男「ウム…」チラリ
イケメン(女)「でさー」
「うそ~ww」
「マジで!?ww」
男「……」じぃー
イケメン「結局、なにもかわらないわけ」
「あはは~!」
「キャー! イケメン君、やっぱおもしろ~いww」
男(やはりだ。この半月、観察し続けてやっと理解した)ガタリ
スタスタ がらり
男「…スゥー…」パタン
男(──予想してたよりなんか可愛くない!!!)グッッッ
男「そんなのおかしい…おかしいだろぉがよお…」ワナワナ
男(フツー男が女子にメモタルフォーゼなら可愛いの鉄則だろ…!)
男(未だ変化前と変わらんイケメン具合で俺はガッカリだよ! 顔も! 性格もだッ!)
男「はぁ~……」ガックシ
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くる スタスタ
男「なんかさ、女子にも受け入れられちゃうしさ、男共も変わらない態度で接するしさ」
ツンツン
男「──待ってくれ、俺は今、気軽に喋れる状態じゃない」
イケメン「よお!」シュビッ
男(わあああああああああ!? 本人にいるぅうううううう!)
イケメン「ごめん。なにか取り込んでた感じ? …誰も居ないけど?」キョロキョロ
男「いやっ!? えっ!? ごめん! ひ、独り言だから今のは…!」ブンブンブン
イケメン「あ。そうなんだ、よかった」ニコ
男(ぐっ…! 爽やか笑顔が超眩しいぜ…! 男のときと変わらんイケメン!)
イケメン「でも急に話しかけてごめんな、ちょっとキミと話たいことがあって」
男「お、俺と? 一体何を…」
イケメン「うん。それがさ…」
男(なんだ…俺に何の用事があるというんだ…?)ドキドキ
イケメン「なあ、男」
男「う、うん?」
イケメン「もしかして、オレのこと好きだったりする?」
男「え?」
イケメン「だってすげー見てるし」
男「み、見てないけど?」ダラダラ
イケメン「見てる見てる。女子の間でも噂されてるよ、アイツまじ意識しすぎじゃなーいって」
男「うぐッ」
イケメン「んー…でも本人が否定するなら違うのかもな…でもなぁ…」
イケメン「でも、好きじゃなくても、俺のこと見てるのは事実でしょ?」
男「いや、それも全然勘違いだってば…」
イケメン「いや見てるって」
男「…見てないって」
イケメン「見てるっての!」ぐいっ
男「ちょっ!?」フワァ
イケメン「──なんでそんな意固地になるんだ? 良いじゃん、素直に言いなって」ニッ…
男「………」ピク
イケメン「ん? どうした?」
男「…離せ…」グイ
イケメン「え?」
男「離せバカ! このどぐされイケメン野郎ッ!!」
イケメン「どぐされイケメン野郎!?」
男「お前はなぁーんにもわかっちゃいねーなあ!?」
イケメン「な、なにを?」ドキドキ
男「全部だよ!」
イケメン「!?」
男「わかってない、なにも、全然、全てだ、お前はもったいなさ過ぎる!」
男「──女の子の身体にもなって、なんで未だイケメンなことやっちゃうの!?」
イケメン「………」きょとん
男「はっ!?」
男(し、しまった、溜まりに溜まったリビドーについ火が、まずい、言い訳を!)バッ
イケメン「…お前、凄いな…」キラキラキラ
男「違うんだ、待ってくれ今のは!」
男「……なんて?」
イケメン「この身体になってから、何か違うと思ってた…」スッ
イケメン「なるべく普段通り過ごしていたつもりだった。けれど、心の何処かで引っかかりがあったんだ…」
男「…あの…?」
イケメン「つまり、」
イケメン「──俺は女の子になっても、いまだイケメンすぎるってことだね!」キラキラキラ
男「う、うーん…? そう、いうこと、なんだけど、…うん?」
イケメン「あぁ…っ!」バッ
イケメン「気づかなければ良かったかもしれない…例え身体が変わろうともイケメンなのは変わらなかった…」
イケメン「そんな俺という奇跡に…奇跡的なイケメンな俺の美しさに…あぁッ…!」クイックイッ
男「……なんていうか、その」
イケメン「うん?」ニコ
男「お前、なんか残念だね…ちょっと…」
イケメン「ははっ! キミってば正直! このこの☆」ツンツン
男「そういう性格だったの……? 元々……?」
イケメン「えー? そうだよー? 知らなかった?」
男「うん…あんまり喋らなかったし…仲良くもなかったし…」
イケメン「ふむ。確かに、男だった時もキミと会話した記憶が無いな」フム
男「えっと、まあ、それじゃあ怒ってないようなら俺はこれで…」そそくさ
イケメン「待ってくれ」ガシッ
男「な、なんですか!? まだなにか!?」
イケメン「君、俺のこと好きじゃないんだよね?」
男「その質問の意図とは……っ?」
イケメン「良いから聞け。なぜ、好きになれない? この俺がイケメンだから?」
男(えぇい面倒くさい! もうぶっちゃけてやるわ!)
