渋谷凛「夢占い」 (35)
アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作SSです
よろしくお願いします
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凛「夢占い?」
奈緒「ああ。有名な心理学者さんが、カウンセラーとして事務所に来たらしいんだ」
加蓮「親ぼくを深めるために、今ならただで夢占いしてくれるんだって」
凛「ふーん。夢占いねぇ……」
奈緒「行ってみようぜ! みんなが並び出す前にさ!」グイッ
凛「ちょ、ちょっと」
タタタッ
ガチャ
奈緒「こんにちはー!」
学者「こんにちは。えっと……神谷さんに、北条さんに、渋谷さんですね」
加蓮「すごーい。私たちの名前覚えてくれてるんだ」
学者「しばらく勤めることになりますからね。あ、申し遅れました。私はカウンセラーとして招かれた……」
奈緒「知ってます! 心理学者さんなんですよね」
加蓮「噂を聞いてあたしたち、夢占いをしてもらいに来たんです。ただで占ってくださーい!」
学者「あ、早速やってきてくれたんですか。ふふ、嬉しいです」
学者「それでは、どなたから最初に占いますか?」
加蓮「最初は……この子からお願いします!」スッ
凛「え?」
奈緒「頼むぜ、切り込み隊長!」
凛「え……え!? ちょっと待ってよ、私なにも考えてきてないんだけど!」
加蓮「考えることなんてないでしょ」
奈緒「見た夢の話をすればいいだけなんだからな!」
凛「いやいや夢って……そんな、いきなり言われても困るよ」
学者「どんな夢でも構いませんよ。印象に残った夢、不思議に思った夢、なんでもオッケーです」
凛「……今日見た夢じゃなくてもいいの?」
学者「はい。むしろ古い夢ほど良かったりします。それだけ心に残っているということですから」
凛「……」
奈緒「お、何かネタがあったか?」
凛「ネタっていうか……前に見た夢で、どうして私があんな夢を見たのかわからないやつがあるから……」
加蓮「夢占いにぴったりじゃん! 凛、それ話しなよ」
凛「でもなぁ。変に思われるかもしれないし」
奈緒「あたしたちはどんな変態な凛でも受け止めるぜ!」
凛「へ、変態まではいかないよ!」
凛「……まあでも、私もずっと気になってた夢だし。この際占ってもらおうかな」
学者「ふふ。話していただけますか」
凛「でも奈緒、加蓮。約束して。今から話すことは秘密にするって」
奈緒「おう、わかった!」
加蓮「もったいぶってないで早く話してよ~!」
凛「……」
凛「えっと、私……」
凛「ある友達と、キスする夢を見たんだ」
シーン
加蓮「……え」
奈緒「き、キス……?」
凛「あっ、正確にはキスする直前までの夢ね。直前で起きちゃったから」
奈緒「っていやいやいやっ!! き、キス!? 友達とキスっ!?」ガバッ
加蓮「と、友達って……まさか女の子の友達!?」
凛「……うん」
奈緒「!!?」カァァ
加蓮「な、なにやってんの凛!? 夢の中でって……え、えーっ!?」
凛「だ、だから言ったじゃん。変に思われるかもしれないって!」
奈緒「そういう方向の”変”だとは思わねーだろ!?」
加蓮「ていうか凛、まさかその友達って私たち2人のどちらかなんじゃ……」サーッ
凛「ち、違うよ。2人とは別の人!」
奈緒「……でも、キスしたのは女の子なんだよな?」
凛「それは、そうだけど」
奈緒「……」
加蓮「ま、まあ、男子とキスする夢を見るよりはアイドルとして健全とも言えるし……」
奈緒「そ、そうだな。真面目な凛の性格が出たってことだろう、きっと……」
学者「ふふふ、興味深いですねぇ。もう少し詳しく夢の中身を聞かせてもらえますか?」
