町──
ヒロイン「ねえねえ、イケメン君! あそこの看板見て!」
イケメン「ん?」
『 “最強”を目指す強者よ集え! 第二回最強トーナメント開幕! 』
イケメン「へえ、最強を決めるトーナメントか……」
ヒロイン「優勝賞金100万ゴールドだって! 出てみたら!?」
イケメン(前の仕事を辞めて格闘家になって以来、収入も心細くなってたしな……)
イケメン「そうだな……修業の成果を試したいし、出てみようかな!」
ヒロイン「そうこなくっちゃ!」
イケメン「それじゃさっそく、出場申し込みに行こう」
受付──
イケメン「今からでも出場できますか?」
受付「はい、ちょうどあなたで出場枠が埋まります」
イケメン「おお、ラッキー」
ヒロイン「よかったね!」
すると──
ライバル「お、見たツラだと思ったら、イケメンとヒロインちゃんじゃないか」
イケメン&ヒロイン「!」
ライバル「よう、久しぶり」
イケメン「ライバル!?」
ヒロイン「ライバル君じゃない!」
ライバル「ったく、前の職場を辞めた時はビックリしたぜ」
イケメン「ごめん……」
ライバル「ま、俺もお前を追うように辞めちまったけどな。今はお前と同じく格闘家さ」
ライバル「ところで、もしかして……お前もトーナメントに出るのか?」
イケメン「うん、そのつもりだよ。 ──ってもしかして、君も?」
ライバル「ああ、俺も出る」
ライバル「この大会でどっちが上か、決着つけようぜ!」
イケメン「ああ!」
ヒロイン(ライバル君も出るのかぁ……)
ヒロイン(もし二人が対決することになったら、どっちを応援しよっかな……)
会場──
ガヤガヤ……
イケメン「出場者はボクたち含めて8人か……ずいぶん少ないな」
ライバル「なにしろ、素手であること以外はほとんどルールがないからな」
ライバル「いくら賞金がよくっても、出る奴なんかそうそういねえさ」
ライバル「俺や、お前みたいな物好きじゃなきゃな」ニヤッ
イケメン「ハハッ、いえてる」
ライバル「さて……他の6人はいったいどんな奴なんだ?」
記者「今大会の自信のほどは?」
エリート「もちろん、私の優勝で間違いありませんよ」
オォ~……!
イケメン「一人だけ大勢の記者に囲まれて……。すごい自信だな……」
ライバル「前回優勝者らしいぜ。ダントツの優勝候補ってヤツだな」
~
巨漢「ぐへへへ……どいつもこいつもぶっ潰してやる!」ズシンッ
イケメン「大きい……身長2メートルはあるんじゃないか?」
ライバル「ありゃ、典型的なパワータイプだな。捕まったらオシマイだぜ」
老人「ホッホ……久しぶりに現役復帰といくかのう」
イケメン「あんなお爺さんも出るのか! 大丈夫なのか……?」
ライバル「年寄りの冷や水だな……試合中にポックリいっちまうんじゃねえか?」
~
博士「小生の計算と理論の正しさを証明する!」
イケメン「理論で戦うタイプっぽいな」
ライバル「ふん……理論が正しくても体がついていかなきゃ、どうしようもねえさ」
~
青年「うわぁ~……緊張するなぁ……」ドキドキ…
イケメン「まだあどけなさが残る子だね」
ライバル「あんな大人しそうな奴が、ホントに戦えるのかよ……」
仮面「…………」
イケメン「!」ゾクッ
イケメン「不気味な仮面をつけた上に、全身を黒い服で包んでいる……」
ライバル「よほどツラに自信がないんだろうな」
イケメン(いや……奴が仮面をつけてるのはそんな理由じゃない!)
イケメン(なんて禍々しい気だ……。なんというか人間とは思えない……!)