男「そ、そうだよ! せっかく女子になっても変わらんお前になんか目もくれないわッ!」
イケメン「……ほぉぉぉ……」キラキラキラ
男「なんで喜ぶの…?」
イケメン「違うんだ、生まれてこの方、面と向かってはっきりと言われ凄く感嘆している」
イケメン「異性から興味が無いと初めて言われたんだ!」
男「…………………」
イケメン「ふふっ」
男「待って、そりゃそうだ、えっ? お前、元々男じゃん、うんっ?」
イケメン「俺はね、この身体になってから決めた夢があるんだ」
イケメン「──この学校に居る全イケメン生徒を虜にしたい……ってね」ニヤ
男「ごめん。わからない、ごめん」
イケメン「色々試したんだ。けれど靡かない。男のときと違って勝手が違いすぎる」フルフル…
男「あ! わかった! 変態だなお前!」
イケメン「愛の探求者として呼びたまえ! …しかし、君も言っただろう?」
イケメン「この身体がもったいない、と。実に君の意見は的を得ている」ピッ
イケメン「そして俺の野望とも合致している」ピッ
男「ひ、否定したいけどなんか合致してる気がする……!」
イケメン「この半月、いくら考えても答えは出なかった…自分の不甲斐なさに枕を涙で濡らす日々…」スッ
男「その身体になって直後に行動したの?」
イケメン「つまり! 俺にとって君の苦言とは、素晴らしく貴重な意見なんだ!」バッ
男「──!」
イケメン「我が野望のため、君のもったいない精神を活かしてみないか?」
男「うっ……」
イケメン「どうだろう? 実に合理的な提案だと、我ながら思うのだけれども」キラキラ
男「ま、待ってくれ、その、少し質問がしたい」
イケメン「ほう?」
男「お前は、この学校のイケメン共を囲いたいってことか?」
イケメン「うむ。すべて自分のモノにしたいと思ってるね」
男「……なんで?」
イケメン「それはヒミツ」
男「ぐっ、意味深な笑顔だなっ」
イケメン「だって好きじゃないんでしょ? 俺のこと、だったら知る必要もないと思うんだけど?」
男(なんなんだよ、まったく。俺は一体なにに巻き込まれかけてるんだ、コイツ頭おかしいだろ…)
男(…でも、まあ、言いたいことを言える関係ってのは、気が楽になりはするだろうが…)
イケメン「どうする? やる? やらない?」キラキラキラキラ
男「……。わかった、やらなくもない」
イケメン「んー? そこはハッキリと言って欲しいな、女心的に」
男「口を閉じてな変態野郎。俺から一つ条件がある、それ守れるなら手伝ってやるよ」
イケメン「条件? 燃えるね、どんとこいだ」ニッ
男「…………」じぃー
イケメン「?」
男「それは───」
「ここでなにやってんのイケメンくーん?」
「わ! もしかして告られてる!? うっそ!?」
イケメン「おっと」
男「なぬッ!?」
「ほらあっちいってようよー! お邪魔だって私達~」
男「ま、待って! ちがっ」
イケメン「──違うよー! 俺がさっきペン落としたらしくて、拾ってもらったんだー」
「あ。そうなんだ~」
「もう次の授業始まっちゃうよー」
イケメン「ああ。すぐにいくよ」
男「…すまん、ありがと」
イケメン「え? なにが?」キョトン
男(天然か。こういうところは普通にイケメンだよな、コイツ)チラ
イケメン「やはり、あの子達より俺のほうが美少女だよな…」フーム
男「マイナス要素が酷すぎる…」
イケメン「おっ? 今のもう始まってた感じ? もったいない精神発動中?」わくわく
男「はぁ、もういい。わかった、取り敢えず野望ってやつ、乗っかってやるよ…」
イケメン「あれ? いいかけたことは?」
男「それも良い。無視してくれて良い、とにかく参加してやるってことだ」
イケメン「なら、契約だ。よろしく頼むね、もったいない精神!」
男「……どうも、こちらこそ宜しくさん」
イケメン「じゃ、早速だけどライン交換しようか」ピッ
男「…うむ」
イケメン「なんで照れてるの? ハッ!? もしかして…!?」
男「いや違う!?」
イケメン「女子とライン交換したこと、無い…!? そういやさっきの女子にも名前呼ばれなかったし…!?」
男「うるさい! 本当はそう名前なんて軽々呼ばれないからな!」
~契約開始~
男(契約開始、とは言っても…)チラ
イケメン(女)「あははー」
「な! だろっ? だからさ~」
男(別に、男子共に人気がないわけでもなく。普通に学校生活を過ごしているわけで)フゥ
男「とくに俺がすることも無いような…」
キーンコーンカーンコーン
イケメン「お」
「じゃ、部活行ってくるわー! また明日ー!」
イケメン「おー、明日ね~」フリフリ
イケメン「……」チラ
男(あ。コッチ見た)
イケメン「君、教室だと静かだな。けれど視線だけはいやらしく見てたの、気づいていたよ、フフ」スタスタスタ
男「うるさいな。こっちも契約通り目を光らせてやってんだ、文句言うな」
イケメン「素晴らしい心掛けだ。で? 今のどうだった?」
男「え、なに?」
イケメン「──さっき会話してた男子、俺の惚れてると思うか?」ヒソ…
男「……ぇぇぇ……」ドンビキ
イケメン「その反応は失礼だ、俺は苦言を申したいぞ」プンプン
男「普段から惚れられてるかどうか考えて会話してるの……?」
イケメン「いや、別にフツメンな男子に興味はないけど」ブンブン
男「面食いすぎる…」
イケメン「それで? どう思った? さっきの彼は惚れてると思う?」ワクワク
男「断言する。無い、まったくフラグ立ってない」
イケメン「フラグ?」
男「惚れてる感じ無しってこと。メチャクチャ男同士の会話だったし」
イケメン「そっかぁ…それは残念だ…」
男「……」じぃー
イケメン「ん? なに?」
男「その口調。そっからやってみるか。普段から、男っぽいなと思ってたんだよな」ガタリ
イケメン「口調…? そんなことでモテるようになると?」
男「物は試しだ。やってみろ、ちょうど教室に誰もいないし」クイクイッ
イケメン「………」
イケメン「こんにちわ。私、イケメンちゃんっていいますの、よろぴく☆」
男「[ピーーー]」
イケメン「酷ッ!?」
男「あ。スマン、素直な感想が口から…」
イケメン「それは流石に俺でも傷つくよ…たいてい女子ってこんな感じだろうに…」
男「お前のイメージも酷いと思うけど…」
男「あぁもうッ! だったら俺が言ったセリフを復唱! 『ねえ、運動部の二の腕ってやっぱり大きいね!』 はいッ!」
イケメン「キモ…」
男「ガツガツ女子はさらっと言いのけるぞ! 文句言わずしてやれ!」
イケメン「そ、そうなのか…では…『ねえ、運動部の二の腕ってやっぱり大きいね!』…ど、どうだ!?」
男「フフッ…」プイッ
イケメン「笑っちゃうのはもっと酷くない!?」
男「ごめんごめん、なんか違うなって。お前はもっとフランクな方が良いかもしれない」
イケメン「俺にやらせておいて違うとはなんだよ…」
男「! あぁ、その俺ってやつ。【私】ってのはどうだ?」
イケメン「一人称を変える? ほうほう、なるほど」
男「大分、印象変わると思う」
イケメン「──じゃ、私はこんな感じでイケばいいと思う?」
男「おぉ~違和感ないわ~」
イケメン「そ、そお? へへ、じゃ、じゃあ今日から私な感じでデビューしちゃってみようかしら…」
男「良いね、実に良い」
イケメン「んふふ、私かわいい? 男子共、みんな私に惚れちゃう? 私にメロメロ?」
男「ところどころウザいけど、様にはなってる」ウンウン
イケメン「よっっっし! だったらこれでさっきの男子落としてやるわ、心の臓を捉えてみせる!」グッ
男「その心意気は凄いなお前…」
イケメン「当たり前だ。身体が変わっても私は私、性格は変われないさ!」
男(あんま知らないけど、そうなのか。コイツが変わる前って)
男(でも、だからこそ不思議なんだよな。今のイケメンを見てると、以前のコイツって…)
イケメン「よっしゃー! 燃えてきたから、今からいっちょ行ってみるわ!!」ダダッ
男「あんなのでよくモテてたねって……顔か、やっぱり」
~~~
イケメン「ただいま」ションボリ
男「どうだった? 聞かなくても失敗したってわかるけど」
イケメン「聞いてくれ。普通に引かれた、多分、引いてたと思う、あれは」
男「ふむ…」
イケメン「なにが駄目だったのだろう…ちゃんと私、って言ったのよ私…」
男「クドい」
イケメン「クドい!?」
男「そうだ、お前はガツガツし過ぎてる。もっとお淑やかに行け、可憐な少女を演出しろ」
イケメン「それはもう君の願望なのでは…?」
男「最初からそうだろうよ! 文句言わずしてやれ、やってみせろ!」
イケメン「は、はい!」
~~~
イケメン「気持ち悪いって言われたぁー!」エーン
男「気持ちが入ってないからだ! 入り込め、役者となれ! 妲己の如く容赦ない妖艶さを醸し出せ!」
イケメン「ハイ! えっと、……うふぅ~ん…?」
男「カーッ! てめー舐めてんのかシャラップ! こうだ、こう! あっはぁ~ん!」
イケメン「ぶっ!! アッハッハッハッ! あ、ごめ…」
男「………」
イケメン「動じてない、だと……? すみません師匠! 気持ち、伝わりました!!!」
~~~
イケメン「飲み物半分ずつって、男子的に好きなのかね?」
男「天然でやってたら凶器だと思う」
イケメン「以前やってたわ俺…」
男「男だったら別に良いんじゃね、女子にやられたら意識する。……ハッ!? これはもしや!?」
イケメン「思いつきましたか師匠?!」
男「イケる…イケるぞ…童貞殺しが発動できるぞ、きっと…!」ワナワナ
イケメン「えぇ…童貞はちょっと…」
男「意識たけぇーなオイ!」
~~~
数日後
イケメン「各所で私が気が狂ったやら、頭おかしくなったやら噂されまくっている…もう散々だ…」
男「ごめん。調子に乗りすぎた…」
イケメン「いいや、良いんだ。私も、いや、俺もキミと一緒に盛り上がりすぎた、反省してる」
男「………」
イケメン「良いってば。気に悩まくても、俺がイケメンなのは変わりないのだから」ニコ
男「その不屈さは心から憧れるよ俺……」
イケメン「ふふん。それに少しだけ嬉しい展開もあったしね」
男「え?」
イケメン「隣のクラス一番のイケメンがさ、俺に話しかけてきたんだよ。以前、会話したこともなかったのに」
男(いつの間に…)
イケメン「フフ。あれは結構グイグイ来てたね、わかるわかる、イケメンアピールが伺えたもの」クスクス
男「そ、そっか。なら、結果オーライってやつか? これまた変な奴も居たもんだな」
イケメン「確かに。変人っぷりを発揮しまくってたのに、今になって話しかけてくるなんて」
男「元々お前は変人だけどな…」
イケメン「なんだとー? このこのー」グイグイ
男「……」クス
男(…おいおい、いいじゃねーか。楽しそうじゃねーか、本当に)
イケメン「あはは」
男「じゃ、俺はもう帰るわ。気をつけて帰れよ、また明日」
イケメン「あれ? 今日は一緒に帰らないのか?」
男「なーにいってんだ、お前は隣クラスのイケメンを誘って帰れよ」
イケメン「でも……」
男「失敗も多かったが、結局は上手くいった。せっかく掴んだフラグを手放してどうするよ」
イケメン「……キミが、そういうのなら」
男「おう。ちゃんとしっかり学校中の全イケメン囲ってハーレムつくってみせろよ」
イケメン「………」
イケメン「待ってくれ。その言い方、もしやもうキミとの契約も終わりってこと?」
男「そうなるな。俺が居なくても後はやれるだろ、お前ならきっとやれるって──」
ぐいっ
イケメン「──それはムリだよ、俺はキミが居ないと駄目なんだ」
男「……!」
イケメン「この先、どうすればいいのか分からないんだよ? キミと一緒なら自信が出てくる、のに」
男「な、なんだよそれ」
イケメン「もうキミなしだと無理なんだ」
男「バカ! お前気にしすぎだって、元々一人でやるつもりだったんだろう!?」
イケメン「今は不安でしょうがないです……」フルフルフル
男「メンタルどうなんってんだお前!? ったく、もう! 馬鹿か!」グイ
男「──俺と一緒に居たら! あっちが気にして告白されないかもだろ! 良いのか、それで!?」
イケメン「ソレは困る! でもキミがいなくなることはもっと困る!」
男「そう言われても俺も困るけど!?」
イケメン「…不思議だ、きみには何の興味もわかないのに、なぜか心細くなる」
イケメン「格好良くもないし、お節介焼きで、口が悪くて、友達少なくて、存在感もほとほと無い」
男「もう帰るぞッ!」
イケメン「ま、待ってくれ! …どうしてだろう、俺はキミと離れ離れになりたくない!」
男「───………」
イケメン「こんな気持ち…男のときだってなかった…」ギュッ
男(ったく、しょうがねえやつだ、まったく)
男「良いか、両耳かっぽじってよーく聞け。変態野郎」
イケメン「え…?」
男「アーハハ! このお間抜けめ! その感情、俺の作戦通りなのだよ!」バッ
イケメン「作戦通り…?」
男「苦しいか? 離れたくないか? …いいか、それが女心ってやつだ! 尊い感情ってやつだ!」
イケメン「! じゃあ俺はキミに惚れてるってことに…!?」
男「それも違う」
イケメン「違う!?」
男「お前は臆病なのだ。一人だけそんな『奇病』に罹り、誰の共感も得られないまま半月以上を過ごした!」
イケメン「…………」
男「その気持ちは『理解者』を失う恐怖だ! …けれど、これもまた恋と似ている! 女っぽさを強調させる!」
男「突き進め! その想いを胸にモテモテ女となり、その身体に宿ったもったいない精神を軸に猪突猛進しろ!」
イケメン「師匠スゲー……」キラキラ
男「あぁそうだとも俺は凄い! だから、あとは頑張れ! お前は出来る! やれきれる!」
イケメン「俺、もうモテ女になれたってことか」
イケメン「師匠スゲー……」キラキラ
男「あぁそうだとも俺は凄い! だから、あとは頑張れ! お前は出来る! やれきれる!」
イケメン「俺、もうモテ女になれたってことか…」
男「これから頑張るんだよ。お前が一人で、ちゃんとやりきるんだ」
イケメン「…ああ、そっか」ギュッ
イケメン「うん。がんばる」ニッ
男「──……」チク
男「ああ、がんばれ」ニッ
イケメン「師匠。ありがとうございました、俺、この気持を大切にします」
男「おう」
イケメン「じゃ、誘ってきます。見事誘ってみせて手中に収めてやります」
男「言葉遣いだけ気をつけろ。ガツガツ見せるな、お淑やかに」
イケメン「妲己の如き妖艶さで! では、もったいない!」バッ
男「もったいない!」バッ
ガララ パタン
男「…これでよかったんだ」
男(これまた大変な数日間だった。クラスメイトが世界でも珍しい奇病にかかって───)
『今日から女子になるけど、皆さん。どうかよろしくお願いします』ニッ
男(──久しぶりに現れた彼女は、ああなんていうか、まったく)
男「自信たっぷりで…俺はものすごく見惚れてちまったってな…」クス
ギュッ
男「さて、帰るか。いつもの日常ってやつに」
~次の日~
イケメン「やっほ。男くん」
男「……なんで普通に話しかけてくるの、お前……」
イケメン「ざっくり説明すると、フラれました! えへへー」
男「な、なんで?」
イケメン「俺が狂気じみた行動してた数日間、あの時の俺をみて、誘ってたように見えた隣クラスの男子でしたが~」
男「男子、でしたが~…?」
イケメン「別に俺に興味があるわけじゃないらしく、取り敢えず俺に話しかけてきただけらしいよ?」
男「あぁ…つまり、お前の繋がりを得て新たな女子との人間関係枠を増やそうって魂胆だったと…」
イケメン「男くん! すげー流石! その通りだったんだ!」キラキラキラ
男「…そう、残念なやつだったな、そいつも」
イケメン「そうそう」
男「でも、それがそうだったとして俺に話しかけるのは駄目だろ? 聞いてたのか、昨日の話は」
イケメン「うん。俺もそうだと思うんだけど、しかたないじゃん。相手先のことも考えたらさ」
男「相手先?」
イケメン「師匠、君は一つだけ間違ってる。隣クラスのイケメンは女子に興味あるわけじゃないよ?」
男「ええと、つまり?」
イケメン「ん」ピッ
男「……俺?」
イケメン「うん。ホモだったみたい!」ニコォー
男「………」
男「………………え?」
第一話 終
出来れば一週間に一話投下
ではではノシ
食堂
わいわい がやがや
男「もぐもぐ…」じぃー
イケメン「でさー」スタスタ
「えーうそでしょーww」スタスタ
「もうもうイケメンくんったら面白~いww」スタスタ
男(イケメンの奴の周りは華やかだな。いつも女子でいっぱいだ)モグモグ
男(仕方ないわな。顔良し、勉学スポーツ良し、)
男(…アレな性格も天然で受け取られて完璧超人、らしいし)ゴクン
スタスタ…
イケメン(女)「でも、食事管理とか超大変だよ~」
「あーわかるわかるぅww」
男(──まあ、女なんですけどね、…スカート履いてるし)モグモグ
男「……、世の中どーなるか分からんなあ」シミジミ
イケメン「あ! 男くんみっけ!」パァァア
男「よお」
イケメン「じゃ、俺が隣もーらい。えへへー、うれしい? うれしい?」シュバァ ズドォム!
男「近い近い…」グイグイ
イケメン「え~気にし過ぎだってば~これぐらい普通だよ?」キャピ☆
男「男だったときは許してやろう、冗談だったとして。でも今は違う、今のお前は女子だ」
イケメン「あ~ん冷た~い」
男「今度やったら顔面に一発な」
イケメン「女子なのに!? 今の俺は女子なのに!?」
男「そりゃだって…お前…」
男「俺で、イケメン男子落とす練習してるだろ…?」ジロ
イケメン「チッ…バレてたか…」サッ
男「……なんだ、まだ諦めてなかったのか」
イケメン「そうそう諦めないよ。たかが一人失敗しただけだしね」モグモグ
男「ふーん」モグモグ
イケメン「頑張りますとも。そ・れ・に、君の方も頑張ってもらわないと!」ビッ
男「取り敢えず口もと拭いてくれ」シュシュッ
イケメン「むぐぐ」
男「スキが多すぎる。男のときと勝手が違うって、頭ではわかってるんだろ?」
イケメン「まあ、男のときは女子に拭いてもらってたから……」
男「……」ギチギチギチ
イケメン「いっ、いひゃい!? くゅひびふゅとれひゃう!」
男「はぁ、頑張れって言われてもさ、一体なにしろっての?」
イケメン「俺が超モテモテ女になるための手助けでしょ?」キョトン
男「なんか違う! そうじゃなく、お前のもったいないを正すんだよ!」
イケメン「どちらも一緒じゃ~ん」ケラケラ
男「全然違うだろ…!」
イケメン「モテるためのアドバイス、として君の意見は貴重な参考材料として受け取る」
イケメン「これが俺にとっての利点。そして、君にとっての俺の利用価値は?」
男「…言いたいことを言う的な」
イケメン「そのとーり。ちなみにその立場、結構レアだよ?」
男「な、なんで?」
イケメン「俺、元より人の話あんまり聞かないタチだから」
男「そのデメリットあってなぜモテてたの……?」
イケメン「昔の話は興味ナシ。さて、ここからが本題だよ、男くん」ニコリン★
男「……わざわざ食堂に呼び出した理由が明かされるのかよ」
イケメン「ごめんね。ここじゃないと話せない内容だったから」
男「つまり?」
イケメン「俺さ、実は…学校内のイケメン達でハーレム作ろうと思っててさ…」ギュッ…
男「とっくに知ってるから本題を」モグモグ
イケメン「そこで改めて、学校にいるイケメンたちをピックアップしてみたのだ…」スッ…
イケメン「調べた結果、なんとトップファイブがこの食堂に揃ってます!」パァァ!
男「人の顔にランク付けとか…」
イケメン「意外と女子は影でやってるぞ☆ …その点便利だった、この身体になって」ウンウン
イケメン「女子トークって凄いね…なんかもう…なんか、もう、って感じだった…」フフフ
男「待って。俺すごく聞きたくない」
イケメン「そうは問屋がおろさない! ──では、第五位!」
男「おい!」
イケメン「…ですがー、今日は食堂に居ません」ストン
男「あ、あれ、居ない?」
イケメン「なんか別の教室をウロウロとしてるらしいよ、いつもは食堂を利用してるのに」
男「へぇー…」モグ…
イケメン「隣クラスのイケメン君」
男「ぶぅうっっ!?」
イケメン「片手に可愛らしい袋の弁当箱二つ持って、ドア付近でせわしなく室内を伺ってるらしい」
男(最近はイケメンと屋上で食ってたな…)ダラダラ
イケメン「なんでだろ? ま、続いて四位でーす」
男(これからも屋上で食べよう…)
イケメン「──生まれる時代をミスった不良くん! 波打つ天然パーマが愛しい、オラ系キャラ!」
男「え? あぁ、もしかしてアイツか…」チラ
イケメン「そう。あの窓側一角を悠々自適に使い切ってる彼だね…」ヒソヒソ
黒髪「………」ツーン
男「ガラ悪ぃよな。両足机に放り出して、ここ食堂だぞ。あんなのが四位なのか?」
イケメン「そりゃそういった印象は女子にも同じだけど…」
イケメン「だって、イケメンだもの」
男「うん、だろうと思った」コクコク
イケメン「伸び気味の前髪からチラつく狼のような眼光に痺れるらしいよ?」
男「お前もそうなの?」
イケメン「イケメンならよし」
男「ハイ、この話お終い。次だ、次」パンパン
イケメン「まだ彼の実家の話とか、なぜあの窓際を牛耳ってるのとかあるけど…」
男「個人情報ダダ漏れだな! 聞きたくねえよ! 次!」
イケメン「では第三位!」
イケメン「──年上女子生徒&先生方騒然! 元ジュニアアイドルの激マブロシアクォーターボーイ!」
男(なんかコイツ表現古いな)
イケメン「もう二次元から出てきたの? ってぐらい顔、体型、性格すべて文句なし」
イケメン「美少年という括りで生きて死んでほしいと、言わしめる超絶イケメンくんだ」
男「ふーん。まったく学校来なかった奴、アイドル止めたんだな」
イケメン「ほほぅ。男くん、何気にイケメン達に知見があるね、ウフフ」
男「一般生徒として語っただけだろ!」
イケメン「またまた~俺のために予め調べててくれたんでしょ?」ウフ
男「[ピーーー]」
イケメン「否定も笑いもなく端的に罵倒された…!」
男「はぁ、元ジュニアアイドルだっけか。俺、前に会話したことあるよ」
イケメン「へえ? どんな風に?」
男「なんだっけか、そうだ、前に調理実習で作ったクッキー持ってたらさ」
男「後ろから袖引っ張られて、振り向いたソイツがちょこんと立ってた」
イケメン「ほうほう」
男「『なんだ?』って聞いたら、『クッキー美味しそうですね』と言って」
茶髪『あなたのクッキーが一番いいにおいしてます。くれませんか』
男「──と、クッキーをねだられた」
イケメン「へぇー! 面白い、実に面白なあ。時点で先輩女子ならイチコロだろうよ」コクコク
男「でも、やらなかったわ」
イケメン「あげなかったの!?」
男「ウチに弟いるし…弟の方がかわいいし、クッキー上げたかったし…」
イケメン「恐ろしい鉄壁家族愛感性…! そ、それで? 茶髪くんはどうなったの…?」
男「え、えーと、確か表情変わらないまま真っ直ぐに見つめ返してきて、」
茶髪『お金ならもってます。僕、稼いでるので』
イケメン「買い取り根性…! 健気! そしてイミフな意地っ張り可愛さ!」
男「だったらコンビニで買えよ、と俺から去った」
イケメン「凄いなあ! まだ君のこと見くびってたかもしれない!」
男「うーん実はさ、あれからその一年に睨まれてる気がするんだよなぁ…」チ、チラ
茶髪「………」もぐもぐ
イケメン「見てないじゃないか。気のせいじゃない?」
男「そうだと思う。久しぶりの姿に目が引かれて、偶然目があっただけかもな」
イケメン「その時のことを引け目に感じすぎてるだけだって」
男「……なんか俺に対して牽制入れてないお前?」
イケメン「彼は俺のものだよ男くん?」
男「俺は男だよイケメンちゃん…?」ヒクヒクッ
イケメン「世の中どうなるかわからないからね。では、第二位だ」
男(もう帰りたい…)
イケメン「──両親金持ち、頭超良し、友達多し! Coolな態度で攻められたいナンバーワン!」
イケメン「女子たちが俄に噂する『隠れドS』ぷりがたまらんとの、その筋で御用達のイケメンくんだ」
男「隠れドSってなぁ…」チラ
金髪「アハハ!」
「だよなぁ!」
「でさァ!」
男「失礼な奴らだ、そんな噂してる女子共は」
イケメン「彼の罵倒音声はレア度が高いほど『いいね!』が多いらしい」
男「キモ!?」
男「なになになに!? そんなのが女子では人気出ちゃうの!?」
イケメン「俺もせがんで聞かせてもらった。だが、うむ、そうだね…」
イケメン「…特に何も感じなかったかな」
男「お、おう…そんなの少数だから、いちいち影響されることもないと思う…」
イケメン「うん。俺もそうおもう」ニッ
イケメン「──でも、彼は落とすよ? その隠れドSとやらも俺色に染めてやるから」キラキラキラ…
男「気持ち悪さを軽く上回っていくよな、お前」
イケメン「さて、最後に待望の一位の発表だ…」ガタ
男「誰も待ってなかったよー」オーイ
イケメン「ダァルルルルルルルルルル、ジャン!」クルクルクル…
イケメン「──もう文句なんて一つも無い、全てが完璧イケメン過ぎてひっぱりだこ!」スッ
イケメン「わたしです☆」シュッッパァアアア…
男「気づいてたよ、最初からお前のお膳立てだって」ドンヨリ
イケメン「ふふん。言わずもがな、俺がこの学校で一番のイケメンなのだよ」ニッ
男「へー、凄いね。格好いいね」モグモグ
イケメン「本当に? 格好いい? イケメンすぎて凄い?」キラキラ
男「……」
男「今は女じゃん、アンタ」
イケメン「うぐッ」ニコ
男「おー刺さるなぁ、イケメン女子なんて男子にモテないもんなあ」クックック
イケメン「言ってくれるね…ズケズケと…ただし! 君の意見は聞こう! そういう契約だ!」バッ
男「ありがとさんよ。あと、ごちそうさまでした」パン
イケメン「あ、あれ? もう食べちゃった?」
男「そりゃあんだけ長話聞かされれば」
イケメン「ごめん、俺はまだ途中までで……もぐもぐ……」ハグハグ
男「別にゆっくり食べていいぞ」
イケメン「でも昼休みが潰れてしまうし…」
男「良いって。無理して食べる飯ほど不味いもんはない、俺の信条だ」
イケメン「…あ、ありがと…」
男「どーいたしまして」
イケメン「モグモグ」
男(お上品に食べよってからに。大変だな、その身体も)
男「水いるか? 汲んできてやるけど」ガタリ
イケメン「なにからなにまで…」
男「今更に殊勝な態度をするな。企んでるかと疑っちまうぞ」ヒョイ
イケメン「…君は素直な人間じゃないね、本当に」
男「ひねくれ者なのはお互い様だろうが」スタスタ
イケメン「…クス」
がやがや わいわい
男(アイツがハーレムを作りたい、なんにせよ、俺が出来ることは限られてる)
男(そも付き合う義理はない。けど、関わっちまったならやるべきことはやる)
男(……気になるのは、男子と付き合う気が本気かって部分だなぁ)チラ
イケメン「───」
金髪「───」
