アルド「あぁ。　フィーネもたまに友達と食べに行ってるみたいだし、女の子には人気があるみたいだな」


アルド「それで、パフェがどうしたんだ？」


アザミ「そうそう、そうでござった！　本題はそこでござる」


アザミ「アルド殿がご実家で寛ろがれている時、所用で王都ユニガンを訪れたのでござるが……」


アザミ「その時に、見つけてしまったのでござる！」


アルド「パフェを、か？」


アザミ「うむ。　……いや、正確には違うでござるな。　"すぺしゃるぱふぇ"でござる！」


アルド「す、スペシャル？」


アザミ「左様でござる！」


アルド「一体何がスペシャルなんだ？」

アザミ「……それが、分からないのでござる」


アルド「それは少し気になるな。　詳しく聞いてみたりしなかったのか？」


アザミ「実は、その"すぺしゃるぱふぇ"を食すためにはとある条件が必要だと店主に申し付けられてしまったのでござる」


アルド「条件……？　お店で物を食べるために条件がいるのか？」


アザミ「うむ……。　どうやらそれは特別な物らしく……。　その……」ﾓｼﾞﾓｼﾞ


アルド「？」


アザミ「男女一人ずつ……二人で入店しなければ、現物すら見せてもらうことができない代物……とのことで」


アルド「……。　なるほど、そういうことか」

アザミ「"ぱふぇ"なるもの自体にも興味があるのだが……。　拙者、せっかくならば"すぺしゃるぱふぇ"を食してみたいと……」


アルド「いいぞ、一緒に行こうか」


アザミ「だから、その、もし万が一……アルド殿が……、えぇと、ご多忙でなく、拙者と共に行ってもよいのであれば――」


アザミ「――って、えぇ！？」


アルド「うわ！？　何を驚いてるんだ！？」


アザミ「い、え、い、いや。　アルド殿、それは誠でござるか！？」


アルド「何がだ？　だって食べたいんだろう？」


アザミ「そ、それはそうでござるが……。　その……拙者と二人きり、でござるし……その……」


アルド「……？　何だ？　月影の森でも二人で武術大会に出ようとしていたじゃないか。　あれは魔獣の罠だったが」


アザミ「……。　そ、そうでござったな！　では、改めて……」


アザミ「アルド殿。　それでは、よろしく頼み申す！」



――　QUEST ACCEPTED

Wright Flyer Studiosが提供しているスマートフォンゲーム「アナザーエデン」のSSになります。
妄想ですが、もし知っている方がいましたらぜひお付き合いください。