係員「それでは組み合わせを決めるくじ引きを行います!」
係員「選手の皆さまはこちらにどうぞ!」
トーナメント表──
┌─ イケメン
┌─┤
│ └─ 巨漢
┌─┤
│ │ ┌─ エリート
│ └─┤
│ └─ 老人
─┤
│ ┌─ 仮面
│ ┌─┤
│ │ └─ 博士
└─┤
│ ┌─ ライバル
└─┤
└─ 青年
控え室──
ライバル「イケメン、俺と当たるまで負けるんじゃねえぞ! 決勝で会おうぜ!」
イケメン「もちろん!」
巨漢「ぐへへへ……」ズイッ
イケメン&ライバル「!」
巨漢「ずいぶん気の早い話をしてるじゃねえか」
巨漢「残念ながら、テメェらが決勝で会うことはねえよ!」
巨漢「なぜなら、そっちの軟弱ヤロウは一回戦で俺にぶっ潰されるんだからな!」
イケメン「やれるものなら、やってみろ!」
試合場──
ワアァァァァァ……!
「まだかーっ!」 「早くしろーっ!」 「待ちくたびれたぞぉっ!」
実況『大変長らくお待たせいたしました!』
実況『ただいまより第一試合、イケメン対巨漢戦を開始いたします!』
ワアァァァァァ……!
ヒロイン「イケメン君頑張ってー!」
客「クックック……」
ヒロイン(な、なにこの不気味な奴……)
客(さあて、まずは観戦といこうか……)
客(人間のレベルがどの程度のものか、品定めさせてもらうぞ)
<一回戦第一試合 イケメンVS巨漢>
審判「両者、前へ!」
イケメン「いい試合をしよう」
巨漢「予告してやる。テメェは一分でぶっ潰す!」グッ
イケメン「どうかな……」ニッ
実況『さあ、いよいよ試合開始ですッ!』
審判「始めっ!」バッ
巨漢「挨拶代わりだァッ!」
ズドンッ!
実況『巨漢選手のボディブローが、イケメン選手の脇腹にヒットォ!』
オォッ……!
イケメン「…………」
巨漢「なっ!?」
イケメン「アバラ二、三本イッちゃったか……」
巨漢「お、おい……」
イケメン「いや四本か……。うぐぅぅぅぅぅ……!」ガクン
イケメン「ギ、ギブアップ……」ゲホッ
審判「それまでっ!」バッ
巨漢(なんて脆さだ……挨拶代りのパンチだったのに……!)
巨漢「オイ、立てるか?」
イケメン「肩を貸してくれると、ありがたい……」ヨロッ…
巨漢「すまねえな、やりすぎちまった」グイッ
実況『巨漢選手、勝利だァ~~~~~!』
実況『しかし、敗れたイケメン選手も、素晴らしい試合を見せてくれましたァッ!』
ワアァァァァァ……!
ヒロイン「ウソ……負けちゃった……」
客「クックック……」
<一回戦第二試合 エリートVS老人>
エリート「これはこれは……お年寄りが相手とは、私としてもやりづらい」
老人「お手柔らかに頼みますぞ」
エリート「ご安心下さい」
エリート「20%の力でお相手して差し上げましょう」
老人「ホホ……それはありがたい」
実況『前大会覇者と80歳を過ぎた老人の対決!』
実況『果たして試合になるのでしょうか!?』
エリート(なるわけないだろう……。ジジイが……一瞬で終わらせるッ!)
審判「始めっ!」バッ
エリート「はあッ!」シュッ
ベシッ!
実況『エリート選手の鋭いキックが炸裂ゥ!』
老人「ぎゃふっ!」ドサッ…
老人「あうっ……うぐっ……がはっ……」ピクピク…
審判「それまでっ!」バッ
エリート「えっ」
実況『やはり試合にはなりませんでしたァ~~~~~!』
実況『しかし、ご老体でありながら、このような大会に出場したガッツは素晴らしい!』
パチパチパチパチパチ……!
