう不味いのかは知らんが、ひとまず落ち着いてくれ……魔王」

魔王「! そこにいるのはもしや」

姫「ええ……勇者様です」

魔王「……そうか。我を、いや私を殺しに来たのか……よくぞここまで来てくれた」

勇者「……」

魔王「側近によって私はもう魔王ではなくなってしまったが、その家系の者である事には変わりない。だが殺すのはもう少しだけ待って欲しい……頼む」スッ

姫「魔王様……! 勇者様、この方を害する事は私が許しませんわ!!」キッ

魔王「姫……」

勇者「……少なくとも、今はまだお前をどうこうする気はない」

魔王「なっ……!?」

勇者「俺は個人的にお前に用があるし、お前の『もう魔王ではない』という言葉も気になる……魔族にしてはお前から殺気はおろか血の匂いすらしないのもな」

魔王「……」


姫「当たり前です、魔王様は誰かを傷つけるような事は一切致しません!」

勇者「……姫の態度も謎だ。ここで凌辱の限りを尽くされていると聞いたからな」

姫「凌辱だなんてとんでもない! 私はここの方々から酷い事をされた事はありませんわ!」

姫「それどころか、押しかけてくる私に何時も良くしてくださいます」ドヤッ

魔王「ひ、姫、私のためにそう言ってくれるのは嬉しいが、頼むから落ち着いてくれ……」オロオロ

勇者(……何故だろう。頭が痛くなってきた)

勇者「失礼ですが姫、それは本当の事ですか?」

姫「神と私の名に誓って」ギュッ

勇者「……では、俺に納得のいくように事情を説明していただけますか?」

姫「ええ、魔王様の誤解を解くためなら幾らでもして差し上げます……!!」

魔王「姫、それは私がするから……!」


姫「魔王様はまだ安静になさって! 傷に障ります」

魔王「心配は無用だ。もう傷はほとんど塞がっておる……だが」ゴソゴソ

姫「! それは……以前見せて頂いた」

魔王「これと一緒に逝くつもりで胸の所に入れておいたのだ……お陰で破れて私の血が付着してしまったがな」ショボン

姫「ま、魔王様……」オロオロ

魔王「……後で側近、いや弟には地獄を見てもらおう」ボソッ

姫「! お、お手柔らかにお願いします」

勇者(! ……何故ここで殺気が。それに胸に……兎のぬいぐるみ?)

魔王「……だが今のままではそうもいかんな」スッ

勇者「!」

魔王「待たせた勇者。姫の代わりに私が説明しよう……嘘を吐くつもりは毛頭ないが、信じるかどうかはお前次第だ」

勇者「……ようやくか」


魔王「だがその前に勇者、お前は先程私に個人的に用があると言ったな? 先にそちらから話してもらっても構わないが」

勇者「! ……良いのか?」

魔王「ああ。確かに早くあの部屋へ行きたいが……無防備な私を放置した所から察するに、お前にとって余程大事な事なんだろう。私はそれを尊重したい」

勇者「……」

魔王「それにお前の仲間の力は……お前がいなくても大丈夫な位信頼できるものなのだろう?」ニッ

姫「魔王様……」

勇者「! ……無論だ」

魔王「では聞こう。お前とその仲間に敬意を表して、私は答えられる範囲で嘘偽りなくそれに答えるぞ」

勇者「それはありがたい。ならば俺は……お前を可能な限り信頼する事にする」

魔王「!」

姫「勇者様……!」パアッ

勇者「さっそく問おう。俺が知りたいのは……祖母の行方だ」


魔王「!?」

姫「ゆ、勇者様のお祖母様、ですか……?」

勇者「ええ。ここに来たのを最後に途絶えているのです……40年程前に」

魔王「! ではお前は……先代勇者の」

勇者「……残された『事実』は、その日から魔王がいなくなったという事だけだった」

魔王「そうだったのか……だが、すまない」

勇者「?」

魔王「私はお前の問いに答える事が出来ない……わからないからだ」

勇者「! ……何故だ」

魔王「あの時は、我らの事で精一杯だったからな……今度は私の『真実』を話そう」


――――
――

少女「はあっ……はあっ……」タタタッ

少女(何でだろう……さっきまでの辛さが嘘みたいに体が軽い)

少女(……でも、これはこれで好都合だね)

少女「お願い、考え直して……側近さん……!!」

――――
――

???の部屋

側近「……」ギイイッ……バタン

側近(少女……俺はお前の優しさにつけ込み、何度もその血を吸ってしまった)ザッザッ

側近(このままではそう遠くないうちに……肉にまで牙が届いてしまうだろう)

側近(だから……これで良い)ザッ……


側近「少女よ……俺の事は幾ら恨んでも構わん」

側近「だが、どうかお前の幸せを祈る事だけは許してほしい」チャキッ……ザクッ

ジャララッ……ドクンッ

側近「ほら、解放してやったぞ……ずっと待ち望んでいただろう」スッ

ドクンッ……ドクンッ……

側近「長年封印されてきた貴様の体は……今や原形を留めてはいない」

側近「ここには『心臓』もないしな。完全なる復活にはそれを探し出すまでの器が必要な筈だ」

ドクッ……ドクッ……ドクッ……

側近「……俺がなってやる。あの頃とは違って成長した『末子』の体だ、衰弱しきっている貴様には充分過ぎるだろう?」

側近「貴様の魂を受け入れる準備はできている。とっとと入るがいい」スッ

ド ク ン ッ

側近(……その瞬間俺の心臓ごと貴様を貫いてやる)


『……』シュウウウ……

『……はは』

側近「っ……何がおかしい」

『まさかお前がそんな殊勝な事を言い出すとはなあ……末子の愚弟よ』フワフワ

『確かにお前は仮の器としてこれ以上ない位魅力的だが……俺はもっと良い器を知っているぞ?』

側近「!? 何を言っている……『末子』以上に良い器など」

『まあ、能力的に遥かに劣るのは確かだがな……その代わりお前達を傷つけるのに最適な器だ』クックッ

側近「……まさか貴様……!」

『さて、心当たりはあったかな?』

側近「くっ……だが、それは不可能な筈だ……!」

『お前の愚かさがこんなにも愛おしく思えたのは初めてだ……では不可能かどうか自分の目で確かめてみるがいい』フワッ


側近「させるか……!」ザザッ……ブンッ

『馬鹿が! 魂だけならお前でも勝てると思ったか!? この俺に!!』ヒュッ ボォッ……

側近「!」スパンッ

『はっ、やはりそうか! お前の武器は魔力を断ち切る力を持っているな? 危ない危ない』

側近「……どうだろうな」ギリッ

『嗚呼、あ奴を刺したお前は見ていて面白かったぞ! 視覚以外ほぼないのがこれ程悔しく思った事はないなあ!! あれの悲鳴が聞きたかったなあ!!』

側近「! ……悪趣味な奴め」

『魔族の性だ、お前達が異常なんだ。それにしてもあんなに仲が良かったのになあ……まあ、腹の中は違ったという訳か』

側近「ふん……何とでも言え」

『愉快な物を見せてくれた褒美だ……お前を喰うのは1番最後にしてやろう』ザワッ

側近「……ッ」ゾクッ

『と、戯れはここまでだ』

バタンッ

少女「はあっ……はあっ……側近、さん……」

『……器の到着だ』ニタァ


側近「来るな少女!!」バッ

『ぎゃはっ』ズオオオオッ

少女「え……!?」

ズズズ……ッ

少女「――っ!!」ビクンッ

側近「! ……そん、な」ガシャンッ

魔法使い「っだあっ! やっと追い付いたわ」タタッ

戦士「うわあ……本当にやばそうな部屋だな」ダダダッ

僧侶「はあはあ……あの、少女、さん?」タタタッ……ピタッ

少女「……」カランッ


戦士「? ……おい、大丈夫か?」スッ

魔法使い「! 馬鹿そいつに近付くな!!」ギロッ

少女「……」スッ……ズブッ

戦士「……え?」ブシュッ

僧侶「なっ……貫手!?」

魔法使い「……また面倒な事になってるみたいね」ジリッ

少女?「……やはり力はあまり出せないか。まあ良い」ペロッ

側近「嘘だ……」ブルブル

少女(兄魔王)「どうだ愚弟、この上なく最高の器だろう? ぎゃは……ぎゃはははははっ!!」ゲタゲタ


今回はここまで。
初期からは考えられなかったネタがどんどん追加されていく……!
なるべく矛盾がないように書いているつもりですが、もしあったらごめんなさい。

後、どうでもいい事ですが魔王と側近の名称は引き続きこのままにします。

おやすみなさい。


こんばんは。
本当は昨日更新する予定がっ……!

続きを投下します。


僧侶「戦士さん……!」タタタッ

魔法使い「……今のはあんたじゃなかったら正直やばかったわね。それでも気をつけなさいよ」

戦士「そうだな……すまん。僧侶頼むわ」

僧侶「はい」ポウッ……

戦士「……あの子は今どうなってんだ? 魔法使い」チラッ

魔法使い「正直『見』ているだけで吐き気がするわ……只でさえ人間っぽくない中途半端な気配を纏っていただけにね」ギョロリ

僧侶「ですがそのお陰で、彼女をここまで見失わずにいられたんですよね……皮肉な事に」

魔法使い「そうね、そこだけは感謝してるわ。さっきは魔王にくっついてたからわかりにくかったけど何なのよほんと」

僧侶「さあ……今はあの方に近付くのが危険だという事しかわかりませんね」

魔法使い「とりあえず、あれがあっちに気を取られているうちに勇者に報告しなくちゃ……うええ」スッ

僧侶「無理はなさらないでくださいね?」サスサス

戦士「あー……どの道あの子があのままじゃ俺役立たずだな。どうする?」ポリポリ

魔法使い「悔しいけど今は様子見。何やらあっちもあっちで盛り上がってるみたいだし、どうするかは報告後に考えるわ」チラッ


少女(兄魔王)「さて、せっかくだからお前に教えてやろう、何故俺がこの小娘の中に入る事が出来たのかを」ニッ

兄魔王「そもそもお前達がこの小娘を引き取った事が始まりだ。あの喰い甲斐もないガリガリの頃のこいつをな」

側近「……」

兄魔王「全く違う種族の者同士が同じ場所で生活を共にすれば、形はどうであれ互いかもしくはどちらかに何らかの変化がある」

兄魔王「現にお前達は肉を多く取るようになった……こいつを喰いたくなる衝動を抑えるためになあ」ニタリ

側近「……」

兄魔王「話は変わるが、俺達魔王の家系の者は、屈強な体躯に加えて他の魔族よりも遥かに濃く強い魔力の気配を有している。普段はほとんど意識せんがなあ」

兄魔王「量や強さに違いはあれど、同じような気配を持っている魔の者には特に何の影響もないが……人間はどうだろうか」

兄魔王「ましてや体が未成熟のうちからお前達に引き取られ、俺やお前達の気配が充満する魔王城で今日まで寝食を共にしてきたこいつは……どうなったと思う?」

側近「……」


兄魔王「幼い頃から濃厚な魔の気配にあてられて育った体は目立った変化こそないが、中身は最早純粋な人間にあらず」

兄魔王「それどころか人でも魔でもない、極めて特殊な存在へと変貌したのだ」

兄魔王「自分では召喚以外の魔法は何ひとつ使えない癖に、その身に魔を受け入れる事は出来る! 面白い事この上ない……」

兄魔王「つまりお前達は俺にとって都合の良い器を生み出したって事だよぉ! あっはははははははは!!!!」ゲラゲラ

側近「……」

兄魔王「時間の経過と共に……お前達の気がじわじわと小娘の体を作り変える様を眺めるのは実に愉快だったぞ」

兄魔王「お前達にあのような姿にされたお陰で、気配の流れをお前達以上に強く感じられたしなあ!」ニヤァ

側近「……」

兄魔王「なあ、どんな気持ちだ……? 俺を倒すために大切に育ててきた筈の小娘が、かえって俺にとって都合の良い存在になっていたと知らされるのは」

側近「……」

兄魔王「何だ、まだ呆けているのか……つまらん。もっと絶望に染まると思ったのに」


兄魔王「……まあ良い、これであの時の溜飲が大分下りた。とりあえず」

魔法使い「馬鹿丁寧な解説ご苦労様~……」ユラッ

兄魔王「このゴミ共の始末をしなくてはな」

魔法使い「とっとと死ね」カ……ッ!

兄魔王「さっきも言ったがお前は最後だからなあ!」ヒラリ

魔法使い「ああもう! 完全不意打ちの光魔法だったのに……」ギリッ

僧侶「魔法使いさん、勇者さんの言葉を忘れてはいけません!」

魔法使い「わかってるっての! でもせっかくおあずけから解放されたんだからちょっとくらい大目に見なさい」クルンッ

兄魔王「ぎゃはっ」ニタァ

魔法使い「変なのが入ってなくてもあの女……気配も、考えもだけど」

魔法使い「あたしと同じ杖なのも気に入らないのよ!!」キッ

僧侶「おっぱいの大きさは?」

魔法使い「黙らっしゃい」ギョロンッ


――――
――

謁見の間(少し前)

『……しゃ……勇者……』

勇者「……!」バッ

魔王「? どうした勇者」

姫「もしかして、お仲間からの連絡ですか?」

勇者「そのようです……どうした魔法使い」

魔法使い『ちょっと……面倒な事になった』

勇者「……お前、何を『見』た」

魔法使い『胸糞悪い混ざり物。あの女……どうやら変なのに乗っ取られたっぽいわ。貫手で戦士が刺された』

勇者「! そうか……場所は?」

魔法使い『ずっと奥のだだっ広い変な部屋。鎧姿の馬鹿でかい魔物がいたわ……多分『側近』よ。あたし達に気付かずに呆けてる』

勇者「乗っ取られた子は?」

魔法使い『そいつに何かべらべら喋ってるわ。戦士と僧侶が見張ってるけど……どうする?』


勇者「俺は今、魔王から話を聞いている途中だが……お前が言う変なのは恐らく魔王の兄だ」

魔法使い『……勇者、今何て言った?』

勇者「悪いが説明している暇はない。これから言う指示を2人に伝えてくれ」

魔法使い『あんた……魔王の言う事を信じるっていうの!?』

勇者「頼む。お前が1番頼りなんだ……『四つ目の魔女』」

魔法使い『ッ! ……は、吐き気が治まらないからさっさと言って』

勇者「わかった。まず魔法使い、お前は……」

――――
――

勇者「……以上だ。俺も用が終わり次第すぐに行く」スッ

魔王「おい」

勇者「……」


魔王「少女が……乗っ取られたと言ったか……?」ギロッ

姫「魔王様、どうか落ち着いて……」

魔王「落ち着けだと!? 姫は心配ではないのか!? あの外道が……少女の体の中にいるのだぞ……!?」ギリ……ッ

勇者(随分と気配が『魔王』らしくなってきたな……)

勇者「……まだ話の途中だろう? まずは続きを頼む」

魔王「勇者よ、貴様には説明したばかりだろう……あれを聞いてなお貴様は……」ユラリ

勇者「俺は仲間を信頼しているだけだ。それともお前の先程の言葉は嘘だったのか?」

魔王「っ、ぐ……」

勇者「お前がその気なら、俺は何時でもこれを向けるぞ」チャキッ

姫「そんな、勇者様……!」

勇者「姫も強制的に連れて帰るが……どうする」

魔王「……もしも取り返しのつかない事になってみろ。その暁には貴様らを死よりも恐ろしい目に合わせてやるからな」ズンッ……

姫「魔王、様……」

勇者「……その時は甘んじて罰を受けよう。では話を続けてくれ」グッ


――――
――

???の部屋

勇者『まず魔法使い、お前はできるだけ奴の注意を引きつけてくれ。彼女から引き剥がせればベストだが、下手な事ができない以上それはこの際二の次だ』

魔法使い「あーあ……全力が出せないのも辛いわね」ズラッ

勇者『体は傷つけるな。攻撃するのはあくまで奴の精神面に留めるんだ』

兄魔王「ほう、お次は魔を断つ短剣か。そんなに出現させてどうするつもりだ?」ニヤニヤ

魔法使い「決まってるでしょ……全部あんたにお見舞いするのよ!」ザザザザザッ!

兄魔王「はっ……ぬるいな」スカッ フイッ クルンッ

魔法使い「掠りもしない、か……入ったばかりの割に良く馴染んでるわね。あんたが純粋な魔族なら有効だと思ったんだけど」チッ

兄魔王「当たらなければ無意味だろう? お前が今までどんな輩を相手取って来たかは知らんし興味もないが、そいつらと一緒にされては困るなあ」スタッ

魔法使い「……ま、ほぼ読み通りってとこね」パチンッ

兄魔王「!」シュル……ギュウウ

魔法使い「異界直送の鉄の蔦の具合はどう? 後さっきの台詞もっかい言ってよ」

兄魔王「……ぎゃはっ」ブチブチッ


僧侶「魔法使いさん……」ハラハラ

勇者『僧侶は引き続き待機。できるだけ力を温存しておいてくれ』

僧侶「せめて入り込んだ魂を浄化できれば良いのですが……もしそれで少女さんにも何かしら影響が出たら……」

勇者『後、護身として姫から預かった首飾りも引き続き持っていろ。どの道今の状況では返せないだろうしな』

僧侶「……神よ……その御許へ侍りし神獣よ……どうか……」ブツブツ……ギュッ


勇者『そして戦士、お前は彼女には攻撃できないだろうから……』

戦士「……」ザッザッ

勇者『側近の状態が幾らか落ち着いているようなら説得しろ。魔王の話が本当ならば、俺達には攻撃しない筈だ。万が一の事があってもお前なら大丈夫だろう』

戦士「正直信じらんねえが……ま、勇者が言うなら本当なんだろうな、うん」ポリポリ

勇者『そいつの彼女への気持ちを利用し……あれにぶつけろ。魔法使いのタガが外れないうちにな』

戦士「……魔王城の下敷きになるのは勘弁だ」ブルッ

側近「……」ブツブツ

勇者『だが、もし先程とほとんど変化がないようなら……まず』

戦士「ちっとばかり痛いかもしれないが……しょーがねえよな」ブンブン

勇者『お前なりの方法で正気に戻せ』

戦士「いい加減……目ぇ覚ませやごらあああああああああッッッ!!!!」ドゴォォ……ッ!!


今回はここまで。
ギャグなのかシリアスなのか……。
バトルはやはり難しいですね。

おやすみなさい。

ひそかに楽しみにしとるよー


こんばんは。
ひっそりと続きを更新します。

>>87ありがとうございます!
滅茶苦茶嬉しいです!


側近「……ッ!」ドザッ……

戦士「まだ足りねえか? なら……」グッ

戦士「おらおらおらおらおらおら!!!!」ドガッ バゴンッ

側近「……」ガクンッ ゴシャッ

僧侶「あわわわ……戦士さん、幾らなんでもやり過ぎでは……」

戦士「こっちはあんたらの事情は知らねえけどな!」ゴッ ガンッ

側近「……」

戦士「俺は女の形してる奴にゃ攻撃できねえんだよ! 中身が何であろうとな!!」

側近「……」

戦士「だから代わりにあんたをとことんやらせてもらうぜ……止めてほしけりゃ早く正気に戻れってんだ!!!!」ゴッ ガッ

側近「……」

戦士「っくそ、まだか……俺と目も合わせねえ」ガシガシ


戦士「あのなあ、今は魔法使いの奴がどうにか頑張ってるが、その内遅かれ早かれあの子……少女? の体が多分どうにかなるぞ」

側近「!」ピクッ

戦士「あいつ心の底から魔物が大ッ嫌いだからなあ……我慢できなくなってあの子ごとふっ飛ばしちまうかも」

側近「……あ……」

戦士「あの子がああなって、そんなにショックを受ける程あんたはあの子が大事なんだろ!?」グッ

側近「しょう……じょ……すま、ない……」ブツブツ

戦士「だったらあんたが何とかしろよ!!」

戦士「何時までも現実逃避して……俺達に押し付けてんじゃねえ!!!!」ゴン……ッ

僧侶(ッ! 戦士さんの必殺の頭突き……これで変わらなければ)ゴクッ

戦士「はあっ……はあっ……これでも、駄目なのかよおっ!?」ブンッ




――パシッ


戦・僧「「!」」

側近「……」ギュッ

戦士「……あんた」

側近「……今のは中々効いた」パッ ムクッ

戦士「そうは見えないけどな……普通の魔物なら多分数十回はあの世に行ってるぜ」

側近「魔王の血筋をあまり舐めない方がいい。忌々しい位頑丈だ」ゴキゴキ

戦士「ふーん? ってかあんたも魔王の兄弟?」

側近「……一応弟だ。まあ、とにかく目が覚めた……感謝するぞ」ザッザッ


戦士「……怒らないのか? 人間にここまで一方的にボカスカやられてよ」

側近「俺のためにやってくれたんだろう? それに感謝はするが怒る理由はない」

戦士(……こいつマジで魔王の弟か? まあ攻撃して来ないなら良いのか?)

側近「おい、あの人間の娘……恐らくお前の仲間だろう? 良ければ少女から引き離してくれ」スッ

戦士「! お、おう」ダッ

僧侶(この方……私達に気付いても冷静ですね。それに敵意を向けるどころか感謝までしてくるなんて)

僧侶(おまけに少女さんへの反応……とりあえずまだ様子を見る必要はありますが、恐らく……)

僧侶「……これはお話を伺う必要がありますね。すべてが終わった後にでも」


兄魔王「ふん。人間にしては中々やるなあ……ほんの少しだけ見直したぞ」ケロリ

魔法使い「……」

兄魔王「その額の目……竜の物だろう? 確かに取り入れれば格段に能力は上がるだろうが、脆弱な人の身に余る代物だ」

魔法使い「……」ギロリ

兄魔王「力を渇望する姿勢には共感するが……やはり人間。哀しいかな、そんな事をしても我らとの差は」クスクス

魔法使い「もういい加減、黙れ」スッ

兄魔王「!」

魔法使い「我慢の限界……これ以上は時間の無駄だわ」ゴオッ

兄魔王「ほう……ではどうする」

魔法使い「あたしの全力であんたをぶち殺せないかどうか……その身で確かめてみろ!!」

戦士「ちょ、魔法使い! ストップ、ストォォォップ!!!!」ガシッ


魔法使い「! 戦士……!」

戦士「俺達のやるべき事はここまでだ! ひとまず杖をおろせ!!」

兄魔王「なんだ? お前の全力とやらはなしか? つまらんな……まあ命拾いして良かったな」ニヤニヤ

魔法使い「ッ! ちょっと放しなさいよ馬鹿あああああ!!」ジタバタ ズルズル

戦士「やっぱり勇者の指示を忘れかけてるな!? マジで魔物に対して堪え性なさ過ぎだ!!」ズルズル

魔法使い「うるさい! 戦士の癖に!!」キーッ

僧侶「……魔法使いさん」ススッ

魔法使い「何よ!」ジロッ

僧侶「……」ボソッ

魔法使い「!」ビクッ


僧侶「駄目じゃないですか……勇者さんの指示を無視しちゃ」ニコニコ

魔法使い「あ、や、やめ……」ガタガタ

僧侶「あんまり勝手が過ぎると……今度はあの程度じゃ済まなくなりますよ?」

魔法使い「いやあああああああ!」ブンブン

僧侶「では、わかっていますね?」

魔法使い「」コクコクコクコク

僧侶「ふふっ、よろしい」ニッコリ

戦士「僧侶、助かったぜ……」ヘナヘナ

僧侶「いえいえ。今の私ではこれ位しかお役に立てませんからね」

魔法使い「あれだけはいや……あれだけは絶対にいや……」ブルブル

僧侶「それより戦士さん、あの方……側近さんは」

戦士「ああ……どうやら勇者の狙い通りになりそうだ」チラッ


兄魔王「ようやく我に返ったと思ったら……せっかく伸ばしてやった寿命を捨てる気か?」

側近「……貴様を少女から追い出すためならこの命など惜しくはない」スウッ……ジャキッ

兄魔王「そんなにこいつが大事か。だがお前の剣で何ができる? それとも自棄になったか、ええ!?」

側近「何とでも言え……遅くなってすまない」ボソッ

兄魔王「まあ、やるなら精々足掻いてみせろよ……? この体を傷つけないようになあ!!」ダッ

側近「今助けるからな……少女」スッ


今回は以上となります。
どうにかバランス良く(?)勇者一行を出せた……!

おやすみなさい。


ご無沙汰しております。とりあえず生存報告を。

実は数日前から体調を崩しておりまして、思うように続きを書く事ができませんでした。
様々なコメント本当にありがとうございます。お陰様でとても元気づけられました。
流石に自分のようになってもらったら困るので服はちゃんと着て暖かくなさってくださいね~。

今はどうにか脳内でバレンタインの4人を妄想できる位には回復しました←
友チョコ、義理チョコを渡した後にそれぞれの本命チョコを渡しに行く少女と姫!
姫から本命チョコを貰った魔王の無情な言葉「姫から可愛い 義 理 チ ョ コ を貰ったぞー!!」
落ち込む姫を慰める少女に、「歯ぁくいしばれ兄上」と魔王に殴りかかる側近!
妖精は素知らぬ顔でチョコをもぐもぐ……ってな感じです。
こういうシーン考えていると本編が滅茶苦茶スルーされますね。

これから少しずつ書き進めていくので、更新は今しばらくお待ちください。
だらだらと失礼致しました。


こんばんは、お久しぶりです。
またまた間を開けてしまい申し訳ありません!
今度こそ更新再開です。

チョコや保守、本当にありがとうございます。
側近と妖精は……多分もう少し先になりそうです←


――――
――

謁見の間

勇者「……成程、お前達の事情は大体把握した」

魔王「……」

勇者「俺達はまんまと誘き寄せられたという訳だな。お前達の勝手な都合で……しかも姫まで巻き込んで」

魔王「……その件に関しては本当に心苦しく思っている。お前達の命にも関わる問題だ、私と弟の心臓を差し出しても許される事ではなかろう」

勇者「随分と潔く認めるんだな」

魔王「事実だからな。ただ、あの子……少女だけは許してやってほしい」

勇者「……」

魔王「あの子は我らが拾って利用しようとしただけだ。お前達や姫と同じように」

姫「……」

魔王「まあ、結局……情の方が大きくなってこのザマだがな」


勇者「……彼女の処遇はすべてが終わった後に改めて決める」

魔王「!」

勇者「とりあえず、今はお前の言う事を信じよう」

魔王「……ありがたい」ホッ

勇者「その代わり、幾つか質問をしても?」

魔王「う……い、良いだろう」

勇者「お前は話の中で自身を歴代最弱の魔王と称したが……そんなお前が今日まで、そのような凶悪な存在の封印ができていたのが俺には信じられない」

魔王「……」

勇者「何か副作用があったんじゃないか? もしくは……代償でも良い」

魔王「……流石は勇者、と言った所か」

姫「魔王様……」

魔王「確かにそうだ。あの頃の私達はまだ第2成長も迎えていなかったしな」

勇者「ならばますます疑問に思う……よくもまあ危ない橋を渡ったものだ」


姫「第2成長……?」キョトン

勇者「……姫に説明をしても良いだろうか」

魔王「やむを得んな……」

姫「すみません……」シュン

勇者「姫のような方ならば知らなくて当然です……魔王の血筋やその他の人型の上級魔族には大きく分けて3段階の成長があります」

勇者「まず生まれてから、人間の年齢で10代後半頃までが第1成長。ここまでは人間と変わりなく育ち、魔力や腕力の平均は人間よりもやや強い程度です」

姫「ふむふむ、外見は私達と同じ位でしょうか」

勇者「そうなりますね。次に第2成長ですが、ここからが問題なのです」

姫「問題?」

勇者「第1成長を終えた魔族は、1度そこで肉体の成長が止まります」

姫「!」

勇者「同時に魔力などの成長も……この時点で半人前の状態です」


勇者「第2成長を迎えるには、何らかの精神的な成長をして自身の壁を越えなければならない……それを遂げた時、一気に成熟した姿まで変化するといいます」

魔王「うむ。私や弟の今の姿は第2成長にあたるが、ほとんどの魔族は残りの生をこの姿で過ごす……力の伸びしろも底知れないからな」

姫「そうなのですか……」

勇者「そして第3成長ですが……この件では無関係なので割愛させていただいてもよろしいですか」

姫「は、はい」

魔王「では話を戻そう。結論から言うと封印の維持による副作用はあったし、同時に代償も支払った」

勇者「やはりか」

魔王「まず、副作用は……今こそ大分落ち着いたが、封印して間もない頃は頻繁に発熱や吐血があったものだ」

姫「……!」

魔王「当時の奴の暴れっぷりは本当に凄まじかったな……姫、そんな顔をしないでほしい。貴女には似合わない」

姫「で、ですが……!」

魔王「もう、昔の話だ」

姫「……」グッ


魔王「そして代償の方は……元々のそれであった活動範囲の制限に加え、魔力の大半と命だな」

勇者「命……か」

魔王「ああ。常に魔力の大半を封印へ費やしながら奴と私の心臓をこれで繋げ、下手な事ができぬようにした」ジャラッ

姫「! その大量の鎖、一体何処から……?」

勇者「……それがお前の武器か? 魔王らしさの欠片もないな」

魔王「ああ、自分でもそう思う」

姫「?」

勇者「姫、あまり知られていない事ですが、第2成長を終えた魔王の血筋の者は一生に1つだけ、自分固有の武器を己の魔力で生成する事ができるのです」

姫「そうなんですか……」

魔王「大半の者は勇者と戦うに相応しい剣を作るが、私の場合は封印をより強固なものにするためにやむを得ずこのような形になった」

勇者「1度作れば変更できない代わりに、何時でも自由に手の中へ出す事ができるというが……」


魔王「破壊されたら2度と元には戻らんがな。これも先程弟に何本か断ち切られてしまった」シュン

姫「……りょ、量が多いのであまり目立ちませんわ」

魔王「そうか?」

勇者「封印を維持してきた割には随分とあっさり切られてしまったな」

魔王「弟の武器の何らかの能力によるものだろう。生成の際にそれも1つだけ付与できるからな」

勇者「鎖はこれで全部なのか?」

魔王「いや、後は奴の心臓の封印に何本か使っている。私が死ぬか、私自らが解こうとしない限り容易には解けないだろう」

勇者「お前の拘束するという意志がそのまま鎖の強度へ繋がっているというわけか?」

魔王「そうなるな……拘束だけが取り柄の取るに足らない武器と能力だ」

姫(今のお話が本当なら、魔王様は……やろうと思えば勇者様を縛り上げてでもあのお部屋へ行けた筈)

姫(この方ならどうにかできるかもしれませんが……恐らく勇者様もお気づきでしょうね)ゴクリ


勇者「それにしても、自分の心臓と別の場所にある心臓を鎖で繋げる……しかも命ごと、か。言葉にするのは容易いが」

魔王「いまいちピンとこないか? 空間系の魔法を使用すれば意外とどうにかなるものだ。維持は中々大変だがな」

勇者「……」

魔王「どうだ、なけなしの魔力をこのような事にしか使えぬ私など魔王と名乗るのもおこがましかろう」

勇者「……」ツカツカ

魔王「? どうした勇者」

勇者「……この口か」ボソッ

魔王「ん?」

勇者「人間への無自覚の嫌味を吐くのは」ガシッ グニグニグニ……

魔王「ゆ、勇者なにふぉっ!? いひゃっ、いひゃひゃひゃ……!」バタバタ

姫「勇者様!? 魔王様になんて事を……!!」オロオロ

勇者「人間の代表としてやっておかねばならないような気がしたのです、姫」グニグニ


魔王「ふおおおおおおお」

姫「ああああ魔王様が涙目に……! 魔王様、どうかぬいぐるみをお放しになって!! 鎖も……」

魔王「ひゃ、ひゃがうひゃぎを地べひゃに置くなど……ひょれにこれ以上くひゃりが減るのもいひゃだ!」

魔王(だ、だが兎を地べたに置くなど……それにこれ以上鎖が減るのも嫌だ!)

姫「ど、どうしましょう……勇者様、そろそろお止めに……!!」

勇者(封印に使っていない残りの魔力でそれ程の芸当をやってのけておいて……最弱の魔王だと?)

勇者(あの結界を張りつつ、その状態を長年継続させていると魔法使いに知らせた上でそうのたまった日には……多分憤死するだろうな、あいつは)

勇者(そして何より問題なのは)グニッ

魔王「ぬあああああああああああ……!!!!」

姫「ま、魔王様ああああっ!!」

勇者(……魔王が封印していた存在がそれ以上に強い力を持っているという事だな)


説明ばっかりになってしまいましたが、今回はここまでです。
削れそうな所を削ってもこれだよ……orz

それにしても今年の梅も綺麗ですね←
個人的に大変嬉しく思います。

おやすみなさい。


すいません、最後に1つ訂正です。

勇者(そして何より問題なのは)グニッ



勇者(だがこの際問題なのは)グニッ


こんばんは。
シリアスの中に変なシーンを入れるのはどうやら癖になっているようです←
チョコは妖精がすべて美味しくいただきました。

続きを投下します。


――――
――

???の部屋

兄魔王「どうした? 先程の威勢はやはり虚勢だったのか?」ニヤニヤ

側近「はあっ……はあっ……」ボタボタ

側近(少女の中の奴の魔力が増している……これ以上長引かせれば不味い。だが……)

戦士「あいつ大丈夫なのか……? さっきからほとんどやられっぱなしじゃねえか」

僧侶「……恐いんでしょうね」

戦士「え?」

僧侶「今の少女さんをどうにかできる方法があっても、ぶっつけ本番では失敗するかもしれない」

側近「……っ!」ザザザッ


僧侶「それで少女さんを永遠に失ってしまう事を恐れている……自分が死ぬ事以上に」ギュッ

兄魔王「ぎゃははあっ、遅い、ぞっ!!」ゴオッ

側近「が、はっ……」ドスンッ……グラリ

僧侶(ですが、このままではどの道少女さんは……側近さん、私の見込み違いだったのですか?)

兄魔王「つまらんな、もう終わりか? 嘆かわしい事だ……宝の持ち腐れにも程がある」

側近「……」ググッ……ギロリ

兄魔王「……ああ、それにしても本当にこの小娘の体は最高だなあ」クスクス

兄魔王「居心地が良いのは勿論の事」スッ

側近「!」

兄魔王「肉付きも……んっ、それに感度も魔族好みだ」グニュッ ムニュッ

側近「……貴様ぁぁぁ……っ」ギリ……ッ


兄魔王「ははっ、この器を育て上げた事だけは高く評価してやる……それ以外にも良い活用法があるからなあ」ハァハァ

戦士「おおう……自分で自分の胸を……!」

僧侶「見るんじゃねえです。人間の男風情が」スッ グキッ

戦士「」

僧侶「もう、戦士さんったらスケベなんですから~」クスクス

魔法使い「うわあ……」

側近「活用法、だと……?」ピクッ

兄魔王「わからんか? ……俺の子を産ませるんだよ」ニタァ

側近「!!」

兄魔王「お前達の首が見ている前で朝も夜も関係なく……手足に枷をはめて徹底的に犯し尽くしてやる」

側近「な……ぁ……っ」


兄魔王「安心しろ、お前達はちゃあんと定期的に魔力で防腐してやるよ。そうだなぁ軽く10人は孕ませるか」

側近「……」

兄魔王「それだけいけば末子もできそうだしなあ。その後に骨も残らず喰う……今から楽しみだなあ」ジュルリ

側近「……」ブルブル

兄魔王「喰われる時のこいつはどうなっているかな? 快楽に狂って俺に擬似的な情を抱くか……それとも心を絶望に満たされながら廃人と化すか」

側近「……!」ビキィッ

兄魔王「ああ、体は人間だから先に子宮が壊れるかもしれないなあ。ぎゃははははははは!!」

魔法使い「流石魔族えげつない……あれって挑発のつもりかしら? でも一体何のために……ッ!」ゾワッ

側近「……そんな、目に」ユラリ

兄魔王「んん?」

側近「そんな目に遭わせるために少女を育てたわけではないぞッ!!!!」


僧侶(! ……やっと覚悟を決めましたか)

魔法使い(何……何なの? あの鎧野郎から一瞬……)ギュッ

兄魔王「ふん、何ができるというのだ? 目の前のこの体を攻めあぐねている無様なお前に」ムニュ

側近「さあな……何ができるんだろうな?」チャキッ

兄魔王「!」ピクッ

側近「これ以上、貴様に少女は汚させない」スッ……ザザッ

兄魔王「馬鹿が、血迷ったか……!?」ビクンッ


――ドスッ



魔・僧「なっ!?」

側近「……」ズブブッ

兄魔王「な、に……おまえ……」ブルブル

戦士「ううっ、俺は一体……って何だよこの状況!?」ガバッ

魔法使い「戦士……見ての通りよ。何をとち狂ったか鎧野郎の剣があの女を……」

戦士「なんだと!? あの野郎……!」

僧侶「! ま、待って、2人ともよく見てください!!」

戦・魔「え?」

魔法使い「あ……確かに刺さってる筈なのに血が1滴も……」

戦士「でもあいつ、苦しんでるみたいだぜ?」

兄魔王「なぜ、だ……これは……」カタカタ


側近「剣の能力ヲ貴様が勝手に勘違いシたんダロウが」グリッ

兄魔王「がああ……っ」

側近「さっさト少女かラ出てイけ」グリグリ

兄魔王「ぎぃう、あ……!」

魔法使い「……もしかしてあいつの剣」

戦士「?」

魔法使い「何らかの条件下で斬りたいものだけを斬れる……?」ボソリ

僧侶「! 成程それなら……」

魔法使い「あいつが何か余計な魔力を使った形跡はないから、剣の固有能力ね。多分」チッ

兄魔王「ぐ……おのれ……愚弟の分際で……」ギリッ


側近「出ていけ」ズルッ……グサリ

兄魔王「ッッッがあああっ……!!」

側近「出ていけ出ていけ出てイけ出テイけデテイケ……」グサッグサッグサッ……

兄魔王「あぎィッ……う、がっ、ああああああああああ!!!!」ビクンッビクンッ

戦士「おいあれ……大丈夫なのか?」

僧侶「……確かに、幾ら体を傷つけないとはいえ少しやり過ぎかもしれません」

魔法使い(……!)ヘナヘナ

戦士「ま、魔法使い大丈夫か? 何か見えたのか?」ガシッ

魔法使い「うぐっ……ええ見えたわよ、これまでにないおっぞましいものが」ズキズキ

僧侶「何が、一体何が見えたんですか!?」

魔法使い「それは……!」バッ

戦士「今度は何だ!?」


魔法使い「あの、女の……周囲の魔力が全部体内に収束した……!」ギョロッ

側近(後少しダ少女……モウすぐ……お前ヲ……!)グルルル

兄魔王「……あまり、調子、に、乗るなあああああああっ!!!!」ヒュオッ


ズプッ……


魔・戦・僧侶「!?」

側近「……っ」ブシュウウッ グラッ……ガシャン


戦士「あのほっそい腕で……鎧を貫通した!?」

僧侶「先程の、戦士さんもやられましたが……あれは……ああ、神よ……!」カタカタ

魔法使い「……まさか、最後に心臓を貫いてから出ていきやがるなんてね……敵ながら大した執念だわ」

兄魔王『畜生ッ……くそっ……もう少し、で……覚醒、させられたのに、っ……勿体ない事を……』シュウウウ……

兄魔王『とにかく……今は器だ……早く次の、器を……』ヨロヨロ……フッ

少女「」ドサッ

魔法使い「……消えた。この部屋からは完全に」

側近「……」ズズ……ッ

魔法使い「あいつっ……まだ動けるの!?」スッ

僧侶「だ、駄目、駄目です魔法使いさん……戦士さんも止めて!!」バッ

戦士「え? お、おう」ガシッ

魔法使い「ちょ、何なのよ! 今が絶好のチャンスなのに……!!」ジタバタ


側近「……しょう、じょ……」スッ……

側近(すまない……俺の血……で汚して、しまって……)

側近(だが……良かっ、た……お、前が……無事、で……)

側近(兄上……勇、者……すま、ないが……)

側近(後、は……たの……ん…………)ゴボッ


――パタン



今回は以上となります。

おやすみなさい。


こんばんは。
週1更新がデフォになりつつある今日この頃←

てなわけで更新再開です。


――――
――

謁見の間

魔王「うう……」ヒリヒリ

姫「魔王様、大丈夫ですか……? 赤くなっていますわ」

魔王「ああ。それにしても、頬とはいえ魔族の皮を摘むとは中々やるな」サスサス

姫「あはは……流石は勇者様、と言ったところでしょうか」

勇者「……」

魔王(……初めて見た時から感じていたが、何とも読めん奴だな)

魔王(己の目的のために単独で私に迫ったかと思えば、仲間を信頼し大切にする素振りを見せる)

魔王(年の頃は少女や姫と変わらぬというのに……得体が知れんな)

魔王「……」

姫(き、気まずいですわ……)


勇者「……」バッ

姫「あ……お仲間からですか?」

勇者「ええ……魔法使いか。どうした」

魔法使い『勇者ー……へるぷみー……』

勇者「何があった」

魔法使い『馬鹿と僧侶に反逆されたー』

勇者「? どういう事だ」

魔法使い『……声からもわかる通り、あたし今魔法が使えない状態なのね。2人のせいで』

勇者「……その2人は一体何をやっている」

魔法使い『戦士はあたしを見張ってる。杖も持ってるから、へし折られないかひやひやするわ……んで僧侶は……むかつく事に鎧野郎の手当て』

勇者「その様子じゃ、大方お前が暴走しそうになったのを止めたんだろう」

魔法使い『……ちっ、やっぱばれたかー』


勇者「ところで俺の指示はどうなった」

魔法使い『それはちゃんと従ったし、概ね成功したわ……結果はかくかくしかじか』

姫「そ、そんな……側近さんが……」カタカタ

勇者「……ではその子に憑いていた奴は何処へ行ったんだろうな」

魔法使い『んー……この状態じゃどの道わからないわね。でも器がどうのって言ってたから……』

勇者「こちらに来るかもしれない、か?」

魔法使い『毎度ながら察しが良い事……そんなわけだから一応気をつけておいてー』

勇者「ああ、了解……」ジャラッ

魔法使い『? 何、今の音』

勇者「……どういうつもりだ。魔王」ギシッ

魔王「1つ尋ねてもらっても良いか。でなければ……少々手荒だが腕輪を奪わせてもらう」


勇者「! ……何を訊きたい」

魔王「少女と、弟……側近の様子を」

勇者「わかった。ではこれを解いてもらえるか」

魔王「答えを聞けたらな」

勇者「……魔法使い。女の子と鎧野郎、もとい側近の様子はどうだ?」

魔法使い『え……何よいきなり』

勇者「良いから答えてくれ」

魔法使い『……鎧野郎は遠くから見る限り、ピクリとも動かないわね』

魔法使い『女の方は……気を失ってるだけみたい』

勇者「……そうか。ありがとう」

魔法使い『ってか何なのよ一体』

勇者「気にするな」


魔王「……なあ、今この腕輪から僧侶へ通信を繋げるか? 少し話がしたい」

勇者「それは可能だが……まだ解放してはくれないのか」

魔王「家族の一大事だからな。なりふり構ってなどおれんよ……このままお前の腕をもいでやっても良いのだぞ」ギロリ

姫「魔王、様……」

姫(怒っていらっしゃる……!)ブルッ

勇者「……報告御苦労、魔法使い。休憩も兼ねてしばらくそのまま待機しておいてくれ。僧侶も治療を続けて良い」

魔法使い『え? ちょっと勇……』ブツッ

勇者「」スッ……ポウッ

勇者「……僧侶。今話せるか?」

僧侶『……勇者さん、どうなさいましたか』

勇者「魔王からお前に話があるそうだ」

僧侶『!』


勇者「心配するな、今の所こいつは敵じゃない……それだけは確かだ」

僧侶『……』

勇者「大丈夫か? 魔王とかわっても」

僧侶『……はい。お願いします』

勇者「……」カチャッ スッ

魔王「!」

勇者「腕を奪われるのはごめんだからな」

魔王「……すまんな」バララッ

姫(勇者様が解放された……良かった)ホッ

僧侶『……は、初めまして、魔王さん。勇者一行が1人、僧侶です』

魔王「魔王だ。何を考えて貴女が弟……側近の治療をしてくれているのかはわからんが、とにかく感謝する」

僧侶『いえ、そんな……無力な私にそのようなお言葉を頂く資格などありません』


魔王「……それ程酷いのか」

僧侶『それは……』

魔王「正直に言ってもらいたい」

僧侶『っ……はい。胸に開いている穴から血がとめどなく溢れている状態で、自分を浄化しながらそれを抑えるので精一杯です』

魔王「穴以外に、何か外傷は?」

僧侶『少女さんに憑いていたモノとの戦闘中に幾つか……ですがそちらはこの際問題ではありません』

魔王「……そうか」

魔王(心臓を完膚無きまでに破壊されていれば絶望的だが、それなら望みはある……しかし)

