サンタ狩り兵「クソッ・・なんで・・なんでこんな事に・・」 (169)


目の前に広がる血の海。

硝煙と何か肉が焦げる臭いに気が狂いそうになる・・。

俺の腕にはさっきまで笑っていた・・恋人の亡骸・・。

そして目の前にはヨダレを垂らす餓えたトナカイ・・。

サンタ狩り兵「クソッ・・なんで・・なんでこんな事に・・。」



今思えばベテラン兵さんの言うことが正しかったんだ・・。

あの時撤退していれば・・・

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サンタ狩りの癖になんで恋人いるんだよクソが

サンタ狩り兵「函館支部を放棄!?北海道を見捨てるんですか!?」

ベテラン兵「敵の戦力が知れた今。我々が犬死にしない為には本部との合同作戦が必須だ。理解しろ。」

サンタ狩り兵「しかし・・!?北海道にも童貞はまだ沢山いるんですよ!!」

ベテラン兵「サンタ狩り兵・・大義を見失うな。勝利すればいずれ取り返せる・・。」

サンタ狩り兵「クッ・・目の前の童貞さえ救えずに何が兵ですか!!」

ベテラン兵「上の命令に従う事が兵の本分だ。話は以上だ・・下がって武器の手入れをしろ。」

サンタ狩り兵「クソッ・・!」ガンッ

>>2
その辺の矛盾も読んでれば分かる。
俺も今年は寒い冬ななりそうなんだ・・。
書かせてくれ。

サンタ狩り兵(敵の戦力が知れた途端尻尾を巻いて逃げろだと!?とんだ腰抜け上層部め!!)

上官に対する態度でない事は分かっていた・・。
無礼も百も承知だ・・しかし俺には分からなかった。戦わず敵の戦力が強大というだけで逃げ出すという選択肢を取るという本部の選択が・・理解出来なかった・・

サンタ狩り兵(戦術やチームワークはなんの為にある・・。数比べではないんだぞっ!)

ガンッ!

またしても壁に当たる。
グローブから血が滲んだ・・。

女サンタ狩り兵「荒れてるわねー」

突然女に声を掛けられ驚きと女性に対する免疫の無さで気が動転する。

サンタ狩り兵「!?・・おい!ここは女子禁制の神聖なサンタ狩り支部だ!そ・・即刻立ち去れ!」

女サンタ狩り兵「あれ?真面目そうに見えて意外と情弱?今年から女子の出撃も認可されたんだよ?」

そういえば先月その告知があった。
女子など足手まといという兵もいたが戦力は一人でも多い方がいい。と俺は思っていた。

サンタ狩り兵「あっ・・そうだったな・・。すまない・・気が荒れていたので・・つい。」

女サンタ狩り兵「いいっていいって!気にしないで!君みたいな反応する人他にもいっぱいいたから!まぁ、でも今年は戦友として頑張ろう!」

サンタ狩り兵「あ・・あぁ。」

俺の返事を聞いて彼女はとびきりの笑顔を見せた。

お世辞にも美人とは言えないが
そばかすのあるその顔には笑顔が似合うなと思った。

女サンタ狩り兵「でも君みたいないい男がサンタ狩りなんて・・意外だね・・?なんで?」

俺の顔を覗き込むようにして彼女はそんな質問をぶつけてきた。

サンタ狩り兵「別に人の幸せが妬ましくてサンタ狩り兵に志願した訳じゃない・・」

俺はなんでも悟られてしまいそうな大きな瞳から視線を逃し濁った返事で逃げた。

女サンタ狩り兵「そうなんだ?私はそうだよ・・私はね・・クリスマスが憎くて憎くて・・仕方ないの・・」

さっきまでの眩しい笑顔とはまるで逆の・・狂気に満ちた目に戸惑う俺。
しかしその様子に気づいてか彼女はハッとして頭を掻きながらいたずらっぽく子供のように笑って見せた。

サンタ狩り兵「あぁ・・そ・・そうだ。良かったらコーヒーでもどうだ?さっきの詫びだ。奢らせてくれ。」

女サンタ狩り兵「えっ?いいんですか♪わーい!あたし暖かいカフェオレがいいです♪」

サンタ狩り兵「じゃ休憩室に行こうか。」

女サンタ狩り兵「はぁい♪」

さっきまでの表情が見間違いかと思う程、彼女は晴れやかに笑うのだった。

休憩室までは十分ほど歩く。
金持ちイケメン至上主義のこの世には童貞が溢れ返り年々サンタ狩り兵志願者が増えている。
最北端の支部とは言え最前線のここはかなり広大な基地だ。

女サンタ狩り兵「なんだか早速お兄ちゃんが出来たみたいで嬉しいな!」

サンタ狩り兵「兄弟はいないのか?」

兄弟という言葉に彼女はピクリと反応した。

女サンタ狩り兵「いるよ・・ううん。『いた』よ?」

サンタ狩り兵「『いた』?」

まずいと思った。地雷を踏んだか?

サンタ狩り兵「あ・・いや言いたくないならいいんだ・・。気にしないでくれ。」

女サンタ狩り兵「ううん。いいの・・。っていうかこれから一人言うから・・うるさくなかったら聞いてて?」

サンタ狩り兵「・・・。」

女サンタ狩り兵「私ね・・施設育ちなんだ・・気付いた時には施設にいてみんなと暮らしてた・・。すんごいオンボロ施設でね・・今みたいな寒い夜でも暖房器具なんてなくてみんなでくっついて暖を取ってたの・・。でもそれが普通だと思ってたから苦だなんて思った事無かった。」

サンタ狩り兵「・・・。」

女サンタ狩り兵「そんなある日ね。すごい暖かそうな毛皮を来たおじさんが施設に来てね。私の手を取って言ったのよ。『おじさんの子供にならないか?』って・・。」

サンタ狩り兵「・・・。」

女サンタ狩り兵「もちろん喜んだわ。私には兄弟と先生はいるけど『家族』がいなかったから、不慮の事故とかで途中から施設に来た子達の話を聞く限り『家族』ってとても暖かくて・・いたらとても嬉しいものだって思ってたから。」

サンタ狩り兵「・・・。」

女サンタ狩り兵「おじさんはすごく裕福な資産家の方でね。すんごい豪邸に住んでたの。『今日からここが君の家だよ』っていわれた時には夢なんじゃないかって思ったわ。」

サンタ狩り兵「・・・。」

女サンタ狩り兵「でもおじさんと三つ約束をしたの。
ひとつめ・「おじさんの事は何があってもお父さんと呼ぶ事」

ふたつめ・「絶対に一人で屋敷の外を出歩かない事」

みっつめ・「もしもおじさんに何かあったとして私に何か権利が生じた場合。どんな目にあってもそれを放棄しない事」




女サンタ狩り兵「そんなの簡単よ!お父さん!って私は言ったわ。おじさんはその時すごく嬉しそうにそしてとても悲しそうな目で笑ったわ」

彼女は淡々と話していた。

女サンタ狩り兵「一年経ったある日ね・・。そのお屋敷でクリスマスパーティーが開かれたの。」

クリスマスというワードに俺も思わす反応してしまう。
憎しみ・怒り・悔しさ・・・色々な感情が入り交じりながらも俺は黙って話を聞いていた。

女サンタ狩り兵「真っ赤なドレスをね・・着たの・・ドレスなんて初めて来たから恥ずかしくて人前に出たがらなかった私に『なんて美しいんだ・・!さすがわが娘だ!』と言って褒めてくれたわ。」

女サンタ狩り兵「その途端に誇らしく感じておじさまの手を引いて広間に行ったわ。単純よね。ふふっ・・着いた豪邸の広間は楽園だった。チョコレートの滝にフルーツの山・・まるでおとぎの国だったわ」



サンタ狩り兵「・・・。」


女サンタ狩り兵「みんなで歌を歌ったり、プレゼントを空けたり今まで生きて来た全部のワクワクやドキドキが一辺に来たような日だったわ。」


サンタ狩り兵「まだ遊び足りないとごねる私を優しく抱き抱えておじさんは言ったわ『そろそろ寝ないとダメだ。夜更かしをする悪い子にはサンタさんは来てくれないよ?』と言われたわ。私は施設ではサンタさんはみんなにクッキーをくれる優しいおじさん!このお家にも来るの! ?って聞いたわ。『あぁもちろんだ。こんなに可愛くていい子がいるんだからな。』と私の頭をくしゃって撫でてくれた。」

彼女は口調こそはっきりしている物の目はどこか遠くを見るような瞳で私に問うた。

女サンタ狩り兵「ここまでは素敵な話だと思わない?でもここから胸くそ悪いけど聞く?」

俺は続けて構わないという意味を込めて答える。

サンタ狩り兵「一人言じゃなかったのか?」

彼女はふふっ。と笑うと『ひとりごと』を続けた。

女サンタ狩り兵「朝起きるとね・・大きな赤い靴下があったの。サンタさんが来てくれたんだ!ってはしゃいでその靴下に近づくとなんとその靴下動いたのよ?」

サンタ狩り兵「靴下が?」

女サンタ狩り兵「そう!中身はなんと可愛い子犬でね!あまりの可愛さに目眩がしたわ。」

サンタ狩り兵「・・・。」

女サンタ狩り兵「私は子犬を抱えてすぐにおじさんの所に走ったわ。『サンタさんが来たよ!おじさん!プレゼントは可愛いワンちゃんだったよ!見て!』ってね!寝室を空けた瞬間・・おじさんは・・おじさんは・・首から沢山の血を流して死んでいたわ。恰幅のいいおじさんの服は血で真っ赤に濡れて・・まるで絵本で見たサンタのようだった・・。」

サンタ狩り兵「・・・っ」

女サンタ狩り兵「呆然とする私は何が起きたか分からなかった・・。後から分かった事はおじさんは他殺。何者かに首を刺されて即死だったそうよ。」

女サンタ狩り兵「そして葬儀の日。メイドに真っ黒な服を着せられたけどおじさんの家族の列には並ばせて貰えなかったの・・。でね・・その葬儀で読み上げられた遺言は「遺産の全てを私に譲る」というものだったの。」

サンタ狩り兵「・・・。」

女サンタ狩り兵「葬儀会場の視線が一斉に集まったのが怖くてその場から逃げたしそうになったわ・・。でもおじさんとの約束を思い出したの。さっき話したみっつめ。」

サンタ狩り兵「権利を放棄しない・・か・・。」

女サンタ狩り兵「そう。会場あと一歩の所で留まって・・みんなが注目する中言ったわ。『父の死と父の意思を受け入れます・・。』って。その時のおばさまの顔の顔が忘れられない・・殺意に満ちた・・恐ろしい顔だった・・。」