老人「こ、このっ……! お手柔らかにといったじゃろうが!」ギロッ
エリート「す、すみません……」
エリート(5%で相手すべきでしたね……これじゃ悪役だ)
<一回戦第三試合 仮面VS博士>
博士「コンピュータで計算したところ……」
博士「小生が勝利する可能性は……97.15%だ」
仮面「…………」
審判「始めっ!」バッ
博士「はっ!」
バキィッ!
博士「かっ!」
ドゴォッ!
博士「せえっ!」
ズガッ!
仮面「ぬうっ……!」ドサッ…
実況『博士選手の必殺技“サイエンティスト三連打”が決まったァ!』
「すげェ!」 「こりゃ勝負あったな!」 「さっすが博士!」
ヒロイン(いえ……あの仮面の男、まだ力を隠しているわ!)
仮面「なるほど……このままでは勝てんか……」
博士「!」
仮面「ならば、正体を明かそう……」ピシッ
実況『おっと、仮面選手のつけていた仮面にヒビが……!?』
仮面「そして──」ピキピキッ
パキィンッ……!
悪魔「正体を明かしたからには、貴様は死あるのみだ」
博士(なんだコイツ……化け物じゃないか!)ゾクッ
ヒロイン「あれは人間じゃない……悪魔だわッ!」
実況『なんと仮面選手の正体は悪魔だったァ~~~~~!』
博士(バ、バカな……悪魔だと!? 計算違いだ……!)
博士(いや、落ちつけ……! すぐに再計算しなければ……!)
悪魔「死ね」
ギュアッ!
博士(再計算……完了!)
博士(小生が勝利する確率……99.83%!)
博士「はかせいッ!」シュッ
ベキィッ!
悪魔「ぐおあっ……!」ドサッ…
実況『博士選手の奥義“サイエンティスト手刀”がまともに入ったァッ!』
悪魔「ぐぐっ……おのれぇっ……」ググ…
悪魔「この私が……人間如きに敗れるとは……」ガクッ
審判「それまでっ!」
博士(そうか……。仮面が取れた分、防御力が下がり、勝率が上がったのか……)
実況『博士選手、悪魔を下し、堂々の二回戦進出ですッ!』
ヒロイン「ライバル君の二回戦の相手はあの博士か……要注意ね」
客(ふん……悪魔の恥晒しめが)
<一回戦第四試合 ライバルVS青年>
ワアァァァァァ……!
実況『いよいよ一回戦も、残り一試合!』
実況『二回戦進出の最後のキップを手にするのは』
実況『ライバル選手か!? それとも今大会最年少の青年選手か!?』
ライバル(イケメン……お前の分まで、この俺が勝ち抜いてやるぜ!)
青年「よろしくお願いしますっ!」ニコニコ…
ライバル「よろしく」
ライバル(なんだコイツ……試合直前だってのに、ニコニコして……)
ライバル(ま、一回戦から苦戦してられないよな!)
ライバル(コイツはすぐに片付けて、一気に優勝してやる!)
審判「始めっ!」バッ
ライバル「シッ!」シュッ
バチッ!
青年「へぶっ!」
ライバル「せいいっ!」ブオッ
ドゴォッ!
青年「がふっ……!」
実況『軽いジャブからの左ハイ、緩急あるコンビネーションが炸裂ゥ!』
青年「フフフ……やりますね」ニヤッ…
ライバル「!」
ライバル(効いてないだと……!?)
青年「まさか、一回戦から“あれ”を使うことになるなんて……」
ライバル「え? “あれ”っていったいなんなんだよ?」
ヒロイン「!」ハッ
ヒロイン「に、逃げてぇっ!!! ──危険だわッ!!!」
青年「帝王流秘奥義“魔炎咆哮絶命──」
ライバル「“あれ”って……なんなんだよォ!?」ギュオッ
青年「へ?」
ドゴォンッ!!!
青年「ぐは……っ!」ドサッ
審判「それまでっ!」バッ
ヒロイン(ああ……やっぱり……)
ヒロイン(ライバル君は何かに疑問を抱いた時、普段の10倍の力を発揮するの)
ヒロイン(その状態のライバル君の攻撃は、非常に危険なのよ……!)