僧侶『……何の因果か、私は巷では『癒しの鬼』などと持て囃されておりますが……聞いて呆れますよね』

魔王「いや、そんな事は……」

僧侶『ごめんなさい……本当に……!』グスッ

魔王「! な、泣かないでくれ、私は貴女を責めるつもりは……!」オロオロ


僧侶『……でも』

魔王「ん?」

僧侶『私はこんな終わり方認めませんからっ! 絶対に諦めませんからーッ!!』

魔王「!?」ビクッ

僧侶『あ……すみません、少々取り乱してしまいました……とにかく私は最後まで全力を尽くします』

魔王「……それは本当にありがたい。だが、良いのか? そいつは私の……」

僧侶『存じております。ですが、例え魔王の血筋の方であろうが人であろうが、救いを求める気持ちに差異はありませんから』

魔王「……」


僧侶『ただ、この方……側近さんの場合』

魔王「何だ?」

僧侶『……傷口からそれが見受けられません』

魔王「! それは、どういう……」

僧侶『助かりたいという思いが、全く……感じられないのです』

魔王「ッ、やはりかあの馬鹿……!」


今回はここまでです。
あまり進まなくてすみません……。

おやすみなさい。

お心遣い、感謝致します。

アスカ「ふーん、アコギ?」

シンジ「いや、エレキだよ。」

アスカ「何?アンタ、バンドでもやってるわけ?」

シンジ「いや、やりたいんだけど、メンバーが居ないんだ。」

アスカ「アンタ、友達少ないもんね。」

シンジ「アスカだって人の事言える程友達居ないじゃないか。」

アスカ「うっさいわね!!…」

やってもたああああああ
誤爆です消してくださいすいませんでした


こんばんは。
続きの投下の前にまずは数日遅れのホワイトデーを。
チョコのお返しとして妖精がキャンディーをお届けに参ります←

一方魔王達は……これまたおかしな事に(笑)
お返しに顔に似合わぬ可愛らしいクッキーを焼く側近!
側近と同じように作った筈なのに暗黒物質の生みの親となってしまった魔王!
「魔王様の……手作り……」と熱に浮かされた目でそれを食べようとする姫! それを阻止しようとする少女!
そして妖精は側近の作ったクッキーをこっそり砕いたり食べたり……←
ってな感じです。

長々と失礼致しました。


――――
――

少女(――ん)パチッ

少女(あ、れ……? 私……どうなって……)

少女(確か、あの……お部屋に、入って……側近さんに来るなって……ぁ)

少女「そ、きん……さん……側近さんは!?」ガバッ

戦士「! 気がついたか少女ちゃん」

僧侶「……その調子で、引き続き呼びかけて下さい」ポウッ……

魔王『弟よ……あまりふざけるなよ……? お前はこう言われるのは厭うだろうがこの際言わせてもらうぞ』

少女「え……何、が……あったの?」スッ……ヨロヨロ

戦士「おっと……すまねえが説明は後だ! おい僧侶、少女ちゃんが目を覚ましたぞ!!」サッ


僧侶「! 丁度良かった……少女さん、目を覚ましてすぐで申し訳ないのですが……貴女もこちらに来て呼びかけてあげてください」

魔王『お前は末子だろうが! 私よりもずっと強い筈だろうが馬鹿者!!』

魔王『私よりも先に母上達の元へ逝くなど……断じて許さぬぞ……!』

姫『魔王様、私も……側近さん、貴方はそんなにやわな殿方ではないでしょう!? しっかりなさい!!』

少女「……」

少女(これは……何? 僧侶さん? に隠れてはっきりとは見えないけど……)

少女「どうして側近さんが倒れてるの……?」

魔法使い「……ふん、随分とお気楽なものね」

少女「! 魔法使い……さん」

少女(なんで額に布を巻かれた状態で床に……? 両手も胸の前で縛られてるし……)


魔法使い「気安く呼ぶな異端者が。あたしの獲物を減らしやがって」ジロリ

少女「え……」

魔法使い「どうしてそいつがそんな事になってるかって? 知りたいなら自分の手をよーく見てみなさいよ」

戦士「おい魔法使い、あれはこの子が自分の意志でやったわけじゃ……!」

魔法使い「あんたはちょっと黙ってなさい……どうせ今のあたしは口しか動かせないんだから」

少女「……!」

少女「何、こ……れ……」カタカタ

魔法使い「それに少なくとも、化け物って呼んであげないだけマシでしょ?」フン

少女(どうして……私の手……こんな、に……)ベタッ


少女「? 何か、くっついてる……綿?」

僧侶「あ、あの、少女さん……治療のために鎧を脱がせた時、丁度胸の部分からこれが……」スッ

少女「……あ、ああ……!」

少女(わ、わたし、が……あげた……)ガタガタ

魔法使い「全く女々しいわね……ぬいぐるみを鎧の裏に仕込んでいたなんて」

魔王『く、そっ……何故こんな所だけ考える事が同じなのだ……!』ギリッ

少女「うわ、あ、あああ……じゃあ私が、わたし、が……!」

魔法使い「これでわかったでしょ。あんたがやったのよそれ……大事な大事な家族をその手で」

少女「ああぁあああああぁぁぁぁぁぁああ……!!!!」


戦士「もう止めろ魔法使い! 少女ちゃん違うんだ、あんたは乗っ取られて……!」

魔王『少女気がついたのか!? 大丈夫か!?』

僧侶「っ……魔王さん、今は側近さんに呼びかけるのが先です!」

僧侶「救いを求める気持ちを……生きる気力を引き寄せなければ、治癒魔法を持ってしても助けられません……!!」

魔王『ぐっ……これでは助けた意味がないではないか……あの時せっかくお前を救えたと思ったのに!!』

魔法使い「やっぱり魔物と一緒にいると碌な事にならない……良い例だわ」ボソッ

少女「側近さん……側近さん側近さん……!!」

少女「お、お願いだから……目を開けてよぉ!!」ボロボロ

魔王『! ……おい、聞こえるか弟よ。少女も泣いておるぞ……これがお前の望んだ事か?』

姫『側近さん……!!』


魔法使い「諦め悪いわね本当に。いい加減無駄な足掻きは止めたら良いのに」プイッ

戦士「魔法使い……!」キッ

魔法使い「あの女もぴーぴー泣くことしかできないなんて……鬱陶しいったらありゃしないわ」

魔法使い「……昔のあたしを見ているみたいで嫌になる」ボソッ

少女「ううっ……こんなの、嘘だよ……やだぁ……」ポロポロ

少女「何か……何かできる事は……ぁ」スッ

僧侶「?」

少女「そうだ……私の血……必要なら肉もあげるよ……」カプッ……ブツン

魔王『なっ……少女!?』

少女「っ……ほら側近さん、何時もみたいに飲んで……?」グイッ


僧侶「しょ、少女さん何をなさって……!」

少女「そしたら側近さん、楽になるでしょ……? また目を開けてくれるよね?」

僧侶「少女さん、どうか気をしっかり持ってください!!」ユサユサ

少女「……どうしたの? 何時も美味しそうに飲んでくれるじゃない」ポタポタ

僧侶「少女さん!!」

魔法使い「……おっぞましいわね」ブルッ

少女「さあ飲んで? きっと元気になるよ……飲んで飲んで飲んで飲んでn」


バチンッ


戦士「!?」

魔王『……い、今の音は』

魔法使い「僧侶……あんた……」

僧侶「しっかりしなさい少女さん……!」ヒリヒリ

少女「あ……私……」


僧侶「貴女までそうなってしまって……どうするんですか!!」ハァハァ

少女「……」

僧侶「ショックを受ける気持ちはわかります……ですがそんな事をしても側近さんは目を覚ましませんよ!!」ポウッ

少女「僧侶、さん……」

僧侶「今、貴女にできる事がある筈です……貴女にしか、できない……」ゼエゼエ

戦士「僧侶、お前力の消耗が……!」

僧侶「これ位、大丈夫ですから! 戦士さんは少女さんに……落ちている杖を……」

戦士「え? わ、わかった……」バッ ダダダッ……スッ

少女「……? あり、がとう」スッ ギュッ

僧侶「ありがとうございます……」ニコッ


戦士「お、おう……僧侶、あまり無茶は」

僧侶「……魔王さん」

魔王『! す、すまない、続けよう』

僧侶「お願いします」ポウ……ッ

少女「僧侶さん、どうして……」

僧侶(どうか気付いてください、少女さん……!)

僧侶(私の口から教える事はできませんが……1つだけ、この状態をどうにかできる方法があります)

魔法使い「! ……僧侶、あんたまさか」

僧侶(少女さんがあれをつけていたのは本当に幸いですが……)

僧侶(問題は貴女が知っているか。それと条件を揃えているか……ああ、私が先に力尽きてもアウトですね)

魔法使い「あれを狙ってるの……? あんな迷信にも近いものを」


僧侶(こればかりは少女さん自身が気付かなければいけません。自分の意志で成し遂げなければなりません)

僧侶(……間に合うかわからないし、できるかもわからない)

僧侶(不確定なそれに賭けるしかない自分が情けない)ギリッ

戦士「僧侶……一体何のつもりだよ」

僧侶(……でも、それでも私は諦めたくないんですよ)

魔王『戻ってこい弟! お前はもっと生き永らえて……少女を幸せにしろと言っただろうが!?』

姫『お願い、します……どうかまだ逝かないで……』

僧侶(こんなに慕われて……愛されている尊い命を!!)キッ


今回の更新は以上です。

おやすみなさい。


こんばんは。
やや少なめになると思いますが、更新再開します。

側近……気にかけてくださる方がいてくれて嬉しいです。


少女「僧侶さん……」ジッ

少女(一体私に何を求めているの? どうして杖を……)ヒラッ

戦士「少女ちゃん、何か落としたぞ……花弁?」スッ

僧侶「! 少女さん、1つお伺いしますが……その髪飾りはこの方から贈られたものですか?」ポウッ……

少女「え、あ……そうだけど……」

僧侶「やはりそうでしたか……どうやら残された時間はあまり多くはないようですね」ジワッ……ポタッ

少女「!」

僧侶「髪飾りから花弁が散る時の条件……貴女はご存知ですか?」チラッ

少女「……ぁ」


『送り主が死ぬか、想いが消えてしまうと』


『一緒に散ってしまうのよ――』


少女「ど、どうしよう……ああ、また……!」ヒラリ

僧侶「今は何とか持ち堪えているようですが、すべての花弁が散ってしまったらもう……」 

少女「そんな、どうすれば良いの僧侶さん!?」

僧侶「……貴女ならきっとできる」

少女「え?」

僧侶「私は信じていますからね」ポウッ……

少女「……」ヒラッ……

魔王『目を覚ませ弟! お前はまだ死んじゃいけない!! 頼むから……』

姫『側近さん! 貴方は魔王様のたった1人の弟なんで……きゃあっ!!』ブツンッ


僧侶「!? 姫様! 魔王さん!! 応答を……」

魔・戦「!」

少女「何があったの……!?」

僧侶「……腕輪の通信が途絶えました。戦士さん、そちらから連絡は?」

戦士「だ、駄目だ! 俺の呼びかけにも反応しねえ」

魔法使い「……戦士、今すぐあたしの拘束を解きなさい」ジロッ

戦士「魔法使い……」

魔法使い「十中八九あいつの仕業よ! 幾ら勇者でもそんな通信の切り方はしないって知ってるでしょ!?」

戦士「で、でもよ」チラッ

魔法使い「この際そいつの事は後回しにするからさっさとして!」


戦士「……僧侶」

魔法使い「あっちにはお姫様もいるのよ!? 手遅れになっても良いの!?」

僧侶「……やむを得ません。戦士さん、お願いします」

戦士「わ、わかった」スッ……シュルッ ブチッ

魔法使い「……ふう、やっと自由になれた」ムクッ コキコキ

僧侶「……」ジッ

魔法使い「どれ……」スッ……ギョロン

魔法使い「……ああもう、魔王の魔力のせいでわかりにくいわね」ガシガシ

少女「……」

魔法使い「っと、これ以上は杖なしじゃできないわね。ん」スッ


戦士「?」

魔法使い「馬鹿! あんたのそれ返しなさいよ」

戦士「あ、ああすまん」サッ

魔法使い「よし、折れてはいないみたいね……んじゃあ急いで行きますかー。転移魔法使おうにも忌々しい妨害が入っているしね」クルリ

僧侶「……お気をつけて」

魔法使い「ん。あ、戦士はついて来なくていいから」ザッザッ……ジロッ

少女「!」ビクッ

魔法使い「……じゃあね役立たず」ボソッ

少女「……」ヒラッ……

魔法使い「一生そこで狼狽えてなさい」ガチャッ……バタンッ


少女「やく……たたず……」

僧侶「少女さん……あまり気に病まれる事はありませんよ」

戦士「そ、そうだぜ! 大体あいつは性格がキツ過ぎるんだよ。特に魔物がらみの事になるとなー」

僧侶「仕方ありませんよ……幼い頃にあのような目に遭っていては」

戦士「……まあ、な」

少女「……」

僧侶「さあ、気を取り直して頑張りましょう! 私も力を尽くしますから……うっ」バチッ

少女「! 僧侶さん、手が……」


戦士「お前、やっぱり無茶してんじゃ……!」

僧侶「ああ……お気になさらず。浄化に回す分が勿体ないので、少し前からすべて治癒につぎ込んでいるんですよ」シュウウウ……

少女「だ、大丈夫なの……?」

僧侶「汚染の効果を和らげるアイテムを装備しているのでしばらくは……長くは持ちませんが」ポウッ

戦士「僧侶、お前は充分よくやってる! だから……」

僧侶「言った筈です。諦めませんと……邪魔をするなら容赦は、しません……」

戦士「……ああくそ! どうしてうちの女共はこうも強情なんだ!!」ガシガシ

少女「僧侶、さん……」

少女(私は何故か何ともないのに、僧侶さんは少し触っただけで……側近さんと魔王様の血って、やっぱり危ないんだ)

少女(私、ずっと2人に気を遣われて……守られてたんだ……!)ジワッ


――――
――

謁見の間

魔王「くっ……腕輪がすっかり壊れてしまったではないか。復元できるか……?」パラ……パラ……

『そのような心配は無用だぞ? じきに母上達の許へ逝く事になるのだからな』

魔王「全く、幾らなんでも予想外の事態が起こり過ぎだ……しかもほとんどが悪い事ときた」

『本当はすぐにでもお前を葬ってやりたい所だが、こればかりはお前しか知らないからなあ』

魔王「何故、乗っ取る事が出来たのか……考えるのは後回しだな」ギンッ

『ぎゃははあ……さて、何故だろうな?』ニタニタ

姫「ああ……そんな……」ブルブル

勇者(兄魔王)「さあ……我が『心臓』の在り処を吐いてもらうぞ上の愚弟よ!!」スラリ……ジャキンッ


今回はここまで。
ずっとやりたかった魔王対魔王の構図……!←

おやすみなさい。


こんばんは。
少し間が空きましたが続きを投下致します。

どうにか色々と繋げられた……!


魔王「姫、気をつけるのだ……決して私の傍から離れるんじゃないぞ」

姫「は、はい……!」

魔王(確かに勇者は常人ではないだろうが……かと言って簡単に魔に付け入られるような存在でもない筈)

魔王(一体何が起こっているんだ……っと、いかんいかん、言った傍からこれでは駄目だな)ブンブン

勇者(兄魔王)「ふ、仮とはいえこうして肉体を持って話すのは久しぶりだなあ、憎々しい上の愚弟よ……」

姫「勇者様、どうか正気に戻ってください……!」

兄魔王「ふん、そこいらの低級な憑き物と一緒にするなよ……お姫サマ」

姫「気易く呼ばないでくださいな! 不愉快ですわ」キッ

兄魔王「無力な癖に良く吠えることだ……それにしても、素晴らしきかなこの器。先程の何倍も力を振るい易い」クックッ

魔王「……厄介だな。本当に」


魔王(だが、これで当分弟の治癒の時間は稼げる。こちらから呼びかける事は出来なくなってしまったが……)

魔王(魔力も大分戻って来たしな)ワキワキ

兄魔王「さて、今1度問う……我が心臓の在り処を素直に言う気はないか?」スッ

魔王「……私が、貴様を封印してきた数十年間を無駄にする事をわざわざ言うと思うか?」

兄魔王「はっ……本当に可愛げのない奴だ」フッ

姫「!? 消え……」

魔王「くっ……!」ジャッ……ジャラッ

兄魔王「ふっ」シュンッ キィン……ッ

姫「なっ、一瞬でここまで!?」

兄魔王「ぎゃははっ、よくぞ見切ったなあ……俺達の中で1番弱いくせに」ブンッ

魔王「!」ジャラッ グルグル……


兄魔王「あんなに可愛がってやったのに、その性格の欠陥は遂に治らなかったな……実に残念だ」ギギギ……ッ

魔王「……っ」ブル……ッ

姫「魔王様! 気をしっかりお持ちください……!」

魔王「!」ギチッ……

兄魔王「ちっ、ほとんど緩まなかったか……邪魔な小娘だ」ジロリ

魔王「……たとえ貴様らにどれ程そう思われようと、我らはこのような生き方に後悔などしていない」

魔王「仮に魔王の家系らしい人格を持って生まれていれば、こうして大切な存在達に出会う事もなかっただろうしな」ニッ

姫「魔王様……」

姫(このような時に思うのは、不謹慎でしょうが……)

姫(私は、そんな貴方が……好きです)ギュッ……


魔王「私は逆に哀れに思うよ……欲望のままに生きる事にしか喜びを見出せない貴様らをな」ググッ

兄魔王「ッ! ……失敗作の分際で生意気を!」

魔王「生意気で結構。我らは貴様には死んでも屈しない」

兄魔王「……まあ良い。どうせお前はこれ以上どうする事もできないのだからな」

魔王「……」

兄魔王「そうだろう? この体を攻撃する気持ちを持てない愚か者よ」

魔王「……」ギチッ

兄魔王「頭の中は、こいつの中からどうやって俺を追い出すかで一杯か……実に下らん事だ」

魔王「……そう考える事の、何が悪い……!」

兄魔王「だからお前は出来損ないなんだ」スッ

姫「!」

兄魔王「この器ができる事は……剣術だけではないぞ!!」カッ


姫(あ……勇者様は剣も魔法も……!)

魔王「しまったっ……あああああッ!!!!」バシュッ

兄魔王「障壁魔法でこれも防ぐか……だが、至近距離故に無傷ではない」ニヤニヤ

魔王「はあっ……はあっ……」シュウウ……

兄魔王「先程は魔力を直接ぶつける事しかできなかったが、やはりこうして魔法が使えるのは良いものだ」

兄魔王「ほら、剣も自由になったしな」クルクル

姫「魔王様、大丈夫ですか!?」

魔王「ああ……問題ない。これ位すぐに治る」


兄魔王「俺を前にして余所見をするとは余裕だなあ……おおそうだ」フッ

姫「また消えて……え?」

兄魔王「お前に使う前にこいつで試し斬りをしてみるか」スタッ……ヒュッ

姫「あ……!」

魔王「ひ、姫……ッ!!!!」バッ


ザクッ……


魔王「くっ……」ビチャッ……ガクン

姫「あ……ああ……」ガタガタ


兄魔王「おやおやあ? お前らしくもないなあ……何の対策もせず無防備に勇者の剣に斬られるなど」ニヤニヤ

魔王「……」ボタッ……ボタッ……

兄魔王「そんなにその小娘が大事か? 王族である事以外何の価値もないそいつが!!」

魔王「……違、うっ……姫は、我らにとって……っぐ……かけがえの、ない、友人だ……!」ハァハァ

姫「……」ブルブル

兄魔王「くく、友人、ねえ……だがそいつはすっかり怯えきっておるようだぞ」

姫「ま、まお、さま……そんな……」ポロポロ

兄魔王「自分を庇った事で……お前の腕が無残に断ち切られてしまった事になあ。ぎゃははははははは!!!!」

魔王「ッ……」

兄魔王「すべてお前の甘さが招いた結果だ! 馬鹿が!!」ゲタゲタ


姫「ああ、あ……魔王様、ごめんなさい……ごめんなさい……ッ!」ギュウッ

魔王「……姫」スッ

姫「!」ビクッ

魔王「そう気に病むでない」ポン

姫「……え」

魔王「やれやれ、先程勇者に言った言葉が……自分に返ってきてしまったな」ビリッ クルクル……ギュッ

姫「で、ですが、腕が……貴方の左腕が……!」

魔王「姫……別に、命を取られたわけではないのだぞ……? むしろ腕1本で済んで……良かったというべきか」フウッ……

姫「魔王様……」

魔王「そなたが無事で……何よりだ」ニコッ

姫「ッ……!!」ボロボロ


兄魔王「ほう、随分と楽観的だな上の愚弟よ……そんなにふらついているというのに」

魔王「ふらつく? これは……武者震いだ」ニッ

魔王「今こうしている間にも、弟が生死の境を彷徨っているのだ……たかが腕を失った程度で動揺している場合ではないだろう」

姫(嘘です……顔色まで変わってきているのに……!)

兄魔王「ふん、強がりを……ただの人間に負わされた傷ならともかく、今の我が身は紛う事なき勇者」

兄魔王「この剣は本来の勇者の剣ではないが、それでも長年こいつに愛用されてきたのだろう……お陰で手に良く馴染んでいるぞ」ジャキッ

魔王「……それで?」

兄魔王「よって自然に勇者の力が移り……勇者の剣に近い能力が付与されているようだ」

兄魔王「それをこうして魔王に利用されているのは皮肉だがなあ!」

魔王「……」

兄魔王「お前の腕は……果たして元通りにくっつくだろうか? 未だ出血も止まり切っていないというのに」ゲラゲラ

姫「……!!」


魔王「……姫。下がっていろ」

兄魔王「まあそんな暇など与えないがな」ザザザッ……ブンッ

魔王「ちっ……」ジャララッ

兄魔王「ぎゃはっ、苦し紛れに放つ鎖などあたるか!!」フイッ スカッ

魔王「!」

兄魔王「そら、もう1本も――」

姫「ま、魔王様から、離れなさい……っ!」サッ

兄魔王「っと……ああ、そうだった。お前はこいつからそれを渡されていたな」スタッ

魔王「ひ、姫! そなた……」

姫「……」ガチガチ

兄魔王「くく、震えているなあ……まるであの時の兎のようだ」

魔王「……何だと?」ピクッ


兄魔王「ん? まさかと思うがお前……あの兎の死が本気で病気か寿命が原因だと思っているのか?」ニヤァ

魔王「! まさか……」

兄魔王「我が魔力にあてられてもがき苦しむあれを見るのは……実に愉快であったぞ」

魔王「き、き……貴様ぁぁぁぁあああぁぁぁぁッッッ!!!!」ゴオッ

兄魔王「ふん、何を勘違いしているのかはわからんが、元はと言えばあれを飼っていたお前が悪いのだ」

兄魔王「只でさえ魔の気配が充満していた魔王城で、更に飼われていた場所が我が魔力を内包していたお前の部屋」

兄魔王「人間以上に弱い生き物だ。俺が手を下さずとも、遅かれ早かれあれは……」

魔王「黙れえええええええええ!」ブォン バシュンッ

兄魔王「おっと」ヒョイッ

魔王「よくも兎を……っあああああああ!!!!」ドドドドドッ


兄魔王「どうした? そんなに荒い攻撃をしたらこの体に傷がついてしまうかもしれんぞ?」サッ ビュンッ ザザザッ

姫「魔王様、あまり無茶をなさっては……!!」

兄魔王「それに」

魔王「っ! ぐ……っ」ジワッ……ビチャビチャ

兄魔王「その調子では治るものも治らんと思うがなあ」

魔王「ふーっ……ふーっ……」ギロッ

兄魔王「はっ、怒りに我を忘れ、過剰な魔力を無計画に放出して倒れるとは……先程の俺でももう少し頭は使っていたぞ?」

姫「魔王様……!」バッ

兄魔王「ほう……無力な人間のくせにこいつの盾となるというのか? 健気な事だ」

魔王「姫……よせ……」ゼエゼエ

姫「私にはっ……この首飾りがあります……」シャラッ


兄魔王「……確かにそれに宿っている力は弱くはない。それは認めよう」

姫「……」キッ

兄魔王「だが、確か……どれ程かは忘れたが回数制限がある」

姫「……!」

兄魔王「くく……良いぞ、その絶望に染まった表情。もっと見てみたくなる」

魔王「彼女に……手を、出すな……!」ググッ……

兄魔王「何故お前の言う事を聞く必要がある? ……そうだ、面白い事を思いついた」ニタッ

姫「!?」

兄魔王「今からその首飾りだけを狙って魔法で攻撃する事にしよう。何処までやれば壊れるか実験だ」

魔王「何だと……!?」

兄魔王「実のところ、少しだけ興味があったのだ。あの母上を傷つける程強力な力を持つそれに……良い機会だろう」


兄魔王「その間お前達の体へは一切攻撃しない……どうだ、悪い話ではないだろう?」

魔王「ふざ……けるな……! 姫を危険に晒すなど……」

姫「……わ、わかり、ました」

魔王「姫……なんと無茶な事を……!」

姫「魔王様、首飾りが持ち堪えている間にどうか腕を……」

魔王「だが……奴が約束を守るとは……!」

姫「わ、私だって……守られているばかりは嫌なのです!!」

魔王「ッ……」

姫「これで貴方の傷が少しでも癒えるなら、私は喜んでこの身を捧げましょう……さあ、おやりなさい! 私は逃げも隠れも致しませんわ!!」

兄魔王「……随分と素直だな。まあ、こちらは何時でもお前達を殺せるのだからなあ……少しでも生き永らえる方が良いだろう」

兄魔王「楽しみだ。首飾りが壊れた時……お前達が再び素晴らしい表情を見せるのが」ニヤァ

姫「……ッ」ゾクッ


兄魔王「ではさっそく一撃」ズズズ……ゴォッ

姫「っう……!」キィンッ

兄魔王「ほうほう、中々だな……ではこれはどうだ?」ボォ……ッ

姫「ぁあ……っ!」ギュッ

魔王「や、止めろ……」

兄魔王「誰が止めるか! どうだ、己が守っていた者が目の前で嬲られる様を見るのは!!」ビュンッ ブォンッ

姫「……! ……ッ!!」ブルブル

兄魔王「それそれ、どんどんいくぞ!」バリバリバリ……バシュンッ

魔王「ひ、姫……っ!」


姫「……は、はや、く……腕を……私は、大丈夫……」ガタガタ

魔王「くっ……すまない、姫……!」バッ……グイッ

兄魔王「ぎゃはははははは、本当に無様だなあ!」ゲラゲラ

兄魔王「先に首飾りが壊れるか? それともお前の腕が元通りになるか? ……結果が楽しみだよ全く」

魔王(くそっ……! 頼む左腕、元通りになってくれ……っ!!)

姫(どうか、持ち堪えてください……魔王様の腕が元に戻るまで!!)

兄魔王「ほら、まだまだいけるだろう!? あははははは……!!!!」ボ……ッ ドォンッ


――――
――

少女(……これ以上、2人に守られているばかりじゃ駄目だ)スッ ゴシゴシ

少女(今度は、私が……2人を助けなきゃ)キッ

少女(役立たずな私の、たった1つの取り柄……『お友達』を喚び出せる事)

少女(でも……今、この状況じゃ)チラッ

僧侶「そ、側近さん……頑張って、ください……!」ゼエッ……ハアッ……

戦士「僧侶、このままじゃお前の命の方が……!」

僧侶「大丈夫、です……から……」ポウッ……

少女(……何の意味もなさない。事情を知らない彼らを巻き込みたくもないし)ヒラッ


少女「! また1枚……」

少女(ああ、お友達じゃなくても良い……! どうにかして僧侶さんの助けになる誰かを喚べれば……)

少女(……っ!)ギュッ


シィ……ン


少女(……そう、だよね。第一呪文も本もないのに……何やってるんだろ)

『――ねえ、貴女』

少女「ふえっ!?」ビクッ


戦士「しょ、少女ちゃん!?」

少女「ねえ、今、私に話しかけた……?」

戦士「」フルフル

『ああ、ごめんなさい……今の私の声は貴女にしか聞こえないんですよ』

少女「え……何、これ」

『こちらは貴女だけに話しかけているのです……お困りですか? お嬢さん』

少女「……っ!」


今回は以上です。
清々しい外道の書き方がわからない……ッ!←

それにしてもどんどん世界が広がっていく……果たして全部書ききれるだろうか←
行き当たりばったりで本当にすみません。
このような作品を何時も読んで下さり、本当にありがとうございます!

おやすみなさい。


こんばんは。
更新再開です。


戦士「少女ちゃん……」

戦士(まさか、精神的に参って変な幻聴でも聞こえ始めたのか?)

戦士(無理もないよな……俺が見る限り髪飾りの花弁はもう5枚も残ってない)

戦士(ッ、また落ちた……!)ヒラリ

戦士「僧侶……」ギュッ

僧侶「まだ……まだですよ……」

戦士(……勇者達は大丈夫なのか? 魔法使いは今どこら辺にいるんだ……!?)


――――
――

魔法使い「はっ……はッ……」タタタッ

魔法使い(あの女のおっぞましい気配の残り香……これで辿れてるのが幸いね)ギョロリ

魔法使い(……それでも無駄に広いのがムカつくわね)

魔法使い(お願いだから……あたしが着くまで勇者も、お姫様も無事でいなさい!)キッ

魔法使い(それにしても……同じ城内にいるのに、転移ひとつできないなんて我ながら情けないわ)ギリッ

魔法使い(せっかく力を手に入れたのに、これじゃああの女と同……)

魔法使い(……違う、そんな事ない、あたしは強い。あたしは……アタシハ……)

魔法使い「っああああああああ……ッッッ!!!!」ダダダダッ……ゴオッ


――――
――

少女(ま、まさか……幾ら私が願ったからって都合が良過ぎるよ)

『ふふ、そんな事はありませんよ?』

少女「!?」

『ごめんなさい、少々貴女の心を読ませていただきました……ですが、これだけは信じてください』

『私は……いえ、私達は貴女が条件を揃え、真に救いを求めているからこそ』

『それに応えようと思っているのです。あの者の頼みでもありますしね』クスクス

少女(あの、それってどういう……あなたは一体誰なの?)

『……まあ! 貴女はもしや、意図せずして条件を揃えたというのですか?』

少女(?)

『これは驚きですね……ああ貴方、そんなに苛立たないで』


少女(えっと、良くわからないけれど……あなたは、私の大切な人達を助けてくれる?)

『……はい。それは約束します』

少女「!」パアアッ

戦士「?」

『ですが、そのためには……貴女に示してもらわねばなりません』

少女「示、す……?」ヒラリ

戦士(後、2枚……ッ!)ゴクッ

『自分以外の誰かのために心から救いを願い、求める……いわば魂の叫びです』

『こちらの準備が整っていても、貴女の想いが伴っていなければ意味がありませんからね』

少女「そ、それってどうすれば……」


『ただ、声高に願いなさい。貴女が助けたいと思う者のために』

『心に宿す想いのたけを、まっすぐにぶつけてきなさい』

『それが真にこちらへ届いたその時こそ……我らは貴女に応えましょう』

少女「……わかった」コクリ

『……では、貴女の願いは何ですか?』

少女「……私の、大切な人達を、助けたい」

『もっと』

戦士「少女ちゃん? 何を……」


少女「ど、どうか助けて、今苦しんでいるあの2人を……」

『まだ足りません』

少女「ずっと守ってもらってたから、今度は私が助けたいの!」

『貴女の想いはその程度ですか? やはり我が身が1番可愛いですか?』

少女「そ、そんな事ないっ!!」

戦士「頼むから、落ち着いてくれ少女ちゃん……!」オロオロ

『では、今1度願いなさい……貴女の中の誠を証明しなさい』

少女「私は……私なんかどうなっても良いから!」ヒラッ

戦士(こ、これで残りは1枚……!)

少女「どうかお願い……私の」ジワリ


――――
――

姫「……ぁっ……!」ピシッ

兄魔王「ようやくヒビが入ったか……流石に手こずらせてくれる」ワキワキ

魔王(くそっ、まだか……自分の腕なのに何故こうもままならないのだ……!)ギリッ

兄魔王「ふっ……さて。次はどうかな」ドンッ

姫「っ……う……!」ピキッ……パキンッ……

魔王(……まだ表皮しか……!! せめて魔力さえ回復すれば……っ)

兄魔王「ぎゃはっ……これで終わりだ!」カッ

姫「……ああっ!」


パァン……ッ





少女「大好きな人達を……」ツウッ……



――――
――

兄魔王「遊びは終わりだなあ……?」ニタッ

魔王「ぐぅ……ッ姫、に、逃げろ……っ」ヨロッ

兄魔王「何だ、まだ皮1枚しか繋がっていないのか……つまらん」

姫「あ、ぁ……」カタカタ

兄魔王「結果はご覧の通りだ、姫サマ……良い絶望をありがとう。お礼の残念賞だ」シュッ

姫「!」ト……ン

魔王「あッ……!?」

兄魔王「人間とは脆いな……こんなに細く小さな矢でも胸に刺されば」ニヤニヤ

姫「……っ」ガクンッ

兄魔王「簡単に逝く」

魔王「姫ぇええええええ……ッ!!!!」ガシッ……ドサッ





少女「助けて……っ!!!!」ポタ……ッ



『――その想い、確かに受け取りました』


――フワリ……トンッ 


――――
――

戦士「な、何だ……!?」

戦士(その時目の前で見た光景を、俺は恐らく一生忘れられないだろう)

戦士(少女ちゃんが叫ぶと同時に、落ちていた花弁が一斉に宙に浮いて……彼女の周りをくるくる回り始めた)

戦士(何時の間にか、その後ろには髪も服も真っ白な女がいて)

戦士(自分より背の高い少女ちゃんを抱きしめていた)

戦士(まるで泣いている赤ん坊をあやすような……穏やかな笑顔で――)


今回はここまでです。

おやすみなさい。


こんばんは。

続きを投下します。


?「やっと呼んでくれましたね。何年ぶりの地上でしょう……」

少女「……」ガクンッ

?「おっと……先に願いを叶えましょうか。本当はいけないのですが、今回はそうも言ってはいられません」ギュッ

?「少しだけ、花弁達と待っていてくださいね? ……すぐに終わらせますから」ストンッ スタスタ

僧侶「まだ……まだ……っ」ポタポタ……

?「……私に気がつかない程、必死なのですね」スッ……ポウッ

僧侶「……ッ!」パッ

?「貴女ももう、休んで良いのですよ……今まで良く頑張りました」ギュッ

僧侶「! ……あ……ああ……貴女、は……ッ!」ブルブル


?「待っていてください、こちらが終わったら貴女もすぐ……」

僧侶「わ、わた、私はっ……私は夢をっ……見ているの、ですか……!?」パチパチ

?「ふふっ。もしも夢ならば、貴女の手の痛みはどうなるのです?」

僧侶「ッ! ああ、あ、ではやはり……貴女は……!」ポロポロ

?「……『主の傍に侍りて、我らは世界を何時も見守っている』」

僧侶「う、ぁ……あああ、ッ……神よ……感謝します……」ポタ……ポタ……

僧侶「……嗚呼、信じて……良かっ……」ガクリ

戦士「そ、僧侶! しっかりしろ!」ガシッ

?「大丈夫、気を失っているだけです。今まで張り詰めていたものが緩んだのでしょうね」ポゥッ……


戦士「あ……あんた何者だよ。どうしてそんなに落ち着いていられるんだ!?」

?「……そうですね、この者が目を覚ましたら訊いてみると良いでしょう」

戦士「とぼけるなよ! まあ、見る限り魔物じゃねえみてえだが……」

?「ええ、私は……あの子の願いによって召喚されたしがない召喚獣です。白獣とでも呼んでください」チラッ

戦士「召喚獣って……でもあんた、俺の目がおかしくなければ女の姿を……」マジマジ

白獣「これが私の生前の姿ですからね。勿論、召喚獣としての姿にもなれますが」

戦士「生、前……?」キョトン

白獣「ふふ、こちらの話ですよ……はい、終わりました」スッ

戦士「! 傷が……あんなに流れていた血も消えてる……」

白獣「心臓も元通り動き始めている筈です。確認は……あの子にしてもらいましょう」クルリ

少女「……」


戦士「えっ!? あれ、なんで……」

白獣「簡単な事です。贈り主の命と共に散るのなら……」

少女「……あ」スッ……ペタペタ

少女(髪飾りが……元に戻ってる……!)

白獣「まあ、あれは私が元に戻したんですけどね」クスッ

戦士「おい」

白獣「ですが、贈り主の命が助かった事には変わりありませんよ?」

少女「……」コツ……コツッ……

白獣「お嬢さん、貴女のお名前は?」

少女「……少女」コツンッ……


白獣「では少女さん。髪飾りを外しなさい」

少女「……」スッ……サラッ

白獣「これで……正式に契約は結ばれました」ス……バサッ

少女「!」

戦士「なっ……少女ちゃんの髪が一気に短く……!」

白獣「私達は、召喚主である乙女の髪を代償に力を行使します。今回は順番が逆になってしまいましたが」

白獣「少女さん、意図的ではなかったとはいえ、こちらは貴女の求めに応じて力を示しました……よろしかったですね?」

少女「……」コクリ

白獣「では、私の力を確認なさい」ササッ

少女「……」スッ……ピトッ

側近「」トクン……トクン……


少女「! ……動いて、る……あったかい……」ジワッ

白獣「ふふ、それは良かった。ですが、安心するのはまだ早いですよ?」

少女「……え?」

白獣「幾ら肉体が生きていても、目を覚まして動き始めなければ意味がありません」

戦士「おい、何だよそれ……!」

白獣「この者の肉体にはまだ……心が戻っていません」

少女「!」

戦士「そんな……」

白獣「ですから少女さん、貴女がそれを呼び起こすのです」ジッ

少女「私が……?」

白獣「私は傷は治せても、心までは戻せません。ただ、その手助けはできますがね」


少女「……」

白獣「少し苦しい思いをするでしょうが……どうしますか?」

少女「も、勿論やる!」グッ

白獣「では、この者のすぐ隣に横になってください」

少女「は……はい……」スッ……ピタッ

白獣「その手を繋いで……しっかりと、離れぬように」

少女「……」ギュッ

白獣「後は目を閉じて、この者の事だけをひたすら強く想いなさい」ナデナデ

少女「ん……側近さん……」

少女(待ってて、ね……今、行くか……ら……)スウッ……


白獣「……ここからは先は貴女次第。心の導くままにおやりなさい……そうすれば、きっと……」

白獣(なんたって貴女は私の……嗚呼、許されたと勘違いしてしまいそうですね)

戦士「なあ、1つ訊いて良いか?」

白獣「! ……ええ、答えられる範囲なら。その前にこの者の治療をさせてください」サッ……ポウッ

戦士「あ、そ、そうだな……僧侶、大丈夫なのか」

白獣「こちらは手と心身の消耗以外は目立った外傷もありませんから、じきに目を覚ますでしょう」

戦士「そっか」ホッ

白獣「では改めて、貴方の質問に答えましょう」ニコッ

戦士「……俺の聞き間違えじゃなければ」

白獣「はい」

戦士「あんた……さっき『私達』って言ったよな」

白獣「……」


戦士「俺は馬鹿だし、勇者や魔法使いみたいに魔法も使えねーが、その分体の能力は人並み以上だからな。あ、誤魔化すのはナシな」

白獣「……確かに、言いましたね」

戦士「じゃあ、そいつは今何処にいるんだ?」

白獣「……普段は私が来るだけで事足りるんですがね」

戦士「?」

白獣「今回は極めて稀なケースですから」

戦士「ま、待ってくれ、言っている意味が……」

白獣「ああ、ごめんなさい。貴方の求める答えになっていませんでしたね」クスクス

戦士(美人だけど、ちょっと苦手なタイプかもな……)


白獣「あの方は……私の大切な『半身』は、別の場所にいます」

戦士「別の場所って……」

白獣「少女さんにとって特別な、『もう1人』の所ですよ。今、あそこに必要なのは私よりもあの方ですから」

白獣(ちゃんと加減、してくださいね……?)

――――
――

謁見の間

勇者(兄魔王)「……何だお前は」

?「……」グルルル

魔王「あ……ぇ……?」


魔王(この黒い獣……魔物か? 一体何処から現われたんだ!?)

魔王(全身から尋常でない力を感じるが、何故か恐ろしいと思わない……)

魔王(ってそれよりも姫だ! どうすれば助けられる!? 腕も再び取れて……)

兄魔王「おい、聞いているのか?」イラッ

?「黙れ寄生虫が」

兄魔王「……あ?」ピクッ

魔王「!?」ポカン

?「それ以上気持ち悪い声を出すんじゃない……吐き気がする」フンッ

兄魔王「……ッッッ!」ヒクヒク


?「……おい、こいつは殺して良いのか?」クルリ

魔王「え? ちょ、ちょっと待て、意味が……!」

?「大変不本意だが、契約によりお前達を助けてやると言っているんだ。さっさと理解しろ蕩け脳味噌」

魔王「と、とろけのうみそ……」ガーン

魔王(って落ち込むな魔王! それより契約とは何だ……? とりあえず敵ではないという事か?)

兄魔王「ほう……獣の分際でこの俺を侮辱するのか……」

?「ふん、中途半端な紅獅子頭が言えた義理ではないだろうが。偉そうにするな」

兄魔王「~~~ッ!」ビキィッ

魔王「……知っているのか? 奴の本性を」

?「当たり前だ。私を誰だと思っている」


魔王「……だ、誰だ?」

?「不勉強な奴だな……とりあえず私の事は黒獣と呼べ」

魔王(黒獣……はて、何処かで似た名前を見た覚えがあるような……)

黒獣「さて、私は今機嫌が悪い。とっとと終わらせるぞ」ザッザッ

魔王「ま、待ってくれ、姫が……胸に矢を受けているのだ……!」オロオロ

黒獣「……」ジッ

魔王「頼む、まずは姫の命を……」

黒獣「……お前の目は蓮根か?」

魔王「レンコン……!?」

黒獣「それで魔王とはちゃんちゃらおかしい事だ」

魔王「な、何が言いたいのだ……こ、黒獣よ」


黒獣「そいつの胸元を肌蹴させて……良く見てみろ。躊躇うと噛むぞ」キラッ

魔王「え? あ……す、すまない姫」スッ……グイッ

兄魔王「! な、に……」

魔王「これは……!」

黒獣「……どうやらそいつは、まだ死する運命ではないらしいぞ」

兄魔王(もう1つの……首飾りだと……ッ!?)ワナワナ

姫「ん……」ガラッ……カランッ

魔王「あ、あ……良かった……本当に」ジワッ

魔王(姫の弟君……ありがとう……)


黒獣「……落ち着いたか?」

魔王「! ……ああ。お陰様でな」ゴシゴシ

黒獣「ならばさっさとそいつを隅へ置いてこい。足手まといだ……私は先にこいつと遊んでいるぞ」ギロッ

魔王「……貴方が何者なのかはこの際置いておこう。今はとにかく感謝する」ザッザッ

黒獣「……早く行け。でないと勢い余って殺してしまうかもしれんぞ」

兄魔王「お前達、良い度胸だなあ……この俺を差し置いて!」ダンッ

黒獣「……おい、こいつは脳筋か? 私の力量がわからんとは……」

魔王「!」ブフォッ

黒獣「こういう小物が大物ぶっている光景程、滑稽なものはないな」プッ

兄魔王「」ブチッ

黒獣「いかんいかん、不覚にも笑ってしまった」

兄魔王「……そんなに早くあの世へ逝きたいなら望み通りにしてやろう!!!!」チャキッ

黒獣「ふん……できるものならやってみろ」ニィッ


今回はここまでです。

ようやく中盤を過ぎた、か?←
以前のようにとはいかずとも、少しずつでも更新頻度を上げられたら良いのですが……。
これ位でも大丈夫ですかね?