男(ん…? 金髪、くん、だっけか…?)じぃー
スタスタ
男「ほら、汲んできてやったぞ」コト
イケメン「あ。さんきゅー」コクコク
金髪「……」ジィー
男「………。どうも」ペコ
金髪「コイツ誰?」ピッ
イケメン「同じクラスの男子。最近、仲良くなったんだよね」ニコニコ
金髪「へ~~…」じぃー
男「ああ、まあ、えっと、喋るのは初めてだっけ?」ストン
金髪「別に、体育の授業で会話ぐらいあるんじゃないの?」
男「ああ。そうかもな」
金髪「……」じぃー
男「……なに?」
金髪「気になるから訊くけどさ」
金髪「アンタ、もしかしてコイツと付き合ってんの?」ビシッ
イケメン「ほえ?」
シィーン
金髪「……マジで?」
男「勘違するなって、付き合ってない。最近仲良くなっただけだっつの」
金髪「一緒に昼飯を食べる仲にまで?」
男「一緒に飯を食べる仲まで」
金髪「たった数日で?」
男「なにか問題でも?」
金髪「なにか目的でもなきゃ仲良くならんでしょ。だって、この人間、ビョーキじゃん」ニコニコ
男「…………」
男(どうしよう)
金髪「まあ、そーいうシュミの人なら納得できるから、ヘンタイ的な意味でさ」ニッ
金髪「どうなの? やっぱ構造的に気になってる感じ?」
男(ああ、どうしよう。出会って間もないけど、どうしよう)
おもいっきし殴ってやろうか、第二位と呼ばれるそのイケメン顔を。
俺のことをどうのこうの言う性格はいいとしても。
男(本人を目の前に、ズケズケというコイツにどう処理したらいい)チラ
金髪「どうしたの? 急に黙っちゃってさ、もしや怒ってんの?」
男「…別に、アンタ性格悪いなって思ってた」
金髪「アハハー! ね、俺もそう思うわ。で、どうなの?」
金髪「──コイツの身体、狙ってんだろ?」ニコ
男「…お前…」
金髪「んー?」
イケメン「…っ……っ……っ…っ」キラキラキラ
男「なんで、お前はわくわくしてるの?」
イケメン「だって、だって、いい感じに! 俺を二人して取り合ってる雰囲気で!」ワクワク
男「ハァッ!? お前はあれだけのこと言われておいて…!?」
イケメン「あれだけのこと?」キョトン
男「なにも、感じてないの?」
イケメン「別に?? え、なにかすごいこと言ったっけ君?」
金髪「………………………」
男「身体、のこととか。病気のこと、とか、他にもズケズケと言われて…」
イケメン「以前から結構ズケズケと言われてたし、特に今更って感じで…」
男「えぇ…」
ダァンッ!
男「ひっ!」ビクッ
金髪「───から…なんだよ…ェなんて…」ボソボソ
男「え…え、なに、なんだって…?」ドキドキ
金髪「だから嫌いなんだよ! テメーのことがずっとなッ……!」ギッ
イケメン「またまた~そういいつつ何時も話しかけるじゃん」ツンツン
金髪「うるさい…気安く触るんじゃねェ…!」バシッ
イケメン「いたぁ~い…男子は女子に優しくするものだヨ?」キュルルン☆
金髪「中身まんま男のままだろーが、なーんにも変わってねーの知ってんだよ!」ムンズッ
イケメン「やだなあ、俺が未だにイケメンなのが気に入らないのかい?」ニッコリ
金髪「そういう話じゃねえんだよ……ッ」ギリリッ
男(…なんだか、色々と分かった気がする)
金髪「ギャーギャー!」
イケメン「ワーワー!」
男(元から仲がすごい悪いんだな…男だったときから、今も変わらず…)
金髪「もういい、話しかけて損したわ!」
イケメン「損って…酷いよ、金髪君」ウルウル
金髪「気持ちワリィ目で見んな。ったく、なんだよ、珍しく男連れてると思ったから…」ギロ
男「………」ビク
金髪「この天然野郎が女心にも目覚めたか、なんて茶化そうと思えば…チッ…」
男(何が貴重だよ…コイツ、元からメチャクチャ口悪いじゃん…)ダラダラ
イケメン「もしかして、嫉妬してたの?」
金髪「……頭ん中、脳みそ入ってのか……?」
イケメン「もちろん。この前の中間テスト、おしかったね」ニコニコ
金髪「………」ヒクッ
イケメン「教師に聞いたけどニアミスが多いみたいで、最後に見直したほうがいいってアドバイスを…」
男「待て。俺でも知ってる、この人毎年二位だったけど、お前一位だったな!」グイ
イケメン「そうだよ?」
金髪「…………」ブルブル
男「余計なこというな! 煽りにしか聞こえん…!」
イケメン「え~? でも、金髪くんがせっかちだから彼女とも別れるって女友達も…」オロオロ
男「ばっ、言うなよ! 本当だったとしても──」チラ
金髪「……」ズーン
男「本当のこと、だったん、ですね……」
金髪「──あほらし、もう帰る」クル
イケメン「あ…! 待ってよ金髪君!」
金髪「………」ピタ
イケメン「待ってくれ。久しぶりの会話なんだ。もうちょっと話そうよ」パチンパチン☆
男(ウィンク…そ、そうか…ハーレムのためにもチャンスをつかもうと…)
金髪「………」ズモモモモモモモオモ
男(でもタイミングってモンがあると思う!!)
金髪「久しぶりに、会話……?」
イケメン「うんうん。だってさ、最近は話しかけてくれないじゃないか、だから」
金髪「当たり前だろ。気持ち悪いのに」
イケメン「え…?」
金髪「アンタ今、どんな気分?」ニコ
イケメン「……」
金髪「そろそろ自分の立場ってモンが頭が理解し始めてたんだろ?」スッ
金髪「すでにもう普通の人間じゃない。そう、アンタは紛い物なんだよ」クイ
イケメン「………」
金髪「かわいそうに。本当は何処かで皆、お前とは一歩引いて話してるんだ」
金髪「──俺は正直に言うよ、アンタのこと気持ち悪いから話しかけるなって」
トンッ スタスタ…
イケメン「…ぁ…」
金髪「二度と話しかけないでくれる? じゃ、そーいうことで」
イケメン「………」
男「おい、大丈夫か?」
イケメン「うん。平気、そっか。…気持ち悪いんだね、俺のことって」
男「あんな奴の言葉、真に受けるなって」
イケメン「ううん。仕方ないよ、そう思う人は居るのは事実だ。彼に限った話じゃない」
イケメン「大丈夫。気にしてくれて、ありがとう男くん」ニコ
男(……。気にしないでいい。なんて言うだけなら簡単だろう)
男(でも、コイツはそういう日常で生きなきゃ駄目なんだ。覚悟した上で、学校に戻ってきたんだ)
男(怖かったろうに、辛かったろうに、けれど、あの日は笑って彼女は現れた)
男「……」クル
イケメン「男くん…?」
男「おい。金髪」
金髪「…なに?」チラ
男「──アンタ、間違った選択をしたぞ」
金髪「は? 何言ってんの、選択…?」
男「知らなかったのか? 付き合い少ない俺でもわかったぞ、いいか」
男「──あんな風にズケズケと言ったら、イケメンのやつは逆にどうなる?」
金髪「………………」
『わー、ありがとう。今で誰も言ってくれなかったから、やっと気づけたよ!』
『本当に? 実は間違ってると思ってたんだ、感謝感激~☆』
『…ね、実は君の彼女に告白されたんだけど…恋愛相談、乗ろっか?』
『勉強? うん、だいたい教科書を読めば応用もそれとなーくわかるけど…?』
金髪「…吐き気がしてきた…」ウッ
男「だろう。だからお前は間違った、暴言でなく優しくすればアイツは離れていく」
金髪「んなわけ…」
男「ある」
金髪「……。えらく自信アリげだね、キミ」
男「そうなる。まだわからんが、少なくとも今まで通り接するのは得策じゃない」
男「──アイツは近いうちに変わるんだ。それだけは約束してやる、ゼッタイだ」
金髪「……」
金髪「キミがもしかして、なにかアイツにするワケ?」
男「さあな。そこまでいう義理はない、けれど…」
男「…お前がイケメンに優しくすれば、後はどうにかなるぞ」
金髪「……」ジッ
男「……」
金髪「意味が、わからないけど。まあ、別に付きまとわれるよりマシか」
金髪「けれど不思議だね、キミ。どうしてそこまでアイツの肩をもつの?」
男「…それは」
金髪「好きなワケ?」
男「まったく」
金髪「クッ、即答か。…あんなこと言ったけど、特になにも思わないよコッチは?」
男「そういって影で馬鹿にするんだろ?」
金髪「ご名答。変態共は仲良く奇異な目で見られて端っこに追いやられるのが定めだよ」
男「ご心配どーも」
金髪「……あと一つだけ言わせてくれる?」ニコ
男「なんだよ」
金髪「それ。【かわいそう】ってだけで動いてるなら、いますぐ止めたほうがいいよ」
男「……」
金髪「じゃ、そーいうことで。──イケメン、それじゃまた」フリフリ
イケメン「!」ふりふり
スタスタスタ
男(…いやなところ突いてきやがる。性格悪し、流石は第二位ってことか)
イケメン「最後に手を降ってくれたけど、男くん彼に何を言ったの?」
男「別に」
イケメン「…びっくりした、喧嘩、するのかと思ったから」チ、チラ
男「なんで喧嘩しなきゃならんのだ…」
イケメン「だ、だって…」
男「気にしすぎだって。お前はそんな程度で弱る人間じゃない、俺でも知ってるぞ」
イケメン「………」
男「ハーレム、作るんだろ。こんなところでへこたれるんじゃねーっつの」トン
イケメン「──うん! そうだね!」ニッ
男「…おう」
金髪「……」チラ
イケメン「──うん! そうだね!」
男「…おう」テレ
金髪(ありゃどう見ても好きなのバレバレなんだけどな)じぃー
「どったのよきんちゃん?」
「いきなりイケメンの所向かってさ」
金髪「別にぃ。久しぶりにビョーキ人間に挨拶しにいっただけ」ストン
「だぁー! きんちゃん口悪すぎぃ! 女子共に嫌われちまうぜ?」
金髪「そう簡単に嫌われねーよ。お前じゃあるまいし」チュルル
「ソウデスネ…」
「でもさ、いいよな、うん、顔はキレーだし? スタイルもいいし?」
「お! そうそう! ぶっちゃけ狙い的にどーよ?」
金髪「無いわ」
「きんちゃん面食いじゃん」
金髪「元男だぞ。ねーよ、バカタレ」スッ
「…最近彼女と別れたからってツメタイヨネー?」
「ネー?」
金髪「…………」スタスタスタ
「あ! ちょっとまってよきんちゃん!」
金髪(どいつもこいつも、ガキみたいに五月蝿えな、まったく)チラ
金髪(──じゃあ見させてもらおうじゃん、男くんよ)
金髪(自信たっぷりに言った、別にイケメンってやつ。期待してて待っててやる)
金髪「…そしたら、まあ、別に」
「え?」
「なんだって?」
金髪「…んでもねーよ」フン
第二話 終
また来週にノシ
このSSまとめへのコメント
自分的に面白いです
頑張ってください