青年「あが、が……」ピクピク…
実況『青年選手、完全にノックダウン! 白目をむいています!』
ヒロイン(もう少し叫ぶのが早かったら、助けられたかもしれないのに……)
実況『以上で一回戦は終了ッ! 二回戦開始まで、しばらくお待ち下さい!』
客席──
ヒロイン「さてと、二回戦が始まる前に、お手洗い済ませておこうかな」スクッ
客「クックック……そろそろオレの出番かな」
ヒロイン(この人……いったい何をしようというの!?)
医務室──
ライバル「よう、イケメン」
イケメン「ライバル、二回戦進出おめでとう!」
ライバル「お前は負けちまったが……俺がお前の分まで勝ち抜いてやるから安心しな!」
ライバル「ところで、お前もヒロインちゃんと客席で観戦したらどうだ?」
イケメン「いや……ボクはもう少しここにいるよ。やることがあるからね」
<二回戦第一試合 巨漢VSエリート>
巨漢「ぐへへへ……ちっとは骨のありそうな相手だな」ザッ
エリート「フフフ、楽しませて下さいよ?」ザッ
実況『実力派同士の対決! 果たしてどちらが勝つのかッ!?』
審判「始め──」
客「ちょっと待った」フワッ…
実況『!? ──何事でしょう、客席から人が降りてきました!』
エリート「おやおや……行儀がよくないお客さんですね」
巨漢「大会のジャマすんじゃねえ! とっとと出ていきやがれ!」
客「クックック……“大会”か。そんな茶番はもう終わりだ」
巨漢「ンだとォ!?」
客「ただし、茶番とはいえ、この大会の世間からの注目度は大きい」
客「ようするに、我ら悪魔の力を見せるには格好の舞台というわけだ」
エリート「悪魔……? ということは、もしや先ほどの仮面の仲間ですか」
客「仲間とは心外だな。ヤツなど最下級の悪魔に過ぎん」
巨漢「なんだと!? アイツほどの実力で最下級なのかよ!?」
客「ちなみにオレは最上級悪魔……オレの戦闘力はおよそヤツの100倍だ」
エリート「100倍……!?」
客「手始めに……巨漢とエリート、キサマら二人を血祭りに上げる」
実況『な、な、なんと最上級の悪魔が試合に乱入だァ~~~~~!』
巨漢「なめんなよ……!」ギリッ…
エリート「いきなり現れて、我々を血祭りに上げるですって? ふざけた輩だ」
客「オレが恐ろしいか? なんなら二人がかりでもかまわんぞ」
巨漢「お、おもしれえ……やってやる!」ザッ…
エリート「ならば、二人がかりでやってあげましょう!」サッ…
客「来い」ニヤッ
実況『乱入者、巨漢選手とエリート選手を、同時に相手するようです!』
巨漢「とっとと出ていきやがれ!」ブンッ
エリート「はぁっ!」シュバッ
ドゴォッ! バキィッ!
客「ぐはァ……っ!」
客(つ、強すぎ……る……)ドサァッ…
実況『乱入者、あっという間にKOされたァ!』
実況『さぁ、気を取り直して試合再開といきましょう!』
審判「始めっ!」バッ
巨漢「ぬおりゃッ!」ブウンッ
ドゴォッ!
エリート「ぐうっ……!」ズザザッ…
実況『巨漢選手、凄まじいラリアット! ──が、エリート選手も倒れない!』
エリート「私の番ですね」バババッ
ガガガッ!
巨漢「ぐおぉ……っ!」ヨロッ…
実況『エリート選手の連続蹴りッ! タフな巨漢選手がよろついた!』
巨漢「ぐへへぇ……やるじゃねえか!」ザッ…
エリート「そちらこそ……。久々に出させてもらいますよ、100%の全力をね」ザッ…
「こいつら、すげえ!」 「最高の戦いだ!」 「どっちも頑張れッ!」
ワアァァァァァ……!