おやすみなさい。


こんばんは。
少し間が開きましたが再開です。

あ、妖精ログインはもうしばらくお待ちください(笑)
……薄々感じていたけど、妖精大人気ですね←


魔王「……と、やはり片腕では抱えにくいな」ヨロ……ヨロ……

魔王(何故だろう。得体の知れない獣を無意識のうちに信頼している自分がいる……)

魔王「ふう、ここならば大丈夫か。姫、少々荒っぽく扱ってしまった事を許してくれ」スッ……

魔王「……そして、勝手ながらそなたにはしばらくこれを預かっていてほしい」ゴソッ……コテン

魔王(流石に腕は置いてはいけないが……兎なら大丈夫だろう)

姫「……ごめんなさぃ……まお……さま……」ポロ……ポロ……

魔王「……」ナデナデ

魔王「首飾りも一緒に置いて……と。黒獣、待たせてすま」クルリ

黒獣「……」ドスッ ズドンッ

兄魔王「ぐっ……!」ビタンッ ズザザザザ……ッ

魔王「……ないな……」


黒獣「遅いぞのろまめ」ギロッ

魔王(圧倒している……だと……!?)

魔王「あ……こ、黒獣、できればもう少し手加減を……」

黒獣「何故だ? こいつはお前の敵なのではないのか?」ガブッ ブンブン

兄魔王「う、がッ……は……っ」ビタンッビタンッ

魔王「頼むから咥えて振り回すのは止めてやってくれ……私がどうにかしたいのはあくまで中身だけだ」

黒獣「……ふん。甘い奴だ」ブンッ

兄魔王「」ドサ……

魔王「……良かった。あんなに叩きつけられた割には外傷は少ないな」ホッ

黒獣「流石勇者と言った所か」フンッ

魔王「……何処まで知っているのだ貴方は」

黒獣「お前に言う必要はない」プイッ


兄魔王「くそっ……何なんだお前はッ……! 何故それ程までの力を……」ギロッ

黒獣「今更気付いたのか間抜けが……そういう存在だからに決まっているだろう。少なくともお前を軽く超える程度の力は持っているぞ」

魔・兄「!」

黒獣「嗚呼、言っておくが私を乗っ取ろうなどとは考えない方が良い。お前の方が消滅するからな」

兄魔王「ッ……!」ギリ……ッ

黒獣「ところでお前」クルリ

魔王「え?」

黒獣「何時までそれを未練たらしく持っている」カプッ

魔王「あっ」

黒獣「どうせくっつかないのなら持っていても邪魔なだけだろうが」ポイッ……ゴトン

魔王「わ、私の腕が……!」


黒獣「……後で白娘に治してもらえば良い。本当はさせたくないが」ボソッ

魔王「白……娘?」

黒獣「! ……今はこいつをどうにかするんだろうが」ノソッ

魔王「それはそうだが……」

魔王(白い娘に……黒獣……もしや……)

黒獣「どうした。平和ボケした面がますます際立っているぞ」

魔王「……そうか。貴方の正体は……」

ガチャッ

魔法使い「はあっ……はあっ……やっと着いた……」ゼエゼエ


黒獣「……何だこのちんちくりんは」

魔王「! お前は確か……魔法使いだったか?」

魔法使い「気安く、呼ぶなっ……それより勇者と……お姫様、は……無事、なんでしょうね……?」ギロリ

魔王「あ、ああ……姫ならあそこに」スッ

魔法使い「……どうやら無事みたいね。で、勇者は……」チラッ

黒獣「……倒れているな。何時の間にか」ツンツン

魔王「!」

魔法使い「勇者っ!」タタタッ

魔王「で、では奴は出ていったのか……? 何故……」

魔法使い「しっかりしなさいよっ……勇者ぁ……!」ギュウッ


黒獣「ぎゃあぎゃあ喚くな。手加減は(多分)したから気を失っているだけだろう」

魔王(多分……)

魔法使い「ゆ、勇者にもしもの事があったら……絶対に許さないからっ……!」ギョロンッ

黒獣「……全く、幼児体型な魔改造小娘は良く吠えるな」フッ

魔法使い「うるさい、人が密かに気にしてる事を言うんじゃないわよ! ……って何この喋る獣!!」ビクッ

魔王「い、今更気付いたのか……!?」

魔法使い「でもこの気配は……まさかあの女、本当に召喚したの……!?」マジマジ

魔王「え? ……召喚?」

魔法使い「……いや、条件を揃えていても早過ぎる……それに僧侶の言葉が正しければ、喚べるのは一方だけじゃ……」ブツブツ

魔王「お、おーい、あの女とは少女の事か? この黒獣は少女が喚んだのか?」

魔法使い「黙りなさい。でないと今すぐありったけの攻撃魔法をぶちかます」ギンッ

魔王「……」シュン


黒獣「……私は白娘の所へ行く」クルリ

魔王「……その、白娘とやらもここに喚ばれているのか?」

黒獣「気安く呼ぶな。彼女をその名で呼んで良いのは私だけだ」ギロリ

魔王「ッ……」ゾクッ

黒獣「先程呟いた分には目を瞑るが……これ以上は許さん」

魔王「で、では何と呼べば?」

黒獣「……白獣。または……『白神獣』」

魔王「! ならばやはり貴方は……」

黒獣「話は後だ。もう行く」タンッ……

魔王「あっ……」

黒獣「……目的地はお前と一緒の筈だ。あまり遅れるなよ」ダダダダダッ

魔王「……行ってしまった」


魔王(一先ず私も行くか。ほんの少しだが魔力も戻って来た……私と)チラッ

姫「……」

魔王(姫だけならばどうにか転移できるか?)コツッ……コツッ……

勇者「……」グタッ

魔法使い「勇者……」

魔王(……あちらはしばらく放っておいた方が良さそうだな……ん?)キョロキョロ

魔王(おかしいな、確かこの辺にあった筈なのに……何処に消えたんだ?)


――――
――

少女(……)パチッ

少女(ここは……そうだ、側近さんの心を取り戻すために私……!)フワフワ

少女(って事は今いる空間は……側近さんの中、なのかな……)

少女(うーん……真っ暗で何も見えな……え?)サラッ ペタペタ

少女(さっき白獣さんに切られた筈の髪が戻ってる……なんで?)

少女(髪飾りもつけてるし……ここでは何時もの私に近い姿になるのかな)

少女(ってこうしてる場合じゃないよ!)ブンブン

少女(とにかく進まないと……えっと、こっちかな?)フワフワ


『……ぁ』

少女(! 今、何か聞こえた)

『ゃ……やめ……』

少女(あっち……? とりあえず行ってみよう)スーッ……

『うぁ……おね、が……やだ……』

少女(光が……声も大きくなってるし、あれを目指せば良いの?)

少女(声もどんどん大きくなって――)

『止めて、もう止め……あああぁぁぁあああああァァァッッッ!!!!』

少女(……え……?)

すみません、>>241訂正です。


『……ぁ』

少女(! 今、何か聞こえた)

『ゃ……やめ……』

少女(あっち……? とりあえず行ってみよう)スーッ……

『うぁ……おね、が……やだ……』

少女(光が……! あれを目指せば良いの?)

少女(声もどんどん大きくなって――)

『止めて、もう止め……あああぁぁぁあああああァァァッッッ!!!!』

少女(……え……?)


『もう、五月蠅いわねぇ……たかが全身の骨を砕いた位で』

『ふふっ、それともこの前みたいに首をもいで、ボールみたいに蹴ってあげた方が良い?』クスクス

『あがッ……ぁ……』ビクッ……ビクッ……

『心臓にさえ手を出さなければ何やっても死なないんだからなあ……凄いよな、俺達の体は』

少女(……これ、は……何……?)カタカタ……ギュウッ

少女(3人が、1人に……寄ってたかっ、て……)

少女(……なんて酷い……!)ジワッ

『ぎゃはっ。ほら、続けるぞ』グイッ

『ぎぃッ……!』

『次は私よ~……せー、のっ』グチュ……ッ

『ひっ……ぎゃあああああああああっ!!!!』


少女(……それに、良く見たら……)

『ひぐっ……あああぁぁぁぁああああああっ!!!!』

『相変わらず叫び声だけはご立派ね♪』

少女(背も風貌も、私とあまり変わらない位になってるけど……)ガタガタ

少女(間違いない……痛めつけられてるあの人は……)

『う、うぇぇっ……ゲホッ……』ビチャッ

『また吐くのぉ? あんたも飽きないわね……』

少女(側近、さん……!)ポロポロ


少女(じゃあこれは……側近さんの過去……?)

『ねえ、そろそろこの子に拘束魔法をかけ続けるのも疲れてきたんだけど……夜ももう遅いし』フアァ……

『それもそうねぇ。あたしも防音魔法かけ続けるの飽きちゃったあ……兄上?』

『ちっ、今日も駄目だったか……おい』グイッ

『ぅ……っ』

『この事をあいつにバラせばどうなるか……わかっているな?』

『……ァ……ッ』コク……

少女(あいつって……魔王様の事?)

『ね、自分をこんな目に遭わせるあたし達が憎いでしょ? 殺してやりたいでしょ?』

『早くこっちに来なさいよ……あんたはあたし達と同じ、魔王の子供なんだからあ』

『生まれながらにあの出来損ないと同じ欠陥を抱えているなんて……本当に可哀想』


『でも大丈夫よ。これからも姉上達がこうやって……』ニィッ

『矯正に協力してあげるからねぇ』ニヤァ

少女(側近さん、魔王様の知らない所で……こんな……!)ガクガク

『全く、お前にはさっさと覚醒してもらわないと困るんだよ……末子だろ? これ以上手間をかけさせるな』

少女(末子……?)

『今のあんたを食べてもその力が手に入らないのはもどかしいわね……まあ、下ごしらえも楽しいから良いけど』

『何言ってるの? この子を食べるのはあたしよお?』

『はあ? あたしでしょ』ギロッ

『おい、もう休みたいんじゃなかったのか。さっさと行くぞ』クルッ

『……ちっ。わかってるわよ』タタタッ

『じゃあ、続きはまた明日ねぇ~』スタスタ

『ふん。魔王の子でありながら力を拒むとは……本当に愚かな奴だ』バタンッ


『……』

少女(そ……側近さん……)ボロボロ

『……うう』ジクッ……ボコッ ボコッ

少女(! 体が……少しずつ再生してる?)

『ぐ……あ……』

少女(これが過去の事なら、私には何も……こんなに苦しんでいるのに)ギュッ

『……しい』

少女(え?)

『苦しい……モういやだ……』ドクンッ……ブワッ

少女(!)ゾクッ

『こンナ事が、毎晩続く位なラ……』ズズズッ……

少女(何……? 側近さんの様子が……あの黒い靄は一体……)ブルッ


『あニうえ……ゴメん、ナさ……い……』グルルルル……

少女(! そんな……駄目だよ側近さん……)

『僕ハ弱いカら……モウ……』ブツブツ

少女(何故こう思うのか、わからないけど……)

少女(それ以上は……駄目ッ……戻れなくなる!!)フワッ タタタッ

少女「側近さん!!」ギュウッ

『……え……!?』ポカン

少女(! さわ、れた……? さっきまで見ている事しかできなかったのに)

『き、君は……? 一体、何処から……』キョロキョロ


少女(……考えるのは後。せっかく側近さんにも私が見えてるんだもの)

少女(それで私にできる事をするのが先だよ……『心の導くまま』に)グッ

少女「……」ギュ……ッ

『わわっ、何……!? は、放して……っ』アワアワ

少女「駄目。しばらくこのままで……ね?」ナデナデ

『うひゃあっ! あ、あ……顔に柔らかいものがっ……ふああああ……!』カアッ

少女(……昔の側近さん、ちょっと可愛いかも)クスッ

『ど、どうしてこんな……って駄目だ!』グイッ

少女「……え?」


『き、君がその……どうして僕にこんな事をするのかわからないけど……』ドキドキ

少女「あ……ごめんね。やっぱり嫌だったよね……?」

『あああそうじゃなくて! そ、そりゃあ確かに最初はびっくりしたけどさ……』

『今は寧ろもっと……って何言ってるんだ僕は! そうじゃなくて!』ブンブン

少女「?」

『……僕の血がついて……君まで汚れちゃう、から』

少女「! ……やっぱり、貴方は優しいね」

『えっ?』

少女「……じゃあ、これだけ聞いて?」ジッ

『わっ、ち、近いよ……!』


少女「今は、辛い事ばかりかもしれないけれど……どうか、希望を持って」

少女「ずっと未来で……待ってる、から」ニコッ

『!? それってどういう……ッ!』ドクンッ

少女「……あれ?」サラサラ……

『あ……』ドクン……ドクン……

少女(私の体が透けていってる……)

『……ッ!』ググッ……グググッ

少女(これで、良かったのかな……?)

『……ふう……そうか。そういう事か』ギュッ……


少女「わぷっ……え?」ポカン

『あの時の女の子はお前だったんだな……少女』

少女「あ……なんで……」

『何故今まで忘れていたんだろうな……』ナデナデ

少女(何時もの、側近さんの姿だ……!)

『お前にこうして救われるのは、2度目だよ』

少女「え、それってどういう……!」サラサラ……フワッ



――パアアッ……



――――
――

少女「……」パチッ

少女「……あ……!」ガバッ ペタペタ

少女(戻って、来たんだ……側近さんは!?)グルンッ

側近「……っ」パ チ……ッ

少女「!」

側近「……しょう、じょ……」

少女「あ……」ジワッ

側近「どうやら、お前を……悲しませて、しまった……ようだな」スッ

少女「うっ……ううっ……」ギュウッ ポタッ……ポタリ

側近「その……伝えるべき事は色々とあるが。とりあえず……ただいま、少女」

少女「……あ、あ……うわあああああああん!!!!」ボロボロ


とりあえず、今回は以上です。
今週中に再び更新できれば良いな←

それにしても戦闘って本当に難しいですね……。

おやすみなさい。


こんばんは。
前回一気に進めたので、一時的に気持ちが燃え尽きておりました(笑)

短いですが更新します。


側近「……」ナデナデ

少女「ひっく……ぅあ……っ……」ポロポロ

側近「……髪」スッ

少女「!」

側近「……あの、髪飾りが……とても、映えていたのに」

少女「そんなの……別にどうでも良いよ……側近さんが、助かったから」

側近「良く、ない……髪は女の……命、だぞ……」

少女「馬鹿っ! 側近さんの命の方が大事だよ……!」ポカッ

側近「ッ……」

少女「馬鹿……側近さんのばかっ……!」ポカッ ポカッ

側近「……少女」


少女「うう……ばかあっ……」ポカッ……ポカッ……

側近「……それ以上は、傷に障る」

少女「え!? まだ何処か痛むの!?」バッ

側近「……冗談だ」

少女「! 側近さん……」ジトッ

側近「す、すまない……正直、まだ実感が湧かないのかもしれん」

少女「あ……」

側近「死ぬ一歩手前だったのは、間違いないからな……あっちで、母上と妙な死神にも会った」

少女「えっ!?」

側近「お前の事を知っているようだったが……心当たりはないか?」


少女(もしかして……)

側近「少女……?」ジッ

少女「……さあねー」ギュウッ

側近「!」

少女「とにかく、側近さんが目を覚ましてくれて……本当に良かった」

側近「少女……」

少女「さっきは言えなかったけど……おかえり、側近さん」ニコッ

側近「……ああ」

戦士「あの~……お2人さん? 感動の再会に水を差しちまって本っ当に悪いんだが」

側・少「!」バッ


戦士「落ち着いたら、ちょっとあれをどうにかしてくれねえか?」クイッ

少女「……あ、そうそう。あの僧侶さんと、白獣さんっていう女の人が助けてくれたんだよ?」

側近「あ、ああ……ってどういう状況だあれは」ムクッ

戦士「僧侶の奴、目を覚ましてからずっとあの調子なんだよ……」

白獣「そ、僧侶さん……そろそろ頭を上げてください」オロオロ

僧侶「……いいえ、それはできません」

僧侶「貴女様は神と同じく我が教会の信仰対象です。しかもそのような御方に畏れ多くも傷を癒して頂き……何故平伏せずにおられましょうか」

白獣「そんな、私は主から一時的に力をお預かりしている身に過ぎませんよ……?」

僧侶「それでも、貴女方のお陰で私は……」


少女「僧侶さん……もう傷は大丈夫?」タタッ

僧侶「! その声は少女さん! ということは側近さんも気が付かれたのですか!?」バッ

少女「うん、お陰様でね。さっきは本当にありがとう……手、痛かったよね?」ジワッ

僧侶「あああ少女さん、私は大丈夫ですし大した事は……!」アワアワ

白獣「ふふ、ようやく立ち上がってくれましたね。安心しました」ニコニコ

僧侶「あ……!」

少女「そ、そうだ、白獣さんもありがとう! 2人がいなかったら私……!!」ガバッ

白獣「私はただ、貴女に喚ばれて為すべき事をしたまでです。それに……」

少女「?」


白獣「貴女が礼を言うべき相手は私ではありません。そもそも私達がこれ程早く来られたのも、あの者あってこそ……」スッ

僧侶「そう言えば……少し不思議に思ってたんです。本来はもう少し時間がかかる筈ですよね? あ、勿論少女さんの起こす奇跡を信じていなかった訳ではありませんよ!?」

少女「時間がかかる……? あの、者……?」

白獣「……お出でなさい」パアアッ……

少女「……え!?」

僧侶「まあっ」

戦士「うおっ!?」ビクッ

側近「どういう、事だ……? 何故……」

白獣「我らが親愛なる……小さき勇者」

妖精「……♪」パタパタ

少女「妖精さん……どうして?」パチパチ


今回は以上です。
進む時と進まない時の差が激し過ぎる……!

おやすみなさい。


こんばんは。
妖精よ、お前は一体何なんだ?←

てなわけで更新再開です。


白獣「順を追って説明していきますね。まずはご存じでない方のために私の自己紹介から」スッ

側近「……俺の心臓を治した力や僧侶の反応を見る限り、貴女は……」

白獣「ええ。私は……主である神の御許に侍りし神獣の片割れです」

少女「神、獣……」

側近「少女、少し前にお前にせがまれて読み聞かせただろう? 都の教会に伝わる伝説を」

少女「うん」

側近「その中に登場する『しょうじょ』が……この方だ」

少女「……え?」

白獣「ふふ、私達の事がどう書かれているのか少し気になりますね。機会があれば見せてもらえますか?」

僧侶「よ、よ、喜んで!」


少女「で、でも側近さん、信じられないよ……そんな人(?)が目の前にいるなんて」

側近「……お前は冒頭の伝説しか知らないだろうが、聖書にはこう記されている」

側近「『白き神獣は生き物の負うあらゆる傷や病を癒し、また壊れた物をも復元させる』……とな」

僧侶「じ、実は教会の中に神獣様方の像もあるんですが……」ドキドキ

白獣「まあ、そうなんですか?」ニコニコ

少女「それって……」

側近「簡単に言えば、死んでさえいなければどんな傷や病気でも治せるという事だ」

少女「じゃあ、本当に……?」

側近「ああ。だがそのようなとんでもない力を持つ存在だ……容易に喚ぶ事が出来ないという事はわかるな?」

少女「う、うん……」


側近「そこで……神獣の力を求める者に対して、神によりある一定の召喚条件が設けられたとされている」

少女「条件……」

側近「その最たる物が……」

僧侶「少女さんのその髪飾りですっ!」ビシッ

少女「!?」

僧侶「あ、す、すみません! 教会の者としてつい……」

側近「……引き続き、任せても? その間俺はこいつをどうにかする」

戦士「」チーン

白獣「あらあら……」

少女「せ、戦士さん!?」

側近「大方、話についていけずに思考を停止してしまったという所か」


僧侶「戦士さんは聖書を読んでませんからね……では改めて」ゴホン

僧侶「その髪飾りが、贈り主にとって最も大切に思っている人に贈られる物だという事はご存知ですか?」

少女「うん」

僧侶「では、贈られた方の義務は?」

少女「それも……大丈夫」

僧侶「良かった……実はそれ、意外と売れないんですよね。他の品は結構売れるのに……」ブツブツ

少女「そうなの?」

僧侶「ええ。それは誓いの証であると同時に魔具でもありますから」

少女「あ……」

僧侶「魔力によって積年の想いと共に成長していく花……人によっては不気味に感じられるでしょうね」

少女「……そういうものなのかな? 私は素敵だと思うけど」

僧侶「ありがとうございます。そう言っていただけるだけで教会の者として喜ばしく思います」ニコッ


妖精「……」グイグイ

側近「小妖精。戦士の髪をそんなに引っ張っては……」

妖精「!」ベーッ

側近「……」ピキッ

白獣「ふふ、お話に聞いた通りとても仲が良いんですね」ニコニコ

側近「いや、全然」

妖精「~~~!」キーキー

僧侶「……そして髪飾りに込められた魔力には、花の成長の他にもう1つの役割があります」

少女「それがあの……白獣さんを喚ぶ事?」

僧侶「はい。ですが側近さんが仰ったように、召喚のために更に幾つかの条件があるんですよ」


少女「……結構複雑だね」

僧侶「本当に特別な存在ですからね……どれ程力ある魔術師でもこれを満たさない限り召喚できません」

少女「でも私、心当たりないなあ……何か凄い事をしたわけでもないのに」

僧侶「少女さんに心当たりがなくとも、条件を満たしていた事は事実ですよ」

少女「うーん……一応、それを教えてもらえる?」

僧侶「わかりました。まず、少しでも『成長』した髪飾りを持っている事」

僧侶「次に、髪飾りで纏められる位髪を伸ばしている事。聖書で神獣の伝説を知り、彼らの気持ちに少なからず共感している事」

僧侶「ああ、聖書以外の書物で神獣の存在を確認するというのもありますね。そして最後に……」

僧侶「ただ純粋に、大切な人を救いたいという気持ちを持っている事」

少女「……!」


僧侶「どうですか? 心当たりはありましたか?」

少女(……ああ、そうだ……貰った髪飾りをつけたくて髪を伸ばして)

少女(聖書の伝説は、側近さんに読んでもらって……)

少女(死神さんの本を探している時に、偶然見つけた本にその姿を見つけて……!)

少女(全部、全部繋がっていた……! この日を迎えるために)

僧侶「偶然と必然は紙一重……まさに神の御導きだと私は思いますよ。そしてそれを更に強固にしたのが」チラッ

妖精「」ペチンペチン

側近「小妖精、いい加減にしろ……!」

白獣「ふふっ……」クスクス

僧侶「……あの、小妖精ではないでしょうか」


少女「妖精さん……」

妖精「!」パタパタパタ……ピトッ

側近「ッ、おい……!」

白獣「まあまあ、今はこの者を正気に戻すのが先でしょう?」

側近「それはそうだが……」

少女「ねえ、妖精さんは知ってたの? こうなる事を」ナデナデ

妖精「……?」スリスリ

側近「とぼけおって……」ミシミシ

戦士「」ブクブク

白獣「側近さん、そんな事をしてはその者の魂が離れてしまいますよ」

黒獣「白娘えええええええ!!!!」バタンッ

『!?』


白獣「貴方! お勤めお疲れ様です」パアアッ

黒獣「お前……またその姿になっているのか! 何故主から賜った姿にならないんだ!?」ガバッ

白獣「だって、この方が相手もリラックスしてくれますし」

黒獣「私の気も知らないで……ッ! お前のその姿を見る男は私だけで良いのに!!」スリスリ

白獣「ん……もう、貴方ったら、人前でそんな……あ」

少女「わ……!」ポカン

妖精「……」ケッ

側近「」……ポロッ

戦士「」ドサッ ゴツン

僧侶「く、く、黒神獣様……!? まさかお二方が揃われるなんて……」

僧侶(しかも白神獣様との生いちゃつきまで……もう、死んでも良い)ハァハァ……ジュルリ


少女「あ、の……僧侶さん?」

僧侶「……はっ! な、何でしょう少女さん」ゴシゴシ

少女「白獣さんとじゃれ合ってる(?)あの真っ黒な獣って……」

僧侶「……ええ。白神獣様の半身たる黒神獣様であらせられます。伝説の中の『まもの』ですよ」

少女(『まもの』……)ジッ

黒獣「……」ギロリ

少女「!?」ビクッ

黒獣「……厚顔無恥にも程がある。白娘にあのような仕打ちをしておいて」ボソッ

白獣「黒様、お止めになって。この者は何も知らないのですから」

黒獣「だが……!」

白獣「黒様」ジッ

黒獣「ッ、ぐ……」ペタン

白獣「ふふ、わかってくださって嬉しいですよ」ナデナデ

僧侶(お二方の間の呼び名……萌えますねえええええ!!!!)グッ


少女「あの、白獣さん……今大丈夫?」オズオズ

白獣「はい、何でしょう?」

少女「妖精さんとは、どういう繋がりが……? 凄く気になるんだけど」

白獣「! そうでしたね。すっかり言いそびれてしまっていました」ポン

黒獣「……」プイッ

妖精「」パタパタ

白獣「とは言っても、特別な事は何もないんですけどね。住む世界だって同じですし……ね?」ツンツン

妖精「」コクン

少女「え、そうなの?」

僧侶「あ、聞いた事があります……神獣様方が住まう場所は、他の召喚獣達と同じく異界だと」

白獣「あそこだとこの姿は目立つので、あの方と同じく神獣の姿でいる事が多いですね」


少女「で、でも妖精さん、何時の間に……長い間ずっとここにいたでしょ?」

妖精「」チッチッチ

白獣「ふふ……少女さん、この者はきちんと帰っていましたよ? 自身の故郷へ」

少女「う、嘘……一体何時?」

白獣「この者が眠っている時です」

少女「眠っている時って……」

白獣「召喚獣は本来、長時間この世界へいる事はできません。空気の質が根本から違いますからね」

白獣「私達のような存在でもない限り、無理にこちらへ留まろうとすれば強制的に還されます」

少女「そんな……!」

白獣「その者はそうなる事を防ぐために、就寝時に一時的に精神のみを異界へ還していたのですよ」

少女「……そうだったの? 妖精さん」


白獣「まあ、私達が関わりを持ったのはそれよりも前の事ですけど」クスッ

少女「?」

白獣「少女さん、貴女にとってこの者は、生まれて初めて召喚した特別な存在ですよね?」

少女「うん。その時はすぐに還されちゃったけどね」

妖精「」プクーッ

白獣「あらあら、まだご立腹なんですねえ……」ヨシヨシ

少女「それから1年近く会えなかったからね……今、こうして一緒にいられて嬉しいよ」

妖精「!」ニコーッ

白獣「ふふ、貴方も同じ気持ちなんですねえ……あの時手助けした甲斐がありました」

少女「え?」

白獣「少女さんはこの者と再会した時、丁度あの方からこの髪飾りを贈られたでしょう?」

少女「あ……」


白獣「実はその時、異界からそれを通してそちらへ送り出したんですよ。初めての試みでしたが、成功して良かった」

少女「!」

妖精「」ウンウン

白獣「……思えば、異界の湖のほとりでしょんぼりしている貴方を見かけたのが始まりでしたね」

白獣「会う度にお話を聞くうちに、力になってあげたくなって……私の『半身』からは良い顔はされませんでしたけど」

白獣「異界の水鏡で幼い少女さん達を見つけて……時折共にそれを眺め」

白獣「……あの日、物は試しと思い切ってお花と一緒に送り出しました」ニッコリ

僧侶「白神獣様……そのようなお力もお持ちで……!?」

白獣「自分でもできるとは思わなかったんですよ? ……その後も、会うたびに少女さん達のお話をたくさん聞きました」

白獣「時にはお花も持たせてやりました……するとある時から、1つの頼み事をされるようになりました」

白獣「それが、私達がここにいる事に繋がります」スッ


少女「……」ジワッ

白獣「少女さん……自分の大切な友が私達の力を必要とする時、もし条件を満たしていたら」

白獣「できるだけ最優先で手を差し伸べてあげてほしい……と」

少女「……」ポロ……ポロ……

白獣「私は構わなかったんですけど、黒様が……『半身』が中々許してくれなくて」

白獣「そしたら眠る時間を増やしてまで頼みに来るんですもの。異界にいても何時会えるかわからないから、と」

白獣「そこまでされたら……折れないわけにはいきませんよね?」クスッ

少女「……妖精、さん」キュッ

妖精「」ジーッ

少女「私なんかのためにそこまで……全然、知らなかったよ」


白獣「この者は見かけによらず相当度胸がありますよ。僧侶さん、あの方の力はご存知ですよね?」

僧侶「は、はい……『黒き神獣はあらゆる物を破壊し、存在すらも永久に抹消させる』ですよね」ゴクリ

白獣「そう……下手をすれば、私が見ていない所で消されていたかもしれないのに」

妖精「」ブイッ

少女「もうっ……無茶、し過ぎだよ……!」ゴシゴシ

白獣「それ程、貴女の力になりたかったのですよ……初めて自分を必要としてくれた存在だから」


今回はここまで。
次はもう少し進展すると思います←

おやすみなさい。


すみません、予想以上に上手くまとまらなかったので更新は次の夜になります……!
なので、今しばらくお待ちください。

伏線を張るのもご都合主義を避けるのも難しい……。


こんばんは。
続きを投下します!


少女「……そう言えば」

白獣「はい?」

少女「今までの事って、妖精さんが白獣さん達に話したの?」

白獣「そうですよ」

少女「妖精さんって……話せるの?」ジッ

妖精「……」チラッ

白獣「! ああ、その事ですね。いえ、異界の妖精は本来こうして普通に話す事はできません」

少女「じゃあ、どうやって?」

白獣「互いに自分の思念を送り合って会話をするんです」

少女「へえ……」


白獣「まあ、例外として……妖精達の長などといったごく僅かな者は音のある会話をする事ができますが」

黒獣「白娘。幾らなんでもベラベラと話し過ぎではないか?」

白獣「あらいけない。少女さん、この事は他言無用でお願いしますね……僧侶さんも」シー

僧侶「はい! 仰せのままに!!」

少女「わ、わかった」コクン

黒獣「ふん……」

戦士「うう……ん」パチッ

側近「気が付いたか……これで借りは返したからな」

戦士「あれ? 俺……」ムクッ

白獣「! あの者も気が付きましたね」

黒獣「……白娘が来た時に近くにいた男か」ジッ

戦士「んああ!?」ビクッ


黒獣「……」ノソノソ……ズイッ

戦士「な、な、何だこいつ……白獣、あんたの連れか?」ブルブル

白獣「そうですよ。だからどうか怖がらないで……敵とみなされなければ何もしませんから」

黒獣「白娘に少しでも色目を使ってみろ……その時点で存在を消し去るからな」ボソッ

戦士「ひいいっ」

白獣「もう、黒様! いい加減になさって!!」

僧侶「黒神獣様……何だか楽しそうでいらっしゃいますね」

少女「そ、そうなのかな?」

側近「少女……」ザッザッ

少女「! 側近さん」

妖精「」チッ


側近「……」カァッ

少女「?」

側近「! その、今更だが……お前には見られてしまったな」ササッ

少女「何を?」

側近「俺の……記憶の一部を」

少女「……あ」

妖精「」ギリギリギリ……ッ

側近「生の実感が戻ってきてから……改めてそれを考えると……」ゴニョゴニョ

少女「側近さん、私は気にしてないから……」

側近「……だが、怖かっただろう? それに……みっともなかっただろう? 昔の俺は」

少女「そ、そんな事ないよ! 寧ろ昔の側近さんが見られて良かったかなって……」

側近「……!」


少女「だから側近さん、もう顔を隠さないで……」オロオロ

側近「いや……しばらくこのままでいさせてくれ。頼むから」

少女「ええ? どうして?」

側近(あの時……『夢で』見た少女が俺の初恋の人だったから、だが……)

側近(そんな事言える訳がないだろう……ッ!)バクバク

僧侶「まあ、これは……うふふふふっ……」ニヤニヤニヨニヨ

妖精「~~~!!」ジタバタ

僧侶「こらこら妖精さん、邪魔をしてはいけませんよ」

側・少「!」ハッ

僧侶「あ、私達の事はお気になさらず……さあ続きを! どうぞ!!」ズイッ


側近「……み、見世物ではないぞ!」プイッ

少女「そ、そうだよ!」

僧侶「あら……残念ですね」

側近「……そう言えば、神獣が来るまで俺の傷を癒し続けてくれたのだったな。それに関しては礼を言わせてもらう」

僧侶「お礼を言われる程の事ではありませんよ。私自身、力不足でしたし……」

側近「いや、そんな事はない……俺はあの時、自分が死ぬと信じて疑わなかった。だが、貴女はそれを覆した」

僧侶「……本当に、息を吹き返されて何よりです」ニコッ

妖精「」ムスッ

少女「側近さん……もう、あんな風になっちゃ嫌だよ?」ギュウッ

側近「少女……」

少女「……今度あんな事があったら私も死ぬから」ボソッ

側近「ッ……!」

僧侶(嗚呼、本当に助かって良かったですっ……ふふっ、うふふふふ……!)ハァハァ

妖精「」ゾワワワワ……


少女「あ、そう言えば側近さん、1つ気になった事があるんだけど」

側近「?」

少女「側近さんの記憶を見た時に聞いた……」

魔王「はあ、はあ……弟よ、生きているか……!?」シュンッ スタッ

姫「……良かった。大丈夫みたいですね」スタッ

魔法使い「ふんっ」トンッ

勇者「……」スタッ

白獣「あらあら皆さんお揃いで」

戦士「お前ら……心配したぜ……! 姫様は特にな!!」

妖精「!」

僧侶「皆さん……無事だったんですね!」ホッ


黒獣「ふん……遅いぞ」

魔王「本当はもう少し早く転移する筈だったんだが……先に姫と行こうとしたら魔法使いに阻まれてな」ボロッ

魔法使い「当たり前じゃない。短い間でもお姫様をあんたなんかと2人っきりになんてさせると思う?」ジロッ

勇者「……用心していた筈のあれに乗っ取られるとは……我ながら情けない」

側近「! 兄上、その腕は……!?」

姫「……」キュッ

少女「お姫様……?」

魔王「はは、気にするな……それよりも弟よ、無事であったか……」ザッザッ

側近「あ……」

魔王「ではとりあえず……歯ぁ食いしばれええええええええい!!!!」バキィ……ッ!

『!?』


少女「ま、魔王様!?」

側近「ぐ、ッ……」ズザザザザ……

魔王「兄上を刺し、兎を傷つけ、勝手に死に急ぎ……そして何より一時でも少女を悲しませたその罪は重いッ!!!!」ビシッ

側近「……それは……」ムクッ

魔王「あ?」

側近「……アンタも同じだろうがああああああ!!!!」ダダダッ……ドゴォッ……!

魔王「ふぐぅッッ!?」ゴロゴロゴロ……

側近「大体、先に馬鹿みたいにかっこつけて自分だけ死のうとしたのはそっちだろう!? 少女の記憶まで消そうとした癖に!!!!」

魔王「だ、だからといってお前まで自殺行為をして良いという理由にはならぬぞ!」ガバッ

側近「うるさい! このネガティブ鈍感阿呆ロン毛が!!」

魔王「何だと!? ではお前は命知らずで鬼畜変態の大馬鹿者だ!!」

側近「鬼畜変態!? 何故そうも言われねばならん!?」


魔王「しらばっくれるか愚弟!! 自制できずに少女の血を飲んでおっただろうが!!!!」

側近「そ、それは……というか何故それを!?」

少女「ちょ、ちょっと2人とも……!」オロオロ

姫「魔王様、そんなに動かれては……!」

妖精「」ワーワー

少・姫「妖精さんも煽らないで!」

魔法使い「……何あれ。仲間割れ?」

戦士「お、俺にはただの兄弟喧嘩にしか見えねえけどな……」

僧侶「あわわわわ……」

勇者「……丁度良い。今のうちに手短に話しておこう……あいつらの事について」

魔・戦・僧「!」

勇者「ついでに、俺の目的もな……」

僧侶「……ではその後は私が、ここで起きた事をお話しましょう」

勇者「ああ。頼む」


白獣「妖精さん……貴方、そんなにあの者が」

黒獣「おい、私達はまだ還れないのか?」イライラ

白獣「もう……そんなに慌てて還らなくても良いではありませんか」

黒獣「……私はお前と違ってこの世に思い入れなどほとんどないからな」スリスリ

白獣「黒様……」ナデナデ

姫「ま……魔王様!」タタタッ……ヒシッ

少女「お姫様!?」

魔王「なっ……姫! 危ないではないか!!」

側近「! っ、と……」

姫「貴方は……腕を切られてしまったのですよ!? 私のせいで……」ポタッ……

魔王「姫、だから私は気にしていないと……」

姫「そうはいきませんわ! まずは一刻も早く腕をどうにかしなければ……!!」


魔王「……はあ。姫よ」スッ

姫「あ、貴方は何ともないように仰いますけど、腕がなくなるというのは一大事で……!」

魔王「……」ギュウッ

姫「……ぇ」パチクリ

側・少「!」

妖精「!?」

白獣「あら」

黒獣「……」

僧侶(キタアアアアッッッ!!!! 『魔王と姫』……この王道な組み合わせがこの目で拝めるとはあああああああ!!!!)グッ

魔法使い「お、お……お姫様に何やってんのよあんたぁ!!!!」バチバチ

戦士「止めろ魔法使い! その魔法は流石に全員ヤバイ事になるから!!」ガシッ

勇者「……話を続けて良いか?」


姫「あ、ぅ……ふあああ……ッ」ドキドキドキ……

魔王「……聞こえるか? 私の心臓の音が」ドクッ……ドクッ……

姫「はわ、はわわわわ……!」

魔王「これさえ無事であれば、私達は死なぬ」ナデナデ

姫「あッ……」ビクンッ

魔王「故に、心臓を損傷した弟にああして呼びかけていただろう? ……って姫?」

姫「はうう……」クタッ……

魔王「ひ、姫? どうしたのだ!?」ユサユサ

少女「お姫様!」

側近「……全く。これだから鈍感は」ハァ……

妖精「~~~!」オロオロ


僧侶(ほう、頭皮の調教とは……中々マニアックですねえ……!)ハァハァ

勇者「……僧侶。次はお前の番だぞ」

戦士「その前にこいつをどうにかしてくれ!!」

魔法使い「今できる……最大の魔法をォ……!」フシュー……フシュー……

白獣「まあ、とても楽しそうですこと」クスクス

黒獣「何処がだ白娘……嗚呼、そうだ魔王」

魔王「姫、しっかりするのだ! ……って何だ黒獣よ。というかやはり貴方は神獣であったのだな」

黒獣「今更か。それよりもお前……自分の腕はどうした?」

魔王「……え?」


今回はここまで。

魔王にとっては、『私の鼓動を聴けえええ!』という軽い気持ちでした(笑)←

おやすみなさい。

魔王「毛根さえ無事であれば、私達は死なぬ」ナデナデ

姫「あッ……」察し

魔王「ひ、姫? どうしたのだ!?」フサフサ

髪の毛むしってやるぜハゲー!!
ブチッ彡 彡 /⌒\
  (◯/ ∩(`;ω;´) ∩ ああっ!
   |    |     |
  /\  しーー-J


僧侶(ほう、頭皮の調教とは……中々マニアックですねえ……!)ハァハァ


こんばんは。
ちょっとしたスランプに陥っておりました。
>>303には思わず吹きましたね……←

てなわけで更新再開です。


黒獣「お前……まさかそのままで良いと本気で思っているのか?」

魔王「な、何を言っておるのだ? 私は貴方がこっそり持って行ったとばかり……」

黒獣「何故私がお前のためにそんな事をせねばならん」フンッ

魔王「だ、だが私が見た時には何処にも……!」

黒獣「私は床に投げ捨てた後は一切触れていない。断じてな」

魔王「ッ……! で、では一体何処に」チラッ

魔法使い「あたしは知らないわよ」フンッ

勇者「……同じく」


魔王「姫は……首飾りと兎以外は持っていないようだな」

側近「兄上、一体何があったのだ」

少女「魔王様……」

魔王「……そうだな。お前達にも簡単に話しておこう。勇者達もそうしておるようだしな……」

勇者「……」

――――
――

魔王「――その後、寸での所で現れた黒獣に助けられたのだ」

黒獣「随分と無様だったな。あの時のお前は」

白獣「黒様!」


魔王「……返す言葉もない。だが」ジッ

少女「!」

魔王「彼らを召喚したのは……少女、お前だったんだな」ナデナデ

少女「あ……」

魔王「無茶をして……だが、お陰で助かってしまったのも事実だ」フッ

少女「で、でも、神獣さん達が早く来てくれたのは妖精さんのお陰で……だから……」

魔王「そうか? だがな、お前が喚べなければ小妖精の努力も水の泡だったのだぞ?」ツンツン

妖精「」ドヤッ

魔王「本当にありがとう、お前達」

少女「魔王、様……」

側近「……」


魔王「……弟よ」

側近「何だ、兄上」

魔王「もう命を粗末にするんじゃないぞ」

側近「……貴方に言われたくはない」

魔王「! ……それもそうだな」フッ

白獣「まあ、余程剣の切れ味が良かったのですね……切り口がとっても綺麗」ジッ

魔王「! は、白獣、何時の間に」

少女「白獣さん! 魔王様の腕、元通りに治せる?」

白獣「うーん……このままでは難しいですね」


姫「な、何故、ですか……白神獣様……」ググッ……

魔王「姫……気が付いたか」ホッ

姫「復元や治癒に、これ以上ない程長けていらっしゃる貴女様ならば……造作もない、筈では……」ジッ

白獣「……突然ですが姫さん。『物』と『生き物』の違いはわかりますか?」

姫「? それは……自分の意志で動くかどうか……後は、生死の概念の有無、などでしょうか」

白獣「それらも間違いではありませんが……最も大きな違いは『唯一無二であるか否か』という面ですね」

姫「唯一、無二……」

白獣「勿論例外もありますがね……例えば姫さん。貴女が大切な人を喪ってしまったとして」

姫「!」

白獣「……私が、その人の外見や中身をそっくりそのまま持っている存在を生み出せるとします」

白獣「生き返らせるのではなく、あくまでそれに近い生き物であるというだけですが……貴女はそれを手放しに喜べますか?」

姫「そ、それは……多分無理ですね」


白獣「あら、何故ですか?」

姫「その人の代わりなどいません……どんなに似ていても、私にとってその存在は全くの別人ですわ」

白獣「……そうですね。私が言いたかった事はそれですよ。そしてそれは部分的な物でも同様」

白獣「私の力は『物』の場合は復元ですが、『生き物』の場合はとにかく『生かす』事に重きを置いているのです」

少女「あ……側近さんの心臓を治した時、心は戻せないって言ってたのも?」

白獣「ええ、同じ原理です。あの時少女さんが失敗していたら、あの者は……息をするだけの屍と化していたでしょうね」

少女「……ッ!」ゾッ

側近「……それはそれで辛いな」

白獣「このように、『生き物』の傷を癒す事はできても……欠けた部分の復元はできないのです。繋ぐお手伝いならば可能ですが」


魔王「では私の腕は何処にいったというのだ?」

黒獣「知らん」

魔王「うう……」

勇者「魔王」

魔王「何だ勇者」

勇者「ふと思ったんだが……いや、あり得ないならそれに越した事はない」

側近「……何が言いたい?」

勇者「俺やあの子の体を乗っ取っていた奴は……ひょっとすると『一部分』のみそうする事もできるのではないか、とな」

魔・側「……ッ!!!!」バッ

少女「え、どういう事……?」


白獣「多分、貴女を乗っ取っていた存在が、今はあの者の切り落とされた腕を乗っ取って動かしているのでは、という事でしょう」

黒獣「迂闊だったな」

姫「そ、そんな……!」

魔王「くっ……何故今まで思い至らなかったのだ!?」ギリッ

側近「そうだな、俺も悪かった……」

魔王「考えたくはないが、奴の執念ならば……ッ!」

側近「念のために探して来よう。例の場所もな」ザッザッ

魔王「弟、私も行くぞ!」

側近「兄上は魔力の回復に努めてくれ。その方が……万が一の時にも……」


魔王「! ……わかった。だが、それはあくまで最後の手段だからな」

側近「ああ」ザッザッザッ……

少女「側近さん!」タタタッ

妖精「」パタパタパタ……

側近「少女……」

少女「さっき言った事……!」

側近「心配するな、もう死ぬつもりはない……信用してもらえるかはわからんが」ポン

少女「本当……?」ジッ

側近「ああ。だが……」

少女「?」

側近「……後は、兄上に訊いてくれ」クルッ


妖精「」ジロッ

側近「……ふん。やはり貴様も感づいていたか小妖精」

少女「側近さん……」ス……チュッ

魔・側「!」

妖精「!?」

少女「えと……何にもできない代わりに、おまじない」カアッ

側近「……」ポカン

少女「無事に……終わらせられるっていう、ね」

側近「……こ、これは心強いな」バクバク

僧侶「~~~~ッ!!!!」ビクンビクン

戦士「しっかりしろ僧侶おおおおおおお!!!!」ユッサユッサ

魔法使い「本当に……何なのよこの茶番は」

勇者「……」


少女「……気をつけて」ジッ

側近「ああ……行って来る」ザッザッザッ

魔王(弟よ……兄上もすぐに行くからな)