イベントキャラクター「アザミ」をまだ手に入れていない方、もしくはキャラクエストをクリアしていない方には
ネタバレの可能性がございますのでご注意ください。

ゆっくり更新していきますので、よろしくお願いいたします。

――王都ユニガン　The Royal City of Unigan


商人女「いらっしゃいませー。　期間限定でスペシャルパフェ販売してまーす！」


アザミ「アルド殿！　あれでござるよ！」


アルド「凄い人だかりだな……」


アザミ「うむ。　拙者も初めて見たときは、あの大名行列のような人の群れに驚いたものでござる」


アルド「『大名行列』？」


アザミ「むっ。　この国では主君が公道を通る際、民は列を作らぬのでござるか」


アルド「えっ、王様が通る度にか？」


アザミ「膝を付け、時には頭も垂れて主君に対する忠誠を姿勢で見せるのでござるよ。　今は魔獣の襲撃後の騒動ゆえ、実施していないものだとばかり思って板でござるが……」


アルド「うーん……。　そういった文化はこちらにはないかなぁ。　東方の国というのは、随分義に厚いんだな」


――――『二度も主命を果たせなかったのだ。　もはやこれまでと存ずる』

――――『いさぎよく　罪をたまわろう』


アルド「（……そういえば、シオンもそうだったな）」


アルド「（……うーん）」


アザミ「……？　アルド殿？　どうしたでござるか？」


アルド「っ！　い、いや。　なんでもない」


アザミ「ふむ？」

アザミ「そ、それでは気を取り直して、行くでござるよ！」


アルド「おお！　って、まずは並ばないとな」


アザミ「そうでござるな」


アルド「――と、ここが最後尾かな」


アザミ「うむ。　すさまじい人気でござるな。　店を離れ、城下町をぐるりと一周するほどの人がいるとは……」


アルド「そうだな。　だけど、それほど美味しいものだって思うと、楽しみも増してくるな！」


アザミ「うむ！　みたらし団子には及ばぬと思うが、きっと"ぱふぇ"とやらも美味しいに違いないでござるよ！」


男「早く食べたいなー！」


女「ねー？　私、君にあ～んして食べさせてあげちゃうから！」


男「なんだとー！　それなら、俺だってお返しのあ～んをしてやるからなー！」


女「えー！　それはご褒美だよー！」


男「それもそうだな、あはは！」


アザミ「……」


アザミ「しまったでござる！」


アルド「うわっ！　あ、アザミ、いきなりどうしたんだ？」


アザミ「あ、い、いや！　なんでもござらん！」


アルド「そ、そうか？」


アザミ「断じて！」


アルド「お、おう……？」


アザミ「（……このような人の往来の多い場所で、その、男女一組でこんなところに並んでいたら）」


アザミ「……か、かっぷるに見られるではござらんか……！」ﾎﾞｿﾎﾞｿ


アルド「ん？　ごめん、聞こえなかった……。　どうした？」


アザミ「っ！　な、なんでアルド殿はこういうときだけ耳聡いでござるか！」


アルド「うわっ！？　急に怒るなよ！？」

――――1時間後



アルド「結構客の回転が早いみたいだな。　並び始めたときはいつ入れるかと思ったけど、もう店の目の前だ」


アザミ「そうでござるな。　先ほどから甘い砂糖菓子のような香りが香ってくるでござるよ」


アルド「そういえば、アザミの故郷には『みたらし団子』以外のお菓子は、どういう物があるんだ？」


アザミ「『みたらし団子以外』でござるか？　うーむ……。　拙者もその道に詳しいわけではござらぬから、全てを網羅しているわけではなのだが……」


アザミ「有名処を挙げると、『寒天』があるでござるな。　とある植物の粉を抽出して固めたものなのでござるが、黒蜜などを掛けると絶品なのでござる！」


アルド「『寒天』……か。　名前だけ聞いてもピンとこないな」


アザミ「この国でいう"ぜりー"のような食べ物でござる。　それ自体に味がついていなかったり、微々たる差はあるが、おおよそ同じ物と考えてもらって結構」


アルド「なるほど！　それは年齢や性別問わず楽しめそうだな！」


アザミ「うむ。　その通りでござる。　拙者の国では赤子からご老人まで、老若男女問わず人気の"そうるふーど"でござるよ」


アルド「へぇ！　もしアザミの国へ訪れることがあったら、ぜひ食べてみたいな！」


アザミ「ふふっ。　拙者オススメの店があるので、ぜひそこへ行くでござるよ！」