バキィッ! ガッ! ゴッ! ドゴッ! ベシィッ!
実況『速いッ! 重いッ! 激しいッ! 止まらないッ! ──凄まじい攻防ですッ!』
実況『まさに最強を決めるに相応しいバトル!』
実況『会場のボルテージも最高潮ォォォァ~~~~~ッ!』
ワアァァァァァ……!
「どっちが勝つんだ!?」 「どっちも譲らねえ!」 「興奮してきたァ~!」
巨漢「さすがは前回優勝者……しぶてえなあ」ハァ…ハァ…
エリート「ここまでタフな相手は初めてですよ」ハァ…ハァ…
巨漢「だが……そろそろ決めるぜぇ!」
エリート「私こそ、最大の技でお相手しましょう」
実況『両者、決着をつけるつもりだァ~~~~~!』
客席──
ライバル「よう」
ヒロイン「あ、ライバル君! 一回戦はおめでとう!」
ヒロイン「ところでこの勝負、どっちが勝つと思う?」
ライバル「…………」
ライバル「お互いに打撃技が得意だからな……」
ライバル「ラストは、巨漢は拳、エリートは足技で勝負に出るだろう」
ライバル「となると、破壊力の勝る巨漢が有利……!」
巨漢「ぬおりゃッ!」ビュアッ
実況『巨漢選手、なんとあの巨体でハイキックを繰り出しましたァ!』
エリート「セイィッ!」ギュンッ
バキィッ!
実況『が、エリート選手がキックをかいくぐり、カウンターでパンチを決めたァ!』
巨漢「うがっ……」ヨロッ
エリート「はあっ!」バッ
実況『さらにエリート選手、巨漢選手の右腕に飛びついて──』
実況『腕ひしぎ逆十字を決めたァ~~~~~! これは抜けられないッ!』
巨漢「ぐああああっ! 参ったァ!」ミシミシ…
審判「それまでっ!」バッ
実況『決まったァ~~~~~!』
実況『エリート選手、パンチから関節技のコンビネーションで決勝進出ゥッ!』
ワアァァァァァ……!
ライバル「……やっぱな」
医務室──
イケメン「いよいよ、二回戦だな」
ライバル「おう、必ず勝ってくるから安心しろ!」
イケメン(ライバルの実力なら、博士って相手なら問題なく勝てるはず……)
イケメン(だが、なぜだろう? ライバルが戦って勝つ姿が想像できない……!)
ワイワイ……
巨漢「どっちが勝つ方に賭ける?」
老人「ワシは博士に100ゴールドじゃ」
青年「じゃあボクはライバルさんに100ゴールド!」
悪魔「私はライバルに100ゴールド」
客「オレは博士に100ゴールド」
イケメン「コラコラ、皆さん安静にしてないと」
巨漢&老人&青年&悪魔&客「はぁ~い!」
<二回戦第二試合 博士VSライバル>
実況『さあ、試合場に両雄出揃いました! 試合開始待ったなしッ!』
博士「一回戦でライバル氏のデータは全て収集した……」
博士「そのデータと小生の戦闘力を計算した結果、小生が勝利する確率は──」
ライバル「…………」ゴクッ…
博士「0%……」
博士「というわけで棄権します」クルッ
審判「それまでっ!」バッ
実況『あァ~~~~~っと、ここで博士選手、棄権!』
実況『科学者らしい、実に合理的な選択といえましょうッ!』
ワアァァァァァ……!
「やるじゃねえか!」 「さっすが博士!」 「一味ちがうぜ!」
実況『観客も大いに盛り上がっています!』
ライバル(あと一試合か……。イケメン……約束通り優勝してやるからな!)
<決勝戦 エリートVSライバル>
実況『ついにこの時がやってまいりましたッ!』
実況『最強の座に名乗りを上げた8名の選手も、いよいよ残り2名!』
実況『この一戦に勝利し、トーナメント優勝の座に輝くのは──』
実況『すなわち“最強”の座を手にするのは、いったいどっちだ!?』
ワアァァァァァ……!