姫(側近さん……どうかご無事で)

少女「……」ギュッ

側近「」ギイイッ……バタン

勇者「……戦士、僧侶。念のため後を追ってほしい」

戦士「え!?」

僧侶「ハッ! ……で、でも」

勇者「見る限り、俺達の中で最も消耗が少ないのはお前達だ。あいつのサポートを頼む」

白獣(確かに僧侶さんの力も回復させましたが……よく見抜きましたね)

魔法使い「待って勇者。あたしは納得してないわよ」

勇者「……魔法使い」


魔法使い「なんであんたはあいつの言う事を鵜呑みにできるわけ?」

勇者「俺が信頼に足ると確信したからだ。危険なあれの事も教えてもらっただろう?」

魔法使い「確かにあれはヤバかったけど……それもあいつらが操っているとしたら?」ギロッ

勇者「腕を犠牲にしてまでは流石にしないだろう」

魔法使い「ふん、どうかしらね。魔物の考える事はおぞましいから」

勇者「……俺が信じられないか」ジッ

魔法使い「! べ、別にそう言ってるわけじゃ」

勇者「それとも……俺が、魔王に操られているとでも?」

魔法使い「ッ……」

魔王(今の私にはそんな事できないぞ……)

勇者「……あの時の、俺を信じてついて行くと言った言葉はうs」

魔法使い「んあああああ! わかったから、信じるからそれ以上はッ……!!」カアッ

勇者「そうか。なら良い」

僧侶(魔法使いさん、隙がなさそうに見えて案外ちょろい所ありますね~)


戦士「じゃあ、本当に良いんだな? その……あいつらを信用しても」チラッ

勇者「ああ。姫の態度と……この状況で側近をここから離れさせたのが証拠だ」

僧侶「そして何より神獣様がいらっしゃいますしね! 悪しき者が召喚できる存在ではありませんもの!!」グッ

魔法使い「あっそ……ブレずに信じられる物があって本当に羨ましいわ」

僧侶「ふふふ、今からでも遅くありませんよ! 魔法使いさんも是非……!」ズイッ

魔法使い「あんな事をされてなかったら少しは考えたかもね」

勇者「では、頼んだ。俺達もすぐに行く……何かあったら互いに連絡だ」

戦士「ああ!」ダッ

僧侶「なるべくお早くお願いしますね!」タタタッ

僧侶(本当はもっと神獣様方や魔王さん、姫様の絡みを見ていたいですが……仕方ありませんね)


少女「あの……白獣さん。黒獣さん」

白獣「何でしょう少女さん」

少女「そ、その、2人の力で……今のうちに全部解決する事はできないの?」

白獣「……残念ですが、それはできません」

少女「! どうして……?」

白獣「貴女の願いは『自分の大好きな人達を助けて欲しい』……でしたね」

少女「」コクン

白獣「私達は喚ばれた状況から、それを『彼らの窮地を救って欲しい』と解釈しました」

少女「だったら……!」

白獣「ですが、現時点では目に見える脅威は見当たりません」

姫「つまり、力を持っていても……願いの内容により、力を貸す時はどうしても後手に回ってしまうという事ですの……?」


白獣「そうなりますね。『あれを倒す』という願いであれば話は簡単だったのですが」

少女「!」

魔王「仕方あるまい、あの時は少女も弟を救うのに必死であっただろうからな」ナデナデ

白獣「ええ……私もこの選択は間違いではないと思いますよ。それに……」スッ……キラッ

魔王「む、これは……」ポウッ……

魔法使い(嘘、魔力が回復した……!)バッ

勇者「傷が消えたな。体力も……」ワキワキ

白獣「……こうして次なる窮地へ備える事はできます」ニッコリ

少女「白獣さん……!」パアッ


黒獣「おい白娘、幾らなんでもこれは……!」

白獣「ふふ、主の許可は得ていますよ? 直接手を出さなければ良いと」

黒獣「なッ……!?」

白獣「とりあえず、今の私達にできる事はここまでです。後は貴方達次第」

魔王「……ありがたい」

白獣「ちょっとしたサービスですよ♪ ……腕、無事だと良いですね」

魔王「ああ……なるべく早く弟が見つけてくれれば良いのだが」

姫「……」ギュッ


――――
――

ズズッ……ズルッ……

(クク……やはり封印主の一部に入り込んだのは正解だったな。巧妙に隠していたようだが、それももう終わりだ)

(魔力の繋がりでようやく見つけた……全く、随分と手こずらせてくれたな……)

(動かし方も慣れてきたし……先程の忌々しいダメージも大分回復した)

(どれ……少し急ぐか。この状態では転移もままならんしな)ズザッ……ザザザザザ……


今回はここまでです。

おやすみなさい。


こんばんは。

最近ほのぼの系が滅茶苦茶書きたくて堪りません←
シリアスって何故こうも筆が進まないんだろう……。

……とりあえず更新再開です。


――――
――

魔王「……」ジャラッ

少女「! 魔王様、それ……」

魔王「ん? ……ああ、少女には言っていなかったな。これは私の持つ唯一の武器だ」

少女「そうなの?」

魔王「今まで黙っていてすまないな。封印が解けてようやく再び使えるようになったのだ」

少女「……」

魔王「うむ。そろそろ行くとするか……」ザッ

勇者「待て、魔王」

魔王「?」

勇者「その前にもう1つ、お前に訊いておきたい事がある」

魔王「何だ? 急いでいるからできれば後に……」


勇者「『末子』とは何だ」

魔王「!」

勇者「お前達が腕輪越しに側近に呼びかけていたあの時……確かにその言葉を言ったな」

魔王「……」

勇者「ただの弟に対する言葉にしては不自然だ。俺の持つ魔王関係の情報にもないが……」

魔王「……そうであろうな。何せ魔王の家系の中でのみ伝わってきたものだからな」

勇者「!」

魔王「ふむ……話しておいた方が良いかもしれん。どの道『魔王』は私の代で終わるのだ」

姫「魔王様、それって……」

魔王「万が一という事もあるしな……その代わり、これを聞いたら今度こそ私達に協力してくれるか?」

勇者「……約束する」


魔法使い「ちょっと勇者、本気で……!?」

勇者「魔法使い、さっきも言っただろう」

魔法使い「そうだけど……」

勇者「それとも、ここで待っていたほうが良いか? こちらとしてはお前がいた方が助かるが……」

魔法使い「冗談! お姫様はともかくこんな異端者と一緒にいるなんてまっぴらごめんよ」

少女「っ……」ズキッ

魔王「魔法使いよ。あまり少女を傷つけるのは止めてもらおうか」

魔法使い「うるさい。あたしに指図するな」

姫「魔法使いさん、貴女……!」

勇者「止めろ魔法使い」

魔法使い「でも……!」

勇者「生きてここから出たければな」

魔法使い「ッ! ……ちっ」ジロッ

勇者「……すまない。続きを話してもらえるか」

魔王「う、うむ……」


――――
――

側近「……」ザッザッザッ……

側近(……魔力にはこれと言った匂いがない)

側近(故に、己で知覚する以外に探す方法がない……それがこれ程厄介だとは思わなんだ)ギリッ

側近「……」スッ

少女『おまじない』

側近(……少女、そして兄上のためにも)ギュッ

側近(間に、合え……ッ!)ザザザザッ……


――――
――

魔王「『末子』は……その名の示す通り魔王の末の子供を指す。こいつは血筋の中で極めて重要な位置にいるのだ」

勇者「それは……強さに関する事か?」

魔王「簡単に言えばそうだな。魔王の末の子供として生を受けた者は、兄弟の中で最も強い力を持っていると言われている」

魔法使い(あの時感じたおぞましいものの正体は……多分それだわね)ブルッ

勇者「その根拠は?」

魔王「家系図の記述によれば、歴代魔王のゆうに八割近くが『末子』とあった。先代である我が母もそうだ」

勇者「純粋に強い者が魔王を継承する……か」

魔王「うむ。そして特に女の魔王から生まれた『末子』は、母体に残留する他の兄や姉の力を吸収して更にその傾向が強くなるという」

勇者「……という事は」

魔王「ああ。我が弟の潜在能力はまず間違いなく奴をも凌ぐ事になるだろう」


魔法使い「……だったらどうしてあたし達をここに誘き寄せたのよ。そんな力があるんならさっさと使えば良いじゃない」ギロリ

魔王「それは……弟が『末子』の力を思うように使えぬからだ」

魔法使い「何それ。大層な力を持っててそれはないでしょ……とんだお笑い草ね」

魔王「仕方のない事だ。魔族の本来の性質に依る物だからな……姫」

姫「は、はい!」

魔王「貴女の父君から、我が母……先代魔王による侵略の模様は聞いた事があるか?」

姫「はい……何でも、言葉にするのも憚られる程凄惨極まりないものだったとか」ブルッ

少女「お姫様……」

魔王「ああ……もしも貴女の都が『聖都』でなければ、周辺諸国と同じ運命を辿っておっただろうな」

少女「え?」


魔王「守られていたのだ。ここにいる神獣達によって」

白獣「……その通りです」

黒獣「……」

魔王「彼らの加護によって、魔王やその手の者は一切都を害する事ができなかった」

白獣「遥か昔、教会設立の折に我らが施しておいた結界が機能したのです。ただ、純粋に守るための力が……」

魔王「生前母上はよく言っておった……『目と鼻の先にあるあれに手出しできないのが何よりも悔しい』とな」

魔法使い「……ずるいわね。そこだけ守られているなんて」

魔王「他の国や都の中で、最も魔王城から近い場所に位置しておるのだ。そのような措置も頷ける」

姫「そのお陰で多くの難民を保護したり、食糧などの物資を他国へ送る事ができたとも聞きました」

白獣「主はそれも見越しておられたんでしょうね……人類にとってわかりやすい希望として」

勇者「……それが『末子』と何の関係がある」


魔王「まあ聴け。我らから見ても、母上の都への執念は本当に深かったように思える……それ程の破壊衝動と共に、その力は母上の中に在り続けた」

魔王「己の欲望のままに殺し、奪い、蹂躙した……魔王として誰よりも魔族らしい方だったのだ」

魔王(それでも一応、次期魔王の母としての務めは果たしていたがな。今更信じてはもらえぬだろうが)

勇者「つまり……先代の魔王は、力に振り回されていたと?」

魔王「いや。力に身を委ねていたからこそ、逆にそれを使いこなせていたという事だ」

魔王「しかも、上にいる兄や姉が多い程『末子』の力は強まる……母上は13人兄弟の中の『末子』だった」

魔王「1人の魔王にこれ程多くの子供がいた例は他になかった。故に歴代でもトップクラスの実力者であっただろうな」

魔法使い(魔王の言っている事が本当なら……そんな化け物に先代勇者は……)ゴクリ

勇者「……」

魔王「そして弟には……そんな力の制御ができない」


――――
――

僧侶「側近さん……脚、お早いですね」

戦士「おい僧侶、だからって何で俺にお前を背負わせるんだ……!」ゼエゼエ

僧侶「え? そんなの戦士さんの方が体力があるからに決まっているじゃないですか」

戦士「あのな……」

僧侶「ほらほら、後でちゃんと回復して差し上げますから脚を動かして下さい。でないと……『蝕んじゃいますよ?』」ニコッ

戦士「うぐっ……それだけは勘弁だ」ダダダダッ

僧侶「……ところで、戦士さんにも聞こえていますよね? これ」スッ

戦士「ん? ……ああ。情報共有のためとはいえちょっとあれだけどな」

僧侶「仕方ありませんよ。恐らくこのためにも敢えて私達をこちらへ向かわせたのだと思います……1つだけならばれるリスクも低いですしね」

戦士「……全く便利な腕輪だぜ。使い方次第で盗聴器にもなっちまうとは」

僧侶「そうですね。あ、側近さんに追いつきそうになったらすぐに切りましょうね」

戦士「当たり前だ。側近に悪いしな……自分の秘密を勝手に知られるのは誰だって良い気はしねえよ」


――――
――

勇者「……力を使うために、魔族として残虐になる事ができないからか」

魔王「」コクリ

魔王「だが、だからと言って力が全く使えぬわけではない。現に私は弟の中に眠る『末子』の力の片鱗を何度か見た事がある」

魔王「……大半は、封印の際に我が魔力と共に封じた筈だがな。皮肉にもそれで封印の強度は高まった」

勇者「そんな事も出来るのか」

魔王「ああ。弟の強い希望でな……だが時間と共に少しずつ綻び、本来の主の許へ戻ったのだろう」

勇者「そして今回、あれの魂の解放と共に力はほぼ完全に側近へと戻った……」

魔王「そうなるな。後はそれを使う引き金を引くだけだ……魔族らしい、負の心を持つという、な」

少女(だから側近さんはあんな目に……! 魔族らしくなるのって、そんなに大事な事なの……!?)ジワッ


勇者「成程。ではもしそうなったら側近は元には戻らないのか?」

魔王「それは……わからない。だが場合によっては奴以上の脅威になるという事だけは言える」

妖精「ッ!」ギリッ

少女(妖精さん……凄く怖い顔してる……)

魔王「その表情……小妖精、もしやお前は気付いておったのか? だからあんなに弟に……」

妖精「……」ツーン

少女「魔王様……側近さん、大丈夫だよね? もうあんな事にはならないよね!?」

魔王「まあ、命はもう捨てはしないだろうが……その代わり」

少女「その代わり……?」

魔王「……奴を殺すために心を捨てるかもしれん」

少女「……!!!!」


魔王「勿論、そうならぬよう私も最善は尽くすがな。正気に戻るまで鎖でふん縛るなどしてな」

少女「……どうして」

魔王「!」

少女「そんな大切な事、今まで黙ってたの……? 私達、家族なのに」ギュウッ

魔王「……最初、あのように言ったのは、お前に怖がられたくなかったからだ」

魔王「あの時のお前の怯え様を目の当たりにしては……とても真実など」

少女「……私の事、信じられなかった……?」

魔王「そんな事はない! 何時かは思い切って話そうとは互いに思っていたが……そのうち言うタイミングを逃してしまった」

魔王「ただでさえあのおぞましい過去をお前に打ち明けたのだ。これ以上に我らに対してお前が怯えの念を抱くのが……怖かったんだろう」

少女「……理由はそれだけ? 本当に?」

魔王「本当だとも」グッ

妖精「……」ジーッ

姫(魔王様。あなた方兄弟は……少女さんにすら明かせない苦悩を、その胸に一体どれ程抱えておられるのですか……?)

魔王「……なあ少女。こんな臆病な我らでも変わらずに……家族でいてくれるか?」


――――
――

戦士「! ……おーい側近!」ダダッ

側近「……戦士! 僧侶も……」

僧侶「やっと追い付きました……! お手伝いいたしますよ側近さん」

戦士「おい、いい加減降りろ」グイッ

僧侶「わかってますよ~」ピョンッ……タタッ

側近「お前達、俺の事は良いから今すぐ戻るんだ! もしもの事があれば本当に危険なんだぞ!?」

戦士「そうはいかねえよ。勇者からの指示だしな」

僧侶「一応結界とかも張れますし、足手まといにはなりませんよ! それに、そのもしもの事があった時に連絡が取れた方が良いでしょう?」

側近「……そのような余裕があれば良いがな」ボソッ

僧侶「え? 何か言いました?」

側近「いや……では、これだけは約束してくれ。ここから先はこれ以上ない位用心していてほしい」

僧侶「それは勿論です」


側近「後、万が一の話だが……もしも俺が豹変してお前達に剣を向けるような事があれば」

僧侶「?」

側近「その時は迷わず逃げろ。間違っても戦おうなどとは考えるな……!」

戦士「……了解。でもよ、また俺がぶん殴って目を覚まさせても良いんだろ?」

側近「……できるものならな」

僧侶(ば、ばれてませんよね? 腕輪の事……)ドキドキ

僧侶「あ、そ、そう言えば側近さん。私達は今何処へ向かっているんですか?」

側近「……宝物庫だ」

戦士「宝物庫ぉ!? そりゃ楽しみだ、心が躍るぜ!」

側近「響きだけを聞けばな。だがそこに奴の……最後の封印がある。くれぐれも気を抜くな」

戦・僧「……」コクッ


今回はここまでです。

3匹の子豚とか、梨取りのお話とか、末っ子が強い童話って多いですよね(笑)
自分は末っ子ではありませんが、この2つは結構好きです←

おやすみなさい。


こんばんは。

更新再開です。


――――
――

少女「……そんなの、決まってる」

魔王「少女……」

少女「でも、今は教えてあげないから」

魔王「!」

少女「答えは、側近さんも揃った時にね」ニコッ

魔王「……ああ」

少女「だから、ちゃんと帰って来てね? 約束だよ?」ジッ

魔王「うむ。約束だ」

魔法使い「……嗚呼、不愉快。気持ち悪い」ボソッ

少女「!」ビクッ

魔法使い「勇者、訊く事訊いたでしょ? さっさと行くわよ。これ以上ここにいるのは耐えられない」クルッ

勇者「……ああ。魔王、その封印の場所に案内してもらえるか」

魔王「わかった……任せておけ」


魔法使い「……ねえ、もしあいつが『末子』の力とやらでおかしくなってたら」

少女「?」

魔法使い「ぶち殺しちゃって構わないでしょ?」ギョロンッ

少女「!」

魔王「どうしようもない時はやむを得んが……あくまでそれは最後の手段だ」

魔法使い「……ふん」スタスタ

少女「あ……待っ……」

勇者「魔法使いが暴走しそうになったら俺が止める」ボソッ

少女「ゆ、勇者様……」

勇者「だから、どうか安心してほしい」ザッザッ

少女「……ありがとう。お願いします」ペコッ

妖精「」ジーッ


姫「あ、あ……」

姫(どうしましょう、私も魔王様にお声を……! 早くしないと行ってしまわれますわ!!)オロオロ

姫(何かないかしら、魔王様を元気づけられそうな事……)

姫「ま、魔王様!」

魔王「ん?」

姫「あの……その……」モジモジ

姫(さ、流石に少女さんみたいに頬に口付けなどはできませんわ! 他には……)

魔王「どうしたのだ? 姫」コテン

姫(首を傾げられている魔王様も素敵……ではなくて!)

姫「ま……魔王様、の……」

魔王「うん?」

姫「……お好きな、お料理は何ですか……?」プルプル


魔王「……」

姫(ああああ何を言っているんですか私は……! 魔王様も呆れていらっしゃいますわ!!)カアッ

魔王「……もしもそれに答えたら、貴女は作ってくれるか?」

姫「あ……は、はいっ! 少女さんに教えてもらいましゅっ……!!」

姫(おまけに噛んでしまいました……! なんて恥かしい……)

魔王「……シチュー」

姫「え?」

魔王「クリームシチュー……だな。南瓜をたっぷり入れた」

姫「!」

魔王「楽しみにしても……良いか?」

姫「……はい。ですからどうか、御無事で」

魔王「うむ。貴女もな」

姫「……」ニコッ


少女「お姫様……」

魔王「神獣達、少女達の事を……」

白獣「ええ。任せてください」

黒獣「全く面倒な……」

白獣「黒様、そのような事を仰らないでくださいな」ムッ

魔王「……では、行ってくる」ザッザッ

少・姫「……」ギュッ

白獣「お気をつけて」

黒獣「……」

妖精「」ヒラヒラ



ギイイッ……バタン


少女「……本当に、大丈夫かな」

姫「今はただ、皆さんを信じましょう。私達にできる事はそれだけですわ」

少女「それはわかっているんだけど……」

白獣「嗚呼、そういえば少女さん。これは貴女が持っているべきですね」スッ

少女「! これって」

白獣「ずっと地べたに置かれているのが可哀想だったので、思わず拾い上げたのは良いんですが……」

黒獣「返しそびれたのか。全くうっかりしているな」スリスリ

姫「猫さんのぬいぐるみ……少女さんが側近さんに作ってあげた物ですか?」

少女「うん。ずっと大切にしてくれてた……ここに穴が開いちゃったけど」ナデナデ


姫「ふふ、この兎さんと同じですね」スッ

妖精「!」

少女「あ……魔王様も、持ってたんだ」

姫「初めて作ったんですよね? それにしては中々……」マジマジ

少女「もう、あんまりジロジロ見ないでよ~」

白獣「ふふふ、良いではありませんか。可愛いですよ?」ツンツン

少女「白獣さんまで!」

姫「……私は、すべてが終わった後に魔王様にこれをお返ししたい」

少女「お姫様……」

姫「勿論、汚れを落として穴も繕った状態で、ですが……少女さんはどうですか?」

少女「……うん。私もだよ」ギュウッ


短いですが、今回はここまでです。

おやすみなさい。


こんばんは。

少し遅くなりましたが、更新再開します。


――――
――

側近「……もうすぐ着く」ダダダッ

戦士「大丈夫なのか? もしも手遅れだったらどうすんだよ……」

側近「心配するな、封印の際に防衛の術もかけてある。兄上が生きている状態でそこに異変があれば……」

?「キャアアアアアア誰かああああああああ!!!!」

戦士「」

僧侶「」

側近「このようにすぐにわかるようになっている。急ぐぞ」

戦士「……おい、どう思う?」ヒソヒソ

僧侶「……こ、ここは側近さんを信じましょう」ヒソヒソ

側近「何をしている? 置いて行くぞ」クルッ

戦士「! ま、待ってくれ!!」ダダダッ

僧侶「すみません、すぐ行きまーす!」タタッ



宝物庫


謎箱(封印箱)「アタシ開けられちゃうううううこのままじゃ開けられちゃうのおおおおおおおおお!!!!」ガタガタ

魔王腕(兄魔王)「耳障りだな……静かにできないのか」

封印箱「魔王さまだけど魔王さまじゃない奴に開けられちゃうううううう!!!!」

兄魔王「ふん、全く厄介な仕掛けを施してくれたものだ……まあこうなってしまえば無駄な足掻きだがな」

封印箱「駄目なのおおおおおお開けちゃ駄目なのよおおおおおお!!!!」

兄魔王「いい加減に大人しくしろ。お前の中にある物の本来の所有者様だぞ」ズズズ……

封印箱「イヤアアアアア助けて側近さまあああああああああ!!!!」ゴトンゴトン

側近「封印箱! まだ開けられていないか!?」バタンッ

封印箱「側近さまあああああ!!!!」

兄魔王「! ……何だ、お前生きていたのか」


戦士「あのガタガタ動いてる箱が封印か?」

僧侶「みたいですね。行きましょう!」タタッ

封印箱「嬉しいわっアタシのために来て下さったのねえええええ!!!!」

側近「遅くなったな。今助けるぞ!」ダッ

兄魔王「助ける? ただのモノに向かって助けるだと? ふざけた事を……」ガサガサ

側近「黙れ! 貴様はここで始末する」ジャキッ……ブンッ

兄魔王「はっ、何処を狙っている」ザザザッ

戦士「あの腕……めっちゃ素早く動き回ってんだけど……」ブルッ

僧侶「何を怯えているんですか! 情けない」

戦士「そ、僧侶は怖くねえのか!?」

僧侶「だって正体がわかっているんですよ? 怖がる理由がありません」

戦士「そりゃそうかもしれねえけど……」


側近「くそっ……ちょこまかと!」ザンッ

兄魔王「ぎゃははっ! どうした? お前の大事な兄の腕は斬れないのか?」ヒュンッ スカッ

僧侶「側近さん! 浄化魔法で援護します!」スゥゥ……

側近「頼む! 腕の安否は心配せず、あくまで奴を消し去る事を最優先にしてくれ!!」ブォンッ

僧侶「わかりました……!」カッ

兄魔王「ほう、俺を消し去ろうというのか……面白い!」ヒョイッ

僧侶「外した……っ!」ギリッ

戦士「そ、側近! こいつは動かせるのか?」

封印箱「あらああああああ良い男ねええええええ!!!!」カタカタ

戦士「ひっ」ビクッ


側近「生憎そいつはそこからは動かせん! だから奴を近付けるな!!」

戦士「マジかよ!? しょうがねえな……」スッ

封印箱「お願いいいいいい守ってねえええええええ!!!!」

戦士「ま、守ってやるから静かにしててくれ!」

兄魔王「ふん。虫けらが幾ら集まった所で……」ザザザザッ

側近「来るぞ!」

戦士「うわあああやっぱり気持ち悪い!」

僧侶「戦士さん! いい加減に腹を括りなさい!!」

兄魔王「同じ事だ」ゴオッ

戦士「!」

僧侶「戦士さん!」ポウッ……バシュンッ

戦士「す、すまねえ僧侶!」


側近「! 結界か……」ホッ

戦士「くっそー……こんな事なら魔法使いにアレを出しといてもらうんだったぜ……」

僧侶「今更そんな事を言っても仕方ありませんよ!」

兄魔王「まだまだ、こんなものではないぞ!」ボボボッ

戦士「ええい、こうなりゃ自棄だ! こいやあっ!!」シャキンッ

側近「馬鹿、無闇に向かって行っては……!」

戦士「てえりゃっ!」ブンッ スパンッ

側近「!」

兄魔王「ほう、貴様も魔力の塊を斬るか」

戦士「俺は力でゴリ押しする事しかできねえからな……!」

僧侶(ですが、たったあれだけでもう対魔剣があんなに……やはりアレでなければ厳しいですか……!)

兄魔王「ならこれはどうだ」ドドドドドッ

戦士「うっ……うおおおおお!!!!」ガガガガッ

僧侶「戦士さんっ!」キィンッ

戦士「はあっ……はあっ……」ポタッ……ポタッ……


側近「すべては防げなかったか……!」ギリッ

兄魔王「無様だなあ人間。たったこれだけでへばるのか?」クックッ

戦士「う……まだ、まだ……!」

僧侶(……私達は、それなりに強いと思っていました。竜も倒せる位だし、これなら魔王も倒せるんじゃないかとも……)

側近「貴様っ!」ザシュッ

兄魔王「おっと危ない。魂にまで手が届くその剣は得体が知れないからな……」ヒョイッ

僧侶(でも、甘かった……やはり先代の頃と今とじゃ、全然……!)


側近「僧侶! 何をしている!!」

僧侶「え?」

兄魔王「まず1人」ゴゥッ

僧侶「! きゃ……っ」キンッ……ボシュッ

戦士「僧侶……!」

僧侶「だ、大丈夫です……」シュウウウウ……

兄魔王「至近距離にも関わらず、結界と相殺したか……少し厄介かもしれんな」

僧侶「……そんな事、思っていもいない癖に……っ」

兄魔王「ぎゃはっ! 当然だ」

僧侶「……こうなったら、奥の手を使うべきですかね」スッ


戦士「! 馬鹿、それはお前の消耗が……っ」

僧侶「側近さんの許可もありますし、ここで使えばすべて終わらせられます……腕1本位なら大丈夫ですよ」

兄魔王「何をするつもりなのかは知らないが……まあ、死ぬ前に精々足掻くが良い」ズズ……

戦士「や、止めろ、早まるな僧侶……!!」

側近「……ならば使わせるわけにはいかないな」ザクッ

僧侶「! 側近さん……」

兄魔王「ぐがっ……!」

側近「もっと自分を大事にした方が良い……お前達の人生はまだまだこれからだろう?」ググッ

僧侶「あ……」ドキッ

側近「その油断が命取りだったな……これでとどめだ!」ズブッ……

兄魔王「お、おのれっ……うあ、あああああああ……!!!!」シュウウ……


側近「……兄上、腕を取り戻せなくてすまないな」スッ

僧侶「あの……終わったのですか?」

側近「その筈だ」

側近(あまりにも呆気なかったが……まあ、こんなものだろう)

僧侶「で、では早く戦士さんの治療を……」クルッ




封印箱「い……いやあああああああああ助けあひゅっ!」グチャッ

戦士「」ビタッ……ズルリ

側近「!」バッ

僧侶「……ど、どうして……」


兄魔王「お前の結界と我が術が相殺したあの時、発生した煙に紛れて分身とすり替わったのだ」ググッ……

側近「馬鹿な……あんな短時間でそんな真似が……!」

兄魔王「ふん、我が魔力を持ってすれば造作もない事だ。それにここは宝物庫だぞ? 隠れる場所なら腐る程ある!」ドクン……ドクン……

僧侶「あ……嘘……」ガクン……

兄魔王「ククク……どうやら油断したのはそっちの方だったようだな」コォォォ……

側近(近付こうにも……奴の魔力の渦が邪魔を……!)グッ

兄魔王「嗚呼、俺がどれ程この瞬間を待ち侘びたか……お前達にはわかるか?」ズズ……ズズズッ……

側近「……最悪だ……」ギリッ

兄魔王「ぎゃははっ……ぎゃははははははは!!!!」スタッ……バサリ

僧侶「そんな……私の、せい……?」

兄魔王「恐れよ人間! 平伏せ魔物!! 今日は魔王復活の記念日であるぞ!!!!」


今回は以上です。

おやすみなさい。


お久しぶりです。
何時も読んでくださってありがとうございます。
そして更新が遅くなっていて大変申し訳ありません!

実は最近までちょっとしたスランプに陥っておりました……。
遅くとも週末までには続きを投下する予定ですので、もう少しだけお待ちください。


こんばんは。
多くのコメント本当にありがとうございます。

大変長らくお待たせしました、更新再開です。


――――
――

少女「……」

姫「……」

妖精「」パタパタ

白獣「……黒様、やはりここで本来の姿に戻るつもりはありませんか?」

黒獣「無論だ。大体お前がその姿でいる事の方がおかしいのだぞ」

白獣「それはそうですが……私は、何時もの貴方の方が好きです」

黒獣「……お前達、しばらく耳を塞いで後ろを向いていろ」ジロッ

少女「えっと、どれ位?」

黒獣「何、ほんの5時間ばかr」

白獣「黒様、あんまり冗談が過ぎると嫌いになりますよ?」ニコッ

黒獣「私が悪かった」ズザザザザッ


姫(あの黒神獣様が……あんなに頭を擦りつけて許しを請われていらっしゃる……!)

少女(黒獣さんの本当の姿……ちょっと気になるかも)

妖精「……」ハァ……

白獣「もう、黒様ったら……ッ!」バッ

黒獣「! この気配は……」

少女「……!」ガクンッ

妖精「!」フラッ……ペタン

姫「少女さん、妖精さん!」

少女「こ……これって……まさか」ブルブル

白獣「……やはり、貴女にもわかりますか」ギュッ サスサス


少女「あ、ありがとう……」

姫「白神獣様、一体何が……!」

黒獣「ふん、あの阿呆……目覚めおったか」チッ

姫「え……?」

妖精「……」パタパタ……ピトッ

少女「妖精さん……大丈夫、大丈夫だからね」ギュッ

少女(……側近さん……魔王様……皆……ッ!)


――――
――

側近「……」ジリッ

僧侶「あ……ぅあ、あ……」カタカタ

兄魔王「本当に最高の気分だな……この腕、脚……仮初めではない、すべて俺の物だ……!」グッ

側近「……ッ」ダッ

兄魔王「さて、早速復活後の最初の食事と行きたいところだが……その前に」ピタッ……

側近「!?」

僧侶(指1本で剣を……ッ!)

兄魔王「準備運動だな」トンッ

側近「……ッがあっ!」ズダンッ ズルリ……


僧侶「あ……側近さ……」ブルブル

兄魔王「くく、お前は中々良い表情をするなあ。その忌々しい力さえなければ、メインディッシュにはもってこいだろう」ザッ……ザッ……

僧侶「い、嫌……来ないで……」

兄魔王「良いぞ、ゲテモノなりにもっと怯えて俺を楽しませるんだ……!」ゲラゲラ

魔王「弟ッ!」バタンッ

魔法使い「! あんた……僧侶から離れろっ!!」チャキッ

僧侶「あ……魔法使い、さん……私……」

兄魔王「ちっ、邪魔が入ったか」

魔王「貴様……ついに封印を……!」ギリッ

勇者「あれがお前達の言っていた?」スラリ

魔王「……そうだ。そしてお前を乗っ取っていた奴だ」

勇者「……」


兄魔王「おお弟よ、この姿では久しぶりだなあ……すっかり大きくなって」ニヤニヤ

魔王「ふざけた事を……!」

兄魔王「嗚呼、魔王としてお前達を葬るにはここは相応しくないな……先に行って待つとしよう」シュンッ

魔法使い「待ちな……!」タタタッ

勇者「止めろ魔法使い。もういない」

魔王「僧侶、怪我はないか!?」

僧侶「わ、私の事は良いから……あの2人を……」

側近「ぅ……」ヨロッ……

魔王「弟、しっかりしろ!」ガシッ

側近「兄上……すまない。俺達が不甲斐ないばかりに奴の復活を許してしまった」

僧侶「側近さんのせいではありません……私が、もっと強い結界を張れていれば……」


すみません、修正です。

側近「兄上……すまない。俺達が不甲斐ないばかりに奴の復活を許してしまった」



側近「兄上……すまない。俺が不甲斐ないばかりに奴の復活を許してしまった」


魔法使い「全く、アレで復活したてなのが信じられないわ! ……なんて魔力よ」ブルッ

勇者「……戦士は気を失っているだけのようだな。頭から出血しているせいで酷い怪我に見えるが」

魔法使い「あいつ……一体何処に行ったのよ!?」ダンッ

魔王「大方見当はつく。魔王である事に拘る奴の事だ、辿り着く場所は1つしかない」

側近「……ああ」

戦士「うう……俺は……」パチッ

勇者「戦士、気が付いたか」

戦士「勇者か……あいつは、どうなっ……痛っ……!」ズキンッ

勇者「あまり無理に動くな。今僧侶に診て……」

僧侶「ごめんなさい……本当にごめんなさいっ……!!」ポロポロ

魔王「今更、目覚めてしまったものは仕方がない。こうなった以上は全力で奴を倒すまでだ」


僧侶「ですが……実の兄弟、なのでしょう?」

側近「種違いではあるがな。それに覚悟はとっくにしている」

魔王「こうしている間にも、奴はどんどん以前の力を取り戻していくだろう……ならば、今は一刻も早く奴の元へ行くべきだ」

僧侶「うぅっ……はい!」ゴシゴシ

勇者「……僧侶。戦士の傷を」

戦士「なあ僧侶、俺も油断しちまったのは同じだ。だからそんなに自分ばっか責めるなよ」ポンポン

僧侶「戦士さん……」ポウッ……


側近「……いや、寧ろ封印の前で気を抜いていた戦士の方に非が」

戦士「うおおいそこ! 何気に俺に全部おっ被せようとすんな!!」

側近「冗談だ」

戦士「おいおい、その顔でかよ……」

側近「失礼な奴だな。俺だって冗談位言う時もある」

魔法使い「ねえ。何時までそんな茶番を演じてるつもり……?」ゴゴゴゴゴ……

側・戦「……すまない(悪い)」

僧侶「……終わり、ました」

勇者「よし」

魔王「では改めて……行くぞ!」ザッ


やや短いですが、今回は以上です。

おやすみなさい。


こんばんは。
この頃本当に更新が遅れ気味ですみません!

続きを投下します。


――――
――

白獣「……あら」ピクッ

少女「どうしたの?」

白獣「少女さん、姫さん……勿論妖精さんも。絶対に私達から離れてはいけませんよ?」

姫「白神獣様……?」

黒獣「ちっ……来るぞ」


バタンッ……ズズズッ……

『……ァア……』ゾロゾロ

『ウゥ……グガァ……』ゾロゾロ


少女「な、何……これ」

妖精「!」ギュウウッ

姫「い、一体何が起こっているんですの……!? この者達は……」


黒獣「見ればわかるだろう。こいつらは既にこの世の者ではない……あの馬鹿の仕業だろうな」ギロッ

白獣「哀れな死者に……なんと心ない仕打ちを」ポロッ

少女「こっちに……来る……っ」カタカタ

黒獣「ふん。何のために我らがいると思っている」

白獣「この結界がある限り、彼らはこちらに指1本触れる事は叶いません」フワッ……

『……! ……!!』バンバン

少女「こんなに沢山、何処から……?」

黒獣「……恐らく、過去にこの城で散った者達だ」

少女「え?」

白獣「ここは魔王城です。遥か昔から続く魔王と勇者の戦いで多くの命が消えた場所……」

姫「あ……」

白獣「力を、よりによってこんな事に使うなんて……っ」ポロポロ


黒獣「白娘……」スリッ

少女「ひ、酷い……」ジワッ

妖精「!」オロオロ ナデナデ

姫「皆さん……大丈夫でしょうか……」ギュッ

姫(魔王様……!)

――――
――

魔王「こ、こ奴らは……!」

魔法使い「嫌ッ……! 何なのよこれ!?」

戦士「ま、ま、魔法使い、しっかりしろ!!」ガクガク

魔法使い「震える声で言わないでよ!!」


勇者「こいつら……死霊の類か?」

僧侶「お、恐らくは……ここで死んだ者達が強制的に実体化されているのだと……」ブルブル

側近「奴は……何処まで……ッ!!」ギリッ

戦士「おい、転移はできねえのか!?」

魔法使い「無理よ! さっきよりも妨害が酷くなってる!!」

魔王「……悔しいが私もだ。恐らく奴が完全復活した事が影響しておるのだろう」

魔法使い「何ですって!?」

勇者「……ではこいつらを蹴散らしながら進まなければならないという事か」スッ

側近「! お前、斬るというのか!? 1度死んだ者達を再び!!」

勇者「そうしなければ奴の元へ行けないのならやむを得ないだろう」

僧侶「ま、待って下さい!」

魔王「僧侶……」

僧侶「ここは……どうか私に任せてください」


短いですが、今回は以上です。

日常が忙しくなってきたからか、更新速度と量がかなり落ちていますね……。
展開のせいでもありますが←
とりあえず、しばらくはこの位のペースの更新になると思います。

おやすみなさい。


こんばんは。
とんでもなく間が空いてしまいましたが、続きを投下します。

もっと体力が欲しい……!