アルド「楽しみにしておくよ！」


商人「それでは、次のお客様どうぞー！」


アルド「おっ。　次は俺たちの番みたいだな」


アザミ「遂に"ぱふぇ"なるものと会いまみえる時が来たでござるか……！　血が騒ぐでござるよ！」


アルド「それはちょっと表現が違うんじゃないかな……？」


アザミ「いいから！　早く行くでござるよ！」


アルド「あ、あぁ。　分かったから、そんな早く行くなって！」

――――店内


アザミ「……こ、これは、その」


アルド「ん？」


アザミ「そ、その……拙者には不向きというか、不釣り合いな場所でござるな……」


アルド「どういうことだ？」


アザミ「い、いやその……。　こんなに煌びやかな装飾がほどこされており、はぁと型の物が多いと……こう、落ち着かなくて……」


アルド「確かに、他の場所とは違ってとても女の子っぽいな」


アザミ「そ、そうでござる！　なので、拙者のように武士道一本で生きてきた者には、不格好な場所であるからして」


アルド「……そうか？」


アザミ「へっ？」


アルド「俺のような男がこの場にいるのは少し違和感を感じるが、アザミは女の子だし、この場にいても全くおかしくないと思うぞ」


アザミ「お、おんなのこ……！？　拙者はそんな可愛げのあるものでは……！」


アルド「ははは、俺からしたらフィーネもアザミも、同じ女の子だよ。　こういう場所に来て似合わないなんて一切思わないさ」


アザミ「あ、あうぅ……」


アザミ「そ、そんなことを言われたのは初めてゆえ、ど、どんな顔をしていいものかわからぬでござるよ……」

商人「大変お待たせいたしましたー！」


アルド「おっ、来たみたいだぞ」


アザミ「つ、ついに！！」ｶﾞﾀｯ


アルド「落ち着けアザミ……」


アザミ「す、すまぬでござるよ……」


商人「ふふっ、大変お待たせいたしました。　こちらが期間限定販売中の、当店自慢の一品。　その名も"スペシャルパフェ"でござります！」ｺﾄｯ


アルド「こ、これは……！」


アザミ「な、なんという……」


商人「特製の生クリームに、産地直送の甘味爽やかなイチゴ、リンゴ、モモ！」


商人「さらに、厳選されたカカオから作られたチョコレートソースをふんだんにかけ、隠し味にツルリンの実のすりおろしを入れれば完成！」


アルド「随分手が込んでるんだな」


商人「それはもちろん！　当店は常に一級品だけを取り入れることをモットーにしておりますので！」


アザミ「こ、こんな贅の全てを集約させたような代物を、拙者が食べても良いのでござろうか……」


アルド「もちろんだよ。　……というか、そのために来たんだろう？」


アザミ「そ、そうでござったな！　神々しいまでの見た目に、圧倒されてしまっていたでござる」ｱｾ

アザミ「そ、それでは……早速」ｽｯ


アザミ「……ッッ！！！」ﾋﾞｸｯ


アルド「うわ！？」


アザミ「……う、う……」


アルド「ど、どうしたアザミ！？」


アザミ「――――美味すぎるでござる！！」


アルド「……」


アザミ「なんてことでござるか……。　拙者の想像していた甘味ではない……」


アザミ「舌にいつまでも残りそうな"ちょこれぇと"と"なまくりぃむ"の甘さ。　しかしそれを許さないほど良い酸味を持つ果物たち」


アザミ「たった一口でそれが分かってしまう、正に『至極の一品』でござる！！！」


アルド「そ、そんなに美味しいのか！　それはよかったな！」


アザミ「幸せすぎて思わず笑みがこぼれてしまうでござるよ」ﾆﾍﾗｧ

アザミ「……ん？」


アルド「え？」


アザミ「あれ……。　そういえば、アルド殿の分は……」


アルド「ああ、そういえば。　前払いしたときの料金で2人分くるって話だったな」


アザミ「むむっ……。　これは一体……？　おーい、店主殿！」


商人「はい！　いかがいたしましたか？」


アザミ「こちらの御仁の分がまだ配膳されておらぬようでござるが……」


商人「……？　――あ！」


商人「お客様、大変失礼いたしました！」


アザミ「うむ、問題ござらぬよ。　今すぐ持ってきてくれれば――」


商人「当店の『ルール』を説明し損ねておりました。　ご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません」


アザミ「……"るぅる"？」


アルド「（……なんとなく嫌な予感が）」

商人「こちらの商品はこの一皿で2人前でございます」


アザミ「！？」


商人「スペシャルパフェのご注文は、『男女一組専用』。　―――並びに食事の際は、『あ～ん』をしていただく必要がございます」


アザミ「んな、な……。　あ、、、あ！？」


商人「『あ～ん』でございますよお客様。　女性から男性、もしくは男性から女性が、お互いの口元まで食事を運んであげる所作のことで――」


アザミ「せ、しぇつめいしないでも分かるでござる！　な、なにゆえそのような規則があるでござるか！？」


商人「こちらは私どもが『王都の発展』をイメージして作ったメニューでございます。　そのため、価格ももちろん赤字覚悟！」


アルド「（ああ、確かに安かったな……）」


商人「王都の繁栄、それは町民の繁栄！　ひいては、子孫繁栄！　……つまり、このメニューで仲睦まじくなっていただくための、必須ルールとなっております」


アザミ「こ、小皿を借りることはできぬのでござるか！？」


商人「もちろんいけません。　そして、仮に1度も『あ～ん』をせずに食事をする、もしくは帰った場合は倍額の罰金をさせていただくこともまた、ルールとなっています」


アザミ「お、横暴でござるよ！」


商人「外の看板にはしっかりと記載させていただいておりましたので……」


商人「それでは、別のお客様も待っておりますので、私はこちらで」


アザミ「あ、ま、待つでござるよ！」


アザミ「……」


アルド「……」

アザミ「……アルド殿」


アルド「ん？」


アザミ「そ、その。　この器具は、もう拙者が口を付けてしまったものゆえ……」


アザミ「その……ばっちぃでござるので、その……」


アルド「別に、『あ～ん』とやらをすればいいんじゃないか？」


アザミ「な、何を言ってるでござるかアルド殿！？」ｶﾞﾀｯ


アルド「うわっ！？　店内で刀を抜くな！」


アザミ「アルド殿が珍妙な発言をするからでござる！」


アルド「だって、それがここのルールなんだろ！？　それをしっかり調べずに入った俺たちにも非があるわけだし」


アルド「もちろん、アザミがどうしても嫌だって言うなら、罰金は俺が払うから、アザミ1人で食べてもらっても大丈夫だよ」


アザミ「あ、あうぅ……そ、それは……」


アザミ「い、嫌なわけ――」ﾎﾞｿﾎﾞｿ


アルド「――ん、ごめん。　上手く聞こえなかったんだが」


アザミ「わ、わーーー！　アルド殿のニブチン！　ばか！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ


アルド「け、剣を振り回すな！」

――――1時間後


――カレク湿原　Karek Swampland



アザミ「……」


アルド「……」


アザミ「……誠に申し訳ないでござる、アルド殿」


アルド「ん？　いや、アザミが謝ることでもないぞ。　俺が不躾な発言をしてしまったのが事の発端だし」


アザミ「いや……。　その、拙者、あの時ワケがわからなくなって、思わず取り乱してしまって……」


アザミ「そのせいで結局お店は追い出されてしまって……更には罰金までしっかりと……」


アルド「元値がそんなに高い物でもなかったし、大丈夫だよ。　気にしないでくれ」


アザミ「気にしないなんて無理でござるよ……」


アルド「あそこは他にもパフェのメニューあるみたいだし、次はフィーネやアカネ達と来て、食べてみればいいさ」


アザミ「も、もう次は拙者と同行してはくれないのでござるか！？」


アルド「え？　いや、アザミが良いっていうなら、いつでも付き合うけど」


アルド「今日は店の規則とはいえ、無理させてしまったかなと思って」


アザミ「む、無理なんてしてないでござる……」

アザミ「せ、拙者がちゃんと……その、"あ～ん"をできていれば」


アザミ「もう、そんな悲しいこと言わないでくれるのでござるか！？」


アルド「か、悲しいことって……」


アザミ「……あ、アルド殿！！」ｼｭｯ


アルド「う、うわ！？　だから、急に剣を――」


アルド「……あ、甘い匂い……？」


アザミ「……こ、これは拙者秘蔵の『みたらし団子』でござる」


アルド「剣の先についてるのか」


アザミ「あ、アルド殿……。　拙者の全てを込めた、渾身の"あ～ん"……。　ぜひ、ご賞味あれッ！！」


アルド「……」


アルド「それじゃあ」ﾊﾟｸｯ


アザミ「！！」


アルド「……ごくっ。　うん、やっぱりうまいな、みたらし団子は」


アザミ「う、うむ……。　もちろんでござる……」


アルド「すまなかったな、俺なりに気を利かせたつもりだったんだが、アザミがそう言ってくれるのであれば、ぜひ次も同行させてもらうとするよ」


アザミ「本当でござるか……？」


アルド「ああ、本当だ」


アザミ「……恩に着るで、ござるよ！」ﾆｺｯ