凛「うん……えっと確か、その友人は眠れるお姫様になっていて」
学者「お姫様?」
凛「はい。キスしないと起きない童話のお姫様っているじゃないですか。私の夢の中で、彼女はそのお姫様になっていたんです」
学者「渋谷さんは?」
凛「あー……私は王子様の格好をしてました。友達を起こすために私のキスが必要とか言われて、それで……」
学者「不可抗力でキスしたと」
凛「はい……あ、いえっ。キスする直前で目が覚めたんですっ」
学者「渋谷さんは普段から、そのお友達と密接な関係だったりするんですか」
凛「密接……キスしたりするかってこと?」
学者「まあそうなりますね」
凛「し、しないよ……私たちは普通の友達だから」
学者「……」フムフム
凛「……何?」
学者「いえ……もしかしたらこの渋谷さんが見た夢は、渋谷さんの深層心理を表しているのかもしれないと思いまして」
凛「深層心理?」
学者「渋谷さん自身も気づいていない、渋谷さんの本当の気持ちということです」
凛「わ、私がその友達と現実でもキスしたいと思ってるってこと……?」
学者「いえ、そうとは限りません。夢=現実に叶えたいものとは一概に言えませんからね。夢から読み解けるのはあくまでも心理ですので」
凛「……」
学者「しかし渋谷さんが、そのお友達に対して何か特別な気持ちを抱えているのは本当でしょう」
学者「それがどういう気持ちなのか、夢占いでは詳しくはわかりません。ただ……」
学者「一度、”友達”という色眼鏡を外してみてはどうでしょうか。もしかしたら、それで何かが変わるかもしれませんよ」
凛「友達……」
奈緒「うーん。よくわかんないけど、凛がそんな面倒臭い気持ちを抱えてるとはあたしには思えないけどなぁ」
加蓮「単に欲求不満なだけなんじゃない?」クスクス
凛「2人は少し黙ってて!」
学者「あはは、渋谷さん。所詮は占いですから、カウンセリングとはまた違います。あまり重く受け止めないでくださいね」
凛「あ……そうですよね。えっと、ありがとうございました」ペコ
加蓮「先生ーっ。次は私たちの夢も占ってくださーい」
学者「ふふ、もちろん良いですよ。どちらからにしますか?」
加蓮「奈緒からやってもらいなよ。確かアニメの夢を見たんでしょ」
奈緒「そうなんだよ。実は昨日見た深夜アニメの……」
キャッキャ
凛「……」
──事務所──
ガチャ
凛「おはよー」
卯月「あ、凛ちゃん。おはようございますっ」
凛「卯月……もう来てたんだ」
卯月「はいっ。凛ちゃんも早いですね」ニコ
凛「……うん。私コーヒー淹れるけど、卯月も飲む?」
卯月「あ、いただきます。ありがとうございますっ」
コポコポコポ
凛「砂糖いくつ?」
卯月「2つでお願いします!」
凛「ん」スッ
卯月「そうだ凛ちゃん。昨日撮影所のスタッフの方に映画のチケットをもらったんですけど」
凛「映画のチケット?」
卯月「はい。恋愛映画のペアチケットです。一度は断ったんですけど、使わなかったら他の人に譲って構わないからと……」
凛「ふーん。恋愛映画ねぇ」
卯月「誰か使いたいって人、凛ちゃんの知り合いにいませんか?」
凛「んー……私の知り合いってアイドルばっかだから、そういうデートアイテム欲しいって人は思い当たらないかなぁ」
卯月「えへへ。そうですよね。私も全然あげられる人が思いつかなくって」
卯月「誰か欲しい人いないかなー」
凛「……卯月が見に行こうとは思わないの?」
卯月「え?」キョトン
凛「……何、私そんな変なこと言った? 卯月だって恋愛映画に興味ゼロじゃないでしょ」
卯月「そ、そりゃそうですけど……でも、その、一緒に観に行く人もいませんし」
凛「誰か誘えばいいじゃん。美穂とか響子とかさ」
卯月「恋愛映画のペアチケットですよ。お友達をなかなか誘えませんよ」
凛「プロデューサーは?」
卯月「え、どうして?」
凛「……」
学者『一度、”友達”という色眼鏡を外してみてはどうでしょうか。もしかしたら、それで何かが変わるかもしれませんよ』
凛「……ねえ、卯月」
卯月「はい?」
凛「私と一緒に観に行こっか」
卯月「…………へっ?」
凛「友達誘えないんでしょ。だったら、私が卯月のこと誘ってあげるよ」
卯月「……」ポカーン
凛「嫌かな?」
卯月「い、いえ、嫌じゃないです。でも……」
凛「でも?」
卯月「その、凛ちゃんは、嫌じゃないのかなって……」
凛「……何言ってんの。私から卯月を誘ってるのに」クス
卯月「そ、そうですよねっ」
凛「今度の日曜日に駅に集合ね。それじゃ」クルッ
テクテク バタン
卯月「……」
──日曜日──
卯月「お、お待たせしました~」タタタッ
凛「早いね卯月。まだ集合時間の30分前だよ」
卯月「凛ちゃんこそすごく早いですっ」
凛「私から誘ったんだからね。遅れるわけにはいかないでしょ」
卯月「ふふっ。やっぱり凛ちゃんって真面目ですね」ニコッ
凛「……さ、遅れないようにもう映画館行こっか」
卯月「はい!」
──映画──
女優「ん……んぅ……ふっ、ん……っ」
凛「…………」
卯月「…………」
女優「あっ、あっ……あん……っ」
ブーン…
卯月「……」カァァッ
凛「さ、最近のR15映画って、結構ギリギリなんだね……」
卯月「ごめんなさい凛ちゃん……こんな内容だったなんて私知らなくて……」
凛「私は平気。卯月こそ大丈夫? こういうのに耐性なさそうだし……」
卯月「え!? 凛ちゃんは耐性あるんですかっ!?」
凛「は……!?」
ザワザワ
凛「べ、別にそうは言ってないでしょ! ていうか卯月、声大きい!」
卯月「あ、ああ……」カァァ
凛「また顔赤くして……ほら、外出るよっ」ギュッ
卯月「す、すみません~!」
タタタ…
──ファミレス──
卯月「ごくごく。……ぷはーっ」
凛「少しは落ち着いた?」
卯月「はいっ。えへへ、すみません、ご迷惑をおかけして……」
凛「別に。こんなの迷惑でもなんでもないよ」
卯月「凛ちゃん……」
凛「……さっ、何食べよっか。卯月はもう注文決めた?」
卯月「えーと、じゃあ私はこのハンバーグランチにします」
凛「私はサイコロステーキセット。デザートもついてくるみたいだし」
卯月「うふふ、いいですねぇ」
ゴチソウサマデシター
卯月「ぷはー、とっても美味しかったです!」
凛「うん。大満足だね」
店員「チョコレートケーキ、お持ち致しました」
凛「あ、私です」
店員「ごゆっくりどうぞ~」
コトッ
凛「ふふ、美味しそう……」
卯月「……」ジーッ
凛「……卯月?」
卯月「……えっ? あ、いや、私もデザート付きのを頼めばよかったのとか思ってませんよ!」
凛「……もう、卯月ったら。ちょっと待ってて」
サクッ
凛「はい、半分あげるよ」スッ
卯月「い、いいんですか!」パァァッ
凛「そんな物欲しそうな目されたら、あげないわけにはいかないでしょ。あ、でも小皿がないな。もう一度店員さんを呼んで……」
卯月「あーんっ」
凛「え……?」
卯月「お皿のためだけに店員さんを呼ぶのも悪いかなぁって。1口だけでいいので、直接口の中に放り込んじゃってください!」
凛「…………」スッ
パクッ
卯月「うふふ、美味しい」
凛「もう、食いしん坊なんだから……」
卯月「あ、でも……」
凛「何? どうかした?」
卯月「いえ、結局フォークをもう1本持って来てもらうために店員さんを呼ばないとダメだと思って」
凛「あー……」
卯月「すみません凛ちゃん。そこの呼び鈴を鳴らしてもらえますか?」
凛「……」
パクッ
卯月「え……?」
凛「もぐもぐ。……別に、友達同士で汚いとか思ったりしないでしょ」
卯月「あ……そ、そうですよね。あは、あははっ」カァァ
凛「……卯月、また顔赤くなってるから」
卯月「ご、ごめんなさいっ。なんでかな、食べたら暑くなってきちゃったのかな……」パタパタ
凛「……もう。水頼んであげるから」
ピンポーン
卯月「え?」
店員「お待たせしました~」タタタ
凛「すみません。水1つください」
店員「かしこましまりた。すぐにお持ちいたします」
卯月「……」
凛「何?」
卯月「い、いえ……」
アリガトウゴザイマシター
凛「もうこんな時間。帰らないとね」
卯月「ですね、残念です。もっと凛ちゃんとおしゃべりしたかったのに……」
凛「……」
卯月「あ、ごめんなさい。明日も事務所で会えるのに、私ってば……」
凛「……ねえ卯月。よかったら、私の家に泊まっていかない?」
卯月「え……え!? いいんですか!」
凛「いいよ別に。大したおもてなしはできないけどね」
卯月「おもてなしなんて、凛ちゃんのお家にお泊まりできるだけで私すごく嬉しいですっ」
凛「……ふーん。ま、着替えとかは私のを使えばいいし。不便はさせないから」
卯月「はいっ、ありがとうございます!」
──凛の部屋──
卯月「おじゃましまーすっ」
凛「うん、適当に座っちゃっていいから」
卯月「ありがとうございますっ」
凛「何か持ってくるよ。卯月何飲む?」
卯月「あ、お構いなくっ」
凛「いいのいいの、適当にコーヒーでも淹れてくるよ。あ、コーヒー飲むと寝られなくなっちゃう?」
卯月「えへへ、いえ……眠れないのは平気です。たくさん飲んで、たくさん夜更かししましょうね!」ニコッ
凛「! ……う、うん。それじゃあちょっと待っててね」
バタン
…ガチャ
凛「おまたせ。なんかエナジードリンクとかもあったから一緒に持ってきたよ。よかったら飲んで……」
卯月「すー、すー」
凛「って寝てるじゃん!」
卯月「くー、くー」
凛「寝息まで立てちゃって……うん、完全に熟睡だね」
凛「……」
凛「……卯月ー」ツン
卯月「……むにゃむにゃ」
凛「柔らかいほっぺ……」ツンツン
卯月「……」
凛「……なんとなく、なんで私があんな夢を見たのかわかった気がする」
凛「今日1日一緒に過ごしてわかったけど、卯月ってなんていうか、無防備なんだ」
凛「世間知らずっていうか、純粋すぎるっていうか。多分、そういうイメージが私の中のお姫様像と一致してるんだよね」
凛「だから自分が守ってあげなくちゃって気持ちになって……それが心理学者さんが言うところの『特別な気持ち』ってやつなんだ」
凛「……キス仕掛けた理由は、ちょっとよくわからないけど」
凛「……まあでもきっとそういうことだ。守ってあげたいってだけの、シンプルな、よこしまな気持ちなんてこれっぽっちもない……」
凛「”友達”として普通の……気持ち……」
卯月「……」スヤスヤ
凛「……」
凛「……」ツン
卯月「……」
凛「……」ツンツン
卯月「……」
凛「……」チョン
卯月「……」
凛「……」スリスリ
卯月「……」
凛「…………」
ゴソゴソ…
──翌日──
ガチャ
卯月「はぁ、はぁ……!」
学者「いらっしゃい島村さん。どうかされましたか?」
卯月「……夢を」
学者「え?」
卯月「友達と映画みたいなことする夢を見てしまったのですが!!」カァァッ
おわり
お疲れさまでした
見てくださった方、ありがとうございました
よかったら過去作も見てください
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