魔法使い「……悔しいけど、確かにこういうのはあんた向きよね」

僧侶「ええ。ですがそれ以上に、このような事態の引き金を引いてしまった責任もあります」

側近「僧侶、だから気にするなと……」

僧侶「そう簡単に気持ちを切り替える事なんてできません!」

魔王「しかし……」

僧侶「それに、今ここで戦って皆さんが消耗してしまう方が痛手になると思います」

勇者「……確かにそれは一理ある。だが……」

僧侶「大丈夫です。奥の手を使う事に比べれば……こちらの方が本来の私の役割ですしね」ニコッ


戦士「勇者、どうする?」チラッ

勇者「……迷っている暇はないな。僧侶、頼む」

僧侶「はい」スッ

魔王「……死者を傷つけずに済むならそれに越した事はない、が」

側近「くれぐれも、無理はしないで欲しい」

僧侶「ふふ、ご心配なさらず。では……」

僧侶「これより彼らの浄化に入ります。皆さん、ほんの少しだけ力を貸してください!」キッ


魔王「僧侶、我らは何をすれば良いだろうか?」

僧侶「浄化を邪魔されないように私を守ってください。結界などを張って貰えれば手っ取り早いのですが……」

側近「……兄上」チラッ

魔王「うむ、それならお安い御用だな」スッ

勇者「魔法使い。お前も協力しろ」

魔法使い「あたしはこういうの不得手だって知ってるでしょ?」

勇者「俺はお前以上に不得手だ。だから個々の消費を少しでも抑えるために魔王に協力して欲しい」

魔法使い「冗談じゃないわ! 只でさえこの状況に耐えられないのに……!」

勇者「ぐずぐずしていたらもっと長引くぞ」

魔法使い「それは……っ」


魔王「結界位なら私だけでも十分だが……」

勇者「お前は戦力の1人だ。ここで余計に消耗させるわけにはいかないだろう」

戦士「な、なあ、俺は魔法が使えねえから下がってて良いんだよな?」

僧侶「……そうですね。彼らを闇雲に傷つける訳にもいきませんし」

側近「俺も兄上達の援護をした方が良いだろうか」

僧侶「側近さんは、もしもの時のために勇者さん達と下がっていてください」

側近「わかった」

勇者「頼む、魔法使い」

魔法使い「……これっきりだからね」

勇者「ああ」

僧侶「準備は宜しいですか? では……行きます!」


――――
――

魔法使い「僧侶、余力は?」タッタッタッ

僧侶「まだまだ大丈夫です!」グッ

勇者「僧侶の浄化が効いたのは幸いだな」タタタッ

戦士「おい……何でまたお前を背負わないといけないんだよ」

僧侶「魔王さん達を除けば、この中では戦士さんが1番スタミナがあって私がないんですよ? 当然の結果です」

戦士「いや、おかしいだろ!」

僧侶「ですが、現にそうやって突っ込みながら走る余裕があるじゃないですか」

魔法使い「あんた、さっきは震えてばっかりで何にもやってないじゃない。これ位は役に立ちなさいよ」ジロッ

戦士「うぐ……っ」


魔王「……彼らは、救われたのだろうか」タタタッ

側近「兄上、浄化された彼らは安らかな顔をしていただろう? きっとそうだ」

魔王「ん……そうだな」ホッ

僧侶「……本当に、情の深い方々です」

魔法使い「ふん、偽善者共が」ボソッ

勇者「魔王、あとどれ位で着く?」

魔王「もう少しだ、この階段を下りれば……ッ!」ピタッ

?「……ふうん、ちゃんと成長はしてるんだぁ」クスクス

?「当たり前でしょ。あれから随分経っているんだから」

側近「兄上……!」

魔王「ま……まさか……嘘だろう」ブルッ


魔法使い「……何、あいつら」チャキッ

?「だって、あいつに喰われて以来よぉ? 地上に戻って来るのは」

?「それでも少しは察してよ。だから私より先に食べられちゃう……なっさけない」

?「あはぁ。そっちだってあの後すぐに食べられた癖にぃ」

?「……喧嘩売ってる?」

?「だったら何よぅ」

側近「何故ここに……姉上達が……」

僧侶「姉? この方達がですか!?」

魔法使い「へえ、じゃあ中々骨がありそうじゃない。勿論やっちゃって良いんでしょ?」スッ

側近「……ああ」ギリッ

魔王(……自分が喰った者達まで駒にするか……!)ワナワナ


勇者「……どちらも髪の色が銀色だな。双子か?」

魔王「いや……確かに共に腹の中にはいたが双子ではない。何でも母上が同時期に銀髪の2人の魔族と交わったらしい」

戦士「言われてみれば……背格好は近いが顔はあんまり似てねえな」

僧侶(こうして見てみると、皆さんあまりお顔は似ていないんですね……)

勇者(何にせよ、凄まじい魔力を持っている点だけは変わらない)

魔王姉2「……まあ、今はこうして言い争っている場合じゃあないね」

魔王姉1「そうよぉ。今何よりも優先するべきなのは」

姉1・2「こいつらを死ぬギリギリまでいたぶる事♪」ニイッ


今回は以上です。
魔王の兄弟はぶっちゃけ全員種違いですね←

改めて見ていると戦闘描写は結構カット気味……もう本当に気の赴くままに突っ走りたいと思います(笑)
更新は亀ですが、質問やわかりにくい部分がありましたら答えられる範囲でお答えします←

おやすみなさい。


こんばんは。
何時も読んで下さりありがとうございます。

よくよく考えてみたら前スレを立ててから今日で1年になるんですね……早いものです。
とりあえず1周年記念のケーキに妖精をダイブさせておくか……←

てなわけで、続きを更新します。


勇者(……来る)スッ

魔王姉1「じゃあまずはぁ……いっちばん弱っちそうなあんた!」ジャキンッ

僧侶「ッ……!」ビクッ

戦士「おいおい、俺の事は無視かよ……」

魔法使い「舐められたものね」

魔王姉1「え? もう害のない虫の事なんかいちいち気にしないでしょお?」

戦士「……ぇ」ピキッ

勇者「どうした?」

戦士(う……動けねえ……!? 何時の間に)ギシッ

魔王「戦士!? しっかりしろ!!」

側近「……姉上、戦士に何をした」ギロッ

魔王姉2「あら? まさか彼女の『父親』を忘れたの? それとも知らなかったっけ」クスッ

戦士「あ……が……っ」

魔王姉1「あたしは……淫魔の王の娘よお?」ニヤァ


魔法使い「……淫魔の魅了の能力ってわけ」ギリッ

魔王姉2「男にしか効かないけどね。それにそこの勇者や愚弟達は無理。でしょ?」チラッ

魔王姉1「そうねえ……でも、あんたには効いて良かったわぁ」

戦士(クソッ! 情けねえがあいつから目が離せねえ……)

魔王姉1「あーあ、それにしても惜しいわねえ。もしも排除する対象じゃなければ死ぬまでベッドで搾り取ってあげるのにぃ」ペロリ……

戦士(何……だと……)ゴクリ

魔法使い「……汚らわしい」

魔王姉2「ふふっ、そっちばっかり気にしてて良いのかな~」パチンッ

『!?』ズズンッ……ビタッ

魔王姉2「とりあえず、皆まとめて這いつくばっちゃって♪」


魔王姉1「ちょっとお……これじゃああたしが仕掛けた意味がないじゃない」

魔王姉2「あ、ごめんね? 役立たずにしちゃって……元からだっけ」

魔王姉1「……ねえ、さっきのお返し?」

魔王姉2「さあね~」

魔法使い「……」ブツブツ

魔王姉2「!」

魔法使い「……!」グッ……バヅンッ

魔王姉2「……へえ。人間風情にこれを壊されるなんてね」

魔王姉1「あんたも駄目駄目ねぇ」クスクス


魔法使い「……ふう、久しぶりの詠唱だからヒヤヒヤしたわ」ムクッ

側近(竜の目の魔力で重力に干渉したのか……)

魔王「皆、大丈夫か!」ガバッ

勇者「ああ」

戦士「いてて……今ので動けるようにはなったな……」サスサス

僧侶「戦士さん、大丈夫ですか? 倒れた衝撃で私の全体重が……」オロオロ

戦士「心配してくれるならとりあえず降りてくれよ」

魔法使い「全く、物理以外には本っ当に弱いんだから……もうあいつの目を見るんじゃないわよ」

戦士「わかってらー」

魔王姉1「あはっ、まさかアレだけがあたしの能だとは思ってないわよね?」

魔王姉2「あんなのはほんの小手調べ……」ジャキッ

魔法使い「……ふん」チャキッ


戦士「ま、魔法使い、俺の武器……」

魔法使い「あ、忘れてた。ちょっと待ってなさい」

魔王「待て」スッ

側近「兄上?」

魔王「……お前達、ここは私がどうにかするから先に行ってはくれないだろうか」

魔法使い「……は?」

戦士「え、何だって?」

側近「無茶を言うな兄上! 幾ら成長したとはいえ、あの2人に1人で挑もうなど自殺行為だぞ!!」

僧侶「そ、そうですよ! 第一そのような状態で……!」

魔王「僧侶、この2人は貴女でも一筋縄ではいかない。だからどうか私に任せて欲しい」

勇者「……何か秘策があるのか」

魔王「ふ、なければこんな事は言わぬよ」


側近「それでも、貴方をここに残して行くのは……」

魔王「……大丈夫だ、命を賭すわけではない。ただ今から私がやる事は、お前達が傍にいると非常に都合が悪いんだ」スッ

魔法使い「! ちょっ……」

魔王「失礼」ジャラララッ

姉1・2「!」シュルルッ

戦士「うおおお解けねええええ!!!!」ギチッ

僧侶「ま、魔王さん!」グイグイ

魔法使い「約束が違うじゃない! だから魔物は信用できないのよ!!」

勇者「……」

側近「……信じて良いんだな?」ギュウウッ

魔王「ああ……精々私の心が痛むだけで終わる」グッ

側近「!? 兄上それは……!!」


魔王「うおおおおお……!!!!」グイイッ……

戦士「え……まさか」ジワッ

魔王「……あああああああああああッッッッ!!!!」ブンッッッ

僧侶「きゃ……きゃあああああ!!!!」

魔法使い「こんの糞野郎があああああ!!!!」

勇者「……!」

戦士「ひぃえええええおおおおあああああああ!!!!」

側近「兄上……無茶は……!」


ヒュウウウウ……ガチャッ バタン


魔王「……」シュルルルルルル……フッ

魔王「……」チラッ

姉1「……」ブチッ

姉2「やってくれるね」バラバラ

魔王「嗚呼、また鎖が減ってしまったな……多数を縛るのは骨が折れる」

姉1「それだけじゃないでしょお? あたし達が手を出せないように妙な魔力障壁まで張っちゃって」パリンッ

魔王「正直通用するかどうかは賭けだったよ。少し前に初めてやったからな」

姉2「……本当にあの愚弟? 随分と立派になったものだね……武器以外」ジッ


魔王「そうか? 自分では良くわからないが……」

姉1「1つ訊きたいんだけどさ、それであたし達に勝てるって本気で思ってるのぉ? そんな武器と腕で」ニヤニヤ

魔王「……ふっ」

姉2「何がおかしいの?」

姉1「てかあんた笑えたんだあ? あれと一緒に怯えてる顔しか見た事なかったけど」

魔王「……この表情も、つい最近できるようになったんだ」

姉2「そう。ま、今からまたあの顔しかできなくなっちゃうだろうけどね」クルクル……ブンッ

魔王「それはどうだろうな……それに姉上達は何か勘違いをしている」

姉1・2「?」

魔王「腕は使わん。武器も使わん……ただ、生まれ持った能力のみを使って私は貴女達を地へ還す」


今回は以上です。

おやすみなさい。


こんばんは。
い、何時の間にか最後の更新から3週間近く……!

続きを投下します。


姉1・2「……」

姉1・2「……ぷっ」

姉1・2「あはははははっ!!!!」ケラケラ

魔王「……」

姉1「生まれ持った能力ぅ? あんたにそんなのあったんだ?」

姉2「ギャグにしては寒過ぎるんだけど」

魔王「……笑いたければ、幾らでも笑うがいいさ」スッ

姉2「言われなくても笑うわよ……うふふふっ」クスクス

魔王「……」ギュッ


姉1「何? まさか怖気づいちゃったあ? そんなに大層な力なのぉ?」

魔王「そうだな……できれば使いたくなかったよ」ツゥッ……

姉2「!」

姉2(泣いてる……?)

魔王(本当は死ぬまで使いたくなかったが……大切な者達を守るためだ。腹を括らねば)ポタッ……ポタッ

魔王(落ち着け……2人とも既に死んでおるのだ……!)グッ

魔王「……ふーっ……姉上」ゴシゴシ

姉1・2「?」



魔王「……さよならだ」ギンッ


姉2「ッ!? ……なんだ、何も起きないじゃない」

魔王「……」

姉1「きゃははっ、睨むだけで解決するなら苦労しなぷげぇッ!?」ドクンッ

姉2「……え?」クルッ

姉1「ァ、ガッ……ぐげぇあああアァアア……!!!!」ガクガクガク……ビチャッ

姉2「ちょ、ちょっと、どうしたっていうのよ……何でそんなに苦しんでるの!?」

姉1「ヒぐ、あ……ぐて……ぃ……なにを……ガハァッ」ベチャッ ボタボタボタタ……ッ

姉2(どういう事!? あいつが睨んだだけで……こいつの顔の穴という穴から血が……!)ゾクッ

魔王「……先程の言葉を、そっくりそのままお返ししよう」コツッ……コツッ……

姉2「先、程……?」

姉1「ぁ、げェえっ……くるひ……ゴホォッ!」コヒュー……コヒュー……

魔王「私の『父親』が誰か、忘れたか?」

姉2「……ッッッ!?」


魔王「……貴女の父親は、母上が遠征先で偶然見つけたエルフの屈強な戦士だったと聞く」

姉2「……それがどうしたのよ」ジワッ……

魔王「今でこそ、表へ出る事の少なくなった彼らの一族だが……その原因の一端となったのは」

姉1「かは……ぁ……ッ……」ガクンッ……ビクンッ……

魔王「……ある魔物の襲撃であると書物に記されていた」……ピタッ

姉2「それって……」

魔王「母上……先代の魔王はその事にいたく興味を持ち、貴女達を産んだ後に彼の魔物を次なる種馬とした」

姉2「……」

魔王「ただし、あまりにも危険な魔物だったために……手に入れるのは非常に苦労したようだが」

姉2(そうか……こいつの能力は……!)カタカタ

魔王「……何故ならこの目よりも遥かに早く見る物を死に至らしめるからな」

姉2(蛇の王……の……)フラッ……ペタン


魔王「……そろそろか」

姉1「い……だぁイ……ょ……たひゅ……け……」ピク……ピクッ……

魔王「大丈夫だ、じきに楽になる……心臓に」

姉1「ひぅッ……!」ビクンッ……

魔王「『到達』したからな……死が」

姉1「」シュウウウウ……

魔王「……やはり死者に効く程強いのだな。この力は」

姉2「……ッ!」ギリッ

魔王「さて、どうする……今のは見せしめだ。同じ道は辿りたくはなかろう?」

姉2「……ないで」

魔王「!」

姉2「ふざけないでッ! 今更退ける訳ないでしょ!? 私は死んでも魔王の娘なんだから!!!!」キッ


魔王「……その割には震えておるではないか」

姉2「ッ……く」ギリッ

魔王「では、仕方がない……」

姉2(……あれ?)ピクッ

魔王「一気にいかせてもらおう。弟達が心配だからな」

姉2(体が、動かない……ッ)

魔王「私が意味もなく、こんな事を長々と口にしていたと思うか?」

姉2「あんた……これ以上、何を」

魔王「大した事ではない。ただ、貴女の魔力と体を私の魔力で抑えつけただけだ」

姉2「なに、それ……!?」

魔王「私は一通り魔法を学びはしたが、攻撃系統のそれはあまり思うように使えない……誰かを傷つけるかもしれないという恐れから、な」

姉2「はっ……あんな事、しておいて……よくもそんな口が……」


魔王「……だが、その代わりにこういった事は得意なようだ」

姉2「くっ……」

魔王「それでも少々骨が折れたよ。何せ貴女の魔力は我らの中で最も強いからな……昔の私ならば間違いなく不可能だった」

姉2「……成長したんだね。憎たらしい位に」ギロッ

魔王「そうだな」

姉2「じゃあさっさとやりなさいよ……一気にいくんでしょ」

魔王「嗚呼、そうだったな……」ジロッ

姉2「……やっぱりあんたも魔王の子供ね」

魔王「そうだな……姉上」

魔王(再び葬る前に力を認められた事が、何故か……ほんの少しだけ嬉しかったよ)


――――
――

魔王「げェっ……ぅおええええッ……!」ビチャビチャ……ッ

魔王(はっ……何が『誰かを傷つけたくはない』だ)ゼェゼェ

魔王(こんなにおぞましい力を持っておいて……)

魔王「……はぁっ……はぁっ……こんな目など……っ!」スッ

魔王「ッ……ぐ、ぅ……」ピタッ

魔王「……臆病者め」ギュッ

魔王(こうしている時間が惜しい……もう目も戻ったな)

魔王「……今は、とにかく行かねば……大切な家族のためにも」ヨロッ……

魔王(でなければ……姉上達を手にかけた意味がないのだから)テク……テク……


今回は以上です。
自分でももっと長いと思ったのに……!
今年中に決着が着くと良いな←

おやすみなさい。


こんばんは。

続きを更新します。


――――
――

謁見の間

『……ああああぁぁぁぁあぁぁあぁ!!!!』ヒュルルルルル……

戦士「がふゥっ!!」ドスンッ

僧侶「きゃッ!」ベシャンッ

魔法使い「ぐっ……!」ドシンッ

勇者「……ッ」ドン……ッ

側近(ほう……手加減されていたとはいえ、この状況で受身を取ったか)ドッ……クルンッ

ジャララララ……バタンッ

魔法使い「あ……開けろー! 開けろってのー!!」ドンドン

戦士「くそっ……ビクともしねえな」ガンッガンッ

僧侶「ふ、2人とも! そちらも大事ですが今は扉よりも……」


『ふん、遅かったな』

側近「ッ!」バッ

兄魔王「待ちくたびれたぞ」クチャクチャ

勇者「……」ジャキンッ

魔法使い「! ……悔しいけど、僧侶の言う通りね」チャキ

戦士「あ、あいつ……ッ!」

僧侶「……!」ブルッ

側近(……一足遅かった……!)

兄魔王「この玉座、中々の……んぐっ、座り心地だなあ。これぞ魔王に相応しい」バリバリ……ゴクンッ

側近「……貴様に座らせるために手入れをしていたわけではないぞ」ギロッ

兄魔王「俺は魔王だ。これはそのためのものだろうが」


側近「貴様は魔王などではない……そのような器ではない」

兄魔王「俺が勝ちとった座を横から掠め取っておいて良く言う……んん?」

側近「……」ジャキッ

兄魔王「良く見たら1人足りないなあ? 実に残念だ……」ペロリ……

魔法使い「……」スーッ

兄魔王「嗚呼、あいつに見せてやりたかったよ……こうして己の腕が俺に喰われる様をなあ!」ニィィ

側近(すまない……兄上……!)ジワッ


勇者「……気をつけろ。油断はするな」ボソッ

僧侶「そ、そんなの……頼まれたってしませんよ」

戦士「ま、魔法使い! まだか!?」チラッ

魔法使い「うるさいわね! 集中できないから黙りなさい!!」ススッ

兄魔王「何をするつもりかは知らんが……無駄な事だ」スッ

側近「!? 貴様何を……」

兄魔王「この力の前ではなあ!!!!」ズズズ……ッ

魔法使い「……ッ?」ガクンッ

僧侶「魔法使いさん!?」


勇者「……!」

側近「これは……」

戦士「お、お前ら一体どうしたってんだよ!?」

兄魔王「ぎゃはははははは! 魔力を吸い取られる気分はどうだ虫けら共!?」ゲタゲタ

戦士「魔力を吸い取る……だと?」

側近「馬鹿な……以前の貴様にそのような力はなかった筈だ!!」

兄魔王「それはそうだろう。何せ……お前達に封印される少し前に手に入れたものだからなあ!!!!」

側近「!?」

勇者「! ……そう、か」ユラリ

僧侶「ゆ、勇者さん?」

勇者「この能力……そういう事だったのか……」ブツブツ

側近「勇者……?」

勇者「……お前が、祖母の仇だな」ジロッ


魔法使い「え……?」

戦士「何だと!?」

僧侶「それってどういう……」

兄魔王「……」ニヤニヤ

側近「貴様……一体何時先代の勇者と接触する暇があった!?」

兄魔王「何時だと? そんなもの、愚妹達を相手取っている時に決まっているだろう……血が絶えていなかった事には驚いたがなあ」

勇者「……自分でも驚いている。俺がこうしてここにいる事自体が奇跡のようなものだしな」


すみません、訂正します。


勇者「……自分でも驚いている。俺がこうしてここにいる事自体が奇跡のようなものだしな」



勇者「……自分でも驚いている。俺が今こうしてここにいるのが奇跡のようなものだしな」


兄魔王「だが、同時に納得もした。でなければ……」

側近(……奴は『魔』とは対極の位置にある勇者の体を乗っ取る事が出来た。それが意味するのは……!)

兄魔王「幾ら母上との死闘で満身創痍だったとはいえ……それでもあの女を」

側近(俄かには信じられん事だが……『勇者』の肉体に体が馴染んでいる状態だった)

兄魔王「喰い殺す事ができなかったかもしれないからなあ!!!!」

側近(その肉を自ら取り込んだ事によって……!)ゾワッ


今回は以上です。
進み方があやふやで申し訳ありません……!

おやすみなさい。


こんばんは。

続きを投下します。


勇者「……そんなに魔王の地位が欲しかったのか」

兄魔王「お前の祖母殿は中々に美味であったぞ! ……『直前に喰った肉』がなければ今まで食べた中で1番の極上品だったろうなあ!!」

側近「……直前に、喰った肉?」

兄魔王「俺が万が一の事を何も考えずに勇者の肉を喰らうと思ったか? 愚弟」

側近「! まさか……」ワナワナ

兄魔王「……」ニヤニヤ

側近「……『母上も』……喰ったのか……!?」

僧侶「!?」


兄魔王「それがどうした。ああ、本人の許可は得ているぞ? ……勇者の時と違ってなあ」ニヤァ

側近「ふざけるな! 母上を喰らうなど幾ら何でも……!!」

兄魔王「ふざけてなどいないぞ? 考えてもみるがいい……我らは身内で頂点を巡って喰らい合う家系だ」

魔法使い「……」ギロリ

兄魔王「兄弟姉妹の肉が喰えて、親の肉が喰えん道理はあるまい?」クックッ

戦士「……イカれてやがるぜ。本当によ」

勇者「……」

兄魔王「お陰で俺は更なる力を手に入れ、愚妹共を打ち負かし……こうしてここにいる!」ドンッ

側近「ッ……!」ブルブル

僧侶(……なんと恐ろしく……罪深いのでしょう……)カタカタ


勇者「……言いたい事は」

兄魔王「んん?」

勇者「それだけか」ザッ……ザッ……

側近「!」

勇者「お前が祖母を喰らわなければ……あんな事には……」ブツブツ

兄魔王「ふん、今更何ができるというのだ? 魔力もほとんど残ってなどいないというのに」

勇者「……そんなもの必要ない」ザッ……

兄魔王「ほう?」

勇者「これさえあれば戦えるからな」ジャキンッ

側近「!」

兄魔王「……まあ、あっさり終わってもそれはそれでつまらんしなあ」


勇者「それに……俺は」

魔法使い「……ふう。何とか間に合いそうね」ムクッ

僧侶「魔法使いさん……!」

戦士「おい、大丈夫なのか!?」

魔法使い「はっ、四つ目の魔女を舐めんじゃないわよ」スッ……ゴォッ

勇者「……1人で戦っているわけではない」

兄魔王「ふん、仇を前にして仲間に頼るか。みっともない事だなあ……あの女は1人で母上に挑んでいたぞ」

勇者「仲間に頼って何が悪い」

兄魔王「下らんな。本当に」

勇者「……まあ、そういう存在がいないお前にはわからないだろうな」チラッ

側近「! ……確かにな」スッ


兄魔王「愚弟。お前もまだやろうというのか?」

側近「確かに魔力を奪われるのは痛手だが……俺も魔法よりこちらの方が得意だからな」ブンッ

兄魔王「は、その強がりが何時まで続くかなあ?」

側近「何時まで、だと? そんなもの……」





少女『側近さん!』





側近「……守るべき者がいる限りさ」

兄魔王「ほざけ! ならばそいつ諸共あの世へ逝くが良い!!」ゴゴゴ……


魔法使い「これで……いけるわ」ススス……スッ

戦士「ようやく出番だな!」ワキワキ

魔法使い「ええ……遅くなって悪かったわね」ボソッ

僧侶(魔法使いさんが謝罪を……!)

魔法使い「さあ、使い手と共に思う存分暴れなさい……あたしの分までね!」カッ

戦士「っしゃあ!!」ガシッ

魔法使い「狂乱の権化、『元』呪いの大斧ッ……!!」シュウウウウ……

戦士「うおおおおお!!!!」ブンッブンッ……ブンッ


魔法使い「……」フラッ

僧侶「お疲れ様です」ガシッ

魔法使い「ん……悔しいけど、流石にこれ以上はきついみたい」チッ

側近「! 魔法使い、その姿は……」

魔法使い「うるさい黙れ見るなさっさといけ」プイッ

側近「ッ……すまない」クルッ

僧侶「魔法使いさん……」


魔法使い「ねえ僧侶。あたしはまだ『あたし』よね?」

僧侶「……はい。間違いなく何時もの魔法使いさんです」

魔法使い「そう。良かった」

僧侶「例えこんなに……肌が鱗に覆われてしまっていても、魔法使いさんは魔法使いさんですから」サスサス

魔法使い「『眼』だけの分際で生意気よね。本当」

僧侶「あのドラゴンですもの、仕方ありませんよ」

魔法使い「……ふん」

魔法使い(あんたたち……負けるんじゃないわよ)


今回は以上です。
勇者達サイドの話って需要ありますかね?←

おやすみなさい。

途中に別の話が混ざるのは嫌だから
終わってからか別スレなら
本命をしっかりやってから浮気しましょう


こんばんは。
お久しぶりです。

>>455ご意見ありがとうございます。ずっと前から悩んでいた事なので大変助かりました。
勿論ここに挿み込むようなKYな事はしませんが、参考になりました。
とりあえず彼らについては、機会があれば何時かスレ立てしたいと思います。

では長くなりましたが、続きを更新します。


――――
――

少女「……」

姫「……」

妖精「」パタパタ

白獣「浮かない顔ですね」

少女「白獣さん……そりゃあ、そうだよ」

白獣「まあ、周りを彼らに囲まれていてはそうなってしまうのも無理はありませんね」チラッ


『……ヴァ……あぁア……』

ガタガタ……バンッバンッ


少女「……」

白獣「……勿論、それ以外も原因はあるでしょう」


姫「あの、白神獣様……本当に私達は何もしなくて良いんですか!?」

少女「お姫様……」

白獣「お気持ちはとてもわかります。ですが、彼らにとってはこれが最善なのですよ」

姫「それは理解しておりますが……!」

黒獣「しつこいぞ小娘。それ以上白娘を困らせるなら噛む」ギラッ

姫「ッ……!」ビクッ

白獣「黒様!」

黒獣「……仮にお前がここから出たとして、一体あいつらのために何ができるというのだ?」

姫「そ、それは……」


黒獣「武術の心得もなく、何か術が使えるわけでもなし……それこそ王族であるというだけの非力な人間」

黒獣「それがお前だ」

姫「っ、ぐ……」

黒獣「その事を忘れるな」プイッ

少女「黒獣さん、そんな……あんまりだよ!」

黒獣「黙れ、噛み砕かれたいか」ギロリ

少女「ひっ……!」ビクッ

白獣「黒様、あまり少女さんを脅かさないでください!」

黒獣「ふん……召喚主でなければ今すぐにでも八つ裂きにしてやりたい所だ」

白獣「だからそういう事を言わないでくださいったら!!」

妖精「……!」キーキー

少女(……どうして黒獣さんはこんなに私を嫌うんだろう? 白獣さんと何か関係があるの……?)

少女(なにも……わからないよ……)ギュッ


――――
――

戦士「うおおおおおおお……!!!!」ダダダッ

兄魔王「ふん、わかりやすい的めが」ズズッ……ドンッ

戦士「馬ー鹿。それが狙いだっ!」バシュンッ

側近(あの斧……魔力を受け止められるのか……!)ダダッ

戦士「勇者ッ! 側近!!」

勇・側「……ッ!」ブォンッ

兄魔王「甘いわ! そんなものが当たるか!!」スカッ スカッ

側近「くっ……」


勇者「戦士、また頼む」チャキッ

戦士「任せろ!!」ザザザッ

兄魔王「何度来ようが同じ事だ」ゴォォ……ッ

側近「……何時もこのような戦い方を?」

勇者「滅多にやらないな。今回は魔法使いがあんな状態だから特別だ」チラッ

魔法使い「……」

僧侶「……大分人の肌に戻ってきましたね」ジッ

魔法使い「でも、同じ事をしたら今度は確実にあいつに吸われる……手詰まりね」チッ

僧侶「吸収される限界まで放出する事は……やっぱりできませんか」

魔法使い「そんな事をしたら『あたし』が消えちゃうわよ! 最悪あいつを倒せても共倒れになる」

僧侶「そうですよね……無茶を言ってごめんなさい」


戦士「でりゃああああっ!」

兄魔王「しつこいぞ虫けらぁ!!」ビュッ

戦士「! ……来た」ニヤリ

兄魔王「!?」

戦士「喰らえええええええ!!!!」バシュッ……ギュルルルルル

側近「な……!?」

勇者「……行くぞ側近」ダッ


側近「待て! あれは大丈夫なのか!?」ダダッ

勇者「問題ない。あれは魔力を放った相手しか狙わないからな」

側近「そ、そうか……だが、まさか」

兄魔王「ぬうっ……これはあ!」ブシュウウウウ……

戦士「流石にびびっただろ? これがこいつの『今の』力だ……!!」シュルルル……カシャンッ

側近(斧の刃の部分が外れて飛んでいくとは……)


勇者「……元々あれにかけられていた呪いは違うものだった」

勇者「だが、魔法使いがその性質を弄り……少しだけ扱いやすくしたんだ」

側近「それでも見ていて危なっかしいな」

勇者「だから普段は魔法使いに厳重に保管して貰っている」

側近「成程、な……ッ!」ブオンッ

勇者「……ッ!!」ヒュッ

兄魔王「おのれ……調子に乗りおって!!」シュンッ

側近「障壁か!」ガキンッ

勇者「……中々固いな」

側近「少し待て……はあっ!」ズン……ッ


パキキ……パァァンッ


兄魔王「っ糞がぁッ……!!!!」ギリリリッ

側近「勇者ッ! 今だ!!」

勇者「……感謝する」ダダダッ

兄魔王「くっ……まさかこの俺が……!」

勇者「覚悟しろ……祖母の仇」チャキッ

兄魔王「……などと言うと思ったか?」ニタッ

側近「!?」ゾクッ

兄魔王「ふ……はあああっ!!!!」ゴゴゴゴ……ドゴンッ

勇者「ッ……」ズザザザ……


戦士「勇者!」

側近「貴様……」

兄魔王「忘れたか? 俺が喰ったのは母上とあの女だけではない」

側近(……魔力が膨れ上がった……!!)

兄魔王「こちらはまだまだ余裕があるぞ? こんな事もできる位なあ」ボシュッ

戦士「! しまったぁ!!」クルッ

魔・僧「!!」ギュイイイイイ……

兄魔王「そいつらは狙わないと思ったか? 消し炭になるのを見ているがいい!!」

勇者「くっ……」ダッ


側近「僧侶! 結界を!!」ジャキッ ダダダッ

兄魔王「馬鹿め、その距離で間に合うと思うか?」ゲタゲタ

魔法使い「畜、生……!」ググッ……

僧侶(は、早……これでは結界が!!!!)


ドゴォッ シュウウウウウウ……


戦士「魔法使い!!!! 僧侶おおおおおおおおお!!!!」


魔・僧(……)

魔・僧(……?)パチッ

「ふう……ギリギリだったな」シュウウウ……

勇者「!」

側近「あ……」

戦士「ま……」

僧侶「魔王さんっ!」

魔王「いや皆、遅くなってすまないな」ザッザッ

魔法使い(こいつ、何時の間に……)


側近「兄上! 姉上達は……?」

魔王「嗚呼、心配ない。ちゃんと……片をつけた」

側近「……そうか」

兄魔王「ちっ……役立たず共が」

僧侶「あ……た、助けてくださってありがとうございます!!」ペコッ

魔王「いやいや。それより僧侶、もうこのような事がないようにしっかり結界を張っておいてくれ。彼女のためにもな」チラッ

魔法使い「! ……ふん」プイッ

僧侶「わ、わかりました!」スッ……シュンッ

魔王「うむ、それで良い。くれぐれも力の出し惜しみはするなよ……これが最後の戦いだからな!」ジャランッ


今回は以上です。
脳内で色んな話がごちゃごちゃし過ぎる……。

おやすみなさい。

他所で吐き出して来てもいいのよ


こんばんは。
少し前にネタの神様が降臨され、ようやく決着の目処が……!←
後はそれを少しずつ形にしていくだけです。

>>472他所……お気持ちは大変ありがたいのですが、自分のような遅筆な者がスレ乱立させても迷惑になりませんかね?←
それにそちらも浮気になりそうな気が……。

とりあえず更新再開です。


兄魔王「最後だと? ……笑わせてくれるな! それともお前達の最期という意味か?」

魔王「……」

側近「兄上、気をつけてくれ! 奴はこちらの魔力を吸収する……それに母上と先代勇者の肉を……」

魔王「何!? ……成程な。だから彼女はこうなっているというわけか」ジワッ

魔法使い「……」ジロリ

魔王「だが、それならそれで他にやりようはある」スッ ゴゴゴゴゴ……

兄魔王「!」

魔王「喰らうがいい」ゴゥッ

兄魔王「……お前、聞いていなかったのか? 何故こちらに向かって魔力を放つという真似ができる!!」ズズズ……

魔王「……」ボンッ ドヒュッ

側近「兄上……!?」


戦士「何やってんだよ! そんな事したらあいつの思うつぼだろうが!?」

勇者「……そういう事か」

僧侶「え?」

魔法使い「あいつ……わざとやってるわね」

戦士「わざと?」キョトン

側近「! まさか兄上」

側近(奴に限界まで魔力を吸収させて……内側から爆発させようというのか!?)

魔王「……」ボボボ……ッ

兄魔王「ぎゃはははは!! どれだけぶつけて来ようがすべて俺の力になるぞ!!!!」ズズズズズッ

魔王「……本当にそうか?」ドンッ

兄魔王「む……?」ズズ……ドクンッ


勇・側「!」

戦士「あ……」

魔王「ようやく、か」フラリ

僧侶「ま、魔王さん!」

魔王「心配するな、短時間で大量の魔力を消費した結果だ。じきに落ち着く」

側近「これ以上無茶はするな兄上。後は俺達に任せてくれ」ガシッ

魔王「はは、すまんな」

兄魔王「ううっ……こ、これはあ……!?」ドクッ……ドクッ……

勇者「……使い慣れない他者の能力を過信したツケが回って来たな」

戦士「な、なあ……これであいつも終わりって事か?」

僧侶「ええ……その筈です」

魔法使い「……」ジッ

兄魔王「ぐおおお……ああああああああああ!!!!」カ……ッ


勇者「……」タタッ

戦士「勇者!?」

勇者「……とどめを刺してくる」

戦士「あ……おいっ」

側近「止めるな。自分の身内の仇だ……無理もなかろう」

魔王「我らはただ見届けよう。彼が成し遂げる事を」

魔法使い(……)

魔法使い(……?)ジーッ

僧侶「魔法使いさん?」

魔法使い(おかしい……あいつの中の魔力は確かに溢れ出してるけど)

勇者「……」チャキ……ブオンッ

魔法使い(あいつを突き破って出てきているというより、寧ろ……!)ハッ

戦士「な、何だy」

魔法使い「まずい! 勇者そいつから……ッ」


――――
――

少女「……!」ポロ……

妖精「?」

少女「」ポタッ……ボロボロボロッ

妖精「!?」

姫「しょ、少女さん!? 突然どうされたんですか!?」サスサス

少女「あ、わ、わかんない、急に目から勝手に……」ゴシゴシ

白獣「! 少女さん……」

妖精「」オロオロ

少女「妖精さん……何でかわからないけど、凄く悲しいの……どうしてかな?」ボタッ パタタッ


白獣「……これは少々厄介な事になったようですね」

姫「白神獣様? それは一体……」

白獣「少女さん。以前もそのような事がありましたか?」

少女「へ? え、えっと……そういえば、ずっと前にこんな事があったかも」ゴシゴシ

白獣「少女さん。落ち着いて聞いてください……今貴女の大切な方達に命の危機が迫っています……或いは既にそうなっているかもしれません」

少女「!?」

姫「そ、それはどういう意味ですか!?」

黒獣「お前は黙っていろ」ギロリ

少女「何を、言っているの……白獣さん……」カタカタ

白獣「詳しく教えている暇はありませんが、本当の事です。貴女がそのような反応を示しているのがその証拠……」

少女「そんな……!」ポロッ


白獣「彼らを助けたいですよね?」

少女「も、勿論だよ! できるの?」ゴシゴシ

白獣「……これを」スッ

少女「白い……玉?」キラリ

白獣「私の力を凝縮した宝玉です。触れた者の体力や魔力などを全快させる事ができます」

少女「!」

白獣「これを貴女に托しましょう。彼らの元へ行っておあげなさい」ニコッ

少女「えっ……良いの?」

白獣「本当は乗せて行ってあげたい所ですが……この結界は私しか作れませんからね。かと言って……」チラッ

黒獣「私は乗せてなどやらんぞ。絶対にな」フンッ

白獣「……という訳なので、貴女お1人で行ってもらわなければなりませんが、どうします?」

少女「勿論行くよ! これで魔王様や側近さんが助かるのなら……ありがとう、白獣さん」ギュッ

白獣「いいえ。今の私にはこれ位しか貴女を支援する事ができませんから」


妖精「」クイクイ

少女「妖精さん……一緒に行ってくれるの?」

妖精「」コクリ

少女「……ありがとう。とっても心強いよ……白獣さん、良いかな?」

白獣「ええ。少女さんが嫌でないのなら……その代わりしっかりと彼女を支えてあげるのですよ?」

妖精「」グッ

少女「お、大袈裟だな……」

白獣「ふふっ。あ、お守りの杖も忘れずに」ススッ

少女「? ありがとう」スッ

白獣(ここを出たら……少女さん、貴女は今以上に苦しむ事になるでしょうから)

姫「……少女さん」

少女「お姫様、ちょっと行って来るね……大丈夫、ちゃんと戻るから」ニコッ


姫「……ごめんなさい。待つ事しかできなくて」

少女「そんな事ないよ! 寧ろお姫様がここにいてくれる事で凄く安心する」ギュッ

姫「……ありがとうございます」

白獣「では今から一時的に結界を開け、同時に数名、数体の亡者を浄化して道を開きます」

白獣「結界が消えたら、絶対に振り向かずに前だけを見てお行きなさい!」

白獣「それができる程度の道は絶対に確保しますので!!」キッ

少女「は……はいっ」ドキドキ

妖精「」ハラハラ

黒獣「とっとと行け。これ以上白娘の手を煩わせるな」

姫「少女さん……お気をつけて」

白獣「準備と覚悟は良いですか? では……行きますよ!」キィィィ……ン


――――
――

少女「はっ……はあっ……」タタタタッ

妖精「」パタパタ

少女(待ってて……すぐに行くから……!)


ザワッ……


少女「!?」クルッ


ガタ……ガタガタガタ……


少女(あの部屋から……出てくる!)ゾッ


妖精「!」クイッ

少女「あ……そ、そうだね、立ち止まっている暇は……」


バタンッ 


少・妖「!」ハッ

亡者達『……』ズルッ……ズルッ……

少女「ひっ……」

――クルシイ

少女「!」

イタイイタイタスケテモウイヤダオカァサンカエレナクテゴメンナサイマオウサマバンザイイヤダマダシニタクナイマダシヌワケニハイカナインダユウシャサマサヨウナラ……――

少女「!? う、うぅう……あああああ……!!」ペタン


妖精「!?」クイックイッ

少女「嫌、やめて……皆もう死んでるの……!!」ブンブン

少女(流れ込んでくる……この人達の苦しみや悲しみが……!!)ボロボロ

少女(そのすべてに押し潰されそうだ……ぁ……誰か、助け…………)フッ

妖精「!」クイクイッ

少女「……ごめんなさい……何もできなくてごめんなさい……ごめんなさいっ……!」ガタガタ

妖精「~~~~~ッ……!」ブンッ

ペ チ ン ッ

少女「……!」

妖精「ッ……ッッ!!」ペチッ……ペチンッ……

少女「……妖精、さん……?」キョトン

妖精「……」ペチン……ッ


少女「私……何を……」

妖精「……」ウルッ

少女「……ごめんね妖精さん。心配かけちゃったみたいだね」ツンッ

妖精「……~~~ッ!!」ヒシッ

少女「もう大丈夫だと思う……ありがとう」

妖精「」スリスリ

少女(でも状況は……全然大丈夫じゃない)チラッ

亡者達『……』ジリ……ジリ……

少女(私が辿り着くまで、皆どうか無事でいて……!)


――――
――

僧侶「う……」パチッ

僧侶「あれ? 結界は……!」ガバッ

僧侶「み、皆さん! ご無事ですか!?」

魔王「うう……」ヨロッ

側近「何とかな……」

戦士「……勇者は!?」ズキズキ

魔法使い「……あ……!」スッ

勇者「」ジワッ……ダラダラ

僧侶「勇者さん!」タタッ

僧侶(酷い傷……すぐに回復を!)パァァッ


側近「馬鹿な! あそこからここまで吹き飛ばされるなど……!」

兄魔王「……く、くく」

魔王「!?」

兄魔王「嗚呼、生まれ変わった気分だ……魔力の吸収はできなくなってしまったが」ムクッ

側近「あ……何故……」

兄魔王「自分でも驚いているな。まさかこのような事が起こるとは」ニヤニヤ

魔法使い「……強くなってる」ポツリ

戦士「え?」

魔法使い「さっきよりもずっと……なんでよ……」

兄魔王「俺にもわからんなあ。まあ、1つ心当たりがあるとすれば」チラリ

魔王「!」

兄魔王「お前の腕を喰らった事位か」ペロリ


魔王「! ……ッぐ」ズキッ

魔法使い「あ……まさか」

兄魔王「どうやらお前の左腕と魔力は」ポゥッ

僧侶「……え」

兄魔王「俺を更なる高みへと導いてくれたようだ」ヒュッ

僧侶「!? がっ……」ドゴォッ シュウウウウ……

戦士「僧侶ッ!!!!」

側近「くっ」ダダダッ

魔法使い「魔王の腕が、魔王の過剰な魔力を無理なく肉体に馴染ませたというの……?」

兄魔王「そのようだな。馬鹿正直な解説ご苦労」ニタァ

魔法使い「……ッ」ギリッ


戦士「う、嘘だろ……? 勇者と僧侶があんな状態だってのに」

魔王(もしもそれが本当だとしたら、私は……何という事を……!)

兄魔王「ふっ、そんな顔をする事はない。今のお前には感謝しているのだからなあ……今までの恨みが」スッ

側近「!」

兄魔王「こんな風に消し飛びかねない位に」ゴォッ

側近「ぐ……あ……ッ」ズザザザザ……ビチャッビチャッ

魔王「お、弟!」

魔法使い「ちっ……」チャキッ

戦士「何だよこれ……悪い夢なのか……?」

兄魔王「現実に決まっているだろうが! ……俺に更なる力を与えてくれてありがとう、親愛なる我が愚弟よ!!!!」


今回は以上です。

おやすみなさい。


こんばんは。
何時の間にかこんなに間が空いていたとは……本当に申し訳ありません!