女サンタ狩り兵「その日から私の生活は一変したわ。まずずっと使ってた私の部屋には鍵が掛けられて私の部屋は地下のごみ捨て場になった。私と話したメイドはクビになるからみんな私の事は無視・・もちろん食事は抜き・・たまにメイド長が内緒で持ってきてくれるパンの耳や野菜クズや残飯を子犬と分けて食べたわ。一日中ごみ捨て場に閉じ籠めて外出も許されない・・。でも寂しくなんてなかった。サンタさんのくれた子犬が一緒にいてくれたから」

サンタ狩り兵「・・・っ。」

女サンタ狩り兵「ある日抜け穴を見つけてね。私の子犬がその抜け穴から出ていってしまったの・・一人があんなに心細いと思った事は無かった・・恐怖と空腹で闇に飲み込まれてしまいそうになった時・・抜け穴から子犬が帰った来たの!口にソーセージを加えて!二人で夢中で食べたわ。所々土が付いてたけどお構い無しでね。」

サンタ狩り兵「・・・っ」

女サンタ狩り兵「でもすごい勢いでドアが開いておば様が鬼のような顔で立っていたの。『厨房から食材を盗んだのはその犬ねっ!?』と言って子犬を取り上げようとして来たわ。」

サンタ狩り兵「・・・っ。」

女サンタ狩り兵「牙を向いて抵抗する犬におば様はごみ捨て場にあったシャベルを掴んで子犬を殴ろうとしたの・・私は子犬に覆い被さって懇願したわ。『この子は悪くないの!私が悪いの!お腹を減らしてしまってたから!だからこの子はぶたないで!』ってね。おば様は構わず私ごとシャベルで殴り付けたわ・・。」

サンタ狩り兵「なんて事を・・。」

女サンタ狩り兵「ひとしきり殴った後おば様は疲れたのかシャベルを私に叩きつけてごみ捨て場を出ていったわ。私はもう動けないぐらい痛かったんだけど子犬と寄り添って眠った。眠気だけが背中の耐え難い激痛を和らげてくれたの。」

女サンタ狩り兵「次の日ね・・子犬がまた穴から出ていこうとしたの・・。私はおば様に捕まったら殺されちゃうと思って必死に止めたわ。そしたら突然ドアが開いて・・またおば様が立ってたの。でも今度は香水のいい香りをさせて猫なで声声で私に言ったわ。」

『女ちゃん?この間はごめんなさいね?私どうしても盗みが許せなくって。だって人の物を取ったらダメでしょう?』

って

女サンタ狩り兵「私は怖くて子犬を抱き締めて肯定する事しか出来なかった。おば様は続けて言ったわ。」

『屋敷の連中ったら女ちゃんをこんな所に閉じ込めるなんてなんて意地悪なのかしら。ねぇ?私だったら助けてあげられるんだけど・・?』

女サンタ狩り兵「バカな私はこの人は味方なんだ!と思ったわ。そして助けて下さい!お願いします!とまた懇願したの。するとチッチッチと下を鳴らしておば様は言ったわ『助けてあげたいんだけどそれじゃ屋敷の業付く張り共は納得しない。この紙にサインとちょっとの血印を押すだけていいんだけど・・』って言ったわ。その紙なんて書いてあったと思う?」

『全ての遺産相続の権利を放棄します。』

女サンタ狩り兵「って書いてあったの。」

サンタ狩り兵「そうだろうと思ったよ・・。」

女サンタ狩り兵「ね?私は断ったわ・・お父さんとの約束だからって。そしたらおば様の顔がまた殺意に満ちた魔女のような顔になってね?『何がお父様よ?捨て子の分際で・・!一年後の生存確認まであんたをいかしてやらないと遺産ごと国に譲渡するっていうから生かしてやってるのに!そんなに金がほしいのかい!?捨て子の分際で!捨て子!捨て子!捨て子!』と吐き散らしてごみ捨て場を出ていったわ。」

女サンタ狩り兵「何日かしておば様はまた、猫撫で声で来たり、怒鳴り散らしながら入ってきたり、その度私は『お父様との約束』と言ってきたけど・・どんなに眠くても少し物音がするだけでおば様が来たんじゃないかって恐怖で眠れない日が続いたわ。」

女サンタ狩り兵「そしてある日ごみ捨て場に残飯すら捨てられなくなるの・・。空腹で死にそうになりながらも子犬とわずかに雨の日に抜け穴から流れてくる水を舐め合って暮らしたわ。そんなある日メイド長がご飯を持ってきてくれたわ。『今日はお誕生日でございましょう?お嬢様。こんな物しかご用意できずに申し訳ございません。何分警備が厳重でして・・』と申し訳なさそうにコッペパンを持ってきてくれて・・しかも4つもよ!子犬と二人で分け合っても二つも食べれる!私達はあっという間に食べたわ。でも私はひとつで良かった・・子犬ちゃんにお腹いっぱいになってほしかったの。」


サンタ狩り兵「・・・。」
俺は涙をこらえて黙って聞いた。

女サンタ狩り兵「メイド長さんが『今日は奥方様は外出中で御座います。ゆっくりおやすみ下さい。ではそろそろ・・』と言ってメイド長さんはいってしまったわ。私はそれを聞いたら久しぶりのまともなご飯とおば様がいないという安心からか眠ってしまったの。」

サンタ狩り兵「む・・昔話とは言え。よかった・・一日でも安心して眠れる日があって・・。」

女サンタ狩り兵「そうね。でもその後・・子犬ちゃんの泣き叫ぶ声で目を醒ましたわ。そしておば様の怒号が聞こえて来たの。『この泥棒犬っ!またごみ部屋から抜け出して!この!畜生!汚らわしい!!』抜け穴から外は見えないけどバシッ!ボキッ!という音と子犬の鳴き声抱けが聴こえたわ。私は声の限り叫んだわ。「誰か!!誰かおば様を止めて!子犬ちゃんが!サンタさんがくれた子犬ちゃんが死んじゃう!誰か!!メイド長さん!!コックさん!!誰でもいいから!助けて!!」ってね。」

俺は想像を絶する地獄を見てきた彼女の体験を
生唾を飲み込みながら黙って聞いていた。


女サンタ狩り兵「もう喉が切れてしまって声が出なくて啜り泣く事しか出来なくなった時・・ドアが開いてボロボロの子犬ちゃんをゴミを捨てるように私に投げつけておば様は言ったわ『貴方が遺産放棄の契約書にサインをすればそのケダモノもこんなにならずにすんだのにっ!』ってね。でも私は目の前に放り投げられた子犬ちゃんの体を抱き締めて泣く事しか出来なかった。」

俺はもはや涙を流して聞いていたが
まだ希望があった。
それは『この子がここにいる』という事実である。

このままこの子が死んでしまうなら俺はサンタよら先に神を恨むが、この子は現実今こうして生きている。それだけがハッピーエンドの希望だった・・。

女サンタ狩り兵「私は考えたわ。何故こんな事になってしまったのか・・。」

サンタ狩り兵「・・・。」

女サンタ狩り兵「私が導きだした答え・・それはね


『クリスマスのせいなんだ。』


という答えよ。」

女サンタ狩り兵「クリスマスが来なければ子犬ちゃんが私と一緒に過ごす事も無かった。クリスマスが来なければおじさんが死ぬ事も無かった・・クリスマスが来なければ・・クリスマスが来なければ・・クリスマスが来なければッ!!」

突然発狂したように自らの頭をかきむしり出す彼女・・。

サンタ狩り兵「よせっ!!もういいっ!!もうやめろっ!!」

俺は彼女を対人格闘で取り押さえた。
すると突然虚ろな目で「子犬ちゃんゴメンナサイおじさんゴメンナサイ」と繰り返す彼女を休憩室のベンチに座らせ落ち着かせた。


あぁそうなんだ。こいつもクリスマスに全てを狂わされた人間なんだ・・と悟った。

泣き疲れて休憩室のベンチで寝てしまった彼女はしばらくして目を醒ました。

女サンタ狩り兵「あ・・私・・また・・。なんかごめんなさい・・。」

サンタ狩り兵「いいんだ・・。でも最後に聞かせてくれないか・・君がどうやってその屋敷を抜け出したか。どうしても聞きたい。その地獄から抜け出した結末を・・。」

女サンタ狩り兵「聞きたい?」

サンタ狩り兵「あぁ・・。聞かせてくれ。」

俺はどうしてもハッピーエンドが良かった。
何故なら余りにも報われないからだ。

女サンタ狩り兵「クリスマスの日生存確認の人達が来たわ。その時一年ぶりに外に出されたの。綺麗なフワフワの白いドレスを着せられて・・おば様は言ったわ『余計な事を一言でも言おう物ならメイド長を想像を絶する殺 し方で始末してあげるからそのつもりでいなさい。』と。」

サンタ狩り兵「なんて女だ・・そこまでして金が欲しいのかっ・・!」

怒りの込み上げる気持ちを押さえて続きを促した

サンタ狩り兵「それでっ!?それでどうした!?」

女サンタ狩り兵「私は放心を装って言ったわ『もう遺産なんてどうでもいい』って。するとおば様は今まで見せた事ないような笑顔を見せて『あぁ私の愛しい娘!』って言って抱き締めて来たのよ。あまりの怒りに隠していた子犬ちゃんの骨でおば様の首を突き刺したわ。」

女サンタ狩り兵「それからはよく覚えていない。夢中で逃げた。クリスマスのイルミネーションの中を忌々しいおば様の返り血で染まった真っ赤なドレスを着てね。気付いたらここにいたの・・。ここで訓練を受けて立派なサンタ狩りの兵士になる為に血のにじむような努力をしたつもりよ・・。」

サンタ狩り兵「そうか・・そうだったのか・・。」

女サンタ狩り兵「結果おじさんとの約束は守らなかったけど刺し違えてでもサンタを狩ってせみる・・。そしてクリスマスを中止する事が・・それが幼かった頃の私への・・そして無惨な死に方をした子犬ちゃんへの罪滅ぼしよ・・。」

サンタ狩り兵「あぁ・・師走の日本を・・これ以上あついらの好き勝手にはさせないっ!」





サンタへの憎しみとサンタ狩りの誓いも新たにした二人だった。

それから俺と彼女はいつも一緒だった・・。

しかし恋仲にはならなかった。

サンタ狩り兵の大前提として
「恋人いない歴=年齢」である事が掲げられていたからである。

血の滲むようなと自分で言うだけあって彼女の狙撃・格闘術・戦術知識はかなりの物だった。

そして11月25日・・

その日はやって来た・・。

突如警報が鳴り響く・・

マッカナオハナノ?トナカイサンハ?♪

サンタ狩り兵「敵襲!?バカな!まだ十一月だぞ!!」

ベテラン兵「慌てるな・・まずは事実確認からだ。管制塔!管制塔応答せよ!今の警報は誤報か!繰り返す!管制塔聞こえるか!今の警報は誤報か!?」

管制塔「誤報に非ず!総員第一種戦闘配置!!現在北方領土の遥か上空を滑空中!!まっすぐこちらへ向かって来る模様!繰り返す!!総員第一種戦闘配置っ!現在敵機は北方領土の遥か上空をまっすぐこちらへ滑空中!!なお敵機は『慌てん坊改』の模様!信じられん!音速を越えているだと!?」





