アルミン「クイズ?」
ミカサ「はい。子供はどうやったらできるでしょう」
アルミン「ふっ」
ミカサ「?」
アルミン「それはね」
ミカサ「それは?」
アルミン「鳥が赤ちゃんを運んできて、お母さんの口から入れるんだよ」
ミカサ「おおー、正解」
アルミン「ふふ」(ドヤァ
ミカサ「答え知ってたの?」
アルミン「うん」
ミカサ「エレンに教えてもらった?」
アルミン「違うよ。エレンには僕が教えてあげたんだよ」(ドヤァ
ミカサ「さすが」
アルミン「ふふふ」
ミカサ「ふふふ」
ミカサ「ではアルミン、質問です」
アルミン「質問?」
ミカサ「うん。人は死ぬと、どこに行きますか」
アルミン「……ミカサ、それは」
ミカサ「ん?」
アルミン「ミカサ、答え知ってるの?」
ミカサ「ううん。知らない。これは質問」
アルミン「ごめん。僕も知らない」
ミカサ「……そっかぁ」
アルミン「ごめんね」
ミカサ「ううん、謝らなくていい」
アルミン「調べてみるよ」
ミカサ「ほんと?」
アルミン「うん」
ミカサ「ありがとう」
アルミン「でもミカサ、なんで急にそんなこt…
エレン「あ!ミカサ」
ミカサ「アルミン、この話エレンには…」ボソ
エレン「は、アルミンも居んのかよ」
アルミン「あ、エレン」
エレン「二人して同じ所に隠れるとか、お前らやる気あんのか」
ミカサ「エレン、本当に100秒数えたの?」
エレン「数えたぞ。アルミンのじいちゃんが見てたから聞いてみろよ」
ミカサ「そう……」
アルミン「それで、次はどっちが鬼?」
エレン「ミカサ。ミカサの頭が先に見えたから」
ミカサ「わかった。アルミンのおじいちゃんのところで100秒数えてくる」トタタ…
イーチ、ニーイ、サーン……
ーーーーー
ーーー
ー
アルミン「ミカサ?」
ミカサ「あ、アルミン」ゴソ…
アルミン「あ、いいよ、そのままで。起きちゃだめだよ」
ミカサ「……わかった」モゾモゾ
アルミン「のど、痛い?」
ミカサ「ううん。もう痛くない。エレンは?」
アルミン「薪拾いに行くって」
ミカサ「そう」
アルミン「ねえミカサ、この前の話なんだけど、あれってエレンには」
ミカサ「かくれんぼしてたときの話?」
アルミン「うん。あの話、エレンは」
ミカサ「言わないで。お願い。内緒」
アルミン「他の人にも?」
ミカサ「うん」
アルミン「二人だけの秘密?」
ミカサ「うん」
アルミン「わかった。約束だね」
ミカサ「ありがとう」
アルミン「おやすいご用だよ」
ミカサ「……ところで、何かわかった?」
アルミン「ミカサ、今、おしゃべりしても大丈夫?」
ミカサ「うん。大丈夫」
アルミン「最初に言っておくけど、あまり詳しいことはよくわからなかったよ。死んだら行く場所について色んな説があって」
ミカサ「どんな説?」
アルミン「空に行くとか、湖に行くとか。赤ちゃんになるとか色々。僕たちが見たことない場所に行くのもあった」
ミカサ「それで?」
アルミン「じいちゃんに、どれが正しいのって聞いたら、まだ死んだことないからわからないって言われた」
ミカサ「そっか……」
アルミン「ごめんね。わからなくて」
ミカサ「ううん。調べてくれてありがとう」
アルミン「僕、そろそろ帰るね」
ミカサ「来てくれてありがとう」
アルミン「おばさんに、お見舞いのたまご渡してあるから。ミカサのスープに入れてくださいって。今日のスープ飲んでね」
ミカサ「うん。必ず」
ーーーーー
ーーー
ー
ミカサ「……ごめんなさい」ショボン
エレン「は?なんで謝んだよ」
ミカサ「私の風邪、うつして」
エレン「これはお前のじゃねえよ。肉屋のオヤジっゴホッ、オヤジが、
カルラママ「はいはい。おしゃべりはそのくらいにしてエレン、あんたは薬飲んで寝てなさい」
ミカサ「おばさん、私、何かお手伝いは…」
エレン「お前、手伝いなんかしなくて良いからアルミンの家行けよ。今日はもう元気だろ」
ミカサ「おばさん、お手伝い…」
エレン「おい、オレの話聞けよ!アルミン心配してたぞ!お前一週間も寝込むから!絶対アルミンの家に行k
カルラママ「うーん。じゃあ、お使いをお願いしようかしら」
ミカサ「うん」
エレン「母さん!ミカサはアルミンの家にっ
カルラママ「わかったわかった。あんたはもうお休み。ミカサ、アルミンの所に服を返しに行ってもらえる?」
エレン「……」
ミカサ「……うん」
カルラママ「じゃあちょっとあっちの部屋に。荷物をまとめるから。エレン、あんたは静かに寝てな」
エレン「わかったよ」
ーinあっちの部屋ー
カルラママ「じゃあ、この服一式アルミンに返してきてくれるかい?」
ミカサ「うん、わかった。他には?」
カルラママ「他は特に無いよ。アルミンと遊んでおいで」
ミカサ「でも…」
カルラママ「エレンのことなら気にしなくていいよ。本人が肉屋のオヤジからもらってきたって言ってんだからそうなんだろ」
ミカサ「……」
カルラママ「アルミンが心配してたよ。ミカサのこと。心配させた分、いっぱいおしゃべりしておいで」
ミカサ「わかった。……ねえ、おばさん」
カルラママ「ん?」
ミカサ「どうしてアルミンの服がここにあるの?」
カルラママ「ミカサが寝込んでた間ににわか雨が降った日があったの覚えてる?」
ミカサ「覚えてない」
カルラママ「そうだろうね。ミカサ、熱が高かったもんね。まあ、そのとき、びしょぬれになったエレンがアルミンの家で着替えて帰ってきたんだよ」
ミカサ「ふうん」
カルラママ「そういうことだから、返すときにお礼もお願いね。じゃあミカサ、いってらっしゃい」
ミカサ「いってきます」
ミカサ(アルミンの服、私も着てみたい)テクテク
ミカサ(服の取り替えっこ。……楽しそう)テクテク
ミカサ(アルミンも、私の服着てみたくないかな)テクテク
ミカサ(青いお花がついたスカート、似合う。きっと)テクテク
ミカサ(着いた)
ミカサ「ごめんください」
アルミン「ミカサ!」ガチャ
ミカサ「アルミン、服」
アルミン「あ、うん。エレンは?」
ミカサ「風邪ひいて寝てる」
アルミン「えっ、そうなんだ」
ミカサ「うん……」
アルミン「ミカサ、とりあえずあがりなよ」
ミカサ「おじゃまします」
アルミン「こっち、ここでちょっと待ってて」
ミカサ「うん。ねえ、アルミン、エレンの風邪って、わたs…
アルミン「ミカサ、これ見てよ!」
ミカサ「あ、うん。え?なに?ガラス?」
アルミン「牛の目の中身だよ!」
ミカサ「?」
アルミン「ここ、この紙に名前書いてみて」
ミカサ「あの……うん。これでいい?」
アルミン「ほら、見て見て。ミカサが書いた字、大きくなってるよ」
ミカサ「!」
アルミン「牛の目の、黒目の近くにあるんだよ。水晶体っていうんだって。昨日エレンと取り出したときはもっとつるつるしてたんだけど」
ミカサ「……」
アルミン「ちょっと乾いちゃったのかな。お椀に入れてお皿で蓋しといたんだけど。ミカサが朝のうちに来てくれてよかったよ。つるつるしてるうちに来てくれて。」
ミカサ「来て良かった……目、これからどうするの?」
アルミン「一緒に埋めよう。外に」
ミカサ「わかった」
アルミン「シャベル持ってくる」ダッ
ミカサ(アルミンが戻って来るまで、石で地面掘ってよう)グリグリ…グリグリ
アルミン「あっミカサ!もう穴掘ってる!」
ミカサ「あ、アルミン。続きお願い」グリ…
アルミン「まかせて」ザクッザク
ミカサ「すごいね。目」
アルミン「ね!。昨日、肉屋に頭付きの牛が来たって聞いたから頼んでもらってきたんだ。僕たちの目の中にも入ってるんだって。これ」ザクッ
ミカサ「へえ……きれい」
アルミン「今度はミカサも一緒にやろうね」
ミカサ「うん」
アルミン「深さ、これくらいでいいかな」
ミカサ「十分だと思う。入れていい?目」
アルミン「いいよ」
ミカサ「えい」ポテ
アルミン「埋めるね」ドサア…
ミカサ「……ねえ、アルミン」ドササア…
アルミン「なに?」ドサ…
ミカサ「エレンの風邪って私の風邪だと思う?」
アルミン「え、どうなんだろ。肉屋のおじさんもちょっと風邪ひいてたしなぁ」
ミカサ「そうなの?」
アルミン「うん。街の中いっぱい人いるから、ミカサの風邪とは限らないんじゃないかな」
ミカサ「限らないかもしれない?」
アルミン「ミカサ、エレンが風邪ひいたから気にしてるんでしょ」
ミカサ「うん」ショボ…
アルミン「でも考えてもエレンがどこから風邪をもらってきたのか、わからないし……ミカサじゃないかもしれないんだから元気出しなよ」
ミカサ「……」
アルミン「ねえミカサ、この前の話だけどさ」
ミカサ「かくれんぼのときの話?」
アルミン「うん。結局よくわからなかった話。僕、あの後、考えてみたんだけど」
ミカサ「…!」
アルミン「あそこ、スミレが咲いてるのわかる?」
ミカサ「うん」
アルミン「スミレの種がポンってっはじけるの見たことある?」
ミカサ「ある」
アルミン「種ってスミレの一部だよね。でもはじけた先でまた新しいスミレになるよね」
ミカサ「そうだね」
アルミン「その後色々あって、一番初めにはじけたスミレがもし枯れちゃったとして、でも他のスミレはまだ元気な場合って」
ミカサ「?」
アルミン「一番初めのスミレは完全に枯れたと言い切れると思う?」
ミカサ「???」
アルミン「だってもとは一番初めのスミレの一部なんだよ?僕、考えたんだけど、死んだ生き物はたしかにどこかに行くと思うよ。もう会えないし。でも、全部どこかに行くのは無理なんじゃないかなあ」
ミカサ「そうなの?」
アルミン「そうかもなって思っただけ。そうじゃないかも」
ミカサ「そう……」
アルミン「結局よくわからないけど」
ミカサ「じゃあ、私はお父さんとお母さんの一部なの?」ボソ…
アルミン「目とか、眉とか、似てるとこ無い?」
ミカサ「目と髪の色はお母さんと同じ」
アルミン「ミカサは目と髪をお母さんからもらったんだね」
ミカサ「そっかぁ……あ」
アルミン「ん?」
ミカサ「おばさんが、服、ありがとうって。お礼伝えてって言ってた。アルミン、ありがとう」
アルミン「あ、うん。どういたしまして」
ミカサ「ねえ、今度雨が降って、そのとき私とエレンの家が近かったらアルミン、私の服着るといい」
アルミン「えっ」
ミカサ「?」
アルミン「エレンの服でいいよ」
ミカサ「なんで?私の服もいいと思う」
アルミン「うーん。でも、ズボンがいいなって」
ミカサ「ズボンが好き?」
アルミン「うん」
ミカサ「ふうん」
ーーーーー
ーーー
ー
ミカサ「アールーミン!」
アルミン「ミカサ。エレンどう?」
ミカサ「もうほとんど元気だって」ニコ
アルミン「ほんと!?」
ミカサ「今日一日元気だったら明日から外に出ていいっておじさんが言ってた」
アルミン「よかったね」
ミカサ「うん……ねえ、アルミン」
アルミン「なに?」
ミカサ「また、秘密の話してもいい?」
アルミン「二人だけの秘密?」
ミカサ「うん」
アルミン「いいよ」
ミカサ「……」
アルミン「……」
ミカサ「……あの、私、よく同じ夢を……えっと、私のお父さんとお母さん、死んだの。私がここに来る前に」
アルミン「え……」
ミカサ「知ってた?」
アルミン「ううん。知らない」
ミカサ「殺されたの」
アルミン「……そんな」
ミカサ「それで、お墓に埋められて、土、真っ黒で。毎晩土の中から声が聞こえて」
アルミン「……」
ミカサ「まぶたの上に乗せたコインと一緒に埋められてて。でも、あんなちょっとじゃ困ってるのかもしれない」
アルミン「……」
ミカサ「私、夢の中でいつも土を掘り返してる。土の中からずっと声が聞こえる」
アルミン「……」
ミカサ「それで、まだ死んでないのかもって思って……お父さんとお母さん、今、どこに」
アルミン「……それで僕に質問したの?かくれんぼのとき」
ミカサ「……そう」
アルミン「……」
ミカサ「アルミン、私、お父さんとお母さんを殺した人……」
アルミン「……うん」
ミカサ「刺した……後ろから」
アルミン「……えっ」
ミカサ「そしたら、その人死んで……」
アルミン「……死んだの?」
ミカサ「うん」
アルミン「……そうなんだ」
ミカサ「黙っていてごめんなさい」
アルミン「ううん。僕も……」
ミカサ「……」
アルミン「その場にいなくてごめん」
ミカサ「え……」
アルミン「ミカサのお父さんとお母さんのお墓ってどこにあるの?」
ミカサ「アルミン、私のこと、許してくれる?」
アルミン「許すも何も。ミカサ、僕にひどいこと一つもしてないと思う」
ミカサ「……」
アルミン「掘ろう。ねえ。君のお父さんとお母さんのお墓」
ミカサ「掘るの?」
アルミン「夢の中で掘っててもどうにもならないよ。本当のお墓掘ってみようよ」
ミカサ「でも、場所がよくわからない」
アルミン「遠い?」
ミカサ「ここから船で河を上って、山があるところに墓地があった、はず。一日あれば着くと思う」
アルミン「一日で行って、帰って来られるかな?」
ミカサ「たぶん。お葬式のとき、一日で帰って来たと思う」
アルミン「たぶん?」
ミカサ「帰りの船の中で寝てしまって、起きたら朝になってて今の家のベッドで寝てたから。でも、船に乗ったのが夕方だったし」
アルミン「そっか。とりあえず、何日もかかるような場所ではないみたいだね」
ミカサ「泊まりはしなくていいはず」
アルミン「……この話、僕たちだけの秘密なんだよね?」
ミカサ「うん」
アルミン「エレンにも?」
ミカサ「……うん。なんだか、話しにくい。話せばきっと聞いてくれると思うけど、でも」
アルミン「じゃあ二人だけでまずは場所をみつけなきゃ。ミカサ、船に乗るお金ある?」
ミカサ「歯が抜けたときのコインがある」
アルミン「よし。僕はじいちゃんになんとなく場所を聞いてみるよ。何か知ってればいいけど。ここから一日で行けて、山があって、墓地もある場所だよね」
ミカサ「私もがんばる」
アルミン「一緒に掘ろう」
ミカサ「うん」
とりあえずここまで
歯が抜けたときのコインってトゥースフェアリーってやつか
ーーーーー
ーーー
ー
ミカサ「おばさん、何かお手伝いある?」
カルラママ「あら、ミカサ。いいよ、そんな。二人と遊んでおいで」
ミカサ「ううん。二人とも、ずっと鳥のまねをしてる。人間の言葉で話してくれなくなっちゃって、飽きた」
カルラママ「はぁ?鳥の真似?あんたたちいつもそんなことして遊んでんのかい?」
ミカサ「いつもはもっとまとも。今日はたまたまおかしかった」
カルラママ「ぷっ、じゃあお言葉に甘えて、ミカサ、一緒に芋の皮むきしようか」
ミカサ「うん」
カルラママ「はい、お願いね」
ミカサ「……」ショリショリ
カルラママ「……」ショリショリ
ミカサ「ねえ、おばさん」ショリショリ
カルラママ「なあに?」ショリショリ
ミカサ「お父さんとお母さんのお墓ってどこにあるの?」ショリショリ
カルラママ「どうしたの?いきなり」ショリ…
ミカサ「アルミンと話してたとき、どこにあるの?って。それで、わからなかったので、どこにあるのかと……」
カルラママ「そうだね……聞かれる前にミカサに教えとかなきゃいけなかったね。後で、紙に書きながら説明してあげる」
ミカサ「!ありがとう、おばさん」
カルラママ「いーえ。どういたしまして」
ミカサ「あとね、おばさん……もう一つ聞いてもいい?」ヒソ…
カルラママ「ん?」
ミカサ「アルミンって男の子?女の子?」
カルラママ「っふ、ははは」
ミカサ「どっち?」
カルラママ「ミカサはどっちだと思ってるの」
ミカサ「どちらかと言えば、男の子のような気がしてる。でも違ったら悪いなと思って」
カルラママ「正解。男の子だよ」
ミカサ「そっか」ホッ
カルラママ「ほっとした?」
ミカサ「うん。でもおばさん、この前アルミンに私の服着ない?って誘っちゃった」
カルラママ「ははは、いいんじゃない?スカート、かわいいしね」
ミカサ「おばさんもそう思う?」
カルラママ「うん」
ミカサ「なんだか、うれしい」
ーーーーー
ーーー
ー
アルミン「えっ。お墓の場所わかったの?」ヒソ…
ミカサ「うん」
アルミン「じゃあ行こう。早い方が良いよね。明日は?」
ミカサ「明日はだめ。おばさんが一緒にお買い物に行こうって」
アルミン「じゃあ明後日」
ミカサ「明後日は大丈夫」
アルミン「決まりだね。……ところで、どうやって場所を見つけたの?」
ミカサ「おばさんに聞いた」
アルミン「えぇっ!?ミカサ、上手に聞けた?」
ミカサ「うん。鳥のおかげ」
アルミン「?」
ーーーーー
ーーー
ー
アルミン「ねえエレン」
エレン「あ?」
アルミン「明日なんだけどさ、一日だけ、僕とミカサ二人で遊んでもいい?」
エレン「まあ……いいいけど」
アルミン「けど?」
エレン「いや、あいつのこと……いじめんなよ?」
アルミン「そりゃ当たり前だよ」
エレン「昼も帰ってこないのか?」
アルミン「うん。朝早くに出て夕方くらいに帰ってくる」
エレン「わかった。帰ってきたらちゃんとオレも混ぜて遊べよ」
アルミン「約束する」
ーーーーー
ーーー
ー
ミカサ「おはよう、おばさん。エレンは?」
カルラママ「エレンならもう出て行ったよ」
ミカサ「え?もう?」
カルラママ「うん。なんか今日は遠くに遊びに行くんだって?お昼も帰ってこないって。ミカサも早くごはん食べちゃいな」
ミカサ「……うん」
カルラママ「お昼のパン、そこにあるから。持って行ってね」
ミカサ「ありがとう、おばさん」
ーーーーー
ーーー
ー
アルミン「あ、ミカサ。おはよう」
ミカサ「エレン、いる?」
アルミン「さっき来たよ。ミカサに、晩ごはんまでには帰って来いって。夕方、大きい木の下で待ってるって」
ミカサ「他には?」
アルミン「他は何も」
ミカサ「そう。晩ごはん。……わかった」
アルミン「ねえミカサ、木と鉄、どっちがいい?」
ミカサ「え。木」
アルミン「じゃあ、はい。こっちミカサが持ってくといいよ。持ち手が木のシャベル」
ミカサ「すべすべしてる。木のところ」
アルミン「僕が持ってるシャベルはつるつるしてるよ」
ミカサ「うん。アルミン」
アルミン「うん」
ミカサ「行こう」
アルミン「行こう」
ーーーーー
ーーー
ー
ミカサ「……」
アルミン「ここ?お墓」
ミカサ「……たぶん」
アルミン「たぶん?……ここ、石に字が彫ってあるよ。名前あってる?」
ミカサ「あってる。この場所も見覚えがある。……けど」
アルミン「けど?」
ミカサ「土が、黒くない。前はもっと……真っ黒で。もっと盛り上がってたし……山みたいに大きくて」
アルミン「そんなに大きかったんだ……今も盛り上がってるけど」
ミカサ「うん。もっと大きかった。それにこんな草、無かった」
アルミン「草で覆われて土がよく見えないや。かぶせた土に種や根っこが混じってたのかな」
ミカサ「かも」
アルミン「たんぽがもう綿毛になってる。日当たりが良いからかな。……この草は茎を噛むと酸っぱいやつだよね」
ミカサ「うん。これ、葉っぱで真鍮を磨くとぴかぴかになるんだよ」
アルミン「へぇーそうなんだ」
ミカサ「燭台を磨いたことがある。……お母さんと、一緒に」
アルミン「そっか……」
ミカサ「……掘ろうと思う」
アルミン「そうだね。どの辺?」
ミカサ「この辺。一番盛り上がってる」
アルミン「わかった」
ミカサ「あ、ちょっと待って」
アルミン「ん?」
ミカサ「聞いてみる。地面に耳つけて。声。聞こえないか」
アルミン「ああ、うん」
ミカサ「………」ピト…
アルミン「……どう?」
ミカサ「聞こえない」
アルミン「僕も聞いてみても……?」
ミカサ「うん。聞いてみて」
アルミン「………」ピト…
ミカサ「どう?」
アルミン「聞こえないと思う」
ミカサ「やっぱり?」
アルミン「掘って、穴に頭つっこめば聞こえるかも」
ミカサ「じゃあ、とりあえず掘ってみよう」
アルミン「そうだね」
ザックザックザック……
ミカサ「入れてみるね」アタマズボッ
アルミン「どう?」
ミカサ「……聞こえない」
アルミン「そっか……」
ミカサ「……ふぅー…」
アルミン「……」
ミカサ「お腹、すいたね」
アルミン「そうだね」
ミカサ「お昼ごはん食べよう?」
アルミン「うん」
ミカサ「私のパン、半分あげる。ここまで一緒に来てくれたお礼」ゴソッ
アルミン「いや……じゃあ、僕のも半分あげるよ」
ミカサ「……いいの?」
アルミン「もちろん」
ミカサ「アルミンのパン、ジャムおいしそう」
アルミン「りんごだよ」
ミカサ「私のはチーズ。おいしい」モグ…
アルミン「ほんと。おいしいね」モグモグ
モグモグ…
ミカサ「ねえ、なんだか、もう、掘るのはやめようかなって思う」
アルミン「えっ」
ミカサ「声、聞こえなかったし。もう、聞こえないのかなって」
アルミン「それでいいの?ミカサがいいなら僕はいいと思うけど」
ミカサ「いいの。かわりにお花をあげたい。お墓に」
アルミン「お花かぁ」
ミカサ「来る途中の道に生えてたのとか。一緒に摘んでほしい。アルミン」
アルミン「うん。摘むよ。たくさん」
ミカサ「お花をあげたら、たんぽぽ持って帰ってもいいかな」
アルミン「綿毛?」
ミカサ「うん。飛ばないようにお弁当箱に入れて持って帰りたい」
アルミン「慎重に摘まなきゃね」
ミカサ「帰ったら、3人でふぅーって飛ばしたい。来年も、その次も、そのあともずっと、家の近くでたんぽぽ咲くの、見たい」
アルミン「いいと思う」
ミカサ「ありがとう」
ーーーーー
ーーー
ー
アルミン「もう夕方だね」
ミカサ「うん。空が金色。川面に反射してきれい」
アルミン「行こう。エレン、待ってるよ」
ミカサ「うん。あの、大きい木の下まで急ごう」
アルミン「でもそっとね。綿毛、散らないように」
ミカサ「うん。慎重に急ぐ……たんぽぽってアルミンに似てる」
アルミン「え、色が?」
ミカサ「違う。遠くまで行けるところが」
アルミン「そう?」
ミカサ「今日だって、私を遠くに連れていってくれた」
アルミン「もっと遠くまで行って、色んなものを見てみたいなぁ」
ミカサ「でも、危ないところはダメ」
アルミン「ははは。大丈夫だよミカサがしっかり者だもん」
ミカサ「遠くに行くときは、私も一緒?」
アルミン「そうだよ」
ーーーーー
ーーー
ー
ミカサ「エレン、ただいま」
エレン「おう」
ミカサ「ごめんね。一人にして」
エレン「別に」
ミカサ「さみしかった?」
エレン「別に!」
アルミン「エレン、たんぽぽを持ってきたんだよ」ゴソ…
エレン「は?」
ミカサ「そう。一緒にふぅーってしよう」
エレン「いいけど」
ミカサ「じゃあ、せーの……」
エレン「えっおい、ちょっと待てよ」
ミカサ「?」
エレン「お前、耳ふさがないと綿毛が入っちゃうだろ。耳の中から生えてきたらどうすんだよ」
ミカサ「え、でも手がふさがってて」
エレン「オレの手の甲、片っぽ貸してやるよ」ムギュ
ミカサ「あ」
アルミン「じゃあもう片方は僕の手の甲で」ムギュ
ミカサ「ふふ……じゃあ、せーの」
3人「「「ふぅーー」」」
ーーーーー
ーーー
ー
ミカサ(15)「アルミン」
アルミン「あ、ミカサ。え、どうしてここに?」
ミカサ「今日、倉庫整理の当番だった。アルミンは…水汲み?」
アルミン「うん、そう」
ミカサ「手伝う?」
アルミン「いや、大丈夫だよ」
ミカサ「そう……ねえ、アルミン、あそこ、たんぽぽの綿毛」
アルミン「ほんとだ」
ミカサ「宿舎に持って帰ってエレンと3人でふぅーって」
アルミン「いいね」
ミカサ「これ、あのときのたんぽぽかもしれない」
アルミン「うん」
ミカサ「ふふ、ねえ、アルミン」
アルミン「何?」
ミカサ「クイズです」
アルミン「!……ふ」
ミカサ「ふふふ」
アルミン「鳥がお母さんのお腹に入れるんだよ」ドヤ
ミカサ「正解」フフフ
キャッキャウフフ……
ーおわりー
東日本では小さいのがシャベル大きいのがスコップで、西日本はその逆らしくてどうするか迷ったけど首都東京に合わせてシャベルにした
>>25
そうそう。日本みたいに乳歯投げるのも良いけどコインも夢があっていいよね。
このSSまとめへのコメント
この話本当に好き過ぎて原作がしんどい時に読みに来てしまう
めっちゃいい
こういう日常の話みたいなのいいなぁ……