遅くなりましたが、続きを投下します。


――――
――

少女「……!」ブンッ

亡者達『ぁう……があァ……』ズルッ……ズルッ……

妖精「」シュッシュッ ビシッ

亡者達『ァァ……』ジリジリ……

少女「妖精さん、無理に立ち向かわないで……!」

妖精「……」ピタッ

少女(でも、このままずっとこうしている訳にはいかない……)

少女「うぅ……」ギュ……ッ




『もう、なんてしけた顔してるの? 今すぐ啼かせてあげちゃいたいわね』フワッ……ギュウッ


少女「!?」

妖精「……!!!!?」ギョッ

『……まあ、幾らあたしでも流石に空気は読むけれど』

少女「え……い、淫魔、さん……?」

淫魔「ハァイ、お嬢さん♪ こうして現実で会うのは初めてね」ニィッ

少女「ど、どうしてここに……?」

淫魔「うーん、何だか貴女が困っているような気がしたから……かしら? 丁度暇だったし」スリスリ

少女「ひゃっ……!」ビクッ

妖精「……」ワナワナ

淫魔「……それに」ピタッ

少女「?」

淫魔「『お友達』を助けたいって思うのは、変な事?」コテン

少女「淫魔さん……」


淫魔「……なーんてね。それにあたしだけじゃないわよ?」クイッ

少女「え? ……あ」クルリ

グリフォン「」バサッ

一角獣「」ブルルル……

大蛇「」シャァーッ





ザワザワ……ギャアギャア……

少女「み、皆……!」

淫魔「貴女って変わったお友達が多いのねえ」クスクス


少女「で、でも、私が喚びたいと思った訳じゃないし……魔王様の結界だって」

淫魔「その事だけれど……お嬢さん、貴女とんでもないのを喚び出したでしょう?」

少女「え? それって白獣さん達の事?」

淫魔「ええ。恐らくその影響で異界からの訪問が何時もよりも容易くなったんじゃない?」

少女「そうなの、かな……」

淫魔「まっ、詳しい事はあたしにはわからないわ。あたしは彼らに便乗して来ただけだし」パッ スタスタ

少女「あ……」

淫魔「ふうん……何人か生前良い男っぽかったのがいるじゃない」ペロリ……

少女「淫魔さん……?」

淫魔「とりあえず景気づけに1発……魅了っ♪」バチコーン

亡者達『……』シーン

少女「……」

妖精「……」

召喚獣達「……」


淫魔「……ふ」

少女「?」

淫魔「っざけんじゃないわよおおおおおお!!!!」ゴォオオオオ……

少女「ひゃ!?」ビクッ

淫魔「何なの!? 死んで生き返ると見る目まで腐っちゃうのかしら!?」

妖精「」ガクガク

淫魔「それとも何? あたしの爆乳よりもあっちのが良いってか? ああん?」ビキビキ

少女「い、淫魔さん、落ち着いて……」

淫魔「落ち着け……? サキュバスとしてのプライドが傷つけられて黙ってられっかあああああああああ!!!!」ウガーッ

少女「ひいいいっ」

召喚獣達「」ビクビク

淫魔「……ふんっ。てな訳でお嬢さん、ここはあたし達に任せて行きなさい」ポン

少女「あ……え……?」


淫魔「急いでいるんでしょう? こいつらからは見返りとしてしっかり搾り取っておくから」ニコッ

少女「でも……」

淫魔「……また、夢の中みたいにされたい?」シュルル……

少女「!! い、行く! 行きます!!」ササッ

淫魔「うふふ、それで良いのよ」

少女「……でもあんまり酷い事はしないであげてね……」

淫魔「善処するわ~」ヒラヒラ

少女「ありがとう。行こう妖精さん」クルッ タタタッ

妖精「!」ハッ パタタタタッ

亡者達『!』ズルズルズル……

淫魔「おおっと、あの子の所へは行かせないわよお? 代わりにたっぷりあたしの魅力を教えてあげるわ」シュルルルルル

召喚獣達「……」

淫魔「貴方達もあたしに構わず適当に暴れたら? そのためにここに来たんでしょう?」

淫魔「……それに貴方も」チラッ


『……ありゃりゃ、バレちった』

淫魔「これでも上級魔族ですから……まさか貴方みたいなのまで来るなんてね、死神殿」

死神「ぼかぁ君達と違って自分の力でここに来ましたともさ~」ヒョコッ

淫魔「訊いてないわよそんな事……どうしてすぐに顔を出さなかったの? 貴方ならその気になれば一掃できる筈でしょう、ここ」チラリ

死神「そりゃ、幾ら魔王城といえど吾輩の全力を出したら危ないじゃんよー」カラカラ

淫魔「……それもそうね」

死神「それにさー……もうしばらくは少女ちゃんとは会わないと決めてるんでね、あちしゃあ」

淫魔「ふうん。まあ貴方達の事を詮索をするつもりはないけど」

死神「賢明な判断だと思いまっせ。んじゃ用も済んだしおいとましようかね」クルリ

淫魔「え? もうお帰り?」キョトン

死神「心の友の顔を見に来ただけだかんね。君達の獲物を取るつもりはこれっぽっちもないですぞ」

淫魔「そ、そう」


死神「……お互い嘘を吐くのも大変だね」ボソッ

淫魔「ッ!」

死神「アヒャヒャヒャ! ごゆっくりお楽しみを~」シュンッ

淫魔「……いなくなったみたいね」ホッ

淫魔(やっぱり、あの子には何かあるのね。でなければ……)

淫魔「まあ、とにかく今はあいつらをどうにかしましょう」

亡者達『ヴぉあ……ぁ……』

召喚獣達「!」ギャアギャア ワーワー


――――
――

魔法使い「……」ドシュドシュドシュッ

兄魔王「ふっ」ヒュンッ ドババババッ

魔法使い「ち、全部防ぎやがって……!」

兄魔王「いい加減諦めたらどうだ。虫ケラ」

魔法使い「ッ……誰がああああああッッッ!!!!」ボシュッ ボボボボボ……ッ

戦士「止めろ魔法使い! 残りの魔力も少ねえのにあんまり無茶すんじゃねえ!!」ヨロッ

魔法使い「うるさい! そんな体になってるあんたに言われたくないわよ」

魔法使い(第1、あたしが諦めたら……)チラッ

勇者「」ポタポタ

僧侶「」グタッ……

魔法使い(……確実に全滅する)ギュッ


側近「はあっ……はあっ……」

魔王「……」ジャラ……

兄魔王「ふん、今更そんな物で我が身をどうにかできると思っているのか?」

魔王「……例え通じずとも、この鎖尽きるまで何度だってやる」

兄魔王「馬鹿め! 俺は母上やそれを討った勇者の力に加え、お前の力まで手に入れたのだぞ?」

兄魔王「それでも勝てるとほざくか? なあ!?」

魔王「勝つ。絶対にな」

魔王「……いや、私達は勝たねばならぬ! 貴様をここで倒さねばならぬ!!」

魔王「大切な者達のためにもな……そうだろう!? 弟よ!!!!」

側近「……無論、だ……」ジャキッ


魔王「わかるか? 貴様と我らとではこの戦いにおける覚悟の重さが違うのだよ……最初からな」

兄魔王「誰だって口ではどうとでも言えるものだ……力が伴っていなければ意味がないがなあ!!!!」キィィィィ

戦士「!? うぁあああああ……!!!!」ガクッ

魔王(超音波……何処までも陰湿な奴め……)

側近「ッ……!」

魔法使い「……戦士、あんたやっぱり馬鹿ね」ツカツカ

魔王「魔法使い……何故平気で……」

戦士「……あ」

魔法使い「ずっと前にあんたたちにはあげたでしょう? こういう対聴覚攻撃用のアイテム」


戦士「わ、悪い、忘れてた……!」ゴソゴソ……キュッ

魔法使い「かなり貴重なのよ? 耳なし兎の耳の名残で作った耳栓」スッ

魔王「う、兎?」ピクッ

側近「兄上、今そこに反応しては駄目だ」

魔法使い「防げる攻撃にはきちんと対処しないと無駄に消耗するわ」ゴソッ……ブンッ

兄魔王「!」カッ……ドゴォッ

魔王「今のは!?」

魔法使い「爆弾岩で作った小型爆弾。魔力をこめて相手に投げれば爆発する」ゴソゴソ キュポッ


戦士「ちょ、おまそれ……」

魔法使い「……」ポワワッ……ベシャッ

兄魔王「ッ!! ぐお、おおお……」ジュワァ……

側近「な、何を投げた? ただの水球では……」

魔法使い「流酸を吐く巨大蝙蝠から手に入れた流酸。あいつにも効いて良かったわ」シュルッ

戦士「よく平気で使えるよな……あんなヤバかったのを」ブルッ

魔法使い「寧ろ使い所があって喜ぶべき所でしょ? こんな状況だしある道具は何でも使わないと」シュルルルル……

魔王「それは……」

魔法使い「蜘蛛女の糸で作った捕縛用ロープ。あんたの鎖とどっちが丈夫かしらね」ギュルルルッ

兄魔王「くっ……」ギチッ……


側近(魔法を思うように使えん腹いせか……中々にえげつない戦い方をする)

魔法使い「……ちょっと」

戦士「?」

魔法使い「ここまでお膳立てしてやったんだからとっとと行きなさいよ。気休めにしかならないかもしれないけどね」ギロリ

戦士「! あ、ああ!!」ダダッ

側近「す、すまん、恩に着る」ダッ

魔法使い「……本当はこんな事死んでもしたくないのよ……ったく……」ブツブツ

魔王「魔法使い……」

魔法使い「気安く呼ぶな」ギロッ

魔王「うっ……すまない」


戦士「うおおおおおお……!!!!」ブンッ

側近「勇者には悪いが、これで……決めさせてもらう!」

兄魔王「……ぎゃは」ムクッ……ブチブチ

魔王「!」

兄魔王「ぎゃははははははッ! 舐められたものだ、こんな物が本当に効くとでも?」ガシッ

戦士「なっ……糞っ、放しやがれ!」

兄魔王「何、そんなに喚かずともすぐに放してやる……そおら!」ブンッ

戦士「う……うおわあああああああ!!!!」ヒュオオオオオ……

側近「戦士!」

兄魔王「今度こそ消えろ、目障りだ」ボッ……

戦士「……ッ!」ドゴォッ パラパラ……ズルリ

側近「あ……」


魔法使い「ちっ……」ゴソッ

兄魔王「お前達もな」ボシュンッ

魔王「!? く……っ」バッ

魔法使い「ちょっ……」

ドッ……ゴォォォォ……

魔王「」ドサッ…… ジワァ……

魔法使い「」ポタッ……パタタッ

側近「兄、上……魔法使い……」

兄魔王「馬鹿な奴だ。人間を庇って体に風穴を開けるとは……それに結局守り切れていない」

側近「ぅ……あ……」


兄魔王「あのような事をほざいていた癖にだらしないなあ」ニタァ

側近「――ッ」ブツン

兄魔王「それにしてもこの力は素晴らしい……これさえあれば、母上を超える魔王になる事も最早夢では」

側近「ああああああああ!!!!」ブンッ

兄魔王「嗚呼そうだった。まだお前がいたな」バキィッ

側近「ッ……がああああああああ!!!!」ズザザ……ダダダダッ

兄魔王「しつこいな。やはりこれでないと倒れんか」ボッ

側近「こんなもの……効く、かッ!」ズパンッ

兄魔王「! くっ」ジャキッ……

側近「貴様は……貴様だけは……」


ギィン……カキンカキンカキンッ ヒュオンッ ギチギチギチ……ッ


兄魔王「ふん。まさかこの俺に武器を使わせるとはな……だが」ググッ

側近「!」

兄魔王「俺の剣には絶対に勝てん」ガキィンッ

側近「……!!」ヨロッ

兄魔王「生み出す際に……相対したいかなる武器よりも強く丈夫になるという能力をつけたからな」ギラッ

側近「そんな……出鱈目な能力など……」

兄魔王「認めたくはない、か? 己の武器の能力も明かさない奴に言われても説得力がないぞ」

側近「ふん、貴様のようにひけらかす趣味がないだけ……だっ!」ブンッ

兄魔王「まだわからんか! やはり何処までも愚かな奴だお前達は!!」キィィン……ッ

側近「! 剣が……」クルクルクル……シュンッ


兄魔王「壊れはしなかったか。だが、それさえ消せば」ドスッ

側近「!!」ゴプ……

兄魔王「お前を串刺しにする事など容易だ」グリィッ

側近「……~~~~ッッッ!!!!」ゴパァッ ブシュウウウウ……ッ

兄魔王「完全復活する前はよくもやってくれたなあ……そっくりそのまま返すとするか」ドスッドスッ

側近「がっ……ぁぐあ……っ」ビクッビクンッ

兄魔王「まだだ、まだ楽になどしてやらん……お前にこれ以上にない絶望を見せつけるまではなあ」クックッ

側近「……ッ……ッッ」ビシャアッ

側近(ま、不味い……意識が……)クラッ

側近(このままでは……本当、に……)ギリッ



『――勝ちたい? こいつに』


側近(……!?)

『勝ちたいよね? ううん勝って貰わなきゃ困るよ……でないとボクも死んじゃうし』

側近(お、お前は……)

『あははっ、わかってる癖に~。ボクは君で、君はボクだよ? 第1勝手に2つに分かれたのは君の方だ』

側近(ッ……何故、表に……)

『さあね。肉体の防衛本能か何かじゃない? 今の君がこんな状態だし』クスクス

側近(……自業自得か)

『ボクを……力を拒絶するからこうなるんだよ。ざまあないね』

側近(くっ……)


『とは言っても、このままだと本当に不味い……悔しいけどそれは事実だ』

側近(……そうだな)

『そこでだ、とりあえずこいつの事はボクに任せなよ』ドクンッ

側近(! まさかお前……だ、駄目だ、それだけは……!!)

『五月蠅い、今の君に決定権なんてないんだよ死に損ない。ほら、つべこべ言わずに……』ドクッ……ドクッ……

側近(止めろおおおお……ッッッ!!!!)


『 ボ ク に 、 代 わ れ 』 ド ク ン ッ


兄魔王「ぎゃはははは!!!! 痛かろう? 苦しかろう!? みっともなく泣き叫んでも良いんだぞ!?」ズプッ ドシュッ

側近「……」

兄魔王「まあ、そんな気力はもうないだろうが……なっ!」ブンッ

側近「……」ス……ガシッ

兄魔王「!? 馬鹿な、虫の息だった筈……!」

側近「……」ムクッ……ボコボコボコッ

兄魔王「再生だと……!? それに魔力まで……ッ」ジャキッ

側近「……」ニィィッ

兄魔王「……!!!!」ゾクッ


側近「……」ジャキッ……ピタリ

兄魔王「……まさか、お前」

側近「……」

兄魔王「『末子』……なのか?」

側近「……」

側近(末子)『――だったら、何だい?』


今回は以上です。
また懲りずにこいつらを出してしまった……(笑)

あ、もしかしたら今年最後の更新かも←
うだうだ言っておきながら、今年中に終わりまで書ききれなくて申し訳ありません……。
おやすみなさい。


こんばんは。
去年は読んで下さってありがとうございました!
今年もよろしくお願い致します。

遅くなりましたが、更新再開です。


兄魔王「……ふ」

末子『?』

兄魔王「ふふ、ははは……ぎゃはははははははは!!!! ようやくか、まだ殺さなくて本当に良かった!!!!」

末子『……』

兄魔王「やっと覚醒したんだなあ……兄上は嬉しいぞ」

末子『……ボクは、お前を兄だと思った事は1度もないけどね』

兄魔王「可愛げのない事を言う……だが許そう。これで俺は真の意味で最強になれるのだからなあ」ニヤァ

末子『ふうん、どうやって?』

兄魔王「無論、『末子』として覚醒したお前を喰らってだ!!!!」グオオオオッ


末子『……それは本気で言っているのかい?』ガシッ パシン

兄魔王「!」

末子『幾ら強い奴の肉を食べようが、多少の力にはなってもそれ自体になれる訳じゃないんだよ?』クスクス

兄魔王「ぐっ……」

末子『例えボクや母上を食べようがそれは変わらない……お前は永遠に末子にはなれないんだ』

兄魔王「きっ、貴様……ッッッ!」ビキッ

末子『そんなに母上に認められたかった? 期待されたかった? そうだよね、お前は只の長子だもんね』

兄魔王「黙れ……」

末子『本当に残念だったね! 末子として生まれる事ができなくて!! お前は所詮紛い物……』

兄魔王「黙れえええええええ!!!!」ゴオオオオッ


末子『堪え性ないな~。そんなんで魔王になろうとか片腹痛いよ』ボシュンッ

兄魔王「黙れ、黙れ、黙れ……」ボボボボッ……ドゴォッ

末子『良いのかい? せっかく手に入れた魔力をこんなに消耗して』ヒョイッ ボゴンッ

兄魔王「俺はお前を……お前を喰らって絶対に……!」ブツブツ

末子『……ねえ』ゴ……

兄魔王「!」

末子『母上にそういう想いを抱いていたのが自分だけだと思わないでよね』ピッ ドシュウウ……ッ

兄魔王「……がぁっ!!」ズザァッ

兄魔王(なんという……魔力だ……軽い一撃でこれ程……ッ!)シュウウウウ……ベシャッ


末子『お前はまだ良いよ。ちゃんと母上の前に存在する事ができた。話す事ができた。見てもらえる事ができた』コツ……コツ……

末子『……だが、ボクはどうだ』シュンッ

兄魔王「!」

末子『力を使いたくないと駄々をこねるこいつのせいで、別人格として切り離され……ずっとこいつの奥深くに封じられていた』ドスッ

兄魔王「ぐっ……げえええええ……」ビチャビチャ

末子『お前達に痛めつけられている時だって、反撃1つできずにただ悪戯に痛みを感じている事しかできなかった』ガンッ ゴンッ

兄魔王「ゴホッ! がはあっ……!!」

末子『そんなボクの気持ちがお前にわかるかい? ねえ?』バキッ

兄魔王「ぐぶっ……そんなもの、知る、か……ッ」ゼエゼエ


末子『……じゃあ教えてあげるよ』ニヤァ

兄魔王「ッ……!」ゾワッ

末子『ん~……これでいっか』ガシッ

兄魔王「そ、それは……」

末子『こんなに立派なのが3本も生えてるんだから、1本位なくなっても良いよね?』ツンツン

兄魔王「お、お前、何を考えている!? 角は魔王の力の象徴で……傷ついても再生しない唯一の部分なのだぞ!?」

末子『 だ か ら 何 ? 』

兄魔王「――ッ!」ゾワッ

末子『今までお前達がボクにしてきた事に比べれば、これ位どうって事ないでしょ?』メキメキ……


兄魔王「い、嫌だ……そ、それだけは……!」

末子『散々ボクの体で遊んでおいてさあ……いざ自分がやられる時になるとそうやって怯えるなんて』ググ……ッ

兄魔王「や、止めろ……放せ……放してくれ……!!」ブルブル

末子『みっともないよね♪』


ボ ギ ン ッ


兄魔王「あ、がっ……ぎひぁぁあああああああッッッ!!!!」ブシャアアアアッ……ドクッドクッ

末子『嗚呼、そういえばボク達の体で痛覚が1番集中しているのもここだったっけ? 別にどうでも良いけど』ポイッ……カラン

兄魔王「ひぎぁっ……あ、あァ……」ビクッビクッ


末子『だらしないなあ、ボクにはこれ以上の事をしておいてさあ……』

兄魔王「……ッ……~~~ッッ!!」

末子『まだほんの序の口なのに……先が思いやられるよ』

兄魔王「ま、まだ……やる気、か……」コヒュー……コヒュー……

末子『当たり前でしょ。まさかこれで終わると思ってた? おめでたい頭だね』

兄魔王「ぁ……」

末子『次は……そうだね、何時かやってくれたみたいに首を切り離して蹴っ飛ばしちゃおうか』

兄魔王「!!!!」

末子『その後は……心臓以外の内臓を全部取り出してみるのも良いね!』

兄魔王「あ……あ」カタカタ


末子『あ、大丈夫だよ! まだ命まではとらないからさ~』

魔王「……弟?」

末子『!』

魔王「お前……何をして……」ヨロッ

末子『……そっか、再生したんだね。考えてみれば当たり前の事だった』

魔王(何時もの弟ではないな……あいつはこんな事はしない。だとすれば答えは1つ)

魔王「お前は……何だ? 弟の力の部分が人格化したのか?」ジリッ

末子『それは間違いじゃあないけどさ……そんな言い方はないと思うよ? ボクだってこいつである事は変わらないんだし』

兄魔王「ぅあ……た、助け……」


末子『だからそういうのみっともないって』グシャッ

兄魔王「がふぁ……っ!」

魔王「――ッ!」

末子『ねえ、ボクは貴方だけは『兄』として認めているんだよ? 弱いなりにこいつを守ってくれていたし……でも』ポゥッ……

魔王「!」

末子『ボクの封印に力を貸した事だけは許せないな』ボシュッ

魔王「ぐっ……」シュンッ……ギュオオオオ

末子『あ、防がれちゃった。でもさ』

魔王「……!」ピシッ

末子『何時までもつかな、それ』ニッ


魔王「……末子の力は伊達ではないようだな」ツウッ……

末子『でしょ?』

魔王(駄目だ……今ある分の魔力ではこれ以上防ぎ切れぬ……ッ)パキキ……

末子『貴方の事は生かしておいてあげる。かつての母上と側近みたいに』

魔王「弟よ……元、に……」

末子『でも、それだけは素直に喰らってよ』

魔王「くそっ……ぐああああッ!!!!」パァンッ……ドゴオッ

末子『でないとボクの気持ちが収まらない』

魔王「……」ガクン


末子『……さてと。邪魔もなくなったし続きといこうか』クルッ

兄魔王「!」ビクッ

末子『何その顔。さっきまでの勢いが全然ないね~。こうして誰かに踏み躙られるのが初めてだからかな?』

兄魔王「ッ……!」

末子『弱者の苦しみを知るのも良い経験になると思うよ。まあ、お前の生はこの先そう長くはないけどね』

兄魔王「!!!!」

末子『せいぜい死ぬ前に沢山苦しんでよ。オニイサマ』ニコッ


――ガチャッ


兄魔王「!」

末子『またか、今度は一体誰……』

少女「はあっ……はあっ……」バタン……ヨロッ

妖精「……」パタパタ

末子『……少、女?』


今回は以上です。
1発目からこれって……。

おやすみなさい。


こんばんは。
1ヶ月も更新できなくてすみませんでした……!
本日は丁度バレンタインですので、お詫びも兼ねて妖精がチョコをお届けに……。

妖精「」ゲフッ

何……だと……。

……失礼致しました、続きを投下します。


末子『あ……』ゴシゴシ パチパチ

少女「げほっ……そ、側近さん、皆……」

妖精「!」ゾクッ

末子『少女……本物の少女ぉっ!!』パアアッ

少女「!? 側近さん……?」ビクッ

末子『夢じゃないんだね? 嬉しいな、君に会える日をずっと夢見ていたよ!』ザッザッ

少女(……側近さん、の筈だよね……?)

末子『嗚呼やっぱり可愛いな……それにとても柔らかそうだ』ペロリ

少女「え……?」


末子『早く君に触れた……』ガシッ

少女「魔王様……!」

魔王「止、めろ……少女に手を、出すな……」

末子『……邪魔しないでよ』ドゴッ

魔王「がッ……!」

少女「魔王様、しっかりして!! さあ、この玉を握って……」タタッ……ゴソゴソ スッ

末子『……』ムッ

魔王「うぅ……」スゥッ

少女(良かった、顔色が良くなってきた……でも)

少女「側近さん……一体どうしちゃったの!? 魔王様にこんな酷い事をするなんて……」


末子『酷いのは君の方じゃないか……少女。君はボクの事だけを見ていれば良いのに』

少女「!?」

末子『……それともそいつを殺せばそうなってくれるかな』コキッ

少女「な……何を言ってるの? 貴方は本当に側近さん?」

末子『そうだよ? ボクはあいつの一部だし、この体は君が大好きなあいつのだ』

少女「どういう、事……?」

末子『そのままの意味だよ……うん、やっぱり近くで見ると一段と可愛いね』スッ

少女「……ッ!」ビクッ

末子『!』


少女「あ……」

末子『その顔……まさか、君もなの?』

少女「ち、違……」

末子『君までボクを拒絶するの!? あいつの方が良いのか!?』ガシッ

少女「い、痛ッ……!」カランッ

妖精「!」パタタタッ ペチッペチッ

末子『わっ……こいつ!』ブンッ

妖精「……ッ!」ベチンッ……ドサリ

少女「妖精さん!!」

末子『どいつも、こいつも……ボクの邪魔ばかりして……』ギリッ

少女「放して側近さん……妖精さんが……!!」

末子『放す? 何で? ……ボクはずっと君に会いたかったんだよ? 夢の中で出会ったあの日から!!』

少女「夢の、中……?」


末子『君だったらボクを受け入れてくれると思っていた……それなのにどうして君は他の奴らばかり見るんだ!?』グググ……

少女「ッ……ぅ……」ズキッ

末子『ただ末子として強く生まれてきただけなのに! ボクだってこいつなのに!!』ポロッ

少女「……あ、あ……ッ」

末子『お願い、ボクを愛して……愛してよ……』ポタッ……

少女「側近、さん……」

末子『……ぐすっ』ドサッ

少女「ひゃっ……!」

末子『甘い……この匂い、とっても落ち着くなあ……』スンスン

少女「や、止めて、側近さん……ッ」カアアッ

末子『君の白い肌には……ふふっ、真っ赤な血が良く映えそうだ』ニッ

少女「!」


末子『今の君がボクを拒絶するなら……』グイッ……ビリビリッ

少女「あ、ぁ……!」ブルブル

末子『お腹の中に入れて……ボクとひとつになれば愛してくれる?』

少女「……」ゾクッ

少女(何時もの側近さんはこんな事も……こんな顔もしない)

末子『ねえ……少女』スリスリ

少女(でも、これもまた……側近さんの一部、なら)グッ

末子『少女……? 答えてよ……』

少女(……『心の導くまま』に)ス……ギュウッ

末子『!』


少女「……ごめんなさい。さっきは、ちょっとびっくりしちゃったから」

末子『少、女……』キョトン

少女「でも、それで……貴方の気持ちが満たされるなら」ジッ

末子『あ……』

少女「私は貴方の血肉になって……ずっと一緒に……」ニコッ

末子『……本当に? ボクとずーっと一緒にいてくれる?』

少女「……」コクン

末子『でも、でもボクはあいつであってあいつじゃないんだよ? それでも……!』

少女「貴方は側近さんの一部なんでしょ? それなら貴方も私の大好きで大切な家族だよ」

末子『少女……』


少女(これで、少しはちゃんと恩返し……できる、かな)

末子『嬉しい……凄く嬉しいよ……』スッ……ジャキッ

少女「! その剣……」

末子『だから、なるべく痛みがないように一瞬で終わらせて……それから少しずつ食べてあげるね』ニコッ

少女(ごめんね……魔王様……妖精さん)ギュッ

末子『少女……だぁい好きだよ』ヒュッ……ドスッ


少女「ッ……!」

少女「……?」

少女(あれ……痛くない?)パチッ

少女「……!?」

末子『ぐ……お、お前ッ……』ポタッ……ポタッ……

少女(どうして……私じゃなくて自分を……!?)

末子『そんなに……少女を独り占め……したいのか?』ギリッ

少女「早く手当てを……あ、あの玉を……」オロオロ

末子『い、行かないで少女……ぐああっ!!』ズプッ……ザクッ

少女(今度は自分の腕を……!)


末子『い、嫌だ……もうあんな姿で閉じ込められるのは嫌だぁ……!!』ジワッ

少女「あ……」

末子『……助けて……少女ぉ……母、上……』ガクンッ

少女「! 側近さん? 側近さん!!」ガバッ

『……』

少女「しっかりして! 側近さん……!!」ユサユサ

『……う……っ』ピクッ……パチッ

少女「!」

側近「……少女……? 俺、は……ッ!」ハッ


少女「大丈夫? 側近さん……」

側近「だ、駄目だ、離れろ少女!」

少女「! ど、どうして?」

側近「……会ったのだろう? おぞましいもう1人の俺と」

少女「おぞましいなんて……」

側近「お前にだけは……知られたくなかった」

少女「……」

側近「こんな俺に、お前の家族でいる資格など……」

少女「そんな訳ないでしょ! 寧ろ私は隠されている事の方が辛かった!!」ギュウッ

側近「!」


少女「例えどんな力を持っていても、側近さんは側近さんだよ……私を救ってくれた家族だよ!!」

側近「少女……」

少女「お願い、もうそんな悲しい事言わないで……私は側近さんの事なら何だって受け止められるから」ジッ

側近「くっ……」

側近(お前にそんな事を言われたら、俺は……)ググ……ッ

僧侶「……」ジーッ

側近「!」

少女「ひっ」

僧侶「……」ハァハァハァ

側・少「」


今回は以上です。
男のヤンデレは難しい……。
一応次回かその次の更新で完全決着になる……予定です←

おやすみなさい。

……チョコレートは少女達が作った物を改めてお届けします(笑)


こんばんは。

更新再開です。


僧侶「……はっ! ごめんなさい、素敵な光景についつい回復も忘れて見入ってしまいました~」テヘペロ

側近「そ、そ、僧侶……何故そんなにピンピンしているんだ」

僧侶「その事なんですが、どうやらこれのお陰の様で……」ゴソッ

少女「あっ、どうしてそれを?」

僧侶「私も目を覚ましてから気付いたんですが……恥ずかしながら、ここで姫様からお預かりしていたのをすっかり忘れていたんです」

側近「首飾り……それであの攻撃を受けても」

僧侶「ええ、無傷ではありませんが何とか生き延びられました……他の皆さんも」チラッ

勇者「……」

戦士「うおお、痛みが消えたー!」ブンブン

魔王「それは良かった……この玉の効力は凄いな」

妖精「」パタパタ

魔法使い「またこいつに助けられるなんて……うああいっそ死にたいいい……」ブツブツ


少女「皆……! 良かった、大丈夫そうで」ホッ

側近「若干大丈夫ではなさそうな者もいるがな……」

僧侶「あはは……」

妖精「!」ピューッ ピトッ

少女「妖精さんも……床に叩きつけられた時はどうなる事かと思ったよ」ナデナデ

側近「! ……そうか。俺はそんな事をしたのか」

妖精「」ギロッ

側近「……悪かったな、小妖精」

妖精「!?」ビクッ

少女(わ、側近さんが妖精さんに頭を下げてる……! 珍しいな)


側近「それから少女……先程の、俺であって俺でない者の事だが」

少女「……うん」

側近「後で……きちんとすべてを話したいと思う。聞いてくれるか?」

少女「! 勿論だよっ」ニコッ

僧侶「……やはり何時見てもお熱いですねえ……滾りますよ本当に」ニヨニヨ

側近「!? な、何の事だ!?」カアッ

僧侶「誤魔化さないでくださいよこのムッツリ! 私にはすべてお見通しなんですようふふふふ……」ズイッ

側近「い、いきなり何を言い出す!?」

僧侶「じゃあ、どうしてこんなあられもない姿の少女さんをこのままにしているんです?」

側近「!」ハッ

少女「あ……」カアッ

側近「……しょ、少女、こんな物しかないがこれで隠してくれ」スルッ……パサリ

少女「あ、ありがとう……」ギュッ

僧侶(ふむ、彼シャツならぬ彼マントと言った所でしょうか……未来の)ニヤニヤ

妖精「」ジーッ


魔王「弟! 戻って来れたんだな」ダダッ

少女「魔王様、もう傷は大丈夫なの!?」

魔王「ああ、お陰様でな。この白玉は……白獣からか?」キラッ

少女「うん、そうだよ……元気になって本当に良かった」

側近「……すまない、兄上。心配をかけてしまって」

魔王「全くだ。まあ、こちらも人の事は言えぬが……さて」チラッ

兄魔王「……おのれ……おのれぇ……!」ズルッ……ビチャビチャ

側近「奴はかなりのダメージを受けているが……またあのような事があっては困る」ジャキッ

魔王「ああ……勇者」

勇者「何だ」スラッ

魔王「すまないが、まだ奴の元へ行くのは少し待って欲しい。完全に倒すために、こちらで少しやっておきたい事がある」

勇者「……わかった」スッ


魔法使い「ちょっ……ここまでやっておいて!?」

勇者「良いんだ。魔法使い」

魔法使い「……ッ」ギリッ

側近「本当に良いんだな? 兄上」ジッ

魔王「ああ……奴の中にある私の魔力が、またお前達を傷つける可能性があるのなら……それで良い」

側近「……」グッ

少女「側近さん?」

側近「! 大丈夫だ……少女」カタカタ……ポタッポタッ

少女(嘘……こんなに震えてるのに。それに傷だってまだ……)

魔王「弟……」

魔王(やはり無理をさせるべきではないか……だがこればかりは……!)


側近「大丈夫だ兄上。今度こそ……やれる」

側近(少女や兄上達のためにも……冷酷に、ならねば)

少女「……」ス……ギュウッ

側近「!」

妖精「!?」

魔王「少女……」

少女「私も一緒にやる。こんな状態の側近さんを放ってはおけないよ」キッ

側近「放せ少女、お前はこんな物を持ってはいけない……!!」

少女「嫌! そうやってまた守られてばっかりになるのは絶対に嫌だから!!」

側近「少女!!」

少女「……お願い、私にも側近さんの苦しみを背負わせて……家族、でしょ?」ウルッ

側近「ぐ……だが、俺はお前に血に染まって欲しくはない」

少女「もう、そんなの今更じゃない。こんなに……側近さんや魔王様の血に触っているのに」スッ

魔・側「……ッ!」


少女「思えば、心の何処かで覚悟してたのかもね。2人と家族になりたいって願った時から……自分も似たようなモノになるかもしれないって」

魔王「少女……お前は、それで良いのか?」

少女「うん。私が選んだ事だしね……こうして貴方達の傍にいる事は」ニコッ

僧侶「少女さん……」

側近「……」

少女「魔王様、側近さんにその玉を渡してあげて。あんなに刺していたもの……今だって凄く痛い筈だよ」

魔王「あ、ああ……そうだな……!?」シュッ

側近「! 貴様……!!」

兄魔王「ぎゃは、は……お喋りが過ぎた、な……愚弟達」ギュッ

少女「あ……玉が!!」

僧侶「何時の間に……」


魔法使い「ふん、文字通り最後の力を振り絞ったって訳か。死に損ないめ」スッ

戦士「野郎……往生際が悪いぜ」

兄魔王「何とでも言うがいい……角が元に戻らずとも、これさえあればこっちのものだ……!」グッ

魔王「しまった!」

勇者「っ……」タタッ

兄魔王「これで改めて貴様らを……ぬおおっ!?」パァン……ッ

少女「え!?」

勇者「割れた……?」ピタッ

『貴方は……』

妖精「!」ピクッ

白神獣『私の加護の対象外ですよーだ!』


兄魔王「な……ぐあッ!!」

兄魔王(目に破片が……ええい忌々しい!!)ブンブン

僧侶「し、白神獣様? 何処かにおられるのですか!?」キョロキョロ

魔法使い「……成程、恐らくあいつが触れたらそうなる仕掛けだったって訳ね。全く神獣サマは良く考えていらっしゃる」

側近(……やるなら今か。僧侶に回復して貰う余裕はない)

側近「……少女」スッ

少女「!」

側近「情けない事だが、今の俺の状態では心許ない……先程はああ言ってしまったが、力を貸してくれるか?」

少女「……はいっ!」ギュッ


兄魔王「小癪なァ……真似を……ッ」

側近「少女、絶対に手を放すなよ!!」グッ……タタッ

少女「……!」コクンッ タタタ……

妖精「!」パタタッ

僧侶「ふふ、邪魔してはいけませんよ妖精さん……少女さんの想いを」ガシッ

妖精「~~~!」ジタバタ

戦士「お、おい魔王、大丈夫なのかよ……少女ちゃんをあいつと一緒に行かせて!」

魔王「心配するな。一撃を見届けたらすぐに私も行く」

側近「……冥土の土産に、教えてやろうか」ボソッ

少女「? 側近さん……?」


魔法使い「なんでわざわざあいつらに……!」

魔王「今こそ弟の武器の能力が必要だからだ」

僧侶「あの、それは一体……どんな能力なのですか?」

魔王「うむ……あれはただ振り回すだけでは何も斬る事はできぬ、ある意味かなり使い勝手の悪い武器だ」

勇者「……ほう」

魔王「だが、それでも弟が自分の魔力で生み出した武器だ。あいつなりに色々と考えて……」

魔法使い「さっさと言いなさいよ……!」カツンッ

僧侶「魔法使いさん!」

魔王「……すまない。それであの剣の能力だが……」


側近(少女、お前と一緒だからか……今度こそ、気持ちが固まった)

兄魔王「はっ……そんな体で、何を……仕掛けて……」

側近「俺の剣の、能力は」ブンッ

側近(このような事をさせるのは心苦しいが……本当はお前の言葉が、気持ちが嬉しかった)

戦士「……」ゴクッ

魔王「あいつが『斬る』と真に決意した対象限定で」

妖精「」ハラハラ

少女「……ッ!」ギュウッ

魔王「……物や魔力といったほぼあらゆる存在を……斬る」

勇者一行「……!」

側近(ありがとう……少女)


側近「う、おおおおおお……!!!!」ザクッ……

兄魔王「が、ふ……ッ」

魔王「そして今、斬ってもらったのは」

兄魔王「!? こ、れは……」シュウウウウ……

魔王「奴に喰われた私の右腕……及びそれが持つであろう魔力だ」

魔法使い「! あいつの中から」ギョロンッ

兄魔王(力、が……魔力が抜けていく……!)

側近「どうだ……実に、つまらん能力だろう……? 聞こえているかは、わからんが」グラッ

少女「側近さん……!」ガシッ


今回は以上です。

おやすみなさい。


こんばんは。

思ったよりもかなり遅くなりましたが、続きを投下します。


魔王「2人とも良くやった! 早く戻れ!!」ダダダッ

戦士「お、おい……何する気だよ」

魔王「念には念を入れて……駄目押しだ!」ガシッ

兄魔王「何を……は、放せッ!」

魔王(私の腕が消えた今なら効く筈だ……!)ガブッ

兄魔王「ッ! こ……の……愚弟がッ……」ギリィッ

魔王「なんひょひぇも……ひひゅがふぃ(何とでも言うが良い)」

少女「魔王様……!?」

側近「少女……今の、うちに……」フラッ

少女「あっ……うん!」テク……テク……


戦士「お、思いっきり……噛みついてやがる」

魔法使い「何やってんのよあいつ……」

魔王(……そろそろか)

兄魔王「! ぐぅ……ッ」ドクンッ

魔王「……」パッ

戦士「な、なんだ? あいつの顔色がどんどん悪くなって……」

側近「兄上の……牙の毒が、効き始めたんだ」

魔法使い「毒……」ピクッ

側近「恐らく奴の中に……兄上の腕が残ったままでは……効かなかっただろう」

兄魔王「がぁああ……!」ボゴゴッ……


側近「……だが、蛇の毒としてはアレ以上に……凶悪で強力なものはない」

魔王「……皮肉なものだな」ペッ

魔王(我が呪わしき2つの特性を……初めてまともに使った相手がよりによって身内とは)

兄魔王「おのれ……おのれおのれおのれおのれえええええええ!!!!」ゴゴゴゴゴ……

魔法使い「ちょっ……何処までしぶといのよあいつ!?」

僧侶「な、何が見えたんですか魔法使いさん!」

魔法使い「僧侶、結界! あいつの残りの魔力が暴走してる……このまま近寄ればタダじゃ済まないわ」ギョロン

戦士「はあっ!? まだそんな力が残ってんのか!? 底なしかよ……」

僧侶「今度こそ……最期の悪足掻き、なんでしょうか」パアアッ……

魔法使い「多分ね。まああのまま放っておいても毒で自滅はするだろうけど……そんなのは嫌でしょ? 勇者」チラッ

勇者「……ああ」ザッ……


魔王「随分と待たせてしまったな、勇者……我らはもう手は出さない」スッ……ポゥッ

側近「……兄上……」

魔王「辛い役目を負わせてしまってすまない……もう休むのだ」

側近「それは……兄上も同じだろう……いや、それ以上だ」

少女「……」

魔王「それにしても、勇者達と共同戦線を張る事になるとは思わなんだ……あの時はすっかり死ぬつもりでおったからな」

少女「魔王様……!」キッ

魔王「も、勿論今は違うぞ少女!」


妖精「~~~!」パタタッ

少女「あ……妖精さん」ナデナデ

側近「……考えてみればお前も意外な活躍だったな」

妖精「」ドヤァァァァ

側近(くっ……憎たらしい面構えだ)

魔王「さあ、ここからは彼らの番だ……あまり長くはかからぬだろうが」

少女「う、うん……」

側近「……」ギュッ


勇者「魔法使い」

魔法使い「ん」

勇者「お前の『眼』から見て魔力の薄い部分はあるか?」

魔法使い「そうね……絶え間なく渦巻いてるから一見わかりにくいけど」スッ

魔法使い「あいつのやや右側……丁度心臓に近い所が、他に比べればほんの少しだけ」ギョロギョロ

戦士「それを訊いてどうすんだ?」

勇者「……僧侶。戦士に持っている首飾りを渡してほしい」

僧侶「え? で、ですが……」チラッ


魔王「それが必要なのか? ならば使ってもらって構わない。少女、良いな?」

少女「あ……元々魔王様から貰った物だし、魔王様が良いっていうなら」

勇者「だそうだ」

僧侶「では……」スッ

戦士「お、おう……これをどうしろってんだ?」

勇者「投げろ」ビシッ

戦士「」


魔・少(えっ)

側(なっ……!?)

勇者「お前の腕力をもってすればそれで魔力の渦に穴をあける事ができる筈だ」

戦士「で、でもよ……そう上手くいくか? いっそ斧で打ち出した方が……」

魔法使い「馬鹿! そんな事すれば命中させる前に木ッ端微塵になるでしょうが!!」

戦士「そ、それもそうか」

勇者「きっと上手くいく。自信を持ってくれ……お前は俺にとって初めてできた仲間なんだ」ジッ

僧侶「勇者さん……」

戦士「……」


魔法使い「ちょっと、そんなうだうだ言ってる暇はないわよ! そんなに不安ならあたしが強化魔法をかけて……」

戦士「いや、大丈夫だ」ギュッ

魔法使い「!」

戦士「これがお前への恩返しになるなら……やるだけやってやるさ」ザッザッ

勇者「……ありがとう」

魔王(……彼らにも様々な事情があるようだな)

戦士「あの辺りにブン投げりゃ良いのか?」

魔法使い「え、ええ」


戦士「……ッ」ビキッ

魔王「!」

戦士「……おおおおおおおお……!!!!」ビキビキ

側近(薬も魔法もなしに……あれ程の筋肉の肥大か……!)

勇者「僧侶」

僧侶「今結界の一部を開きます……戦士さん、いけますか?」スゥッ……

戦士「ああ、頼む……そうさ、野郎が相手なら大丈夫だ」ググッ

魔法使い「全く、提案して損したわ」

戦士「心置きなく……全ッ力でなッッッ!!!!」ブンッ



ギュオオオオオオ…………パァァァンッ


兄魔王「!?」

戦士「よっしゃあッ!」

魔法使い「うん、無事に大穴あいたわね……首飾りも見事に砕け散ったけど」

僧侶「今です、勇者さん!!」

勇者「……すまない」ダダダッ

戦士「いけえええええ勇者ぁぁぁぁッッッ!!!!」

魔法使い「気をつけなさい! 完全に霧散した訳じゃないから!!」ギロッ

兄魔王「来るなッ、来るなああああああ!!!!」ボゴゴゴ……ギュンッ ボシュッ

勇者「……これ位なら」バシュンッ

兄魔王「!」

勇者「魔法であしらえる」ジャキン


魔王「……」

側近「……」

少女「……」ギュッ

魔・側「「! ……大丈夫だ」」ナデナデ

少女「……うん」

妖精「」パタパタ

勇者「今度こそ終わりだ……憎き祖母の仇よ」ブンッ

魔王(……さらば、だ)

勇者「ッ……!」ザクッシュパッザクザクザクザクッ

側近(ひとりぼっちの『魔王』よ)

勇者「……」……キィンッ

兄魔王「ッッ……ぁ、あ……ッ」ユラ……ドサッ


今回は以上です。
どうにか今月中に決着できました……。

長かった……ここまで本ッ当に長かった……!