審判「始めっ!」バッ
ライバル「なぁ、エリートさん。ずっと気になってたんだが──」
ライバル「格闘エリートであるアンタが……なぜこんな危険な大会に出たんだ?」
エリート「…………」
エリート「私には……病気の妹がいるのですよ……」
──────
────
──
~ 回想 ~
妹「ケホッ、ケホッ……」
エリート「大丈夫か?」
妹「……お兄ちゃん、またあの大会出るの?」
エリート「もちろんさ」
エリート「なんたって、そのために格闘技のエリートと呼ばれるまでに腕を磨いたんだ」
エリート「お前の病気は、いいお医者さんなら治せる病気なんだ!」
エリート「優勝賞金で、いいお医者さんを見つけてやるからな」
エリート「お兄ちゃんが必ずお前の病気を治してやる!」ガシッ
妹「うん……でも無理しないでね」
妹「私のせいで、お兄ちゃんがケガでもしたら……イヤだから」
エリート「大丈夫だよ」
エリート「前回大会と同じく、あっという間に優勝してみせるさ!」
──
────
──────
ドゴォッ!!!
エリート「ぐはァ!」
ドサァッ……!
実況『決まったァ~~~~~!』
実況『エリート選手がなにやら物思いにふけっているスキを突いて』
実況『ライバル選手の一撃がヒットォ!』
実況『準決勝でのダメージが残っていたエリート選手、完璧にダウンッ!』
博士(しかも、ライバル氏はエリート氏に疑問を抱いていたため)
博士(10倍パワーアップしていた……あれを喰らったらひとたまりもあるまい)
ライバル「よっしゃァ~~~~~~~~~~!!!」
エリート(す、すまない……妹よ……)ガクッ
ライバル「──ん?」
ザワザワ……
実況『おや……? なにかアクシデントがあったもようです』
審判「どうしたのかね?」
ライバル「…………」
ライバル「脈拍と心拍、確認……」スッ…
ライバル「どっちも……止まっている! 呼吸もしていない……!」
ザワッ……!
ヒロイン「ウソでしょ……!?」
ライバル「おい、起きてくれ! しっかりしろ! 目を覚ませっ!」ユサユサ…
ライバル「妹さんのためにも、こんなところで死んじゃダメだ!」ユサユサ…
医者「あ~……こりゃダメですな。ご臨終です」
ライバル「そ、そんな……」ガタガタ…
実況『なんとォ~~~~~! エリート選手、死んでしまいましたァッ!』
実況『対戦相手であるライバル選手、顔面蒼白になっておりますッ!』
巨漢「マジかよ!?」
博士「エリート氏が……死んでしまったとは……」
老人「惜しい男を亡くしたのう……」
悪魔「ちくしょう……なんてことだ……! この世に神はいないのかッ!?」
青年「エリートさん……。ライバルさん……」
客「クックック……人の命とは、儚いものだな」グスッ…
「──いや、まだだッ!」
イケメン「昔を思い出すんだ、ライバルッ!」
イケメン「エリートさんは、まだ死んじゃいないッ!」ダダダッ
ライバル「イケメン!?」
イケメン「心肺停止から三分以内に必要な措置を取れば」
イケメン「後遺症なくエリートさんを救うことが十分に可能だ!」
ライバル(そういえばそうだ!)
イケメン「だが、救命措置は時間との勝負だッ!」
イケメン「ヒロイン、すぐに強心剤投与の準備を!」
ヒロイン「うんっ!」ババッ
イケメン「ライバルは急いでタンカを用意してくれ!」
イケメン「タンカの用意が済み次第、エリートさんを病院に運ぶ!」
イケメン「他の選手は、近くの病院までの道を確保してくれ!」
ライバル「……分かったぜ!」タタタッ
イケメン「戻ってこい……」グッグッ…
イケメン「戻ってこい……」グッグッ…
ヒロイン「強心剤、投与開始します!」チュゥゥ…
イケメン「戻ってこいッ!」グッグッ…
ザワザワ…… ドヨドヨ……
実況『イケメン選手が救命措置を施しておりますが……果たして……?』
巨漢(すげえ……アイツ、すげえよ!)
巨漢(俺にアバラを折られてるのに、あんな激しい心臓マッサージを……!)
巨漢(そういや、医務室でもアイツが治療してくれたおかげで)
巨漢(俺を含めた負けた奴らは、すぐ喋れるぐらいまで回復することができたんだ!)
博士(そういえば、あのイケメンという選手──どこかで見たことがある)ハッ
博士(まさか!?)
博士(若くして医学界の誰よりも優秀な医師となったが──)
博士(利益よりも患者を優先する姿勢が、上層部の反感を買い)
博士(半ば追放されるように医学界を去るはめになった、Dr.イケメン!?)
博士(となると近くで助手を務めるのは、伝説のナース、ヒロインか!)
博士(そういえば、ライバル氏も元は彼に次ぐレベルの医者だったハズ……)
博士(医学界を追放された若武者たちに、このようなところで会えるとは……)ゴクッ…
ドクンッ……
エリート「──がはっ!」ゲボッ
イケメン「よし、心拍と呼吸が戻った!」
イケメン「だが、念のため病院に輸送して、精密な治療を行う!」
巨漢「おうよ、輸送は任せとけ!」
ライバル(俺は心肺停止を確認した途端──)
ライバル(医者時代のイヤな思い出がフラッシュバックして)
ライバル(パニックになっちまったが……さすがだぜ、イケメン……!)
病院──
エリート「どうもありがとうございます……」
エリート「あなたがいなければ、今頃私は死んでいたでしょう……」
イケメン「いえ、医術を学んだ者として、当然のことをしたまでです」
エリート「ところで……虫のいい話なのですが……」
イケメン「妹さんのことですか?」
エリート「えっ……」
イケメン「ライバルから話は聞いています」
イケメン「このボクとライバルが共同で治療して、あなたの妹さんは必ず治します」
エリート「あ、ありがとう……ございます……!」
エリート「すぅ……すぅ……」
イケメン(……緊張が解けて、眠ってしまったか)
イケメン「もう大丈夫でしょう。あとはよろしくお願いします」
医者「任せて下され」
試合場──
イケメン「ライバル、優勝おめでとう!」
ライバル「おお、来てくれたのか!」
イケメン「エリートさんも容体が安定したし、一言だけでも祝福を、と思ってね」
ライバル「イヤ……」
イケメン「?」
ライバル「俺はトーナメントの優勝を辞退したんだ……」
イケメン「ええっ!? ──じゃあ、優勝はエリートさんか?」
ライバル「いいや、違う……」
ライバル「優勝者は、お前だよ!」
イケメン「!?」
ライバル「病院で眠ってるエリートも、会場の皆も、そう思ってるハズさ」
ライバル「そうだろ、みんな!」
巨漢「へっ、アンタにゃかなわねえよ」パチパチ…
老人「素晴らしい救命措置じゃった……天晴れじゃ!」パチパチ…
悪魔「悪魔であるこの私を泣かせるとはな……」パチパチ…
博士「もしよければ、君らの医学界復帰を支援させてくれ。力になれるハズだ」パチパチ…
青年「かっこよかったです!」パチパチ…
客「クックック……見事だ」パチパチ…
審判「感動させてもらったよ」パチパチ…
「すごかったぞォッ!」 「アンタが一番だ!」 「感動をありがとうッ!」
ヒロイン「おめでとう……イケメン君!」
ライバル「お前がナンバーワンだ!」
イケメン「みんな……ありがとう!」
実況『第二回最強トーナメント優勝者は、イケメン選手に決定いたしましたァッ!』
<おわり>
このSSまとめへのコメント
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