ベテラン兵「敵は一機か・・・。しかし『慌てん坊改』とは短期決戦に持ち込むつもりか・・・。」

サンタ狩り兵「迎え撃とうッ!ベテラン兵さんッ!こっちには秘密兵器『アイタタドンドンmark2』があるッ!!」

ベテラン兵「早まるなッ!まずは・・・撤退だ・・・ッ。青森支部と合流ののち・・」
サンタ狩り兵「ふざけるなッ!!!あんたの臆病作戦なんかに付き合ってられるかッ!俺は打って出るぞッ!!!」

モブ兵A「お・・・俺だって・・ッ!相討ちになってもかまうもんかッ!」

モブ兵B「やってやるッ!やってやるぞッ!!」

全員「うおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」



ベテラン兵「ふぅ・・・」スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・

ベテラン兵「こんのぉぉ・・・・・馬鹿モノ共がァァ!!!!!!!!!!!!!!」ビリビリビリビリ・・・ッ


ベテラン兵「貴様・・・臆病と言ったな・・・。あぁ怖い・・怖くて仕方ない・・・。ただしサンタじゃない・・若いお前達を失うのがだ・・。お前らはサンタの恐ろしさを知らない・・・。俺のいう通りにするんだ・・・。頼む・・・老いた老兵の後生の頼みだ・・・。頼む・・・。」

全員「・・・・・・・。」

モブA「・・・」ガチャ・・カチャカチャ・・・

モブB「・・・。」ガチャ・・・

サンタ狩り兵「お・・・おいみんな・・・」

モブC「ほら・・・撤退準備だ・・・。」ポン・・・

サンタ狩り兵「嘘だろ・・?本当に逃げ出すのかよ・・・。」

管制塔「非常警戒態勢ッ!!非常警戒態勢ッ!!サンタが日本の領域内に侵入!!繰り返すッ!サンタが日本の・・・うわっ!うわぁぁぁぁああああああああああ・・・・!!!」ザーザーザーザー

サンタ狩り兵「ほらもう!来ちまってるんだ!やるしかねぇんだ!やるし」バチッ

ベテラン兵「悪く思うな・・・。」

女サンタ狩り兵「ッ!?」

ベテラン兵「お前・・・こいつと仲がよかったな・・・運んでやれ・・・。」

女サンタ狩り兵「りょ・・・了解しました・・。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

モブ兵A「ベテラン兵殿っ!撤退準備完了しました!」

ベテラン兵「よし・・お前らだけで・・先に行け・・・。」

モブ兵B「そんなベテラン兵さんは!?」

ベテラン兵「俺は・・・ここで奴の足止めをする・・・。」

モブ兵A「そんなあんたまさか・・・死ぬ気じゃ・・・」

ベテラン兵「バカモン。これでも最前線のエースパイロットだぞ。まぁ昔の話だがな・・・。」

サンタ狩り兵「ま・・・まて・・・。」

ベテラン兵「ッ!?」

サンタ狩り兵「ふ・・・ふざけんじゃ・・・ねぇ・・・。てめぇ・・一人で死にに行くなんて・・・俺は許さねぇ・・・。許さねぇぞ・・・。」フラフラ・・

ベテラン兵「貴様・・・もう目を覚ましたのか・・・。」

サンタ狩り兵「俺も・・出擊させ!?」バチッ

サンタ狩り兵「お・・・お前・・な・・にしやが・・・る・・」

女サンタ狩り兵「・・・ごめん・・・。」

ベテラン兵「恩に着る・・・。」

女サンタ狩り兵「ベテラン兵さん・・・」

ベテラン兵「なんだ?」

女サンタ狩り兵「どうか・・・ご無事で・・・。」

ベテラン兵「・・・。」b



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ベテラン兵「お前に乗るのは初めてか・・単機駆けなんぞに付き合わせて悪いな・・・。」ピロンピッピッキュィィィィィィン

熟年オペレーター「システムオールグリーン『アイタタドンドン改』出擊準備完了じゃ!」

ベテラン兵「あんたも悪いな・・付き合わせちまって。」

熟年オペレーター「何言ってんだぃ!あんたの出擊を送り出すのが俺の使命だ。そしてあんたの機体を一番に迎えるのもな・・。絶対に無事で帰ってこいよ・・・。」

ベテラン兵「へっ・・約束は出来ねぇが期待しねぇで待ってろ・・。今まで色々と・・・ありがとよ・・・。システムスタンバイ!!!」



熟年オペレーター「おい!!それじゃ・・・それじゃあまるで・・まるで・・・最後みてぇじゃねぇかよ!」

ベテラン兵「フッ・・・。『アイタタドンドン改』!!!ベテラン兵ッ!!!出るッ!!!」

バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!!キラーン・・・・



熟年オペレーター「ばっきゃろぉ・・・かっこつけてんじゃねぇよ・・・ばっきゃろぉぉぉお・・・おお・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・

サンタ狩り兵(クビが・・ズキズキする・・なんだここは・・・ここは・・)

サンタ狩り兵「はっ!!!」

女サンタ狩り兵「気がついた・・・?」

サンタ狩り兵「ベテラン兵さんは!?ベテラン兵のオヤジさんは!?」

女サンタ狩り兵「・・・・。」

サンタ狩り兵「・・てめぇ・・・っ!!てめぇがあの時・・・止めなけりゃぁ!!!ベテラン兵さんは・・・ベテラン兵さんはなぁ!!!」グイッ

女サンタ狩り兵「殴りたければ殴りなさい・・・それで気が済むなら・・・」

サンタ狩り兵「っ!」グッ

女サンタ狩り兵「自分の能力も相手の能力も何も分かってない・・・あなたのやってる事はサンタ狩りでもなんでも無いわ・・。いたずらに人を焚きつけて・・・あなたのやってる事はただの集団自殺の奨励よ。」

サンタ狩り兵「なんだとッ!!!?」

女サンタ狩り兵「だってそうでしょ!?いきなり秘密兵器を投入してどうなるの!?そりゃ相手は最初は面食らうかもしれない!でももし倒せなかったら!?敵に手の内を晒すだけじゃなく仲間を大勢失うのよ!!」

サンタ狩り兵「だからって・・・っ!!だからってなぁ・・・ッ!!」

バシッ!!!

女サンタ狩り兵「あなたはなんの為にここにいるの!?クリスマスを止める為でしょう!?ずっとそうやって・・・そうやって一人でベソをかいてればいいわ!!みんながベテラン兵さんを失って何も思ってないと思うの!!?」

サンタ狩り兵「・・・・。」

女サンタ狩り兵「・・・。」

サンタ狩り兵「・・・・。」

女サンタ狩り兵「ぶって・・悪かったわ・・・。謝る・・・」

サンタ狩り兵「俺こそ・・・取り乱して悪かった・・・。」


サンタ狩り兵「現状を把握したい・・・今ここはどの辺だ・・・。」

女サンタ狩り兵「まもなく青森支部よ・・・。青函トンネルを抜ける所・・・。」

サンタ狩り兵「そうか・・次は・・・そうだな・・・。ベテラン兵さんがいない今・・当面のリーダーを決めたい・・・」

女サンタ狩り兵「そういうと思って・・あなたが寝てる間に色々決めさせてもらったわ」

サンタ狩り兵「そうか・・誰になったんだリーダーは?」

女サンタ狩り兵「貴方よ。」

サンタ狩り兵「そうか・・・うぇ!?」

女サンタ狩り兵「情けない声を上げないでくれる?先が思いやられるわ・・・・。」

サンタ狩り兵「俺が?リーダー?なんでだ!?真っ先に突っ走ってみんなを危険に晒したのは俺だぞ。」

女サンタ狩り兵「自覚があるのは大変結構。ならば改善する気もあるわよね。」

サンタ狩り兵「あ・・当たり前だっ!」

女サンタ狩り兵「ならいいじゃない。これからみっちり戦術について学びましょう?」

サンタ狩り兵「しかしそんな時間は!?」

女サンタ狩り兵「ベテラン兵さんが善戦したみたいで向こうのソリは中破・・サンタは引き返したそうよ・・」

サンタ狩り兵「おぉぉぉ!さすがベテラン兵さんだっ!!」

女サンタ狩り兵「でもベテラン兵さんの搭乗した機体が今朝・・完全に大破した状態でオホーツク海で発見後、収容されたわ・・機体ごと突っ込んで自爆したみたいね。」

サンタ狩り兵「・・・そうか・・。ベテラン兵さんの死は絶対無駄にしねぇ・・あの人の志は俺の胸に生き続ける・・」

女サンタ狩り兵「えぇ・・そうね」



艦内放送「各員に継ぐ、当陸上艦はまもなく青森支部に到着する。繰り返す、当陸上艦はまもなく青森支部に到着する。下艦の準備をされたし。」

サンタ狩り兵「着いたか・・。」

女サンタ狩り兵「えぇ・・降りる準備をしましょう。」

サンタ狩り兵「あぁまずは支部長と話す。東京の本部とも連携してこの青森前線から西には一匹も通さないように連携する。」


・・・・・・・

休憩します。

おもしろい

・・・ ←多すぎワロタwwwwww
ケータイ小説(笑)かよ

この時期から敵の先見隊と思わしき機影か度々確認された・・。
しかしこちらの様子見というよりはまるで何かを・・探しているようだった・・。

そして二度目の悲劇の朝が明ける・・。

>>41 ありがとうございます!
>>42 「・・・」の力を甘く見るなよ。「・・・」ってすげぇんだぞ。「おにいちゃん///」と「おにいちゃん・・・///」では破壊力が違うだろ?

気にすんな つまんねえSSだって事に変わりはないから

俺は好きだぜ…!

>>55 お前のクリスマスと同じだな!
>>56 ありがとう!

安価間違えたw
>>53お前のクリスマスと同じだな!
>>54 ありがとうよ!


極寒の函館の寒空を穿つ…流星が一つ…
真っ赤な尾を引き…俺たちの支部目掛けて向かってきていた…。

青森支部に警報が鳴り響く。

コイビトハサンタクロース♪セノタカイサンタクロース♪
楽しげな音楽とは裏腹に支部に緊張が走った。

サンタ狩り兵「…来たか…!」

女サンタ狩り兵「…そのようね…」



俺はざわめく胸の高鳴りを抑えつつみんなに向かって叫ぶ。

「総員第一種戦闘配置っ!これは訓練ではない!行くぞっ!!弔い合戦だッ!!!」

全員「ウォオォォォォォォオォオオオオ!!!」



俺達の作戦は

北海道南部で目標と会敵し遠距離攻撃をしつつ後退。青函トンネルの奥に設置した対サンタ用長距離砲「大和魂」を放つ。

トンネル内に逃げ場はない…確実に当てられる…。
そう信じていた…。

敵の機影を確認するまでは…

前方部隊六機は射撃翌用意の間も無く大破…
中堅部隊から送られて来た映像を見て俺は目を疑った。

サンタ狩り兵「ト…トナカイ…だけだと!?」

女サンタ狩り兵「しかもあれは………『ルドルフ』!!!」

ルドルフ…サンタ狩りを志した物なら必ず耳にするその伝説のトナカイ。

煌々と輝く紅い鼻…天にまで届くような雄々しい角…何もかもを拒絶して弾き返す鋼鉄の毛皮。
その紅き輝きを見た者で五体満足で帰還した者はいないとされた。

ルドルフ「ブヴォォォォォォォォォ!!!!」ビリビリビリ

ルドルフの闘気に気圧されて敵前逃亡を図る者まで現れた…。

もう駄目だ…。と隊員全員が思ったその時…。

遥か上空からルドルフを目掛けて金色の光が降り注いだ…。

ルドルフ「ブヴォォォォォォォォォ!!!?」

女サンタ狩り兵「あれは!?秋葉隊!!!」



秋葉隊…サンタ狩りのエースチーム。サンタ討伐数20以上のエリート達のみで構成されたサンタ狩り軍の主力部隊だ。

秋葉大佐「ルドルフゥ!!てめぇが出てくんのを俺ぁずっと待ってたんだよぉ!!!」

天空からルドルフ目掛けて滑空してくる金色の機影は対サンタ用人型兵器「断罪」。

パイロットは秋葉大佐だ。

隻眼の狩人…『秋葉大佐』サンタ討伐数200以上という生ける伝説。

サンタ狩り兵「本部の主力部隊が…何故ここに…!?」

女サンタ狩り兵「全滅は免れそうね…!各員今のうちに体勢を立て直し任務続行!!」

全員「ラジャー!!!」

SS書いてるんだが

続きが読みたくなる話だけど
書いてる奴がたまたま今年恋人がいないだけとかアピールしててむかつく

>>59 ssなんてのは自慰行為だと思うんだ。別に誰に見てもらえなくたっていいじゃない?人に見てもらう為に自慰行為をするんじゃないだろう?好きにぶちまけたらええんやで。

>>60
この歳で今年から独り暮らしでな。コイビトは毎年いねぇんだよ。やかましいわ。

ーーーーーー

ルドルフ「ブヴォォォ!!ブヴォォォ!!!」

ドガァ!ガガッ!!

秋葉大佐「ルドルフよぉ!てめぇにやられたこの右目がよぉ!疼くんだよぉ!日に日に寒くなんだろぉ?この季節はよぉ!」

シュンシュン!ガキンガキン!!

モブ兵A「すげぇ…渡り合ってるあの化け物と…」

モブ兵B「もしかしてあの人なら…!ひょっとしてひょっとするぞ…!」

互角か…だとしたら燃料がある分…大佐がフリだ…しかし援護しようにも動きが速すぎて援護すら出来ない。下手に狙撃しよう物なら最悪大佐に被弾する可能性がある…。

女サンタ狩り兵「私がやる…。」

サンタ狩り兵「!?」

女サンタ狩り兵「やるしかないんでしょ…?だったら私がやる…。」

サンタ狩り兵「…しかし…もし失敗したら…」

女サンタ狩り兵「あら?失敗した時の事なんて考えられるようになったの?成長したじゃない」

サンタ狩り兵「ふざけてる場合か…だが今この場にいる中でこの膠着状態を脱却できるのは…女サンタ狩り兵…お前だけだ…頼めるか?」

女サンタ狩り兵「信じられないならやめるけど?」

サンタ狩り兵「頼む…いや…やれ!命令だ…!」

女サンタ狩り兵「ラジャー」

サンタ狩り兵「秋葉大佐!聞こえますか!?」

秋葉大佐「あぁ!?見ての通り取り込み中だ!!話してる暇なんてねぇんだよ!」ギギギ…

サンタ狩り兵「こちら函館支部支部長代行サンタ狩り兵!返事は要りません!そのままきいてください!これから長距離砲による援護射撃を行います!」

秋葉大佐「あぁ!?余計な事すんじゃねぇ!!!こいつは俺の獲物だ!!」

サンタ狩り兵「し・・しかしこのままでは!」

秋葉大佐「うるせぇ!勝ち負けなんざ関係ねぇ!俺は勝手にやらせて貰うぜっ!」



ドシューーーーーーーーーン!!

ルドルフ「ヴォォォォォ!!?」ブシュウウウウ

サンタ狩り兵「え…?」

女サンタ狩り兵「ならばこちらも勝手にやらせて貰います。」ジャキッ


あきばたい

女サンタ狩り兵の放った超出力のレーザーに貫かれルドルフは膝を折った…

秋葉大佐「余計な事ぉ!!すんじゃねぇよ!」

すかさず秋葉大佐が電磁ブレードでルドルフのこめかみに一撃を加えその巨体を空中に放り投げる。

そしてそれをまた女サンタ狩り兵が撃つ。

サンタ狩り兵「なんだかんだいいながら連携してる…!」

女サンタ狩り兵「こちらの装填時間も考慮してるようね…ただの突っ走りのバカかと思ったら…でも少し人使いが荒いっ…!」バシュゥゥゥン!バシュゥゥゥン!

狙撃の反動に耐えながら女サンタ狩り兵が愚痴をこぼした。



見事すぎる連携にそこにいた全員は固まっていた。

いける!このままこの悪しき伝説を討ち取れば今年のサンタ狩りは士気最高潮で迎えられるッ!

秋葉大佐「てめぇ等!油断すんじゃねぇ!」

サンタ狩り兵「!?」

気付いた時には…秋葉大佐 援護射撃では勝てないと判断したのかルドルフはこちらに突進して来ていた!

その鋭い眼光は女サンタ狩り兵を捉えていた…!

ルドルフ「ヴォォォォォ!!!!」ドドドド

モブ兵A「こ…こいやぁぁぁぁ!!!」

モブ兵B「おらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

バキィン!ガキィン!

モブ兵A「うわぁぁぁああ!!!」

モブ兵B「なにっ!?弾かれただとッ!?」

一瞬のうちに立ちはだかった兵士を弾き飛ばすと真っ直ぐ女サンタ狩り兵に猛スピードで向かってきた!

しかしその一瞬こそが…戦場では命を分ける。



女サンタ狩り兵「…ッ!」

サンタ狩り兵「間に合わないッ!」







秋葉大佐「てめぇらよく止めたっ!終わりだルドルフぅ!!!!」

後ろから疾風のように金色の機体が斬り抜けた…。

ルドルフは何が起きたか分からないという顔をした。

顔だけが空中で…



ドサァァッ!


秋葉大佐がルドルフの首を跳ねた…そう理解するまでに数秒掛かった…

そして…


全員「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!」

全員の雄叫びっ!勝ったッ!我らの勝利だっ!!

俺も天に向かってこれでもかと吠えた。

フィンランドの憎きサンタ共め!見たか!!童貞を舐めるな!!俺達を舐めるな!

そんな雄叫びに聞こえた…。

サンタ狩り兵「俺達勝ったんだッ!勝ったんだあのルドルフにっ!」

女サンタ狩り兵「ふぅ…寿命が縮んだわ…二人ともありがと」

モブ兵A「と・・当然っすよ!」

モブ兵B「あぁなんかこう勝手に体が動いてたんだよな!」

???「ドゥフフフフ!!ドゥフフ!!さすがと言わざるを得ませんな!」

サンタ狩り兵「…?」

???「これは失敬!自己紹介が遅れたでござるっ!おっと拙者ござるなどど!拙者オタクではありませんゆえっ!」

女サンタ狩り兵「も…もしかして秋葉…大佐?」

秋葉大佐「ふぉぉぉぉおお!!これは三次女子ではござらぬか!何故!三次女子がこの神聖な戦場へ!?」

女サンタ狩り兵「こ…今年から女子も参加が認められているんです…!」

秋葉大佐「ドュブフ!なんと!そうであったか!失敬失敬!」

サンタ狩り兵「なんかさっきと雰囲気違うっていうか顔が違う…」

秋葉大佐「よく言われるのでござるが搭乗中の拙者は人が変わってしまうようなのでござる。宜しく御容赦を戴きたい!デュフホォ!」






パチパチパチ…

どこからともなく聞こえる拍手…



ルドルフ「」

身の丈ほどもあるルドルフの口から…人が出てきた。

小人?よく絵本で見かける小人だ。

赤いトンガリ帽子をかぶり緑の服を来た小人が…拍手をしながら満面の笑みで出てきた…。

まるで夢…?おとぎ話の世界だ…

小人「すごいじゃないか!すごいすごい!」

サンタ狩り兵「な…何者だッ!」

秋葉大佐「中身がいたというのでござるか!?」

小人「フィンランドは今年からメカルドルフの量産に着手しててね!いやぁ本物の半分の出力しか出せなかったや!こりゃ帰ったらサンタさんに怒られちゃうなぁ!」

女サンタ狩り兵「半分ですって…!?」

サンタ狩り兵「あれで…半分…そんな…」

小人「まぁいいデータが取れたし!年内に実戦投入も可能かな!よぉしそれじゃ最後のテストだぁ!みんな準備はいいかな!?いっくよー!イッツショーターイム!」ピッ

ルドルフ頭「…」グボーン

某アニメのモノアイの起動音のような不気味な音が戦場に響いた…

そして目の前に現れたのは…

ルドルフの首から何かコードみたいな物が大量に這い出たかと思うと蛇のように胴体に伸びた…

あまりの光景に動けないでいると小人がニタリと笑って言った…

「メカってのは無人運用してはじめて価値があるのさ…そして無人だからこそ…力をセーブしなくてもいい…精々頑張ってくれたまえよ!貴重なデータを楽しみにしてるからさ…」

ゴゴゴゴゴゴゴッ…

頭がルドルフで体が人…下半身はトナカイ

まるで神話の生き物…


「ケンタウルス」


秋葉大佐「撤退しろぉぉぉぉおお!!」

いつの間にか断罪に搭乗した秋葉大佐が叫ぶより先にケンタウルスは逃げ惑う兵士達をナンのように引きちぎり踏みしだいて行った!

秋葉大佐「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!!大人しくくたばりやがれぇぇぇえええ!!!」

目の前はあっという間に地獄と化し
無惨にも引き裂かれた仲間達がこそかしこに散らばっていた…

ケンタウルスが軽く腕を振るっただけで死が撒き散らされる…

圧倒的…あまりに救いの無い状況に…なす統べなく逃げ惑うしか無かった…。

ドガァ!

秋葉大佐「ゴフッ…」

頼みの綱の秋葉大佐が…墜ちた…。

コックピットを正確に貫いた豪腕は秋葉大佐ごと断罪に穴を開けた…

ここで死ぬ…誰もがそう思ったその時…

秋葉大佐「ぜ…全員聞こえるか……今よりもっと遠くへ逃げろ…十秒後に俺はこいつと心中…する…」

ケンタウルス「貴様…死ぬ気か?」

秋葉大佐「!?お前…しゃべれるの…か?こりゃ…いい…ゴフッ…地獄まで退屈しないで済みそうだ…」

ケンタウルス「死ぬなら一人で勝手に[ピーーー]」グッズズズ…

秋葉大佐「連れねぇ事いうなよ…長ぇ付き合いだろ…?」ガシッ

ケンタウルス「なにっ!外れぬだと!貴様ッ!その体のどこにそんな体力がッ!?止せッ!!!止せぇぇええええええ!!!」

秋葉大佐「秋葉のオタク…嘗めんじゃねぇぇぇええええええ!!!」



ドガァァァァァァァァァァン!!!!



サンタ狩り兵「うわぁぁぁぁぁああ!!!!」

女サンタ狩り兵「きゃぁあああああ!!!!」

気がつくと満点の星空が俺を見下ろしていた…街の明かりという明かりが破壊しつくされた荒野で気絶していたのだ…

どの辺まで飛ばされたんだ?そうだ!?みんなは!?

隣に目をやると女サンタ狩り兵が横たわっていた…

吹き飛ばされる直前に彼女をかばうように抱き締めたのを思い出した…

死の間際で気付いたんだ…「こいつだけは守らなきゃ…」

女サンタ狩り兵「う…ううん…」

サンタ狩り兵「き…気付いたか!?」

女サンタ狩り兵「え…えぇ…ここは…?」

サンタ狩り兵「わからん。計器のすべて故障だ…敵の位置も味方の位置さえわからん」

女サンタ狩り兵「そう…」

サンタ狩り兵「どこか痛む所は無いか?」

女サンタ狩り兵「特に…無いわ…でも足の感覚が麻痺してるみた……えっ?」

サンタ狩り兵「どうし…っ!?」

星明かりに目が慣れて来た…だが…見えた物は…

膝から下が無い女サンタ狩り兵の足だった…。

女サンタ狩り兵は絶望したら顔で自分の足を何度も触って確かめていた…

そして消え入りそうな声で呟く…

女サンタ狩り兵「ねぇ…私…足無くなっちゃったみたい…」

サンタ狩り兵「…あぁ…」

女サンタ狩り兵「変なの…全然…痛くないんだね…」

サンタ狩り兵「…そうか…っく…」

女サンタ狩り兵「泣いてるの…?」

サンタ狩り兵「すまない…っ!すまない…っ!」

女サンタ狩り兵「見くびらないでよ…これでも戦場に立つ兵士なんだから…このぐらいの覚悟…出来ていたわ…」

サンタ狩り兵「だって…お前だって…!」

女サンタ狩り兵「え…?」

サンタ狩り兵「泣いてるじゃないか…っ!」

女サンタ狩り兵「あれ…?ほんとだ…」

サンタ狩り兵「うあぁああああっ!」

女サンタ狩り兵「大の男が泣かないでよ…こっちだって…泣きたくなってくるじゃ…ないの…ううっ…うわぁぁぁぁぁんっ!」

サンタ狩り兵「すまない…っ!すまない…っ!守れなくて…ごめん…っ!」ボロボロ

女サンタ狩り兵「うわぁぁぁん!足が無くなっちゃったぁ…!うわぁぁぁん!」



子供のように二人は泣いた…。


いつしか抱き合って泣いた…。


いつまでもいつまでも…。





気づいたら次の朝だった…いつの間にか寝てしまっていたようだ…

あの後…泣きながら二人で足の手当てをした…

傷口を焼くときも子供のようにただをこねる彼女抱き締め…泣きながら焼いた…



どうして俺達がこんな辛い思いをしなきゃいけないっ!どうして!どうして!どうして!

何故!幸せは平等に分け合われない…!

何故彼女はこんなにも報われない…!

彼女の足を見ながら行く宛の無い疑問が頭を駆け巡り怒りとなっては消えていった…


女サンタ狩り兵「ねぇさっきから面白い顔してるの気付いてる?」

サンタ狩り兵「えっ…?」

女サンタ狩り兵「怒った顔したり無気力な顔したり悲しい顔したり…なに?笑わせてくれようとしてた?ごめん、今そんな余裕ない…」

サンタ狩り兵「ち…ちがっ!」

女サンタ狩り兵「分かってるわよ。冗談よ冗談!」

女サンタ狩り兵「さてっと!これからどうしよっか!」

サンタ狩り兵「どうするもこうするも…食料も無い…武器も無い…地図もコンパスも無い…これじゃ…」

女サンタ狩り兵「どうしようも無いから諦める…?」

サンタ狩り兵「そ…そんな事は言ってないだろ!?」

女サンタ狩り兵「じゃ何よ?さっきの下りは?」

サンタ狩り兵「必要な物の整理だよっ!待ってろ!とりあいずは飯だっ!何か食べ物は無いか取ってくるからよ!」

女サンタ狩り兵「じゃ動けない私はのんびりしてるとしますかね!」

サンタ狩り兵「アホか!甘ったれるな!火ぃ起こしとけ!」

女サンタ狩り兵「えー!サンタ狩り兵が怪我人をこきつかうぅ!!」

サンタ狩り兵「ふざけてる場合かっ!」

女サンタ狩り兵「…」クスッ

サンタ狩り兵「ぷっ…笑ってる…場合じゃねぇぞっククッ…」

女サンタ狩り兵「あはははっサンタ狩り兵が一番わらってるじゃん!あはははは!」

サンタ狩り兵「うるせぇ…!とにかく二人で生き延びて救援を待つぞ!ちゃんと火ぃ起こしとけよな!」ダッ

女サンタ狩り兵「あっ待って!」

サンタ狩り兵「あぁ!?なんだ!?」

女サンタ狩り兵「あ…あんまり…遠くに…いかないで…」

サンタ狩り兵「………分かってる…」

休憩します。

とは行ったもののすべては瓦礫の下だ…都市部の為缶詰などが期待できるし他の非常用の備えなども期待できる…もしかしたら人に会えるかもしれない…

拠点になるような場所があれば最初の場所にその場所を記し移動する事も視野にいれる。

そんな事を考えていると崩れたスーパーの看板が目に入った。

今にも倒壊しそうだが躊躇ってはいられない…

中に入ると既に人が侵入した痕跡があった…

DQN男「おいおいおいー!俺らのアジトになんか変なのが入ってきちゃったよー?」

DQN女「キャハハハ!ほんとだ!マジうけんですけどー!」

DQN

DQN男「おい!おっさん!ここは俺らのアジトなんだけどー?」

DQN女「でも軍人さんって事はなんかもってンじゃない?車とか武器とか!ねぇ車欲しーいぃ!」

DQN「待ってろって!おいおっさん!つー訳だ!さっさと出てけや!」



先約がいたか…やむを得ん。

サンタ狩り兵「勝手に入ってすまない!しかし…食料を分けて貰えないだろうか!?」

DQN男「食料を…?」

DQN「分ける…?」

二人「あははははははははっ!」

サンタ狩り兵「…」

DQN男「ははははっ!なぁんで俺らが集めた食料を見ず知らずのあんたにやらなきゃなんねぇんだよ!冗談も大概にしろよ!?あぁ!?」

DQN女「マジウケピー!ウケピーなんですけど!」

サンタ狩り兵「すまん…無理を承知で頼む…!怪我人がいるんだ…!頼むッ!」ドケザッ




DQN男「怪我人だと!?そんな事知るかよ!初対面の人に身内ネタとかどんだけだコラ!」

DQN女「ねぇ?怪我人を放っておく気?」

DQN男「いや、確かにそれは出来ねぇな…」



サンタ狩り兵「…!?ほんとか!恩に切る!」

DQN男「バッカヤロ!この辺りの野犬が人の味覚えねぇようにだよ!」

DQN女「私たちこうみえて医者の娘なんですけどー?」



地獄に仏とはこの事か…

さっそく二人を女サンタ狩り兵の所に案内した。



DQN男「おうっ!?両足もげてンじゃねぇか!」

DQN女「応急処置はー!?…一応してあんだ…!ウケる!」

女サンタ狩り兵「きゃぁ!?誰よアナタたち!?」

サンタ狩り兵「…戻ったぜ?」

女サンタ狩り兵「早かったわね…で?この二人はなに?」

サンタ狩り兵「医者(の卵)だってさ…足見てもらおうと思ってさ!」

女サンタ狩り兵「この二人が医者の卵ぉ?」ジーィ

DQN男「なに見てんだこら?あん?」

DQN女「…あれ?おねえさんどっかであった事ない?」

DQN男「そういや…そのそばかす…ちょっとスマン!」ガバッ

女サンタ狩り兵「きゃあぁ何するのよ!」

DQN女「あー腰に北斗七星のホクロあったー!」

DQN男「やっぱりか!!おい女!!俺だよ!!施設のDQN男だよ!!こっちは妹のDQN女!!」

女サンタ狩り兵「えっ…………?」


女サンタ狩り兵「えっ…!?ほんとに!?ほんとにあのDQN兄妹!?」

DQN男「そうだよ!あのあと俺ら医者に引き取られてよ!」

DQN女「わぁい!女ちゃんだー!マジウケピー!」ギュ♪

女サンタ狩り兵「そうだったの…?」ナデナデ

DQN男「お前は金持ちの所に引き取られたんだろ?どうしてこんな所で軍人やってんだ?」

女サンタ狩り兵「それは…話せば長くなるから改めていうわ…二人は何してるの?」

DQN女「えっとねー火事場ドロボー!」

DQN男「火事場ドロボーじゃねぇって言ってンだろ!?リサイクルだよ!リサイクル!!要するに瓦礫の中にまだ使えるもんがねぇか見て回ってんだよ!」

DQN女「あとねー逃げ遅れた怪我人がいたら手当てしてるのー!ウケるでしょ!」

DQN男「バカ!それはついでだ!ついで!」

DQN女「お兄ちゃんがやりだした癖になにいってんの!マジウケピーなんですけど!キャハハハ!」

なんだかんだでいい奴等そうで安心した。

知り合いみたいだしこの二人になら安心して女サンタ狩り兵を任せられる。

サンタ狩り兵「足は治りそうか? 」

DQN男「あ?あぁ…まぁな!任せとけ!だがここでは無理だ…家に来い。手術が必要だ…」

サンタ狩り兵「本当か!?」

DQN男「嘘言ってどうすンだバカ!」

DQN女「よかったねー!女ちゃん治るって!」

サンタ狩り兵「しかし失われた足を元に戻すなんて…」

DQN男「それは無理だな…だが今は優秀な義足がある…神経接続がちと辛いが…」

サンタ狩り兵「え…それって…」

DQN男「オートメイルって……知ってるか?」

そして俺たちはDQN男達の家に招かれた。

DQN男達の家は施設兼診療所になっており、身より無い子供を沢山預かっていた。

「オートメイル」

昔流行ったマンガで鋼の錬金術師という作品で見た事があった。

錬金術が発達した世界で、禁忌とされた人体錬成をしたせいで兄のエドは片腕片足を失い弟は肉体を失いながらも国家錬金術師としてエルリック兄弟が錬金術を悪用する連中と戦うという物で

兄のエドは失われた片手片足の替わりに高性能の鋼の義手・義足をしており
その装置の名をオートメイルと言った。

DQN男「知ってるのか、そうだ…あれを参考に開発した。人間の神経と機械を繋ぎ思い通りに動かせる義足。しかも俺のはメンテナンスもほとんどいらないからな!ネオ・オートメイルって所だ!」

DQN女「あれー?スーパーオートメイルじゃなかったのー?名前代わり過ぎウケりんこなんですけど!」

DQN男「うるせぇ!お前は黙ってろっつーの!」

手術の前夜…女サンタ狩り兵が俺が寝ている空き部屋を訪ねて来た。

女サンタ狩り兵「サンタ狩り兵…?…起きてる?」

サンタ狩り兵「あ…あぁどうした?明日は手術だろ?」

女サンタ狩り兵「うん…でもちょっとだけ話しない?」

サンタ狩り兵「あぁいいぞ。入ってこい」

そういうと車椅子で女サンタ狩り兵は部屋に入ってきた。

サンタ狩り兵「待ってろ。今電気つける」

女サンタ狩り兵「…待って…」

サンタ狩り兵「え…?」

女サンタ狩り兵「…」ギュッ

急に腰の辺りに抱きつかれ動揺する…。

サンタ狩り兵「ど…どうした?怖いのか?」

拒絶はせずに動揺を悟られないよう後ろを向きながら答えた。

女サンタ狩り兵「うん…怖い…すごく痛いんでしょ?」

サンタ狩り兵「だ…大丈夫だって…立ち会ってやるからよ…心配…すんなよ」

女サンタ狩り兵「うん…ありがと…」

サンタ狩り兵「ほら…もう寝ようぜ。明日に触るぞ」

女サンタ狩り兵「う…ん」

サンタ狩り兵「…」

「今日は寝るまで一緒にいてやるよ」とか言えないのか…俺は!

無理だな…

でもこれだけは伝えなきゃな…

サンタ狩り兵「おい…」

女サンタ狩り兵「えっ…」

サンタ狩り兵「足が無くなっても俺はおまえの事足手まといなんて思わない。戦友だと思ってる」ギュッ

女サンタ狩り兵「な…なによ…突然…っ!全然嬉しくない…!全然嬉しくない…!無いっ…から…っ!」ポロポロ



これは男と女のハグではない。戦士と戦士の熱い包容だ…

自分にそういい聞かせた。

でないとこいつに恋をしてしまうから…

クリスマスが終わったら…こいつと結婚しよう。

足が無くたっていい。

そばかすがあったっていい。

しかしそれにはこいつを守り、自分も生き延び…

この決戦を勝利で納める必要があった。

女サンタ狩り兵「あ…ありがと…じゃ…じゃあもう行くね!お陰様で元気がでたわ。」

サンタ狩り兵「あ…おて」

サンタ狩り兵「お…おうっ!明日は頑張れよな!痛みなんかに負けんじゃねぇぞ!」

女サンタ狩り兵「えぇ!それじゃ…おやすみ」

サンタ狩り兵「おやすみ…」

寂しげな顔をして女サンタ狩り兵は部屋を出ていった。



次の日

女サンタ狩り兵「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!痛い痛い痛い痛いっ!!痛いぃいぃいいぃ!!!」

DQN男「我慢しろっ!おまえ軍人だろっ!DQN女っ!しっかり抑えとけよ!!」

DQN女「女ちゃんお願い!暴れないで!もうすぐだからっ!!」

とは言ってもかれこれ三時間以上女は苦痛の悲鳴をあげ続けていた…

気が狂うような激痛というとこは女サンタ狩り兵を見てれば嫌と言うほど伝わってきた。

漫画では主人公は歯を食い縛って耐えていたがどうやらそんな生易しい物では無いらしい。

サンタ狩り兵「落ち着けって!もうすぐだってよ!!」

俺もDQN女と女サンタ狩り兵の体を押さえつけながら励ましの言葉をかけ続けたが痛みで聞こえているのかは定かでは無かった。

DQN男「これでっ!神経接続っ!完了っ!だっ!」ガチャン

女サンタ狩り兵「はぁ…はぁ…はぁ…」

DQN男「はぁ…はぁ…ったく…なんつー力だ…」

DQN女「あー疲れた…女ちゃんは?」

サンタ狩り兵「どうやら疲れて眠ったようだ…」

DQN男「のんきなもんだぜ…暴れる患者に施術すんのがどんだけ大変だと思ってンだ…」

DQN女「まぁいいじゃない!無事に終わったんだしっ!」

DQN男「まぁこれも俺の腕が有ってこそだな!」

DQN女「男さんも疲れたでしょ?待ってて今お茶いれてくる!」

DQN男「聞けや!てめぇ!おい!おいって!」

サンタ狩り兵「た…大変そうだな」

DQN男「あ?まぁ…あれはあれでたった一人の血を分けた肉親だからな…」

肉親…肉親か…

そういえば俺がサンタ狩りに志願した理由もたった一人の弟の為だったな…

ふと思い出してしまう。

最後の母の言葉…

「来年のクリスマスには迎えにくるからね…」

その後結局母の姿を見ることは無かった。



この世は光が溢れれば影が強くなるように

幸せが溢れれば不幸は不幸せな者に刃物のように鋭く食い込む。

そういう風に出来ているのだ。

笑顔を増やす力は無くても
涙を減らす事は出来るはず…

そう思って戦って来た。
だが本当にそうか?

DQN男「おいって!」

はっと我に返った。DQN男が怪訝そうな顔でこちらを見ていた。

DQN男「もう終わったんだから女と離れていいぞって言ってンだよ。いつまでさわってンだよこのスケベが」

サンタ狩り兵「あっいや…そういう訳じゃ…ってあれ?」

女サンタ狩り兵「すぅ…すぅ…」ギュッ

DQN男「おいおい…こいつが離してくれねぇってか…まぁいいか…俺はちょっと書類の整理があるからここを空けるからそいつが目覚ましたら教えてくれ。動作の確認とか色々あるからよ。」

サンタ狩り兵「分かった。すまないな。気を使わせて…」

DQN男「…」ヒラヒラ

DQN男は無言で手を振りながら出ていってしまった。ドアの向こうから声が聞こえた。

DQN女「あれー?男さんはー?お茶いれたよ?」

DQN男「いらねぇってよ。代わりに俺があいつの分も飲んでやるよ。あっお茶菓子なんてあったのかよ!俺の時には出さない癖に!よこせ!」

DQN女「だめぇー!これは来客用のなんだからぁー!」

ドタバタ!



仲がいい兄妹のやり取りを聞きながらフッと笑うと女サンタ狩り兵が目を覚ました。

女サンタ狩り兵「…あれ?…おわったの?」

サンタ狩り兵「あぁ…よく頑張った な」ナデナデ

女サンタ狩り兵「!?ちょっ…あんた近いわよっ!」

サンタ狩り兵「おっと…悪いっ!」ババッ

女サンタ狩り兵「きゃっ!ちょっと急に離れないでよっ!まだ体に力入らないし…!それに汗かきまくって寒いから…」

サンタ狩り兵「大丈夫か!?楽にしてろ!今暖房を強くするから…!」

女サンタ狩り兵「違うから!いいから…さっきの…」

サンタ狩り兵「え?」

女サンタ狩り兵「さっきのままでいいから…」

サンタ狩り兵「お…おう」

女サンタ狩り兵「ただ急に撫でてくれたからびっくりしただけだから…今度からは撫でる前には…許可を取りなさいよ…」

サンタ狩り兵「分かった…」


ドアの隙間の目「くーっ!女ちゃんとかマジ意気地無しなんですけどっ!」

ドアの隙間の目「いやこれは男が意気地無しだろ…ったくせっかく気ぃ使ってやったのによ…クチヅケのひとつでもして見せろっつーの」

ドアの隙間の目「ぷぷーっ!いまどきクチヅケなんて言う人いないんだけど!マジうけぴぃー!」

ドアの隙間の目「うるせぇっつーの!騒ぐなよ!バレるだろが!」



ガチャ…


DQN男・女「あれ?」

女サンタ狩り兵「なにしてんの?」

DQN男・女「あ…いや…」

女サンタ狩り兵「シィッ!」ドガァ!

パラパラ…

DQN男「ひっ…!壁に…穴が…」

女サンタ狩り兵「へぇ!いいじゃないこのオートメイルとかいうの軽いし動きやすいし!丈夫だし!」

DQN男「だ…だろぉ?いや苦労したんだぜ?ほんと合金作るのも超大変でさ…っ!いやはははは!さぁて妹よ!施設の方の様子でも見に行くとするか!?」

DQN女「そうでしたね!お兄様!もうそんな時間ね!みんなが待ってるしもういかなくてはいけませんわ!」

女サンタ狩り兵「あっ!こら待て!わっ!」ギュリリリリリ!!ギュゥゥゥゥゥゥン!!!

女サンタ狩り兵の足に装着したオートメイルからローラーが出たかと思うとものすごいスピードで逃げる二人に激突した。

ドカーン!ギャー!

女サンタ狩り兵「いててて…なによこの機能…早すぎて制御出来ないじゃない…」

漫画のオートメイルはこんな機能無かった…はずだが…

DQN男「ふふふ…俺の技術の全てをそのオートメイルには詰め込んである…お前がそれを使いこなす時そこには最強の兵士が誕生してるだろうぜ…」

ひっくり返ったまま低く笑うDQN男…。

女サンタ狩り兵「人の体に勝手に機能つけんな!」ゴスッ

頭をゲンコツで殴り付けて憤慨しているようにも見えるが女サンタ狩り兵はまんざらでも無さそうだ。

DQN男「いってーな!」

DQN女「女ちゃんかっこいいー!すごーい!」

DQN男「おい!すげぇのは俺だからな!そこを間違えるな!」

女サンタ狩り兵「うるさいっ!」ゴスッ

DQN男「いってーな!!」

ヤイノヤイノ…

突然改造人間にされた女サンタ狩り兵には悪いがひとつ心配が消えた…

もしも義足になり戦闘にハンデが伴うようなら退役に追い込まれていたかも知れない…そうなれば女サンタ狩り兵とは離れ離れになってしまう。

それに生きる目標を失った女サンタ狩り兵の心理状態も不安定になってしまうだろう…。

俺は心の底からDQN男に感謝した…。

サンタ狩り兵「ありがとう…ほんとにありがとうな…DQN男…」

まだ床にへたりこんでるDQN男に手を差し出すとそれを払いのけてDQN男は答えた。

DQN男「ばっきゃろー…感謝される覚えなんざねぇよ。俺ぁ俺のとこで足治療した軍人が足手まといなんて言われるのが我慢出来ねぇだけよ。」

サンタ狩り兵「…それでも感謝せずにはいられないよ…」

DQN男「そう思うなら死ぬ気で守りやがれ…俺の兄妹なんだからよ…」

サンタ狩り兵「うん…。ありがとう…ありがとう…」

DQN男「泣くんじゃねぇよ!情けねぇ!ほら!施設に行くぞ!ガキ共が半日もほっといて大人しくしてる訳がねぇんだ!」

サンタ狩り兵「うん…!うん…!」

DQN男「うんじゃねぇ!男の返事はおう!だろうがっ!」

初めて信頼できる友が出来た…そう思った…。

そんな友とも別れの時がくる。

本部に連絡がついたのだ。

女サンタ狩り兵「ほんとに…世話になったわね。」

DQN男「おう!だがいつでも帰って来いよな!サンタ狩り兵!お前は俺との約束忘れんなよな!」

サンタ狩り兵「おう!絶対に果たして見せるっ!」

女サンタ狩り兵「約束?」

DQN男「男と男の約束だ!女が口はさむんじゃねぇ!」

女サンタ狩り兵「ふーん…まぁ別にいいけど!後でサンタ狩り兵に聞くからー!」

DQN男「言うんじゃねぇぞっ!これも男と男の約束だからなっ!」

サンタ狩り兵「く…口が避けても言えない…」

女サンタ狩り兵「なにそれー!気になるー!」

DQN女「ねぇ…ほんとに行っちゃうの?ここで暮らそうよぉ!さみしいよぉ!」グスッ

DQN男「友の門出に水指すんじゃねぇ!こういう時こそ笑顔で見送るもんだぞ!ほら!笑いやがれ!」

女サンタ狩り兵「うん…!私も寂しい!でもクリスマスが終わったら必ず帰ってくるから!その時はまたガールズトークしよっ!」

DQN女「約束だよ?」ギュッ

女サンタ狩り兵「うん♪」ギュッナデナデ

別れを惜しむ最後の会話。

本当に最後になってしまわぬように…俺は祈った。

迎えのヘリが来る。


バババババババババパパ…


サンタ狩り兵「じゃ…ほんとに元気でな」

DQN男「おう!お前らならやれる!いつでもここに帰って来いよ!」

女サンタ狩り兵「ほんと色々ありがとね…。ありがとう…」

ヘリが飛び立つまでの間本当に最後まで感謝の気持ちを伝えた。
もしらあそこで二人に出会わなかったら俺達はどうなっていたかも分からない。

神様の導き…そう呼んでも違和感は無かった。


ヘリが少し浮く…

DQN女「女ちゃぁぁぁん!!元気でねーーー!!!」

最後までDQN女は叫んでいた。

俺たちもずっと手を振り続けた。

二人が小さくなって見えなくなるまで…




DQN女「行っちゃったね…」

DQN男「…」

DQN女「寂しくなるね…」

DQN男「…」

DQN女「…泣いてるの?」

DQN男「…」

DQN女「帰ってお茶のも…?」

DQN男「…う"…ん"…の"む"…」グチャァ

DQN女「いこ?」

DQN男「…う"…ん"…う"ん"…大丈夫がな"ぁ?あいづら…寂じいな"ぁ…」ダバァ

DQN女「あの二人なら大丈夫だよ…!きっと…きっと…!お兄ちゃんの傑作が付いてるもん!」

DQN男「う"ん"…」

ヘリの中

モブ兵A「よかった!お前ら生きてたんだな!」

モブ兵B「ほんとに心配したっすよ!あれ?女さんその足…」

女サンタ狩り兵「心配かけちゃったわね…!ごめんなさい!みんな!あ…コレ?これただの義足よ?」

サンタ狩り兵「上官への帰還挨拶と任務報告は?」

モブ兵A「この後1000(ヒトマルマルマル)にて予定されています。」

サンタ狩り兵「そうか。分かった。」

女サンタ狩り兵「少し時間あるわね。ちょっと休もうか…。」

本部についた俺達を迎えたのは

いかにも屈強な舞台の兵士達と

あの人だった。



モブ兵士「二人をお連れしました。兵士長殿」

???「おう。ご苦労、下がれ…久しぶりだな…」

女サンタ狩り兵「あっ!!あなたは!?」

サンタ狩りの兵「嘘だろ…!?だってあんたは確かサンタとの戦闘で…!」

ベテラン兵「いつも言ってんだろ?命あっての物種だってよ…言ってる俺がサンタごときと心中しめたまるかよ。」

サンタ狩り兵「…俺が…俺がどんだけあんたの事
…」

ベテラン兵「おうおう!女じゃねぇんだ!メソメソすんじゃねぇよ!」

サンタ狩り兵「だって…だってよぉ!」

ベテラン兵「ふっ…まぁ心配かけたのは事実だ。すまなかったな」

女サンタ狩り兵「よかった…」

ベテラン兵「」

ベテラン兵はその後…
自分の経緯を話してくれた。
自機ごと突っ込んだ後、オホーツク海に投げ出された事。

救命胴衣のオートセーフ機能とSOS信号のお陰で助かり、回復を待って本部に招かれ「サンタの慌てん坊改を見事中破し撤退させた」武勲を称え、兵士長の階級を受けた事。

サンタ狩り兵「しぶてぇおっさんだな…」

ベテラン兵「ふん。そうだ。お前らに見せたい物がある。ついてこい」

そういうと本部のメインオペレーションルームに俺達を連れていった。

そこで俺達が見たものは…

地球の衛生軌道上に浮かぶ巨大な「門松」だった。

なんだあれは…と言いかけた時、ベテラン兵が口を開く

「これが我が軍の最大の宇宙兵器『サテライト門松君』だ」

宇宙兵器…規模がでかすぎて現実味が無いが
これは必ず打倒サンタへの一矢になる…そう感じさせる物だった。

門松の鋭い槍の先端は地上に向けられ打倒クリスマスの為の一撃を放つ時を今か今かと待ち構えていた。

ベテラン兵「それと…これだ」

サンタ狩り兵「それは…!!」

女サンタ狩り兵「サンタ帽…!!!」

ベテラン兵「俺はただむやみに突っ込んだ訳じゃねぇ…虎穴に入らずんば虎児を得ずって奴だ。奴は必ずこのサンタ帽を取り返しにくるはずだ。そこをこいつで狙う…」

サンタ狩り兵「…すげぇ…あんたすげぇよ!」

ベテラン兵「伊達に歳くってねぇ…今年で終わらせる…そうだろ?」

サンタ狩り兵「あぁ…!!!」

宇宙兵器…規模がでかすぎる…現実味が無いがこれは必ず打倒サンタへの一矢になる…そう感じざるを得ない威圧感を纏い宇宙空間に荘厳に存在していた。

巨大な門松の先端は遥か地上に向けられ
クリスマスに終止符を打つ一撃を放つのを今か今かと待ち構えていた。

ベテラン兵「すげぇだろ?それと…これだ」スッ

サンタ狩り兵「それは…!!」

女サンタ狩り兵「サンタ帽…!?」

ベテラン兵「あぁ…脱出の瞬間にな!あいつの慌てた顔ったら無かったぜ!」

サンタ狩り兵「すげぇ…あんたすげぇよ!」

ベテラン兵「しかもこいつを調べて見たら現代の科学技術では遠く及ばない領域の技術力で出来てる事が判明した。このポンポンの部分なんざ『反重力装置』に『超磁力発生装置』の役割だ。」

女サンタ狩り兵「つまりあいつらはそれで物質を飛ばしたり空間をねじ曲げてた訳ね?」

ベテラン兵「そうだ。そんなクソインチキに俺らは騙されていた訳だ。サンタは化け物なんだってな。蓋を開けてみたらなんの事はねぇ…ただの老人だったって訳だな」

ベテラン兵「敵を知り己を知らば百選危うからず…っていうじゃねぇか。そしてな本部の研究者達がこのサンタ帽を解析し解明し今年の兵士の軍服に正式に採用された。」

女サンタ狩り兵「それってつまり…」

サンタ狩り兵「俺達もサンタ狩りと同じ能力を手に入れたって事じゃねぇかよ!!すげぇ!!すげぇぇぇ!!これは勝てるっ!勝てるぞ!!」

ベテラン兵「油断すんじゃねぇ…っ!!」

サンタ狩り兵「っ!!!」

ベテラン兵「武器も防具も整った…!あとはサンタ
をぶちのめすだけ…残りは兵と戦術が揃えば勝てる…ただし…性能に溺れて油断した兵士の隙を奴等は見逃さねぇ…絶対にな」

サンタ狩り兵「すまねぇ…ちょっと盛り上がっちまって…」

ベテラン兵「高翌揚を抑えられない気持ちは分かる。俺だってそうだった。…そしてこのサンタ帽をサンタは必ず取り返しに来る…。格下と戦争をする時の最大のデメリットは技術力を盗まれる事だからな。そこで全部隊で抵抗し敵の戦力が集中した所で、サテライト門松君の一撃だ!どうだ!勝てるだろ!?」

サンタ狩り兵「勝てるっ!!!絶対勝てる!!すげぇ!」

ベテラン兵「そうだろ!?すげぇだろ!?」

女サンタ狩り兵「えぇ!勝てるわ!」

ベテラン兵「油断すんじゃねぇっ!!」

女サンタ狩り兵「えっ!!?」(なんで!?なんで私だけ!?)


















そしていよいよ決戦のクリスマスが幕を開けた。

俺達のクリスマスはまず…

故秋葉大佐の弟・秋葉少佐の演説から始まった


諸君 私はクリスマスが嫌いだ
諸君 私はクリスマスが嫌いだ
諸君 私はクリスマスが大嫌いだ

クリスマスツリーが嫌いだ クリスマスケーキが嫌いだ
イルミネーションが嫌いだ クリスマスソングが嫌いだ
マライ○・キャリーが嫌いだ ホワイトクリスマスが嫌いだ
カップルが嫌いだ 家で待ついい子が嫌いだ
プレゼントを入れる靴下が嫌いだ

街角で 街道で
喫茶店で 駅のホームで
公園のベンチで ブランド店で

この地上で行われるありとあらゆるイチャイチャが大嫌いだ

イルミネーションで彩られた街を恋人繋ぎで手を握りあうカップルの間を引き裂くように歩いた時に舌打ちをされた時など心が腐る

バカ女の媚声に煽られ首都高を翔ばすスポーツカーが嫌いだ!

ボロアパートにすむ声で隣近所の豚女のあえぎ声の大合唱が聞こえて来た時など胸が空くような気持ちにだった!

恋人達が高級レストランで最高級の葡萄園で育て最高のソムリエが注ぐ上等な赤ワインをその性器臭い口に注ぎ込んでいる最中!我々は吉野家で出されたパートのおばちゃんが注いだルイボスティーを口に含んでいるかと思うとまさに地獄だ!

何処にいようとクリスマスソング追い回され害虫のように地べたを這いずるのは屈辱の極みだ

諸君 私はクリスマスの中止を
否っ!地獄の様なクリスマスを望んでいる!!

諸君 私に付き従う童貞・喪女戦友諸君

君達は一体 何を望んでいる?爆発か!?

更なるを爆発を望むか?

情け容赦のない 糞の様な爆発を望むか?

鉄風雷火の限りを尽くし 三千世界の鴉を[ピーーー] 嵐の様なカップルの爆発を望むか?



よろしい!!

ならば戦争だ!!我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとするバールのような物だ

だがこの暗い闇の底で半世紀もの間 堪え続けてきた我々に ただのクリスマス中止では もはや足りない!!

大爆発を!! 一心不乱の大爆発を!!

我らはわずかに一個大隊 千人に満たぬ敗残兵にすぎない

ふるつわものだが諸君は 一騎当千の魔法使いだと私は信仰している

ならば我らは 諸君と私で総兵力100万と1人の童貞・処女集団となる!!

我々を忘却の彼方へと追いやり 眠りこけているカップル達をを叩き起こそう!!

彼氏のズボン引きずり降ろし 股間に液体窒素をぶっかけて凍りついたぺ○スをもぎ取ろう!

思い出させよう連中に童貞の恐ろしさを思い出させてやる!!

連中に我々の屈辱を思いしらせてやる!

天と地のはざまには 奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる

一千人の童貞鬼の戦闘団で世界を燃やし尽くしてやる!!

全隊員「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

割れんばかりの歓声がくり

割れんばかりの歓声が

クリスマスの夜空を震わせた…



シャンシャンシャンシャン…

どこからともなく鈴の音が聞こえる…

秋葉少佐「来たか…っ!総員状況を開始せよッ!!!!!」

凄まじい戦闘だった…。

サンタも兵士もトナカイも小人も肉片となり混じりあった…

サテライト門松の一撃でサンタの本隊は壊滅的な打撃だった。はずだった。

予想だにしない敵の増援…

「リア充+キョロ充連合」

イケメン「お前らに、僕らのクリスマスは終わらせないっ!!」

ヤリチン「クリスマスはバカ女の股を開きやすくする最高のイベントなんだよ!中止になんてされてたまるか!」

キョロ充「そうだ!そうだ!」



サンタ狩り兵「クソッ!あいつら!!」

ベテラン兵「待て!!分が悪い!!撤退だっ!」

サンタ狩り兵「でもっ!!!」

ベテラン兵「大人になれっ!飛び込んで死んで何になる!更に調子に乗らせるだけだ!!」



女サンタ狩り兵「くっ…!気持ち悪い男達!」ギュィィィィィン!!バララララララッ!

ネオオートメイルの高機動を使いこなし
マシンガンを容赦なくばら蒔く女サンタ狩り兵だったが次の瞬間…

イケメン「隙ありぃ!」

女サンタ狩り兵「きゃっ!!」

上から来たイケメンに組伏せられてしまっていた。

女サンタ狩り兵「離せっ!汚らわしいっ!!このっ!!」

イケメン「おっとぉ!あばれんなって…のっ!!」ビリビリッ

女サンタ狩り兵「なっ!?服をっ!?」

女サンタ狩り兵の服はイケメンに無残にも引き裂かれた。





ヤリチン「おぉよく捕まえた!俺そいつさっきから狙ってたのにすばしこくてよぉ!よく見たらいいい体して…げぇっ!こいつ体中めちゃくちゃ傷だらけだ…!キモモチワリィ!!」

女サンタ狩り兵「っ!?」

サンタ狩り兵「貴様らぁぁぁあぁ!!!!」ダララララララッ!!

ベテラン兵さんの制止も振り切って俺は女サンタ狩り兵を助けようと飛び込んだ。
それを阻もうと飛び出して来たキョロ充を銃の柄で殴り散らし、俺の銃撃にびびってイケメンとヤリチンがひるんだ隙に女サンタ狩り兵を担いで逃げた。

サンタ狩り兵「立てるか!?いくぞ!撤退だ!」

女サンタ狩り兵「…」

ヤリチン「ちくしょう!あぶねぇじゃねぇか!!」ダララララララッ!

ヤリチンが苦し紛れに撃ったマシンガンの弾は…女サンタ狩り兵の傷だらけの背中を食い破り…絹のような白い肌を赤く引き裂き女サンタ狩り兵の腹を突き抜けていった…

女サンタ狩り兵「うっ…!」ガクッ

サンタ狩り兵「おいっ!もう少しだ頑張れよ!!ちくしょう!!ちくしょぉおおお!!!」ダララララララッ!!

ヤリチン「ひゃはは!そんな闇雲に撃ってあたるかよ!ひゃははははは!!ひゃは…」ターン!ドサァ…ッ

ベテラン兵「要はちゃんと狙えば当たるって事だ…!ったくばか野郎が…俺まで逃げ遅れるだろうが…早く行けッ!」

サンタ狩り兵「べて」

サンタ狩り兵「ベテランさん!?」

ベテラン兵「いいから行けッ!他の怪我人の撤退もサポートしろッ!」

サンタ狩り兵「あんたまさかまた一人でッ!」

ベテラン兵「また生きて合える!!!今回もそうだっただろ!だから行け!!早くッ!!」

女サンタ狩り兵「ガフッ…」ビタビタ…ッ

サンタ狩り兵「おい…大丈夫かっ!?くっ!ベテランさん!命あっての物種だぞ!!」

ベテラン兵「お前にいわれたかねぇっつーの!!女サンタ狩り兵を頼むぞ!」

サンタ狩り兵「まかせてくれっ!」



ベテラン兵「今回は…まぁ無理だろうな…」ボソッ

ヤリチン「いてぇじゃねぇかよ…おっさんよぉ!」

ベテラン兵「なにっ!?頭を撃ち抜かれて生きてられる訳が…」

ヤリチン「バーカ!俺の本体はぺ○スなんだよ!本体が無事なら頭吹っ飛ばされようが死なねぇの!わかったか!?おっさん!!」

バキューン

ぺ○ス「ギャー」ドサァッ



ベテラン兵「…覚えておこう」チャキッ



イケメン「一人倒した所で」

ヤリチンB「状況は変わらねぇんだよ!」

ベテラン兵「老兵の…かばねに抱かれ…芽吹きあり…」

ベテラン兵「死んでもここは通さん…っ!!」

俺は女サンタ狩り兵を抱えて廃屋の隅に隠れた。

サンタ狩り兵「クソッ…あいつらさえいなければ…」

愚痴など無駄だと分かっていた。

軍服の上着を女サンタ狩り兵に羽織らせながらつい口をついてしまう。

女サンタ狩り兵「さ…寒い…寒い…」

サンタ狩り兵「だ…大丈夫かっ?」

女サンタ狩り兵「すごく…寒いわ…」

サンタ狩り兵「待ってろ…今ズボンも貸してやる。」

女サンタ狩り兵「…ぷっ!はふふっ…笑わせないでよ…痛いじゃない…殺 す気?」

サンタ狩り兵「割りと本気だったんだが…」

女サンタ狩り兵「ズボンなんかより…抱き締めてよ…優しく…」

サンタ狩り兵「あ…あぁ…」ギュッ

女サンタ狩り兵「はぁ…幸せ…幸せだなぁ…クリスマスに…うっ…好きな男の腕の中にいれるなんて幸せ…」

サンタ狩り兵「あぁ…もうしゃべるな…」

女サンタ狩り兵「ダメ…自分の残り時間ぐらいわかるから…最後まで…あなたに思いを伝えたいの…」

サンタ狩り兵「もう伝わってる…伝わったから…もうしゃべらないでくれ…血が…止まらない…」

女サンタ狩り兵「いいの…いいから…聞いて…」





女サンタ狩り兵「わたし、女サンタ狩り兵はサンタ狩り兵を生涯最初で最後の恋人に選びたいとおもいます」


サンタ狩り兵「あぁ…あぁっ…俺もクリスマスかま終わったらお前に結婚を申し込むつもりだった…!」

女サンタ狩り兵「っ!…ありがとう………愛してる…」

サンタ狩り兵「俺も…俺も…愛してる…」

女サンタ狩り兵「…」ニコッ

始めてあった時と同じ笑顔で笑った…やはり笑顔が似合うなと思った。

女サンタ狩り兵は…それから動く事はもうなかった…。





ドガァァァーーーーン!!

サンタ狩り兵「っ!?」

サンタ「ホーホッホッホォ!」

サンタ狩り兵「貴様はっ!!?」

サンタ「やれ…」

ルドルフ「ヴオォッ!」




サンタ狩り兵「クソッ…なんでっ!なんでこんな事に…!!!」

俺はもう動かない女サンタ狩り兵の体を強く抱きしめた…もう終わりだ…!

ゴシャッ

ルドルフの巨大な角に弾き飛ばされ二人は宙を舞った…。

あまりの強烈な一撃に…俺は意識を失った…。



クリスマスが終わった…



雪と共に…白い小さな結晶達が瞬き…そして消えて行った…




今年のサンタ狩り生存者数 0人



エピローグ



女サンタ狩り兵「ごめんごめん!待った?」

サンタ狩り兵「いいや。待ってないよ」


それじゃ、いこうか…


あの後…朝には…全てが元通りになっていた。

壊れた建物も…死んだ隊員も…彼女の足も義足ではなく本物の足になっていた…

すぐには何が起きたのか分からなかった…

しかし頭のなかに声が届いた


「メリィィィクリスマァス!ホーッホッホォ!」


なるほど俺らに対するクリスマスプレゼントかよ。


サンタ狩り兵「悔しい…悔しいが…!やっぱサンタには勝てねぇな!」





終わる

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