おやすみなさい。


こんばんは。

少しだけですが更新します。


――――
――

白獣「……あら」ピクリ

姫「白神獣様……?」

黒獣「どうやら終わったようだな。さっさと行くぞ」ノソッ

姫「! という事は……」

白獣「もう、ここから出ても大丈夫だという事ですよ。ほら」スッ

姫「あ……」

亡者達「……」スゥゥ……

姫(消えていく……あんなに沢山いた亡者の群れが)


白獣「どうか安らかに眠ってください……そして我らが主の元へ……」スッ

黒獣「……」

姫「……」ギュッ

白獣「……さて、少女さん達の所へ参りましょうか」

姫「はい! ……あ」ヘナッ

黒獣「どうした。さっさと立て」

姫「ご、ごめんなさい、腰が抜けてしまって……すべてが終わって気が抜けてしまったせいでしょうか」

白獣「まあ! それはいけませんね」パチン

黒獣「ちっ、面倒な」


姫「本当に申し訳ありません……」シュン

白獣「なら……ちょっと失礼」ヒョイッ

姫「え? あ……えええええ!?」

黒獣「し、白娘……!」

白獣「では、改めて行きましょう。戸を開けて貰えますか? 黒様」スタスタ

黒獣「あ……う、む」ノソノソ……キィ

白獣「ふふ、ありがとうございます」

姫(お、女の人……しかも白神獣様に横抱きにされるなんて……!!)アワアワ


――――
――

淫魔「……ん?」パンパン

亡者「」ビクンビクン……スゥゥ

淫魔「終わったみたいね……良いとこだったからちょっと残念だけど」スッ

召喚獣達「!」ピタッ

淫魔「まだまだあたしは吸い足りないし、そうとわかればとっとと行きましょう」スタスタ……バサッ

召喚獣達「……」グル……

淫魔「ん? 貴方達の事なんて知らないわよ。用がないなら異界なり何なり元いた場所へ帰ったら?」

召喚獣達「……」スゥッ……

淫魔「あら……見かけによらず素直なのね。かーわいい……またね、お嬢さん」ヒュォォォ……バサバサバサッ……バサッ……


――――
――

勇者「……」

戦士「な、なあ……今度こそ、勝ったんだよ、な?」

魔法使い「見ればわかるでしょ? あいつは心臓をきっちり切り刻まれた……勇者によってね」ジロッ

兄魔王「……ぅう……ッ」シュゥゥ……

僧侶「! か、体が……」

少女(透けて……消えていく……)

兄魔王「やって……くれた、な……人間共……愚弟、共……」ズズ……ッ

魔王「……兄上」


兄魔王「! ……今更、俺を……兄と呼ぶか……」

魔王「今だからこそだ。せめて最期位は……貴方の弟として」

側近「……」コクッ

兄魔王「……ふん……それで俺が喜ぶと、本気で……思っているのか?」

側近「……いいや。これは俺達の単なる自己満足だ」

兄魔王「ず、随分と……安っぽい、な……下らない……」ゴホッ

魔王「貴方にとってはそうだろうな……悲しい事だ、本当に」

兄魔王「それは……こちらの台詞だ、魔族の面汚し共……力を使わぬ愚か者」

側近「……貴方達の思い通りにならなくて残念だったな」

兄魔王「……だが、忘れるな……どんなに安っぽい……家族ごっこ、をしようが……お前達は……」ギロッ

魔王「……」

兄魔王「この世の魔族の、頂点たる……魔王の……」シュウゥゥゥ……フッ


魔王「……」ヨロッ……ガクン

少女「魔王様!」

側近「兄上……」

魔王「す、すまない……何だかな、力が抜けてしまってな」

少女「魔王様……大丈夫だよ、もう大丈夫なんだよ……そうだよね? 側近さん」ギュウッ

側近「ああ、そうだ。もう兄上は……魔王として生きる必要はない」

魔王「少女……弟……」


妖精「」パタパタ……ツンツン

魔王「はは、お前も慰めてくれるのか……小妖精よ」

側近「珍しい事もあるものだな」

少女「……側近さんも」スッ

側近「!」

少女「もう苦しまなくて良いんだよ……全部、終わったんだから」ギュッ

側近「少女……」スッ



魔法使い「……何が『全部終わった』よ」ボソッ


今回は以上です。

おやすみなさい。


こんばんは。

続きを投下致します。


僧侶「!」

魔法使い「さっきから黙って聞いてれば……もう苦しまなくて良い、ですって? 勝手な事ほざいてんじゃないわよ」ユラッ

戦士「魔法使い……」

魔法使い「あんたたち魔物のせいであたしは……あたしは……!」ゴォ……ッ

僧侶「い、いけません、魔法使いさん……!」

魔法使い「死ね……ッ!?」

勇者「止めろ。魔法使い」グッ

僧侶「勇者さん……」ホッ


魔法使い「勇者……どうして止めるの? あんたの仇討ちは終わったんだから次はあたしでしょ?」

勇者「……」

魔法使い「もう良いでしょ? あたしはあんたと違って……魔物がこの世に存在する事が許せないのよ!!!!」

勇者「……あいつらはお前を直接傷つけてはいないだろう」

魔法使い「あたしから見れば魔物は皆あたしの敵であたしの仇よ」

戦士「だからって……」

少女「……」スッ

魔王「!」

側近「少女……!」

魔法使い「……何のつもり? あんたの通せんぼなんざ塵程も意味ないんだけど」


少女「あ、貴女に……何があったのか、私は知らないけど……それで家族が傷つけられるのは嫌だよ」

僧侶「少女さん……」

少女「魔王様も、側近さんも……今までたくさん苦しんできたし、今だって苦しんでるんだよ」

勇者「……」

少女「そ、それでも2人に手を出すなら……まずは私を……!」ガタガタ

魔王「しょ、少女!」

妖精「~~~~!」オロオロ


魔法使い「……どいつもこいつも邪魔ばっかり」メラッ

戦士「!」

勇者「魔法使い……!」

魔法使い「ならお望み通り先に火炙りの刑にしてあげるわ……異端者ァ!」ボゥッ

少女「……ッ!」ギュウッ

側近「くっ……」ジャキンッ

魔王(間に合えッ……!)ジャラ……ッ

『お止めなさい』

魔・側「!」ピタッ

魔法使い「……!」ジュウッ

僧侶「神獣様方……姫様……」


姫「少女さん! 大丈夫ですか!?」タタタッ

少女「お姫様……うん、なんとかね。ありがとう」ヘタッ

白獣「戦いが終わったというのに、随分と殺気立っていらっしゃいますね」

魔法使い「……」ギリギリ

黒獣「この小娘……消してやろうか」グルル……

白獣「黒様? そんな事をしたら……」

黒獣「冗談だ白娘」


姫「……魔法使いさん。並びに勇者様方には私の友人達を救って頂き、心から感謝しております」クルッ

魔王「姫……」

姫「ですが、彼らを自ら害しようとお考えならば……如何なる理由があれど私はそれを絶対に許しませんわ」キッ

魔法使い「……」

姫「……私を敵に回すという事は、『聖都』そのものを敵に回す事と同義であるという事をどうかお忘れなく」

少女「お姫様……」

戦士(姫様かっけえ……)ポーッ

勇者「……魔法使い」

魔法使い「わかってるわ」スッ……カラン

姫「ご理解頂けて何よりですわ」ホッ

魔法使い「魔物の敵にはなっても、人間の敵にはなりたくありませんから」


僧侶「良かった……ではお仕置きは必要ありませんね」ニコニコ

魔法使い「だから止めてくんないそれ!? できればあれとは2度と会いたくないんだけど!」ブルブル

僧侶「そうはいきません! 私にとっては創作意欲をかき立てる絶好のネタですし……」ハァハァ

少女(ネタ……?)

魔王「姫。ありがとう」

姫「お礼を言われるような事はしておりませんわ。私はほとんど役に立てませんでしたし……何より」チラッ

魔王「そんな事はない。これで余計な血を流さずに済んだのだからな」

姫「で、ですが、此度の騒ぎの一部始終を父……陛下に報告するという重要な仕事がまだ残っております」

側近「確かにそうだな……でなければ完全に収束する事は難しいだろう」


魔王「我らも出向こう弟。この身はもう……自由なのだからな」

側近「その方が手っ取り早いだろうな。だが、俺達のような者が謁見を許されるかどうか……」

僧侶「……あ、それなら1つ提案があるのですが」

少女「提案?」

僧侶「はい。お城へ行く前にうちの教会へ寄っていかれてはいかがでしょう?」

勇者「……何をする気だ?」

僧侶「『魔の浄化』です」

魔王「魔の浄化?」


僧侶「人間に少しでも近付きたい、もしくは共に生きたいと願う魔物や魔族の方々向けに、我が教会が独自に行っている施術です」

魔王「それは興味深い……どのような内容なのだ?」

僧侶「大まかに説明すると、術式と神父様の祈りによって施術対象の方の持つ魔力総量を大幅に減らします」

魔王「ほう……」

僧侶「施術する相手によっては人間と見分けがつかなくなるとも……とにかく効果は保証するそうです」

魔王「……断言はしないのだな」

僧侶「私は神父様から術の事を聞いただけで、実際に施術する光景を見た事がないんですよね……」シュン

側近「そ、そうなのか……」


僧侶「私が教会で暮らしていた頃は1度も行われなかったので……側近さんはこの術の存在は?」

側近「……知っていた。ずっと前に神父殿から直々に聞いた事がある」

僧侶「まあ! そうでしたか」

魔王「なっ……では何故その時に施術を受けなかったのだ!? そうすれば……」

側近「馬鹿を言うな。貴方を差し置いて先に楽になろうなどと考える訳がないだろう」

魔王「弟……」

側近「……それに、その浄化は俺達のような魔王の血筋の者にも効くのか不安だった」

魔王「……あ」

僧侶「あ」


シィ……ン


今回は以上です。
やはりたくさんのキャラを一気に動かすのはキツ……い……←

おやすみなさい。


こんばんは。

更新再開します。


少女「だ、大丈夫だよ! 魔王様も側近さんも優しい魔物だもの!! きっと上手くいくよ」グッ

魔王「少女……」

魔法使い「けっ」

少女「だから今は、まずご飯を食べてゆっくり休んで……」グラ……

妖精「!」ビクッ

姫「あ……!」

側近「少女!!」ガシッ

少女(あれ……何で、かな? 急に体の力が抜けちゃった……)グッタリ

白獣「……ここまで、良く持ち堪えたものです」ボソッ

僧侶「え?」


白獣「さて、とりあえず回復ですね……でも今日はもう無理をしてはいけませんよ?」パァァッ……

少女「ありがとう……そ、そういえばあの玉! ごめんなさい白獣さん!!」ハッ

白獣「嗚呼、良いのですよ。壊れる事前提で渡した物ですし、何度でも生み出せますから」ニコッ

魔王「本当に凄い力だな……」

白獣「そんな事はありませんよ。これなんて」スッ

姫「その首飾り……何時の間に修復を?」

白獣「ついさっき、貴女達がお話をしている間に。ですがほぼ同じ場所で壊れたせいか……2つの首飾りが1つに合わさってしまったのです」

姫「まあ……とてもそうは見えませんが」


魔王「……確かに以前よりも魔除けの力が強まっているようだな」

側近「ああ。流石にこれは触れないな……」

姫「そ、そうなんですの?」

白獣「では、これは貴女に渡しておきましょうか」シャラッ

姫「え? あ、でも……」

魔王「うむ、私はそれで構わぬよ」

側近「俺も異存はない。少女も良いだろう?」

少女「うん。私が持っててもきつそうだしねー」


姫「な、何だか私ばかり申し訳ないですね……先程は宝物も修復して頂きましたし」

魔王(あのペンダントの事か……それは良かった)ホッ

僧侶(う、羨ましい……! 白神獣様直々に復元して頂いた装飾品……しかも2つも)ゴクリ

白獣「あ、ついでに傍に落ちていたこれも修復したのですが」スッ

勇者「これは……」

魔王「おお、その腕輪は勇者の」

僧侶「勇者さあああああん是非私の腕輪と交換してくださいいいいいい!!!!」ズザザザザ

魔王「じゃ、ジャンプからのスライディング土下座ッッッ……!?」ビクゥッ

勇者「……」スッ

僧侶「ありがとうございますううううううぃやったああああああああああああ!!!!」ピョーン


魔法使い「信者って怖いわね」

戦士「ああ」

少女「僧侶さんって結構面白い人だよね」

側近「それで済ませて良いのか……?」

姫「す、少しだけ羨ましいかもしれませんわね……あの自由さが」

妖精「!?」

黒獣「……気持ちの悪い奴だ」

白獣「そんな事を言ってはいけませんよ。率直で良い子ではありませんか」

魔王「いや、少しは隠した方が良いと思うが……」


黒獣「それはそうと白娘。もうその辺で良いだろう」

白獣「ええ、そうですね黒様……皆さん、私達はそろそろ主の元へ戻ります」

魔王「そうか、名残惜しい事だ……貴方達には本当に世話になった」

白獣「いえいえ。私達はお役目を果たしただけです……それに貴方の腕の事が残念でなりません」

魔王「気にしないでくれ。こうして命があるだけ儲けものだ」

姫「……」

少女「は、白獣さ……!」

白獣「少女さん、そのままで大丈夫ですよ……ただ、貴女の顔をよく見せて下さい」スッ

少女「? ……うん」


白獣「……。…………」ボソボソ

少女「……え?」

白獣「ふふ、神獣から貴女への忠告ですよ……警告とも言いますかね」ニコニコ

少女「あ……」

白獣「では行きましょうか……また困った時は何時でも喚んでくださいね? 来られる時はすぐに飛んできますから」ポンッ

妖精「」パタパタ

白獣「嗚呼、貴方はもっと眠らなければいけませんよ? 大切な人と離れ離れになりたくないのなら」

妖精「……」コクン


黒獣「おい」ノソノソ……ズイッ

側近「な、何だ?」ビクッ

黒獣「……我らの二の舞にだけはなるな」

側近「ッ! ……ご忠告痛み入る」

黒獣「ふん」プイッ……ザッザッ

僧侶「白神獣様……黒神獣様……!」

白獣「……これからも貴女達の事を見守っていますからね」ニコッ

僧侶「! は、はいっ!!」ジワッ


勇者「……」

戦士「なあ、考えてみれば俺達とんでもねえ体験をしたんだよな……?」

魔法使い「そうね……ってあんた、体力馬鹿の癖に何その情けない面」

戦士「……実はさっきまであの黒いのに遊ばれてた」ゲッソリ

魔法使い「あ、そう」

黒獣「白娘」クイッ

白獣「ふふ、乗せて下さるんですか? ありがとうございます」スッ


姫「あ……白神獣様」

白獣「……弟さんを想う気持ちを、これからも大切にしてくださいね」ニコッ

姫「! ……はい」ジワ……

少女「あ……白獣さん! それに黒獣さんも……」

白・黒「!」

少女「本当に本当に……ありがとう」

側近「……」ペコリ


白獣「……願わくば、貴方達の未来に主の御加護があらん事を」

フワリ……シュンッ


『……』

白獣(声)『あ、言い忘れる所でしたが』

『!?』

白獣『ここの土も清めておきましたからねー。では失礼』フッ

少女「び、びっくりしたー……」ドキドキ

魔王「……おい聞いたか弟よ」ヒソッ

側近「ああ」ヒソヒソ

魔王「これでまた農業を試みる事ができるぞ……!」

側近「言っておくが、もうあんな騒ぎは御免だからな」

魔王「わ、わかっておる!」


――――
――

黒獣「……」ビュオオオオオオオ……

白獣「黒様、私姫さんの弟さんの絵を見て……『妹』の事を思い出したんです」

黒獣「そうか」

白獣「あの子には……本当に辛い思いをさせてしまいました」

黒獣「……白娘のせいではない」

白獣「いいえ、いいえ……! 私達のエゴのせいで、あの子は……」ジワッ

黒獣「白娘」ギュッ

白獣「! 黒様、元の御姿に……」


黒獣「ここには私達しかいないからな。そんな事より」ジッ

白獣「あ……」

黒獣「あまり自分を責めるな。お前が苦しむ姿を見ていると……私も苦しい」

白獣「……ですが」

黒獣「お前よりも私の方が罪深いのだ……だからそんな顔をしないでくれ」

白獣「うう……黒、様ぁ……」ギュウッ

黒獣「主の元へ還ろう、白娘……そしてゆっくり休むんだ。私達には掃いて捨てる程の時間があるのだから」ポンポン

白獣「……はい……っ」


ヒュゥゥゥゥ……


今回は以上です。
一応終わりには近付いている筈なんですが……あれ?←

おやすみなさい。


こんばんは。
忙しさで死にかけていたらこんなに間が……。

少なめですが続きを投下します。


――――
――

戦士「……んで、これからどうする?」

僧侶「!」

少女「あ……」

魔法使い「そんなの決まってるでしょ? こいつら引っ張って都に戻るのよ」ギロリ

魔王「う……」タジッ

勇者「……」

側近「……善は急げというしな」

姫「で、ですが皆さんお疲れでしょう? 城では長時間拘束されるでしょうし、少し休んでからの方が」キュルルルル……

『!?』

姫「!? い、いえ、私ではありませんわ!」アワアワ


少女「お姫様、お腹空いてたの? 気付かなくてごめんね……」

姫「ですから……!!」

勇者「……俺は何も聞いていません、姫」

僧侶「勇者さん! それでは聞いているのとおんなじですよ!!」ビシッ

妖精「」グゥ……ギュルルルルル

少女「なんだ、妖精さんだったんだね」

妖精「……!」カアッ

少女「妖精さんも頑張ってくれてたんだもんね……」ナデナデ

妖精「……」ウルウル


魔王「嗚呼、そういえば私も……」サスサス

側近「……俺もだ」

少女「じゃあとりあえず先にご飯を作ろっか!」ポンッ

魔法使い「おい待てや勝手に決めんじゃないわよ」

戦士「しょ、少女ちゃんの手料理……楽しみだぜ!」ゴクリ

僧侶「あ、私も是非ご相伴に与らせて……」

魔法使い「あんた達いいいいいいいいいいいい!!!!」

勇者「……魔法使い、確かに多少の休息は必要だ。お前も疲れているだろう?」

魔法使い「ぐ……」


姫「あ、あの、少女さん……」オズオズ

少女「お姫様?」

姫「その……献立は決まっていますか?」

少女「そうだね……候補がないわけじゃないけど、これと言ったのはまだ」ウーン

姫「! で、でしたら私から提案をさせて頂いてもよろしくて?」

少女「材料があるかはわからないけど、とりあえず言ってみて」

姫「わ、私がというよりは……」チラッ

魔王「?」キョトン

姫「ま、魔王様に……食べて頂きたいのです」カアッ

僧侶「! ……ほほう」ピクッ


少女「なるほど、それなら多分大丈夫だよ。側近さん、手伝ってくれる?」

側近「無論だ、寧ろ俺が作る。お前は無理をするなと白獣にも言われただろう?」

少女「うう……」

姫「で、ではその分私が……!」ドキドキ

妖精「!」パタタッ

側近「貴女はもう少し自分の身分を考えてくれ」

魔王「ま、まあまあ弟よ、姫の心遣いを無碍にしては……」

側近「一体誰のせいだと……」ジロリ

魔王「!?」ビクッ


魔法使い「……付き合ってらんないわ、こんな茶番」クルッ スタスタ

僧侶「魔法使いさん何処へ?」

魔法使い「外で適当に食べて来る。ついでにあいつらがいる村に行って一応終わった事を伝えに行くわ」

僧侶「そ、そうですか」

魔法使い「それに、間違ってもこいつらと同じ食卓なんて囲みたくないしね」

戦士「お前はまたそうやって余計な事を……」ハアッ

勇者「……俺も行こう。その方が少しは説得力も高まるだろう」スッ

魔法使い「ッ! ……ま、まあ好きにすれば?」

僧侶(もう、素直じゃないんですから~)クスッ


戦士「んじゃあまた後でな! 何かあったら連絡しろよ」ビシッ

勇者「ああ、お前達もな」スタスタ

僧侶「お気をつけて」

魔法使い「言われなくても気をつけるわよ……寧ろこっちの台詞だわ」

魔王「……おお、そうだ! 城を覆っていた結界を解除しておこう」ポンッ

側近「それが良いな」

魔法使い「……いっそ外に出た時にぶっ壊しt」チャキッ

勇者「止めろ」

魔王「いや、その必要はない……今終わらせたからな」


少女「もう?」

側近「まあ、今の兄上ならこれ位は可能だろうな」

魔王「自分で仕掛けた魔法だしな。本来の魔力が戻っていなければもっと掛かっただろうが……」ハハハ

魔法使い「ちっ……そのままずっと戻らなければ良かったのに」ボソッ

少女「!」

戦士「おいおい、もういい加減に……」

姫「魔法使いさん……!」

僧侶「ちょ、魔法使いさん!」

魔法使い「ふん……行くわよ勇者!」ズンズン

勇者「……すまない魔王。では失礼する」ペコリ ザッザッ

魔王「気にするな……」シュン


今回は以上です。
もうしばらくこんな感じが続きます……。

おやすみなさい。


こんばんは。

更新再開です。


少女「魔王様……」

魔王「大丈夫だ、少女」ナデナデ

姫(羨ましいですわ)ジーッ

僧侶(姫様……なんと熱っぽい視線を)ニヨニヨ

側近「では、支度を始めるとするか……少女、先に兄上と共に食堂の準備をしていてくれないか」

少女「わかった」

魔王「うむ、任せておけ」

姫「わ、私は……」

側近「姫君は戦士達と待っていてほしい」

姫「ですが……」オロオロ


少女「側近さん、側近さん」ツンツン

側近「ん?」

少女「あのね、実は……」ヒソヒソ

側近「む……そうだったのか。しかしな……」

少女「お願い側近さん……お姫様の気持ちを大事にしたいの」ギュッ

側近「……仕方がないな。ただし、やって貰うのは本当に簡単な事だけだぞ?」

少女「ありがとう、側近さん! お姫様それで良い?」

姫「ええ……! ありがとうございます」パアッ

側近「礼には及ばん。考えてみれば姫君には魔法使いを止めて貰った借りがあるしな……」

側近(それに何より……弱っている少女にあんな風に頼まれては断れん)

僧侶(嗚呼、こっちもイイですね!)グッ

戦士(僧侶……顔がイキイキしていやがる)

妖精「」ジトーッ


側近「そうと決まれば急ぐぞ」

戦士「な、なあ……良ければ何か手伝わしてくれねえか?」

少女「え? でも」

僧侶「私達は図々しくもご馳走になる身です……何よりお互い色々ありましたし」

戦士「このまま只の客人に甘んじる訳にはいかねえよ!」グッ

側近「お前達……」

魔王「……」ジワッ

姫「! ま、魔王様!?」

魔王「あ、ありがとうな……2人とも……」エグエグ

僧侶「ええっ? あ、いえ、そんな……」タジッ


戦士「おいおい泣く事はねえだろ! 仮にも魔王だろ!?」

魔王「私は……ううっ、好きで魔王に……なった訳、では……」ゴシゴシ

側近「……行こう、姫君」クルッ

姫「良いのですか? 落ち着かせなくても」オロオロ

側近「暫く放っておく方が良い……大丈夫だ」スタスタ

少女「あ……そっか」

魔王「……ッ」ポロポロ

戦・僧「」オロオロ

少女(魔王様は、私達以外の人達と普通に触れあえるのが新鮮だから……あんな風に)

妖精「?」キョトン

少女「ふふ、大丈夫だよ妖精さん。私達も行こう!」


――――
――

食堂


魔王「いやーすまないな。あんな見苦しい所を見せてしまって」フキフキ

戦士「全くだ。お陰でこっちは軽くパニックになったぜ……」カチャカチャ

少女「ごめんね戦士さん……魔王様も泣きたくて泣いた訳じゃないから、どうか気を悪くしないでね?」バサッ……

戦士「大丈夫だぜ少女ちゃん! 全ッ然気にしてねえよ」デレッ

少女「本当? 良かったー……」

魔王「……おい」ジトッ

戦士「んああ!?」

魔王「少女に色目を使ってみろ……ちょっとした地獄を見て貰うからな」ジャラリ

戦士「」ゾクッ


少女「魔王様もあんまり無理しちゃ駄目だよ?」

魔王「うむ、わかっておるぞ少女」ナデナデ

戦士(……やっぱこいつ魔王だわ。てか以前にも似たような状況になったな、確か)ズーン

少女「よし、こんな感じかな。側近さん達の方はどうなってるかな」ソワソワ

戦士「そういや僧侶は何処行ったんだ?」キョロキョロ

魔王「彼女ならば少し前に厨房の方へ向かったが」

戦士「なああああああッ!?」

魔王「ど、どうしたのだ」ビクッ

戦士「不味い……こいつぁ不味いぞ……!」ガタガタ


少女「落ち着いて戦士さん、ちょっとお手伝いに行って貰っただけじゃない」

戦士「駄目なんだ、あいつに料理を任せちゃ……今すぐ止めn」


ゴボァアアアアッ……!!


少女「何!?」

戦士「お……遅かっ……た……」ガクリ

魔王「厨房の方か……一体何事だ!!」ダダッ

少女「と、とにかく行かなきゃ!」ダッ

戦士「あああ……あの大馬鹿め……」


――――
――

厨房

側近「……何だこの得体の知れない物体は」プスプス

姫「うっ……酷い臭いですわ……」クラッ

妖精「!? !?」オロオロ

僧侶「あれ? おっかしいですねー……」

側近「俺の記憶が正しければ、この鍋の中には切った野菜しか入れていなかった筈だが」

戦士「僧侶おおおおおおおおお!!!!」

僧侶「あ、聞いて下さい戦士さん! ちょっと手を加えたらいきなり……」

少女「お姫様、大丈夫!?」

姫「え、ええ……」


魔王「弟よ、何があったか説明するのだ!!」

側近「見ての通りだ」

戦士「お前は今すぐここから出るんだ料理音痴!」グイッ

僧侶「ちょ、放して下さいよ! 暴力反対!!」ギャアギャア

戦士「魔王、今すぐこいつを鎖でふん縛ってくれ! 厨房の平和のために!!」

魔王「い、いやそんな乱暴な……」

側近「……少女、すまんが」

少女「うん、大丈夫だよ側近さん。すぐにとりかかろう」グッ


――――
――

僧侶「いやあ、一時はどうなる事かと思いました」

戦士「お前が言うなよ……大体何で厨房なんかに行ったんだ」

僧侶「私だってお役に立ちたかったんですもん!」プンスカ

戦士「だからって手前の料理の腕を忘れる理由にゃならねえぞ!!」

側近「騒がしい奴らだな……全く」

魔王「嗚呼、これ程の人数で食べるのは久しぶりだな……こちらの方が温かいが」ジーン

姫「魔王様……」

少女「あの……とりあえず食べよう? 妖精さんも待ちくたびれちゃってるし」

妖精「」グゥ……


僧侶「あ……」

戦士「わ、わりい」

魔王「おお、それは悪かったな小妖精……では」

姫(魔王様、喜んで下さるかしら……)ドキドキ

側近「小妖精の事はどうでも良いが、作った身としては冷めない内に食べて貰いたいしな」

妖精「!」ムキーッ

少女「もう、側近さんったらー。じゃあ皆一緒に……」


『――いただきます』


今回は以上です。
書き進めていると時々魔王が隻腕になった事を忘れそうになります……←

おやすみなさい。


こんばんは。
大変間が開いてしまい、申し訳ありません。
あの後色々とありまして、完全に落ち着くまではもうしばらくかかりそうです……。

とりあえず今ある分を投下します。


僧侶(シチューに南瓜を入れてあるのは初めて見ますね……)パクッ

僧侶「! お……美味しi」

戦士「んんめええええええええええ!!!!」バクバクバクッ

魔王「せ、戦士は羊だったのか……!?」ビクッ

側近「いや、違うと思うぞ兄上」

姫「あの、魔王様……お味の方は如何ですか?」ドキドキ

魔王「ん? ああ、とても美味しいな……ありがとう姫」

姫「そ、それは良うございました……!」ホッ

魔王「?」


少女「良かったね、お姫様」ニコニコ

姫「ええ……」

妖精「♪~」モグモグ

戦士「うめえ……滅茶苦茶うめえよお……」ポロポロ

少女「!? 戦士さん、何処か痛いの!?」

僧侶「あ、気にしないでください少女さん。何時もの事ですから」モグモグ

側近「物を食う度に泣いているのか?」


僧侶「いえいえ、あまりに美味しくて温かい手料理を食べるとついこうなってしまうんですよ」

戦士「わ、わりいな……すぐに収まっから……」ズビッ

僧侶「戦士さんは、色々あって幼少期に家族と食卓を囲んだ経験がほとんどありませんから……」

戦士「僧侶、せっかくのメシの席で辛気臭え事言うなよ。それにもう終わった話だぜ?」ゴシゴシ

僧侶「ですが……」

少女「そうだったんだ……遠慮なく食べて良いからね戦士さん!」

戦士「はは、ありがとな少女ちゃん。そうさせてもらうよ」

魔王「……毎日おぞましい食卓を囲むのと、一体どちらが辛いんだろうな」ボソッ

側近「……」


僧侶「そういえば、魔法使いさんのお料理を初めて食べた時もこうなったらしいですね」

戦士「あー……そうだったな、うん」ポリポリ

姫「魔法使いさんもお料理上手なんですの?」

戦士「そりゃあもう! 性格はあれでも料理の腕前はやばいんすよ!!」

側近「……正直意外だな」

魔王「あ、ああ」

僧侶「ふふっ、世界は常に意外性に溢れているものですよ。かく言う私も……!」

戦士「いい! 誰も求めてないから!!」

僧侶「むう……」

少女「まあまあ2人とも……!」

妖精「」モグモグ……ペチンッ


――――
――

魔法使い「あんた達無事ー!?」バタンッ

勇者「……」ザッザッ

僧侶「もう、大袈裟ですよ魔法使いさん」

姫「お、お2人とも……もう少しゆっくりしてきても宜しかったんですよ?」

魔法使い「これでも遅過ぎる位ですよ……って何? この状況」

少女「……! ……!!」

側近「……」ズーン

戦士「……」ショボン

妖精「~~~!」ケタケタ


僧侶「これはですね……腹ごなしと称して戦士さんと側近さんが腕相撲をおっぱじめた結果ですよ」

魔法使い「はあ!? 長テーブルこんなにしてまで何やってんのよ……!」ボロッ

姫「初めは普通に談笑をしていたんですけれど……そのうち戦士さんの外見や身体能力の話になって」

僧侶「実際に戦士さんの力がどれ程のものか、側近さんが興味を持ったんですよね」

姫「初めはちょっとした力比べのつもりが、いつの間にかお2人とも本気になってしまって……」

僧侶「それでこの有様です」

魔法使い「……呆れた」


魔王「しょ、少女よ、もうその辺で……な? 2人もこんなに反省しておる事だし、テーブルなら私がすぐに……」オロオロ

少女「そういう問題じゃないでしょ! 下手したら破片で誰かが怪我をしてたかもしれないのに!!」キッ

魔王「う、む……それもそうだな」タジッ

僧侶「大方、側近さんを打ち負かして少女さんに良い所を見せようと思ったんでしょうね、戦士さんは」

姫「側近さんも、少女さんの前で無様な姿を晒したくないと……」

魔法使い「全く、その女のために敵同士アホみたいに力比べなんてどうかしてるわよ……ねえ勇者」

勇者「……」ジッ

魔法使い「……勇者?」

勇者「……魔王、すぐにテーブルを修復して俺と勝負しろ」ガタッ

魔王「!?」

魔法使い「勇者!?」


――――
――

僧侶「さてさて、色々とありましたが」

魔法使い「幾らなんでもあり過ぎよ……」ゲッソリ

戦士「はは……わ、わりい魔法使い」

側近「少女、俺が悪かった……もう絶対にあんな事はしないからどうか許してほしい」

少女「……」ムスッ

妖精「」パタパタ ニヤニヤ

魔王(せっかく外に出られるというのに、出発前から心身共にこんなに疲れてしまうとは……)

勇者「……」

姫「そ、それでは参りましょうか……都の、我が城へ」


今回は以上です。
8月までに終わるかな……。

おやすみなさい。


こんばんは。
なんとか落ち着いてきたので、また少しずつ投下していきます。

とうとう3年目か……←


魔王「姫、姫」ツンツン

姫「はひっ!?」

魔王「? いや……その前にまず行く場所があるだろう?」

姫「……! あ、そ、そうでしたわね! 嫌だわ私ったら……!!」アセアセ

側近(兄上……もう少し言い方というものが)ハアッ

僧侶「と、とりあえず都へ移動しましょう! ね?」

少女「そうだね、行こっか」

戦士「ああ」

勇者「魔法使い、頼む」

魔法使い「おらああああ転移魔法ッッッ!!!!」ブンッ

魔王「え、ちょ、まっ……」


――シュインッ


――――
――



側近「全く、転移魔法程度なら俺や兄上も使えるというのに」

魔法使い「うるさい。さっさとあそこから離れたかったのよ」

僧侶「皆さん揃っていらっしゃるようですね」

姫「では、さっそく教会へ……」

側近「……その前に、少し時間をくれないか? 俺と兄上は念のために人間に化けておく」

少女「え? できるの?」

側近「あの時は魔力が思うように使えなかったからな。今なら……この通りだ」スゥッ

姫「あ、初めてお会いした時のお顔ですね」

僧侶「ほうほう、成程……」ジーッ


側近「あ、あまりジロジロ見るな。見世物ではないのだぞ」

僧侶「あはは、すみません。ちょっと今後の参考にしようと思いまして」

少女(参考……?)

勇者「……」ジッ

魔法使い「勇者まで……!?」

側近「一体何なんだお前達は!」

勇者「……気を悪くしたならすまない」フイッ

少女「?」


側近「全く……ほら、兄上も早く……兄上?」

魔王「……おお……」キラキラキラ

妖精「」キラキラキラ

戦士「おーい、聞こえてるかー?」ヒラヒラ

少女「あ……そっか。魔王様は初めて都に入るから……それに妖精さんもあまり来た事なかったもんね」

姫(魔王様……子供のように目を輝かせているお姿も素敵ですわ)

側近「……兄上。気持ちはわかるが今は用事があるだろう?」ポンッ

魔王「……はっ! す、すまない、つい……」

魔法使い「さっさと化けるなら化けなさいよ」イライラ

魔王「う、うむ」スゥッ

姫(魔王様が人に化けると……このようなお顔になるんですね)ドキドキ

魔王「待たせてすまなかったな。今度こそ行くとしようか」


――――
――

教会

僧侶「着きました」ザッ

魔王「ここが……」

少女「わあ……大きいね」

側近「……変わらんな。あの頃と」

魔法使い「かなり立派な建物ね。お城の次位には」

姫「教会は私達王族とかなり密接な関わりがありますからね。寄付もそれなりですし」ゴソゴソ

戦士「へー……」

勇者「……僧侶。何故樽の中に隠れるんだ」

僧侶「!」ビクッ


少女「そ、僧侶さん……?」

魔王「ここは貴女の生まれ育った場所だろう? もっと堂々としても……」

側近「……ここに対して何か疚しい事でもあるのか?」

僧侶「い、嫌ですねえ、そんな訳ないじゃありませんかー」

魔法使い「目が泳いでるわよ」

戦士「そういやお前、都に来てから全ッ然ここには寄らなかったよな」

僧侶「ギクッ」

勇者「……王への謁見の時も、何処か怯えていたような気がするな」

僧侶「だ、大丈夫ですよ! 神父様が出てきたら出ますから」

?『あら、それは残念でしたね。神父様なら外出中ですよ』ガシッ

僧侶「」


魔王「! 何時の間に……」

?「全く、帰って来ていたのならばすぐにこちらにも顔を出してくれれば良かったのに」ニコッ

側近(なんという威圧感だ。服装からして聖職者のようだが……)ゴクリ

僧侶「あ、あの、そそそれは……」ガタガタ

戦士(あの僧侶が……怯えてやがる)

?「言いたい事は山程ありますが、今はこちらですね」クルリ

少女「あ……」ペコリ

?「姫様とこの子以外はお初にお目にかかりますね……僧侶の親代わりをしているシスターと申します。以後お見知り置きを」ペコリ


今回は以上です。
もっと進めたいのに進まない……。

おやすみなさい。


こんばんは。

更新再開します。


――――
――

妖精「」パタパタ キョロキョロ

少女「わあ……」キョロキョロ

側近「小妖精、ここでは大人しくしていろ……少女は教会に来るのは初めてだったな」

少女「うん! 側近さんはここであの聖書を貰ったんだよね?」キョロキョロ

側近「……ああ」

少女「私も貰えるかなあ?」

側近「勿論だ」

シスター「神父様ならばもうすぐお戻りになられる筈です。それまでどうかごゆっくりお待ちください」

姫「シスターさん、突然大人数で押し掛けてしまってごめんなさいね。これにはやむにやまれぬ事情がありまして」

シスター「とんでもない! 教会は、何時でも誰でも何人でも大歓迎ですよ」ニッコリ

魔王「……そう言って貰えると有難い」ソワソワ


魔法使い(あのステンドグラス……一対の神獣を模しているのね。それと……)ジーッ

シスター「それにしても、まさかあの日黙ってここを飛び出して行った貴女が勇者一行の一員として戻ってくるなんてね」チラッ

僧侶「!」ビクッ

シスター「当時は育て方を間違えたかと嘆いたものですが……随分立派になって」

僧侶「あ、あはははは……」

シスター「……まさか、皆さんにご迷惑をお掛けするような事はしていないでしょうね?」ジッ

僧侶「そ、そそそんなまさか……」

勇者「……俺達は旅の中で何度も僧侶に助けられました。彼女は掛け替えのない仲間です」

僧侶「勇者さん……!」ジーン


シスター「……そうですか。それを聞いて安心しました」

戦士「まあ、トラブルメーカーな所もあるけどな~」

魔法使い「あたしなんて何度僧侶に酷い目に遭わされたか……」

シスター「あら、それは是非詳しく聴かせて頂きたいものですね」ピクリ

僧侶「せ、戦士さんと魔法使いさんの馬鹿ああああああ!!!!」

魔法使い「事実じゃない(まあ日頃の仕返しもあるけど)」

?『ほっほっほ、ちょっと出かけておる間に随分と賑やかになったのう』ガチャッ


シスター「! おかえりなさい、神父様」

神父「うむ、ただいま……おや姫様、よくお出でになられましたな」

姫「神父様、お久しぶりですわ」

神父「……! 姫様、まさかそこにおるのは」

僧侶「あ……お久しぶりです、神父様」ペコリ

神父「おお僧侶……よくぞ戻って来てくれた。突然いなくなったあの日から随分心配しておったのじゃぞ?」ギュッ

僧侶「ご、ごめんなさい……お2人がお元気そうで良かったです」


神父「陛下から勇者一行の中にお前がいるとはお聞きしていたが……やはり直に会わねば実感がないものだ」

シスター「本当にそうですね、神父様」

僧侶「あの、それで……」

神父「お前達、都中で何やら有名になっておるようじゃのう? 復活した魔王を倒したとかで」

僧侶「あ……」

魔・側「……」

神父「まあ、それはすぐに落ち着くとは思うが……問題は若者か……」


僧侶「それは、どういう……」

神父「じきにわかる。それよりこんな大所帯で戻って来てくれた事情を話してくれるかの? 知っている顔もいるようじゃし」チラリ

側近「……!」

神父「以前、激しい雨の降った日にここに来られた事はないかのう? あの時は……ローブで顔は良く見えなかったが」

側近「……覚えていて下さったのですか」

神父「あの時の貴殿の纏っておる雰囲気が都の者と……否、人間と違っているような気がしたのでの。気を悪くされたなら申し訳ない」

側近「いえ……事実ですので」

神父「そう言って貰えると有難い。では、改めて僧侶が貴殿らをここに連れてきた理由をお聞きしよう」


――――
――

神父「……成程のう。まさか彼らが魔王とその側近とは……俄かには信じられない話じゃ」

僧侶「でも、本当なんです神父様!」

シスター「……落ち着きなさい僧侶。私達は貴女が嘘をついているとは思っていませんよ」

神父「うむ……人間と同じように生きたいという貴殿らの願い、確かに聞き届けた」

魔王「! では……」

神父「早々に取りかかるとしよう……浄化の儀の準備を。シスター、僧侶、手伝っておくれ」バサッ

シ・僧「はい!」


魔・側「……ありがとうございます」ガバッ

神父「頭を上げなされ、魔王殿、側近殿。今や貴殿らは大切な客人じゃ」

魔法使い「……化け物なのに?」

神父「ここへ来る事ができたという事実があれば、そんなものは些細な問題にすぎんよ」

戦士「?」

勇者「……」

シスター「では皆さん、準備が整うまで少々お待ちください」ペコリ カツカツカツ……パタン


今回は以上です。

おやすみなさい。

すみません、最後に今更ながら>>675の修正を。


――――
――

教会

僧侶「着きました」ザッ

魔王「ここが……」

少女「わあ……大きいね」

側近「……変わらんな。あの頃と」

魔法使い「かなり立派な建物ね。お城の次位には」

姫「教会は私達王族とかなり密接な関わりがありますからね。寄付もそれなりですし」

戦士「へー……」

僧侶「……」コソコソ……ゴソゴソ……

勇者「……僧侶。何故樽の中に隠れるんだ」

僧侶「!」ビクッ


こんばんは。
1ヶ月以上も更新が止まっていて申し訳ありません……!
今ある分の書き溜めでは更新としてやや不十分に思うので、どうかもう少しだけお待ちください。

……こんな状態にも関わらず、脳内では魔王達がハロウィンやってます←
魔王は吸血鬼、側近はそのまんま狼男に(笑)
少女達は適当に猫耳やら尻尾やらをつけてますね。
そしてお互い言い合う『トリックオアトリート!』
半ば本気で少女に悪戯をしようと考えた側近とか、南瓜のランタン片手にはしゃぐ魔王とか……色々と浮かんでばかりです。
あ、少女と姫はくり抜いた中身でパイとマフィンを作りました。
妖精は例によってお菓子をつまみ食い中です。
フリーダム過ぎだこいつら……orz

……お目汚し失礼致しました。


こんばんは。

かなり遅くなってしまいましたが、続きを投下します。


少女「良かった……これでほんの少しは楽になれるよね!」ホッ

側近「だと良いがな……」

魔王「き、緊張するな……この体はどうなってしまうのか」

姫「きっと大丈夫ですわ、魔王様。どうか神父様を信じてくださいませ」

魔王「う、うむ。姫がそう言うなら」

魔法使い「……お姫様。こっちに来てください」グイッ

姫「え?」

魔王「あ……」

魔法使い「」ギロッ

姫「!?」

魔王「ひッ」ビクッ

戦士(やっぱ姫様が魔王達と仲良くしてんのが嫌なのか……)


少女「……」

妖精「」パタパタ

勇者「……隣、良いか?」

少女「! ……どうぞ」コクン

勇者「ありがとう」

妖精「」ジーッ

勇者「……君は」

少女「え?」

勇者「何時から……彼らと住んでいるんだ?」

少女「何時から? ……えっと……」


勇者「……済まない。不躾な質問だったか」

少女「あ、ううん、そんな事ないよ! ……かれこれ、10年位になるかな」

勇者「そうか」

少女「うん」

勇者「……」

少女「……」

妖精「」パタパタ

側近(! 少女……)ピクッ

魔法使い(勇者? なんであの女と一緒に……)


勇者「君は、彼らの事は……好きか?」

少女「勿論だよ! 私にとってかけがえのない家族だもの。勇者様の家族はどんな人?」

勇者「! 俺は……」

少女「?」

勇者「俺の……家族は……」グッ

魔法使い「……あんた、ちょっと黙りなさい」ジロッ

少女「ッ!」ビクッ

勇者「魔法使い」

魔法使い「勇者。無理に答える必要なんてないわよ」

勇者「だが……」


少女「ご、ごめんなさい……訊いちゃいけない事だった?」

勇者「いや、こちらこそ……済まない」

魔法使い「ふん」

側近「……」

僧侶「お待たせしました、術式の準備が……あ、あの、どうかしましたか?」

魔王「あ、いや、大丈夫だ。気にしないでくれ」

僧侶「そうですか? では……魔王さんと側近さん、どうぞこちらへ」

側近「……少女達は一緒ではいけないか?」

僧侶「施術中、万が一の事があってはいけませんので……それでも宜しければ」


少女「だ、大丈夫! 行くよ!」

少女(それにここで待ってても、気まずくなっちゃいそうだしね……)チラッ

魔法使い「……」ジロリ

僧侶「わかりました、それではご一緒にどうぞ」スッ

戦士「なあ僧侶、その術ってのはどれ位かかるんだ?」

僧侶「さあ……私も詳しくは知らないので。すみませんが戦士さん達はもう少しここで待っていてください」

勇者「」コクリ

戦士「おう、わかった」

魔法使い「はあ……しょうがないわね」

魔王(いよいよか……)ゴクリ

側近(……)


――――
――

僧侶「神父様。魔王さん達をお連れしました」ギィィ……

神父「ありがとう僧侶……おや? 少女さんも一緒に来たのかね」

僧侶「は、はい。宜しかったでしょうか」

神父「施術の邪魔をしなければ構わんよ。ではお二方、あの魔法陣の中央に行って貰えるかのう」スッ

魔・側「」コクリ ザッザッ……

神父「うむ。後は変化を解いて、最後にこちらを向いて横へ並んでおくれ……それで貴殿らの準備は万端じゃ」

シスター「……少女さんと妖精さんはこちらへ。施術中は何が起こっても絶対に陣へは近付かないでくださいね」

少女「は、はいっ。妖精さん、一緒に大人しく待っていようね?」ギュッ

妖精「」ソワソワ


僧侶「シスター……私はどうしましょう?」オズオズ

シスター「貴女は少女さんのお傍へついていておあげなさい」カツカツ……ピタリ

僧侶「わ、わかりました」

魔王「いよいよだぞ……緊張しておるか弟」

側近「ああ……だが兄上もだろう?」

魔王「う、うむ……とりあえず深呼吸をして落ち着こう」スー……ハー……

神父「さてお二方、心の準備は良いかのう? ……では早速始めるとしよう。補佐を頼むぞシスター」

シスター「はい」

僧侶(嗚呼……いよいよなのですね……!)ドキドキ

少女(2人とも、頑張れ……!)グッ

神父「……主よ、我らとの共存を願う魔の者達に希望を……」ブツブツ

シスター「……―――。~~……!」


――――
――

『――兄上』

『何だ?』

『もしも……もしもだよ? ここから解放されて、自由になれたら何がしたい?』

『急に言われても困るな……』

『ご、ごめん』

『別に責めてなんかいないさ。そうだな、そんな日が来るかどうかはわからないが……』

『うん』

『俺は……城を飛び出して外の世界を見て回りたい』

『外?』

『ああ。今はまともに外出する事もままならないが、それが叶うならこれ程幸運な事はないと思う』

『……そっか。確かにそうだね』


『その時は勿論お前も一緒だからな、弟』

『! うん……!』

『じゃあ今度はそっちの番だな。お前は自由になれたら何がしたいんだ?』

『あ、その……僕は……』

『何だよ、お前から訊いといて……そんなに言いにくい内容なのか?』

『……ちょっとね』

『思い切って言ってみろよ。絶対に誰にも言わないからさ』

『本当!? じゃ、じゃあ言うよ』

『ああ』

『兄上、僕は……僕はね――』


――――
――

『……さん……そっき……ん…………側近さん!』

側近「!?」パチッ

少女「良かった……気が付いたみたいだね」ホッ

側近「……少女」

魔王「全く、施術の最中に気を失ってしまうとは……神父殿とシスター殿の声が子守唄にでも聞こえたか?」

妖精「」ニヤニヤ

側近「そ……そんな訳ないだろう! 心配をかけたな、少女」ムクッ

少女「ううん。ちょっとびっくりしちゃったけどね」


側近「……ところで兄上。俺が気絶して術に何か影響は出なかったか?」

魔王「ああ、それなら心配いらない。神父殿によれば、体の変化に対する防衛本能がやや過剰に働いただけとの事だ」

魔王「正直私も少し眩暈がしたが、何とか耐える事ができた」

側近「そうか……」

僧侶「ふっふっふ、では側近さん。鏡を見てみてくださいな」スッ

側近「……これは……!」

シスター「神父様」

神父「ふむ、彼らの反応を見る限り……儀式は概ね成功したと言って良いかのう」


今回は以上です。
日常で心身ともに折れまくり……今年までに終わるかな?←

おやすみなさい。


こんばんは。

更新再開します。


側近(顔が少しだけ……人間に近付いている)マジマジ

魔王「弟、弟。ほら見てくれ、肌の鱗が少し減っておるぞ!」

側近(額の角もかなり小さくなっているな……)サスサス

魔王「角と牙もな、前よりも目立たなくなったぞ。ほら、ほらっ」

側近「……」

魔王「おーとーうーとー!」グイグイ

側近「ええい少し黙っとれい兄上!!」

魔王「」ガーン


少女「ま、魔王様……気持ちはわかるけどあまり落ち込まないで! 凄く素敵だよ?」

魔王「ほ、本当かっ!?」パァッ

妖精「……」ジロジロ

側近「! しょ、少女……こっちはどうだ?」

少女「うん、側近さんも良い感じだよ!」

側近「む、そうか……」

側近(よっしゃあああああああああああああッッッッ!!!!)グッ

僧侶「お2人とも、かなりはしゃいでおられますね」ニコニコ

シスター「ええ、本当に」


神父「ほっほっほ。新たな外見がお気に召して頂けたようでなによりじゃよ……して、魔力の方は如何かのう?」

魔王「……そう言えば、以前よりはやや弱まっておるような」スッ

側近「! ……そうか。兄上はそうなのか」

魔王「弟……まさか」

側近「……どうやら俺の方はあまり変わらんようだ。多少御し易くはなったかもしれんが」

少女「!」

僧侶「そんな……!」

魔王(……末子、だからなのか)ギリッ

神父「やはり個人差があるようだのう。力不足で誠に申し訳ない」ペコッ

側近「神父殿のせいではありません。寧ろ魔王の血筋である我らを……ここまで変えて頂けただけでも御の字です」


神父「むう……種族の差は本当に大きな課題じゃな……あの時はあまりにも上手く行き過ぎた」

僧侶「!」

神父「ほんの少しの差異を残し、ほとんど人間に近い容姿に生まれ変わったからのう……」

魔王「? ……!」ピクリ

側近「兄上、もしや……!」

少女「え? 知り合いなの?」

側近「……我らの憶測が正しければな」

魔王「神父殿、私達の前に施術を行ったのはまさか……!」

側近「今から約40年程前ではないか!?」

神父「……申し訳ないが、その詳細を貴殿らに教える事はできんよ」


魔王「な、何故だ!?」

神父「その者は、今はもう別の生を歩んでいるのでのう。それを阻むような真似はしたくないのじゃ」

側近「……重要な個人情報という訳か」

神父「うむ……どうか理解して貰えないかのう?」

魔王「ッ……わかりました」

側近「寧ろ、心当たりがある者が無事に生きている可能性を知られただけで有難いです」

神父「なら良かった……ではそろそろ礼拝堂へ戻るとしよう」

シスター「そうですね……御二方もよろしいですか?」

魔・側「」コクリ

少女「お姫様達、待ちくたびれてなきゃ良いんだけど……」

妖精「」パタパタ


――――
――

姫「! お帰りなさい、その……結果は如何でしたか?」ドキドキ

少女「ただいまお姫様……うん、何とか成功したよ」

側近「待たせて済まなかったな」

魔王「これで少しはマシになったと思うが」

姫「あ……魔王様、角が短くなられましたね……鱗も」スッ

少女「そうなの! 側近さんも顔つきとか色々変わってねー」

姫「まあ、本当ですわね」

魔王「おかしくはないだろうか?」

姫「い、いいえ! 全然」ブンブン

側近「……それは良かった」ホッ


勇者「……では、これで城へいけるな」

戦士「だな」

魔法使い「ふん。用が済んだならさっさと行くわよ」スタスタ

僧侶「魔法使いさんったら……で、では行きますね、神父様、シスター」

神父「うむ。後でまたゆっくり今までの事を聞かせておくれ」

シスター「ええ、私も是非聞きたいですよ……1つ残らず、包み隠さず、ね」ニッコリ

僧侶「ひ、ひぃっ……!」ビクッ

少女(僧侶さん……大丈夫かな)

姫(そんなにシスターは恐ろしいんでしょうか?)

妖精「……?」コテン


魔王「……施術を本当にありがとうございました」ペコリ

側近「このご恩は決して忘れません」ペコリ

少女「!」ペコッ

シスター「また何時でもいらしてくださいね。神父様と共にお待ちしておりますので」

魔王「うむ。是非そうさせて貰おう」

神父「……願わくば、貴殿らの行く先に幸多からん事を」

魔・側「ッ……」ジワッ

少女「ふ、2人とも……!」

魔王「す、すまん少女。少々感極まってしまってな……もう大丈夫だ」ゴシッ

側近「ああ」ササッ


姫「本当によくやってくださいましたね。どうか私からもお礼を言わせてください」

神父「勿体なきお言葉……我らは己のやるべき事を果たしただけですぞ」

姫「それでも、です……私の友人達のために……本当に……」ジワッ

少女「お、お姫様」オロオロ

魔王「姫……!」アワアワ

妖精「!」オロオロ

シスター「姫様……!」

側近「……」

僧侶「全く、本当に罪な方々ですね」ズイッ

側近「ぬおっ!?」ビクッ


僧侶「特に魔王さん。姫様の心を掻っ攫っていかれるなんて……うふふふふ」ハァハァ

側近「き、貴様は……一体……!」

僧侶「嗚呼、すっかりカミングアウトが遅れてしまいましたが、私実は異種間恋愛信奉者でして……」

側近「ふぁアッ!?」

僧侶「特に魔物と人間の処j……ゴホン、女の子の絡みが3度の飯より好きなんですよね~」フヒヒヒ

側近「な、何を言って……」

僧侶「あ、因みに私自身も願わくば素敵な魔族の殿方と結ばれたいなーとか思っていてですね」ワキワキ

側近「……」ゾワゾワ


僧侶「正直、側近さんは私の好みドストライクという……!」ドキドキ

側近「」

僧侶「まあ、少女さんのためにも潔く身は引きますけどね~」ウンウン

側近「」

僧侶「応援してますよ! 心の底から!! ……あ、挙式の際は是非こちらで」グッ

側近「」

僧侶「とにかく滾るんですよ、妄想でも現実でも……例えば」ペラペラ


――――
――

魔王「や、やっと姫が落ち着いてくれた……待たせたなおとう……」

側近「」チーン

魔王「おとうとおおおおおおおおお!!!?」

僧侶「あ、遅いですよ魔王さん達」

魔王「僧侶、何があったのだ一体……!?」

僧侶「いえ、私が少々自分の趣味嗜好の事を語っただけですが……どうやら側近さんには刺激が強すぎたようですね」テヘッ

側近「兄上……人間ッテ怖イ……」ガタガタガタ

魔王「何を話したんだ貴様ああああああ!!!!」

僧侶「そんな大した事は……あ、せっかくなので魔王さんにm」

シスター「にも、何です?」ニコニコ

僧侶「」


今回は以上です。
恐らく今年最後の更新なのに誰得な暴露をやっちまった……。

本当はもっと早く更新する予定でしたが、咳が酷かったりなどの体調不良で断念orz
ようやく落ち着いてきたので何とか年越し前にここまで進められました。
今年中に終われなくて申し訳ありません……!

では少し早いですが、よいお年を。


こんばんは。
あああ月1更新の筈がめちゃくちゃギリギリに……!

嬉しいコメントやお薬ありがとうございます。
かなり今更ですが、今年もよろしくお願い致します。


――――
――

少女「魔王様。側近さん具合悪いの?」

魔王「うむ、少しな……」

姫「このまま城へ直行して大丈夫でしょうか?」

側近「だ、大丈夫だ……落ち着いてきたから」

僧侶「さァ、早い所勇者さん達に追いつきまショウソウシマショウ」ピシッ ザッザッザッザッ……

妖精「……」パタパタ

魔王「……あ」

少女「どうしたの?」


魔王「そういえば、お前の事を浄化して貰うのをすっかり忘れていた……!」

少女「え? 私?」

側近「! そうだ……すまない少女、俺達の事ばかり気にするあまりお前の事を後回しにしていた」

少女「別に良いよ~。特に何ともないし、重要な事でも……」

魔王「何を言っておるのだ! 我らにとってはこれ以上ない位重要な事だ」

側近「同感だ」

妖精「」コクコク

僧侶(本当に愛されてますねー、少女さん)


少女「で、でも今更戻るのも……」

側近「そうだな……もどかしいが、帰る前にもう1度教会へ寄るとしよう」

魔王「うむ。今度は忘れぬようにしないとな」

少女「もう、大袈裟だなー」

姫「少女さん……そんな他人事みたいに」

僧侶「……」ジーッ

少女「? 僧侶さん?」

僧侶「……あ、ごめんなさい。何でもありませんよ」フルフル

僧侶(そう言えば、少女さんは長い間魔王城で暮らしていた割に……特に大きな異変は見られませんね)

僧侶(浄化の必要あるんでしょうかね……?)コテン


――――
――

シスター「……」

神父「ようやく落ち着いたようじゃのう」

シスター「神父様……あの子は相変わらずでした。良くも悪くも」ハアッ

神父「ほっほっほ。まあ、そう悪い事ではあるまい……信仰心も変わっておらぬようだしの」

シスター「それはそうですが……」

神父「……ところでシスターや。勇者殿に言わなくて良かったのかね?」

シスター「……何をです?」

神父「そなたが……かつて先代勇者殿と共に旅をした仲間の1人である『僧侶』であったという事を」

シスター「……」


神父「あの日、いなくなった彼女の身を案じて此処でシスターとして過ごしてきたと」

シスター「……それを明かした所で、過去は何も変わりませんよ」

神父「じゃが、せめて勇者殿に先代勇者殿の事を話しても良かったのではないかな?」

シスター「私のような臆病者には、そんな資格はありません」

神父「……」

シスター「あの日……自分を磨き、人を助けながら勇者様を捜すと言って別れた『剣士さん』と『魔導士さん』」

シスター「彼らはきっと、今も何処かでそれを続けている筈です……私なんかとは違って」

シスター「勇者様が此処に戻って来た時のために都へ留まると決めた私を……あまり良く思ってはいないでしょう」


神父「そう後向きな事ばかり言うでない。主が見ておられるぞ」

シスター「ですが……!」

神父「シスターや、こう考える事もできよう……そなたが此処に留まっておったからこそ、先代勇者殿がどうなったかを真っ先に知る事ができたと」

シスター「!」

神父「そしてそれを2人に伝えられるのはそなただけじゃぞ? ……持っておろう? そなたらがかつて旅を共にした腕輪を」

シスター「……」コクリ

神父「ならば、伝えられるじゃろう……彼らも同じように持っておればのぅ」


シスター「……」ジワッ

神父「そなたは、今日のためにこの40年余りの間、此処に留まり続けたと考えれば良いではないか。のぅ?」

シスター「……は、い」ポロポロ

神父「彼女のために祈りなさい。そして思いっきり泣くと良い……今なら主もお許し下さるじゃろう」ポンポン

シスター「うぅ……うぁ、あ……」ポタッ……パタタッ……

シスター(勇者様、こんなに……遅くなって、しまいましたが……今からでも、願う事が許されるならば)

シスター(どうか……どうか安らかに……お眠りください……!)ボロボロ


今回は以上です。
短めで申し訳ありません……。

おやすみなさい。


お久しぶりです。
ごめんなさい、まだ書き溜めが十分でないので続きはもうしばらくお待ちください!
遅くとも週末には投下したいと思います……!

2月は終わるの早過ぎるorz


こんばんは。
大変お待たせ致しました、続きを投下します。

……今年の梅も本当に綺麗でしたね。


――――
――

都の城

兵士1「姫様……よくぞご無事で!」

兵士2「知らせを聞いて、皆お戻りになられるのを今か今かと待ち侘びておりました!」

姫「本当に心配をかけましたね。ところで陛下は……お父様はお戻りですか?」

兵士3「勿論です。陛下は姫様の事を誰よりも……」

?「姫様ー! お帰りなさーい!!」パタパタ

姫「影姫! 今まで私の身代わりご苦労様でした」

影姫「はあ、はあ……大変でしたよ色々と~。給仕さんのサポートがなければどうなっていたか」


姫「とても疲れたでしょう、今日の夜から暫くゆっくりお休みなさい」

影姫「はい~……」グッタリ

魔王(姫と……瓜二つの娘……!)

側近(姫君の影武者か……話には聞いていたが、他人でここまで似ているとは)マジマジ

影姫「あの、姫様、ところでこの人達が……」

姫「ええ。勇者様一行と……私の大切な友人達ですわ」

影姫「ほえー、何時の間にこんなに……あ、僧侶ちゃん!」

僧侶「影ちゃん、お久しぶりですね」ヒラヒラ


影姫「噂は聞いてたよー! 私も心配してたんだから!!」

僧侶「ごめんなさい。でもこれも私の夢の実現のためなのです……!」グッ

影姫「そ、そっかー……」

戦士「僧侶、知り合いだったのか?」

僧侶「知り合いも何も、影ちゃんとは少し前まで教会で一緒に育った仲なんですよ」

魔法使い「ふうん……それから影武者として召し抱えられたって所?」

僧侶「ええ。因みに私が都を出たのはそれからもうしばらく後の事になります」

魔法使い「そこまで訊いてないわよ」


影姫「あ、申し遅れました、姫様の影武者をしている影姫と申します~。勿論身代わりの時はこんな言葉遣いじゃないですよ?」

姫「ふふ、貴女は本当に良くやってくれています」

影姫「ありがとうございます」

魔王(本物と影武者が、こんなに長く近い場所にいられるのが許されているとは)

側近(この都の中は……それ程平和と言う事か)

僧侶「影ちゃん、そういえばお兄さんは?」

影姫「ああ、兄様ならすぐに……」

?「……姫様」


姫「! 王側……」

僧侶「あら、噂をすれば」

王の側近「よくぞ戻られました。謁見の間で陛下がお待ちですので、すぐにそちらへ……」

姫「元からそのつもりですわ。さあ皆さんもこちらへ」ザッザッ

王側「……」ジロリ

魔王「!」ビクッ

少女(舞踏会の時も少しだけ見たけど……やっぱりちょっと恐そうな人だな)

側近(勇者達はともかく、こちらは姫君の友人を名乗る素性の知れぬ者達……警戒されても無理はない)


僧侶「もう、少し見ない間にすっかり仕事人間ですね~」

戦士「なあ僧侶、あいつとも教会で一緒だったのか?」ヒソヒソ

僧侶「ええ。王側さんは影ちゃんの実のお兄さんで、その優秀さを買われて影ちゃんと一緒にお城へ召し抱えられたんですよ」ヒソヒソ

少女「す、凄いんだね」

妖精「」パタパタ ソワソワ

姫「……皆さん、そろそろ着きますのでどうか静粛に」

魔王「あ……う、うむ」ドキドキ

側近「……承知した」

少女(緊張するな……)

勇者「……」


王側「陛下、姫様をお連れ致しました。勇者殿御一行と……ご友人達も一緒のようですが如何致しましょう」

『……良い、入れ』

王側「は」ギィィ……



謁見の間

王「……」

姫「……」

王「……御苦労であった。お前と影姫は下がるが良い」

王側「……は」ペコ……ススッ

影姫「はい」ペコリ ススッ


王「姫よ……良くぞ無事に帰って来てくれた」

姫「……ご心配をお掛けして申し訳ありません。お父様」

魔・側「……」ドキドキ

少女「……」ドクッ……ドクッ……

王「……勇者よ、良くぞ魔王を倒し、姫を救い出してくれた。都の代表として礼を言わせてもらおう」

勇者「……勿体無きお言葉です」スッ

王「勿論、姫の友人達にもだ……何時知り合ったのかは知らぬが、本当に感謝している」

魔・側「……は」ペコッ

少女「!」ペコリ


姫「……それを含めて、私達に事の顛末を説明させて頂きたく存じます」

王「うむ、良かろう。では話しておくれ……ここに魔王とその仲間がいるという理由も含めてな」

『!?』

戦士(ば、ばれてやがる……!?)

僧侶(! まさか……)

魔王「な、何故、我らの正体を……?」

王「さる者からの知らせでな……案ずるな、ここまで来られた貴殿らを責めるつもりは一切ない」


魔法使い「! ……彼らに、罪はないと……?」ピクッ

王「うむ。でなければとてもここまでは来られまい」

少女(あ……まただ)

側近(神父殿達といい、この王といい……)

魔王(何故我らの正体を知った上で、敵意を向けずにいてくれるのか……)

王「……どうした、顛末を説明してくれるのだろう? 早速始めて貰おうか」

姫「ッ! は、はい、ではまず……私が彼らに初めて出会った日の事からお話致します」


今回は以上です。
後数回の更新で終わる予定です……多分←

おやすみなさい。


お久しぶりです。
また大幅に更新が遅れていてごめんなさい!

次の夜に投下しますので、後もう少しだけお待ちください。


こんばんは。

少しずつ更新していきます。


――――
――

姫「――そうして今に至ります」

王「ふむ、成程……長きに渡る報告御苦労であった。そして……」スッ……ザッザッ

魔王「ッ……!」ビクッ

王「良くぞ無事に戻って来てくれた……我が娘よ」ギュウッ

姫「!? お、お父様……!」カアアッ……アワアワ

勇者「……」

戦士「お、おおう……王サマもやっぱり人の親って事か」

魔法使い「馬鹿、当たり前でしょ」

僧侶「子供を心配しない親はいませんよ~……多分」ボソッ


魔王(余程……姫の事を心配しておったのだろうな)

少女「わ、わあ……ねえ側近さん、お父さんってあんな感じなのかな?」

側近「ああ、きっとそうだ」

王「……そなた達に見苦しい所を見せてしまったな」スッ

僧侶「め、滅相もございません!」

魔法使い「……お気に、なさらず」

魔王「王殿。この度は貴殿の御息女を利用してしまって……本当に申し訳ない」ガバッ

側近「どれ程詫びようとも、許される事ではなかろうが……」ガバッ

少女「! ご、ごめんなさい……!」ガバッ


王「頭を上げて頂きたい。先程も申した筈だ……貴殿らを責める気はない」

魔王「だが……!」

王「魔王殿。貴殿はその腕を失ってまで姫を守られたではないか」

姫「……」ギュッ

王「それに私も常に此処に居られる訳ではない。魔王城から最も近い聖都に君臨する身として……他所との交流による情報交換が欠かせないのだ」

勇者「……」

王「それこそ……身内の死を悲しむ間もない程にな。お前には何時も気苦労をかけさせてしまっているな……」

姫「い、いいえ、そのような事は……!」ブンブン

王「分かってくれていると一方的に思ってはいたが、やはり傲慢な考えのようだったな……」


僧侶「僭越ながら陛下、陛下の御力なくして、私達の平和も生活も有り得ません……それは姫様も良く理解しておられるかと」

王「そうか……そうだと良いがな」スッ

戦士(上……?)

王「私は常に見られておる……道を踏み外さぬように、天より見張られておるのだ」

姫「見張られている、とは……」

王「魔物達から民を完全に守る事ができる唯一の結界……それを施すに足る人格者が、此処の王であるか」

魔王(……名君であるかどうか、か)

王「代々、聖都の王の中に稀に道を踏み外す者が出た時……人の手のみならず天からをも重い罰を受けてきたという」コツ……コツ……

王「当然の事だ。聖都と呼ばれる場所の君主が悪しき者であって良い筈がない」

側近(……確かにな)


王「結界は悪しき魔物から民を守れはしても……悪しき人間からは守れない。その時民を守るのは我が兵士達だ」

王「そしてそれを動かせるのは王だ……この責務は誰よりも重い」

姫「お父様……」

王「……いや、違うな。私と同じかそれ以上に重い役目を背負っておる者がいる」ピタッ

僧侶「それって……」

王「……のう? 神父よ」クルリ

神父「いやはや……陛下にそのように仰られると恐縮してしまいますな」


姫「まあ、何時の間に……!」 

王「少し前に、王側に此処へ呼ぶよう命じておいたのだ……この方が、説明しやすかろうて」

魔王「説明、とは……?」

王「そなた達は疑問に思ってはいないか? 今の都が予想より……それ程様子が変わらぬという事を」

『……ッ!』

王「仮にも魔王という存在が倒されたというのにだ……これはな、我らが民を鎮めたからだ」

側近「何故、わざわざそのような事を……」

王「今の民は少々勘違いをしておるようであったからな……結界の事をな」


僧侶「どういう事ですか?」

神父「僧侶や、お前には言っておらんかったかのう? ……結界の加護はの、非常時のみならず我らの管理下で今も続いておるのじゃよ」

僧侶「……へっ?」ポカン

戦士「それって……つまりどういう事なんだ?」

勇者「……何時いかなる時であろうと、『真に邪悪な魔物や魔族』は聖都の中へは入れない」

魔法使い「!」

神父「うむ……運良く陛下が城へ戻られている時で良かったわい」

王「都中の民を1ヶ所に集めて今1度結界の事について私直々に説明し……あれは無害な魔物の悪戯とした」


神父「流石に全員を集める事は叶わなかったがのう……特に血気盛んな者達はすぐに都を出おった後じゃったわい」

王「先程まで、戻って来た彼らの事も説得しておってな……魔王城まで行った者達まで説得するのは流石に骨が折れた」

僧侶「……私達も、知らせを受けてすぐに行きましたもんね」

戦士「そういやそうだったな」

魔王「そ、それで……人々の不安や混乱が治まったというのか?」

王「勿論皆すぐには納得しなかったが、神父やシスターの協力で根気強く説得をした」

僧侶「あ、あの神父様、では先程仰っていた私達の事が有名になっているというのは……?」

神父「嗚呼、あれはのう……本当にお前達が関わっておるのか確認するために、ちとカマをかけてみたのじゃよ」

戦士「マジかよ……」


姫「私の事は……どう説明を?」

王「そこは影姫と王側が上手くやってくれた。臣下や兵達には民に御忍びで都の外へ出ておると伝えたよ」

側近「で、では俺と少女が都でやった事は……」

神父「悪戯に民の不安を煽っただけという事じゃのう……ほっほっほ」

僧侶「少女さん、それ後で詳しく教えて頂けませんか?」ワクワク

魔法使い「あんたはもっと自重しなさい」ギロッ

少女「その、つまり……魔王様と側近さんが悪者じゃないって知ってたから、神父様達は私達の事を受け入れてくれたんだね」

神父「そういう事じゃ」


王「しかし……以前の魔王出現の時は凄まじかった」

魔・側「!」ピクッ

王「無数の魔物や魔族が結界に特攻しては消し炭と化し、この世から消えていったという……私は城に匿われておった故、直接見てはおらぬがな」

少女「……」ギュッ

妖精「」ナデナデ

王「当時の私はまだ幼かった……ほんの5つか6つの頃の出来事であったからな」

姫「それ程前にあった事だったのですね……」

王「ああ……だが、それでもあの時の城内の、この上なく張り詰めていた空気は覚えておる。そして……」ジッ

勇者「?」

王「……先代の勇者殿の事もな」

勇者「……!」


王「思えばあれが、私の初恋でもあったか……ちと気恥ずかしいがな」

神父「私は今以上に未熟者の若造でしたな……」

僧侶「神父様にもそのような時代があったのですね」

神父「当たり前じゃろう。私を何だと思っておる」

僧侶「ご、ごめんなさい! ただちょっと想像できなくて……」

王「……まあ、そうであろうな。今とは色々なものが違っていた」

神父「一行の中で1番の年長者であった先代勇者殿。若く荒々しい印象のあった剣士殿。彼と同じ位若いが対照的に落ち着いていた魔導士殿。そして……最年少であった僧侶殿」

神父「それが当時の魔王を倒した者達だった」

『……』


王「勿論、年長者であった先代勇者殿もとても御若かった……確か勇者の親を産んで1年も経たずに旅に出られたのだったか?」

神父「ええ……陛下の仰る通りでございます」

勇者「……」

神父「愛する家族ともっと共にいたかっただろうに……彼女は世界のために旅に出た」

神父「それが彼女にとってどれ程重い決断であったのか、想像に難くはなかろう」

魔王「……」

王「勇者よ……私達から見たそなたの祖母殿は……誰よりも強く、慈悲深く……」



『まさに聖母と呼ぶに相応しい女性(ひと)だった』



今回は以上です。
ちょっと纏めるのが苦しかった……。

おやすみなさい。


こんばんは。
例によって更新が遅れていて申し訳ありません!

少しですが、続きを投下します。


――――
――

城の外

戦士「はああ……緊張したぜ」ゲッソリ

僧侶「そ、そうですね……」ガクガク

魔法使い「まさか最後の最後でそいつがあんな事をするなんてね」ジロッ

少女「うう……」ショボン

妖精「」ショボン

魔王「あそこで少女の手を離れて王の髭を引っ張りに行くとは……」ズーン


側近「恐らく今まで我慢してきた分が来てしまったんだろう……やはり悪戯好きの性には抗えなかったか」

姫「だ、大丈夫ですわ! 父も許して下さいましたし……」

勇者「……そういう問題ではないと思いますが」

魔王「ところで勇者達は……これからどうするのだ?」

勇者「! これから……」

魔法使い「そういえば決めてなかったわね。旅の目的は一応……終わったし」

僧侶「では今度は私の布教活動の御手伝いを……!」キラキラ

魔法使い「却下」

戦士「だな」


僧侶「何故ですか!? これはとても崇高な……!」

魔法使い「自分の趣味が混じってる布教の何処が崇高なのよ!」

戦士「そうだそうだー!」

僧侶「じゃあどうするんですか! 私は一刻も早くここからまた離れたいんですよ!!」

魔法使い「こいつッ……! 今すぐふん縛って教会へ連行してあげましょうか……」チャキッ

戦士「手伝うぜ魔法使い……」ザザッ

側近「……どうやらまだ決め兼ねているようだな」

姫「あの、まだそんなに結論を急ぐ必要はないのでは……?」

僧侶「いいえ姫様、私は行かねばなりませんっ!! この素晴らしき教えを世に伝える為に……」グッ

魔法使い「戦士、準備はいい?」ジリッ……

戦士「ああ……」


勇者「……とりあえずは」

魔・戦・僧「!」ピタッ

勇者「また今まで通り世界を回るか……どうせ帰る場所もないしな」

少女「!」

勇者「お前達はどうする」

戦士「……決まってるだろ」ニッ

僧侶「勇者さんがそう決めたなら」

魔法使い「それに従うだけよ……『今まで通り』ね」

勇者「……そうか」

魔王(何だかんだ言って、結局は彼を中心に動くのだな)


魔法使い「まあ、どの道あたしがあんたといられる時間はあと僅かだしね……」

少女「え……それってまさか」

僧侶「あ、ああ違いますよ少女さん! 魔法使いさんの寿命がどうこうという意味ではなく……」

魔王「……書物で読んだ事がある。確か魔物の一部を体内に取り入れた者は徐々にそれが体に馴染んでいき……やがては」

魔法使い「黙りなさい。あんた達には関係ない事よ」フイッ

少女「魔法使いさん……」

魔法使い「言っておくけれど、あたしはこれからも全ての魔物を憎み続ける」ギロリ

魔法使い「よく覚えておきなさい……今度あんた達に会った時は、こんな風に話せるとは思わない事ね」ザッザッ

僧侶「あ、魔法使いさん! ……ごめんなさい、最後までずっとこんな調子で」

少女「う、ううん気にしないで!」

戦士「こんなんだが、まあ良いきっかけだな。名残惜しいけどな~」ポリポリ


側近「……お前達には迷惑をかけたな」

魔王「本当にそうだな。私達の立場から言うのは何だが……気をつけてな」

僧侶「あの……また今度、私1人だけでも魔王城に御邪魔させて頂いてもよろしいですか?」

少女「あ……うん! いいよ」

側近「少女、勝手に決めるんじゃ……」

魔王「弟? 何か不都合な事でも有るのか?」

僧侶「うふふふふ……」ニコニコ

側近「……」ゾワワッ

戦士「僧侶、お前なー……」

勇者「……お前達も、元気でな」スッ

魔王「! ……ああ」ギュッ


短いですが、今回は以上です。
中々どうして、最後の最後がまとまってくれない……!

おやすみなさい。


こんばんは。

今月もギリギリの滑り込みですが、更新します。


僧侶「……ああ! そうでした! 少女さん、最後に御近づきの印のこれを……きっとお役に立つ事があるはずです」ゴソゴソ

少女「これは……?」

僧侶「私に認められた方だけが持つ事を許される証明書のようなものですよ」

少女「??」

僧侶「何と説明すれば良いか……とりあえず、何処かの森でオークと女騎士の夫婦が住んでいる小さな建物を見つけたら、彼らにこれと私の名前を出して下さい」

少女「わ、分かった。ありがとう」

僧侶「きっと力になってくれますよ……今は彼らだけですが、いずれは……ふふふ」

少女「?」

妖精「……」

側近(何処までも得体の知れん奴だな……)


魔王「少女、何を貰ったのだ? ……ほう、紋章か。中々凝っているな」マジマジ

少女「ねー」

勇者「……」ジッ

少女「勇者様?」

勇者「……様は、いらない」

少女「!」

勇者「少女、君も……元気で」

少女「……うん。勇者さんも」ニコッ

勇者「ああ」


側近(勇者……まさか)ギリッ

僧侶「……年の差な~んて~糞喰らえですよ~……」ボソッ

側近「!!!!」ビクッ

僧侶「うふふふではではこの辺でー! 姫様どうか御達者で!!」ペコッ タタタッ

勇者「……」ペコリ ザッザッザッ……

戦士「おわッ! ま、待てよお前らー!」ダダダッ

魔王「……行ってしまったな」

側近「ああ」

少女「ちょっと寂しいね」

姫「ええ……」


妖精「」ツンツン ビシッ

少女「! ……そうだね。妖精さんがいるから寂しくないね」ナデナデ

妖精「♪」エッヘン

姫「ふふ、そうでしたね」クスッ

魔王「では私達もそろそろ帰るとするか」

側近「そうだな……っと、その前に教会だ」

魔王「おお、そうであったな! 戻るのはそれからだ」

少女「帰ったらゆっくり休んで、これからの事を考えなきゃね!」

魔王「ああ」


側近「……兄上」

魔王「うん? どうした弟よ」

側近「少し耳を貸してくれ」スッ

魔王「? 構わぬが、少女達には言えない事か?」

側近「いや……少女には城に戻ってから話す」

魔王「そうか……?」

少・姫「?」

妖精「……」ジトーッ

側近「……」ボソボソ

魔王「……!」フムフム……


側近「どうだろうか」

魔王「名案だな……! 詳しい事は後でじっくり決めるとしよう」

側近「気に入って貰えて何よりだ」

魔王「出発は何時にする?」

側近「少女の髪が戻ってから」

魔王「む……それなりに先だな。だがかえって好都合なのかもな」

側近「だろう? 準備も必要だしな」

魔王「うむ」

少女「……何だか楽しそうだね」

姫「そうですわね」


少女「あ、はーい! じゃあお姫様、またねー」タタッ

姫「ええ、また遊びに行きますわ。少女さん達も、是非何時でもいらしてくださいね」ニコッ

少女「うん!」

魔王「またこちらから手紙を送ろう」

姫「お待ちしております」

側近「では、失礼する」ペコッ

妖精「」フリフリ

姫「お気をつけて……」ペコリ


今回は以上です。
上手くまとまれば次回で終わるかと。

おやすみなさい。


こんばんは。
本日更新予定でしたが、最後だからか予想以上に進行が遅くなってしまっている状態です……。
大変申し訳ないのですが、もうしばらくお待ちください!

少なくともお盆までには投下できるようにしたいです……!


こんばんは。
お盆は亡くなった魂が帰ってきますが、その中には帰ってきたらヤバい魂もありそうですね。
例えば魔王の先祖やら家族やら←
勇者達の方にも、きっと……。
心優しい方々が用意して下さった物に加え、こちらは献花を。

加えてこれとは別に、妖精に読んで頂いた皆さんの所へ感謝をこめて届けさせます。

長々と失礼しました、投下致します。


――――
――

数日後 魔王城のとある一室

少女「魔王様ー! 側近さーん! 入るよー」ガチャッ

魔王「うおおおおおお!!!!」ジャランジャランジャラン……

側近「はああああああ……!!!!」ブンッブンッ

少女「2人共、そろそろ休憩にしたら? もうお昼だよー」

魔王「む? もうそんな時間か……」シュッ

側近「鍛錬に夢中で気付かなかったな……」シュンッ

少女「はい、すぐに食べられるようにサンドウィッチを作ったんだけど……」

魔王「おお、ありがとう少女! 助かるぞ」モグモグ

側近「ありがとう、少女」スッ

少女「えへへ、どういたしまして」


側近「……少女、良ければこの後俺の部屋に来てくれないか」

少女「え? 良いけど……」

魔王「ごほん! ……弟よ、ちょっと良いか?」クイッ

少女「?」

側近「……何だ兄上」

魔王「お前まさか少女を口説くつもりか?」ヒソッ

側近「だったらどうした」

魔王「許さんぞ」

側近「」

魔王「私の目が黒いうちは少女に手を出す事は断ッじて許さん」ビシッ


側近「……だがあの時兄上は確かに少女を頼むと」

魔王「え? あんだってェ?」

側近「なっ……」

魔王「ふ……あの時は自分が死ぬと思ってああ言ったのだ。だが生きているからには話は別だぶぁぁぁかめ!!!!」ニタァッ

側近「……」ワナワナ

魔王「残念だったな」

少女「2人とも、食べないのー?」

魔王「おお、すまぬ少女。すぐに頂こう……では弟、そういう事だから!」ポンッ

側近「……」ギリィィ……ッ


魔王(……まあ、こうは言っても本気でそう思っている訳ではないのだがな)

魔王(私はこれから先誰かと結ばれる気はないが……お前にまで強制はしないさ)

魔王(しかし少女は、長い間我らと共に暮らしてきた大切な家族だ)

魔王(そんなお前達が夫婦となるのを見るには……情けない話だが少々心の準備がいる)

魔王(せめてこれ位は……許してくれるだろう?)ニッ


側近「兄上め……」ギュッ

少女「側近さん?」ヒョイッ

側近「ッ!?」

少女「どうしたの? まさか、何処か具合悪いの?」オロオロ

側近「あ、いや……そうではない」

少女「なら良かった」ニコッ

側近「……俺も頂こう。せっかく少女が作ってくれたのだからな」スッ

少女「! ……うんっ」

側近(貴方の思っている事などお見通しだ……馬鹿兄貴め)パクッ

側近「……ッッッ!?」ブハッ


少女「そ、側近さん!?」

魔王「どうした弟!!」

側近「ま、マスター、ドが……中に大量に……!」ゲホゲホ

少女「え? ……まさか……」クルッ

妖精「~~~ッッッ!!!!」ケーラケラケラ

魔王「やはりお前か……」

少女「妖精さん……!」

側近「小妖精よ……今日という今日は……」ヒリヒリ……チャキッ

妖精「!」パタパタパタッ

側近「逃がッ……さん……ッ!!!!」バッ

魔王「こらこら、あまり暴れるでない!」

少女「もう、2人共! いい加減にしなさーい!!」


――――
――

『姫へ

手紙を出すのが遅くなってしまってすまない。

あれから私達はこれからどうするかを話し合った。

奇しくも生き延びたこのちっぽけな命で、一体何ができるのか。何をするべきなのか。

そしてその結果――しばらく家族皆で旅に出る事になった。

我が先祖が残したであろう禍根や爪痕は、恐らく世界各地にある。

全てを探し出す事は困難だろうが、できるだけ多くの場所を巡り、我らなりに償いをするつもりだ。

我らが何処までできるかはわからぬが、何もしないよりはマシだと信じたい。

そなたにも、時折こうして手紙で旅先の事を伝える。ささやかな土産もあれば付けよう。

勿論嫌でなければの話だがな。

では、そろそろこの辺で。

元・魔王より』


姫「い……い……」プルプル

姫「嫌な訳ありませんわ! 嗚呼っ……出来る事なら私も共に……!」

給仕「あの、姫様……そろそろ午後の御勉強の御時間でございます」

姫「でも、それは所詮叶わぬ願い……口惜しい事ですわ」

給仕「姫様……」

姫「分かっているわ! すぐに行きます」

姫(そう、分かっている……魔王様達が、ただ遊びに行く訳ではない事は)

姫(例え体が自由になれても、お2人の心は未だ……『魔王』に囚われている)

姫(ならば私は……私に出来る事を……)グッ

給仕「……」


――――
――

数ヵ月後

魔王「ぬううう……!」ジーッ

少女「魔王様、大丈夫? 少し休んだら?」

魔王「あ、ああ……平気だ。以前に比べれば大分邪眼の制御が出来てきた」ハァハァ

側近「それは良かった」

魔王「片腕でもやれる事がかなり増えた……うむ、やれば出来るものだな」ワキワキ

少女「私の髪も伸びてきたしねー」サラッ


側近「いや、以前に比べればまだまだだ。後○○センチ○○ミリ足りん」ジッ

魔王「はっはっは、そうかそうか……気持ち悪いなお前」

側近「気持ち悪くて結構」

少女「そっか……じゃあ出発はまだまだ先だね」

魔王(何故普通に対応出来るのだ少女よ……! 少し位嫌がっても良いのだぞ!?)

側近(少女……本当にお前は愛おしいよ。この想いを抑えるのが苦痛になる程な)

少女「?」

妖精「……」ジトーッ


――――
――

更に数ヵ月後――出発当日

魔王城前

少女「あの……本当に頼んで良いの? お留守番」

白獣「ええ! 主からの許可も頂きましたし」ニコニコ

側近「まさかあの神獣が快く再び召喚されるとは……」

魔王「う、うむ……これも少女の人徳のなせる技か」

黒獣「ふん、私はまだ引き受けると決めた訳では……」

白獣「黒様、何だか憧れていた新婚生活みたいですね~」ニコニコ

黒獣「今すぐ寝室へ行くぞ白娘えええええ!!!!」バターン

魔王「え、ちょ……!」


少女「あ、あはは……あんまり暴れないでくれたら嬉しいな」

白獣「御安心を。少女さん達が不在の間は、しっかりと管理させて頂きます」グッ

少女「ありがとう、白獣さん」

白獣「私達には寝食は必要ありませんし、1日1回あちらへ戻る以外はほぼ此処で過ごせますからね」

少女「本とか、お風呂とかは何時でも好きに使って良いからね。部屋も私達の所以外は……」

白獣「ふふ、お気遣いありがとうございます」

魔王「神の代行者でもある神獣達にこのような事を頼むのは本当に心苦しいが……」

白獣「構いませんよ~。寧ろ、再びこの世界で人間のように暮らせる機会が得られて嬉しく思います」ニコニコ

側近「そう言って頂けると有難い」

妖精「……」パタパタ


白獣「皆さん、どうかお気をつけて。例え転移魔法ですぐに戻れるとしても、何があるか分かりませんからね」

魔・側「ああ」

少女「うん!」

妖精「!」コクン

白獣「あ、それから少女さん。私が以前別れる前に貴女に言った言葉を覚えていますか?」

少女「あ……うん」

『これから先は、なるべく人間の友人を多くお作りなさい。勿論、人でない者達を否定する訳ではありませんが』

『自分と似たような姿形の友と接するのもまた、貴女のこれからの生を実り豊かにしますからね』

白獣「どうかあの言葉を……どんな時でも胸に留めておいて下さい」ギュッ

少女「……分かった」


側近「……」

側近(まさか、俺と兄上の夢見ていた事がこうして叶う日が来るとはな……)

――――
――

『僕は……恋がしたい。こんな、化物な僕を、ありのままの僕を受け入れてくれて、お互いを尊重できるような女の子と』

『出来れば、何時か夢の中で逢った……あの子のような人と』

『恋をして……その、愛し合って……結ばれたい、な』

『……そうか。良いじゃないか』

『あ、ありがとう……!』

『んじゃあ、もしも俺達が自由になれたら、2人で世界を回りながらお前の嫁探しをしよう!』

『ええっ!?』

『何だ? 混ぜたのが気に入らなかったか?』

『ううん、そんなんじゃないけど……何だか言葉にすると凄いなあって』

『確かにそうだな……よし! じゃあそれまで互いに生き延びるぞ!! どんなに無様で、情けない事になってもな』スッ

『……うん!』スッ……コツンッ


――――
――

側近(……まあ、既に相手は定めているが)チラッ

少女「~~~っ!」ワイワイ

白獣「……」ニコニコ

妖精「♪」パタパタ

側近(この旅の中で……果たして何処まで進展出来るか……)ペロリ

魔王(――などと考えておるのだろうな弟の奴は)チッ

魔王(まあ、流石にその頃には私も落ち着いて受け入れられるだろう……だがな)

魔王(婚前交渉だけは……それだけは本ッ当に許さんからな……!)ギラッ


妖精「……」クイクイ

少女「! じゃあ、そろそろ行こうか」

魔王「そうだな」

側近「では、改めてこの城の事をお頼みする」

白獣「はい。黒様と共にお土産話を楽しみにしていますね」

少女「任せて! 2人だけじゃなくて、お姫様にも沢山伝えなきゃいけないんだから! ね、魔王様?」

魔王「む? ……うむ、そうだな」

白獣「ふふ、そうですか……では行ってらっしゃい。願わくば、皆さんの旅路に主と我らの御加護があらん事を」

魔・側・少「ありがとう」

妖精「」ペコッ


『じゃあ……改めて』クルリ

少女「……」ニコッ

魔王「……」ニッ

側近「……」……フッ

妖精「♪」パタタッ



『行ってきます』



「最弱魔王様」少女篇
「最弱魔王の決戦」

――終わり


以上です。
軽い気持ちで始めた拙作に、3年間お付き合い頂きありがとうございました。
彼らの物語は一旦ここで終わります。
しかしまだまだ書きたいネタはあるし、伏線も放置している物が多々あるので、また何時か続きを書きたいです。
それまでに短編や、勇者サイドの話は書くかもしれません。
もし良ければ、その時に再びお付き合い頂ければ幸いです。

最後になりますが、此処まで読んで頂き本当にありがとうございました!

素敵な物語をありがとうございました!
ご自身の作品をまとめてあるサイトがあれば教えて下さい


今更出てきてすみません!
沢山の温かいお言葉、本当にありがとうございます。
最後に今後の参考までに、もしも関連スレを立てるならどれが読みたいかをお聞きしたいと思いまして。
よろしければ、御意見をお聞かせ下さい。

・本スレの続編
・勇者サイドの話
・短編集、もしくは外伝(神獣達の過去話、幼女と出会う前の魔王達など)
・その他

これで本当に最後になります。失礼しました!

>>831恥ずかしながら、>>1が完結させた作品はまだこれだけです。
自分のサイトは今はありませんが、今後作るかもしれません。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月05日 (水) 09:59:45   ID: YG6nhoIL

昨日初めてこのスレみっけて一気に前スレから読んじゃいました笑笑
続きめっちゃ楽しみです♪

2 :  ガトソンブラ   2015年03月13日 (金) 14:21:17   ID: CiA2x_bw

早く続きが読みたいです...
すごく面白いのでそう考えてしまいます。

3 :  SS好きの774さん   2015年04月02日 (木) 10:57:53   ID: KisGCzfK

これすこ
割とマジで

4 :  SS好きの774さん   2015年06月04日 (木) 20:48:20   ID: BRzY3Utg

神作だな

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom