提督「安価でいくどもみんなと遊ぶ」 (1000)

提督「俺は常々思っていた。何故普通の人間では深海棲艦と戦う事が出来ないのかと」

ウォースパイト「アドミラル、あなた……」

提督「みんなが傷を負って帰ってくる姿を見ていると、胸が痛んだ。自分がやつらと戦えればいいのにと」

ウォースパイト「……」

提督「だったら、普通の人間でなくなればいい」スッ

ウォースパイト「……! ストップ、アドミラル!」

提督「俺は人間を辞めるぞ! ウォースパイト、お前の血でなぁ!」シュン

ウォースパイト「はや……くっ……!」

提督「量にしては少ないが、十分だ!」

ウォースパイト(見えなかった……今の動き!)

提督「さあて、今から深海どもを軽く捻ってやるか。……なんだ、目の前に立って」

ウォースパイト「今のアドミラルを放っておけません」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492864983

提督「ほう、この力を手にした俺を止められるかな」

ウォースパイト「ユーシェルノットパス! 止めてみせます!」

提督「キエエエエエエ!」シュバッ

ウォースパイト(やはり見えない! でも……)

ガシッ

提督「……っ! 俺の動きは見えなかったはず!」

ウォースパイト「動きが見えなかったとしても、来る場所が分かっていたら受け止めるのはそう難しくはないわ」

提督「だが、両手で俺を掴んだのは間違いだったなぁ。この状態からでも俺は攻撃を繰り出さ……な、ば、馬鹿な、何だこれは!」

ウォースパイト「これがオーバードライブ! アドミラル、貴方を倒す技よ!」

提督「ぐ、ば、馬鹿な……波紋使いだったなど、聞いてないぞおおおおおおおお!!」

バタッ

ウォースパイト「グッバイ、アドミラル」


~~~~~~~~

ウォースパイト「……」

<山ずみの漫画

ウォースパイト「……ちょっと、影響され過ぎたかしら」

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提督「安価でみんなと遊ぶ」
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※雑談自由・キャラ崩壊注意
※安価は自由にしてます(遊ぶに縛られなくてもいいや)
※人生がENDにいきそうな安価は曲解します
※毎日一回更新
※sage進行(E-mail欄に『sage』と記入してからの書き込みをお願いします)


―執務室―

提督「何故かウォースパイトが謝ってきたんだけど」

霞「また何かしたの?」

提督「さあ……ところで、大鳳は?」

霞「執務室爆破したわけだし、さすがに秘書艦からは下ろしたわ。本人もそれがいいと言ったし」

提督「ふーん。……え、爆破の罪でそれだけ?」

霞「巻き込まれたのはあんただけだし」

提督「えぇ……」

霞「じゃあ、頑張りなさい」

バタン

提督「一応ここにおいては最高権力者なのに……扱い悪くない?」

↓2

―食堂―

イムヤ「今日は私がカレー当番ね」

提督「ほう、それは楽しみだ」

イムヤ「あ、司令官。ええ、イムヤのカレー楽しみにしておいて!」

提督「しかし残念なおしらせがある」

イムヤ「残念なお知らせ……?」

提督「それは、この俺もカレー作りに参加するということだ!」

イムヤ「あ、そう」

提督「む、自分のオリジナルカレーが作れなくて残念だったりしないのか?」

イムヤ「そんなこだわりないし。別に、司令官と作るのが嫌というわけでもないし……」

提督「そうか? なら遠慮なく参加させてもらおう!」

イムヤ「カレー自体はいつものでいい? 特に凝る予定はなかったから、材料もありきたりなものしかないけど」

提督「材料がそれしかないならしょうがないな。じゃがいも、にんじん、たまねぎ……本当にありきたりのものしかない!」

イムヤ「だからそういってるじゃない」

提督「ま、まあ、カレーの味を決めるのは煮込み具合だから。市販のルー使うとインスタントカレーと変わらないとかいう人もいるけど、そんなことないから」

イムヤ「司令官の言い訳って、本当に誰に向かって話しているのわからないわよね……」

提督「なんとなく言いたくなるんだ」

イムヤ「そう……それで、そろそろ野菜を切ってもいい? お湯は沸騰させてるから」

提督「おう。サイズは全部一口サイズだぞ」

イムヤ「じゃがいもの一口サイズって難しいのよ。やってみるけど……」

~~~~~~~~

提督「完成だ!」

イムヤ「なんだか、かなり時間がとんだ気がするわね」

提督「そりゃ特別なことはなにもしていないからな。時間も早く過ぎ去るように感じたんだろう」

イムヤ「うーん、言われてみればそうかも」

提督「それにしても、普通のカレーだな」

イムヤ「そりゃそうよ。隠し味も何も入れてないわけだし……」

提督「……今からでも何か入れるか? りんごとか」

イムヤ「完成してから入れると大抵は混ざりきらなくて味にムラができておいしくなくなるわよ」

提督「牛乳とかは完成してからでも入れるだろう!」

イムヤ「そういうのは好みでしょ」

提督「くっ、普通すぎて何かを入れたい……! オリジナリティを欲しているんだ……!」

イムヤ「それで変なことになったらイムヤのせいになるんだからね!?」

―執務室―

提督「普通においしかったけど、やっぱ普通すぎた。もうちょっとこう、特別感が……」

提督「……もしかして、変なカレー食べすぎて感覚がマヒしているだけか?」

下2

瑞鳳「提督、瑞鳳の卵焼き、食べる?」

提督「食べりゅ……っと、ちょっと待った。いつも同じ流れはいただけない」

瑞鳳「同じ流れ、ですか?」

提督「瑞鳳の卵焼き、そして次にたべりゅの流れだ。たまにはマンネリを打破しなくてはならない」

瑞鳳「そういえば、前に別の人に卵焼きを作ってたもんね……」

提督「知ってたのか? なら話が早い。瑞鳳は逆に卵焼き以外を作ってくれ!」

瑞鳳「わ、わかりました! でも、他にどういう料理が良いの?」

提督「え? えっと……材料は何がある」

瑞鳳「卵がいっぱいあるけど」

提督「……オムレツだ、オムレツを作るのだ!」

瑞鳳「オムレツ……分かりました」

~~~~~~~~

瑞鳳「提督、瑞鳳のオムレツ、食べる?」

提督「食べりゅ……やっぱり同じ流れだ!」

瑞鳳「作るものを変えたくらいだから……」

提督「うむ。しかし……意外とオムレツも美味しいな」

瑞鳳「以外って、酷くない?」

提督「そりゃあ美味しくない物が出されるとは思っていなかったが、これほどの完成度で出されるとは思わなかった」

瑞鳳「卵料理なら得意なのよ、私」

提督「そうか……」

瑞鳳「どうかした?」

提督「……おかわり、ある?」

瑞鳳「は、はい」

提督「それにしても、やっぱオムレツはこのふわとろ感だよな」

瑞鳳「ええ、そこは拘わったの!」

提督「それで、この意外にも奥深い味わい。卵本来の味がきちんと出ている!」

瑞鳳「卵の味の引き出し方なら任せて!」

提督「そうしてこの綺麗な形! 上手く返しをしないとこんなに綺麗にならない!」

瑞鳳「卵焼きで鍛えたのよ!」

提督「……か、考えれば考えるほど完璧だ……卵に関しては間宮や鳳翔を上回っているかもしれない……」

瑞鳳「ううん、まだまだ研鑽を続けないと」

提督「今度別の卵料理も頼む」

瑞鳳「もちろん!」

~~~~~~~~

提督「まさかあれほどの実力を隠していたとは……」

提督「あんなものを味あわされては、今後も食べりゅと言ってしまうな、間違いなく」

↓2

―天龍型の部屋―

提督「漫画の必殺技ってかっこいいよな」

天龍「お、なんだなんだ。面白そうな話じゃねえか」

提督「ふふん、やはり惹かれたな」

天龍「そりゃ、漫画を見て研究したりしているからな」

提督「研究?」

天龍「強そうな技だよ。卍解! とかさ」

提督「あれは別に必殺技じゃあないが、話が分かるじゃないか」

天龍「よせよ、分かっててふって来たんだろ?」

提督(一発目から必殺技を間違えるとは思わなかったけどな)

提督「なんとなく天龍の好きな物は分かった」

天龍「じゃあ、提督の好きな必殺技ってなんだ?」

提督「天龍に合わせるならアバンストラッシュだな。練習し過ぎて傘を十本くらい壊したのは思い出だ」

天龍「あーわかる。俺も月牙天衝を練習して壊して龍田に怒られたっけな」

提督「俺が壊したのは子どものころだぞ……」

天龍「お、俺だって生まれて間もない頃だ!」

提督(天龍の生まれて間もない頃って、漫画にすら興味無かったころじゃないか?)

天龍「な、なんだその目」

提督「いや、いつまでもその心を忘れないようにな」

天龍「馬鹿にしているだろ!?」

提督「でも、必殺技をいろいろ練習してたんだろ? 何か見せてよ」

天龍「絶対馬鹿にするだろ」

提督「しないって。なんなら、俺も一番好きな必殺技を見せるから」

天龍「言ったな? 絶対だぞ?」

提督「はいはい」

天龍「……ぜ、絶対に笑うなよ!」

提督「分かってるから早くしろよ」

天龍「じゃあ、いくぜ……奥義 天 翔 龍 閃 !!!」ゴッ

提督(ほお、隙を生じぬ二段構え。言うだけあって、それなりに出来ているようだな)

天龍「ど、どうだ? ……なんだそのカメラ」

提督「ん、ちょっと今作ってる動画に一分ほどのネタ映像が欲しかったんだ」

天龍「そうか。で、それは?」

提督「……ジャスト一分。いい夢見れたかよ」

天龍「提督の好きな必殺技は分かったが、よこせ!!」ブンッ

―執務室―

提督「必殺技を使われたら危なかった。なんて」

提督「後で龍田に渡して根回しをしておこう。多分許してくれる、ようになるはず」

↓2

―デパート入口―

ザーザー

時雨「……」

提督「おっと、ここにいたか。迎えに来たぞ」

時雨「提督? えっと、夕立はどうしたんだい?」

提督「夕立なら濡れて帰ってきたから先に風呂に入らせた。時雨が待っているということもその時にな」

時雨「そうなんだ。ごめんね、提督」

提督「たまには雨の日に散歩もしたかったんだ。ちょうどいい」

時雨「……そっか、うん。ありがとう」

提督「では帰るとするか。傘は持ったな」

時雨「うん」

提督「じゃあ早速」

ビュウウウウウ バキッ

提督「……」

時雨「え、提督、そのままじゃ濡れるよ?」

提督「くそっ、たまに来る強風はこれだから! 油断した!」

~~~~~~~~

時雨「その、提督のほうは全然足りないんじゃないかな?」

提督「いや、壊したのは俺の分だし、そのために時雨が濡れるなんてことはありえない」

時雨「……じゃ、じゃあ、もっとそっちに寄るよ」

提督「でも歩きにくくならないか?」

時雨「そうかもしれないけど……でも、今日は寒いからね」

提督「朝はあったかかったからなー。ちょっと薄着だと寒いか」

時雨「うん、少しね……」

提督「それならしょうがない、もっとくっつけ」

時雨「うん」

提督「でも、それにしても少し甘えん坊だな」

時雨「甘えん坊って、子供じゃないんだよ?」

提督「知ってる。でも普段なら相合傘はともかく、こうやってくっついたりはしないだろ」

時雨「提督が濡れているのに何もしないということはないと思うけど……でも、そうだね、一人で待っていたからかな」

提督「夕立が一人で帰ったのが寂しかったか?」

時雨「傘を忘れたからって、走って帰ることはないと思うんだ」

提督「ははは、らしいな。でも、傘くらい買って帰ればよかっただろ」

時雨「傘がないことに気付いて、だれか呼んでくるって言った夕立が財布を持っているとしたら?」

提督「夕立はおっちょこちょいだな。……お?」

時雨「あれ、晴れてるね」

提督「時雨ってやつだな。季節は違うけど」

時雨「そうだね」

提督「でも、これならもう少し待つだけでよかったんじゃないか? ちょっと損した気分だな」

時雨「提督はそう思うの? 僕は、得をした気分かな」

提督「?」

―執務室―

提督「なんで得なんだろう、ちょっと意味わからない」

提督「でも、雨上がりの空はきれいに映るよな。結構好きだわ」

下2

―大鳳の部屋―

提督「そういえば解任されてから一度も大鳳の様子を見たことがなかったな。おーい大鳳ー、生きてるかー」

ガチャ

大鳳「……」ズーン

提督「うわ暗。おいおい、いつもの陽気な大鳳らしくないぞ」

大鳳「別に陽気じゃありませんし……」

提督「いや、というか何をそんなに落ち込んでいるんだよ。ほぼ無罪放免だろ」

大鳳「そうですけど……」

提督「それとも、秘書艦解任が一番効いたか?」

大鳳「それはないですが」

提督「どうしてそこだけはっきりなんだ」

大鳳「冗談ですけど……やっぱり爆破させてしまったというのが……」

提督「あー、トラウマだっけ。治ったかと思ったんだが」

大鳳「トラウマはそう簡単に治るものでもないですよ。ほかの人だってそうですし」

提督「今でも夜怖いとか潜水艦怖い奴もいるしなー」

大鳳「そういうことですよ……」

提督「ふむ、つまり……執務室自体はどうでもよくて、トラウマに触れたのが効いたと」

大鳳「そう、ですね」

提督「やっぱり俺の扱いひどいよなぁ!」

大鳳「そういえば、執務室はどうなったんですか?」

提督「執務室なら明石が一晩で直してくれたぞ」

大鳳「一晩……す、すごいですね」

提督「あの日に限って重要な書類は置いてなかったし、被害は俺を除けば少しだけだな」

大鳳「それはよかった……」

提督「だからなんで俺の被害に関してはみんな無頓着なの? 一応至近距離で爆発したんだぞ。運よく無傷だったけど」

大鳳(だからこそ心配されていないのだけど……あと、日ごろの行い)

提督「大鳳から不敬なにおいがする」

大鳳「不敬なにおいって、どんなにおいですか!」

提督「……ま、気分転換くらいできただろ」

大鳳「気分転換って……あ、そ、そうかも」

提督「まったく、みんな心配してたぞ」

大鳳「……そうですね、そろそろ、しっかりしなきゃいけません! 提督!」

提督「ん?」

大鳳「夕日に向かって走りましょう!」

提督「……今日くらいは付き合ってやろう!」

―執務室―

提督「まさかハーフマラソン級に走るとは……」

提督「というか心配いらなかったんじゃないのか。解任された後にしては元気すぎるだろ」

下2

白雪「折り紙検定を受けてみたいんです……」

提督「折り紙検定? なにそれ」

白雪「折り紙の上手さを示すものですよ」

提督(やる気になっている白雪を見るのは初めてかもしれない。よし)

提督「なるほど、面白そうだから俺も参加してみようか!」

白雪「はい!」

提督「それで、参加ってどうするんだ?」

白雪「えと、月刊おりがみに指定されているおりがみを折って送ればいいそうです」

提督「月刊おりがみ?」

白雪「はい、これです」

提督「準備いいな……えっと、このマークがついているやつでいいんだな」

白雪「そうみたいですね」

提督「ふむ……ひとまずは、それぞれが作るということでいいか」

白雪「はい」


~~~~~~~~

提督「ふむ……まあ、こんなものかな。白雪はどうだ?」

白雪「その、なんだか納得ができなくて」

提督「うまく折れないのか? どれ」

白雪「この、重ね合わせる部分がどうしてもずれてしまうんです」

提督「……」

白雪「それに、折り返すとどうしても綺麗にならないのが、少し……」

提督「……」

提督(全然わからん)

白雪「司令官もそう思いますよね?」

提督「……と、とりあえず送ってみるのもいいんじゃないか? その間にも折りなおしておくとかできるだろうし」

白雪「あ、そ、そうですね。それがいいかもしれません」

提督「じゃあ、早速封筒を……そういえば、だれか折り紙協会の会員なの?」

白雪「? いえ、そんなことはないですけど……」

提督「あー、言いにくいんだが……会員の身内がいなきゃ受けられんぞ」

白雪「え」

~~~~~~~~

提督「失意のまま出て行った……」

提督「かわいそうではあるが、さすがにどうにもならないしなぁ」

下2

提督「青葉ー」

青葉「はい、青葉に何か御用ですか?」

提督「ちょっと相談に乗ってほしいことがあるのだが」

青葉「はあ、司令官が相談だなんて珍しいですね」

提督「数日前に執務室が爆破したことは知っているだろう」

青葉「あの事件ですね。まあ、今やすでに風化した話題ですが」

提督「風化って……いや、まあいい。それでそのことについてちょっと鳳翔に愚痴ったら――」

鳳翔『では、本人にあっている仕事を振ってみるのはいかがですか?』

提督「といわれたので、なにかできそうなものはないかなと」

青葉「放っておいたほうがいいんじゃないですか?」

提督「やっぱそれなりに落ち込んでいるみたいだからさ」

青葉「なるほど……では、こんなものはどうでしょう」

提督「ほう?」

~~~~~~~~

霞「だから、ここに不備があるから改訂するようにって……!」

提督「あー、待て秘書官よ。そろそろ始まる時間だ」

霞「始まるって何が」

提督「大鳳が行う、鎮守府天気予報だ」

霞「は?」


大鳳『おはようございます。放送を一時譲ってもらい、鎮守府天気予報を行いたいと思います』


霞(なるほど、このために届け出たのね)

提督「ふむふむ、出だしは普通だな」

霞(クズ司令官の差し金みたいだから、ろくな内容じゃなさそうね)

大鳳『では鎮守府内の天気です。晴れ模様が続くそうですが、所により雷が発生する見込みです』


霞「鎮守府で雷? 今日は確かに晴れだけども」

提督「わかんないのかなぁ、秘書官さんよ」

霞「あれだけでわかる人はいないと思うのだけれど」

提督「説明する戸棚、これは鎮守府での雰囲気のことを指しているんだ。だから、雷というのは」

霞「なるほど……つまりここにある溜まりに溜まった仕事をしようとしないあんたに……」

提督「落ちるということだな。さて、俺が逃げさせてもらう。さらば!」バッ

霞「あっ! 今日という今日は絶対に逃がさないわよ!」ダッ


大鳳『局地的に発生する風に気を付けてください。それでは、本日も一日頑張りましょう』

~~~~~~~~

提督「まさか遠慮なく艦装をしてくるとは思わなかった……」

提督「内容自体は青葉に任せたけど、本当に雷が落ちるとはな。想像もしなかった」

下2

古鷹「失礼します提督。相談が……あれ」

吹雪「古鷹さん? ……もしかして」

睦月「同じような要件、かにゃあ?」

古鷹「多分……」

提督「まったく、暑くなってきたというのに、予想を裏切らない奴だ」


―吹雪型の部屋―

提督「おら、出て来い!」

初雪「むりぃ……」

提督「もう流石に暑いだろうが……って、つけてないじゃないか! 何故篭る!」

初雪「この中の安心は……何よりも勝る」

提督「ほう、そうか。だがその安住の地は今にも無くなろうとしているぞ」ガシッ

初雪「司令官……なにを……」

提督「いいから出ろ! まだほかに二人もいるんだ!」ガバッ

初雪「あっ……!」

―睦月型の部屋―

提督「もっちーよ、俺は季節感に合わないものは好かないと言ったはずだよな」

望月「いや、聞いてないけど……しかもまだ夜とか寒いっしょ?」

提督「こたつに入るほどではないだろう。もっちー、現状を顧みればこの先俺が何をするか分かるだろう?」

望月「それは……」

望月(司令官の目は本気……無理矢理片づけようとするのは明らか。ならば……)

提督「どうした、素直に片付ける気になったか?」

望月「……そうだね。わかった、片付ける。でも、少しだけ待って」

提督「む、何故だ?」

望月「片づける為の押入れのスペースが無いはず……だから、明けてからにする」

提督「なるほど。そういうことであれば、少し待ってやろう」

望月「女性の部屋の衣替えを見るつもりなの?」

提督「……考えたな。そういえば俺はひかざるを得ない」

望月(勝った……)

提督「明日見に来てこたつが片付けられてなかったら解体な、こたつ」

望月「……だよね」

―古鷹型の部屋―

提督「最後はお前か、加古」

加古「zzz……」

提督「寝てるな。こたつはつけて……る。なんと、暑くなってきたのに」

加古「zzz……」

提督「しかし、寝ているという事は俺も動き易い。まず電源を切って……」

ガシッ

提督「……」

加古「zzz……」

提督「起きてるだろ」

加古「zzz……」

提督(……寝てる!? そんな馬鹿な、こいつガシッと掴んできたぞ!)

提督「片手を塞がれたならば、もう片手で」ガシッ

加古「zzz……」

提督「……離せ!」ブンブン

加古「zzz……」ギュー

提督「何で寝ているのにそんなに抵抗できるんだよ!!」

―執務室―

提督「くそ、加古の部屋は無理だった。油断していたのもあるが、あそこまで寝ている状態で抵抗されるとは……」

提督「次相対する時は古鷹に援護を頼むか……」

↓2

―高雄型の部屋―

摩耶「知っているか提督、ポテトチップスの販売がなくなるそうだ……」

提督「あー、買い占めが横行しているとか」

摩耶「嘆かわしいことだ」

提督「嘆かわしいって……」

鳥海「司令官さん、見ての通り、ポテチの販売が大幅に制限されるという話を聞いて、摩耶はショック気味でして……」

提督「だからキャラがなんか変なのか。あんまり好きそうには見えなかったが」

鳥海「私もポテチを買うために東奔西走してきました。大変でしたよ」

提督「鳥海、お前もかなりショックを受けているだろう」

摩耶「というわけでだ、このピザポテトを見納めに大事に食べたいと思う」

提督「うーん、摩耶が箱のピザポテトを指さしているのは、なんとも絵面的に似合わない」

摩耶「さあ、まずは一袋目だ」

鳥海「ええ、すでに準備はできているわ」

提督(こいつらこんなにポテチ好きだったのか……)

摩耶「ピザポテトといえばこの癖になるチーズだな」

鳥海「今年は二十五周年だというのに、本当に残念」

提督「二十五周年といえば、カー……」
摩耶「今はポテトチップスだ」

提督「はい」

鳥海「この味ともしばらくお別れともなると、寂しいわね……はい、二袋目」

摩耶「これで残り全部だからな。早く製造開始をしてほしいな」

提督「……な、なあ、どうして俺を連れてきたんだ? 二人で食べたほうがよくなかったか?」

摩耶「ん? だって提督も好きだろ、ポテトチップス」

提督「好きではあるが、お前たちみたいな今回の件で落ち込むほどではない!」

摩耶「なん……だと」

鳥海「い、いえ、私の計算結果では、司令官さんがポテチを好きな確率が九十パーセントと」

提督「お前ら二人がガチすぎるんだよ! 付き合えるか!」

摩耶「……ピザポテトはいるか?」

提督「……もらおう」

―執務室―

提督「俺も好きだよ、ピザポテト! 炭酸ぐいっとしながら昔はよく食べてたよ!」

提督「……まあ、個人的にコンソメが製造停止していないから心情的に余裕があるだけなんだが」

下2

―鳳翔の店―

提督「うへへ……龍鳳ぎゅー……」

龍鳳「え、提督!? 落ち着いてください!」

提督「ん~? 俺はこれ以上ないほど落ち着いているぞ~。ふんふん、龍鳳は柔らかいなぁ」

隼鷹「あー、飲ませすぎたかな」

那智「これくらいでようなんて、まだまだひゃな!」

ポーラ「そうですよぉ、ポーラはまだまだいけますからね~」

千歳「ていとく~、わたしのほうへきてもいいのよ~?」

19「提督酔うのが早いの」

鳳翔「これは、なんとも……」

隼鷹「あ、鳳翔さん。ちょっと提督に飲ませすぎたみたいだから、介抱頼めない?」

鳳翔「それはいいのですけど、まずは龍鳳さんから離すのが先かと」

隼鷹「それは……」

提督「この抱き心地、あ~、安心する~……」

龍鳳「そ、そこに潜り込むのはだめです! 手を入れないでください~!」

隼鷹「嫌がってないからいいんじゃね」

鳳翔「介抱ができませんから……」

千歳「……」

19「どうかしたの?」

千歳「ずるいですよ!」

提督「む?」

千歳「けいくうぼとして、わたしもまけていません!」ギュッ

提督「おぉ~、こっちもええぞ~」

19「千歳さんも壊れたの!」

ポーラ「大変ですね~」

19「あんまりのんびりしている状況じゃないと思うの! ひゃっ」

提督「イクも見た目通りふわふわじゃのう~」

19「お、おっさんなの! 提督が完全におっさん化しているの!」

那智「いいぞいいぞー! もっとやれー!」

19「これ以上何をさせるつもりなの!?」

提督「そりゃあ、もっとだきしめろってことだな!」ギュー

19「今日の提督は強引なのー!」


鳳翔「……お酒に強い人のほうが大変そうですね」

隼鷹「イクはあんまり飲みに来ないから、絡み方のかわし方も知らなそうだしなー。でも面白いからサイコー」

鳳翔「隼鷹さん……」

―執務室―

提督「どうして俺はイクを抱きながら寝ていたのだろうか。不思議だ」

提督「しっかし、完全に二日酔いだわ……迎え酒でもしとこ」

下2

―提督私室―

龍驤「串カツ作っとるって!?」バァン

提督「……なんでお前が来るんだ」

龍驤「なんや、きちゃあかんの?」

提督「あかんというか、カツといえば足柄みたいな雰囲気あるだろ」

龍驤「それは……そうやな」

提督「そんなわけで、予想を外しただけだ。気にするな」

龍驤「なら気にせんわ」

提督「龍驤らしい」

龍驤「それで、串カツ作っとるのはホンマなん?」

提督「本当だよ。今はたれを作っているところだ。少し待て」

龍驤「わかったで」

提督「……ていうか、食べる気満々なんだな」

龍驤「当たり前やろ」

提督「当たり前なのか……」

龍驤「串カツゆうたら、大阪では名物やろ。ほら」

提督「龍驤は実際のところ大阪とは関係ないだろ」

龍驤「お、そろそろおいしそうなタレができたんちゃう?」

提督「こいつ……」

~~~~~~~~

龍驤「ん~、さすがやなぁ」

提督「そりゃ作るからにはおいしく作るからな」

龍驤「揚げ具合と、やっぱタレがちゃう。まさに串カツたる串カツや」

提督「わかりにくい感想をありがとう。というか、龍驤は串カツを食べたことはあるのか?」

龍驤「馬鹿にするんやないで。鳳翔の店でいっぱい食べとるわ!」

提督「大阪じゃないんかい」

龍驤「まま、そう細かいことは気にせんで、提督食べてみい」

提督「俺が作ったんだけどな。……うん、自分で言うのもなんだがおいしい」

龍驤「やろ」

提督「どうして龍驤が得意げなのか」

―執務室―

提督「喜んではいたみたいだけど、よくわからないことだらけだな」

提督「そもそも、どこから串カツを作っているのを知ったんだ……」

下2

―阿賀野型の部屋―

阿賀野「提督さん、阿賀野暇ー」

提督「暇って……後ろで能代が掃除をしているのが見えないのか?」

阿賀野「能代はね、掃除が趣味なんだよ」

提督「嘘だって知ってるからな」

阿賀野「むー」

能代「いえ、まあ……阿賀野姉に手伝ってもらおうとは思ってないですから」

阿賀野「ほら!」

提督「ほらって、胸を張ることではないぞ」

酒匂「でも、せっかく司令がいるんだから、なにかしようよ」

阿賀野「酒匂いいこと言った!」

酒匂「ぴゃー!」

提督「と、言っているが」

能代「しょうがないですね……そろそろ休憩しようと思っていたし、ちょうどいいかも」

矢矧「それなら、私もかまわないわ」

提督「なら、UNOでもするか」

阿賀野「うの?」

能代「たまにはいいかもね、そういうゲームも」

矢矧「この人数だしちょうどいいんじゃないかしら」

酒匂「みんなとゲームなんて楽しみ!」

提督「そうか、そりゃ提案したかいがあった。で、阿賀野はなんか言ったか?」

阿賀野「え、い、いいや、なんでもないよ」

阿賀野(阿賀野一人だけわからないなんて言えない!)

~~~~~~~~

能代「スキップ。次は矢矧ね」

阿賀野「阿賀野の番が飛ばされた!?」

矢矧「うーん……ここは素直に黄色の七ね」

酒匂「青の七を置くね」

提督「じゃあリバース」

酒匂「あたしの番? えっとー、じゃあ青の五」

矢矧「青は……ドローツー。ごめん、阿賀野姉」

阿賀野「え? え?」

能代「青の三ね」

提督「リバース」

能代「まだ持ってたの!? そ、それなら……ワイルドドローフォー。阿賀野姉、四枚ドロー」

阿賀野「増えていく一方なんだけど!」

提督「UNOはそういうこともあるんだ。というか、流れが悪いと普通にそうなる」

阿賀野「そ、そういうものなんだ……難しいね」

提督「そうか?」

―執務室―

提督「なんだか、阿賀野にしては消沈気味だったな。ああいうゲームすきそうだと思ったんだが」

提督「……しかし、思い返してみればなんか狙われていることも多かったし、しょうがないのかもしれない」

下2

提督「全員そろったことだし、伝言ゲームを始める」

吹雪「伝言ゲームですか?」

叢雲「まだ馬鹿らしいものを……」

提督「違う、違うぞ叢雲。これはあくまでまじめな話だ」

叢雲「真面目? どこがよ」

提督「お前たち五人は鎮守府発足の頃からいる、いわゆる古参メンバーだ。もちろん、ほかの者たちより特別に信頼しているといっても過言ではない」

五月雨「そ、そんな風に言っていただけてうれしいです!」

電「嘘っぽいのです」

提督「だからこそ、おそらくお前たちを頼るとするならば、とてつもなく重要な要件である可能性が高い」

叢雲「……つまり、そのときになって要件の伝達漏れとかを防ぐために、どれだけ完璧な状態で伝聞していけるか調べる、という建前ね」

提督「さすが、わかってる」

叢雲「前置きが長いのよ!」

漣「つまり、今回は真面目?」

提督「おう」

漣「漣としては、ちょーっとお遊び心を加えたいんだけどなー」

提督「心配しなくても、どうせ漣の思った通りになる」

漣「?」

提督「とりあえず、今のところは解散。近々適当なタイミングで吹雪から始めるから、聞いた者は聞いたすぐではなく一時間後に伝えること」

吹雪「わ、私が一番ですか! 重要ですね……」

―吹雪型の部屋―

提督「というわけで、早速だ」

吹雪「……ついさっきの話ですよね?」

提督「伝言内容は『吹雪によって電と漣が降り出し五月雨となって叢雲を起こした』で」

吹雪「い、意味が分からないのですけど」

提督「意味が分からないほうが伝達が難しいだろ?」

吹雪「そうですけど……はあ、わかりました。次はだれでもいいんですか?」

提督「おう」

―ダイジェスト―

吹雪「吹雪によって電と漣が……えっと、降り、五月雨となって叢雲を……起こした、だったかな」

漣「ほーん」


漣「吹雪が電と……漣が不利になって五月雨が叢雲を起こした……ありゃ、何か違うなぁ……」

電「さっぱり意味が分からないのです」


電「吹雪は電と漣が不利になって五月雨が叢雲が有利、なのです」

五月雨「お、おぼえきれないぃ」


五月雨「吹雪は電と漣が不利で納得して、五月雨は叢雲にゆ……百合しい? だったと思う!」

叢雲「それ、元から外れまくってない?」

~~~~~~~~

提督「それで、結果は?」

叢雲「……吹雪は電と漣が不利に納得、五月雨と叢雲は百合……」

提督「ぷーっくくくく!! なんじゃそりゃ! 名前だけは完璧なところが笑える!」

叢雲「ほ、本当は何だったのよ!」

提督「吹雪によって電と漣が降り出し五月雨となって叢雲を起こした」

叢雲「元から意味が分からないじゃない!」

提督「馬鹿いえ、もし暗号を伝達するのであれば意味の分からない単語が羅列するのは当然だろう」

叢雲「くっ……確かにそうかもしれないけど……!」

吹雪「わ、わたし不利なんて言ってませんよ!?」

漣「えー、確かに不利って言ってたけどなぁ」

電「不利っていえば有利になるのです」

五月雨「全然ダメだった……」

提督「ま、伝言ゲームだしそんなもんだわな。プクク……」

吹雪「まだ笑ってます……」

―執務室―

提督「でも実はもうちょっとまともに伝わるかと思ったんだが……接続語が全体的に全滅ってなぁ」

提督「自分の名前とか目立つ単語があるとそればかり頭に入るっていう典型的なパターンだな」

下2

提督「よーし、狩りごっこするぞー」

島風「狩りごっこ? 追いかけっこみたいなもの?」

夕張「提督、それって……」

提督「どうした夕張。別に何かに影響されたわけではないぞ」

夕張「いえ、いいんですけど……」

島風「じゃあ、私が追いかける側をやってもいい?」

提督「それは構わないが……夕張はどうだ」

夕張「いえ、まあ……好きに始めてください!」

島風「じゃあ、始めるよ!」

―廊下―

ドーン

島風「待てーー!」

ドーン

提督「なんであいつ艦装つけて本気で追いかけてきてるんだ!?」

夕張「狩りごっこだからじゃないですか?」

提督「夕張は落ち着いてるなぁ!」

夕張「そりゃあ、あれは一応新発明の演習用の砲弾で、遊びとはいえいいデータになる……」

提督「長いから簡潔に!」

夕張「あれを食らっても衝撃だけで平気ですよ」

提督「そ、そうか」

夕張「あくまで艦娘相手ですから、提督はどうなるかわかりませんけどね」

提督「ひいっ!」

~~~~~~~~

提督「……行ったか?」

夕張「そうみたい」

提督「し、しかし、まさかこんなことで肉食動物に追われるシマウマの気持ちを味わえるとは思わなかった」

夕張「そもそも提督から提案したことなんですけど」

提督「俺だってせいぜい追いかけっこ程度だと思っていたさ。しかし、実態は半分本気の狩り」

夕張「でも提督にとってはいつものことじゃないですか?」

提督「だからといって攻撃されるのが好きな人間ではない!」

夕張「あ、大声を出すと……!」


島風「提督、みーつけた!」


提督「ぎえええええ!!」

夕張(爆発を直に受けても無事な提督が演習弾の衝撃くらいじゃなんともないとおもうんですけどね)

―執務室―

提督「普段ならあそこまでおびえることもなかったんだが、狩りの役にはまりすぎてな」

提督「島風自体も間違いなく本気で撃ってきてたし……」

下2

―高尾山―

提督「うーん、春の陽気さが伝わってくるなぁ」

高雄「そうですね……といいたいところですけど、急にどうして登山を?」

提督「そりゃ、最近は外に出ることもなくて暇だったからさ」

高雄「あたりまえのように当たり前ではない理由を口にしますね」

提督「そんなにおかしいことか?」

高雄「もし霞ちゃんがそういったらどう思います?」

提督「驚きのあまり卒倒する自信がある」

高雄「それと同じことですよ」

提督「まあ、高雄の意味の分からない言い回しは置いておいて」

高雄「意味の分からないとは……」

提督「春の山もいいものだろう?」

高雄「それは……そう、ですね。それに関しては提督の言う通りです」

提督「冬は雪が積もるし、夏は暑い。春が一番風景を楽しむのに一番適していると思うんだ」

高雄「ほかの季節でしか見れない景色もありますけどね」

提督「それはその通りだ」

高雄「ところで、この道はどこにつながっているんですか?」

提督「山頂だ。きついか?」

高雄「鍛えているのでこのくらいは。思ったより歩くと思いまして」

提督「高尾山はいろいろなコースがあるからなー。また今度別の道も行ってみるか?」

高雄「それはいいですね。その時は愛宕たちも呼びましょう」

提督「だな」

~~~~~~~~

高雄「ふう……ここが山頂ですか」

提督「みたいだな。おっ、富士山が見えるぞ」

高雄「本当。周りの山に囲まれて、美しいですね」

提督「ちょっと写真撮るか。あ、すみませーん、写真撮ってもらえますかー?」

高雄「て、提督」

提督「撮ってくれるってさ。ほら、富士山をバックにして」

高雄「今日の提督、強引ですね」

提督「テンション上がってるんだよ。ほら、高雄、準備できたってよ」

高雄「しょうがないですね。はい、どうぞ」

パシャッ

提督「ありがとうございまーす。高雄、富士山見たら名物のそば食べに行くぞ!」

高雄「そばですか、いいですね。楽しみです」

―執務室―

提督「うーん、楽しかった。高尾山はやっぱいいなぁ」

提督「登山も気軽にできるし、なかなかいいところだ」

下2

―金剛型の部屋―

比叡「きゃばくらってなんですか?」

提督「知らん」

比叡「そうですか……」

霧島「なんだか色々とツッコミ所がある気がしますが……」

提督「確かに、どうして突然キャバクラなんて?」

比叡「テレビでそういうネタがあったので!」

提督「ふーん。で、誰か知ってる?」

金剛「分かりませんネー」

榛名「は、破廉恥な場所ですよね? 私にはよく……」

提督「……みんな分からないな!」

霧島「司令もですか!」

提督「なんにせよ、誰も分からないのなら、知識の蓄えという意味で知っておくのも悪くはない」

霧島「誰も分からないんですよね」

提督「だよなぁ」

金剛「ア、マンガとかであったかもしれまセーン!」

比叡「さすがお姉様です!」

提督「頼るような物は何もないし、それを参考に実演してみるか!」

~~~~~~~~

金剛「ハーイ、金剛デース!」

霧島「金剛お姉様、キャバクラでは源氏名というのを使うそうですよ」

金剛「ナルホドデース」

比叡「えっと、司令! ドンペリ飲みますか、ドンペリ!」

霧島「いきなりドンペリはすすめる物ではないですよ! もっと相手の気分を良くしてからそれとなく誘うんです!」

榛名「で、では……提督、榛名も、お酒が飲みたいかなぁ……」

霧島「榛名は……すごいビッチみたい」

榛名「!?」

提督「よ、よーし、どんどんお酒持ってこーい!」

霧島「そのセリフはもっと後に言ってください!」

提督「難しい!」

金剛「でも、霧島は詳しいですネー」

霧島「そ、そうですか?」

提督「確かに。ちょっと霧島がやってみてくれよ」

霧島「では……司令、今日は初めてですか? ふふ、緊張しているみたいですね。そういうときは、まずは一杯、いかがですか? では、そうですね――」


榛名「提督が固まっています……」

金剛「なんだか、霧島のみてはいけない所を見てしまったみたいデース」

比叡「ふむふむ、参考になります!」

―執務室―

提督「人が変わってみたいになって戸惑の方が大きいわ! というか、絶対こんなんじゃない!」

提督「ていうか結局皆分かっていなかったのでは……そもそも、キャバクラ行く女性自体が少ないんだし、この職場で知っている奴なんていないだろう」

↓2

―青葉型の部屋―

青葉「ふふん、では今日も一日、取材に――誰ですか!」

ガラッ

提督「さすがだな、俺の存在を見破るとは」

青葉「いえ、普通に入口だと思っていたのに、押し入れから出てくるのは予想外です」

提督「そうか。まあそれは置いておいて、今日はお前に密着取材をしようと思う」

青葉「青葉をですか?」

提督「ああ。鎮守府限定のマスコミ、青葉の真の姿をとらえたくてな」

青葉「悪意が見え隠れしていますけど……」

提督「そんなことはない! 邪魔なんてしないから、なな、いいだろ?」

青葉「……しょうがないですね。今日だけですよ」

提督「やりぃ」

―食堂―

提督『青葉の一日は食堂から始まる。食事をとるため? 否。彼女は全員が集まる前に食堂でスタンバイをしておき、今日一日事件が起きそうな相手を探っているのだ』

青葉「間違ってはいないですけど、普通に食事はとりますからね」

提督『彼女が食べるのは間宮特性の食事。腹持ちが良いものを選んでいるのは、この後に長期の張り込みが待っているからだろうか』

青葉「単純に食べたかっただけなのですが……」

提督『謙遜する彼女の顔は、ほんの少し満足げにも見えた』

青葉「というより、よくスラスラと字幕っぽい発言ができますね!」

提督「そりゃお前見てればそういうこともできるようになるさ」

青葉「その理屈はおかしいです」

提督「ほら、明日の新聞のネタを探さないと。そろそろみんな集まってきたぞ」

青葉「司令官のせいで進まないんですよ!」

―談話室―

青葉「……」

提督『取材をまとめる青葉。その姿は真剣なようにも、楽しんでいるようにも見受けられた』

青葉「……そういえば、さっきから撮ってますけど、何に使うつもりなんですか」

提督『さすがの報道者というべきか。やはり情報の経路が気になるようだ』

青葉「もうそれはいいですから」

提督「えー、終わったらインタビューとかしたいのに」

青葉「先にこっちの質問に答えてください!」

提督「別に何に使うつもりもないさ。自分で楽しむ用だしな」

青葉「なかなか奇特な趣味ですね」

提督「はは、そういうな。それじゃあ……インタビューだ!」

青葉(逆に今日の司令官のことを記事にしましょう)

―執務室―

提督「なぜ一面が俺に……?」

提督「特に問題はないと思うけど……いや、やっぱ悪意たっぷりにかかれてる! 青葉ぁ!」

下2

―暁型の部屋―

提督「おや、もしかして電一人?」

電「なのです」

提督「ほうほう、一人。ふむふむ」

電(嫌な予感がするのです)

提督「ちょっと電、こっちに来てくれないか」

電「お断りなのです」

提督「おや、反抗期かな」

電「司令官さん相手には大体こんな感じだと思うのです」

提督「最近はもうちょっとかわいらしい反応していただろ」

電「その言い方、悪意を感じるのです」

提督「なんて疑り深い部下なんだ。ほらほら、何もしないよ」

電「本当に何もしない人は何かするということを考えもしないはずです」

提督「どうしても来ないと」

電「はいです」

提督「……」

電「……」

提督「ええい、ならば無理やりだ!」

電「結局そうなるんですね!」

~~~~~~~~

提督「はあ、なんだか安心するなぁ」

電「電を膝にのせて安心するのは司令官さんだけだと思いますけど」

提督「そんなことはないと思うんだけどな~。ほーれ、なでなでー」ナデナデ

電「な、なにをするのですか!」

提督「撫でてるだけだけど」

電「おさわり禁止なのです!」

提督「えー。でも撫でる」

電「司令官さんは意地悪です……!」

提督「はっはっは! 欲望のままに生きているだけだ!」

―執務室―

提督「たぶん本気で嫌がってたら掌底くらってたから本気で嫌がってはなかったと思う」

提督「喜んでいるとも言い難いけどな!」

下2

―神風型の部屋―

提督「春風って蹴鞠できるか?」

春風「はい。しかし、司令官様が提案するにはずいぶん古風な遊びですね」

提督「俺は古風でもなんでも楽しむタイプだからな。そもそも、蹴鞠はできるやつが少ないからな」

春風「そうですね。蹴鞠をするのであれば、神風お姉さまも呼びましょうか?」

提督「いや、今回は春風と二人きりでしよう」

春風「二人きり、ですか。うふふ、なんだかドキドキますね」

提督「んー、そうか?」

春風「そうですよ。神風お姉さまに黙って、なんて、わたくし初めてですから」

提督「そっちのドキドキかい」

―庭―

提督「そーれ、いくぞー」

春風「いつでも大丈夫です」

提督「ほらっ」ポンッ

春風「はいっ。司令官様です」ポンッ

提督「おお、受けるのも返すのもさすがにうまいな」

春風「そんなことはないですよ。司令官様こそ、慣れているようには見えないのに、綺麗に蹴ってきたじゃないですか」

提督「さすがにこれくらいはな。それじゃ、もうちょっと早くいく……ぞ!」ボンッ

春風「これくらいでも、全然大丈夫ですよ」ポンッ

提督「なるほど、なかなかやる。ならこっちはどうだ!」ボンッ

春風「はい、どうぞ」ポンッ

提督「あれを返してくるだと……手加減はいらないようだな!」

春風「はい。どんどん来てください」

~~~~~~~~

提督「はぁ……はぁ……やはり、さすがというべきか」

春風「司令官様も、お上手でしたよ」

提督「次の勝負の時こそ俺が勝つ番だ!」

春風「そうですか、頑張ってくださいね」

提督「……」

春風「どうかいたしましたか?」

提督「間宮券、やる」

春風「えっ、ど、どうしてですか?」

提督「なんか人間的にも負けたような気がするから……」

春風「そ、そうですか? よくわかりません……」

―執務室―

提督「なんだかあそこまで落ち着いて対処されると、勝てる気がしなくなってくる」

提督「なんというか、大物感、みたいな」

下2

―ニュルブルクリンク―

提督「フェアレディZもあることだし、ニュルブルクリンクに来たぜ」

神通「……」

川内「何してるの神通?」

神通「いえ、さすがに呆れて……」

提督「ん? なんでだ?」

神通「いえ、わからないのならいいです……」

提督「? そうか」

川内「それで、どうするの? 目指すは二十四時間といっていたけど」

提督「目指す先はそれだが、まずはそれが可能かどうかを調べなければならない」

川内「それもそうだね」

那珂(うん? 那珂ちゃんには何をしようとしているのか全然わからないよ)

提督「そんなわけで、まずは走らせてみようと思う」

川内「いいね、わくわくするよ」

神通「ちょっと待ってください。あのレースに出るつもりで走るということは」

提督「もちろん、全力だ」

神通「え、それって」

提督「安心しろ、サーキット場を借りることはできたぞ! ご都合主義的にな!」

川内「さすが提督!」

神通(本当に都合よすぎるんですが……)

那珂「あの、どうして那珂ちゃんは連れてこられたのかなぁ」

提督「ん? そりゃ、暇そうにしてたからだけど」

那珂「ひどくない!?」

川内「いいじゃん、サーキットで走れるなんてなかなかないよ!」

提督「那珂だけにな!」

那珂「神通ちゃん、帰っていい?」

神通「ここまで来たのだから付き合ってあげたほうがいいと思う……」

~数時間後~

提督「……チューニングされてない車で走るのが無謀だったな」

川内「ブレーキが壊れるなんてあるんだね」

提督「まあ、あんまり負荷をかけすぎるとすぐにいかれるしな」

神通「あんな全力で爆走してドリフトなんてしてたらそうなりますよ」

提督「だが、目標ができたな。二十四時間走りきることをまず目標としよう」

川内「だね。その日が来るまで楽しみだよ」

神通(どこが楽しみなんでしょうか……)

那珂(もしかして、また那珂ちゃん付き合わされるの?)

―執務室―

提督「旅行代より、車の修理費のほうがかかるんだよなぁ……」

提督「まあ、いろいろなんとかなるのがご都合展開だよな」

下2

提督「今回の子たちの歓迎会は俺が主催をしたいと思う」

霞「作戦中だってわかってる?」

提督「わかってはいるぞ。ほら、一応言っておくとだな、今回着任する子は姉妹がまだいない子なんだ」

霞「それは……そうね。姉妹どころか新型もいるわけだし」

提督「つまり、これはここのトップである俺がなんとかしないといけない!」

霞「そんなことはないけれど。でも、理由はわかったわ」

提督「そうか!」

霞(資料によると、なかなか難しい子もいるみたいだし、任せたほうが賢明かもしれないし)

提督「よーし、じゃあ早速準備を」

霞「何言ってるの」

提督「え?」

霞「今日の午後には全員着任するわよ」

提督「今回早すぎ!」

~~~~~~~~

提督「……」

ガングート「貴様が提督か。なんともアホそうな面構えだな」

占守「ぽかんとしてて、面白いっしゅ!」

国後「挨拶もなしなの? ここの司令官はどうなっているのよ」

提督(うわぁ、久しぶりに難しそうなやつらが入ってきたなぁ)

神威「あの、どうかしましたか? 神威が至らない点でもありましたか?」

春日丸「初対面からアホそうといったのがまずいのではないですか……?」

択捉「そ、そうですよ。あの、すみません。お気を悪くしましたか?」

提督「……いや、むしろ面白い! 俺はお前たちの提督だ! ちなみに、歓迎会をしようと思ったけどお前たちが来るのが早すぎて準備をしていない!」

国後「それって堂々と言うことなのかしら」

ガングート「歓迎会だと? ふん、どうやらこいつはずいぶん平和ボケをしているらしい」

提督「平和ボケだと? どうやらこの赤子は相手の気勢も読めないらしいな」

ガングート「貴様……私を侮辱したか」

春日丸「や、やめましょう……! 喧嘩はよくないです」

択捉「そ、そうです。ガングートさん、抑えて抑えて」

提督「そうだぞ。ほら、歓迎会のためのプレゼントも用意しているんだ。ほら」

国後「司令って、胆は座ってるわよね」

占守「ふえぇ……あんな冷たい視線をだしてる人に平気で近づくなんて……しれぇすごいっす」

ガングート「……怪しいな」

提督「そう思うなら、それでいいがな」

ガングート「いちいち癇に障る言い方をする。貴様、これでつまらんものだったら」ビシッ

神威(び、びっくり箱……初めて見ました)

春日丸(ガングートさんの顔がどんどん……!)

択捉「あ、その! ちょ、ちょっとした遊び心ですよね! 司令!」

提督「その通り」

ガングート「銃殺刑だ」チャキッ

神威「ほ、本物の銃ですよ!」

択捉「こ、こんなところで撃つなんて、そんなことしませんよね?」

ガングート「私は冗談で銃など構えん」バン

占守「ほ、本当に撃ったっす!」

春日丸「提督……!」

提督「そいつは残像だ」

ガングート「何!?」

提督「ははは! まだ歓迎会の準備は途中だからな! 待っているがいい!」ダッ

ガングート「くっ、待て! 絶対に許さんぞ!」ダッ

択捉「……その」

国後「まあ、どんな奴かはわかったわね」

~~~~~~~~

提督「三時間チェイスをしてようやく撒けた。いやぁ、結局歓迎会の本番は間宮任せだよ」

提督「ま、俺流の歓迎はしたからいいか。ははは」

下2

―食堂―

雷「そういえば、ロシアの艦娘が着任したそうよ」

響「そうなの? それは、挨拶をしておかなければいけないね」

暁「どんな人?」

電「たぶん、あそこにいる人なのです」


ガングート「貴様、ここにいたか!」バン

提督「出合頭に発砲とはご挨拶だな。だが、そんな豆鉄砲じゃ俺には当たらないぞ」

ガングート「私のデザートイーグルを愚弄したな!」

提督「まあ、ガングートもゆっくり食事でも摂るがいい。間宮のご飯はおいしいぞ」

ガングート「そんなことは知っている!」


響「なかなか面白そうな人だね」

暁「え、面白い? え?」

電「ほかに人に当たらないか心配です……」

暁「司令官の心配はしないのね……」

響「でも、ちょうどいいから挨拶してくるよ」

暁「このタイミングで行くの!?」

雷「き、気をつけなさいよ?」

響「わかっているよ」


ガングート「この距離なら貴様の脳髄に穴をあけることをできるな」

提督「ほぼゼロ距離なんだけど。さすがに殺意が高すぎやしないか」

ガングート「貴様の銃殺刑は私の中で決まっているからな」

提督「うーん、この」

響「こんにちは、ガングートさん。響……いや、ヴェールヌイと言った方が伝わるかな」

ガングート「ヴェールヌイ……? ……そういえば、日本の艦がそのような名前を付けられていたような気がするな」

響「そのヴェールヌイで間違いないよ」

ガングート「それで、そのヴェールヌイがいったい何の用だ。もしや、この囚人を助けようというわけではないな?」

提督「囚人じゃないぞ。提督だぞ」

響「そんなことはどうでもいいかな」

提督「どうでもいいの!?」

ガングート「では、何の用だ」

響「挨拶だよ。私はロシア艦とは言えないけれど、それでも一時は居た身。初めてのロシアの艦娘に挨拶しにいかない道理もないよね」

ガングート「そうか。私はガングート。私としても同志がいるのは心強い」

響「それで……司令官が今まさに逃げ出そうとしているけど、いいの?」

提督「響ぃ! なぜばらした!」

ガングート「逃がすわけがないだろう。止まれ!」バン

提督「響、同志なんだろ! なんとかガングートを止めてくれ!」

響「そうだね……ガングートさん」

ガングート「なんだ。私は今こいつを亡き者にするので忙しいのだ」

響「司令官を確実に葬り去るなら、爆弾を使うといいよ」

提督「おい!」


雷「響、楽しそうね」

暁「だ、大丈夫なの? 司令官死んじゃわない?」

電「砲撃くらっても至近距離で爆発を身に受けても無事な人が、あれくらいで音を上げるはずがないのです」

暁「そうかしら……」

―執務室―

提督「なんであいつ楽しそうに援護してんの? 威厳失墜とかそういうレベルじゃないよ?」

提督「いやまあ、ガングートも発砲はしているけど本気で撃ち殺してくるわけないよな。うん」

下2

―談話室―

提督「ふむ……」

秋津洲「?」

提督「そこで暇そうにバリバリお菓子を食べながら寝転がっている秋津洲、掃除をするから手伝え」

秋津洲「そんなことしていないよ! 風評被害はやめるかも!」

提督「暇なのは否定しないだろ」

秋津洲「うぐ……わ、わかったかも。何を手伝えばいいの?」

提督「テレビの裏を掃除するんだ」

秋津洲「うん」

提督「だからテレビをどかしてくれ」

秋津洲「そういうのは普通男がするものかも!?」

提督「そうはいうけど、力は秋津洲のほうがあるだろ?」

秋津洲「提督は自分の力を謙遜しすぎかも!」

提督「えー、ここでおだてても何も出ないぞ?」

秋津洲「おだてているつもりはないけど……」

提督「しょうがない、二人で持つか」

秋津洲「初めからそうすればよかったかも」

提督「じゃあ、持つぞ」

秋津洲「いっせーの、で持てばいいの?」

提督「おう。じゃあ、いっせーの……」

ガタッ

秋津洲「んっ……! お、重いかも……」

提督「おー、引きずらないように頑張ってくれ」

秋津洲「わ、わかった……って、提督も持って!」

提督「ははは」

秋津洲「笑っている場合じゃないけど!?」

~~~~~~~~

提督「掃除機かけて、ダスターで拭いて……よし、こんなところか」

秋津洲「結構埃がたまっていたかも」

提督「こういう場所の掃除は快感だよな! 綺麗にした後が分かりやすくて!」

秋津洲「よくわからないかも……」

提督「秋津洲だって、埃を掃除器で吸い取るときはずいぶん楽しそうだったじゃないか」

秋津洲「あれは……ちょっと、楽しかったかも……」

提督「今度は倉庫の掃除もするから付き合ってくれよ」

秋津洲「嫌です!」

提督「大艇ちゃんの居場所でもあるというのに。すこしでも住屋をきれいにしてやろうという気はないのか?」

秋津洲「そ、その言い方は卑怯かも……うー、手伝います……」

―執務室―

提督「倉庫とかもあんまり清掃の手がいきわたらないから、綺麗にするとき楽しそうではある」

提督「まあ、掃除というより秋津洲で遊ぶ方が楽しかったりするけど」

下2

―食堂―

文月「おままごとしたいなー」

提督「おままごと。かわいい願いじゃないか」

間宮「忙しい時間じゃありませんし、私はいいですよ」

伊良湖「そうですね、私もかまいません」

文月「えへへ、ありがとぉ。じゃあね、あたし司令官のお嫁さん」

提督「お嫁さんかー。じゃあ、俺が夫だな」

文月「うん。司令官は年収二百万のうだつの上がらないサラリーマンでぇ、毎日上司に怒られながらも愛するお嫁さんの顔を見て次の日も気合を振り絞って頑張ってるけど、最近美人な同期の女性に誘われて悶々とした生活を送っている夫の役なの~」

提督「は?」

文月「間宮さんはぁ、そんな司令官を遠くから熱い視線を向けて、相手にお嫁さんがいると知っていながらも疲れたところを酔わせて愛人関係を結んで最終的には結婚まで持ち込もうとする泥棒猫の役ねぇ」

間宮「え?」

文月「伊良湖さんはぁ、あたしと司令官の赤ちゃん!」

伊良湖「なぜでしょう、一番マシに思えます」

提督「ちょっと待って。何その設定」

文月「おままごとしたいなぁ、って呟いたら、秋雲ちゃんがこうするといいって教えてくれたの」

提督「秋雲ぉ!」

文月「じゃあ、始めよっか!」

間宮「(提督、たぶん文月ちゃんもわかっていないと思うので……)」

提督「(だな、まさかわかってこの設定を楽しむわけもないだろう)」

文月「えーっと、まずは司令官が帰ってくるところからねぇ」

提督「あー、うん。ごほん。……ふ、文月、帰ったぞー」

文月「おかえりなさーい、あなた♪ 今日もお仕事おつかれさまぁ」

提督「まったく、毎日の上司には困ったものだが、文月の顔を見ると癒されるよ」

文月「そんなぁ、あなたったら♪ コート、持つよぉ」

提督「ありがとう。今日のご飯は何かな?」

文月「今日のご飯はぁ……あれ?」

提督「どうした?」

文月「他の女の口紅……どういうことぉ、あなた」

提督「!?」

文月「もしかして、前に言っていた同期の女性? ねぇ、何とか言ってよぉ、あなた?」

提督(な、なんか文月が怖い! ハイライトが消えているようにも見える! 助けてくれ、間宮!)

間宮「え、その……お、お邪魔しますね」

文月「! なに、その女は~? もしかして、浮気相手ぇ?」

提督「ち、違う! こ、この女性はただの同期で……」

間宮「そ、そうなんですよ。今日は社内でもよくお話しされる貴女の顔を一度見てみたくて……」

文月「嘘! だったらー、どうしてこのコートから貴女のにおいがするのぉ?」

間宮「そ、それは……で、電車が混んでいたんですよ!」

文月「夫は自転車通勤のはずだよ!」

提督「そんな設定だったの!?」

間宮「ふ、二人乗りをしていただけですから!」

文月「言い訳が苦しいよぉ? だったら、こんなところに口紅もついていないはず! そろそろ、本性を現したらどうなのぉ?」

間宮「う、うぅ……」

提督(だ、だれか! だれかこの状況を止めてくれ!)

伊良湖「……お、お母さん、止めてー」

文月「あー! 赤ちゃんだからまだしゃべっちゃダメだよー!」

伊良湖「す、すみません。えっと、ちょ、ちょっと用事を思い出して」

提督「そうだな! 今日はここまでにしよう!」

間宮「はい! この続きはまた今度にした方がいいですね!」

文月「……?」

―執務室―

提督「あかん、怖すぎる。何なんだあの設定、いや、俺も昔やったことあるけど」

提督「というより、文月はどこまで理解していたのだろうか……そして演技が妙にうまかったのもなんなんだ……」

下2

―談話室―

提督「ここに置いておいた俺のカステラが……ない!?」

赤城「それは大変です。もぐもぐ……」

翔鶴「カステラって、どのようなものですか?」

提督「ひとつ三千円する高級カステラだ。まあ、梱包からして違いが判ると思うんだが」

瑞鶴「箱に入っているやつ?」

提督「ああ」

赤城「そんなものがなくなるなんて……提督、私も探しますよ」

提督「本当か? 頼む。……あと、頬に食べかすがついているぞ」

赤城「あっ、す、すみません。はしたない姿を……」

翔鶴「ところで、赤城先輩が食べているそれは……」

赤城「カステラですよ」

提督「さて、どこに行ったのか……まず、三人は何か見なかったか?」

赤城「私がここに来たときは机の上にまだあったと思います」

翔鶴「ですけど、私たちが来たときはなかったと思います。ね、瑞鶴」

瑞鶴「そうね。机の上にあったというなら、見てないというのはおかしいし……」

提督「うーん。つまり、赤城が来てから翔鶴たちが来るまでにここに入ってきた人物が怪しいということか」

赤城「でも、私が来た後では……あ、青葉さんが一度来ましたよ」

提督「そいつだ!」

翔鶴「ま、まだ決めつけるには早いですよ」

赤城「一度ここに入ってぐるりと回ってから出ていきました。何かを探しているみたいでしたけど」

提督「おのれ、俺のカステラを探していたな!」

瑞鶴「さすがに自意識過剰だと思うんだけど」

ガチャ

青葉「青葉の話をしましたか?」

提督「俺のカステラを返せ!」

青葉「な、何の話ですか!?」

翔鶴「提督のカステラがなくなったみたいなんです」

青葉「カステラ?」

赤城「もぐもぐ……」

青葉「あれじゃないんですか?」

提督「は? 赤城が食べてるのはカステラだぞ」

青葉「カステラですよね?」

提督「正しくは花串カステラだ。結構おいしいんだぞ」

青葉「そ、そうですか。では、青葉はこれで」ドサッ

瑞鶴「? 何か落としたけど……」

提督「……俺のカステラじゃないか!」

青葉「あはは……さようなら!」ダッ

提督「逃がすか!」ダッ

翔鶴「行っちゃいましたね」

赤城「……二人とも、食べますか?」

翔鶴「あ、ありがとうございます」

瑞鶴「私も、いただきます」

―執務室―

提督「まったく、逃げ切れられてしまった」

提督「とりあえず、俺も後で花串カステラをもらおう。たぶんたくさんあるだろうし」

下2

―山―

提督「今日はピクニックだぞ」

霞「……」

提督「なんだ、もう疲れたのか」

霞「呆れて声も出ないだけよ」

提督「呆れて? まあいいや。みんな、ここで昼食をとるけど、あんまり離れないようになー」

大潮「司令官、質問いいですか!」

提督「どうぞ」

大潮「どうして山なんですか!」

提督「山って言っても、遊歩道コースで気軽なピクニックとしてはちょうどいいだろう」

朝雲「そもそも、気軽なピクニックっていうのが変なんじゃないかしら」

山雲「私は~こんな日もあっていいな~って思うけど~?」

朝雲「一応作戦中じゃないかしら……」

提督「とにかく、細かいことを気にしてもしょうがない。ここまできたなら楽しもうではないか!」

大潮「はい!」

朝潮「司令官、シートを広げるの手伝いますよ」

提督「おお、悪いな」

満潮「本当、準備いいわね……」

荒潮「あら、でも私は提督の言うことにも賛成かしら」

満潮「荒潮?」

荒潮「気を張ってばっかりじゃ、ストレスもたまる一方よ?」

満潮「こうしてのんきにピクニックしている方がストレスになるんじゃないかしら」

荒潮「でも、なんだかいつもよりリラックスしているようにも見えるわよ?」

満潮「うぐ……」

霰「照れてる……」

満潮「照れてないわよ!」

~~~~~~~~

提督「うーん、春の気候は気持ちいいなぁ」

大潮「もう食べられませんよ~……むにゃむにゃ」

霰「スー……スー……」

提督「二人は気持ちよさそうに眠っているし」

朝潮「でも、こんなにゆっくりしていて、ちょっと罪悪感がありますね……」

提督「なら、今はしっかり休んで、いざ出番が来たときに思いっきり戦果を挙げればいい」

朝潮「そう、ですね。ありがおうございます、司令官」

霞「お礼なんていらないわよ。はぁ、責任者がいないって、さすがにどうかと思うんだけど」

提督「問題ない。代理として大淀と長門、大和に任せてある」

霞「……もしかして、私に黙ってみんなの許可を取っていたわけ?」

提督「そういうことだな」

霞「はぁ、こういう時の根回しはいいんだから」

提督「さて、じゃあ俺もあっちで荒潮たちがしているバドミントンにでも混ざってこようかな」

朝潮「私も付き合います!」

霞「……ま、たまにはいいのかもしれないわね」

―執務室―

提督「ハイキングも混ざってしまったかも」

提督「でも人もいなかったし、ちょうどよかったかな」

下2

―伊号潜水艦の部屋―

提督「ニムー、ニムしようぜ」

ニム「ニムがニム? どういうこと?」

提督「ニムっていうゲームがあるんだ。えっと、ここにコインの山が二つある」

ニム「うん」

提督「どちらかの山からコインを好きなだけとっていい。だが、二つの山からコインをとるのは禁止。そして、最後にコインをとった者が勝ちだ」

ニム「なーんだ、簡単そう!」

提督「ほほう、では、まず二つの山から勝負を始めようか」

ニム「両方とも十枚くらいかな」

提督「先手はあげよう」

ニム「じゃあ……残り一枚にして提督の番!」

提督「じゃあ、もう一方の山も残り一枚にする」

ニム「……あれ? これ、あたしの負け?」

提督「ははぁ、せっかく勝てそうだったのに」

ニム「むー、じゃあコインの山を五つにして勝負!」

提督「ふうん、なら、分配は任せよう」

ニム「五枚と五枚、二枚と三枚と四枚と一枚! さあ、勝負!」

提督「……よし、いいだろう、先手は?」

ニム「分配は任せられたから、提督にあげるよ」

提督「なら、四枚の山を全部崩そう」

ニム「いきなり攻めるね」

提督「そういうことを言っている時点で、ニムは俺に勝てないけどな」

ニム「んー? 提督は何か知っているの?」

提督「まあな」

~~~~~~~~

提督「最後の一枚をとって勝ち」

ニム「また負けたー!」

提督「必勝法があるんだから、わかってないとそりゃ負けになる」

ニム「必勝法なんて聞いてない! 提督ずるいよ!」

提督「ははは、知らないやつが悪い!」

ニム「悔しいー! はっちゃんに必勝法を聞いてくるんだから!」

提督「おー、知ってるといいな」

ニム「指を洗って待ってればいいんだから! 次は絶対に勝つからね!」

提督「首だろ……」

―執務室―

提督「必勝法覚えて来たら最後に取ったほうを負けにしようか」

提督「そもそも、必勝法を覚えてこれるのか……」

下2

―伊号潜水艦の部屋―

提督「さあ行くぞはっちゃん!」

8「行くって……どこに?」

提督「世界が俺たちを待っている!」

8「え?」

提督「とうっ!」バッ

8「そっちは窓――」

パリーン

8「……えぇ」

―母港―

提督「やはりオリョールか」

8「それはだめです」

提督「なぜだ、オリョールはとてもきれいな海じゃないか」

8「姉妹会議で三人以上の許可を得ないで提督を海域に連れ出すことは禁止になったの」

提督「なるほど。それは仕方ないな」

8「だからそれ以外で……」

提督「じゃあ、三人から許可を取りに行こうか」

8「えっ」

提督「探しに行くぞ!」

8「いまみんな買い物で……」

―公園―

168「ここのクレープ大好きなのよね」

19「それわかるの!」

401「たまに来るワッフルもいいよ」

58「はっちゃんへのお土産も買ったし、そろそろ帰るでち」

<ヒャッホー!
<ヤ、ヤメテクダサイ!ハズカシイデス!

168「ん? 今公園から聞いたことのある声がしなかった?」

58「聞いたことのある声……」


提督「ここの滑り台すげぇ楽しい!」

8「こ、子供たちが見ていますから……! せめて誰もいないときに……!」

提督「はっちゃん背中に乗れ! うつ伏せで滑るぞ!」

8「これなら海域に出たほうが良かったかも……」


58「見なかったことにするでち」

168「そうしましょう」

―執務室―

提督「いやー、久しぶりの公園は楽しいなぁ!」

提督「……あれ、なにしに外に出かけたんだっけ」

下2

提督「そろそろ夏になるな、青葉」

青葉「それはちょっと気が早すぎませんか?」

提督「そんなことはない。桜が落ち、新緑に変わるころ、それすなわち夏への始まりということではないか」

青葉「司令官はいつものように意味の分からないことを言いますね」

提督「とにかく、あれこれ言葉を重ねてもしょうがない。散歩に出かけよう」

青葉「散歩ですか。それはいいですけど」

提督「では、夏が来ているということを見せてやろう!」

青葉「どちらかといえば来ているのは梅雨だと思うんですけどね……」

―公園―

提督「昨日はここで遊んだなぁ」

青葉「そうなんですか?」

提督「ああ、はっちゃんが自棄になっていたのは今でも覚えている」

青葉(これは聞いちゃいけない類のものですね)

提督「さて、そろそろ青葉には夏を感じてくれたと思う」

青葉「全然感じてませんけど!? そりゃあ、日差しが強くなってきたとは思いますけど」

提督「ところどころに夏の花も咲いているだろう」

青葉「六月に咲く花を夏といっていいんですかね」

提督「虫だって元気に飛んでいる」

青葉「それで夏を感じたくはないですが」

提督「わがままだな!」

青葉「それを司令官が言いますか?」

提督「でも、こういうのを新聞の記事にしてもいいんじゃないか」

青葉「次は梅雨に関して書くので心配いらないです」

提督「梅雨ばかりだな。しかし……梅雨があけたら本格的に夏だな」

青葉「それについては同意します。さすがに夏服も用意しなくちゃいけませんね」

提督「そういえば、デパートで夏服の広告があったな」

青葉「あ、いいですね。この後の予定を考えるのに……そこのお店で冷やし中華を始めたみたいですし、まずは寄りませんか?」

提督「だな。そういえばもう扇風機を用意していた奴もいたなー」

青葉「それは気が早すぎると思うんですけど」

提督「わかる。……ん? もしかして、今全力で夏の訪れを感じている?」

青葉「言われてみればそうですね……冷やし中華は夏の代表です」

―執務室―

提督「販売戦略的には夏向きにしなきゃいけないから、そういうところではもう夏なのかもしれない」

提督「明石の店に取材しに行く方が面白かったかもなー」

下2

―秋月型の部屋―

提督「ホットプレートー。というわけで、ホットケーキを作る」

照月「ホットケーキ! いいですね!」

秋月「ご、豪華すぎではないでしょうか?」

提督「いやいやホットケーキミックスさえあれば、かなり安くつくぞ。そりゃバターと蜂蜜にこだわれば高くなるが」

初月「そもそもおやつというのが、うちではありえないんだ」

提督「え……」

秋月「た、たまには出ますよ? 間宮アイスとか……」

提督「うんうん、蜂蜜も有名なやつを用意してきたからな」

照月「提督の視線が三割方優しくなったんだけど……」

~~~~~~~~

提督「焼きあがったぞー」

照月「うわぁ、おいしそう……」

提督「色づきも完璧。さて、まず食べたいのは」

初月「じゅるり」

提督「ほい、初月」

初月「はっ、す、すまないな……」

秋月「遠慮せずに食べていいからね」

照月「秋月姉ー、それって提督が持ってきたものだよ?」

秋月「す、すみません!」

提督「いや、謝る必要はないけど」

初月「うま、うま」

提督「おかわりもいいぞ」

初月「本当か……!」

照月「その言葉の並びには不穏なものを感じるんだけど……」

提督「そうか? で、次のだが……」

秋月「先に照月にあげてください」

照月「秋月姉、いいの?」

秋月「ええ、気にしなくてもいいからね」

提督「さすがお姉ちゃん。ほら、たんと食べな」

照月「うん、ありがとう!」

―執務室―

提督「平和!」

提督「いや、たまにはいいのかもしれないけど、もうちょっと遊びたかったな」

下2

―グラーフ・ツェッペリン級の部屋―

提督「そういや、グラタンは史実じゃ完成しなかったんだって?」

グラーフ「そうだが、どうかしたのか」

提督「いや、どこの世界も海軍と陸軍は仲が悪いんだなって」

グラーフ「違うぞ」

提督「え? ……でもあの偉人は一応陸軍総司令じゃなかったか」

グラーフ「いや、仲が悪い方だ。陸軍とも良いとは言わないが」

提督「??」

グラーフ「海軍が私に関して問題を抱えていたのは空軍だ」

提督「空軍? 空軍って陸軍の一部のイメージがあるが」

グラーフ「ドイツでは分かれている」

提督「ふーん」

グラーフ「しかし、なぜそんな話をしたんだ」

提督「今更ながらちょっと気になって。ふむ、問題ね……」

グラーフ「……」

提督「当艦載機は空軍のものである!」

グラーフ「! 知っているではないか!」

提督「いや、問題と言ったらこれしかないだろう。いや、しかし、艦載機まで空軍ね……くく」

グラーフ「笑い事ではない」

提督「空を飛ぶのだから空軍が持つべきであるぞ」

グラーフ「空母の運用のために利用されるのだから海軍の管轄だ」

提督「しかし、空軍にパイロットなどいるのか? 空軍であればパイロットも多数存在するぞ」

グラーフ「海戦において制空権は重要なものだ。それなくしては海軍の勝利はない」

提督「通商破壊作戦しかできてないだろう?」

グラーフ「戦力が足りないからだ」

提督「ふん、そういうことならば、わが管轄である航空機をいくつか貸してやろう。艦載機としてな」

グラーフ「くっ、これほど面倒だと思ったのは久々だ……」

提督「まあ、ジョークよジョーク。そもそも、そんな伝達等が面倒になる挙句、今のパイロットは妖精さんだしな」

グラーフ「なぜ海軍司令官のアトミラールが空軍のまねをした」

提督「いやー、空軍総司令の凋落っぷりはなかなか見るものがあって」

グラーフ「これがいい性格をしているというやつか……」

提督「でもトラウマみたいなものじゃないのは安心したぞ」

グラーフ「伝手で聞いただけだからな。気にすることはないだろう」

提督「言われてみればそうだな」

グラーフ「しかし、それを気にしたがためにあんな会話をしたのか?」

提督「ジョークだって。そんなに深く考えるなって。……で、やはり艦載機は」

グラーフ「もうやめろ」

―執務室―

提督「色々残念だよな、ドイツの空軍は……」

提督「一部化け物もいるし、そういうところ含めて好きだが」

下2

―談話室―

天龍「んー、たまには弁当もいいな」

提督「龍田の手作りか?」

天龍「なんでわかったんだ……」

提督「それしかないし。ついでに俺も一緒に食事をとらせてもらおうかな」

龍鳳「あ、それではこちらにどうぞ」

如月「うふふ、ちょうど座れるように開けておいたわね」

提督「いや、もっと余裕持たせろよ……ん、あれ? お前らみんな左利きなのか?」

秋津洲「今更かも!」

摩耶「特別話したことはないし、知らなくても当然かもな」

提督「左利きって、困ったりすることはないの?」

天龍「別に左利きでも困ることはねえな」

提督「そうなのか?」

摩耶「ん? まあ、右利き用の物は普通に右で使うし」

天龍「なんで摩耶に聞いた?」

提督「いやぁ、天龍は細かいことを気にしないから困らないだけかと思って」

天龍「なんか引っかかる言い方だな……」

秋津洲「物を食べるときは困るかも!」

龍鳳「あ、それわかります。私は右も使えるようにしましたから、今は困りませんけど……」

如月「左側に右利きの人が座っちゃうと、ちょっと気を使っちゃいますよね」

龍鳳「わかります!」

提督「あー、じゃあ俺も左で食べるか。あんまり得意じゃないが……でも、普段はどうするんだ?」

摩耶「右が空くからそっちにずれればいいだけだ」

秋津洲「その手があったかも……!」

天龍「なるほどな。ま、まあ? 俺は知ってたけどな」

提督(こいつら思いつきもしなかったな)

如月「そのあたりは気を使うしかないですよねぇ」

提督「やっぱ食事は困るのか。そういえば、大淀は左に羽ペンを持っていたような気がするが」

龍鳳「縦書きなら問題はないですよ。横書きになると、字が手に隠れちゃうので少し困りますけどね」

摩耶「下線がなくちゃちょっとずれたりするよな」

天龍「大きさとかもばらばらになったりとかさ」

摩耶「それは字が下手なだけなんじゃないか?」

天龍「ま、まあ俺は無いけどな!」

提督(字が汚いんだな)

―執務室―

提督「外食時の固定カウンター席とか困りそう。でも、それ以外の時はちょっとずれるとかすればいいしな」

提督「でも左利きでも物を扱うときは右って人もいるみたいだからなぁ。確かに意外と困らないかも」

下2

―高知―

初雪「要するに」

提督「エッチな意味で」

初雪「初鰹」

初風「いきなり何を言っているのよ」

提督「というわけで、わざわざ高知まで鰹を食べに来たぞ!」

黒潮「女房子供を質に入れてでも食べろ、やな」

親潮「昔はそういう風に言われていたようですね」

初月「そんなにおいしいのだろうか」

初霜「いえ、むしろ少し過ぎてからのほうが値段と味が安定するそうです」

提督「初鰹を食べると寿命が延びたりするって話だから、昔から人気があるんだ」

初春「待つのじゃ。貴様が初鰹というと変な風に聞こえるのじゃ」

提督「え?」

初風「自覚がないところが嫌ね……」

―料亭―

提督「ここなら初物が食べれるらしいぞ」

初雪「初物……」

初風「この二人わかっていってるのかしら……」

初霜「えっと、やっぱり鰹料理は何がいいですかね?」

満潮「カツオのたたきで決まりやろ!」

親潮「全員で分けやすくて、いいのではないですか」

初春「うむ、異論はない」

初月「しかし、高いな……」

初風「おごってくれるらしいし、いいんじゃない?」

提督「え、いや、確かにそのつもりだったけど、なんか釈然としない」

初霜「そんな、きちんと払いますよ?」

提督「それはそれで気にする奴も出るから、気持ちだけ受け取っておく」

~~~~~~~~

「カツオのたたきです」コトッ

満潮「おおー、うまそうやな!」

初月「心なしかまぶしく見える……!」

初雪「おいしい……」モグモグ

初春「あっ! 卑怯じゃぞ、わらわも食べる!」

初風「あんまりはしゃがないように。さっきからネギが落ちてるわよ」

提督「まだまだみんな子供だなぁ」

親潮「司令は……どうしてネギばかり取っているんですか?」

提督「それはだな……」

初霜「司令官どうぞ!」

提督「ああうん、初霜もちゃんと食べろよ」

初霜「はい!」

親潮「なるほど、それで……」

―執務室―

提督「やっぱ新鮮なたたきは美味い。高知ならではだな」

提督「初鰹も験担ぎみたいなものだし、やっておいて損はないな」

下2

ガングート「銃殺が嫌であれば流刑はどうだ?」

提督「どうだって、何を普通に俺を罰す話を本人にしているんですかねぇ」

ガングート「海を見ていると、ヴェールヌイからそうするのはどうかと言われたんだ」

提督「響! ひびーき!」

響「どうしたんだい。不死鳥という通り名もあるよ」

提督「不死鳥、なぜ流罪なんて話をした!」

響「ロシアでは実際に海に流すことはなかったからね。だから、ここでそうしたら面白そうだと思ったんだ」

提督「面白そうという理由だけで上官に流刑を求める部下!」

ガングート「何か問題があるか」

提督「あるけど!?」

ガングート「ふむ、しかし日本の海は悪くないな」

響「そうだね。不凍港も場所と気候によっては凍ることもあるから」

提督「あー、ロシアってそういうイメージある」

ガングート「は? なんだ貴様、喧嘩を売っているのか」

提督「売ってないです」

響「でも穏やかな気候の海がどこにでもあるっていいものなんだ」

ガングート「日本では年中泳げるそうだな。ロシアではまずありえん」

提督「むしろ夏は海に入りたくなるくらいだし。そういう意味ではやっぱ大きく違うんだな」

ガングート「なんだ? 貴様、自慢か」

提督「不死鳥! この人面倒!」

響「響だよ」

提督「あ、嫌だったんだ」

ガングート「では、さっそくドラム缶とコンクリートの用意をするぞ」

提督「流すってしかもそういう?」

ガングート「外海まで泳ぐ人外らしいと聞いた。この私にここまで準備をさせることを光栄に思え」

提督「やっべぇ、完全に茶化す相手を間違えたと今なら言える」

響「頑張って司令官。日本の海は暖かいから何とかなるさ」

提督「コンクリ詰めは死ぬと思いますが」

ガングート「……と思ったが、やめておこう」

提督「え?」

ガングート「貴様のようなもので、この綺麗な海を汚すのも気がひけるからな」

響「……うん、それで良いと思うよ」

提督「……あ、ガングート! お前実は日本の海を気に入ったな!」

ガングート「くっ、やはり貴様は銃殺刑だ!」カチャ

提督「逃亡!」バッ

~~~~~~~~

提督「ふぅ、なんだかんだしつこく追ってくることはなくなったな」

提督「響はあれか、ロシア艦としては初めての仲間だからテンション上がっているのか」

↓2

―談話室―

提督「イムヤ、なにか面白いゲームある?」

168「私に聞くってことは、スマホのゲームでいいのよね?」

提督「うーん、俺はパソコンでしたい派だから、PCでもできる奴がいいな」

168「それならDM○のが一番ね。データの紐づけも簡単だし」

提督「あ、先に言っておく。立ち位置的に海軍の艦を利用したゲームについては無しな」

168「微妙にピンポイントね……わかったけど」

提督「で、おすすめは?」

168「シャ○バかしら」

提督「あー、結構調整入れてくれるよな。おかげでデッキのカーストがよく変わるのは面白いところ。戦術が固まりだす前が一番楽しいよな」

168「やったことあるんじゃない」

提督「やってないとは言ってない。後で対戦するか?」

168「悪いけど、もう削除しちゃったわ」

提督「!?」

168「スマホの容量ってゲーム入れているとすぐいっぱいになるのよ……」

提督「あるあるだな」

168「じゃあかん○にはどう? 無課金でもやりやすいし、声優も豪華よ。キャラゲーに近いし張り付きも必要ないから気軽に楽しめるけど」

提督「そういうゲーム性のないのは……」

168「出た出た、こういうゲーム性を気にする人。今の時代キャラが可愛ければいいのよ」

提督「ええ、ゲームをしたいんだからゲーム性あって当然だろ?」

168「スマホでゲームする人は基本的に気にしないのよ。むしろ、そういうのは面倒に感じる人のほうが多いわ」

提督「遊べるゲームがいいと思うんだけどなぁ」

168「現代日本は忙しいから。あと、スマホゲームは気晴らしか暇つぶしにするものだから、あんまり難しいのはあんまり支援されないわ」

提督「うーむ、時代の流れか」

168「その点、某艦隊ゲームは戦略もあり、でも基本はまったりと進めていけるから最高よね」

提督「だからその話は無しな。いろんな意味で」

168「うん」

提督「今の時代そういうのが流行る理由はわかった。だが、俺はゲーム性あるやつがいい」

168「アイ○スと、iPhone版はないけど○城と政○くらいかしら」

提督「あれだけゲームがあってそれだけか。やっぱそこらは微妙だな」

168「戦闘シーンでオートなしのやつがいいんでしょ」

提督「え、怒ってる?」

168「怒ってないわよ。ただ、ゲーム性気にする人ってスマホゲーム向いてないわよ」

提督(どうやらなにか不興を買ったらしい)

168「というか、コンシューマ派の提督はどうしてスマホゲーに興味を持ったのよ」

提督「そりゃ、イムヤと何か話をしたかったからだけど」

168「……べ、別にほかの話でもいいじゃない! もう、しょうがないから私のおすすめのゲームを紹介してあげるわ! いいところを教えてあげる」

提督(なんか知らないけど一瞬で機嫌が直った)

―執務室―

提督「言われてみると、片手間にできるゲームのなんといいことか。ガッツリとはできないけど」

提督「クッキーク○ッカーとかある意味最強だしな。あれ以上の放置ゲーはない」

下2

―吹雪型の部屋―

提督「白雪ぃ! 布団を干せないって?」

白雪「あ、いえ、初雪ちゃんの分もするのが、大変だなって」

提督「本人にやらせろよ。やらないか」

白雪「そうなんですけど……すぐ言い直すのも、それはそれでかわいそうですよ」

提督「本人も理解しているだろう。まあ、そういうことなら手伝ってやろう」

白雪「本当ですか? でも、悪いですよ……」

提督「遠慮すんな。一人で二人分を運ぶのは大変だろう」

白雪「えっと、では、お願いします……」

―睦月型の部屋―

提督「もっちー!」

望月「なにー……?」

提督「そろそろ梅雨になる。布団を干さねば湿気が萬栄する時期になって大変だぞ」

望月「えー、マ○カDX楽しいからいや」

提督「理由になってないぞもっちー!」

望月「そもそも、どうして司令官がそんなこと言ってくるの?」

提督「睦月から『梅雨前だし、たまには自分で干してほしいにゃしぃ』って言われたからな」

望月「似てない……」

提督「うっせ」

望月「でも、ここで無視しても、またほかのみんなが言ってくるんだろうし……」

提督「だろうな」

望月「めんど……はぁ……」

提督(この様子なら一応しぶしぶやるだろう。次)

―古鷹型の部屋―

提督「加古起きろぉ!」

加古「んー……せっかく気持ちよく寝てたのに……」

提督「なんでまだ布団でごろごろしているんだ!」

加古「ほら、春眠暁を覚えずっていうでしょー」

提督「春は過ぎたぞ!」

加古「まだ五月。春」

提督「六月はすぐそこだろう。雨が降るようになったら干せんぞ」

加古「それならそれで、別にいいでしょ」

提督「よくないわ! 困るのは同部屋の古鷹だぞ!」

加古「あー、そっかー……じゃあ、明日ね」

提督「絶対やらないだろ」

加古「やるって。なんなら、後で古鷹に聞いてもいいけど」

提督「……わかった」

―執務室―

提督「結局寝たまんま? はぁ~……予想はできたけど」

提督「最近古鷹に怒られるのも慣れてきてないか?」

下2

―暁型の部屋―

提督「明日使えないトリビアー」

響「いえー」

暁「??」

提督「じゃあまず俺から。ゴリラの学名はゴリラゴリラゴリラ」

暁「えっ!? そ、そうなの!?」

響「ニシローランドゴリラだよね。一番数が多いという意味ではあってるけど」

提督「うむ」

暁「響も知ってたんだ……」

響「次は私。アイスクリームに賞味期限はないんだ」

提督「間宮アイスがいつでも食べられる理由がそれだな」

暁「そ、そうだったんだ……」

響「次は暁だよ」

暁「私? え、えーと……からあげクンって、からあげクン王国に住む妖精さんらしいよ……?」

提督「全く使えない知識が可愛いんだけど」

響「イントネーションがクンになっているところもポイントが高いね」

暁「も、もう! 悪い!?」

提督「悪くはない。んじゃ、そうだな……きゅうりは九割が水分」

響「有名だね。昔はそれで水分をとることも珍しくはないんだよ」

暁(初めて知った……)

提督「じゃあ、響はもっと使えない雑学があるのか?」

響「クラゲは九割以上水でできてるんだ」

提督「同じようなものじゃないか。ほら、次は暁」

暁「また!? えーと、えーと……そうだ、大和さんから聞いたんだけど、戦艦大和にはラムネ製造機とアイス製造機があったんだって!」

提督「そうなのか? 初めて知った……」

響「暁、侮れないね……」

提督「今回は暁の勝ちだな」

響「いろいろな意味で文句なしだよ」

暁「け、結局何だったの?」

提督「だから使えない雑学。そういう意味では最も意味のない雑学ということで暁の優勝だ」

暁「喜んでいいの?」

響「スパシーバ、暁」

暁「あ、ありがと」

提督「じゃあ、次の勝利のためにまた雑学をため込んでくるぜ」

響「次は負けないよ」

暁「じゃ、じゃあ暁も負けないから!」


―執務室―

提督「そもそも雑学とか言ってる時点で使える場面がほとんどない気がする」

提督「おおむね知識欲を満たせるものがほとんどではないだろうか。童話の雑学とか面白いのが多いけど」

下2

―睦月型の部屋―

提督「ということで、どうして睦月だけ『提督』と呼ぶのか考えてみたいと思う」

如月「また突拍子もない話題ですね」

提督「そういう如月は気にならんのか? 睦月だけ姉妹で提督と呼ぶのは」

望月「どうせキャラ付け……」

如月「望月ちゃん? そういうのは駄目よ?」

望月「っす……」

提督「しかし、果たして本当にキャラ付けだけなのか。いや、そもそも睦月はにゃしいとか言ってる時点でそれ以上はいらないと思うが」

如月「司令官も、睦月ちゃんに失礼じゃない?」

菊月「それをいうなら、本人がいないところでこんな話をしている時点でそうだろうに」

提督「んじゃ菊月は気にならないのか」

菊月「気になるといわれてもだな、長女らしくしっかりしようとしているだけではないか?」

提督「おお、一番それっぽい」

望月「それならにゃーとか言わないほうがいいんじゃ……」

菊月「あれは愛嬌だろう」

提督「なるほど、姉らしくかつ、子供っぽさも兼ね合わせて最強に見えるということだな」

菊月「最強かどうかは知らないが……」

如月「睦月ちゃんに聞くことはできないのかしら」

提督「『睦月とずっと一緒にいるのに、そんなことも知らなかったにゃしぃ? およよ……』とか言われそうで」

望月「あー、なんか言いそう」

―白露型の部屋―

提督「しかし、こちらではその理由は当てはまらないぞ」

海風「はあ……どういうことですか?」

提督「春雨だけ白露型の中で司令官呼びだろ? 不思議だなって」

涼風「くそ提督とかいうやつもいるし、おかしくないんじゃね」

白露「吹雪型の磯波も一人だけ呼び方違うよ?」

提督「む、それを言われると不思議とおかしくない気がしてきた」

海風「呼び方は人それぞれですからね」

提督「ふむ……確かに今更提督と呼ばれても違和感がありそうだしな」

山風(でも、言われてみると、本当になんでだろう……)

―執務室―

提督「個性があるってことだな。ははは」

提督「司令官と提督、どっちも使うやつもいるし、呼び方とか気にしてないだけかもしれんし」

下2

提督「皐月の戦闘中なんだけどさ」

皐月「うん」

提督「かわいいねって言うだろ」

皐月「う、うん。そうだけど」

提督「かわいいものを探しに行こうと思う」

皐月「うん……うん?」

提督「さて、まずは明石の店に行ってみるか」

皐月「ちょっと待って、ボクにもわかるように言って」

提督「かわいいものを探しに行く」

皐月「わかる気がするけどやっぱりわからないよ」

―売店―

明石「いらっしゃーい。提督、いいものが入ってますよ」

提督「あ、今日はそういうのいいんで」

明石「そうですか。あら、皐月ちゃんととは珍しいですね」

皐月「司令官に連れてこられたんだけど……」

明石「なるほど、ご愁傷さまです」

提督「で、かわいい……ほら皐月、これなんてどうだ?」

皐月「せ○とくん人形をかわいいと思う人は少ないと思うよ」

提督「だよなー」

明石(入荷を希望した人がいたんですけどね)

提督「うーん、ここにはないな」

皐月「そもそも、あのセリフはそういう意味じゃないからね」

―演習場―

提督「やっぱかわいいは戦闘中に見つけるものってことだな」

皐月「なんだか自分でなんでそのセリフを言ったのかわからなくなってきたんだけど」

提督「ほら、今皐月の姉さんが被弾しているぞ」

皐月「自分の姉が被弾している姿を見てかわいいとは言わないよ!」

提督「しかし、皐月は俺に対してかわいいとか言ってきたこともあったよな。さすがにあっちのほうがかわいいんじゃ……」

皐月「だからそういう意味じゃないってば」

提督「うーん、わからん」

皐月「もう……でも、今の司令官なら、たしかに『かわいい』かもね」

提督「全然わからん……!」

―執務室―

提督「なんなのだ、まるで分らんぞ」

提督「そもそも皐月のかわいいという対象はだいたいかわいくないぞ。美的センスの欠落……!」

下2

―水岸―

水無月「ねえねえ、今から何するの?」

提督「鮎釣りだ」

水無月「あゆつり? なにそれ」

提督「釣りだよ釣り。魚釣り」

水無月「あれ、でも司令官は釣れない釣りが好きだって聞いたよ」

提督「釣りが好きならたまには普通に釣るさ。それに、鮎釣りはただの釣りとは違う」

水無月「何が違うのさ」

提督「鮎釣りは鮎の習性を生かしつつ、またその鮎を完璧に理解しなければ簡単に釣ることのできないものだ」

水無月「難しそうだねぇ……」

提督「ふふ、そうさ、ただの釣りだと思って油断するとまったく釣れないことも多々ある。だが、それが面白い」

水無月(これが変なスイッチが入ったってやつだね。みんなから聞いたよ)

提督「さあて、まずは……水無月、魚は触れるか」

水無月「当たり前だよー。艦娘で魚に触れない子が……いたような」

提督「ん、触れるなら大丈夫だ。さて、この囮を……すばやくぶすっと」

水無月「えっ、大丈夫なの?」

提督「囮ってこういうものだし。鮎釣りといえば友釣りだしな。で、これを川に放流」

水無月「鮎で鮎を釣るの? 同族で……えっと?」

提督「習性を利用するといっただろう。こうして、あの鮎がいそうなポイントに移動させて…………よし、かかった!」

水無月「もう!?」

提督「さっと取り込んで、これで完了。な、簡単だろ」

水無月「へー、でもさっき難しいって言葉に同意したような気がするけど」

提督「慣れればそうでもないさ」

水無月「……ねえねえ、ちょっとやってみたい!」

提督「もちろん。じゃあ、さっき釣った鮎を囮にして……」

水無月「釣った鮎でもいいんだね」

提督「習性を利用して釣るからな。別に勝ったのでもなくても問題ない。さて、あの岩場辺りにいるから誘導するんだ」

水無月「誘導? わわわ、違う方向に行こうとするよ!」

提督「押して駄目なら引いてみろってな」

水無月「押して駄目なら? こ、こういうことかな。えいっ」

提督「おお、なかなか理解が早いじゃないか。才能あるんじゃないか?」

水無月「えへへ、司令官の教え方がいいからだよっ」

提督「うれしいこと言ってくれるじゃないの! よーし、どんどん釣っていくぞー!」

水無月「おー!」

―執務室―

提督「いやぁ、気持ちいいほど釣れた。水無月もすごい上手じゃないか」

提督「……最終的に釣った数で負けるくらいには」

下2

―トレーニング場―

提督「ヨガをしよう」

葛城「ヨガ、ってあのヨガ?」

提督「どのヨガかは知らんが多分そのヨガだ」

雲龍「いいんじゃないですか」

天城「ですね。トレーニングとしては変ではないですし」

提督「……」

天城「どうかしましたか?」

提督「素直に肯定されると、それはそれで恐ろしいな」

天城「それは自虐では……」

提督「んじゃ、えーと……まずヨガって知ってるか?」

雲龍「ビリーズのアレみたいなのですよね」

提督「ブートキャンプはエクササイズだから少し違うぞ。ヨガもエクササイズといえばそうだが……そういうのはいいだろう」

雲龍「はい」

提督「ヨガの基本はポーズと呼吸だ。この雑誌に初心者向けのがあるからやってみるといい」

葛城「初心者向け……あ、太陽礼拝ね」

天城「名前だけは聞いたことあります。まずこれからやってみますか」

雲龍「んー……」ググ

提督「お、雲龍は早速やってるな」

雲龍「……手が床につかない」

提督「体固いな……」

葛城「足は曲げてもいいのよ」

提督「んじゃ、俺も」

天城「……提督、なんだかポーズが安定してますね」

提督「勧める前に自分で試したからな。これくらいなら、運動してるし」

葛城「ほらほら、呼吸もしっかりしないと駄目よ」

提督「葛城はやる気満々だな」

葛城「い、いいじゃない」

雲龍「……」

天城「? 辺りを見回して、どうかしましたか」

雲龍「次のポーズが、わからない……」

天城「……すみません提督、次はどうでしたか?」

提督「そうだな……葛城」

葛城「みんな実はそこまでやる気ないんじゃないかしら! もう、私がやってみるから、しっかり見ておきなさいよ!」

提督(葛城がノリノリなだけじゃ……)

天城(葛城、楽しそうです)

雲龍(あ、呼吸もどうするのかわからないわ……)

―執務室―

提督「実は一番やる気があったのが葛城という」

提督「……いや、不思議でもないか。なんかやってそうだし」

下2

―庭―

提督「大縄跳びは協調性を高めると同時に、運動能力の改善を促す素晴らしい競技だ」

敷波「……それで?」

提督「大縄跳びをしよう」

曙「クソ提督」

提督「なぜだ!? 意義をきちんと説明したではないか!」

曙「クソ提督はクソ提督なのよ」

綾波「何時もの流れになりつつあるみたいですから……」

提督「昨日はあたかも自然に受け入れられたというのに……」

漣「うーん、これこそ正にご主人様!」

潮「頑張ってください……?」

提督「なぜ疑問形」

朧「でも楽しそうじゃない?」

敷波「たしかに、悪くはないかもしれないけど」

綾波「皆とこういうことする機会って、あんまりないですしね!」

提督「ほらほら! なんだかんだ皆やる気じゃないか!」

曙「クソ提督の口車に乗るのは癪なんだけど」

提督「はぁ……なら曙が回す役な。俺と同じで」

曙「はぁ!?」

提督「だって俺が入ると身長差で難しくなるだろ。曙が跳ぶ気ないなら、せめて回す方に行けばいいじゃないか」

潮「曙ちゃん……」

曙「……わかったわよ。それだけはやるわ」

漣「やっぱりぼのちゃんはツンデレ!」

曙「つ、ツンデレじゃないわよ! あとぼのちゃん言うな!」

~~~~~~~~

提督「じゃあ、回すぞー」

綾波「いつでも大丈夫です」

提督「じゃあ、いーち…………」

朧「……回ってこないけど?」

提督「ちょっとー、ぼのちゃーん」

曙「ちゃんと合わせなさいよ、クソ提督!」

提督「いや、今のは曙が悪いんじゃないか」

曙「どこがよ!」

潮「高さが違うから、回しにくいんじゃ……?」

朧「そっか。提督、膝立ちになった方がいいんじゃないですか?」

提督「盲点だった」

敷波「さっき自分で身長差について言ってたじゃん」

提督「じゃあ、次回すぞー。いーち…………」

朧「……また?」

曙「だから、タイミングを私に合わせなさい!」

提督「いや、声かけてるのは俺なんだから俺に合わせるべきだろう」

漣「仲良いですなー」

潮「そう……かな?」

―執務室―

提督「皆は飛べるのに、回す方でひっかかるだと……」

提督「まさかこっちで練習が必要になるとは思わなかった」

↓2

―秋月型の部屋―

提督「ちょっと秋月、出かけるから付き合ってくれ」

秋月「お出かけですか? はい、秋月でよろしければ」

提督「じゃ、一刻後な」

バタン

照月「……秋月姉! デートだよ!」

秋月「!? て、照月!」

照月「ほら、ちゃんとおめかししないと!」

秋月「し、司令はそういうつもりじゃ……」

初月「しかし、男と女が出かければそれはデートと言うぞ」

照月「だよね!」

秋月「だ、だから……!」

照月「時間は待ってくれないよ! ほら、私も一緒に選ぶから!」

初月「デートが何かはしらないが……手伝おう」

秋月「う……」

―喫茶店―

提督「悪かったな、映画につきあわせてしまって」

秋月「……」

提督「……え、そんなだんまりするほどつまらなかったか?」

秋月「い、いえ」

秋月(照月と初月のせいで集中できなかった……)

提督「そうか。ならいいんだが」

秋月「あの、私を誘った理由は何ですか?」

提督「秋月と出かけたかった。それじゃダメか?」

秋月「うぅ……」

提督「……冗談だ。今日はペアチケットが手に入れたからと、ここで男女で来たら特別メニューがもらえるって話だからだ」

秋月「あ、そ、そうですか」

提督「それで、そろそろその特別メニューが……お、来た来た」

秋月「これは……ぱふぇ、でしたか?」

提督「最近食べなかったから楽しみでさ}

秋月(スプーンが一つしかないのですが、これは……)

提督「……んー、やっぱこの甘さだなぁ。特別なだけあって乗ってるフルーツも豪華だし。ほら、秋月も」

秋月「あ、はい。……も、もしかして?」

提督「あーん」

秋月「……!? そ、そんな、司令が口にしたものを……」

提督「え、嫌か!?」

秋月「い、嫌じゃないですけど! う、え、で、では……あーん」

提督「はい」

秋月「……お、おいしい、です」

秋月(あ、味が分かりません!)

提督「無理言ったようで悪いと思っていたんだ。気に入ったのなら、嬉しい」

秋月(気にかけてくれるのは嬉しいのですけど、恥ずかしいです……!)

―執務室―

提督「今日の秋月は、なんか気合入っていたな。服とか」

提督「なんだかいつもより口数も少なかったけど」

下2

―バイキング―

まるゆ「こ、ここにあるの何でも食べていいんですか!?」

提督「バイキングだしな」

まるゆ「わ、わぁ……ど、どうしましょう……」

木曾「落ち着け。時間はあるんだ、好きなものから食べていけばいい」

まるゆ「は、はい!」

木曾「だから走るなって。たく……」

提督「木曾、迷子にならないように見てやってくれ」

木曾「あいつは子供か……」

あきつ丸「その、連れてきてくださって、感謝の極みであります」

提督「ん? ああ、いいよ。一人で来る方がハードル高いしな」

あきつ丸「……そうでありますな」

~~~~~~~~

まるゆ「やっぱりまるゆはケーキ!」

木曾「あんまり食べ過ぎて夜ご飯はいらないとかになるなよ」

提督「いや、食べられそうにないのなら後で間宮に報告しておくから、そこは気にしなくていいぞ」

まるゆ「じゃあたくさん食べていいんですか!」

木曾「おいおい、あんまり甘やかすなよ」

提督「せっかくバイキングに来たのに、遠慮する方がもったいないだろ」

木曾「それはわかるがな」

あきつ丸「木曾さんはあまりスイーツはお好きではないのでありますか?」

木曾「そういうわけでもないがな。スイーツ以外のものもある」

提督「なら、木曾こそ遠慮することはない。好きなだけ食べろ」

木曾「……口がうまいな、提督は」

まるゆ「ほら木曾さん、これおいしいですよ!」

提督「こっちのワッフルも最高だぞ!」

木曾「気になったら自分で取りに行くから、押し付けてくるな」

まるゆ「はい!」

提督「あーんをされたくないのか!」

木曾「あきつ丸にしておけ」

あきつ丸「自分ですか!」

提督「じゃあ、あきつ丸、あーん」

あきつ丸「あ、あー……じ、自分には無理であります!」ガタッ

提督「逃げちゃった」

木曾「冗談で言ったのに本当にするからだ」

まるゆ「隊長、まるゆならかまいませんよ?」

提督「それなら、まるゆにしてあげるか」

木曾「まったく……」

―執務室―

提督「今日はまるゆが元気だった。やっぱりスイーツが嬉しかったのだろうか」

提督「やっぱスイーツが嫌いな女の子はいないよな。なんだかんだ木曾とあきつ丸も嬉しそうにしていたし」

下2

―食堂―

清霜「戦艦になるためにはたくさん食べることが重要よね」

提督「まあ、間違いではないな」

清霜「だから、今日はいっぱい食べるよ!」

提督「ふーん。なら、それにふさわしい料理を紹介してやろう」

清霜「ふさわしい料理?」

提督「わんこそばだ! そして、対戦相手に……クナー!」

国後「なによ、気やすいわね」

提督「クナって呼んでいいって言ってたのに……!」

国後「そっちじゃない!」

清霜「えー、私は戦艦を目指しているのよ? 相手にならないんじゃ……」

国後「……いいじゃない。やってやるわ!」

提督「人をやる気にさせるのが上手だな、清霜」

~~~~~~~~

磯波「私もですか……」

提督「たまたまいたからな」

清霜「この勝負、負けられないわ!」

国後「それはこっちのセリフ!」

磯波「私、ちょっと場違いじゃないですか?」

提督「大丈夫だ、そもそも場にあっているやつがいない」

磯波「です……かね?」

間宮「わんこそばできましたけど……本当にするんですか?」

提督「ここまで準備した以上引くことはできない」

清霜「お願いします!」

間宮「そうですか……では、頑張ってくださいね」

~~~~~~~~

清霜「まだ、まだ……!」

国後「水なんて飲んだら、入らなくなるわよ……?」

清霜「そういうクナも、手が止まってる……」

国後「きゅ、休憩よ」

提督「いやいや、お前ら十分だぞ」

磯波「私の十倍くらい食べてないですか……?」

提督「むしろ、磯波はそれでおなかいっぱいなのか」

磯波「普段からそこまで多く食べませんから」

間宮「でも、本当によく食べましたね。提督より多いんじゃないですか?」

清霜「ほ、本当?」

提督「……俺はまだまだいけるぞ!」

国後「負けず嫌いばっかり……!」

清霜「そういうクナも!」

磯波(さすがに、見ているだけで胸焼けがしてきました……)

―執務室―

提督「くっ、体のサイズでは圧倒的に有利だと思ったのに、どこに入っているというんだ……」

提督「つかマジで食べ過ぎた……死ぬ……」

下2

―トレーニング場―

提督「ウォールクラッシュって知ってるか」

朝霜「壁でも壊すのか?」

提督「それもウォールクラッシュだが、違う。あれを見てほしい」

朝霜「数字が書いて……上にクリア?」

提督「下にトランポリンもある。これでどれだけ高い点をとれるか、もしくはクリアできるかという勝負だ」

朝霜「ふーん……クリアまで高いな」

提督「身体能力を考慮して、実物より少し高くしたからな」

朝霜「へっ、そっちの方がやりがいがあるぜ」

提督「やる気になったか。では、この服を着てくれ」

朝霜「なんだこれ」

提督「ジャンプスーツだ」

~~~~~~~~

朝霜「少し動きにくいな……」

提督「だからクリアできないとでも?」

朝霜「へぇ、言うじゃん。そんなことは一切ないことを見せてやるよ」

提督「それは楽しみだ。しかし、ひとまずは俺がやってみよう」

朝霜「もちろんクリアだよな?」

提督「軽くやる。いきなりクリアしてもつまらんだろ」

朝霜「余裕だな。まあいいぜ。早く壁に手ぇつきな!」

提督「朝霜では届かない高さをなぁ! ふっ!」バンッ

朝霜「50点、でいいのか?」

提督「両手換算で100点だ」

朝霜「なるほどな。両手で数えるのか。……早くどきなよ」

提督「ふっふっふ、全身マジックテープだから離れんのだ」

朝霜「……」

提督「……いやあの、助けて?」

~~~~~~~~

朝霜「んじゃ、軽く一発クリアでもしてくるか」

提督「お、言ったな?」

朝霜「むしろ、クリアの上を目指してもいいくらいだ」

提督「いいだろう。では、どちらがどれだけ高く飛べるか勝負だ」

朝霜「絶対司令には負けないからな! ……はっ!」バンッ

提督「おお、壁キック」

朝霜「どうだ、司令! クリアの上に手が届いたぞ!」

提督「なるほど、口だけではなかったということか」

朝霜「……で」

提督「?」

朝霜「取れないんだが……」

提督「俺もそこは高すぎて届かないなー」

朝霜「……くっ、最初からこうして羞恥心を煽るつもりだったな!」

提督「いや、さすがにそこまで考えてなかったが」

―執務室―

提督「むう、あそこまで軽々クリアされるとは思わなかった」

提督「楽しかったから、夕張に作らせたかいはあったけど」

下2

―天龍型の部屋―

提督「天龍は……いないみたいだな」

龍田「あら~、天龍ちゃんに何か御用?」

提督「まあ、また遊んでやろうと思ってな」

龍田「あんまりやりすぎちゃだめですよ?」

提督「心得ている。切り落とされたくはないしな」

龍田「うふふ、わかってるならいいのよ~」

提督(今回遊ぶのはお前だがなぁ! 龍田ぁ!)

龍田(また変なことを考えてるみたいねぇ)

提督「しかし、龍田なら天龍の行く先も知っていると思っていたのだが」

龍田「あら、知っていても教えると思う?」

提督「だろうな。姉妹を大事に思っているところは、まるでお姉ちゃんみたいだな」

龍田「あら、本気でそう思っているのかしら?」

提督「もちろんだ。龍田はしっかりしているからな」

龍田「そんなことないわよ~」

提督「いやいや、謙遜しなくてもいい。心根も強く、非のつけどころがない」

龍田「そこまで言われると、なんだか変な気分ね~」

提督(強すぎて恐ろしいがな)

龍田(って、思ってそうね~)

提督「まあ天龍のことはいいや。しばらくすればおなかすいて帰ってくるだろう」

龍田「まるで子供扱いですね~」

提督「ある意味子供だろう」

龍田「天龍ちゃんが聞いたら怒りますよ? 部屋で待つなら、お茶の準備しますね~」

提督「おお、気を使わせて悪いな。お嫁さんになりそうだ」

龍田「あら、本気でそう思ってくれますか?」

提督「もちろんだ」

龍田「じゃあ、提督がもらってくれますか~?」

提督「…………いやー、それはきついっす」

龍田「口、切り落としますよ」

提督「そういう返しをするってことは、気づいていたんだろう!」

龍田「もちろんです。でも、どうせなら最後まで貫いてほしかったわ~」

提督「いやいや……ちょっと無理」

龍田「うふふ……なんだか、少し腹立たしいので、八つ当たりしますね?」

提督「え」

―執務室―

提督「いやおかしいだろう、こう返されるのが分かってていったんだろう」

提督「たぶん肯定してもからかわれただろうし……龍田の上をとるのは難しい……」

下2

―庭―

川内「せっかく手裏剣を手に入れた事だし、使ってみるよ!」

提督「いいのか?」

川内「また行けばもらえるんだし、いいでしょ」

提督「それそうだけどな」

マックス「それでは、呼んだメンバーに何か理由が?」

川内「ん? ないけど」

マックス「……」

提督「何で俺を見るんだ。何もしてないぞ」

隼鷹「あたしはお酒さえもらえれば何でもいいけどさー」

占守「手裏剣、気になるっす!」

名取「投げるときは気を付けて下さいね……」

提督「……カオスだな!」

川内「とりあえず、作った的の中心に当ててみるから!」

提督「ぶっつけ本番で? できるのか?」

川内「ニンポの勉強はしたから平気だよ」

提督「ニンポの勉強じゃ飛ばせないと思うんだけど」

川内「それは見てからのお楽し……みっと」ストッ

名取「あ、中心……」

隼鷹「やるじゃん! 酒の余興にはちょうどいいね!」

マックス「形状からして難しいと思ったのですが……」

川内「いやー、そんなに言われると照れちゃうな」

占守「占守もやってみたいでしゅ!」

川内「どうせならみんなで勝負をしてみようか。手裏剣は使いまわせばいいしね」

マックス「……そ、それなら私からしましょう」

提督「興味無さそうにしていたのに? ははーん、実は真ん中に当たったのを見てちょっとやってみたくなったんだろ」

マックス「……川内さん、貸してください」

提督「今度は無視か……」

川内「こう、シュッと投げる感じで」

マックス「口では伝わり難いですが、分かりました。では……」シュッ ストッ

隼鷹「隣の木に命中ー。あっはっは」

マックス「……は、初めてならこんなものです」

隼鷹「なら、次はあたしかね。ほいっと」ストッ

川内「端っこでもきちんと当たってる」

隼鷹「意外と出来るもんだねー。次は……名取かな」

名取「わ、私ですか! で、では……えいっ」ストッ

提督「真ん中! すごいじゃないか!」

名取「た、たまたまですよ……!」

マックス「やはり日本人は皆ニンジャなの……!?」

提督「違うと言いたいが、手裏剣投げるのみんな妙にうまいよな」

占守「次は占守っしゅ! うーんと、えいっ」シュッ

提督「うっ」ストッ

占守「司令に刺さったっす!」

名取「て、提督さん!」

隼鷹「ま、提督なら大丈夫でしょ」

川内「でも綺麗に刺さったねー」

提督「いやいやいや、少しくらい心配しよう? 確かに砲撃喰らうよりは全然平気だけど」

―執務室―

提督「手裏剣投げって案外コツがいるんだよなー。いともたやすく投げる奴も居るが」

提督「……あれ、もしかして俺投げてない?」

↓2

提督「この前の龍田褒め殺し作戦は失敗した。失敗要因は龍田に作戦を読まれていたからだ」

ガチャ

那珂「提督ー、那珂ちゃん呼んだ?」

提督「おお、呼んだぞ。生贄にな」

那珂「え?」

提督「なんでもない。しかし、那珂ちゃんは今日も愛らしいな」

那珂「ええっ、提督がそんなことを言ってくるなんて珍しいね」

提督「当たり前のことをわざわざ伝えるわけがないだろう?」

那珂「え~、もう、そんなに那珂ちゃんが愛らしいならもっと言ってもいいんだよ?」

提督(ちょろっ)

提督「でも、那珂ちゃんはみんなに対して物怖じしないし、きっと着任したばかりの子も助かってると思うよ」

那珂「そうかな。那珂ちゃんとしては当たり前のことをしているだけなんだけどね」

提督「その当たり前が難しいんだよ。着任当日に歌を聴かせるなんてことができるのは那珂ちゃんしかできない!」

那珂「そんなに褒めると、照れちゃうよ!」

提督「失敗を恐れないなんてさすが!」

那珂「こんなの艦隊のアイドルとして当然だって!」

提督「本当、恥を知らない感じですごいな!」

那珂「もうっ、言い過ぎだよ!」

提督(これでも褒め言葉として扱うのか……)

那珂「それで、提督は那珂ちゃんに何か用なの?」

提督「ああ、まあ殺気したことが本題といってもいいが、一応しばらく休みだから、アイドル活動頑張ってなと応援しようと思っただけだ」

那珂「ありがと! 那珂ちゃん頑張るよ!」

提督「そういえば、アイドル活動はどんな感じだ?」

那珂「うん? 頑張ってるよ!」

提督「頑張っているって、具体的に」」

那珂「頑張ってるよ!」

提督「……あ、うん。頑張ってな……」

提督(なんだろう、哀愁が……)

~~~~~~~~

提督「那珂ちゃんを褒めまくるのは簡単だった」

提督「でも、あれくらいできなきゃアイドルとしてやっていけないのかもしれないな」

下2

香取「最近、みなさん弛んでいると思います」

提督「お、おう。香取からそういうことを言ってくるなんて珍しいな」

香取「それくらい気になっているということです!」

提督「しかし、季節の変わり目はいつもこんなものだぞ」

香取「そのタイミングで敵が攻めて来たらどうするんですか!」

提督「敵も季節の変わり目は弛んでいると……」

香取「何か?」

提督「なんでもない」

香取「それで、なにかいい案があればいいのですが」

提督「そうだな……ラジオ体操なんてどうだ?」

香取「ラジオ体操ですか……意外といい案かもしれませんね」

提督「意外とってなんだ」

―庭―

香取「実際にやってみましょうか。ラジオ体操はしていますが、お手本となるかはわかりませんし」

提督「なんで俺まで?」

香取「提督もラジオ体操はしているのではないですか?」

提督「まあ、そうだが」

鹿島「……はっ、これはいいことですよね!」

提督「俺をずっと見て疑問視してたな? いいよ、最近その扱いには慣れてきた」

鹿島「す、すみません! そういう意味ではなかったつもりなんですが……」

香取「ラジオ体操の音楽はいつも使っている分があります。では、やってみましょう」

『ラジオ体操第一ー』

提督「聞きなれたもんだ」

鹿島「私も毎日聞いていますから、同じ気持ちです」

~~~~~~~~

提督「ラジオ体操は真面目にすると疲れるという! なのになんだ、そのへなちょこぶりは!」

香取「はい!」

鹿島「ど、どこか間違っていましたか!?」

提督「どうやら弛んでいるのは貴様らもだったようだな。一挙一動は大切にしなければならん! ラジオ体操はなおさらだ!」

香取「やはり提督には見抜かれていましたか……飛んで大きく手を広げる動作、少しだけ動きが雑になっていたことを」

提督「俺を何だと思っている。鹿島はそもそも、指先をしっかりまっすぐにしていない。そんなんじゃお手本になれないぞ!」

鹿島「は、はい!」

香取「提督、やはりあなたに相談をして正解でした。以後、ご指導ご鞭撻をお願いします」

鹿島「私もお願いします!」

提督「もちろん。お前たち、しっかりついてこいよ!」

―執務室―

提督「香取め、俺を試していたな……あれ以降しっかり動きやがる」

提督「その代わりといっていいが、鹿島が酷くしごかれていたな」

下2

―談話室―

夕立「時雨の髪さらさらっぽいー」サワサワ

時雨「もう、夕立ったら」

提督「なんとも和やかかな」

夕立「あ、提督さん」

時雨「なにか用かな?」

提督「暇だから誰かと遊ぼうと思って。二人がいたわけだけど」

夕立「なら、提督さんもどう?」

提督「どうって、撫でるをのか? そうだなぁ」

時雨「な、悩むのかい」

提督「なんだ、時雨は撫でられたいのか、しょうがないな」

時雨「そういうつもりじゃなかったんだけど」

夕立「でも、時雨は本当にかわいいっぽい。さっきだって、口ではこういってたけど、撫でられると嬉しそうにするの!」

提督「ほほう、それはかわいい」

時雨「ちょっと夕立、そんなことないってば」

夕立「提督さんも撫でてみるっぽい!」

提督「お、そうだな」

時雨「て、提督? 本気なの?」

提督「ほれほれー」ナデナデ

時雨「あ、ああもう、提督まで……」

夕立「ほら、嬉しそうっぽい!」

提督「本当だ、嬉しそう」

時雨「……うぅ」

提督「ぽ犬もかわいいと思っていたが、こうしてみると時雨もなかなか」

夕立「ぽ犬って何?」

時雨「そもそも愛玩扱いはやめてほしいのだけど……」

提督「でもほら、こうやって撫でるとしっぽを振っているように」

時雨「しっぽなんてないから気のせいだよ」

夕立「むー、夕立ももっと時雨をかわいがるっぽい!」

提督「よーし、じゃあ二人でもっと時雨をかわいがるぞ」

夕立「ぽい!」

時雨「もう、二人ってば……」

―執務室―

提督「時雨はかわいい。間違いない」

提督「時雨を愛でる夕立もかわいい」

下2

―秋津洲の部屋―

提督「二人は水上機母艦なわけだろ。神威は正しくは違うが」

秋津洲「また何か厄介事かも!?」

提督「厄介ごとではない。ハートフルな話題を提供してあげようと思っただけだ」

秋津洲「なーにがハートフルかも。神威と話しているときに来るなんて、何かあるに違いないかも!」

神威「何もないのに話しかけてくる方が変なのでは?」

秋津洲「神威は本気でそう言ってるかも? それなら今にわかるかも……」

神威「?」

提督「そんな人聞きの悪いことを言うなよ」

秋津洲「事実かも」

神威「それで、何の御用なんですか?」

提督「服のシェアリングとかどうだ?」

秋津洲「やっぱりかも」

神威「ハートフルで、シェアリングですか……横文字が多いですね」

秋津洲「そういうことじゃないかも!」

提督「神威的には服の交換は嫌か?」

神威「そうではないですけど……大きさは大丈夫なんでしょうか」

秋津洲「なっ、大丈夫よ! 秋津洲のすごいところ見せてやるかも!」

提督「突然やる気になったぞこいつ」

神威「前向きなのはいいところですよね」

提督「前向きなのか、これ?……」

~~~~~~~~

秋津洲「……」

提督「ぷっ、やっぱ無理じゃないか」

秋津洲「ここ、これは何かも間違いかも!」

神威「秋津洲さんが小さいわけじゃないですよ? その、私のが少し大きいだけで……」

秋津洲「嫌味に聞こえるかも!」

神威「そ、そんなつもりはないですよ?」

提督「でも思ったより大きさに差があったな」

神威「そうですね……あの、そんなにみられると恥ずかしいです……」

提督「おお、悪い」

秋津洲「神威もちゃんと着るかも!」

神威「そ、そんな無理矢理すると……!」

ビリッ

「「「あっ」」」

―執務室―

提督「秋津洲はまったく……予備はたくさんあるし、自分の部屋だったからよかったものの」

提督「でも一番被害を被ったのはある意味神威かもしれない」

下2

大淀「POGって知ってますか!」

提督「POG? いや、知らないけど」

大淀「提督ともあろうお方が遅れています!」

提督「いや、間違いなくそれは違うと断言できるんだが」

大淀「いいですか。POGはペーパーオーナーゲームの略称でして、気軽に馬主気分を味わうことができるゲームなのです」

提督「気軽に馬主? すると、競走馬を選んだりするのか」

大淀「察しがいいですね。そして結果をポイントなどに換算してどちらが優秀かを競うゲームです」

提督「こういっちゃなんだが……大淀、お前暇だな」

大淀「い、いいじゃないですか。息抜きですよ」

提督「しかし、数年どころじゃすまないぞ。すぐにできるゲームでもないだろうに」

大淀「長い期間をかけて馬を応援する。いいじゃないですか。アイドルみたいなものですよね」

提督「えぇ……」

大淀「でもゲームですから二歳から翌年の日本ダービーからが一般ですよ」

提督「まあ、いいが……まずは馬を選ぶのか」

大淀「はい。お好きなのでどうぞ。ドラフト方式ですから、絶対に選べるわけじゃないですけど」

提督「そもそもすでに始まってるし……じゃあ、このランキング上から順番に」

大淀「はぁ、ミーハーですね」

提督「いやだってすでに始まって結果を出してる馬を選ぶのは定石だろう」

大淀「そもそもまだレースに参加していない馬だっているのです。私はサトノエターナルを応援しています」

提督「なんだそれ……」

大淀「ディープインパクトの血統ですよ! 母親が少し短い距離で結果を出しているので心配ですが、それに関してはきちんと仕上げてくるだろうと予想しているんです」

提督「すまないが全然わからん」

大淀「まったく、提督は馬に興味はないんですか」

提督「そりゃたまに見るくらいはするしディープインパクトも知ってはいるが、まくしたてられたらこっちが困る」

大淀「なるほど……では、こうしましょう」

提督「USB?」

大淀「短評をまとめたデータを用意しました。これを見て勉強していただければ」

提督「……おい、これメガバイト超えてるぞ。メモ帳で短評だよな」

大淀「書きたいことが多くありつつも短くした方なんですよ。では、それを閲覧してしっかり考えてくださいね」

提督「しかも大淀が書いたのかよ! どれだけハマってるんだ!?」

大淀「買った方が負けたほうの言うことを何でも言うことを聞くんですよ!」

提督「しかも景品も勝手に決められた!?」

大淀「それでは提督、また後で伺いますね」

バタン

提督「……そ、壮絶だった」

提督「つーか、チラッと見たけど必要以上に書かれすぎだろ……一番長いのが大淀自身の雑感って」

下2

―神風型の部屋―

提督「神風、こいつで勝負だ! 一年前の雪辱を果たしてやる!」

神風「百人一首? 再戦ね……いいわ、相手になってあげる」

春風「では、私がまた読み手をしますね」

提督「公平にな。春風なら心配はいらないと思うが」

春風「はい、まかせてください!」

神風「実力で勝てるんだから、そんな心配する必要はないわ」

提督「ほほう言ったな。その言葉、後悔させてやる」

春風(どうして二人とも百人一首で攻撃的なのでしょうか?)

~~~~~~~~

春風「じゃあ、始めますね」

神風「いつでもいいわ」

提督「一文字目で取ってやるからな!」

春風「では、上の句から。……さ」
神風「はいっ」パシッ
提督「これだ!」パシッ

神風「……やるわね」

提督「距離の差か……次はわからんぞ」

春風(本当に一言目で取ってしまいました……二人とも、練習したんでしょうか?)

神風「これは思ったより楽しめそう。春風、次よ!」

春風「は、はい。春すぎて――」
神風「これね」パシッ

提督「くっ、場所を把握していなかったか!」

神風「この程度なら、今回も勝っちゃいそうね」

提督「まだまだここからだ」

~~~~~~~~

春風「残り六枚……あと一つでも取られると司令官様の負けです」

提督「練習したつもりだったが、これでも神風に勝てないか……!」

神風「当たり前よ。正月の鎮守府百人一首大会で優勝したのよ。こんなところで負けていられないじゃない」

提督「俺そんなの知らないぞ!」

神風「遊びだったしわざわざ呼ばないわよ」

提督「くそ……次があったら呼べよ!」

神風「でも、私に勝てないようじゃ優勝なんて夢のまた夢ね」

提督「貴様に勝って、ビクトリーロードを歩むんだ! 春風!」

春風「お」
神風「はいっ」パシッ
提督「はぁい!」パシッ

提督「負けたぁあああああああ!!」

神風「ふふん、出直してきなさい」

春風(二人とも、楽しそうですね)

―執務室―

提督「さらなる研鑽を積まなければいけないようだな……」

提督「というか、神風も間違いなく強くなってるよな。一文字目で取ってくるとかさすがに予想外だぞ」

下2

―公園―

提督「ピクニックといえば公園だよな」

若葉「なぜだかとんでもない矛盾を感じる」

子日「この前ピクニックと言って山に行ってきたからじゃないかな?」

提督「なぜ知っている」

初春「知らぬ方が珍しいのじゃ」

初霜「青葉新聞に書いてありましたからね」

提督「プライベートはないのだろうか」

若葉「それも悪くないだろう?」

提督「……いや、悪いけど」

若葉「そうか……」

初春「ま、ピクニックもいいじゃろ」

初霜「そうですね。ピクニックと聞いて、お弁当も張り切りました!」

提督「つまり初霜の手作りと。これは期待が持てるな」

初霜「そ、そんな期待するほどの物じゃないですよ?」

初春「つまませてもらった分は美味しかったのじゃ。自信を持ってもいいぞ?」

初霜「そ、そうですか?」

子日「え、つまみぐい? ずるいー!」

初春「長女の特権じゃ」

初霜「あれは横でものほしそうに見られていたからだったんだけど……」

初春「な、なんのことじゃろな?」

提督「長女ねぇ……」

初春「う、うるさいのじゃ!」

若葉「ご飯の話をしていたらおなかがすいてきた。そろそろ食べないかい」

提督「そうだな。子日も思い出したかのようにおなかを鳴らしているし」

子日「ピクニックが楽しみでおやつもたくさん持ってきたんだから!」

初霜「おやつはおやつの時間になってからよ?」

子日「わかってる!」

提督「さて、初霜のお弁当はと……おっ」

若葉「なかなかいいのではないか?」

提督「だな、ちゃんと好みに合わせて作っていて、かつ彩も考えられて作られている。想像以上だ」

初春「姉としてもはなが高い」

子日「つまみ食いして?」

初春「あ、姉の威厳じゃ」

初霜「そんなに褒めないでください……では、お茶も用意しているので、どうぞ」

―執務室―

提督「バドミントンとかで遊んだりしたらしい……が、俺は寝ていたので知らない!」

提督「いや、今くらいの気候が一番過ごしやすくてな。梅雨とはいえ湿気さえなければ最高なんだよ」

下2

―会議室―

提督「ペンシルロケットを打ち上げる」

飛鷹「へぇ……え?」

祥鳳「ロケットって、自分で作れるものなんですか?」

鳳翔「ペンシルロケットは初心者や小さい子でも簡単に作れるようなキットが売られていますから、そこに関しては心配はいりませんよ」

瑞鳳「そうなんですか……初めて知りました」

千歳「どうしてペンシルロケットを?」

提督「そうだな、強いて言うなら、ロケットの作り方を理解することで艦載機の理解ももっと深まるんじゃないかと思うんだ」

龍驤「もっともらしい理由をよう吐けるなぁ」

隼鷹「たぶん今考えたいいわけだろうしね」

大鷹「でもいいんじゃないですか?」

龍鳳「はい、私もやってみたいです!」

提督「これで賛成は三人だな」

飛鷹「何さりげなく提督まで数に入れてるのよ」

千歳「私は面白そうだと思います」

千代田「千歳お姉がするなら!」

鳳翔「そうですね。わたしもいいですよ」

提督「ハイ決定。過半数以上取れました!」

龍驤「別に焦らんでもええやろうに」

提督「エンジンと発射台、起動装置はあるので、側を作っていこうと思う」

千歳「では、ほとんど自由ですね」

千代田「そうなの?」

千歳「ペンシルロケットを飛ばすうえで大変なのはそこと場所くらいなの」

祥鳳「それなら確かに簡単にできそうですね」

大鷹「全員でこの世に一つだけのロケット、ですね」

瑞鳳「楽しそう!」

提督「じゃあまずは……トイレットペーパーの芯でいこうか」

龍驤「風情が台無しやろ」

―母港―

提督「なんだかんだでめっちゃ時間がかかったな……」

飛鷹「一部が我を通しすぎなのよね……」

隼鷹「酒を飛ばすとか面白そうじゃないか」

飛鷹「落ちるときに瓶が割れて大変になことになるわよ」

鳳翔「準備ができましたよ」

提督「いやー、わくわくするな」

瑞鳳「どこまで飛ぶかな」

龍鳳「どこまでも飛んでくれたら嬉しいです!」

鳳翔「そうですね、それは夢があっていいです」

提督「じゃあ、飛ばすぞ。3……2……1……発射!」

ビュンッ キラン

提督「……」

千歳「見えなくなりましたね……」

千代田「……ねえ、あのエンジンどこで手に入れたの」

提督「やっぱ、夕張かなと」

大鷹「ど、どこまでとんでいったんでしょうか」

龍驤「そりゃ、どこまでもやな」

―執務室―

提督「やっぱ市販のを使うべきだったな……空中分裂とかしたらどうしよう」

提督「ま、まあパラシュートも開くようにしたし、どこに落ちても危険はないだろう。たぶん……」

下2

―提督私室―

朝風「朝よ朝! 気持ちのいい風が吹いているわよ!」

川内「こんな日は朝から走るべきだよ!」

提督「……おお、そうだな!」

朝風「いい返事ね。やっぱり朝はこうでなくっちゃ」

川内「夜戦も好きだけど、こうした朝も気持ちいいもんだからね」

提督「おうよ! で、どこを走る? 鎮守府一周か」

朝風「うーん、どうせならもっと行ってもいいわね」

川内「なら山とかどうかな」

提督「それだ!」

―山―

提督「足腰を鍛えるにはちょうどいいな!」

朝風「ふふ、山の風も気持ちいいわ!」

川内「木々のざわめきが聞こえるみたいだ。これも朝ならではかな」

提督「それより、ペースは大丈夫か?」

朝風「あら、これでも軍人よ。このくらいなんでもないから」

川内「こんなことで疲れていたら夜戦なんてできないからね」

提督「そうだな! 俺もこのくらいで疲れてたら遠泳もできないからな」

朝風「案外私たちって気が合うのかもしれないわね」

川内「みんなで走ると気持ちいいからね」

提督「お、そこは朝のすがすがしさじゃないのか」

朝風「朝と、みんなでってことでしょ」

~~~~~~~~

朝風「ほら見て、太陽が昇るわ」

提督「うーん、これも早朝ならではだな」

川内「一日の始まりを感じるよ」

朝風「二人とも、なんだか思ったより朝の良さをわかっているみたいじゃない」

川内「夜と朝は表裏一体。どちらかを理解するには片方も理解しなくちゃ」

提督「俺も昔は日が昇る前に起きては日の出をみたもんだ。むしろ、これが普段ってところか」

朝風「あら、むしろ私が教わらなきゃいけない立場かしら?」

提督「朝風には朝風にしか理解していない朝があるだろう」

川内「そうだね。どうせなら、またみんなで走ろう」

朝風「ええ、約束よ」

―執務室―

提督「まさか寝ているところをたたき起こされてランニングに誘われるとは」

提督「いや、ていうか二人はどうしたんだ。俺が言うのもなんだけど」

下2

―廊下―

響「……暁、一人でトイレにも行けないのかい?」

暁「ほ、ほら、雷だって行きたいっていってたし」

雷「別に私は一人でも平気だけど」

電「でも、今日は電気の点検で全館消灯しているらしいので、一人だと心細い気持ちもわかるのです」

暁「そ、そうよね!」

響「窓から差し掛かる月明りと懐中電灯の明かり……」

雷「どうかしたの?」

響「ホラーにはうってつけだよね」

暁「や、やめなさいよ!」

電「こういう場面でそういうのは大体何かのフラグなのです」ズズ

雷「? 電、何か引きずった?」

電「そもそも電は何も持っていないのです」

暁「ちょ、ちょっとやめてよ」

雷「でも聞こえたのよ」

響「ほら暁、そこの角を曲がればトイレに……」

「……」

響「……」

暁「響? どうしたの……ひっ」

雷「二人とも何を固まって……」

電「……」

「……」ブゥン

ガンッ

暁「ひいいいいいいい!!? なななななな」

雷「なにあれなにあれ!? な、鉈!? ていうか誰!?」

響「逃げるよ!」ダッ

暁「お、おいていかないで!」

「……」

電「……あの、もしかして」

~~~~~~~~

暁「はあっ……はあっ……」

雷「な、なんなのあれ?」

響「……」

暁「も、もうやだぁ、部屋に戻るぅ」

雷「し、しっかりして暁!」

響「……」

暁「うぅ……ぐしゅっ……」

雷「な、泣かないで? それと、響は何を考えてるの?」

響「いや、さっきの……」

「……」ズズッ

暁「」

雷「ま、前から!? どど、どうしよ!」

響「……司令官、だよね?」

雷「……え?」

「……ふむ」

提督「電は騙されなかったが、響を一瞬でも勘違いさせたことについては自信を持っていいな」

雷「あ、頭の取ったら、司令官が? そ、そういうことだったの」

響「さすがに驚いたよ」

電「電もなのです」

提督「ところで、暁は大丈夫なのか?」

雷「あ……」

電「いろいろな意味で、大丈夫じゃないみたいなのです」

―執務室―

提督「頭の部分とか会心の出来だと思ったが、誰も反応してくれなかった……」

提督「そもそも追っかけられた第六……いや、正確には暁にはさすがに申し訳なく思っているが」

下2

提督「真面目に仕事をするからなにかご褒美プリーズ」

霞「どうして当たり前のことに褒美なんているのかしら」

提督「やる気を出すためさ」

霞「……」

提督「そんな呆れた顔をするな。ほら、いつもこんな感じだろ?」

霞「それを問題だと思わないの……」

提督「まあまあ、それで、何かないか?」

霞「すぐに言われて思いつくわけないじゃない。でも、そうね……溜まっている仕事を今日中に終わらせたら何かしてあげるわ」

提督「言ったな! 約束だぞ!」

霞(机の上に山積みになっているのがもう一つあるって知ったらどうするのかしらね)

~~~~~~~~

提督「終わったぞ」

霞「……は?」

提督「書類、指示、任務、全部だ」

霞「……なんとなくそんな気はしていたけど」

提督「すごさに呆れてものが言えないか?」

霞「バカバカしさに頭が痛くなっているだけよ」

提督「そうか? どれ」ナデ

霞「――っ!」

提督「うーん、そういえば秘書官の頭を撫でたのって……あれ、初めてか?」

霞「は、離しなさい!」

提督「いや、もうちょっと」

霞「もうちょっとじゃなくて……じゃ、じゃあ、これがご褒美にするわよ」

提督「いいぞ」

霞「あ、あんたねぇ」

提督「俺は珍しいものには余念がないんだ」

霞「人を珍しいもの扱いするのはやめなさい!」

提督「どうした? 余裕がないぞ?」

霞「っ! も、もう好きにしなさい!」

提督「じゃあ好きにさせてもらおう」ナデナデ

霞「……もう」

~~~~~~~~

提督「いやぁ、大人しい秘書官はなかなか見れないぞ」

提督「あれはあれでかわいいな。うん。普段は怖いけど」

下2

提督「初春、ちょっとこっちに来てくれないか」

初春「なんじゃ、突然呼んだかと思えば」

提督「まあちょっとな」

初春「仕方がないのう」テクテク

提督「よいしょ」グイッ

初春「!?」

提督「いやー、これを待っていたんだ」

初春「い、いきなり何事じゃ!」

提督「何って、膝の上に乗せただけだけど」

初春「そういうことを聞いておるのではない!」

提督「しかし、初春が何を言おうと離すことはないぞ?」

初春「なんじゃと。う……くっ……ほ、本当に離れないではないか!」

提督「腕相撲で天龍に勝てる力を舐めるなよ」

初春「比べ方がよくわからないのじゃが!」

提督「とにかく、無駄な努力ってことだな。ははは、まああきらめろ」

初春「い、いつまでこのままじゃ」

提督「うーん、今日一日かな」

初春「ふん、好きにするのじゃ!」

提督「好きにさせてもらおう」

~~~~~~~~

提督「よーし、書類仕事は終わりっと。やっぱ、ちょうどいいぬくもりがあると違うよなぁ」

初春「……」

提督「初春、もういいぞ」

初春「……」

提督「初春?」

初春「……zzz」

提督「って、寝てるのか。人の膝の上でリラックスしちゃってまあ」

初春「うーむ……むにゃむにゃ」

提督「起こすのも悪いし、そっと部屋に運んでおいてあげるか」

初春「……」ギュッ

提督「……はは、初春は甘えん坊だな。なら、しばらくこのままでいるとするか」

~~~~~~~~

提督「起きた初春は逃げるように去っていった。恥ずかしかったんだろうな」

提督「なんやかんや寝ていたところを見ると、そこまで嫌がってなかったのだろうか」

下2

― 一航戦の部屋 ―

提督「赤城、紙相撲しようぜ」

赤城「あら、いいですね。もちろん、手作りですよね?」

提督「当たり前だろ。厚紙はすでに用意してある。これでつくるぞ」

赤城「うふふ、こういうのを作るなんていつぶりでしょう。ちょっとワクワクします」

提督「おいおい、ちゃんと勝利に向けてキャラを作れよ」

赤城「当たり前です。どんな横綱を作りましょう」

提督「幕下がせいぜいだろ」

赤城「自己紹介ですか?」

提督「ふっ、ははは」

赤城「うふふ」

提督「とりあえず作るか」

赤城「そうですね」

~~~~~~~~

提督「じゃん、ゴジラ型大関。その力はまさに十万トン。横綱となるための決戦に一か月前から準備をしてきた」

赤城「こちらはキングコング型大関。どっしりとしたその体型は多くの者を叩きつぶしてきた証拠です」

提督「何その設定」

赤城「提督だって同じじゃないですか」

提督「……まあいいか。さあて、勝負をするぞ! 土俵はこれだやはり」

赤城「やはり準備がいいですね。では始めましょう」

提督「じゃあ行くぞ。はっけよーい、のこった!」

赤城「……」トントントン

提督「……」トントントン

赤城「そこです、キングコング! その身に余る力を見せてあげなさい!」トントントン

提督「ゴジラ! そこでビームだ! ふっとばせ!」トントントン

加賀「……何をしているの?」

赤城「あ、お帰りなさい加賀さん」

提督「見ての通り紙相撲だ」

加賀「それは見てわかるのですが……」

赤城「提督のゴジラはもう土俵ギリギリですよ」

提督「ここで回すことで一気に追い詰める作戦なんだよ」

赤城「本当に回り込んできましたね……では、こちらは横から押し出しましょう」

提督「お、なかなかやるな……しかし、そっちのキングコングはちょっと体制が崩れてきているみたいだが」

赤城「その前に押し出してあげます」

加賀(何にも言えないわ)

―執務室―

提督「十戦四勝四敗二分け。最後に焦りすぎて自分のを倒さなければ勝ち越していたんだが……」

提督「少し悔しいがまあいい。次の時に再戦だ」

下2

―演習場―

提督「来たか、大和に長門」

大和「果たし状……とはなんでしょうか」

長門「まさか直接戦うなどとは言わないよな」

提督「まさか。今回は狙撃対決だ」

大和「狙撃……? すみません、私はあんまり銃に自信はないのですが」

提督「何を言っている。そっちに合わせるに決まっているだろう」

大和「?」

長門「もしや、提督の隣にあるその単装砲は……」

提督「ご名答。俺用に作られた夕張と明石の共同開発作品、46cm単装砲だ!」

大和「た、戦うなんて言いませんよね?」

提督「ゴム弾しか出ないらしいし、無理だろ」

大和「ほっ……」

長門「まあ、狙撃勝負というのもたまにはいいだろう。大和はどうだ?」

大和「私もかまいませんよ」

提督「よし、ならば的はあそこに見えるやつだ。交互に撃って、当てれるかが勝負だ」

長門「思ったより距離があるな……」

大和「的も大きくないですし、意外と難しそうですね」

提督「では、まず俺からいくぞ」

長門「お手並み拝見だな」

提督「……」ドンッ

大和「あ、ああー、惜しいですね」

長門「しかし予想以上だ。練習したのか?」

提督「試し打ちくらいはな。しかし、少し距離感に問題があったな。次はあてる」

大和「これは油断できませんね。では……」ドンッ

長門「命中か。さすがは大和」

大和「そんな、たまたまですよ」

提督「クリーンヒットをさせてよく言う。じゃあ、次は長門だ」

長門「大和が成功したんだ。ビッグセブンとして、負けていられない……な!」ドンッ

大和「長門さんもお上手です」

長門「いや、狙いより少しずれている。こちらも計算不足だったようだ」

提督「ふむ、思ったより二人ともやるな。ならば、出し惜しみは無しにしよう」

長門「出し惜しみだと?」

提督「ぽちっとな」

ウィーン

大和「的がいくつも出て動き出しました……」

長門「なるほど。これならやりがいがあるな」

提督「ふっ、ここからが本当の勝負だ」

―執務室―

提督「さすがに二人には勝てないかー。使い慣れている装備だし、当然か」

提督「せめてもうちょっと命中率を上げないと、効果のある装備を作ってもらっても戦闘には出られんな。うむ」

下2

提督「商品レビューを頼まれたから、手伝ってほしい」

吹雪「商品レビュー? 明石さんのですか」

神風「いろいろ作っているらしいわね。どんなものかはあまり見たことないけれど」

提督「そんなところだ。仕入れたものがあんまり売れないから、売れそうなキャッチコピーがほしいらしい」

吹雪「そうですか。その仕入れたものとは?」

提督「デスソース」

吹雪「売れませんよ!」

神風「デスソースが売れそうなキャッチコピーってなに……」

提督「俺もさすがにデスソースが売れそうとは思わなくてなぁ。それで、何かないかなと」

吹雪「なんでそんなものを仕入れたのかって感じです」

提督「そこをなんとか」

吹雪「そうですね……ならば、誰かを狙い撃ちにした感じのキャッチコピーはどうですか?」

神風「だれかって、うちにデスソースを買いそうな人っていたかしら……」

提督「これを食べれば戦艦になれます! 辛さ三千倍のその痛みは夢の後追いとなりました! とか?」

吹雪「それはかわいそうなのでやめてください」

神風「本気にしたら大変なことになるわよ」

提督「冷静に考えたらそうだな。天龍辺りも引っかかりそうだが……」

吹雪「その前に引っかかる人を考えてください」

神風「そうそう……え、天龍さんが引っかかるのはいいの?」

提督「なら本当に戦艦を狙うか。これを食べれば筋力アップ、とか」

吹雪「真っ赤なウソじゃないですか」

提督「デスソースだけに赤いってか」

神風「さむっ」

吹雪「うーん、さっきの司令官の言葉を借りて、戦艦としての度胸試し! 提督自身ですら火を噴き悶絶をした凶悪作品! みたいな感じがいいんじゃないですか」

提督「俺を引き合いに出しても売れないんじゃないか?」

吹雪「いろいろ狙った結果ですから」

神風「いろいろ……なるほど。すごく考えられているわ」

提督「えぇ? まあ、神風も同感ならそれでいいが」

吹雪「間違いなく売れますよ!」

神風(多分被害にあうのは買った人だけじゃないけど……)

~~~~~~~~

提督「うん、相談してよかった。面白そうな意見を聞けた」

提督「しかし、大体俺を引き合いに出していたのはどういうことなのだろうか」

下2

―トレーニング場―

提督「傘が予想以上に余ったらしいのでチャンバラをする」

霞「ふーん」

提督「……止めないのか?」

霞「最近は比較的真面目にしてるし、これくらいじゃ怒らないわよ」

提督「珍し……」

霞「怒られたいの?」

提督「めっそうもない。えっと、まず適当に組んだトーナメント表では……俺と武蔵……」

武蔵「まさかこんなところで直接対決をすることになるとはな」

提督「誰だこんなトーナメント表を作ったのは!」

明石「くじ引きで作りました」

提督「明石ぃ!」

武蔵「さあ、試合を始めるぞ」

提督「る、ルールはわかっているよな?」

武蔵「無論だ。相手に一撃を加えるか、獲物を折った方が勝ちだ」

提督「一撃だぞ! わかってるな!」

武蔵「何を心配している?」

提督「絶対武蔵は興が乗ったら一発じゃ済まなくなるからな」

武蔵「そんなことはない。なぜなら、一撃で沈めるからだ!」ビュッ

提督「あぶなっ!」サッ

バキッ

武蔵「……やはり、傘では脆いな」

提督「完全に殺す気の振りだっただろ!」

~~~~~~~~

提督「ふっ、お前が最後まで残ったか」

天龍「武器が変わったくらいで力は見誤らないぜ」

提督「戦艦組は力の入れすぎでバッキバキに壊すからな……」

天龍「全員参加しているわけじゃないから、鎮守府全員だったらわからないけどな」

提督「わざわざこんなのに参加している時点でお察しだ」

天龍「へっ、かもな。……ん? その言い方だと……」

提督「じゃあ、そろそろ始めようか」

天龍「ああ」

提督「五十鈴対天龍、始め!」

五十鈴(どうして自分がやるかのように振る舞っていたのかしら……)

―執務室―

提督「安物の傘だし、全力で振り続けてたらそりゃ折れる」

提督「つまり、大体不燃焼で終わっていた。まあ傘自体は消化できたが」

下2

―公園―

提督「なんだかんだ公園が一番手軽にピクニックができて好きなんだが、春雨はどうだ?」

春雨「私も好きですよ。ここの公園は静かで、ゆっくりできますから」

提督「うんうん。俺も同感だ」

春雨「それより、二人きりというのが……」

提督「二人でピクニックって初めてか」

春雨「は、はい、そうですね」

提督「昼にするには早いな……春雨、何かしたいことがあるか?」

春雨「したいこと、と言われましても……」

提督「いきなり言われても思いつかないか。なら、キャッチボールでもどうだ」

春雨「はい、いいと思います」

提督「よーし、じゃあ行くぞ」

春雨「どうぞ!」

提督「ほれっ」

春雨「わっ……と。次は私ですね」

提督「思いっきり投げてもいいぞ」

春雨「そんなことしませんよ。はいっ」

提督「よっと。なかなかコントロールもいいじゃないか」

春雨「そうですか? えへへ……」

提督「春雨と二人で外でこうするのも、今までなかったな」

春雨「そうですね。でも、料理を教えてくれたりしましたから」

提督「なら、その上げた料理で舌鼓をうたせてくれよ? 期待しているから」

春雨「じ、自信はないですけど……頑張ります!」

~~~~~~~~

提督「ほうほう。てっきり春雨が入っているのかと思ったが」

春雨「さすがにお弁当に春雨は入れませんよ!」

提督「そうか? 麻婆ではないだけで入っていることもあるけど」

春雨「その、春雨を食べてもらうのなら、もっとしっかりと味わってほしいですから……」

提督「なるほど。余計なことを言って悪かったな」

春雨「い、いえ!」

提督「それなら春雨はまた今度にして……まずはこのお弁当をいただくか」

春雨「はい。春雨のお弁当、食べてください!」

提督「お……うん。おいしい。しかも俺の好物ばかり」

春雨(鳳翔さんから教えてもらいましたから)

提督「食が進む進む。うま、うま」

―執務室―

提督「いただくだけってのはちょっとあれだな……」

提督「今度こっちからも何か御馳走するか。うん、そうしよう」

下2

―上空―

飛龍「おー、結構高いところまで来たね」

提督「初心者ならこのくらいだな」

蒼龍「いえいえ! どうしてこんなことになっているんですか!?」

飛龍「スカイダイビングじゃないの?」

蒼龍「理由!」

提督「理由って言ったって、最近調子が出ないから艦載機に乗る妖精さんの気持ちになってみようって話になって」

飛龍「それでスカイダイビングだっけ」

蒼龍「おかしいですよね!」

提督「と言われても、今更なぁ」

飛龍「だね」

蒼龍「今なら引き返せますよ!」

提督「いや、もうお金も払ってるし、もったいないだろ」

蒼龍「も、もったいないって……」

飛龍「で、そろそろ行ってもいい?」

提督「ああ。まずは俺から飛ぶよ。とうっ」バッ

蒼龍「本当に行った……」

飛龍「ま、蒼龍は蒼龍の判断に任せるから。じゃあね!」バッ

蒼龍「あ、ああぁ……もう知らないから!」バッ

~~~~~~~~

提督「いやぁ、無事にパラシュートも開けたしよかったな」

飛龍「大体こういう展開だと開かないって感じだと思ったよ」

提督「はは、ありそう」

蒼龍「……」

飛龍「蒼龍? なんだかげっそりしてるけど」

蒼龍「むしろこっちからすると、なんで笑っていられるのか不思議なんだけど……」

提督「だって楽しいだろ?」

飛龍「しかもわくわくしたでしょ?」

蒼龍「うぅ、本当になんでこの二人に付き合ったんだろ……」

提督「じゃあ、蒼龍は楽しくなかったか?」

蒼龍「……実は、ちょっとだけ」

飛龍「あはは、蒼龍も同じだって!」

―執務室―

提督「ああいうのもたまにはいいな!」

提督「蒼龍みたいな初心者が一人で飛ぶことはありえないが……今回は特例だな!」

下2

―鳳翔の店―

妙高「では、乾杯しましょうか」

飛鷹「ええ、そうね」

千代田「千代田としては千歳お姉もいてほしかったんだけど……」

ザラ「今回はしょうがないですよ」

提督「……なーんか異様だと思ったら、いつものメンバーじゃないのか」

妙高「提督、こんばんは」

提督「ああ。相席させてもらうな」

千代田「あ、ちょっとこっちに寄らないでよ」

ザラ「こちらが空いてますよ」

提督「よいしょ。んで、この集まりは?」

飛鷹「ほら、私たちの姉妹ってあれじゃない。お酒が大好きというか、飲兵衛というか」

妙高「だからといいますか、それをネタに私たちも飲んでみませんかってことになったんです」

提督「なるほど。確かにすっごい飲むからな、お前らの姉妹は」

千代田「千歳お姉も、そこだけは弱点なのよね」

妙高「私のほうも悪酔いさえしなければいいんですけどね」

飛鷹「それなら全然いいんだけど、隼鷹はねぇ……」

ザラ「それをいうならポーラのほうが……」

飛鷹「そっちは隠そうとするだけまだましじゃない。私のほうは大っぴらに飲むのよ」

ザラ「隠しきれないほど飲む方が駄目だと思いますけど」

提督「どんな張り合いの仕方だ」

妙高「とりあえず、節度を持って飲めばこちらも何も言いませんからね」

飛鷹「結局のところ、それに尽きるのよね」

提督「ふうん。大変なんだな」

ザラ「提督もご迷惑をかけられたこともありますよね?}

提督「あー、確かに被ってはいるが、潰れるまで飲むからあん分くらい覚えていないことも多いしなー」

妙高「それはよくないですよ。提督も節度を保ってください」

提督「わかってるよ。だから、今回は大丈夫だな」

千代田「千歳お姉は無理にお酒を勧めないし、今回も危ないんじゃないの?」

提督「えぇ、あれで千歳も押しが強いんだぞ」

千代田「なら、今日見定めるんだから」

提督「おう、いくらでも見てこい」

飛鷹「さりげなく入ってくるのがうまいわね」

妙高「ふふ、いいじゃないですか」

―執務室―

提督「……本当に節度を保ったままだった。なんというか、姉妹でああも飲み方に違いが出るもんだな」

提督「というか、姉妹で飲むことないんじゃないだろうか。ペース違いすぎるだろ」

下2

提督「さあ、雨乞いをするぞ!」

五月雨「え、ど、どうしてですか?」

提督「梅雨だからな!」

五月雨(予想外の答えです……)

提督「最近雨が降らないだろ。ここはひとつ季節を感じたいと思って」

五月雨「そういうことですか……でも、雨乞いって何をするんですか?」

提督「え? 五月雨って名前くらいだから何か知ってるんじゃないのか」

五月雨「知らないですよ!」

提督「えー」

五月雨「提督のほうが知っていそうじゃないですか?」

提督「といっても、テルテル坊主を逆に吊るくらいしか知らないしなぁ」

五月雨「テルテル坊主……」

提督「……なんだ、作ってみたいのか」

五月雨「え、その……はい!」

提督「いや、それでいいのならそれをやってみよう。五月雨がするとご利益がありそうだし」

五月雨「ご利益なんてないですから!」

提督「作ってみればわかるだろう。ほら、ティッシュと輪ゴムだ」

五月雨「こんなにたくさん……あれ、もしかして最初からそのつもりでした?」

提督「案としてはあったからな!」

~~~~~~~~

五月雨「できました!」

提督「ほう、どれどれ……頭にティッシュを詰めていないからスカスカだぞ」

五月雨「あっ!」

提督「相変わらずドジだなぁ。でもこれでもいいから吊っておこう」

五月雨「い、いいんですか?」

提督「ほら、なんか悲しそうな表情から雨が降り注ぎそうだろ?」

五月雨「え、と……褒めてないですよね!」

提督「ははは、その通りだ。さあ、次も頼むぞ」

五月雨「うぅ、ちょっとしたうっかりでしたのに……」

提督(それをドジというのではないだろうか)

~~~~~~~~

ザーザー

提督「……まさか本当に大雨が降るとは」

提督「これだけ雨が降っている以上はみんなお休みだな。よし、俺も休める!」

下2

―龍鳳の部屋―

提督「タルパって知ってるか?」

龍鳳「いえ、初めて聞きますけど……」

提督「人工未知霊体のことで、まあ霊体を生み出す秘術ってところか」

龍鳳「れ、霊体ですか。なんだか恐ろしそうですね」

提督「そんなに恐ろしいものじゃないと思うぞ。つまるところ、イマジナリーフレンドみたいなものだ」

龍鳳「そういわれると、恐ろしくはないですけど……作れるんですか?」

提督「わからん。だからこそ、作ってみようかと思ってな」

龍鳳「危険はないんですよね?」

提督「危険な要素あるか? まあ危なそうならそこでやめればいいだろう」

龍鳳「……わかりました。やってみましょう」

提督「よし来た!」

龍鳳「作り方はどうですか?」

提督「うーん、理想とする人物像を思い描くらしいぞ。細部まで丁寧に」

龍鳳「理想とする人物像……」

提督「人格も作り、動かす。慣れて来たら会話をしていく」

龍鳳「……」

提督「それをこなしていくと徐々に自分から乖離した存在になっていくとかなんとか」

龍鳳「……」

提督「うーむ、まず理想とする人物像が思い浮かばんな」

龍鳳「……」

提督「龍鳳?」

龍鳳「……はっ、え、な、なんですか?」

提督「いや、ぼーっとしていたみたいだけど。もしかして、もう成功したのか」

龍鳳「い、いえ、そういうわけではないのですが」

提督「うーむ……やっぱ難しいよな。まず理想っていうのがなかなか思い浮かばん」

龍鳳「そ、そうです、か?」

提督「うん? つまり龍鳳はもう理想とする人物像を思い描けれたのか」

龍鳳「あの、その、間違ってはないんですが……えっと」

提督「? ……あ、もしかして現実にいる人が理想像になったのか」

龍鳳「え!? そそ、それは……!」

提督「おすすめはしないらしいぞ。現実にいる人と影響する可能性があるらしいからな」

龍鳳「う……」

提督「つまり俺たちにはタルパは必要ないってことだな。鳳翔はある意味で最高の理想像だしな」

龍鳳「はい……鳳翔さん?」

提督「龍鳳の理想像だろ?」

龍鳳「え……は、はい! そうなんです!」

提督「?」

龍鳳(思い浮かんだのが提督だったなんて、言えません……!)

―執務室―

提督「タルパなぁ。結構難しいらしいし、そう気軽にできそうなものじゃないよなぁ」

提督「ま、必要ないって結論が出たし、いいか」

下2

霞「入るわよ」ガチャ

提督「! ど、どうした? きちんとやることはやっているぞ」

霞「監視に来たわけじゃないわよ。あんたが来いって書置きをしたんじゃない」

提督「え? あ、そうだったか。うーむ、ちょっと早いな……」

霞「ちょっと早い?」

提督「こっちはできているから渡すべきか……しかしなぁ……」

霞「……」

提督「そんな怪訝そうな顔をするな。ほら、こんな俺を支えてくれて、それでいてこっちとしてはお世話になりっぱなしだろ。今日はその感謝をしようと思ってたんだ」

霞「よくわからないんだけど、それだけなら戻るわよ」

提督「ああ、いや、やっぱり待て。これだけでも渡しておくか」ゴソゴソ

霞「早くしてよね。こっちも忙しいんだから」

提督「そんな忙しい秘書官に……」
明石「お届けに参りましたー!」

提督「……遅いぞ」

明石「あれ、少し遅れちゃいました? すみませーん」

提督「すみませーんってお前な……」

明石「まあまあ、こっちだってお眼鏡にあうものをきちんと見つけてきましたから。はい、確かに渡しましたよ」

提督「……よし、確認した。ありがとな」

明石「いえいえ。今後ともご贔屓に」

霞「……よくわからないんだけど、とりあえずご贔屓にって明石は工作艦じゃなかった?」

提督「最近売店のおばちゃんと化してるよな。触れてやるな」

霞「ええ……で、要件は。さっきの会話が何か関係しているみたいだけど」

提督「あーうむ。今までも何度かやったと思うが、後に残るものとして感謝の気持ちを授けようと思ってな」

霞「感謝? そういうのはあんたがちゃんとすれば……え」

提督「自作霞ちゃん人形だ! デフォルメも可愛らしく作った自信作だ!」

霞「……はぁぁ~」

提督「おおう、めっちゃ深いため息」

霞「そりゃ溜息もつくわよ。こんなことに時間を使って……」

提督「む、お気に召さなかった様子か。ならばこっちはどうだ。特別に明石に仕入れてもらった宝石店のお墨付きのガーネットのペンダント!」

霞「しかも無駄遣いして……」

提督「えぇ!? そんなに気に入らなかったか?」

霞「……一応もらっておいてあげるわよ。ま、上官としてもっと精進しなさいな」

バタン

霞「……」


青葉(執務室から出てきた霞さんが顔を真っ赤にして口元を抑えて震えていらっしゃる!? これはとんでもない事件の香りがしますね……!)

―執務室―

提督「うーむ、気に入らなかったのかなぁ。でも素直に受け取るってことは嫌がられたわけではないだろうけど」

提督「秘書官は気難しいなぁ……」

下2

村雨「提督、山風とお話したことある?」

提督「何を突然。俺はお前たちの上官だぞ。会話位…………あれ、俺ってもしかしてちゃんと会話したことない?」

村雨「駄目よ~、あの子、そういうの気にするんだから」

提督「いやしかし、今の今まで向こうからのアプローチもなかったんだし、実はそこまで気にしてないのでは」

村雨「女心をわかっていないわねー」

提督「む、そういわれては黙っておれんな。よし、俺が機微に敏いということを見せてやろう!」ダッ

時雨「……何か目的があるのかな」

村雨「ふふ、ちょっとした姉心よ」

時雨「そっか」

―白露型の部屋―

提督「山風ーーー!!」

山風「!?」ビクッ

提督「今まで放っておいてごめんなぁあああああ!!」ガバッ

山風「な、なに……っ?」

提督「いやぁ、こうして話すことってほとんどなかっただろ。だから今までの分も思いっきり可愛がってやろうと思って」

山風「そういうの、いいから……」

提督「くっ、やはり触れ合わないまま時が経ってしまったせいで心が離れてしまっていたか……!」

山風「そういうことじゃ……ないんだけど……」

提督「だが心配するな。この大海原のような広い心をもって、お前の荒波を受け止めてやろう!」

山風(今日の暴走は、一段と酷くない……?)

提督「さあ、まずはこの飴ちゃんをあげよう」

山風「いきなり子ども扱い……?」

提督「そんなつもりはない。ただ、飴を食べると心が落ち着くという」

山風「嘘でしょ……」

提督「うむ、今考えた」

山風「……」

提督「しかし、お前を可愛がるのは嘘ではない! さあ、一緒に映画を見ようではないか」

山風「映画って何……?」

提督「アンパ○マン」

山風「絶対子ども扱いしてる……!」

提督「ははは、大人が見ても意外と感動する話だってあるんだぞ。そういきりたつな」ナデナデ

山風「むうぅ……」


村雨「ほら、楽しそうでしょ?」

時雨「楽しそうといえば、楽しそうなのかな」

―執務室―

提督「山風は意外としっかり付き合ってくれるような。態度は素っ気ないように見えるけど」

提督「きっと素直でいい子なのだろう」

下2

―深夜・廊下―

吹雪「うん、ここも大丈夫」

叢雲「これで半分回ったわね。歩いてみれば、ここの鎮守府も広いものね」

五月雨「身近にあるものは意外と気づかないっていうからね」

漣「例えばご主人様への恋心とか?」

叢雲「そんなものないわよ!」

五月雨「身近にあるものほど……」

叢雲「五月雨!」

電「……」

吹雪「……? どうかしたの?」

電「なんだか、音が聞こえてきませんか?」

吹雪「音?」

五月雨「そういえば、さっきから何かを引きずる音が……」

漣「くらーいところで何かを引きずる……いやー、ホラーのにおいがしますな」

叢雲「ホラーってなによ。どうせどこかの夜戦バカが戻ってきたとかそういうところでしょ」

吹雪「言い方としてはあれだけど……でも、そうかもしれないね」

五月雨「聞こえてきたのはそこの角からだよね? すみませーん」

「……」ズズ

『!!??』

吹雪「なななななにあれ!?」

漣「あ、あれは……!」

叢雲「また変なのが……早くいくわよ!」

電「……あっ」コケッ

吹雪「電ちゃんがこけた!」

漣「ここでこけるのは違う子じゃないと!」

五月雨「私のことじゃないよね?」

「……」ヒョイッ
電「……」

漣「うーむ、いかに△様とはいえ、小さな女の子を担ぐこの絵面はまずいですな」

叢雲「なに冷静に見てるのよ!」

吹雪「ど、どうしよう……」

叢雲「とにかく緊急警報よ! すぐに連絡を……って、無線が届いていない!?」

漣「くぅー、夢にまで見たシチュエーション! ここから逃げる漣たちを追いかけて、その切れ味のいい鉈でバッサバッサと……!」

五月雨「あわわ、ど、どうしよ……」

吹雪「……」


「(なあ電、あいつら逃げないんだけど)」

電「(そりゃそうなのです)」


吹雪「……! あ、もしかして司令官ですね!」


「(しかもバレたぞ)」

電「(むしろ吹雪ちゃんが一番遅いのです)」

「(……え? もしかして最初からバレてた?)」

電「(初期艦組を舐めすぎなのです)」

―執務室―

提督「叢雲は秘書官に連絡をしようとしていたらしい。ジャミングを張っておいてよかった……」

提督「たぶん明日にでも噂になって怒られるんだろうけど。ははは」

下2

提督「俺と、夜景の見える綺麗なレストランでディナーをとらないか?」

霞「……って言って、断られたのね」

提督「くうぅ、俺の何が悪かったんだ!」

霞「選んだ相手じゃないかしら。山城さんは傍目から見てて無理だとは思うわよ」

提督「だよな! 一人目に断られた後だから、そこまで深く考えてなかったよ!」

霞「で、ほかに誘ったのは」

提督「鳳翔、それと一緒にいた龍鳳」

霞「ほ……っ、まさか、二人にに断られるなんて、本当に何かやったんじゃないの?」

提督「いや、飲兵衛どもが店を使うからって」

霞「仕事優先ってわけね。爪の垢を煎じて飲ませたいわ」

提督「誰にだ?」

霞「あんたによ」

提督「それでしょうがなく次に暁を誘ったら」

霞「誘ったら?」

提督「予約を取っているレストランが年齢制限あったから無理だった」

霞「そこからなのね……って、一応私たちは年齢的には大丈夫だと思うんだけど」

提督「暁は無理だろ」

霞「そうね」

提督「だから次に響を誘ったんだけど、一人で誘われることに抵抗があったらしく断られた」

霞「あんた本当に人望ないわね」

提督「でだ、駆逐艦組はそんなこんなで無理だと思ったから赤城を誘ったんだが」

霞「断られたのね」

提督「そうだよ! 加賀と外食だってさ!」

霞「そこまで断られるなんて、もはや才能ね」

提督「嫌な才能だな!」

霞「そしてついさっき大和さんにも断られたと」

提督「すれ違いでお前が入ってきたからな……あ、そうだ」

霞「嫌よ」

提督「何も言ってないけど!?」

霞「生憎まだ仕事があるの。なくても行こうとは思わないけど」

提督「余計な一言! せっかく予約取ったのにどうするんだよ」

霞「知らないわよ。もう妖精さんでも連れて行ったら?」

提督「……それだ! じゃあ、早速誘ってくる!」ダッ

霞「……結局一人目って誰だったのかしら」

―執務室―

提督「妖精さんと行くディナーは楽しかったなぁ!」

提督「……いや、ちょっと自棄になりすぎた。ちょっと反省している」

下2

提督「そういえば改二祝いに何もしてなかったな」

由良「え? ……気にしてないのかと思ってました」

提督「そんなわけないだろ。何かほしいものあるか?」

由良「何かほしいもの……突然言われても、ちょっと困ります、ね……」

提督「それなら出かけるか。デパートに行けば何かあるだろう」

由良「……て、提督さんと?」

提督「そりゃ、俺がいないと意味ないだろう。じゃあ……そうだな、昼食べたら行こうか」

由良「う、うん」

―デパート―

鬼怒「大きい! パない!」

阿武隈「前に来たことあるでしょ」

提督「あれが言いたかっただけじゃないか」

由良「……」

提督「どうした由良。なんだか死んだ魚のような眼をしているが」

由良「いえ、なんでもないです……」

阿武隈「……あの」
鬼怒「ゲーセン行こうゲーセン!」

提督「プレゼントの見繕いだといっただろうが! ほら、アクセサリーショップ行くぞ!」

鬼怒「えー」

由良「……ま、提督さんらしい、かな」

~~~~~~~~

鬼怒「これ光るんだって!」

提督「だからどうしたよ」

鬼怒「え? 光るんだけど」

提督「……鬼怒ってこんなバカだったか?」

阿武隈「テンション上がっているだけだと思う……」

提督「そっか。で、由良は何か見つけたか?」

由良「いえ、特別これといったものは……」

提督「じゃあ服とかでもいいぞ。小物とか」

由良「……ううん。今回はこうしてみるだけ。何かをねだるのはまた今度、ね?」

提督「そうか? それでいいならいいが」

鬼怒「ねえねえ阿武隈、これとかよさそうじゃない?」

阿武隈(選ぶの手伝ってほしいといわれてついてきたけど、これ絶対邪魔になってるぅ……)

―執務室―

提督「なーんか全体的に盛り上がりに欠けたような……」

提督「やっぱり姉妹全員誘うべきだったな!」

下2

電「これで全部なのです」

提督「うむ。電の報告はわかりやすいな」

電「電はまだまだなのです」

提督「そうか? でも昔よりは全然わかりやすいぞ」

電「電だって成長しているのです」

提督「そうみたいだな。……昔はもっとかわいかったのになぁ」

電「含みのある言い方ですね……」

提督「そう聞こえるか? ははは」

電「むぅ……」

提督「あの頃は大変だったな……」

電「……そうですね。司令官さんもあのころはよく今とは違った無茶をしていたのです」

提督「無茶って言っても、あの頃は必死だったからな。電たちにはだいぶん迷惑をかけた」

電「そのせいで今のようになったのだとしたら、電も今の子たちには謝らないといけないのです」

提督「え? なんでだ?」

電「司令官さんに嫌味は効かないのです」

提督「むしろ電が言うとはって感じだが」

電「こういう風にしたのは司令官さんなのです」

提督「つまり俺色に染められたのか」

電「嫌な言い方なのです!」

提督「まあみんな変わっていくもんだ。吹雪だって昔は五月雨並みにドジも多かっただろ」

電「ドジというより、空回りが多かった気がするのです」

提督「吹雪は昔から一生懸命だったからなぁ」

電「それなら五月雨ちゃんもそうなのです」

提督「五月雨は愛嬌が増したよな。肝心なところでのドジはなくなったけど、細かいところのドジが増えたという」

電「その言い方はちょっと可愛そうなのですよ」

提督「否定はしないんだな。そういえば漣……あいつなんか変わったか?」

電「……叢雲ちゃんは丸くなりましたね!」

提督「叢雲は……確かに昔を考えたらすっごい態度が軟化したな。罵倒まではないにせよ、厳しいことを言われた気がする」

電「こうして考えてみると、みんな昔と全然違うのですね」

提督「漣は?」

電「司令官さん、漣はみんなと約束があるので失礼するのです」

提督「漣は?」

バタン

提督「完全スルーか……いや、確かに漣は昔からあんな感じだったけども」

提督「うーん、昔からいる奴はそう考えると全体的に余裕が出てるって感じか。まさに俺のおかげだな!」

下2

―食堂―

提督「七夕だけに第七戦隊と第七駆逐艦に手伝ってもらうぞ」

漣「その隠すことなくアホな理由を堂々と言うご主人様! そこにしびれるあこがれるぅ!」

曙「痺れもしないし憧れもしないわよ」

鈴谷「その代わりに先に短冊を飾れるのと、そうめんの試食だっけ。ならいいじゃん」

三隈「普通のそうめんじゃないんですよね?」

提督「その通りだ。まあそろそろ茹で上がるから少し待つんだな」

最上「笹は本当にここで飾ってもいいの?」

提督「クリスマスツリーみたいなもんだし大丈夫。許可も取ってるしな」

三隈「みんな短冊を飾るなら、こういうところのほうがいいですわ」

最上「そういわれてみればそうだね」

鈴谷「短冊を考えながらそうめんをすする。うん、いいんじゃない」

提督「よくわかっているじゃないか」

潮「でも、何を書こうか悩んじゃいます……」

提督「好きなものでいいんだぞ。ほら、世界が平和になりますようにとか」

漣「ご主人様は夢想家ですなぁ」

提督「例えだぞ、例え」

潮「でも……うん、悪くないかも」

曙「こういう時位自分の願い事を書いたらいいじゃない」

潮「え、でも……」

朧「潮はいつもわがままを言わないから。七夕くらいはね?」

潮「……うん」

提督「さて、綺麗にまとまったところでそうめんを持ってきたぞ」

熊野「なんですの、この……着色料多そうな色合いは」

提督「おいおい、そんなものが売られるわけがないだろう。さあ、食べてみろ」

熊野「そういわれますと……」

鈴谷「じゃあ鈴谷が先ね。ちゅるっ……あ、梅の味?」

曙「本当、こっちはかぼちゃね」

提督「そう、これは実際のパウダーを混ぜ合わせた着色料なしの天然素材なんだ!」

熊野「パウダーは天然ではないと思いますの」

提督「そういうつっこみはいいんだよ」

朧「これはほかのみんなにも出すの?」

提督「うむ。全員分あるから、お前たちは先行体験ってやつだな」

三隈「特別感ありますわ!」

最上「うん。じゃあ、いただこうか」

―執務室―

提督「七月に入ったっていうのに天気悪いところも多いしなー」

提督「今年は織姫と彦星は会えなかったかもわからんね」

下2

―雲龍型の部屋―

提督「雲龍って猫っぽい気もするけど犬っぽくもあるよな」

雲龍「猫? 犬?」

葛城「雲龍姉は猫じゃないの。なんだか自由だし」

天城「提督に対しては犬のような感じもします」

提督「だよなぁ。雲龍はどう思う?」

雲龍「本人に聞くの……? でも、それなら犬でしょうか」

提督「ほほう、その心は」

雲龍「ご褒美のために働く」

天城「そういうのを自分で言うんですか……」

提督「なら次は天城だ」

葛城「犬ね」

雲龍「犬」

天城「満場一致ですか!?」

提督「実際天城は悩むことなく犬だな」

天城「犬はかわいいですけど、そう意見が一致されるのは……」

葛城「そういうところが犬っぽいの」

提督「控えめで相手の反応を待っているところがなんかそんな感じだな」

雲龍「間違いないわ」

天城「ですか……」

提督「最後に葛城だ!」

雲龍「猫」

天城「猫、ですかね」

提督「あー、猫かな」

葛城「こっちも意見が一致しているじゃない」

提督「瑞鶴に対する反応を見ていたら犬っぽい気もするけれど、そうじゃない相手にはそこまでじゃないしなぁ」

雲龍「相手を見るところと、気分次第なのが猫っぽい」

天城「私たちの中では一番行動的ですしね」

葛城「しっかり理由を話されると否定しようもないじゃない……」

―執務室―

提督「めっちゃ早くに決まった! みんな同じ評価ってのが驚いた」

提督「しかし、結論からするとバランスはとれているのか。なるほど」

下2

―庭―

提督「今年も流しそうめんするぞー」

金剛「楽しみデース」

榛名「榛名もお手伝いします!」

提督「それなら流すのをやってくれないか。たまにはとる側で参加したい」

榛名「はい!」

金剛「いくら提督でも負けませんヨー」

提督「ふっ、金剛だって自分が艦娘だからって油断しないようにな」

霧島「はいはい二人とも、まずは組み立てからですよ」

提督「はーい」
金剛「ハーイ」

~~~~~~~~

榛名「では、ながしますよ」

金剛「いつでもどうぞデース」

提督「かかってこーい」

霧島「二人とも子供みたいですね」

提督「流しそうめんは童心に戻るんだ」

霧島「司令はいつも童心に戻っているような気がするけど……」

金剛「細かいことを気にしちゃ楽しめまセーン」

霧島「まあ、いいですけどね」

榛名「えっと、流してもいいですか?」

提督「問題ない。流せ!」

榛名「では、榛名いきます!」スッ

金剛「もらいデース! ……あっ」

比叡「もぐもぐ……おいしいですねー」

提督「今回は先に取られたな」

金剛「次は油断しませんからネー」

榛名「では、次流しますね?」スッ

比叡「次来ましたね。んー……これもいいですね」

提督「くっ、またしても!」

金剛「比叡、なかなか侮れまセーン」

霧島「……」

霧島(先頭に比叡姉さまがいるからだと突っ込みたい! 場所を何故変えないかと突っ込みたい!)

―執務室―

提督「そもそも、あれだな、次やるときはそうめん流し機みたいな機械を夕張に作ってもらおう」

提督「やっぱ一人だけ流す役でハブられてるってよくないしな。うん」

下2

提督「肝試しするぞ」

暁「嫌!」

提督「……いきなり拒否とは何かあったのか?」

響「たぶん前のだよ」

提督「前の……心当たりが多すぎてわからん」

電「電も心当たり多すぎて、聞き返す方が変に感じるのです」

暁「とにかく、私は帰らせてもらうわ!」

雷「あっ、暁!」

提督「ふぅ……残念だが、そうはいかない」

ガシャン プシュー

暁「扉に鉄格子!?」

雷「それに、この煙は……?」

提督「お前たちには眠っていたもらおう。おっと、マスクマスク」

電(相変わらず無茶苦茶なのです……)

~~~~~~~~

雷「……あら、もう、夜?」

響「みたいだね。これはまんまとハメられたって感じかな」

電「いつにもまして強引だったのです」

暁「むにゃむにゃ……いちにんまえの、れでぃーなんだから……」

雷「起きなさい!」

暁「はっ、え、こ、ここは?」

響「執務室。部屋に戻るまで強制肝試しだね」

暁「……ここでこのまま寝ないかしら?」

雷「ここで? でも、ここって司令官がいる部屋だから……」

コンコン コンコン

雷「あら、ノック?」

響「窓からだね」

電「……でもここ、一階じゃないのです。しかも、窓の影はどう見ても手から下が……」

暁「ひっ……きゃあああああああああ!!」ダッ

雷「待ちなさい暁!」ダッ

響「結構本格的だね」ダッ

電「そういいながら足はきちんと動いているのです」

―廊下―

暁「ああああああああああ!!」ダダダッ

雷「足早っ」

響「今までので相当トラウマになっているのかもね」

電「そういう響ちゃんも顔色がよくないですよ」

響「……」

雷「でも、さっきのが司令官の仕込みだとしたらもうなにもないんじゃないかしら」

響「そ、そうだね。ほら、外に司令官らしい人もいるし……」

提督「俺がどうかしたか?」

響「!? え、あれ。司令官?」

提督「? そうだけど」

響「じゃあ、外にいるのは……」


???「……ニヤッ」ダッ


響「……!!?」

雷「どうかした?」

響「いい、今外に誰かがこっちに」

雷「? ちょっと落ち着いて話して」


ドンドン ドンドン


提督「ん? 誰だこんな時間に。裏口の方か?」

響「い、行っちゃだめ」

提督「え、なんで」

響「と、とにかく! 駄目だからね!」ギュッ

提督「お、おう。響がそこまで必死になるなんて珍しいな」

電「……」

電(外に……誰かいたのですか?)

―執務室―

提督「なんだか、肝試しをすると仕込み以上に驚いてくれるなぁ」

提督「ま、この時期になると色々噂もあるし、相乗効果かな」

下2


―水族館―

睦月「海の生き物ってこんなにいるんですにゃー」

提督「海上を移動しているくらいだと、水族館にいる生物は珍しいだろ」

長月「普段そこまで見ることはないからな」

三日月「潜水艦の子たちならもっと違うんでしょうけどね」

提督「あいつらは深海の生物は珍しいって言ってたな」

三日月「そうなんですか? 確かに、そこまで潜れませんしね……」

望月「そもそも、そこまで魚には興味がない……」

如月「それはもったいないわね。ほら、あっちにヒトデがいるの、見に行きましょ」

望月「ああ~、引きずられる……」

弥生「司令官は、好きな魚はありますか……?」

提督「魚? うーん……魚なら熱帯魚だな」

弥生「いいですね……熱帯魚……。水族館のは、キラキラしていて、素敵だと思います……」

提督「種類もいろいろいるし、見ていて飽きないよな」

卯月「えー、うーちゃんはもっと派手なのがいいぴょん!」

提督「派手なの? サメとかか」

卯月「サメでもハンマーヘッドシャークだぴょん!」

弥生「派手……?」

提督「たぶん見た目だろうな……ちなみにうーちゃん、あのサメは何だ?」

卯月「ぴょん……? ……ジンベエザメ?」

弥生(シロワニってすぐそこに書いてあるのに)

~~~~~~~~

提督「ああああああ!! ペンギン可愛いいいいい!!」

皐月「司令官がペンギン好きって本当だったんだね」

菊月「こちらが恥ずかしいくらいなのだが……」

文月「でも、ペンギンさんかわいいね~」

菊月「それには同意するが」

水無月「司令官は放っておいていいのかな」

皐月「止まるような性格じゃないしね」

長月「周りに迷惑をかけていないなら無視じゃないか」

三日月「どっちが保護者なのかわかりませんね……」

菊月(あとで撮っている動画を見せてもらおう)

―執務室―

提督「ペンギンショーは最高だな! 水族館は最高だぜ!」

提督「しかし、お土産は買いすぎたな……必要ない分は配っておこう」

下2

―演習場―

提督「レッツパーリィイイイイイイイ!!」


霧島「なんだかすごいものがいますけど!?」

比叡「ひえぇ……」

榛名「あ、明石さん、あれは?」

明石『ふっふっふ、あれは某大統領が装着しアメリカを救ったとされる伝説のスーツを元に提督に合わせて作り上げた特殊機動重装甲なんです!』

霧島「初めて聞きましたけど」

明石『質量を無視するボックスに破壊力甚大な兵器の数々。水上用に特化し、それでいて死人を出さないスーパー兵器なんですよ!』

金剛「だ、大丈夫なんですカー?」

明石『一度味わってみればわかりますよ』

提督「さて、楽しいトークタイムは終わりかな」

霧島「い、いくらよくわからない兵器といえども、司令と直接戦うのは……」

提督「これをみてまだそんなことを言い続けられるかな。くらえ!」

ドガーン

金剛「……!?」大破

比叡「お姉さまが一撃で!」

提督「傷はつけない。紳士的だろう」

霧島「紳士かどうかは知りませんが、油断はできそうもないですね」

比叡「お姉さまの仇は討ちます!」

金剛「轟沈はしてないですからネー?」

比叡「全力で! 行きます!」ドーン

提督「ふん!」ドーン

霧島「撃ちあってはじいた!?」

榛名「なんだか予想以上に強くありませんか!?」

提督「シャルウィダンス? ついてこれるかな」

榛名「そもそも少し性格変わっていませんか?」

霧島「いつも通りといえばいつも通りのような気もしますが……って、来ます!」

比叡「ま、負けませんから!」

~~~~~~~~

明石『いかがでしたか? 提督専用のパワードスーツ』

提督「実践は初だが、なかなかの完成度だ。動きやすいまであった」

明石『それにしてもさすがです、提督』

提督「最高のおもてなしだったよ。いい運動にもなった」

明石『ですが、それを着て出撃なんてことはしないでくださいね?』

提督「なんでだ? やはりパーティはたまにやるからこそいいからか?」

明石『ご自分の立場を考えてくださいって!』

提督「ふぅ、みんな心配性だぞ」

明石『それはあくまで緊急用ですから! 絶対に勝手に使わないようにしてください!』

提督「オーケーオーケー。了解。緊急用って例えばどんな時だ?」

明石『え? それは……』

提督「……」

明石『……クーデターされたとき、ですかね?』

提督「これお蔵入りな」

―執務室―

提督「というか、そもそもこれは敵に効くのだろうか。艦娘限定ってことないよな」

提督「最近謎技術ばかりだから把握しきれん……」

下2

―談話室―

ワイワイガヤガヤ

提督「ん? なんだか騒がしいが……」

長良「司令官? それが、ちょっと面白いものがあってね」

五十鈴「これを面白いと言えるのかしら……」

提督「??」

名取「テレビを見れば、わかります……」

提督「テレビ?」


『ニュブルクリンクを走った感想は?』

那珂『すごく楽しかったよ!』

『どんなところが?』

那珂『最初に来たときはこのフェアレディも大変だったんだけど、慣れるととても面白いコースだってことが分かったからね!』


提督「!?」

阿賀野「にゅぶるくりんくってどこ?」

能代「ドイツだったと思うわ」

阿賀野「そんなところまで旅行? いいなー」

提督「というか本当にびっくりなんだが!?」

球磨「後ろで川内が手を振っているクマ。多分神通もいるクマ」

天龍「かー、あいつらロックだな。いくら俺でも車をもって海外のサーキットまで行こうとは思わないぜ」

龍田「それにしても、報道されるほどなのね~」

名取「艦娘が走ったっていう事実がレアケースだったかと……」

提督「まったく、自分の立場も考えてほしいものだ」

球磨「そもそも、有名とはいえあそこのサーキットを知っている方が驚きクマ」

五十鈴「誰かに聞いたんじゃない? ……ううん、そういえば怪しそうな人もいたわね」

提督「あー! 那珂ちゃんが何か言おうとしているぞ!」

球磨「間違いないクマ」

五十鈴「はぁ……」

『では、何か伝えたいことはありますか』

那珂「えー、それじゃあ~、那珂ちゃんの新曲、よろしくね!』

『以上。インタビューでした』


提督「……まさか、宣伝のためだけに走ったのか?」

長良「そうだとしたらすごい営業方法だね」

天龍「真似できねえな」

提督「いや真似すんなよ。つか後で怒られるぞこれ……」

ドンドン ガチャ

霞「ちょっと! クズ!」

提督「逝ってくる……」

天龍「お、おう。頑張れよ」

―執務室―

提督「まさか走ってくるとは思わなかった……前に行ったときは一番乗り気じゃなかったのに」

提督「いや、川内が唆した可能性は高いな……」

下2

―睦月型の部屋―

提督「次に改二になる睦月型を予想してみようー」

睦月「およ? もしかして、誰かの予定があるのかにゃ?」

提督「そういうわけではない。ただ、面白そうかなって」

卯月「姉妹順でうーちゃんだぴょん!」

弥生「それなら弥生のほうが先だけど……」

皐月「そもそもボクが先に改装できるようになったんだから、姉妹順じゃないんじゃないかな」

卯月「つまりうーちゃんの改二は……?」

提督「まだまだ先だな」

弥生「すぐではないって結論だと思いますけど……」

如月「やっぱり、戦果が大きい子じゃないかしら?」

菊月「しかし、そうであるならば如月が改装できた理由が乏しいぞ」

如月「それはどういう意味かしら?」

菊月「な、なんでもない」

三日月「でも、関係はしているんじゃない?」

望月「他の艦を見てもそうだしねー」

提督「睦月と如月はあの時代駆逐艦の象徴でもあったからな。そういう意味では存在として大きいぞ」

睦月「そ、そう? えへへ……」

卯月「でも後でうーちゃんの名前で上書きされちゃうぴょん」

弥生「卯月、余計なこと言わない……」

水無月「でも、それなら次に改装しそうなのはふみちゃんだね」

文月「あたし~?」

長月「同感だ」

提督「便乗したわけじゃなくてか」

長月「長月を何だと思っているんだ。単純に、皐月に次いで戦果もあり、姉妹順にしても可能性は高いだろう」

水無月「水無月たちは遅参だしね」

提督「なるほど、なかなか冷静な判断だな」

文月「あたしが改二……えへへ、そうだったら嬉しいな~」

菊月「なんにしてもまだ先の話だろう。今は自分にできることをしていくべきだ」

提督「菊月はストイックだな。しかし、実際にはその通りだからな。誰の改装ができるかなんてわからんしな」

望月(捕らぬ狸の皮算用……)

―執務室―

提督「やる気になっている文月可愛い」

提督「しかし、実際に次は誰が改装するのか……改造とかなら夕張とかできないかな。無理か」

下2

霞「デパート行くわよ」

提督「……まさか、秘書官にその役割をとられるとはな」

霞「役割とか知らないけど、ただの荷物持ちよ」

提督「荷物持ちって、宅配便とか使えばいいだろ」

霞「荷物持ちにはほかにも意味があるのよ」

提督「?」

霞「とにかく来なさい」

提督「嫌と言ったら?」

霞「強制よ」

提督「ですよねー」

―デパート―

霞「これとこれとこれね」

提督「家具って……明石に仕入れてもらった方がいいんじゃないか」

霞「プライベートなものをわざわざ仕入れてもらうわけにはいかないでしょ」

提督「え?」

霞「え?」

提督「……そ、そうだな」

霞「……ま、いいけど」

提督「で、荷物持ちのもう一つの役割ってなんだ」

霞「あんたが頼まないと門前払いなの。ほら、店員呼んで」

提督「なるほど」

~~~~~~~~

提督「って油断していたら、本当に大量に買って……」

霞「荷物持ちをさせないとは言ってないでしょ」

提督「別にこのくらいかまわんが」

霞「流石にお礼位はするわよ」

提督「お礼なぁ……んじゃあ、何か料理を作ってくれないか」

霞「料理? ……」

提督「なんだ、ダメか?」

霞「……い、いいわよ、やってやろうじゃない」

提督「言ったな? よし、多少はやる気が出てきた。どんどん持ってこーい!」

霞「じゃあ、あの漬物石もついでに買おうかしら」

提督「勘弁してください」

―執務室―

提督「デパートの漬物石が売っているのか……びっくりした」

提督「しかs、秘書官が料理を作っている姿は見たことないが、大丈夫なのだろうか」

下2

―会議室―

提督「営業のために撮影をする。詳細は書類の通りだ」

敷波「……とりあえず、話が進みすぎて拒否権がないことはわかったわ」

提督「大本営の指示なんだからしょうがない。今回はコンビニと提携することにより、より親密さを増していくというのが目的だ」

朝霜「ま、あの秘書官が許可したのなら大丈夫だろ」

藤波「そうね。特に拒否する理由もないし」

提督「……別にいいけどな。やってくれるのなら」

古鷹「質問です。この浴衣というのはなんですか?」

提督「ああ、衣装については既に用意してある。心配はしなくていい」

リベッチオ「用意してあるの! もってないから、楽しみ!」

綾波(既に用意してあるということは……)

神威(拒否する余裕も本当になかったみたい……)

ポーラ(お酒飲みながらでもいいですかね~)

~~~~~~~~

提督「リベッチオ、あー、いいよそれ、ほら、もうちょっとはだけさせて……そうそうそう、いい感じいい感じ。もうちょっと足あげて……」

敷波「セクハラか!」

綾波「私たちの時はそこまで指定はしてこなかったですよね」

提督「え? ほら、お前たち二人は自分たちの撮られ方をわかっているみたいなね?」

リベッチオ「リベには難しいかも……」

神威「だ、大丈夫です。私もきっとそれくらい厳しく言われますから」

提督「神威はもう取ったぞ」

神威「はい?」

提督「さっき焼トウモロコシ食べてただろ。そのとき」

神威「……き、気づきませんでした……」

藤波「盗撮技術のほうが高いんじゃない」

提督「そういう藤波ももう撮ってるからな」

藤波「いつ撮ったの!?」

ポーラ「ところで~、ポーラもいいですか~?」

提督「なんだ? あと酒は禁止な」

ポーラ「……」ガーン

提督「質問それだけか!」

ポーラ「あ、いえ~。ポーラだけ服が違うのが、気になって~」

古鷹「それってコンビニの制服ですよね。鹿島さんが着ているのを見たことあります」

ポーラ「これがですか~……」

朝霜「意外と似合ってるんじゃね。酔ってなければ店にいてもおかしくないぞ」

提督「イメクラにいそう」

藤波「それセクハラ!」

リベッチオ「イメクラってなに?」

提督「コスプレ喫茶みたいなものだったと思う」

藤波「……あー、そういえばそういう人だったっけ」

古鷹「と、ところで、撮影は?」

提督「あ、古鷹、手を顔の横にあてて少し笑ってくれないか」

古鷹「え? こ、こうですか?」

提督「激写! よし、これで大体完成だな」

綾波「雑ですね……あれ、でも撮った写真はきれいに撮れてます」

提督「ふはは、この俺の撮影技術を舐めるなよ! ではご協力感謝!」

朝霜「……まだ撮られてないんだが!」

―執務室―

提督「うむ、これならリテイクはないだろう」

提督「さて、この後長波のところにもいかないとな。炒飯のレシピ教えてもらおう」

下2

神通「失礼します、提督」

提督「来たか。今日呼んだのは他でもない、七夕についてだ」

神通「七夕……?」

提督「そう、あれは匿名で書かれているものの、お前達の筆記の癖で解き明かすのはたやすい。つまり!」

ガシャン ゴゴゴゴゴ

神通「執務室が!」

バン

提督「新婚セットを用意した!」

神通「また夕張さんや明石さんに頼みましたね」

提督「まあ模様替えの一種だし? 問題は無い筈」

神通「はあ……それでこのセットと何の関係が?」

提督「おいおい、まだ隠すつもりか? お前だろう、七夕に新婚生活と書いたのは」

神通(違いますけど)

提督「まあ恥ずかしがる気持ちは分かる。相手はレンタル彼氏を使おうと思ったが秘書官に止められてしまったので俺が相手をしよう」

神通(レンタル彼氏とは……斜め下の方向に行きましたね)

提督「じゃあ、今日一日俺とお前は夫婦な」

神通(そうして有無を言わせない展開ですね)

~~~~~~~~

提督「じーんつう」ダキッ

神通「きゃっ、もう提督、突然抱き付いてこないでください」

提督「おいおい、新婚なのに態度が冷たいぞ」

神通「あっ……えっと、なんですか、提督?」

提督「神通に触れたくなってな」

神通「もう、甘えん坊ですね」

提督「いいじゃないか。こうして一緒に居ることが何よりも幸せなんだ」

神通「お仕事はどうするんですか?」

提督「うーん、神通分を補給したら頑張る」

神通「はいはい、頑張ってください、提督」

提督「……でも、こうしていたらお前を愛する気持ちが止められなくなりそうだ」

神通「その、提督?」

提督「神通、今は夫婦だろう? もっと適した呼び方があるんじゃないか」

神通「あ、あなた……?」

提督「照れた顔の神通も可愛いな。本当、いつものギャップがそそる」

神通「あ、ちょっと、それ以上は……」

提督「駄目か?」

神通「……す、少しだけですよ」

提督「残念だが男は狼だ。そんなガードが甘いと、食べたくなる」

神通「今の私達は、その……夫婦、ですから」

提督「じゃあ、少しだけ可愛がっちゃう」

神通「あ――」

~~~~~~~~

提督「うーん、参考にする漫画、間違えたかなぁ」

提督「神通は顔を真っ赤にして止まったし。神通もまだまだ新婚までは程遠いな」

下2

―夏祭り―

神風「やっぱり原価が一番高いチョコバナナよね」

提督「そんなこと言いながらチョコバナナを食べる奴初めてみた」

神風「なによ、いいじゃない。気になるのよ」

提督「秋月型じゃあるまいに」

神風「あの子たちは節制しているだけでケチなわけじゃないわよ」

提督「今ケチだって認めたな!」

神風「別に私がケチだって言ってるわけじゃないわよ」

提督「ああ言えばこう言う……なら、型抜きでもやるか」

神風「型抜きねぇ。いいんじゃないかしら」

提督「ならやってみるか」

~~~~~~~~

神風「やっぱり綺麗にできないわね……」

提督「子供は評価がぬるくなるからマシだろう」

神風「子供じゃないわよ! というより、上手ね……」

提督「祭り好き舐めるなよ。おかげで一部の型抜き屋は出禁だ」

神風「手加減しなさい!」

提督「さて、いくらか稼いだし、今度はくじ屋を潰しにかかるか」

神風「まさか全部引く気?」

提督「たまにやると嫌がられて楽しいんだこれが。おかげで一部からは出禁に」

神風「ほとんど嫌がらせしかしていないじゃない!」

提督「じゃあ射的」

神風「どうせ出禁でしょ」

提督「……食べ物回るか!」

神風「図星なのね」

提督「今年はいろいろな屋台増えたよな」

神風「屋台自体は減っているような気がするのに不思議ね」

提督「きゅうり売ってるぞきゅうり」

神風「お祭りに来てきゅうりって……揚げアイスなんてものもあるわね」

提督「神戸牛にメロンって、普通に店に行くぞ……こう見たことない屋台があると、逆に買ってみたくなってきた」

神風「いいんじゃないかしら」

提督「ほう素直だな。どれどれ、神風の視線の先は……」

神風「ちょ、ちょっと」

提督「スティックワッフルか。神風が見とれるだけあっておいしそうだ」

神風「見とれていたわけじゃないから!」

提督「ははは、まあ今日はおごりだ。遠慮するな」

神風「ふん。なら、春風たちの分も合わせて思いっきり買うんだから」

提督「おう、どんどん買ってこい。……あ、神戸牛に行くのはやめて。一つ二つじゃないだろう」

―執務室―

提督「りんごあめとか見なかったなぁ。それ以外にもお面屋とかなくなってた気がする」

提督「屋台は入れ替わりも激しいな……」

下2

―睦月型の部屋―

提督「ちーっす、なんか面白いものない?」

望月「えぇ、ダル……そこの本棚適当に見ていいぞー」

提督「ほーい。ふーん、少女漫画ばかりかと思ったら意外といろいろあるな」

望月「意外とってわけじゃないと思うけど……」

提督「もっちーなら確かに」

望月「じゃあ、ここでゲームしながらゴロゴロしとくね~」

提督「うむ、ゆっくりしておけ」

望月「ここあたしの部屋なんだけど……」

~~~~~~~~

望月「ふわぁ……あー、この時間帯は強い奴いないなー」

提督「……」ジー

望月「……なに?」

提督「干物妹ってもっちーにも言えるよな」

望月「漫画の影響?」

提督「まあ。でも見ていたらそんな感じがして」

望月「ふーん。でも全然違うけど」

提督「なぜだ? だらだらゴロゴロしているところはまさに一緒じゃないか」

望月「……いや、そうなんだけど。うーむ……微妙な心境だわ……」

提督「褒め言葉じゃないし」

望月「それもそっか」

提督「で、これとは違うとは?」

望月「立てば芍薬歩けば牡丹歩く姿は百合の花」

提督「?」

望月「あると思うか?」

提督「あー、違うな」

望月「だから、それとは違うんだって。はぁ、自分でこんな否定するなんてさー」

提督「もっちーは美人より可愛いからな。その言葉には確かに当てはまらないか」

望月「……なに、ギャルゲーでもやってきた?」

提督「どういうこと!?」

望月「はぁ、ま、いいけどさ」

提督「? よくわからんな」

望月「もうわからなくていいぞー……ゲーム、一緒にやるか?」

提督「これの最後まで読んでから」

望月「やっぱわかれ」

―執務室―

提督「機嫌がころころ変わって……やっぱりあの漫画のキャラっぽかったぞ」

提督「まあ、もっちーはダルダル系だからなんかちょっと違う感じはする。ゲームは上手いけど」

下2

―プール―

瑞鳳「プールです! 広いですね!」

提督「懸賞に送ったら当たったので適当な面子を連れてきたが……」

大鳳「? なんですか、こっちを見て」

提督「いや、なんか寂しいなって」

龍驤「それはうちに向かっていっとるんか? お?」

瑞鶴「誰に言っていたとしても爆撃ね」

葛城「艦載機はここですよ」

提督「ちょ、待てよ。もうちょっと人数を連れて来たかったってだけだ。他意はない」

龍驤「ギルティ」

提督「!?」

霞「何でも良いから早く入るわよ!! あー!」ドパーン

<トビコミハオヤメクダサイ

瑞鳳「な、なんだか荒れてますね」

提督「まあ、風通しのほとんどない部屋でずっと書類と格闘してたから……」

大鳳「そ、それは大変ですね……提督は?」

提督「秘書官の仕事部屋よりも風通しはいいからな。それに、執務の時間が違う」

瑞鶴「霞ちゃんじゃないけどクズね」

葛城「部下の扱いが最悪すぎるわ」

提督「大丈夫って言って意地張ったの秘書官のほうなんだが……」

瑞鳳「ま、まあまあその辺りにして、そろそろ私たちも泳ごう?」

大鳳「そうね。もう準備体操も終わったから……」

提督「だな、よし、俺も秘書官みたいに……」

瑞鳳「提督がやったら本気で怒られますよ!」

~~~~~~~~

霞「頭が冷えたわ」

提督「お、おう」

霞「早く私を解体して」

提督「それはさすがに行きすぎだろ」

瑞鶴「そ、そうよ。あんまり暑いと頭のねじが取れることくらいあるから!」

大鳳「ほら、提督はいつもあんな感じでしょう?」

霞「頭のねじが取れていた上にあんなんと比べられるのね……最悪だわ……」

提督「あんなん!?」

龍驤「当然の扱いやな」

瑞鳳「あ、ほら、かき氷もあるよ! 元気出して?」

霞「ありがとう……」

葛城「でも、帰ったらまたあのサウナ鎮守府に戻ると思ったら嫌よね……」

霞「……今日はここで仕事をするわ」

提督「まだ治ってないじゃないか」

龍驤「そもそもキミがやればいい話やないか」

提督「さーて、帰ったときのことは忘れて泳ぐか!」

―執務室―

提督「冷風機を五台くらい秘書官にあげることにした」

提督「あと、あのメンバーに気にしていることを突っ込みすぎるのはやめよう。命にかかわる」

下2

―陽炎型の部屋二号室―

提督「物を叩くというのには他の意味がある」

時津風「他の意味? というよりしれー、突然何?」

提督「普通に殴るだけではなく侮辱する意味合いもある」

時津風「それが?」

提督「だから早速叩くぞ!」

時津風「こっちの疑問には何も答えてくれないんだねー、こっちとしてはしれーのその態度を叩きたいかな」

提督「まず第一に青葉新聞だ」

時津風「あー、いろいろ困らされてるもんね」

提督「ああ。最近はそうでもないが、一時期はプライベートなんてないに等しかったからな」

時津風(今も一面じゃないだけでこまごまと書かれているんだけど、黙っていた方がいっか)

提督「第二に明石だな」

時津風「明石さんに何か問題ってあるの?」

提督「仕入れが趣味に走りすぎる点だな」

時津風「あー……確かにそうかも」

提督「それで世話になることもあるが、なんとなくあいつの収入になるのは気に入らん」

時津風「買わなきゃいいんじゃない?」

提督「面白いものや珍しいものがあると買っちゃうだろ、男なら!」

時津風「女だからわかんない」

提督「とにかく、好き勝手やっているのは気に食わない! 売店を自分の者にしているようだ!」

時津風(でもあれってちゃんと許可をとっているんじゃなかったっけ……)

提督「第三にこの鎮守府の雰囲気だだ」

時津風「へー、どこか嫌な要素でもあるの?」

提督「俺が突拍子もないことを言ってもおかしくないと思われている点だ!」

時津風「自分で突拍子もないって言っている時点でねー」

提督「いや、これは威厳の問題だ!」

時津風「あー、じゃあこっちからもいい?」

提督「お、なんだ?」

時津風「しれーが必要以上に自分に威厳があると思っている事」

提督「!?」

―執務室―

提督「俺ってもしかして威厳がない……?」

提督「いや、自分で言うのもなんだけど敬われているとは思うんだけど……」

下2

―河川敷―

提督「ここからの夕日は最高なんだぞ」

漣「それ二度目ですよ、ご主人様」

大鷹「前みたいなことは勘弁してくださいね……?」

提督「前?」

大鷹「あの時……」

~数週間前~

提督「ここからの夕日は最高なんだぞ」

春日丸「あ、本当ですね……」

漣「川も綺麗ですなー」

提督「だからこそ鏡のように販社をしてキラキラしているように……お」

春日丸「どうかしましたか?」

提督「川の中に石がある」

漣「……ほほう」

提督「拾いに行ってくる」

春日丸「えっ、な、なぜですか?」

漣「ご主人様はきれいな意思を集めるのが趣味ですもんね」

提督「その通りだ」

春日丸「そうなんですか? でも、そんな話……」

提督「じゃあ、行ってくる」

漣「いってらー」

春日丸「気を付けてくださいね?」

提督「このくらい…………あっ、この川、深い! ガボッ!」

漣(早い)

提督「ゴボボボボ……! っぷあ! ブボボボ!」

漣(でも演技はすごい上手い)

春日丸「提督! も、もしかして!?」

提督「ゴボッ! ぷふぁっ! だずげっ! ながさブブブ!」

春日丸「すぐに助けに行きます!」

漣「でも春日丸さん、ご主人様でおぼれるくらいですから、春日丸さんが行っても!」ガシッ

春日丸「ですが提督が!」

漣(ご主人様は多分余裕ですよ)

提督「たすけ……! ふぶきっ! たすっ! ぶはっ! いなづま! むらくも! さざなみ!」

春日丸「助けを呼んでいます! だから離してください!」

漣(いやー、これで漣としては本気でおぼれていないって確信できるんですがー)

提督「たすけて! ブボボボボ! ひしょかん!」

漣(そこくらいは名前で呼んであげれば……いや、これはこれで面白いからいっか)

春日丸「もう我慢できません!」ダッ

漣「あっ」

春日丸「提督、今助けます!」ダッ

提督「まだ死に……おっと」ガシッ

春日丸「……? あれ、どうして私は提督に横抱きに……?」

提督「漣ー、もうちょっと抑えておけよ」

漣「すみませーん。でも、ご主人様も趣味悪いですよ」

提督「改装前にドッキリをしたくて」

春日丸「あの、提督? 溺れていたのでは……」

提督「うん? いや、海を遠泳するような人物が河川敷の川くらいでおぼれるわけないだろ?」

春日丸「……何か言うことは?」

提督「え、えーと……この川、深いから深い」

バシーン

~~~~~~~~

提督「いやー、同じようなことはしないって」

大鷹「絶対ですよ」

漣(実は次は足がつったバージョンもするつもりだったらしいですけどね)

―執務室―

提督「流石に泣くほど心配されたらもうやらない」

提督「実際におぼれている人を助けるときは何も準備なしに飛び込むのはやめた方がいいぞ。引き込まれる危険もあるしな」

下2

―食堂―

提督「ティッシュの食べ比べをしてみようと思う」

間宮「……ティッシュですか?」

提督「そうだ」

鳳翔「聞き間違えではないのですね……」

龍鳳「ティッシュって食べられるんですか?」

間宮「食べ物ではないです」

提督「食べ物ではない。確かにそうだ。だが、だからこそあえて食べてみたいと思わないか」

鳳翔「いえ……」

間宮「食べ物ではないですし……」

龍鳳「私も遠慮したいです……」

提督「むむ、料理人のくせに食材を差別するとは」

間宮「食材ではないですよね」

鳳翔「区別ですよね」

提督「その通りだ」

龍鳳「認めるんですね」

提督「ふん、お前らが食べないなら一人で食べるからな。モグモグ」

龍鳳「本当に食べました!」

間宮「だ、大丈夫ですか?」

提督「……ティッシュだこれ!」

鳳翔「エリエールのスタンダードですね。食べるものではないので当然だと思うのですが」

提督「しかし、この硬さは癖になるな。噛みごたえだけなら悪くないかもしれん」

龍鳳「悪くないんですか……」

提督「さて、ここで一つ置いたところで、最もおいしいと有名な鼻セレブを試してみよう」

間宮「最もおいしい……ですか」

鳳翔「ティッシュがおいしいってあるんですか?」

提督「だから試してみるんだろう。モグモグ」

間宮「ためらいもなく口に入れるのはすごいと思いますが……」

提督「……本当に甘い!」

龍鳳「えっ!」

提督「まじまじ。ちょっと食べてみろよ」

鳳翔「そういわれましても……」

提督「いや本当、騙されたと思って」

龍鳳「……提督が言うのであれば、行きます!」

鳳翔「龍鳳さん?」

龍鳳「飲むこむわけではないですし、確かめてみます。ムグッ」

鳳翔「……龍鳳さんだけというわけにはいきませんしね。私もいただいてみますね」

間宮「仕方ないですね……では、いただきます」

提督「……どうだ?」

龍鳳「……本当に甘みがあります」

鳳翔「少し驚きですね」

提督「だろう!」

間宮「ですけど、ティッシュですね」

提督「まあな」

―執務室―

提督「甘いといっても、食べるほどではないんだよなぁ」

提督「実際に飲み込むと消化されないらしいから、飲み込むのはやめた方がいいしその方がいいかもだが」

下2

霞「はい、今月の報告のまとめよ」

提督「おお、すまないな」

霞「ファイリングは任せるから、ちゃんとしておきなさいよ」

提督「覚えていたらな」

霞「一発ほしいみたいね」

提督「冗談だ」

霞「はあ……」

提督「そうだ霞、ちょっと相談があるんだが」

霞「……」

提督「霞?」

霞「……続けてちょうだい。相談って何かしら」

提督「相談といっても大したことではないのだが、売店の品ぞろえを変えようと思ってな」

霞「夏真っ盛りだものね。いいわ、こっちで調整しておく」

提督「そうか。……そろそろ昼だな。霞、一緒に昼食はどうだ」

霞「構わないわ。こっちも一段落しているし」

提督「なら、向かうか」


―食堂―

提督「あそこで霞が邪魔しなければなぁ」

霞「変なメニューを追加しようとするからよ」

朝潮「あ、霞……と司令官。一緒に食事ですか?」

提督「見ての通りだな。朝潮もどうだ?」

朝潮「い、いいんですか?」

霞「本人がいいといっているのだし、遠慮しなくても大丈夫よ」

朝潮「では、失礼します」

提督「それで、さっき霞に邪魔された話をしていたんだが」

霞「それを話しても朝潮が味方になることはないわよ」

提督「む、そうか」

朝潮「……? あれ、なんだかいつもと違うような……」

提督「なら、霞の恥部になりそうな話を……」

霞「どう考えてもあんたのほうが恥部が多いんだからあきらめなさい」

朝潮「……! あっ、司令官、霞のことを名前で呼んでいます!」

提督「まさか朝潮が最初に気が付くとは!」

霞「いや、わかっていて流していたんだけれど」

提督「え、なんで?」

霞「それをネタに茶化してくる未来しか見えないからよ」

提督「バレてただと!?」

朝潮「あの、そういえば、どうして司令官は霞のことを名前で呼ばないんですか?」

提督「そりゃ……なんでだっけ」

霞「冗談で言い始めてから定着したんでしょ。別に深い意味はないんじゃない」

朝潮「そうなの……」

―執務室―

提督「反応がないのつまらん!」

提督「呼ばれなれない名前で顔を赤くするとか、そういう初々しい反応をするかと思っていたんだが……いや、今更想像できないわ」

下2

電「暁ちゃんと響ちゃんが心配なのです」

提督「まあ、夜にトイレ行けなくておねしょされても困るからな」

電「実は……」

提督「……え? まじ? そりゃやべえな。さすがになんとかしてやるか」

電「とりあえず、前に起きた現象を解明するのです」

提督「前に起きた? あー、そういえば誰かが鎮守府のドアを叩いたんだっけ」

電「なのです」

提督「不思議といえば不思議だけど、トイレに行けなくなるほどじゃなくないか」

電「それと、ドアを叩く前に誰かが外にいたらしいのです」

提督「ふうん」

電「一応聞いておくのですけど、司令官さんの仕込みじゃないですよね?」

提督「窓ガラスを叩いたのは俺だ。あれは普通に機械を利用して叩くようにしただけで特に何もないぞ」

電「外にいた人物は知らない……ですか」

―母港―

電「あの位置の窓から見えたのはここなのです」

提督「だが、今更じゃないか?」

電「そうですね……もう時間も過ぎているのです」

提督「正直証拠のようなものはもうない。だから、できるのは推測に過ぎない」

電「なんだか、今回は変にやる気なのですね」

提督「いつまでもおねしょさせ続けるのもかわいそうだしな」

電「……その、したとは一言も言っていないのですけど」

提督「そうだっけ? まあ些細なことだ。時間の問題だろう」

電「……」

提督「否定しないのか」

電「司令官さん、ではどうやって結論付けるのがいいと思いますか?」

提督「納得できそうな内容を話すしかないだろう」

電「納得できそうな……夜戦帰りの川内さんだったとかですか?」

提督「それだと裏口を使う理由がわからんな。あと、本人に聞けば一発でわかる」

電「では、迷い込んできた人がいて、道を尋ねるためにドアを叩いた、ですか?」

提督「入口の監視カメラには誰も映っていなかった。それも調べたらバレるな」

電「敵さんが来た、はさすがに無理がありますよね……」

提督「だろうな。それはそれである意味怖いが」

電「……司令官さんの仕込みが一番納得しそうな気がするのです」

提督「仕方がないか。それが一番よさそうだ」

電「司令官さんは何が原因だと思うのです?」

提督「個人的な見立てだと、響の気のせい。かつ裏口の立て付けが悪くて風で音が鳴っただけだと思うんだけどな」

電「そうなのですか?」

提督「裏口の立て付けが悪かったのはマジだしな。ま、さっきので納得しておけ」

電「わかったのです」

提督(でも、あの日風はほとんど吹いてなかったと思うんだが……ま、いいか)

―執務室―

提督「でも、暁のあの様子だと納得はしても一人でトイレは行けそうにないだろうな」

提督「あんまり気にしてもしょうがないのにな。そもそも妖精さんとか謎がいっぱいあるのに幽霊とか……」

下2

提督「さつまいもを掘りに行くぞ」

綾波「さつまいも、といえば秋の食べ物ですよね」

敷波「まだ夏なんだけど。早いんじゃないの?」

提督「ところが、今年は気温も高かったんで早めに植えたさつまいもができているみたいなんだ」

敷波「そういえば、今年は暑かったっけ」

綾波「できているみたいというのは?」

提督「懇意にしている近くの農家だ。そんな話を聞いたから、手伝いに堀に行こうと思ってな」

綾波「お手伝いですか。そういうことであれば、私も手伝います」

敷波「いつものじゃないみたいだしね」

提督「……まあ、来てくれるならいいんだけど」

―畑―

提督「というわけで、このあたり一帯の収穫を任せられた」

敷波「……広すぎじゃない」

綾波「三人で終わる広さとは思えないのですけど……」

提督「さつまいもなんてコツがつかめれば収穫も簡単だから平気だ。最悪終わらなくていいといってくれてるしな」

敷波(多分終わると思っていないんじゃないの)

綾波(でも、司令官が言うと終わりそうですね)

提督「さて、芋ほりのコツは優しく、手早くだ」

綾波「難しくないですか?」

提督「さつまいもの形に添って掘っていくだけなんだが。まあ、初めてだと少し手間取るかもしれないからな。お前たちはゆっくりやってくれ」

敷波「えっと、傷つけてしまった場合はどうするの?」

提督「気にしなくていいぞ。一部はそのまま譲ってもらうことになってるから、そうなってるのをもらえばいい」

敷波「そう。わかった」

―畑―

提督「というわけで、このあたり一帯の収穫を任せられた」

敷波「……広すぎじゃない」

綾波「三人で終わる広さとは思えないのですけど……」

提督「さつまいもなんてコツがつかめれば収穫も簡単だから平気だ。最悪終わらなくていいといってくれてるしな」

敷波(多分終わると思っていないんじゃないの)

綾波(でも、司令官が言うと終わりそうですね)

提督「さて、芋ほりのコツは優しく、手早くだ」

綾波「難しくないですか?」

提督「さつまいもの形に添って掘っていくだけなんだが。まあ、初めてだと少し手間取るかもしれないからな。お前たちはゆっくりやってくれ」

敷波「えっと、傷つけてしまった場合はどうするの?」

提督「気にしなくていいぞ。一部はそのまま譲ってもらうことになってるから、そうなってるのをもらえばいい」

敷波「そう。わかった」

綾波「お芋の形……手で掘るんですよね」

提督「ああ。スコップは芋を傷つける場合があるから、なるべく使用をしない方がいいな」

敷波「なかなか詳しいじゃん」

綾波「慣れているんですか?」

提督「昔はよく手伝いでやったものよ。さて、そろそろおしゃべりはここまでにして始めようか」

綾波「はい!」


~~~~~~~~

綾波「ふぅ、結構疲れるね」

敷波「確かに。思ったより深く掘らなきゃいけないこともあるし、本当にこの広さで終わる……の……」

綾波「敷波? ……!」


提督「芋ほり楽しいなぁ! さて、次!」


綾波「敷波、あのあたりも芋畑だったよね?」

敷波「本当、すごいね……」

―執務室―

提督「いやぁ、手伝いの礼にトラック一台分貰ってしまった。もらいすぎたような気がしないでもない」

提督「綾波と敷波にも感謝しないとな。今度芋料理でも作ってやろう」

下2

サラトガ「夏に効くお手軽なアイスがあると聞きました」

提督「誰の入れ知恵だ?」

サラトガ「アイオワさんです」

提督「アイオワー! 多分扉の前にいるんだろう! 出てこないとおまえの分はないぞ!」

アイオワ「バレてはしょうがないわね」バターン

提督「なんでわざわざ遠回しなことをしたのかわからないが、お前が言っているのはかき氷のことだろう」

アイオワ「イグザクトリィ」

提督(最近アイオワもいろんな意味で日本かぶれてきたな……)

―提督私室―

提督「さーて、かき氷をするってことで誘ったら、思いのほか来たな」

アクィラ「かき氷、おいしいですよね!」

ウォースパイト「私も実は気になっていたものでして……来た時にはちょうど息が過ぎ去る時期でしたし」

ポーラ「お酒をかけてもおいしいと聞きました~」

ザラ「付き添いなんだけど……私も少し楽しみです」

リベッチオ「リベもかき氷好きだよ!」

提督「ドイツ艦ゼロとは珍しいな」

リベッチオ「ろーちゃんから、すでに食べ過ぎて寝込んでるって聞いたよ」

提督「ビスマルク、昨年も食べ過ぎで頭を通り越しておなかまで痛くなっていたというのに……」

リベッチオ「ビスマルクさんとは言ってなかったんだけど」

アイオワ「こっちもそんな愉快なことになればいいわね」

サラトガ「寝込むのが愉快なんですか!?」

提督「さて、かき氷は簡単だ。この氷をこの機械で削っていって、最後にシロップをかけるだけだ」

ウォースパイト「あら、思ったより簡単ね」

アクィラ「この誰にでもできるところはいいですよね~。よしよしアクィラの分ができました」

ウォースパイト「しかもこんなに早くできるのね。……アクィラさん? 頭を押さえてどうしました?」

アクィラ「きーんときました……でも食べる手が止まら……うっ」

ポーラ「最初はお酒で行きましょ~」

ザラ「最初にお酒のほうがおかしいから!」

提督「まあポーラは止めてもかき氷を食べながら酒を飲みそうだから関係ないと思うが」

リベッチオ「リベは何にしようかな~」

アイオワ「ハワイアンブルーとかいいんじゃない?」

リベッチオ「これて何味なんだろ?」

アイオワ「ハワイの味ね!」

サラトガ「違うと思いますけど……」

―執務室―

提督「なぜかブルーハワイのシロップが全部なくなった。気に入ったのか」

提督「ドイツ艦のみんなには後でいやがらせ半分にかき氷の倍プッシュをしてやろう。自作のうまく作れた奴だから多分再びお腹との戦いが始まる」

下2

―龍驤の部屋―

提督「龍驤、今からお前を抱きしめて優しく囁いてやる」

龍驤「なんやて?」

提督「だから、抱きしめて囁いてやろうって」

龍驤「そういう意味で聞き返したんやないわ」

提督「つまりオーケーと」

龍驤「どうしてそうなるんやろなぁ……」

提督「拒否権はないということだな」

龍驤「なら聞くなや」

提督「……いや、本当に嫌なら逃げればいいだろ?」

龍驤「……」

提督「まあいいや。もう逃がさんぞ!」ギュー

龍驤「あ、あほ! もうちょい優しくせい!」

提督「わがままな奴め……じゃあこれくらいだな」ギュッ

龍驤「いい感じや」

提督「じゃあ早速、龍驤」

龍驤「……」ドキドキ

提督「可愛いぞ」

龍驤「お、おぉー、なんや、来るとわかっとってもドキドキするもんやな」

提督「そうやって照れ隠しするところもかわいいじゃないか」

龍驤「ん、も、もうええで?」

提督「一回で終わるかと思って予想外に終わらなくて動揺している龍驤可愛い」

龍驤「ちょ、は、離せぇ!」ジタバタ

提督「駄目、絶対離さない」

龍驤「う……今日のキミ、積極的やないか……」

提督「たまにはいいだろ? こうして可愛い龍驤の姿も見れたんだし」

龍驤「その可愛いいうのやめい!」

提督「だったら逃げればよかったのに。こうしているってことは、受け入れる覚悟はあったんだよな?」

龍驤「こう無茶苦茶やったこと、失念しとったわ……」

提督「今更だな。だが、そうやって抜けている龍驤も可愛いぞ」

龍驤「くっ……もうすきにせえや……」

―執務室―

提督「大人しくなると小さい子みたいで可愛い……とかいうとぶっ飛ばされるので自重はした」

提督「可愛いということには手加減はしなかったがな!」

下2

提督「正直朧って第七駆逐隊の中で影薄いよな」

朧「ええ? どうしてそう思うんですか?」

提督「ほら、曙はツンデレで潮は内気で漣はアレな感じじゃん」

朧「アレな感じって言われる漣……伝わりますけど」

提督「そう考えると朧は何系かって思うんだ」

朧「あの三人に比べると確かに薄いかもしれませんが……」

提督「ほら、良くも悪くもお姉ちゃん的な。つまり前にあまり出て来ない」

朧「う、人が気にしていることをズバッとついてきますね……」

提督「だから、新たなキャラを付け加えていきたい」

朧「まるで今からが本題かの言い方をしますね」

提督「事実だからな」

朧「提督……」

提督「というわけでドン。ツッコミキャラの確立だ」

朧「なんとなくこんな感じのが来るんじゃないかと思ってました」

提督「以心伝心だな」

朧「その以心伝心は嬉しくないですからね?」

提督「……ふっ、駄目じゃないか。其処は激しく突っ込まないと!」

朧「もう始まっているんですか!?」

提督「当たり前だろう。日常の中で使えるつっこみを鍛えなければならないんだから」

朧「無茶苦茶ですよ……」

提督「じゃあほら、とりあえずつっこんでみろ」

朧「つっこみですか? ……な、なんでやねん」

提督「…………」

朧「何か言ってくださいよ!」

提督「どうしてもわからなければ、漫才をみてみるか」

朧「漫才ですか……」

提督「ああ、それを見て学習するんだ。なんなら、一度真似てみるか」

朧「なんだか腑に落ちない展開ですけど……やってみます」

~~~~~~~~

提督「いやー、俺結婚するんだよ」

朧「何ですか急に!?」

提督「でも、多分結婚しない」

朧「……どういうこと!? なんでさっき結婚するって言って、結婚しないって話になるんですか!」

提督「いや、俺は結婚したいんだよ」

朧「結婚したいんですか」

提督「いやー、実は彼女に百万借りててさ、そのお義父さんにそれを返すまで許さないって言われて」

朧「そりゃそうですよ……自分の娘に百万借りている男と結婚させたいなんて思いませんって」

提督「うん。だから朧、百万貸して」

朧「やっぱり急ですね!」


潮(た、大変なことを聞いてしまいました……!)タタッ

曙(け、結婚? クソ提督が? ……!)タタッ

漣(あれ、二人ともいっちった。このコントはここからが面白いのにな~)

~~~~~~~~

提督「やっぱり、こう勢いが足りないな。朧には」

提督「もしかして曙を見ている方が勉強できるかもしれん」

下2

―工廠―

提督「九九艦爆にロータリーはどうだ?」

夕張「また唐突なお話ですね。ロータリーエンジンといえば、初期型ではなくローターを使う方のエンジンですね?」

提督「うむ。そうすれば高出力に高い性能を期待できるんじゃないかと思ってな」

夕張「あー、まあ、確かに今よりは間違いなく高性能になりますね」

提督「つまり!?」

夕張「いえ、無理ですよ」

提督「なんだと!?」

夕張「驚きすぎですよ。そもそも、サイズを考えてくださいよ」

提督「……いまさらそんなこと言う? さんざんいろいろ改造しておいて」

夕張「うぐ……い、いえ、それは置いておいたとしても、単純に操縦の難易度が上がることも懸念されます!」

提督「言われてみれば、アクロバティックな操作には向いてないか」

夕張「それだけではないですけど……とにかく、いろいろな理由で無理です」

提督「むぅ……」

夕張(本当は興味ないから遠慮したいだけですけどね)

江草隊「あら~、あんまり私たちを舐めないでほしいですね~」

夕張「え、江草さん! もしかして、聞いてました?」

江草隊「機体の可能性をあげられるなら、大歓迎ですよ~。むしろ、腕が鳴りますね~」

提督「と、言っているが?」

夕張「うー、わかりましたよ! でも経費でちゃんと落としてくださいね」

提督「それくらいわかっている。さて、楽しみだな」

~~~~~~~~

夕張「できました」

提督「さっすが夕張! さーて、さっそく出撃してみるぞ!」

蒼龍「それじゃあ……江草隊、発艦!」

提督「おー、さすが豪語しただけあって安定しているじゃないか」

夕張「妖精さんにも手伝ってもらいましたから、予想以上に安定が図れてますね」

蒼龍「そもそも見た目をほとんど変えずにエンジンの改装ってどうやったんですか……」

提督「細かいことはいいんだよ!」

蒼龍「適当ですね……江草隊、どんな感じ?」

江草隊『なかなかいいですね~。これ一つで十機分は働けますよ~』

蒼龍「そんなに? やっぱりすごいのね……」

提督「こりゃ増産決定じゃないか?」

夕張「いえ、そうともいえないんですよ」

提督「なぜだ?」

夕張「かかった経費が……ゴニョゴニョ……」

提督「……うん、やめよう! ていうか無理だ!」

―執務室―

提督「まあ未来型エンジンとか言われるだけあるな。まだ実用には至らんな」

提督「でも、みててすごかったからまた今度見せてもらおう」

下2

―母港―

提督「来たな。ラジコンはきちんと作ってきたか?」

日向「完璧だ。今回は自作できるからな。私の瑞雲が最強だということを知らしめることができる」

伊勢「一応作ってきましたけど……あの、もしかして二人とも自作?」

提督「そりゃそうだろ。セット商品じゃ好きな機体は作れないし、レースには勝てない」

日向「もしかして伊勢はそれで勝てると思っているのか?」

伊勢「正直思ってなかったけど……本当に無理そうですね」

提督「だが、これ以上は時間は与えないぞ」

日向「そうだな。私の瑞雲も早く空に飛び立ちたくてうずうずしているみたいだ」

伊勢「いつも以上についていけない展開になりそう……」

~~~~~~~~

提督「さて始まったな」

日向「なるほど、あの速度を制御するとは、提督もなかなかじゃないか」

提督「日向だってな。瑞雲でその速度。そして運動性能。勝ちに来ているじゃないか」

日向「当然だ」

伊勢「いえ、あの、一つ聞いてもいいですか?」

提督「なんだ?」

伊勢「エンジンの音からして違うのですけど……」

提督「そりゃジェットだしな」

伊勢「ジェット!?」

日向「当然だろう?」

伊勢「当然なの!?」

提督「とにかく、これならば伊勢は敵ではないな!」

日向「事実上一対一だな」

提督「ふっふっふ、だが、俺はまだまだ本気ではないぞ」

日向「それはこちらの瑞雲も同じこと」

提督「いいだろう、ならば、ついてこれるかな!」

日向「それはこちらのセリフだ」

伊勢「……」

伊勢(あれ、二人ともルートから外れて行ってるけど……)

提督「くくく、なかなかやるではないか! だが、この動きはどうだ!」

日向「宙返りか。だが、その程度!」

伊勢(二人で盛り上がっちゃってる。……私はコース通りに進んでおこう)

―執務室―

提督「ふっ、試合にも負けたし勝負にも負けた」

提督「いや、あれ瑞雲じゃないだろ。完全に見た目だけだったぞ」

下2

―河原―

雷「本当に川があるわ」

響「山の中だから人もいないね」

暁「なかなかいい場所じゃない!」

提督「上流だからこその自然のままのきれいな水。まさに遊ぶのにうってつけの場所だ」

天龍「なんで俺まで」

提督「引率的な?」

天龍「はん、ガキの御守りなんて」

提督「この後バーベキューだぞ」

天龍「しゃあねえな。川の遊び方を教えてやっか」

提督「もはや株様式だな」

龍田「いつもの天龍ちゃんね~」

天龍「川に入る前にきちんと準備運動をするんだぞ」

暁「遊ぶだけよ?」

天龍「川を舐めちゃいけねえ。海だってそうだが、急に深くなったり、危険な足元だってたくさんある」

提督「足をつかまれて引きずり込まれるかもしれないしな」

暁「ひっ!」

電「やめるのです」スッ

提督「いたたた! カニのはさみ痛い!」

天龍「とにかく、咄嗟の回避のためにも準備運動は必須だ。わかったな」

暁「はーい」

龍田「天龍ちゃんがちゃんと見てくれているみたいだから、こっちはバーベキューの準備をしておきますね~」

提督「じゃあ俺は寝ていようかな」

龍田「……」スッ

提督「無言でカニを出さないでくれ。というか、この辺はそんなにカニが取れるのか」

~~~~~~~~

暁「やっぱり天龍さんは速いわ」

雷「形も綺麗だったわね」

天龍「このくらいは軽いぜ」

龍田「そろそろ準備できるわよ~」

天龍「お、ちょうど休憩しようと思ってたところだったんだ」

雷「私もお手伝いするわ」

提督「座っとけ座っとけ。肉を育てるのは男の仕事だ」

響「司令官、いつにもまして真剣だね」

提督「ふっふっふ、バーベキュー将軍と呼ばれた俺の実力を見せるときが来たみたいだからな。どれ、そろそろ」

電「お疲れさまなのです。この当たりのお肉はもう焼けているのでどうぞです」

天龍「お、さんきゅー」

提督「俺が育てていた肉が!?」

雷「元気出して司令官! 私がちゃんと育ててあげるから!」

提督「あ、うん。いや、ありがたいけど男の仕事だって……まあいいや」

―執務室―

提督「天龍のやつめ肉ばかりとって……というか、龍田が俺の皿に野菜ばかり乗っけてくるのも……」

提督「まあ楽しかったからいいんだけど。いいんだけどな!」

下2

―談話室―

白雪「ゆっくり……ゆっくり……」

バササ

磯波「……あ、あぁ、また崩れた……」

白雪「なかなか難しいのね……」

提督「何やっているんだ?」

磯波「提督、その、トランプタワーです」

白雪「ここに綺麗に作ってあったんですが、崩してしまって……」

提督「へー、何段のだ?」

白雪「えっと、五十七枚だから……六段です」

提督「そりゃけっこうなもので……」

磯波「でも、私たちでは三段も組み立てられなくて……」

提督「まあ、トランプタワーは意外と難しいからな。六段で安定となると綺麗に組み立てなければならないしな」

白雪「うぅ、どうしましょう……」

提督「おいおい、俺が来たんだ。六段くらい楽勝に組み立ててやろう」

磯波「そんな、迷惑かけられませんよ!」

白雪「そ、そうです。崩したのは私たちなんですから」

提督「気にしなくてもいいんだがな。うーん、それならアドバイスだけにしよう」

磯波「アドバイスだなんて……」

提督「気にするな。テレビを見るついでだし、目的の番組以外は暇だしな」

白雪「えっと……では、お願いします!」

提督「まずは土台だ。これが駄目だと六段は厳しい」

白雪「机の上で作ってましたけど……」

提督「少し湿らせておくと摩擦ができていい感じになる」

磯波「組み立て方のコツはありますか?」

提督「トランプの足と頭の位置はそろえる。あと角度もなるべく同じように。高くなってくると前後のずれも大きくなるからそこにも気を付けるかな」

磯波「なるほど……さすが提督ですね」

提督「別にさすがと言われるほどのアドバイスではないんだが」

白雪「でも、これで一歩前進できそうです」

磯波「ではさっそく…………次は、二段目……」

白雪「き、気を付けて」

バサァ

磯波「……! や、やっぱり難しい……」

提督(そもそも緊張かなんかで腕がプルプルしているしな。まずは平常心を鍛えるところからかもしれん)

―執務室―

提督「三十回くらい失敗したのでさすがに手伝ってあげた」

提督「二人は不器用じゃないんだが、プレッシャーに弱いな。そう考えると、意外とトランプタワーは訓練になるか?」

下2

―母港―

提督「花火だ花火だ!」

暁「まず打ち上げからよね!」

響「いや、まずは手持ちの吹き出しからやるべきじゃないかな」

雷「火と水の準備はできたわ!」

電「花火を種類ごとに並べておいたのです」

提督「……みんなノリいいな!」

暁「べ、別に! 楽しみにしているわけじゃないんだから!」

雷「え? 数が少ないからって、追加で買ってきたのは暁じゃなかった?」

暁「な、なんで知ってるのよ!」

響「……」フイッ

暁「響ぃ!」

提督「テンション上がってるなぁ。電は?」

電「なんです?」シャバー

提督「もうやってる!」

響「さてと、何からしようかな」

提督「電と同じのでいいんじゃないか?」

響「同じ色の花火じゃないほうがいいよね?」

提督「言われてみればそうか。じゃあ、俺はすすきかな」

雷「スパークにするわ」

提督「名前の通りだな」

雷「そうなの? ……あっ、ほ、本当」

響「私はそういうのがないから……手筒、かな」

暁「……」

提督「暁は絵付きのやつだろ」

暁「しょ、しょうがないわね。それしかないからね!」

提督(うれしそうにしてる……)

~~~~~~~~

提督「それじゃ、打ち上げるぞ!」

電「十個同時とは、ずいぶん豪快なのです」

響「暁が買いすぎたからね」

暁「わ、私ひとりじゃなかったじゃない!」

雷「打ち上げ花火は司令官もいっぱい用意していたのよね」

提督「着火!」

ヒュー パン パン

暁「? これだけかしら?」

提督「いや、安全性のために最初は弱めのものも多いからな。そろそろ本格的に来るぞ」

暁「……! なな、なんかすごいんだけど!」

響「華やかには華やかなんだけど……」

雷「むしろ、いろいろ混ざって大変なことになってないかしら?」

電「綺麗というか、混沌としているのです」

提督「ははは、まあこういうのもいいじゃないか。まだまだあるわけだからな」

暁「次は暁が準備するわ!」

響「いいね。私もするよ」

雷「じゃあ、私がつける番かしら」

電「電も手伝うのです!」

提督(こうしてみると、本当に子供がはしゃいでいるみたいだな)

―執務室―

提督「……セットを買いすぎて最後には大量の線香花火が……」

提督「好きとはいえいくらなんでも余り過ぎたな。九個同時に持つ日が来るとは思わなかった」

下2

―デパート―

提督「今日は何を買いに来たんだ?」

鈴谷「ウィンドウショッピングだけど」

提督「帰る」

熊野「提督らしくありませんわよ」

鈴谷「こういうの提督も好きじゃなかった?」

提督「お前らのウィンドウショッピングってなんかやりずらいんだよ」

鈴谷「そう?」

熊野「さて?」

提督「……わかった。付き合おう」

~~~~~~~~

熊野「こっちの服もなかなかですわね」

鈴谷「ねー。あ、こっちとかもいいんじゃない?」

熊野「あら、可愛いですわ」

鈴谷「こっちのほうも!」

提督「……」

鈴谷「どうかした?}

提督「商品を眺めるのは良い。服を見るのだって好きだ。だかお前たち二人で服を見るとギャルトークをする!」

熊野「狭量ですわね」

提督「いやいや、荷物持ちでもなく放置されているんだからしょうがないだろう」

鈴谷「じゃあ試着までしたら提督も喜ぶってコト?」

提督「……だな!」

熊野「この場合は現金というべきなのですかね」

提督「さあて、何を着る!」

鈴谷「うーん、提督はどんなのが好き?」

提督「俺? どんなのでも鈴谷なら似合うと思うが、強いて言うならばさっき鈴谷が手にしていた服かな」

鈴谷「へー、提督はこういう服が好きなんだ」

提督「強いて言うなら、だ」

鈴谷「じゃ、着てくるね!」

提督「はいはい」

熊野「……わ、わたくしも選んでくださいません?」

提督「熊野も? それはいいんだが、熊野の場合自分で選んだほうがセンスいいんじゃないか?」

熊野「暇だからいやだといったのは提督のほうですわよ」

提督「そうだが……んじゃ、熊野はその手に持っているのがいいと思うぞ」

熊野「適当ですわね」

提督「お前のセンスのほうがいいって言っただろ!」

―執務室―

提督「長くなったりするのはいいんだけど、蚊帳の外になるのはちょっとな」

提督「あの二人は普通にセンスもいいから口出しできないのももどかしい」

下2

―工廠―

夕張「プロペラを増やしてみる、ですか?」

提督「うむ」

夕張「……意味あるんでしょうか」

提督「わからんからつけてみるのだ!」

夕張「まあいいですけど。それくらいならそんなにかかりませんし」

提督「できればかっこいいので頼むぞ!」

夕張「無理です」

提督「ええ」

―母港―

夕張「できましたよ提督!」

提督「おお! ……なんかダサくない?」

夕張「まあプロペラ増やしただけですからね」

提督「うーむ、まあそんなもんか」

夕張「じゃあ早速飛ばしてみますか?」

提督「おう! じゃあ赤城頼んだぞ」

赤城「はい。それでは発艦いたします」

提督「さて、どんなゼロ戦が出来上がっているのか……」

~~~~~~~~

提督「変わらんな」

夕張「そうですねー」

提督「プロペラ増やしても速度アップとかするわけじゃないんだな」

夕張「エンジンの換装したわけでもないですし、速度事態に変化はないですよ」

提督「でも、なんか安定しているように見えるな」

夕張「馬力を吸収する効果がありますしね。扱いは上昇したのではないですか」

提督「……あんまり意味なくない?」

夕張「まあ、そうかもしれませんね」

提督「……あ、じゃあジェットエンジン乗っけてみるか」

夕張「どれだけ改造したいんですか!?」

―執務室―

提督「機体の改造はなかなか面白いんだが、効果がいまいちなんだよな」

提督「まそう簡単にできたら妖精さんの出る幕はないか」

下2

―母港―

提督「やっぱり夏といえばスイカ! スイカといえばスイカ割り!」

白露「海じゃないけどね!」

提督「それは言わない約束だ!」

時雨「近くに海があるという意味では間違ってはないんだけどね」

村雨「でも、なんとなく風情がないわよね」

夕立「スイカがもったいないっぽい」

提督「一応割っても食べられるようにシートは敷くぞ。それに、そもそもあんまり甘くないやつだし」

夕立「そうなの?」

提督「おう。数は用意してあるから一つ切ってみるといい」

海風「では、海風がやりますね」

~~~~~~~~

江風「確かにあんまりおいしくないな……」

涼風「これがスイカ割用のスイカってやつか」

提督「納得したのなら早速やるか。やりたいやつは……」

五月雨「あ、私やってみたいです!」

提督「面白そうだからいいぞ」

五月雨「ありがとうございます!」

時雨(多分司令官の面白そうはドジに対していっているんだろうね……)

春雨「では、目隠しして回しますね」

五月雨「どんどんやってください!」

提督「別方向に歩くな。間違いない」

涼風「こけて失敗するかもよ?」

白露「棒がすっぽ抜けるハプニングとか!」

村雨「とりあえず、当たる気がしないということは伝わったわ」

五月雨「むー、見ていてください! 当てちゃいますから!」

海風「いきなり違う方向に歩いているけれど……」

五月雨「えっ?」

~~~~~~~~

夕立「シャクシャク……それなりっぽい」

提督「まさかこけて棒がすっぽ抜けて飛んで行った棒がきれいにヒットするとはな」

春雨「ちょっとびっくりしちゃいました」

時雨「ああいうこともあるんだね」

提督「んで次は、さっきから会話には入れていない山風な」

山風「え……か、構わないでください……」

白露「そういうわずにね! ほら、目隠し目隠し」

江風「そして回転!」

山風「あああ~……」

提督「じゃあはじめ」

白露「……あっ、そのまままっすぐ!」

夕立「右っぽい!」

涼風「左だってば!」

山風「え? え? ……うぅ、も、もう適当に……!」テクテク シュッ

パカッ

提督「すげぇ!」

村雨「まるで場所が分かっているかのよう……」

時雨「勘とはいえ、称賛できる動きだったね」

山風「て、適当だったし……」

春雨「綺麗に割れた分はみなさんに配りますね」

夕立「次、次は夕立がするっぽい!」

提督「よーし待ってろ。すぐに用意をするからな」

―執務室―

提督「思いのほか盛り上がった」

提督「スイカ自体の味が微妙だったのが悔やまれる」

下2

―鳳翔の店―

鳳翔「お手伝いですか?」

提督「サツマイモが余りすぎてな。芋パーティにしようかと思って」

鳳翔「そういえば、前に結構な量をもらいましたね。もしかして、あれ以上ですか?」

提督「うむ」

鳳翔「それは大変ですね……わかりました。微力ながらお手伝いします」

提督「鳳翔がいれば百人力だ。しかし、実は料理すら決めていないありさまでな」

鳳翔「さつまいもですよね。色々なものに使えますし、確かに悩みますね」

提督「大学芋やコロッケ、天ぷらあたりは王道だな」

鳳翔「お味噌汁やサラダ、煮物にも使えますね」

提督「そう考えるとさつまいもって万能だな」

鳳翔「パーティという形にするのであれば、それぞれいろいろなものを作ってもいいと思います」

提督「うーん、そうするか。作りながら考えてもいいわけだしな」

鳳翔「では、こちらは準備をしておきますね」

提督「おう。さて、さつまいもを運んでくるか」

鳳翔「そういえば、量を聞いていませんでしたね。どれくらいあるんですか?」

提督「ダンボール十個分」

鳳翔「……はい?」


~~~~~~~~

提督「机いっぱいに広がる芋料理の数々。さすがだな」

鳳翔「でも、まだあるんですよね」

提督「まあな」

鳳翔「……始まるとしばらく時間が取れないでしょうし、先にいただいておきましょうか」

提督「だな。しかし、これだけ色々あると目移りするな」

鳳翔「さつまいもが主役になるようなものばかりですけどね」

提督「できたものは全然違うだろう。よし、ならば鳳翔の十八番ともいえる煮物だ!」

鳳翔「お味はいかがですか?」

提督「……鳳翔って、和食に関してはプロを超えている気さえする」

鳳翔「あ、ありがとうございます」

提督「やばい。手が止まらん。モグモグ……本当においしい!」

鳳翔「なくなっても次を作るので大丈夫ですよ」

提督「なら全部食べてやる! うめーーー!」

―執務室―

提督「やっぱ鳳翔を誘って間違いはなかった」

提督「というか、目に見えて俺の作った料理より鳳翔の作ったやつのほうが減っていた。さすがに素直に敬意を覚える」

下2

―母港―

利根「花火じゃ!」

提督「俺はこの前やったんだがな」

筑摩「すみません。それを聞いて姉さんがどうしてもしたいといったもので」

提督「なるほど。だが俺を呼ぶ必要はなかったんじゃないか」

筑摩「姉さん直々の指名ですよ」

提督「……えっ、今のが理由!?」

筑摩「これ以上ないほどわかりやすいと思いますが」

提督「俺にはわからないことだらけだ……」

利根「二人とも、そこで話してないで準備をするのじゃ!」

筑摩「はい。姉さん、火の扱いには気を付けてくださいね」

利根「心得ておる」

提督「……まあ、いいか。ちゃんとバケツも用意しろよ」

利根「うむ!」

筑摩「火をつけるのは提督がやってくださいね」

提督「まあ利根に任せるのは不安だしな……」

利根「む、それぐらいできるぞ!」

筑摩「では姉さん、花火をどうぞ」

利根「む?」

提督「ほいチャッカマン。あ、あっちの方に向けてな」

利根「うむ。……おお、綺麗だぞ筑摩!」

提督「チョロイな」

筑摩「可愛いですね」

~~~~~~~~

提督「これで全部か。なんか少なく感じるな」

利根「満足じゃ!」

筑摩「姉さんが満足と言っているのでちょうどよかったですね」

提督「本当に利根第一なんだな。というか、筑摩はずっと線香花火をしていたがよかったのか?」

筑摩「ええ。私、線香花火も好きですから」

提督「なるほど。利根、線香花火は好きか」

利根「嫌いではないぞ」

提督「納得」

筑摩「さて、片付けましょうか。姉さんは先に戻っていてもいいですよ」

利根「筑摩だけには任せないのじゃ。手伝うぞ」

筑摩「では姉さんはこちらのごみをお願いします。提督はバケツを持ってくださいね」

提督(明らかに労力に差があるんだよなぁ。別にいいんだが)

―執務室―

提督「なんやかんや楽しめたのなら一番だな」

提督「しかし、俺を呼んだ理由は結局何だったんだ。保護者枠か?」

下2

―デパート―

雷「あそこで急に話が変わったの、すごかったわ」

響「映画もなかなか良いものだね」

提督「さて、次はどこに行こうか」

電「……?」

提督「どうした電。忘れものか?」

電「いえ、暁ちゃんが見えないのです」

提督「うん? ……あれ、本当だ」

雷「迷子ってこと? 暁はおっちょこちょいね」

響「でもどうしようか。ここも結構広いから、当てずっぽうに動いて探せるかどうか……」

提督「暁の事だから、自分が迷子だと認めずに動き回りそうだしな」

電「想像できるのです」

~そのころ~

暁「あれ? 司令官たちが居ない……」

暁「……」

暁「まったく、皆して迷子なんてしょうがないわね! 可哀想だから暁が探してあげるわ!」

~~~~~~~~

提督「今まさに暁が余計な事をした気がする」

響「何となく伝わってきたよ」

雷「でも、どうするの? 何処ではぐれたのか分からないけれど」

提督「シアターからここまでで結構歩いたからな。エレベーターで降りる階層を間違えたとかだとなおさら予想がつかんし」

電「念の為映画館まで戻ってみるのはどうです? もしかしたら、万が一、天文学的な確率でいるかもしれないのです」

雷「言いたいことは分かるけど、なかなか言うわね……」

提督「多分無駄になるけど電頼んだ。待ち合わせは……そこのフードコートにしよう」

響「時間的に席が埋まりそうだけど」

雷「それなら私が待っているわ。もしかしたらここを通るかもしれないし」

提督「じゃあ、響と俺は合流できるようにそれぞれの階を周ろう。相手は移動しているだろうから、あまり意味はないかもしれないけど」

響「わかった」

提督「それじゃあ、暁捜索作戦開始だ!」

~~~~~~~~

暁「……」

提督「まさか普通に迷子センターに呼ばれるとはなぁ」

響「多分連れて行った人は子どもの扱いになれていたんだろうね」

暁「こ、子供じゃないし!」

提督「暁なんか典型的な背伸びしようとする子供だからなー。もしかしたら幼稚園の先生だったり」

暁「暁はそこまでお子様じゃないから!」

響「センターの人によると上機嫌の状態で連れて来たらしいよ」

提督「そりゃやっぱり扱いになれているんだろうな。それでも上機嫌で迷子センターは凄いが」

暁「うぐ……あ、あれは……」

響「連れてきた人に話を聞きたいところだね」

提督「むしろお礼がしたいぞ。暁捜索で一日が終わるかと思ってたし」

暁「……ぐすっ。別に、迷子になったわけじゃ……」

提督「!? そ、そうだな! 暁は迷子じゃないぞ!」

響「皆迷子だったからね! 気にすることはないよ!」

―執務室―

提督「迷子センターに暁は吹き出しそうな程あっていた」

提督「しかし、あれに呼ばれるのって案外恥ずかしいな……暁も子供にしては少し大きいしな」

↓2

―廊下―

提督「まさかどこも修理中とは……! ここになければ間違いなく俺の腹は……決壊……!」

ガチャ

提督「よし、空いている……!」

球磨「待つクマ」グッ

提督「何奴!」

球磨「悪いけど、ここは球磨の縄張りだクマ」

提督「トイレが縄張りぃ? つまらん冗談だな」

球磨「今から三十分だけの縄張りだクマ」

提督「三十分? ……まさか」

球磨「察しがいいクマね。球磨もやばいクマ」

提督「……なるほど、だが俺の尊厳がかかっているんだ」

球磨「提督の尊厳なんか元から木っ端微塵クマ。気にしなくても大丈夫だクマ」

提督「いうではないか。……あっ、あっちにUFOが!」

球磨「クマ!?」

提督「馬鹿め!」バッ

球磨「なんちゃってクマ!」ズザッ

提督「足払いだと……!!?」

提督(馬鹿なこの状態で尻餅をつこうものなら決壊は確実それならばこの場面をどう切り抜けるいや自分の身体能力を信じろ為せば成る信ずるものは救われる)

提督「どえええええい!!」クルッ

球磨「バック宙! さすが提督……しかし、その隙は致命的クマ!」

提督「閉めさせるかぁ!」ガシッ

球磨「ちっ、その手を放すクマ! 扉を閉めれば球磨の勝ちクマ!」グググ

提督「何が勝ちだ! 絶対に離さんぞ!」グググ

球磨「今ならほかのトイレに行けばいいクマ! ここに固執する必要は皆無クマ!」

提督「他を探しにいく余裕がないからに決まっているだろう! 球磨こそ他へいけ……!」

球磨「パワハラとセクハラクマ!」

提督「この状況においてそんなものはしらん!」

球磨「くっ……あっ、後ろに秘書官が!」

提督「馬鹿め、そんなことを言って俺に気取らせようなど――」

霞「なにしてんの」

提督「!?」

球磨「今クマ」バタン

提督「あ……あああああああああああああああ!!」バッ

パリーン

霞「なんでいきなり窓へ!?」

―執務室―

提督「……ほらあれだ、自然に戻った気がするよな。こう、野外って」

提督「……ちょっと今日は休もう」

下2

提督「特々の艦娘?」

あきつ丸「はいであります」

提督「特々っていうと高速輸送のために作られた輸送艦だっけか。あれの艦娘なぁ」

まるゆ「体調はどんな子だと思いますか?」

提督「まあ、援護系だから優しい子だというのは間違いないな」

あきつ丸「どちらかというと願望に聞こえるのであります」

まるゆ「まるゆもそう聞こえました」

提督「いやいや! 優しい子が来てほしいって思いがあってもいいだろ!」

まるゆ「そ、そうですね」

提督「そういうのを抜きにして、だ。おそらく艦娘になるとしたら九号だな」

あきつ丸「武勲艦でありますか」

提督「そうだな。いろいろな戦場を転々として終戦まで生き残ったという点を考えると外せないだろう」

まるゆ「そんなすごい子もいるんですね……」

あきつ丸「ならば、意外と厳しい子が来てもおかしくないのであります」

提督「う……まあそういわれればそうかもしれないがな。武勲艦といえばけっこうアレなやつも多いし」

まるゆ「? 誰のことですか?」

あきつ丸「なんとなくわかるのですが、本人には絶対に言わないほうがいいのであります」

提督「俺だって自分の命は惜しい。いうわけがないだろう」

まるゆ「でも、もしかすると間宮さんみたいな役割かもしれないんですね」

提督「輸送という観点から出番が取られるのは店やってる明石だな」

あきつ丸「そういえば工作艦なのにどうして売店をやっているでありますか?」

提督「……流れ的に?」

あきつ丸「適当でありますね」

提督「とにかく、もし店主にとってかわるなら、その速度と力強さを踏まえて押し売り待ったなしだな」

まるゆ「押し売りですか……」

あきつ丸「可能性が低いとはいえ、さすがに言い過ぎではありませんか?」

提督「いないからこそ自由に言えるのだよ。ははは」

まるゆ「……? あれ、隊長の襟のところに何かついてますよ」

提督「ん? ……盗聴器だ! 青葉ぁ!」ダッ

まるゆ「あ、隊長行っちゃった」

あきつ丸「そそっかしいのであります」

~~~~~~~~

提督「どうせ端っこに小さくだろうが、盗聴された内容を書かれるのが気に食わん」

提督「というか、絶対碌な書き方してない。間違いない」

下2

―プール―

提督「はいきましたプール」

大潮「早速泳ぎましょう!」

霰「ん……」

朝潮「こら、ちゃんと準備体操をしてからよ」

大潮「えー」

提督「……」

荒潮「今日は大変だったわね~」

提督「まあ、周囲をぐるぐる周られながらプールとんちゃを言われまくったからな」

満潮「私は別にいなくてもいいって言ったんだから」

荒潮「でも連れていくこと自体に反対はしなかったわよね?」

満潮「反対するのが面倒だっただけだから!」

大潮「準備運動終わった! 大潮、抜錨しまーす!」

霰「霰、抜錨……」

バシャーン

朝潮「抜錨じゃないし、飛び込まないように!」

朝雲「そういえば、珍しいわよね。こういうのに真っ先に飛び込むのが司令だと思っていたのに」

提督「もう反論はしないぞ」

山雲「いくら司令さんでも~、マナーが悪いことはしないと思うの~」

提督「いや、単純に自分から誘ったやつじゃないから乗り切れてなかっただけだが……」

朝雲「わざわざフォローを自分でつぶしていくのね」

満潮「馬鹿ね」

提督「事実を語っただけだ!」

霞「で、行かないの」

提督「いや、準備体操をしてからだろ」

霞「いつも妙なところで律儀ね」

~~~~~~~~

大潮「流れるプール楽しいー!」

霰「楽しい……!」

朝潮「他の人の迷惑にならないように気を付けてね」

提督「朝潮朝潮」

朝潮「はい、何でしょうか」

提督「くらえ水鉄砲!」

朝潮「うぷっ。えっ、えっ?」

荒潮「あ、面白そう。私もやってみるわ~」

朝潮「なな、なんですか!?」

山雲「朝雲~、泳ぎましょう~?」

朝雲「ちょっと待って。霞は泳がないの?」

霞「……今日はゆっくりしておくわ」

朝雲「いつも大変だものね」

―執務室―

提督「準備が足りなかった。どうせならイルカの浮き輪とか持っていきたかった」

提督「しかし、保護者枠もいるし俺まで行く必要はなかったのでは……?」

下2

―サウナ―

提督「やっぱ、我慢勝負といえばここだな」

若葉「同感だ」

提督「どうしてサウナがあるのかという疑問はないんだな」

若葉「あったのだろう?」

提督「うむ」

若葉「ならいい。それに、こういうのは悪くない」

提督「さすが若葉だ。俺のみこんだ通り」

若葉「そう褒めるな。当然ではないか」

提督「別にほめたわけではないのだが……」

~~~~~~~~

提督「……」

若葉「……」

提督「……こうして黙っていても仕方がないな。しりとりでもしよう」

若葉「うん、それも悪くない。そちらのほうが相手の様子も観察できる」

提督「ルールを決めようか。サウナから出るのはもちろん、しりとりのルールに則って『ん』を言っても負けだ」

若葉「ダメだ。もう一つルールを付けよう。次の言葉を言うまでに十秒過ぎても負けにしたい」

提督「いいぞ。つまり、思考に靄がかかっても負けだな」

若葉「なかなか察しがいい。どちらの立ち位置でも無理して倒れても困るだろうし」

提督「仕方がないしな。だが、そもそも若葉はそろそろつらいんじゃないのか?」

若葉「簡単に弱音は吐かない。それに、この程度で根を上げるようじゃ提督に挑む価値もないだろう」

提督「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。そこまで俺のことを買ってくれているとは」

若葉「反対に、提督も素直に受けてくれたな」

提督「何もすることなくて暇だったしな。まあ、単純に面白そうでもあった」

若葉「大概正直じゃないな、提督も」

~~~~~~~~

提督「猛牛……」

若葉「浮き輪……」

提督「わ……若葉……」

若葉「ば……って、名前はアリなのか……?」

提督「関係ないだろう……新芽の若葉のほうだ……」

若葉「だが……提督はさっき吹雪で……止めただろう……」

提督「うん? そうだっけ……」

若葉「結構きつくなってきたんだな……?」

提督「なに、これしき……問題ない……」

若葉「いいんだな……意地を張り続けると……大変なことになるぞ……」

提督「造作もない……たとえ、大変なことになってもな……」

若葉「なるほど……それほど勝利をほしがっているわけか……こちらも、本気で行くとしよう……」

―執務室―

提督「……気づけばベッドの上だった」

提督「聞いた話によると、ブツブツと二人で話しながら意識が途切れかけていたらしい。恐ろしいことだ」

下2

―提督私室―

提督「人は時に堕落の一時を感じたくなることがある」

マックス「いつもでは……?」

レーベ「昨日も遊んでたって聞いたけど」

提督「……人は時に」
マックス「もういいから」

提督「つまり、どこの国でもやってそうなダラダラをやってみたいと思う」

レーベ「どういうこと?」

提督「ふっふっふ、まずはこれを見るがいい」

マックス「ピザ? ですか」

レーベ「わ、おいしそー」

提督「次にこれだ」

マックス「コーラ」

提督「わかっただろう」

マックス「……ひとりでどうぞ」

提督「ほうほう、そういう反応をするか。レーベはどうだ?」

レーベ「だらだらっていうのはよくわからないけど、食べてみたいな」

マックス「レーベ……はぁ、まあいいわ」

提督「どうやら決まったようだな」

マックス「一人にはさせておけないからよ」

レーベ「何か危険なことでもあるの?」

マックス「あえて言うのであればこの人の存在ね」

提督「おいおい、こんな無害な存在に対して何を言う」

マックス「最初に堕落がどうとか言ってた人は誰だったかしら」

提督「ひゅーひゅー」

レーベ「口笛吹けてないよ」

~~~~~~~~

提督「クーラーの効いた部屋でピザを囲んでゲームをしながらゴロゴロ……」

マックス「これが堕落……!」

レーベ「提督、コーラなくなったよ」

提督「はい次。ついでにポテチもどうぞ」

レーベ「わーい」

マックス「……だ、ダメ。これはとても危険な香りがする」

レーベ「えー、どうして?」

マックス「日本人が堕落する理由が少しわかった気がする……とにかく、今日は戻るわよ」

レーベ「しょうがない……提督、僕たちは部屋に戻るね」

提督「ふっふっふ、この味を再び欲しくなったらいつでも来るといい」

マックス「もう二度ときません……!」

―執務室―

提督「普段まじめな奴ほど堕落しやすい気がする。享楽主義者の方がこういうのに耐性あるのではないか」

提督「やはりたまのガス抜きは大切かもしれんな」

下2

―温泉―

提督「やっぱ温泉だよなぁ」

五十鈴「やっぱりというか、混浴なのね」

由良「提督さんが温泉に行くときは、いつもここらしいからね」

阿武隈「え、そうなの?」

由良「聞いた話だけど、ね」

阿武隈(前に連れてきてもらったとき、普通の温泉だったんだけど……)

名取「み、みんなは恥ずかしくないの……?」

長良「ちゃんと隠してるからそんなに気にすることはないし?」

鬼怒「相手は提督だからね! なんなら隠さなくてもいいよ!」

提督「その手のギャグは空気を寒くするだけだからな。興味ないから隠しとけ」

鬼怒「な、なんか女性としてのプライドに傷がついたんだけど……」

五十鈴「自業自得じゃない」

~~~~~~~~

由良「提督さん、由良が体を洗ってあげますね……ね?」

提督「んー、なら頼む」

長良「由良積極的だね」

由良「感謝の気持ちを込めてるだけだから」

五十鈴「感謝することなんてないじゃない」

名取「さすがにそれは……」

提督「温泉に連れてきただろう」

五十鈴「う、まあ……」

長良「やっぱり、感謝することあったね」

鬼怒「なら鬼怒は足を洗うよ!」

提督「邪魔になるからいらん」

鬼怒「さっきから鬼怒にだけ冷たくない!?」

阿武隈(もしかして緊張しているのはあたしだけ!?)

鬼怒「しょうがないから一番風呂に入るから!」

五十鈴「先に体を洗ってから!」

鬼怒「しらなーい!」

五十鈴「子供じゃないんだから……」

長良「でも確かにこの温泉気持ちよさそうだよ」

提督「疲労回復美容健康……まあいろいろ効果があるらしいぞ」

阿武隈「それって前も言いませんでしたか?」

提督「前? ……お前と一緒に入った記憶自体がないんだが」

阿武隈「……! か、勘違いでした!」

長良「ていうか、温泉にバスタオルつけちゃだめだよ」

鬼怒「え、でもこれとっちゃうとすっぽんぽんだよ」

五十鈴「すっぽんぽんって、ほかに言い方が……え?」

名取「あの……中に水着、着ていないの……?」

鬼怒「え……え!!??」

提督「あ、ばか急に立ち上がるな」

由良「見ないの」グイッ

提督「今のは不可抗力……首! そんなに曲がらない!」

鬼怒「ききき、着替えてくる!」

長良「あーあ。でも、水着持ってるのかな」

五十鈴「実は鬼怒辺りが忘れそうだと思って、一つ適当に入れておいたわ」

名取「先に言っておけばよかったね……」

提督「ゆ、由良、そろそろ離してくれ……」

由良「はい」

提督「ふぅ、死ぬかと思った」

阿武隈「…………」

阿武隈(あたしもやっちゃってるううううううううう!!)

―執務室―

提督「やっぱ温泉って良いな。複数人で行くのもそれはそれで違った趣がある」

提督「そういえば、なんか阿武隈だけ必死にバスタオルをとろうとしなかったな。みんな途中から一切突っ込まなくなったが」

下2

―サーモン海域―

扶桑「そろそろ接敵する頃合いね。みんな、気を付けていきましょう」

山城「姉さまと一緒なら、どんな敵も怖くはないですね!」

神通「戦闘準備は完了しています。いつでも行けます」

敷波「こちらも、できる限りやらせてもらいます」

呂500「ろーちゃんも頑張っちゃうんだから!」

長波「一応提督からの指示は偵察だから、それも忘れないようにしないと」

扶桑「そうね。もし私たちで対処ができなさそうな相手なら、すぐに撤退しましょう」


提督「……なんて、敵影があったのは本当だが相手は少ないらしいから、このメンバーでも問題はないだろう」

提督(そう、俺がこうして都合よくあった遠くの岩からこっそり覗いているのは、奴らがどうやって戦うか気になるからだ)

提督「一見しただけだと艦装なしってやばくね。長波は一応つけてはいるが……」


長波「……妙な視線を感じるな」

神通「! 敵影あり!」

扶桑「いよいよ戦闘ね。みんな、ひとまず一当てしてから進退を決めましょう」

敷波「わかりました」

神通「先頭は任せてください!」


提督「ん? おお、どこからか魚雷が……って、浴衣の下にしっかりと兵装つけてる! なるほど、つまり扶桑と山城もそのパターンか」


扶桑「山城、私たちも続くわ!」

山城「はい姉さま!」


提督「しかし、戦艦の装備を浴衣の中に隠せるのか? ……あっ、なんかうちわで叩いてる! それダメージないだろ!?」


敷波「敵は怯んでいるみたい」

長波「おうよ、このタイミングだな!」


提督「敷波はあの巾着の中に武器を仕込んであるとか……あっ、そのまま殴った! 長波もなぜか炒飯を投げつけたんだけど! お前武器あるだろ!」


呂500「ろーちゃんも続きますよ!」


提督「ろーちゃんはなぜかアイスを食べさせたぞ! もはや攻撃ではない!」

提督(こ、こいつら、この格好の時にどうやって戦果を挙げていたんだ……? いや、パンチで砲弾をはじくやつもいるし、これでも効いているのかもしれない)

提督「そういえば相手を見ていなかったな。駆逐艦とかだから舐めプをしていた可能性が」


レ級「……」

ヲ級「……」


提督(あかん)


扶桑「みんな撤退よ!」

山城「わかりました!」

神通(……? 相手の動きが一切ないのが不思議ですね。一発くらいは貰うとふんでいたのですが)


~そのころ~

レ級「びっくりしたねー」

ヲ級「まさか、バカンスの帰りに会うとは思いませんでしたね。こっちも手ぶらだったので助かりました……」

レ級「アイス美味しかったー」

ヲ級「あ、はい。よかったですね」

―執務室―

提督「聞いてみるとドッキリだったそうだ。普段はちゃんと装備はつけていると」

提督「まあそうだよな。神通まで加担するとは思わなかったけど。いやー、驚いた」

下2

―縁側―

提督「やっぱり日本人なら夕涼みだな!」

妙高「日本人特有というものではないと思いますが、良いものですよね」

羽黒「私も好きです……」

足柄「そう? もっとこう、ガッと動く方が良くないかしら」

提督「暑いから涼むのに暑くしてどうするんだ」

羽黒「夜もなかなか涼しい日はなかったですからね」

那智「こうした日は酒もどうだ」

提督「それはいいな。俺もたまには飲むぞ」

那智「たまに……?」

提督「飲むやつよりは飲んではいないだろ!」

足柄「うちの鎮守府には越えられないハードルがあるものね」

妙高「風鈴とかつけませんか?」

提督「そういえば忘れてたな。ちょっと今からつけるか」

足柄「提灯のやつとかどうかしら」

羽黒「あ、私置ける奴を持っていますよ」

那智「普通にガラスのでいいのではないか」

提督「いや自作のだ! さあ妙高、どれがいいと思う!」

妙高「私ですか? ……全部つけてみてはどうでしょうか」

提督「なるほど、一番いいと思ったやつにするんだな!」

足柄「さすが妙高姉さんね」

那智「目の付け所が違うな」

羽黒(風鈴って何個もつけるものじゃないと思うけど……)

~~~~~~~~

提督「あー、最近暑いからこんくらいが一番だ」

那智「そういえばうちわはあるか。忘れてしまったのだが」

提督「あるぞ。この前デパートで配られていたやつだが」

那智「丸いタイプのだな」

足柄「それってあんまり涼しくないのよね」

提督「文句が多いな。じゃあ、キャラクター型のはどうだ」

那智「これは扇ぎにくいだろう」

足柄「とがってる場所が多すぎて、扇ぐとすぐに折れちゃいそうね」

提督「じゃあ扇子」

妙高「それ、なかなか良いものですね」

提督「わかる? 実はめちゃ高かったんだよ」

那智「いや……普通のはないのか?」

提督「ない! こういう場合はだいたい羽黒が多めに用意してくれているだろう。な、羽黒」

羽黒「え、あ、はい。どうぞ」

足柄「初めから羽黒に聞けばよかったわね」

那智「まったくだ」

―執務室―

提督「冷房ばっかりもよくないから、たまにはこうして涼むのも悪くない」

提督「冷房が使えなかった時なんて大変なことになってたしな……」

下2

―倉庫―

清霜「これが武蔵さんが言っていたやつなんですか?」

武蔵「ああ。これを使った提督は金剛型四姉妹をいともたやすく倒してしまったらしい」

清霜「すごい……」

武蔵「つまり、これを使えば超弩級戦艦並みの力は手に入るといっても過言ではない」

清霜「これで、私も戦艦に……」

武蔵「どうだ、着てみるか」

清霜「ここまで来たんだから、やります!」

武蔵「それでこそだ」

清霜「すごく大きい……けど、清霜は戦艦になるから!」

提督「声がすると思ったら、お前ら何やっているんだ」

武蔵「見つかってしまったか。だが、もう遅い」

提督「遅い? ……げっ、それはまさか、某大統領の……!」

武蔵「こんな良いものを隠すとは、人が悪いではないか」

提督「必要ないからで隠したわけではない! というか、なぜ武蔵が……」

武蔵「噂が流れているだろう」

提督「ああ、青葉新聞にも載ったしな」

武蔵「もし戦うとなると、血が滾るだろう」

提督「滾るか!」

武蔵「そうか? では清霜、手始めに提督に私と同じ気持ちを味合わせてみるといい」

提督「その展開はおかしくないか!?」

清霜「ええ! じゃあ、提督……いきます!」

提督「なんで躊躇なくRG-RHを向けてるんだ!? いや、それはマジで死――」

ドーン

武蔵「ふはははは!! すさまじいパワーではないか!」

清霜「え、ええ……」

武蔵「どうした清霜。といっても、何を考えているかはわかるがな」

清霜「えっ?」

武蔵「借り物の力だ。いくら戦艦になりたいという夢があったとしても、空しいだろう」

清霜「武蔵さんはわかっているんですね」

武蔵「武人であれば当然の心境だ。ならば、こんなものに頼らず精進を続けるんだな」

清霜「はい!」


提督「って、心配もしないのか!!」

―執務室―

提督「死なないようにできていて助かったぞ……なんであれで死なないのか逆に怖いが」

提督「倉庫も一緒に爆散した気がするが、明石が一晩で直してくれるだろう」

下2

―演習場―

提督「面白い武器を手に入れたぞ!」

清霜「面白い武器?」

提督「そうだ、ガトリング、リヴォルヴァーカノン、ガスト式の機関砲だ!」

清霜「わ、なにこれおっきい!」

神風「リボルバーカノンだけは私も知らないわ」

不知火「確かリボルバーカノンと呼ばれるものは第二次の末期に登場しましたから」

神風「なるほどね。それは知らないわけね」

清霜「でも、これどうしたの?」

提督「大本営に功績が認められたから、その褒美にもらったんだ」

不知火「こんな大型の武器をですか。いえ、訓練用というならちょうどいいのかもしれません」

提督「訓練にならんぞ」

不知火「なぜですか?」

提督「なぜって、現代兵器は深海凄艦には効かないだろう」

不知火「……なぜ褒美にこんなものをもらったんですか」

神風「わかってて受け取ったのなら大馬鹿ね」

提督「わかってないなぁ……ロマンだろ?」

清霜「ロマン……!」

神風「訂正。これ以上ないほどの大馬鹿者ね」

不知火「倉庫の肥やしですね」

提督「くぅ、演習場でたまたま会ったから試し打ちに付き合ってもらおうと思ったのに。ふん、お前らには触らせるか」

清霜「清霜は?」

提督「もちろん撃っていいぞ」

清霜「やったあ!」

神風「はぁ、私たちは戻るわよ。……不知火?」

不知火「……つ、付き合うくらいはいいかもしれません」

神風「……」

~~~~~~~~

提督「じゃあ同時に発射な。そうしたほうが違いも分かりやすいだろう」

清霜「ドキドキしてきたわ」

不知火「気分が高揚します」

神風「なんで私まで……」

提督「だって俺だと反動で吹っ飛ぶだろ」

神風「嘘ばっかり」

清霜「もういい?」

提督「おう、いけ」

清霜「じゃあ、行くから!」

ドドドドドドドドド
バババババババ

提督「……本当にガトリングを抱えて撃つ奴を見ることができるなんてな」

神風「言いたいことはそれ!?」

不知火「でも、素晴らしいですね。これが実戦に使えないというのが残念です」

清霜「だね、これが使えたらすごそうなのに」

提督「機銃自体はあるけど、これらとは別物だしな」

清霜「これが使えたら戦艦の人達にも後れを取らないと思うの」

不知火「本格的に制作を打診してもいいのでは」

提督「簡単に言うなぁ。基本的に妖精さんの気まぐれなのに。夕張達に頼めばがわだけなら何とかなるかもしれないが」

神風「でも、これを敵も使ってきたりしたらとんでもない脅威よね」

提督「……やっぱ作るのやめよう。実際に作ったら敵も使ってきそうな気がする」

―執務室―

提督「なんかその後弾切れするまで撃ち続けてたが……」

提督「予備弾は貰ってないからマジでただの倉庫の置物になってしまった。使えない機関砲の弾をもらうわけにはいかんしな……」

下2

―暁型の部屋―

ガングート「同志」

響「響だよ。ガングートさんならヴェールヌイの方がなじみがあるかもしれないけど」

ガングート「この漫画の続きはどこだ」

響「それはそこの棚の中だよ。でも電の漫画だから、持ち出すのは聞いてからじゃないと」

ガングート「続きが気になるのだ」

響「それならここで読んでいけばいいよ」

ガングート「なるほど。ではそうするとしよう」

提督「ババーン! 響が暇していると思ってきてやったぞってガングート!」

ガングート「なんだ貴様。私はこれを見るので忙しい」

提督「これって……ああ、鬱エンドのマンガじゃないか。エグいもの見てるな」

ガングート「ネタバレを目の前でするとは、そんなに貴様は河原で石を積み上げたいか」

提督「言い回しが遠回しになったな!」

響「ガングートさんは日本の文化についても勉強しているからね」

提督「ガングートが? ほほう、それはそれは」

ガングート「ただの人間は心臓に鉛弾を打ち込まれるとどうなるんだろうな。試してもいいか」

提督「よく日本語が勉強できていると思うぞ! うん、素直にすごいと思うぞ!」

ガングート「ふん」

響「そういえば、司令官は何か用事でもあったのかな」

提督「いや、ほかの三人が遠征やらなんやらでいないだろ。俺がその寂しさを埋めてやろうと思って」

響「司令官じゃ無理だよ」

提督「率直的なダメージ!」

ガングート「こいつのことはどうでもいいが、続きの巻はあるのか」

響「同じ場所にあると思うけど……あれ、ないね。どこかに置き忘れたのかな」

ガングート「くっ、続きが気になるではないか!」

提督「ガングート、俺、俺」

ガングート「なんだ、サンドバッグアピールか」

提督「違うわ! 漫画のネタバレを知っているということは、続きも持っているってことだ!」

ガングート「なん、だと……! くっ、貴様なんぞに絶対屈しはせん!」

提督「その強がりがいつまで続くかな」

響「……」

響(机の中にあったのを思い出したけど、面白そうだからいいところになるまで黙っておこう)

―執務室―

提督「あともうちょっとってところに響が続きを出してきやがった……」

提督「煽りすぎたおかげで片腕を持っていかれるところだったぞ。まったく」

下2

―睦月型の部屋―

提督「文月のお祝いに来たぜ!」

睦月「えっ?」

提督「ほら、改二の」

睦月「……今?」

提督「なんか睦月が冷たい!」

睦月「提督だって、祝うのが遅いにゃしぃ……」

提督「それはあれだ。プレゼントの準備に時間が掛かってな」

如月「あら、もしかして手作り?」

提督「うむ。みろ、この陶器を!」

長月「む、意外とよく出来ているじゃないか」

望月「鑑定団に出したら何円くらいって出るだろ……」

水無月「こういうの疎いからよく分からないー」

皐月「そもそも文月のプレゼントにしては渋すぎるって思うんだけど」

提督「やっぱり?」

皐月「わかっててやったんだ……」

提督「いやいや! 本当は陶器じゃなくてアクセサリー作ろうとしたんだけど、そういうのは止めた方が身の為って言われて」

如月「妥当、かしらねえ」

三日月「確かに自作は……」

提督「なぜ駄目だしされるのか分からん」

如月「司令官は鈍感ね~」

提督「分かる方が珍しいに決まっているだろう!」

菊月「同感だ」

三日月「その、欲しいという人に全員作るのなら良いと思いますけど……」

提督「……皿ならな!」

望月(作るの楽だからかな……)

文月「司令官、あたしを祝ってくれるってほんとぉ?」

提督「もちろん本当だとも! ほら、ケーキも買って来たぞ」

文月「わぁ、ありがとぉ、司令官。陶器より嬉しいな~」

提督「お、おう……直接そう言われるとチョイスを間違えた気しかしなくなるぞ」

卯月「うーちゃん達も食べていいぴょん?」

弥生「卯月……」

卯月「祝う気持ちなら負けてないぴょん! でも、それとこれとは別ー」

提督「もちろん。全員にいきわたるように用意してあるに決まっているだろう」

水無月「本当! 嬉しいなぁ」

卯月「さすが司令官ぴょん! ふともも!」

弥生「それをいうなら……ふとっぱら……」

如月「じゃあ、切り分けるわね」

睦月「提督、今日は何だか優しいですねー。何か悪巧みでもあるのかにゃ?」

提督「純粋に喜んでもらおうと思っただけなんだが! でもみんな喜んでくれているようだし、買ってきたかいがあったという物だ」

文月「あのね、司令官。あたしも改二になって、もーっと頑張るからね~、えへへ」

提督「ああ、期待しているぞ。……あ、陶器はすまんな」

文月「ううん~。あたしは司令官のプレゼントなら、なんでも嬉しいから~」

提督(でもやっぱり文月に不釣り合いなものにしたのは本当に悪いと思っている)

―執務室―

提督「なんで俺は陶器を作ろうと思ったのか。自分でよくわからない」

提督「もしかしたら予想が当たってテンションが上がってしまったせいかもしれない」

↓2

―母港―

ゴー ゴー

呂500「嵐、嵐ですって、提督!」

提督「だな、こんな日は風に身を任せるに限る」

呂500「ニホンの人は、こんな嵐の日でも外に出かけているんですよね!」

提督「ああ。社畜に休みはない」

呂500「つまり提督もしゃちく?」

提督「そうだな……だが、そんな者は例外なくこうしたくなる日がある」

呂500「もしかしてろーちゃんも?」

提督「もしかしたらそうなのかもな……」

呂500「提督と一緒ですって!」

霞「阿呆か!」ゴスッ

提督「痛っ!」

霞「あんたが変なことをするから覚えちゃいけないことを覚えちゃったじゃない!」

提督「いや待て、先に飛び出したのはろーちゃんの方だ」

霞「……そうなの?」

呂500「うん」

霞「じゃあ連れ戻しなさいよ!」

提督「結局怒られるのね!」

ビスマルク「こんな日に外に出たら風邪をひくわよ」

呂500「ビスマルク姉さん……でも、ろーちゃん実はこんな日を楽しみにしていたんだって」

ビスマルク「こんな日?」

呂500「はい! 悪天候の日に、思いっきり外を楽しみたかったんです!」

ビスマルク「……そう」

提督「(すまん、よくわからんのだが)」

霞「(あんただって雪が降ると仕事放って外に出たくなるでしょ。同じじゃないかしら)」

提督「(なるほど)」

霞「(今ので納得する時点でクズね)」

ビスマルク「でも、今日は部屋に戻りましょう。オイゲンがシュバイネハクセを作って待っているわ」

呂500「本当!? じゃあろーちゃん戻ります!」

提督「オイゲンの料理なら優先順位が上に来るのも仕方ないな」

呂500「提督も一緒に食べましょう!」

提督「なら、ご同伴に預かろうかな」

ビスマルク「そろそろ傘の中に入りなさい。風邪ひくわよ」

呂500「ううん、このまま走って帰りますから! 提督、行くって!」

提督「おう」

呂500「ついでに一緒にお風呂に入りますって!」

霞「それは駄目!」

呂500「駄目なの?」

ビスマルク「なんで駄目なのかしら?」

提督「何か気になることでもあるのか?」

霞「二人はともかく珍しく上がったビスマルクさんの大人としての評価が落ちました」

ビスマルク「私!?」

―執務室―

提督「オイゲンのシュバイネハクセ美味しかった。ろーちゃんも満足したことだろう」

提督「というか、そういや前に嵐の中でごっこ遊びしたし、やっぱ気持ちわかるわ」

下2

大和「提督、失礼します……」

提督「なんだか気落ちしているようだけど、どうかしたか?」

大和「提督……け、結婚、おめでとうございます……」

提督「……んんん?」

大和「この大和、心の整理に少々お時間をいただきました……その、式はいつあげるのですか?」

提督「ちょっと待て、さっぱり意味が分からんのだが」

武蔵「提督!」

提督「このタイミングで武蔵!? いや、大和が落ち込んでいるのは俺のせいではなくてな」

武蔵「大和のことはどうでもいい。提督よ、女子から百万を借りて、さらに借りるつもりだったらしいじゃないか。日本男子として、それはどうなのか!」

提督「んんんんん? いやまて、本当にさっぱりで」

大淀「提督!」

提督「また来た!」

大淀「婚姻については何も言いませんが、そういうことは早めに言っていただかないと、困るのはこちらの方なんですよ!」

提督「だから結婚とか婚姻とかさっぱりで」

赤城「提督!」

提督「しかもなんで同じタイミングでくるんだ!」

赤城「鳳翔さんおお店が臨時休業しているんですが」

提督「え、マジ? それは大変だな」

古鷹「提督」

提督「今度は何だ!」

古鷹「結婚資金が足りなくて借金をしているって本当ですか?」

提督「デマだ!」

利根「提督、女子からお金をだまし取って夜逃げしたというのは本当なのか!?」

提督「そんなことしそうな人間だと思われていることにショックだよ!」

鹿島「あの、提督さん……」

提督「ええい、多すぎる! 紙に書いて提出しろ!」

~~~~~~~~

提督「で、原因はお前たちって? 青葉と漣に……潮と曙」

青葉「青葉は聞いた話を記事にしただけなので無実ですよね?」

提督「デマっぽい話もそのまま書いて何が無実だ。むしろ極刑だ」

青葉「えっ」

漣「つい悪乗りが過ぎちった。てへぺろ」

提督「古い」

潮「ご、ごめんなさい! 勘違いから話を広めてしまって……」

曙「わ、私は謝らないわよ。もとはといえば、勘違いをさせるようなことをしたクソ提督のせいじゃない」

潮「あ、曙ちゃん……」

提督「真偽が分からないならそのまま聞きにくれればよかったんだ。まあ、そもそも二人にはそこまで怒ってはいない」

漣「だったら、漣も無実?」

提督「お前、勘違いってわかってて青葉のインタビューにも答えたよな。嘘まで混ぜて」

漣「いやー、面白そうだなって」

提督「反省の欠片もない!?」

青葉「まあまあ、そこまで怒らずとも。ほら、二人とも恐縮してますよ」

潮「すみません……」

曙「ふん……」

提督「はあ……別に他に迷惑を被るやつがいなかったからよかったんだが。てか、それなら相手を定めておかなかったのはなぜだ?」

漣「ご主人様、それは冗談じゃ済まなくなります」

青葉「やりすぎは死人が出ますよ」

提督「そこまで言うのか……」

―執務室―

提督「なんやかんや誤解を解くのに一日要してしまった……」

提督「最終的に結婚詐欺にあって百万失うって、もう全然違う話になった」

下2

―深夜・談話室―

旗風「全員そろいました」

提督「うむ。さて、せっかく新たに着任したんだし、普通の歓迎会じゃなくて百物語をやろう」

アークロイヤル「ヒャクモノガタリ?」

提督「それぞれが会談をひとつづつ話していって、隣の部屋にあるろうそくを一本ずつ消していく。全部ろうそくが消えた瞬間に、本物の物の怪が出るという話だ」

リシュリュー「それが日本のホラー、ね。面白そうじゃない」

松輪「ひっ……そ、それ、一つ目……ですか……?」

提督「ただの説明だから加えない……と言いたいが、ネタが先になくなりそうだから一つに数えておこう。じゃ、ろうそく消しに行ってくる」

ガチャ バタン

天霧「……待つの面倒だし、次話すか」

狭霧「あ、天霧、それは駄目なんじゃ」

天霧「ほぼ初対面でこうして囲っている方が気まずいって」

狭霧「それは……一理ある、かも」

天霧「じゃあ話すぞ」

ルイージ「あ、それならさ、あたしから話させてよ!」

天霧「んー、まあいいけど」

ルイージ「ごほん。これは日本に来たばかりのことだったんだけどね」

松輪「……っ!」ギュッ

ルイージ「公園のトイレに入ったら、ラクガキで『右ヲミロ』って書かれてて、右を見たら次は『左をミロ』って書いてあったんだ」

ルイージ「その通りに左を見たら、今度は『上ヲミロ』って書いてあって、なんだかなーと思いながら『ウシロヲミルナ』って赤い文字で書かれていたんだ」

旗風「もしや、後ろには……?」

ルイージ「ううん、なーんにもなかった。じゃあ、あたしの話おしまい! じゃ、ろうそく消してくるねー」

ガチャ バタン

天霧「たいしたことなかったな」

アークロイヤル「あの子なら仕方がないだろう」

狭霧「……」

天霧「どうした狭霧」

狭霧「ほ、本当にあったわけじゃない……よね」

旗風「本当にあったとしても、結局は何もなかったわけですし……」

松輪「ぁ……」ガタガタ

狭霧「うぅ、やっぱり、そういうこと、だよね……」

アークロイヤル「先ほどの話に、何か意味が……?」

リシュリュー「……最初の文字、どこに行ったの」

『!?』


―隣の部屋―

ルイージ「効果てきめんだね!」

提督「この手の話は気づいたときにゾクッとくるから面白いよなー」

―執務室―

提督「ルイに教えたかいがあったものだ。ああいうのはさらっといえる方が後々怖く感じるしな」

提督「でもこれ冷静に考えたら怪談じゃないや」

下2

―峠―

提督「うーん、さすが最新モデル。この駆動が気持ちいいな」

アークロイヤル「いきなり連れて来られて何かと思えば、ドライブか」

提督「いやだったか?」

アークロイヤル「いや、日本の空気にも慣れてきたところだ。こうして外を見てみたかった気持ちはある」

提督「なら、丁度良かったかな」

アークロイヤル「ここの峠は景色が良いな」

提督「だろう。ところでこの車なんだがな」

アークロイヤル「ああ……」

提督「V12ヴァンテージ。素晴らしいのはそのエンジンでな」

アークロイヤル「……」

提督「何といっても馬力が段違いで、最近の物では500を超えるものも実現しているんだ」

アークロイヤル「……」

提督「また本体の軽量化も図り、実にその時速330。これは世界でも上位の速度を記録しているんだ」

アークロイヤル「……」

提督「日本では珍しいこのV型12気筒は……聞いてる?」

アークロイヤル「いい景色だな」

提督「聞いてないじゃないか! マーリンに使われている機構だぞ!」

アークロイヤル「悪いが、ソードフィッシュの方が好きでな」

提督「絶対V12の方がいいのに」

アークロイヤル「ところで、後ろから走ってくる車の操縦者に見覚えがあるのだが」

提督「なんだって?」

那珂「ここからのくだりが気持ちいいんだよね!」

川内「さっすが私の妹! あのコースを走り抜けただけはある!」

神通「お、お願いですから事故にだけは気を付けるように……」

ブゥン

アークロイヤル「あれはフェアレディだったか。あれも速いじゃないか」

提督「くっ、せっかくエンジンの良さを語っていたというのに、これでは台無しじゃないか!」グイッ

アークロイヤル「お、おい、それ以上のスピードは」

提督「負けるかぁああああああああ!!」

那珂「提督? 残念だけど、ここは那珂ちゃんの庭。機体だけの提督には負けないよ」

提督「ぐうう、なぜ引き離されていく!」

那珂「じゃあね提督。レースで勝負するのは車じゃないの。那珂ちゃん達なんだよ。性能じゃなくて、走り方を考えなきゃ」

ブォン

提督「フェアレディに……負けた、だと。しかも名言っぽいこと吐いて行った」

アークロイヤル「その、アドミラルだって直線だったら勝っていただろう。だからそう気を落とすな」

提督「フォロー、感謝する……」

―執務室―

提督「アークロイヤルにV12の良い所を見せてやろうと思ったのに……というか川内達は何処に向かっているのだ……」

提督「しかもアークロイヤルはどちらかと言うと性能を気にしないタイプなのに。完全に気を使われただけなんだが……」

↓2

提督「加古ー、寝るなら自分の部屋に行けよ」

加古「ハンモックがあったらそりゃだらだらするでしょ」

提督「ならせめて手伝え。片付けるぞ」

加古「えー、しょうがないなぁ」

提督「それじゃあ、この書類を秘書官に届けてくれ」

加古「りょーかい」

提督「ついでに自作のアイスもあげるからやる気を出せ」

加古「おっ、まじで。ふとっぱらだねぇ」

~~~~~~~~

加古「てーとく、なんか面白いものない?」

提督「陳情書とか面白いぞ」

加古「何それ」

提督「要望とか書いてくる奴がいるんだけどな、ほら、これとか」

加古「んー? へー、トレーニング器具の導入ね」

提督「まあこういうのはいいんだけど、これとか」

加古「昼寝時間の導入……いいじゃん!」

提督「駄目に決まっているだろう」

加古「えー」

提督「というか、わかっててお前混ぜただろう」

加古「シラナイナー」

提督「まったく……」

加古「うーん、暇だからゲームしない」

提督「仕事中だって」

加古「ボードゲーム系ならいいでしょ」

提督「んー、まあいいか」

加古「じゃあ提督からね」

提督「電鉄か……あー、久々だな」

加古「その間まとめておくから」

提督「おーう」


古鷹「……これは、止めるべきでしょうか? でも、一応お手伝いはしているみたいだし」

霞「加古さん基準ならそうかもしれないけれど、止めるべきですよ」

古鷹「……わ、私も手伝うことでどうか一つ」

霞「加古さんには甘いですね……」

~~~~~~~~

提督「遊びながらやったし終わらないかと思っていたが、意外と終わったな」

提督「加古もなんやかんや優秀な気がする」

下2

―飛鷹型の部屋―

提督「隼鷹、お前断酒な」

隼鷹「!?」

提督「それじゃあ」

隼鷹「ちょ、ちょちょっと待って! どうして断酒なんだ!?」

提督「それを俺の口から言わせるのか」

隼鷹「……し、しらないなー」

提督「倉庫のお酒、勝手に開けただろう」

隼鷹「あ、あたしだっていう証拠は?」

提督「指紋を採取した。最近は素人でも簡単にとったりすることができるんだ」

隼鷹「うぐ……」

提督「というわけで断酒な」

隼鷹「や、やめてくれよぉ。ほら、飲みすぎだっていうなら控えるからさ」

提督「いいや、今回は許さん」

隼鷹「わ、わかった! 酔拳覚えるから!」

提督「覚えてどうするんだよ」

隼鷹「酔っていると強くなる」

提督「アホか。しかも本来の酔拳は泥酔状態じゃないぞ」

隼鷹「なら、自分で作るからさ」

提督「合法内ですむか?」

隼鷹「……いやー」

提督「なら駄目だ」

隼鷹「……うううっ、ぐすっ……」

提督「!?」

隼鷹「いいじゃねぇかよぉ……楽しみなんだよぉ……」

提督「な、泣くほどか!?」

隼鷹「酒好き舐めすぎだ……ずびっ」

提督「えぇー……完全にアル中のそれだな……」

隼鷹「焼酎でいいから飲ませてくれよぉ……」

提督「それ遠慮してないからな。はぁ……まあ直接被害にあった妙高に謝れよ」

隼鷹「……妙高?」

提督「珍しく楽しみにしていたようだからな。まあ許してほしいなら本人に……なにをつかんでいる?」

隼鷹「一緒に謝って」

提督「お前……」

―執務室―

提督「なぜか知らんが俺まで怒られた。ついでに壁に穴が開いた」

提督「罰を与えた程度で済ませようかと思ったのに……しかし、怒ると本当に怖いんだな……」

下2

―択捉型の部屋―

択捉「司令、松輪の着任を祝ってくれてありがとうございます」

提督「怪談は怖がらせただけみたいだったしな」

択捉「本人は少し申し訳なくなっていましたが……」

提督「いきなり気絶したからな……まあ普通に祝ってやらないとかわいそうだ」

択捉「それでも、松輪のために、こんな料理まで」

提督「なんか一時期当たり前のようなことを褒められると照れくさいな」

択捉「そろそろ松輪が戻ってくる頃ですが、どうしますか?」

提督「クラッカーは驚かせるだけだろうから、さりげなくおめでとうとありがとうを言っておけばいいぞ」

択捉「はい!」

提督(ただでさえ避けられている節があるのに、これ以上驚かせるのはアカン)

松輪「あの……戻りました」

択捉「松輪!」

松輪「は、はい……?」

択捉「着任してくれて、ありがとう!」

松輪「ど、どういたしまして……でいいのかな……」

提督「着任祝いだ。無礼講で楽しめ」

松輪「司令……」

提督「うーん、後ずさりされるほどひどいことはしていないと思うんだがなぁ」

松輪「す、すみません……その、あの時のことを思い出して……」

択捉「そんなに司令の話は怖かったの?」

松輪「うん……」

提督「あれでも歓迎会のつもりだったんだ。すまん」

松輪「い、いえ。わ、わたしも……気にしないようにしますから……」

提督「そうしてくれたら嬉しい」

択捉「これで丸く収まりましたね! 松輪、わからないことがあったら何でも聞いてね?」

松輪「わかった、択捉お姉ちゃん……」

提督「……」

択捉「どうかしましたか?」

提督「いや、こんな素直な子の相手をするのはいつぶりかなと思って」

択捉「素直、ですか?」

松輪「松輪も……?」

提督「これは純真だわ」

―執務室―

提督「近くの奴に聞いたら提督のせいで変わった人もいるといわれた。どういう意味だ」

提督「でも、海防艦は占守型があれだから、バランスが取れているのか」

下2

―海水浴場―

提督「海に来たぞ!」

加賀「普段からすぐそこにありますが」

提督「海水浴場と海は違うんだよ。こう、気分的に」

飛龍「わかる! こう、遊びに来たって感じがする!」

蒼龍「実際に遊びに来ているわけだしね」

提督「そもそも、泳ぐこと自体は殆ど無いだろう」

加賀「そうですが」

赤城「まあまあ加賀さん。せっかくなんですし、楽しみましょう」

加賀「赤城さんがそういうのであれば……」

瑞鶴「翔鶴姉、いこ!」

翔鶴「ちゃんと準備体操をしてからよ、瑞鶴」

瑞鶴「はーい」

雲龍「私は……」

葛城「ビーチバレーするわよ!」

天城「もう一人いなければいけませんね」

雲龍(日焼けしようと思ったんだけど……)

グラーフ「ビーチバレーか。私も参加しよう」

アクィラ「アクィラも参加しまーす」

雲龍(四人になったし、日焼けできそう)

葛城「じゃあ、雲龍姉は審判ね!」

雲龍「……」

提督「やっぱり海は人のテンションをあげるんだな」

サラトガ「見ているくらいなら手助けしてあげればよかったのでは……」

提督「雲龍も嫌なことは嫌というし、あれはあれで納得しているだろう」

アークロイヤル「ここはいつもこんな感じ?」

サラトガ「そうですね。サラももう慣れましたけど、最初はみんなそんな感じです」

アークロイヤル「そうなの……この国の言葉で、郷に入ってはみたいな言葉があるみたいだし、貴女のようになりたいものね」

提督「ふむ? まあ、とにかくこっちも何かしようか。普通に海で泳ぐか?」

アークロイヤル「何か訓練になりそうなものが良いわ」

提督「海に来てまで訓練か……」

サラトガ「あはは……なにかありますか?」

提督「ならビーチフラッグだな。瞬発力と走力などが試されるぞ」

アークロイヤル「オーケイ。それにしましょう」

提督「合図は時計でいいから、審判無しでサラトガも参加して貰おうか」

サラトガ「サラもですか? はい、一緒します」

―執務室―

提督「それぞれ思い思いに楽しんだ。が、時折ビーチバレーの流れ弾が俺に当たったのは何かの狙いなのか」

提督「そういえば空母勢の水着はあまり見る機会ないからレアのような……」

↓2

―工廠―

夕張「やっぱり遠心式のほうがいいですよ。量産するのであればなおさらです」

明石「あくまで研究目的なんだから、軸流式のほうがいいって」

夕張「ですけど、まずは遠心式からのほうが費用もかかりませんし」

明石「でも、どうせ研究するなら後々多用できそうなもののほうがよくない?」

夕張「実戦投入は最終的に妖精さんに委ねられますけどね」

明石「それはそうだけど……」

提督「何を話しているんだ?」

夕張「提督。それがジェットエンジンのことですけど」

提督「前作っただろ?」

夕張「まあそうなんですけど、それとは別に研究をしてみようと思いまして」

提督「今更!?」

明石「最近は工廠でもこれといったことはしていないですよね」

提督「ああ、装備は十分にあるし、出番としては減ってはいるな」

夕張「ですから、空いた時間を使って一段上の艦載機でも考えてみたいんです」

提督「つまり暇だと」

夕張「身も蓋もない言い方ですね……」

提督「だから遠心式と軸流式。圧縮機の話か」

夕張「私としてはコストも少なくてすんで、扱いやすい遠心式がいいと思うんです」

明石「それより高出力も可能で、大きな成果が出そうな軸流式がいいと思います」

提督「どっちにも利点があるから、どっちがいいとはいえんな……」

夕張「提督、どっちもはなしです!」

明石「そうです、バシッと決めてください!」

提督「巻き込まれただけなのに怒られるのは理不尽じゃね」

夕張「実は昨日からずっとここで止まっていて、申請書もなかなかかけないんです!」

明石「このままじゃ今日一日も終わりますよ!」

提督「知らんがな……つか、それなら両方ともでいいんじゃないか」

夕張「優柔不断!」

明石「八方美人!」

提督「当たりキツイな! お前ら本当は自分の推している圧縮機を選んでほしいだけだろ!」

夕張「ひゅーひゅー」

明石「夕張、口笛へた」

夕張「お、お約束だからやっただけですし」

提督「はぁ……だから作るなら複合機でいいだろう。最近だと珍しくはない」

夕張「そうなんですか?」

提督「遠心式の利点は見逃せないが、そこから高出力をしようとなると必然的に軸流式も使うことになる。どうせ実践で使えるかどうかは妖精さんの気分次第なんだし、どっちもやっていて損はないだろう」

夕張「……久しぶりにまともな意見を聞いた気がします」

明石「調子が悪いならきちんと寝ていなきゃだめですよ」

提督「お前らだって普段より幾分まともだろうが」

―執務室―

提督「真面目に話しているなら真面目に返してくれてもいいだろうに……」

提督「でも、よく考えたら工廠に行くときは大抵変な思い付きを実行しようとしているときだから、二人の態度もおかしくないような気がしてきた」

下2

加賀「赤城さんが寝込んでいるから、今日は私が代わりに出撃します」

提督「赤城がねぇ……え、大丈夫なのか」

加賀「『クッキー』、『ババア』と口にしていたのは聞きました」

提督「赤城がクッキー? 赤城に限って食べ過ぎってことはないと思うが……」

加賀「昨日はパソコンに向かっていた姿を見ましたが」

提督「パソコン? なんとなくわかったような……」

加賀「心配であればお見舞いに行ってはいかがですか」

提督「様子も気になるしそうするか。後で見舞いに行くと伝えておいてくれ」

加賀「了解しました」

提督(正直、心覚えがあるんだよなぁ)

― 一航戦の部屋 ―

提督「で、ババアがどうしたって」

赤城「て、提督……」

提督「本当に寝たきりとは、なんか予想以上にダメージ受けてるな……」

赤城「実は、私のクッキーが……全て……消えてしまったのです……」

提督「消える?」

赤城「データが……」

提督「消えたのか……まあブラウザに保存されるタイプのゲームだから、消えることもおかしくないが」

赤城「どこが可笑しいんですか!」

提督「そういう意味ではない!」

赤城「うぅ……私のババアが……」

提督「赤城の口からババアはなんかギャップがあるな……つか、エクスポートとかしていないのか」

赤城「えくす……?」

提督「なんとなくセーブデータが絶望的だということは伝わった」

赤城「実績も全部集めて、世界中がクッキーに満たされたと思ったのに……」

提督「実績を? まさかと思っていたが、赤城、お前……」

赤城「実はミニゲームもすでに……」

提督「ガチ勢かよぉ! それならなおさら外部にセーブを残しておけよ!」

赤城「こういうものには疎いんですからしょうがないじゃないですか!!」

提督「本気で怒るとは思わなかったすまん!」

赤城「どうせ、提督に私の気持ちはわからないんですよ……大切なクッキーを失った気持ちは……」

提督「ゲームのセーブデータを失う気持ちはすごくわかるが、そこまでメンタルはやられなかったぞ……」

赤城「……すみません、しばらくはそっとしてください……」

提督「わかった……落ち着いたら好きなお菓子作ってやるからな?」

赤城「クッキー以外でお願いします……」

―執務室―

提督「一年半前に話していたゲームをいまだにやっていたのか……いや、最近更新したって聞いたからそれか?」

提督「なんにしても、あの様子なら復活するまであと二三日はかかりそうだな」

下2

―庭―

提督「曙、わかってるな」

曙「たぶんね」

提督「ふふっ、やはり俺と曙の意見は一致か」

曙「ふん、別にクソ提督のためじゃないわ。ただ、あれで終わりたくないだけ」

提督「やはり同意見ではないか」

曙「とにかく! やるわよ」

提督「ああ」

曙「まず、私の声に合わせて回してちょうだい」

提督「いやここは……っと、そんなことを言っているからあんなことになったんだよな」

曙「だから、まずは私に合わせなさい」

提督「了解。なら、こっちは訂正点を考えてみる」

曙「わかったわ。じゃあ、いくわよ……っ」

提督「……」

曙「……ちゃんと回しなさいよ!」

提督「えっ、まずは勢いをつけるところからだろう」

曙「はあっ? ……いえ、確かにそうね。それに関してはクソ提督の言う通りだわ」

提督「なんだ、素直じゃないか」

曙「ミスはミスだからよ! それに、クソ提督だって合図より早いじゃないの」

提督「む、そうか、なら少し遅くしようか」

曙「それじゃ、次……せーの、いーち、にー……」

提督「ちょ、ちょっと、速いぞ!」

曙「何がよ」

提督「縄のスピードだ。それじゃあ飛ぶのがきつくないか」

曙「……そうね。潮とか引っかかりそうだわ」

提督「だが、回すのに心配はなくなってきた。ここから練習をして、止まらないようにするぞ!」

曙「ええ!」

~~~~~~~~

曙「いーち、にー、さーん……」

漣「おっ、ぼのたん、上手に、なりましたなぁ」

朧「もしかして、提督と、練習したの?」

曙「あれじゃあ納得かなかっただけよ!」

潮「曙ちゃん、らしいね」

曙「べ、別に!」

綾波「あっ、す、すみません、引っかかってしまいました」

提督「いや、綾波のせいじゃない。曙、縄の速度が上がっていたぞ」

曙「う、そうね、ちょっとムキになっていたみたい」

提督「いや、俺もフォローしきれなかった。気を取り直して次行くぞ」

曙「ええ。じゃあ、せーの……」

潮(曙ちゃんが素直なの、珍しい……)

朧(素直なの、多分集中しているからだよね)

漣(後でからかうと面白くなりそう!)

―執務室―

提督「まだ息がぴったりというほどではないが、問題ないほどまで上達したぞ」

提督「帰り際に、漣が曙に追いかけられていたが……いつものことだろうな」

下2

―埠頭―

提督「ここは一般市民が扱う港湾だから、あんまり来る機会はないんだ」

旗風「そうなのですか?」

提督「だからこそ、こうしてたまに訪れると実感するんだ。みんなが成してきたことを」

旗風「そうですね。わたくしも、人々の活気が伝わってきます」

提督「この辺は来たばかりだと少々入り組んでいてはぐれ易い。ちゃんとついてくるんだぞ」

旗風「はい」

提督「……ちょっと、お手を拝借」

旗風「し、司令? ここまでしていただかなくとも、わたくしは司令の御傍を離れませんよ」

提督「個人的に心配なだけだ。もちろん、嫌なら……」

旗風「い、いえっ、姉さま方も信頼しているお方です。嫌悪どころか、その……」

提督「少し意地悪を言った。旗風ならそう言ってくれると思っていたぞ」ギュッ

旗風「あっ……司令が意地悪、というのは本当なのですね」

提督「神風か?」

旗風「ふふ、いえ、姉さま方全員です」

提督「全員……思い当たる節があるから何とも言えんな」

旗風「ですけど、みなさん司令のことを話すとき笑顔でした」

提督「う……まったく、さらっとそういって。俺だってそういうのは苦手だ」

旗風「司令、このままどこへ向かうおつもりですか?」

提督「もともとは散歩だ。特に目的はない、が、そろそろ昼だし、どこか入るか」

旗風「それには及びませんよ。どうぞ、司令」

提督「ん、これは弁当?」

旗風「司令が散歩に出かけるとおっしゃってから、すぐに作りました。あまり時間はかけていないので、凝ったものはありませんけど」

提督「凝るとかそういうものじゃないだろ。弁当は気持ちだ。旗風の気持ち、ありがたく受け取ろう」

旗風「あっ……その言い方、恥ずかしいですよ……」

提督「実はこっちも少し恥ずかしい。人も少ないし、そこのベンチに座って食べるとするか」

旗風「はい。……ですけど、司令と二人でこういう場所に来るとは思ってもみませんでした」

提督「俺としては、ずっと旗風とこうしてみたかったけどな」

旗風「えっ……お、恐れ入ります」

提督「恐縮するな。そう思ったのは春風からよく話を聞いていたからだ」

旗風「春姉さまが……やっぱり、恥ずかしいです」

提督「尊敬しているんだっけか。なら、春風を見て学ぶといい。できるだけ便宜を図ろう」

旗風「あ、ありがとうございます! 司令!」

―執務室―

提督「旗風良い子すぎるだろう……最近なんやかんやと濃い奴が多かった気もするし」

提督「……そう考えると彼女は貴重だな気がしてきた」

下2

提督「あのさ、青葉」

青葉「はい」

提督「最近、やりすぎじゃないか」

青葉「はて、何かしましたかね」

提督「カステラとって、盗撮して、ガセ情報を平気で流して何もしていないと」

青葉「あ、あー、そんなことありましたね」

提督「しかも最近俺のことを記事にしないと思ったら、特設サイト作りやがって!」

青葉「心外な! 一面じゃないだけで記事にしてますよ!」

提督「なお悪いわ!」

青葉「それに、今更じゃないですか。特別困ったことはないですよね」

提督「ローカルとはいえ気分悪いんだけど!?」

青葉「司令官もプライベート気にするんですね」

提督「当たり前だろう!」

青葉「それで、どうしますか。サイトを消しますか?」

提督「いや、それはそれでなんとなく酷いことになりそうだから……」スッ

青葉「な、なんですか。青葉は権力には屈しませんよ!」

提督「権力じゃなくて、こういうのはどうだ?」ドン

青葉「ほ、ほほう、壁ドンですか。昔は流行りましたね」

提督「別に、流行り廃りのものじゃないだろう」

青葉「あの、ち、近すぎませんか……?」

提督「そりゃ、目を逸らされないためにも、な」クイッ

青葉「……!」

青葉(し、司令官の顔がこんなに近くで……い、今にもくっついてしまいそうな距離で……)

提督「……」

青葉「……?」

提督「……」

青葉「……司令官、もしかしてこれ以上先のことを考えていませんね」

提督「前に壁ドンしたら、されたくない行為にも含まれると聞いたから、いやがらせにやっただけだしな」

青葉「い、嫌がらせで青葉の乙女心を揺さぶってきたんですか!?」

提督「うむ」

青葉「最低ですこの人!」

提督「えぇ、それをお前が言うか……」

青葉「うぅ……き、記事にしてやるんですからー!」ダッ

提督「あ」

ガチャ バタン

提督「うーむ、一応仕返しはできたか? 仕返しになったかはちょっと微妙だが」

提督「ていうか、あいつさりげなく何かをもっていかなかっ……また盗撮してたな青葉ぁ!」

下2

―提督私室―

提督「ふっふっふ、ここまで来たからにはもう逃げられないぞ」

ルイージ「ふわぁ……眠いから、早く寝よー」

提督「……」

ルイージ「うんー? どうかしたの?」

提督「いや、もうちょっとこう、何かあるかと思って」

ルイージ「一緒に寝るんだよね?」

提督「そういって呼びはしたが、素直に着て寝る準備しているってのがどうにも」

ルイージ「うーん、アンミラーリオの言ってることって、難しいねー」

提督「難しいか……? いや待て、最近こういった押される展開が多い今、俺に対しての試練なのかもしれない」

ルイージ「まだ寝ないの?」

提督「寝ようか」

ルイージ「わー、これがフトンなんだね。ふかふかー」

提督「気に入ったならベッドから布団に変えてもいいんだぞ」

ルイージ「そうだね、ろーちゃんもそうだし、考えとくー」

提督「さて、それじゃあありがたく抱かせてもらおうか!」

ルイージ「最近涼しくなってきたからね」

提督「うむ。子供の体温は温かくてこういう時には重宝する」

ルイージ「あんまり子供扱いは嬉しくないかもー」

提督「ルイなんてまだまだ子供だ。ほら、こんなにも暖かい」ギュッ

ルイージ「えー、体温だけで考えると、ポーラさんはあたしよりも温かいよ」

提督「あいつは酒で火照っているだけだろ」

ルイージ「あはは、そうかもー」

提督「でも、しばらくはルイだけでいいって思えるくらい温かいな」

ルイージ「じゃあ今日からずっと一緒に寝よっか?」

提督「それもいいな! でもなんか後で大変なことになりそうだから遠慮しとく」

ルイージ「そう? でも、今日だけでもほかのみんなに自慢できそー」

提督「自慢かー。まあ、それでみんなも湯たんぽになってくれるというなら、それもそれでいいかもなー」

ルイージ「アンミラーリオ? そっちの方が大変なことになると思うよ?」

提督「え?」

ルイージ「ふひゃぁ……そろそろ、本当にねみゅくなってきた……」

提督「ああ、寝る前に話に付き合わせて悪かったな」

ルイージ「んーん、あたしもたのしかったし……」

提督「限界みたいだな。おやすみ、ルイ」

ルイージ「ブォンナノッテ……アンミラーリォ……すやぁ」

―執務室―

提督「娘とかいたらあんな感じで一緒に寝るのだろか。なんとなくそんな気分になった」

提督「でも今思えば寝る提案は断らなくてもよかったような……いや、青葉にあることないこと書かれそうだしやめておこう」

下2

提督「青葉?」

青葉「はい」

提督「呼ばれたわけはわかるよな?」

青葉「青葉何かしましたか?」

提督「しらばっくれる必要はないだろ!? こんなものを公開してるんだから!」バサッ

『我らが提督、ルイージ・トレッリと同衾!? ついに国際問題か!』

提督「おかげでいろんな奴から詰問を受ける羽目になったんだけど!?」

青葉「えへっ」

提督「誤魔化す気があるのかすらわかんねぇ!」

青葉「青葉は自分の仕事についてはストイックに考えているんです。なので、使用したネタはメモ帳から破り捨てて魚のえさに……」

提督「嘘つけ! お前の部屋にガサ入れしたときメモが大量に出てきたぞ!」

青葉「プライバシーの侵害ですよ!」

提督「お前が言うの!?」

青葉「……それで、正直いつものことですよね」

提督「それはそうだが、叱った直後にやらかしてくるとは思わなくてな」

青葉「まま、このくらいいつものことですし、そろそろ見逃してはどうですか」

提督「本人に言われるとイラッてくるよな」

ガチャ

衣笠「それに、それだけじゃないしね」

提督「衣笠、どうかしたか? ……携帯?」

衣笠「実はサイトの方には動画付きで公開されているネタがあるの」

提督「動画の……青葉、お前もしや」

青葉「はい、この前の壁ドンです!」

提督「ついに隠さなくなったな! しかもタイトルが『ついに夜戦(意味深)に積極的になった提督! 記者青葉の運命は!』って予告かよ!」

青葉「次回ネタばらししようかと思いまして」

提督「遅いわ! つーか、これがあったから冗談っぽいルイの記事を真に受ける奴が出てきたのか……」

衣笠「少なくとも、誤解は解いた方がいいんじゃない?」

提督「だな……おい青葉、わかってるよな?」

青葉「はいはい、わかりましたよ」

提督「ならいいんだが……」

青葉「今日中に動画編集で希望者の壁ドン動画を作っておきますね!」

提督「全然わかってないぞこいつ!」

衣笠(なんだかんだ二人とも楽しそうなのよね)

~~~~~~~~

提督「青葉がやりすぎるのはいつものことだが、相変わらず反省する気が一切見受けられんな……」

提督「周りに迷惑をかけなきゃいいといえばいいんだが……はぁ」

下2

―談話室―

ビスマルク「あら、アトミラール、ここに何か用?」

提督「ん、ビス子にオイゲンか。珍しくもなんともない組み合わせだな」

ビスマルク「言い方に悪意を感じるわね……ビス子って呼ばないで」

プリンツ「ああーーー」

提督「……なんで扇風機の前に陣取っているんだ?」

ビスマルク「あの子、前からあんな感じなのよ」

提督「正直そういうネタっぽい行動はマル子に似合っていると思うんだが」

ビスマルク「私のことを何だと思っているの。マル子はもっとやめて」

提督「オイゲンやい、そんなに暑いのか?」

プリンツ「ドイツじゃもっと涼しいですしー……それに、空調も弱くなりましたよね?」

提督「まあ実際いらんだろう」

プリンツ「まだまだ暑いですってー……」

ビスマルク「でも一気に涼しくはなったわね」

プリンツ「そうは思いますけど……」

提督「とにかく、お前たちからするとまだまだ夏ってことか」

プリンツ「恥ずかしながら、そんな感じです……」

ビスマルク「迷惑になっていないのなら、放っておいてあげてくれない?」

提督「俺はもう扇風機もいらんからそれはいいんだが、ビスマルはいいのか」

ビスマルク「こ、これくらい平気よ。あとそこまで言ったのならクまで言いなさいよ」

提督「でもお前汗すごいうえにとんでもないほど着崩しているのに自分で気づいているか」

ビスマルク「え? ……っ!!」

提督「ほら、オイゲンどいてあげろ」

プリンツ「姉さまの頼みでも、ここからは離れられませんー」ギュッ

提督「ええい、扇風機にひっつくな! 敬愛するお姉さまがかわいそうだとは思えないのか!」

プリンツ「暑いものは暑いんですー!」

提督「暑さは人を混乱させるというのは本当だな……つか、夏の間ずっと建物の中にこもってたんじゃないのかこいつ……」

プリンツ「……あれ、ビスマルク姉さまは?」

提督「ん? 確かにいないな。暑すぎるから部屋に戻ったんじゃないのか」

プリンツ「うぅ~、ビスマルク姉さま~……」タタッ

提督「……一番効果的なのは、やっぱビスマルクか」

―執務室―

提督「いまだに暑いといえば暑いが、全然過ごしやすい季節になったとは思うんだがな」

提督「そう考えるとガングートは大丈夫なのだろうか。あいつがばてている姿なんて想像できないけど」

下2

―食堂―

文月「おままごとしよぉ」

提督「……あ、秋雲に何か言われたりとかは?」

文月「? どうして?」

提督「いや、何もないならいいんだ。うむ」

提督「(どうする、やるか?)」

間宮「(普通のおままごとであれば異論はないです)」

伊良湖「(酷くても赤ちゃん程度なら……)」

提督「よ、よし、いいぞ文月。相手になろう」

文月「えへへ、じゃあ改二になった文月、本領発揮するよぉ~」

提督「本領?」

文月「司令官は優秀なイケメン社長!」

提督「お、おお。なんか余計なものがついているが、予想以上に普通だ」

文月「一代で大企業までのし上がったんだけどぉ、新入社員の文月に一目ぼれ、だけど会社は手に入れられたけど文月の心は手に入らなくてぇ、そんなときに間宮さんという取引相手とつい浮気をしてしまい日々苦悩する毎日を送る社長役ね~」

提督「!?」

文月「次に間宮さんがその伊良湖さんと付き合っているんだけど~、司令官と話していくうちにだんだん彼にも惹かれていってぇ、ついに体の関係を結んでしまい二つの恋の間に板挟みになる伊良湖さんの秘書役~」

間宮「!?」

文月「伊良湖さんはぁ、そんな間宮さんと付き合っているんだけどぉ、物足りない感情が徐々に降り積もっていって、街中であった文月に間宮さんと違った感覚を覚え、なにがなんでも手に入れようとする提督の取引相手の社長さん~」

伊良湖「!?」

文月「あたしはそんな二人の社長に求められるピチピチのOL役~」

提督「……前より悪化してないか!?」

間宮「これが本領……本領ってなんでしたっけ……」

伊良湖「私の設定が一番マシなのでしょうか……マシって何でしょう……」

文月「ほら司令官~、始めよ~」

提督「え? えーと……お、おっほん、私が社長だ」

文月「社長~、取引相手の社長さんがお見えになっていますよぉ」

提督「え? あ、ああ、通してくれ」

伊良湖「私ですか!? そ、その……へ、ヘーイシャチョーサン、ケイキハイカガデスカー」

提督「めっちゃ棒読み! き、君のおかげで我が会社も安定の一途だよ」

伊良湖「そ、それはようござんした……」

提督「(口調変わってるぞ!)」

伊良湖「(設定からして難解なんですよ~……)」

文月「秘書の方もお見えになってますよぉ~」

間宮「あ、あなた、大事な書類を忘れていますよ」

伊良湖「え、あ、ありがとう……」

提督「!? き、君は……」

間宮「あ、あの夜のことは夫には内緒にしてください……」

伊良湖「あの夜?」

提督「な、なんでもないぞ! はっはっは!」

文月「嘘! あたし、みてたんだから……二人がホテルから出ていくところ……」

伊良湖「ど、どういうことですか!」

間宮「こ、これは違うの!」

提督「そ、そうとも! 私が好きなのは文月、君だと前に言っただろう」

文月「それは嬉しい……でも、あたしはこの人にも誘われているの……」

伊良湖「っ!」

間宮「どういうこと……あなた」

伊良湖「ち、違います! ただ会社についての話をしただけで……!」

提督「もしかして、彼女が言っていた気になる人は……」

伊良湖「……っ! そうです、だけど、二人だって不倫をしているんですよね!」

提督「そ、それは……」

間宮「あれはちょっとした間違いで……」

伊良湖「こんな人たち、もうどうでもいいでしょう! 文月、私の道にどうかあなたも付き添ってほしい」

文月「……ごめんねぇ、あたし、やっぱり司令官のことが……」

伊良湖「な、なぜですか! あんな人達――!」

秋雲「……」ジー

伊良湖「……あ、あの」

秋雲「なるほど、なるほど……次の本は決まりました!」ダッ

提督「ちょ、こういうパターンは青葉かと思ったけどまさかだ!」

間宮「ほ、放っておくとまずいんじゃないですか?」

提督「文月、リアルおままごとはまたな!」ダッ

文月「えぇ~……むぅ、わかったぁ」

間宮(助かりました……)
伊良湖(良かったぁ……)
提督(なんとか逃げれた……)

―執務室―

提督「なんだってあんな昼ドラみたいな設定を思いつくのか……今回秋雲関わっていないらしいし、本当に改二だったな……」

提督「もしかして、部屋にとんでもないものがあるのではないだろうか……」

下2

―工廠―

提督「なるほど、これはなかなか良いものだ」

妖精さん「つくるのたのしかったです」

提督「ちなみに、再現度は?」

妖精さん「みられてないときだけ、こうそくいどうができるのです」

提督「それだけ?」

妖精さん「いかなるこうげきもききませぬ」

提督「強っ……いやでも逆に言えば首とかはないのか。まああれあったら深海凄艦も倒せそうだしな……」

夕張「何の話ですか?」

提督「……そうだ、あいつらと鬼ごっこをしよう!」ダッ

夕張「え、無視ですか」

―廊下―

提督「というわけで、室内鬼ごっこだ」

暁「え、えぇ……」

響「司令官、その後ろにあるものは何だい」

提督「SCP-173の着ぐるみだ。攻撃以外の性能を持っているんだぞ」

雷「えすしーぴー?」

電「見られていないときはとんでもない速さで迫ってくる彫像なのです。捕まると死にます」

雷「えっ!?」

提督「さすがに死にはしないぞ。でも、ちょっと変則的で面白いだろう」

響「そうだね……うん、やってみようか」

暁「本気?」

提督「もしかして、暁はレディーなのに怖いのか。やれやれ」

暁「む、こ、怖くなんてないんだから!」

雷「暁は相変わらずね」

電「そうして巻き込まれるのです……」

~~~~~~~~

暁「いい、目を離さないようにするのよ?」

響「了解」

電「角を曲がると見えなくなるのです」

暁「だから、暁が角まで行くまで待つのよ」

雷「もしかして、暁だけ離れておくってこと?」

暁「……」

雷「図星ね!」

暁「ふ、ふん。暁は先に曲がり角の安全を確認するだけなんだから!」

響「それなら、確認してくれないかな」

暁「え?」

電「全員暁ちゃんの方に集中して、もうこっち側から消えたのです」

暁「……」チラッ

SCP-173「」

暁「ぴ」

電「暁ちゃんが死んだのです!」

響「死んではいないよ」

雷「倒れただけよね。おそらく曲がり角にいるんでしょうね」

響「こっちからチラッと見えるからね。多分捕まったのだろうから、暁が鬼だね」

電「でも暁ちゃんは多分気絶しているのです」

雷「つまり、終わりってことでいいのよね」

響「うん」

雷「はぁ、少ししかやってないはずなのに、なんだか疲れた……わ…………」

SCP-173「」

雷「」

電「全員の瞬きするのが同じだと、急に目の前に現れたようになってびっくりするのです」

響「う、うん……」

―執務室―

提督「あれ作った妖精さんってすごいな……移動もだが、見られていないときに動けるってどうやってるんだ」

提督「でも少し楽しかった。暁にはまたしても悪いことをしたが」

下2

―オリョール海―

提督「ふー、久しぶりの外海だな」

13「だ、大丈夫、なの……?」

14「イムヤたちは放っておいても平気と言っていたから大丈夫じゃない?」

ルイージ「アンミラーリオと一緒なんてー、なんだかおもしろそうだね!」

提督「この辺りもなんども来るというのに、まだまだ安全とは程遠いな」

13「それがわかっていて、来たんですか……」

提督「こういう危険なところに行くとわくわくするだろう」

13「い、イヨちゃん……やっぱりほかのみんなが……言うようにやめておいた方が……」

14「姉貴は提督がそう簡単に危険な目に会うと思う?」

13「それは……い、いや、提督は普通の人間なんだから……!」

14「ヒトミは提督が普通の人間だと思う?」

13「えっ……」

提督「よーしルイ、どこまでいけるか競争だ!」

ルイージ「うん!」

提督「俺のバタフライに勝てるかな!」

ルイージ「アンミラーリオこそ、潜水艦の速度なめないでねー」

13「……い、いえっ、少し悩んだけど、普通の人間よ……!」

14「だよね」

提督「何を話しているんだ?」

14「提督のことー」

提督「だったら、イヨも競争に参加するか? どんな敵だろうと受け付けるぞ」

13「索敵は、大丈夫なんですか……?」

14「別にいいんじゃない? 基本的に安全ってみんな言ってたでしょ」

13「それって……潜水艦の私たちの話で、提督に関しては、そうじゃないんじゃ……」

14「文句ばっかり言っても楽しくないよ!」

13「そんな問題じゃないって!」

提督「お、ルイ、敵艦発見だ、いくぞぉ!」

ルイージ「やっちゃおうか、ね♪」

13「ってもういったよ……!」


ヲ級「はぁ、これが終わればしばらく休暇……」

提督「おう、燃料よこせや」

ルイージ「それがアンミラーリオ流の先制雷撃なんだねー」

ヲ級「」

13「も、もう……! 攻撃される前に撤退しますよ……!」

提督「む、何を引っ張って……こんなのいつものことで……」

14「あ、失礼しましたー」

ルイージ「じゃあ帰るまで競争だね!」

ヲ級「……た、助かったとみていいのでしょうか」

―執務室―

提督「やっぱ海っていいなぁ。心が躍る」

提督「しかし、なんだか久しぶりに心配されたような気がする。最近は当たり前のようになってきているからな」

下2

―談話室―

提督「さーて、たまにはここに置いている漫画でも読むかね。っと……」

龍田「スー……スー……」

提督「寝てる……?」

提督(いや、寝ていると思わせていたずらしようとしたところを切り落としてくる可能性もある)

提督「触らぬ神に祟りなし。こっちはこっちでやることを」

龍田「ん……」

提督「……」ビクッ

龍田「……スー」

提督「……」

提督(なんなのだこれは、どうすればいいのだ!)

提督「とりあえず、敵を知らずんばという。まずはじっくり観察だ」

龍田「クー……」

提督「……」ジー

龍田「スー……」

提督「こう見ていると、端正な顔立ちしてるよな」

龍田「……」

提督「……写真でも撮って」
龍田「んん……」

提督「やろうと思ったけど、カメラ持ってなかった」

龍田「クー……」

提督(こいつ起きてるだろぉおおおおおお!! 今さらっと軍刀に手を伸ばしたぞ! てか寝てるときになんてもの持ってんだ!)

提督「触れるのはやめておこう。撫で斬り待ったなしだ」

龍田「てんりゅうちゃん……スヤー……」

提督「はいはい。どうせ天龍を茶化す夢でも見てるんだろう」

龍田「ていとく……」

提督「……」ピクッ

龍田「……敵に捕まるなんて……クー……」

提督「まさかの捕縛!? なんで俺まで捕まってるんだよ!」

龍田「んん……? あれ……」

提督「しまった、起こしてしまった」

龍田「ていとく……? あら……あら?」

提督「気持ちよさそうに寝ていたな」

龍田「……もしかして、ずっと見てました?」

提督「ずっとではないが、まあそれなりに」

龍田「……!」ズバッ

提督「照れ隠しで切ってくるな!」サッ

龍田「忘れなければ……わかってますよね~?」

提督「わかったから構えるな!」

―執務室―

提督「寝てても起きてても危険度は変わらんな……」

提督「しかし、本当に寝ていたのだろうか。今でも実は寝ていなかったんじゃないかと疑っている」

下2

―公園―

提督「紅葉が一面に広がり、冷たい風が吹くようになり、衣替えによって変わっていく服装」

秋津洲「つまり秋かも!」

提督「その通り。まあ紅葉はまだなんだが」

秋雲「まーた、提督の暇つぶしに付き合わされたよ」

あきつ丸「暇だったのでありますか?」

提督「間違ってはいないが……いやほら、お前たちも秋を楽しもう?」

秋月「そうですよ、せっかく外に出たんですから」

あきつ丸「そうでありますな」

秋雲「こっちは暇じゃないんだけどー」

提督「何かあったのか?」

秋雲「次の本のネタだし」

提督「はーい、一名様ご案内ー」

秋雲「だよねー」

秋津洲「提督、焼き芋屋さんがあるかも!」

提督「ふーん」

秋津洲「……焼き芋屋さんがあるよ!」

提督「えぇ、アイデンティティを捨ててでも欲しいのか……」

秋雲「でもま、それくらいは買ってくれるよね?」

提督「しょうがないな……これくらい買ってやるよ」

秋月「そ、そんな高価なものは受け取れません!」

提督「高価……?」

あきつ丸「いくらなんでも高価ではないのでは……」

秋月「そ、そうですか? でも……」

秋雲「仮に高くても、提督の男を見てあげる場面じゃない?」

秋月「男を……」

提督「その言い方は気になるが、焼き芋くらい買ってあげられないような狭量な男だと勘違いされても困るがな」

秋津洲「秋津洲の言葉は無視されたかも」

提督「秋津洲ってそういうキャラだし……」

秋津洲「ひどいかも!?」

秋月「で、ではわかりました。司令、秋月に男を見せてください!」

あきつ丸「その言い方は危険であります」

~~~~~~~~

提督「やっぱ秋は焼き芋だな」

秋津洲「あふいはも~はふはふ」

あきつ丸「甘くてホクホクしているであります」

秋月「これが司令の男の証ですか……」

あきつ丸「それを引っ張ると提督殿が危険であります」

秋雲「……! ひらめいた!」

提督「なにがだ?」

秋雲「次のネタ! ありがと、提督と秋月!」

秋月「? どういたしまして?」

提督「……念のため聞くが、どういうものだ」

秋雲「へっへっへー、それは完成してからのお楽しみということでー」

提督「嫌な予感しかしない」

秋月「そういえば、秋は見つけましたか?」

あきつ丸「そういえば、来るときにそう言っていたでありますね」

提督「秋? ま、今日はこれくらいでいいだろう。これも十分秋だろう?」

―執務室―

提督「焼き芋屋が回り始めると秋っぽい感じがする」

提督「あと秋というと秋刀魚かな。また駆り出されるのだろうか……」

下2

酒匂「司令~」

提督「酒匂に清霜? どうかしたのか」

清霜「敬老の日に贈り物をしたいんだけど、だれにあげたらいいの?」

提督「……死ぬ気?」

清霜「なんで?」

提督「女性に年齢を聞くというのは、とんでもないほどマナー違反だ」

清霜「年齢を聞くわけじゃないんだけど……」

酒匂「誰にあげたらいいかなって思ってるだけなんだ!」

提督「敬老の日という時点で……まあ、とりあえず考えてみるか」

酒匂「ぴゃー、さすが司令!」

提督「まず、艦娘の年齢としてならだれも当てはまらないし、艦の年齢だとそれっぽくない奴まで入る」

清霜「うーん、確かにそうかも……」

提督「だから、それっぽい人で考えていく。まずは鳳翔さんは鉄板だな」

清霜「鉄板なの?」

提督「もはや入れなくて誰を入れるって感じだな。なんか敬老の日に感謝したくなる」

酒匂「そう、かも?」

提督「同じような理由で間宮もだな」

清霜「お母さん、って感じだね」

提督「そんな感じのをあげてるからな。ほかには……香取も、なんとなくかなぁ」

酒匂「ぴゃー……」

清霜「戦艦の人達はどう?」

提督「戦艦? あー、入れなくていいんじゃないか。歳くってるイメージないし」

清霜「そっかー」

提督「あ、いや待て、ウォースパイトは今も現存しているし、感謝しとけ。完全に老人だろう」

酒匂「そっかー、そういえばそうだね」

清霜「ウォースパイトさんには感謝しておけばいいのね!」

提督「駆逐艦という枠では神風もかな。なかなかいいメンツがそろったんじゃないか」

酒匂「そうだ……ぴゃっ!?」

清霜「……し、しれいかん、きよしもたちはもういくわ……」

提督「? おう」

酒匂「ぴゃー!!」ダッ

清霜「ひゃー!!」ダッ

提督「なんだあいつら……あれー、すみません、いつから聞いて……え、最初から? いや、ちょ、待って。ガチギレしている姿が珍しいとか思ってるのは本当だけど、その手に持っているものを振り下ろされたら……あ―――」

~~~~~~~~

提督「……はっ! お、俺はいったい……」

提督「なんだか、変な話をしていたと思うんだが……ううむ、思い出せん。ま、思い出せないということはどうでもいいことか」

下2

―提督私室―

14「こーんなうら若き乙女を連れ込んで、もしかしてイヨをいただくつもりなのかな?」

提督「何言ってんだ。お前が飲もうって言ってきたんだろう」

14「んふふ~、そうだけど、二人っきりでしょ」

提督「だから何だ。ほれ、とりあえずビールでいいか」

14「えー、提督のことだから、もっといいワインとかあるでしょー」

提督「いきなり出すかよ。ほれ」

14「しょーがないなぁ。ん、いただく」

提督「本来は部下が上司に注ぐべきだと思うんだけどな」

14「まあま、硬いこと言いっこないしだって! 今夜は無礼講よ!」

提督「それも俺が言うべきセリフなんだけど!?」

~~~~~~~~

14「んっふふ~、提督もなかなか飲めるじゃん?」

提督「呑兵衛集団に付き合えるくらいは最低限備えていないと、酔いつぶれるじゃ済まんからな……」

14「あー、あの勢いはすごいよねぇ」

提督「お前も人のこと言えんからな」

14「わかってるってば。提督は姉貴みたいなこと言うね」

提督「それが常人の反応というやつだ。ったく……」

14「次開けていい?」

提督「だから早いんだよ!」

14「次は……そうだ、ならイヨが持ってきたお酒にする?」

提督「何か持ってきてたのか? 手ぶらのように見えるが」

14「今日飲むって話だから事前に棚の中に……ほら、あった」

提督「もうつっこまんぞ」

~~~~~~~~

14「ウォッカもわるくないねぇ~」

提督「それ響が持ってきてたやつだが……後で買い足しておくか」

14「提督の酒蔵にはずれはないね。また来てもいい?」

提督「ヒトミにちゃんと許可得ろよ」

14「えっへへ~」

提督「……おい、お前その反応」

14「ほら、こんなおいしいお酒の前に、それは無粋だってば!」

提督「いやお前、こういうパターンってのはなあ!」

ガチャ

13「あ……! やっぱりここに……!」

14「げっ、姉貴」

13「すみません、提督……! またイヨが、ご迷惑をかけて……!」

14「迷惑じゃないって。ね、提督!」

提督「お前が決めんな。はぁ……ヒトミ、一応は責任もって部屋に返すから、今日は見逃してやってくれ」

13「提督が……そういうのであれば……」

14「さすが提督! このまま朝までコースだね!」

提督「朝までは飲まんからな!」

―執務室―

提督「……朝まで飲んでしまった……」

提督「他の奴もそうだけど、朝まで飲んで迎え酒じゃねえよ。とんでもねえよ……」

下2

―川内型の部屋―

提督「そういや、お前たちのフェアレディってなんか改造してるのか?」

川内「んー? いや、特に何もしてないと思うけど」

提督「え、でもお前たちあんだけ走ってて何もしていないはないだろ」

川内「そういわれても、心当たりはないんだよね」

那珂「那珂ちゃんは気持ちよく走れればそれでいいの」

提督「……?」

神通「あの、ちょっと……」

提督「どうした神通」

神通「実は、その辺りは私がやっているんです……」

提督「神通が? 意外ではないが、なぜ一番乗り気じゃない神通が」

神通「初めは姉さんがしようとしたんですけど……」

川内「……あー! エンジンをもっとかっこよくしたいって言ったら、神通が止めたんだっけ」

神通「その、一応提督からの借りものですので、姉さんに任せるのはちょっと危険だと思ったので」

提督「借り物……? ……ああ、一応所有者は俺になってるのか」

川内「提督忘れてたの?」

提督「すっかりお前たちのかと思ってた……でも、さっきの神通の口ぶりから少し弄ったんだろ」

神通「はい。すみません……」

提督「謝らなくていいって。多分乗る機会ないし」

那珂「結局どんなチューニングをしたの?」

神通「タイヤ・ホイールから始めて、スプリングやブレーキ。サスペンションですね」

提督「ほ、ほう」

神通「あまり本格的にチューンしてしまうと、前述の理由もありますが、肝心の普段の乗り心地が失われてしまうため、なるべく簡単なカスタムのみにしました」

提督「……」

神通「初めにこの辺りを走ったとき、姉さんの運転にも不安はありましたけど、滑りやすいタイヤが一番に気になったので、まずそこからでした」

提督「(そうなの?)」

川内「(そういえば、最初走ったときより機動性が上がったような……)」

神通「そして、また海外で走るとなったとき、再び走りやすいようにするためタイヤを変えて、さらに車体の安定性の向上を目的に――」

那珂「(那珂ちゃんさっぱり理解できない)」

川内「(私も)」

提督「(とりあえずお前たちは神通に感謝しておけよ)」

―執務室―

提督「川内と那珂ちゃんの運転の裏側にはあんな補助が付いていたのか……」

提督「つかあいつらなら本当にレースに出れるんじゃないか……?」

下2

―提督私室―

漣「ボンビーあーげる!」

暁「いらないんだけど!」

提督「ちょ、こっちに来るなよ。牛歩カード」

暁「あー! し、司令官……!」

狭霧「さすがに牛歩は酷すぎませんか……?」

提督「じゃあ狭霧が受け取ってあげればどうだ」

狭霧「えっと……ご、ごめんなさい?」

暁「わざわざ謝らなくていいし! ぐすっ……」

狭霧「す、すみません! すみません!」

漣「謝ることしかしてないのが逆に煽りになってますな」

提督「狭霧って案外いい性格してるよな」

狭霧「ええっ!」

暁「ふ、ふん、ここからでも逆転してやるし!」

漣「あら、キングに変身したみたい」

暁「」

狭霧「暁ちゃん? 暁ちゃん!」

提督「あまりのショックに固まったみたいだな」

漣「ご主人様がやりすぎたから」

提督「本当は漣に使うつもりだったんだが、即逃げたからなお前」

漣「てへっ」

狭霧「ど、どうしますか?」

提督「さすがにかわいそうだから、間宮アイスでももらってくることにする」

漣「漣のもしくよろ!」

提督「知らんわ。冷蔵庫に入ってる俺のアイスでも食べてろ」

漣「はーい」

提督「ふぅ……あれ、扉があいてる」ギイッ

響「……」
雷「……」
電「……」

提督「びっくりした!」

響「楽しそうだね」

提督「楽しいけど、お前らは何でそんな隙間から見てたんだ」

雷「あ、暁が心配だったから」

電「別に、電たち以外にも相手がいたことに驚いているだけなのです」

響「暁が迷惑をかけていないかと思って」

提督「なんだお前らの暁への信頼……」

雷「そ、そんなつもりじゃないのよ?」

響「良くも悪くも等身大の暁みたいだったから、つい」

提督「……ははん、お前たち、ちょっと寂しいんだろう」

電「ち、違うのです」

提督「そんな心配しなくても、姉妹と友人は違うものなんだから気にするな。お前たちにしか見せない顔だってあるだろう」

電「ん……」

響「と、とにかく心配ないみたいだから戻るよ」

提督「混ざっていかないのか?」

響「四人用のゲームでかい」

雷「それに、さっき司令官が言ったでしょう。友人にしか見せない顔ってあるんだから、それを尊重してあげなくちゃ」

提督「そっか。よし、ついでだし、食堂で何かおごってやる」

電「一番高いパフェにするのです」

響「ビンテージワインもたまにはいいかな」

提督「手加減ないな!」

―執務室―

提督「冗談で済んでよかった……まあ、間宮のところでそんなものは置いてないんだが」

提督「なんにせよ、いつものメンツが崩れると気になるってのはわからんわけでもない」

下2

提督「は? サラの声の浮遊要塞?」

サラトガ「はい。サラもまゆつばもの?っていうものかと思ったんですけど……」

提督「いや実際ありえんだろ。何かの聞き間違いじゃないのか」

サラトガ「そうだと思っていたんですけど、実はその様子を録画していたものがありまして」

提督「録画……青葉か。なら合成だな、間違いない」

サラトガ「鈴谷さんなのですが……」

提督「嘘だな。インスタグラムで流行っているあれだろう」

サラトガ「ど、どうしたら信じてくれるんですか?」

提督「百聞は一見に如かずという。証拠を見せてくれ」

サラトガ「あ、そうですね。その、ここの……」

提督「ふむふむ、どれどれ」

浮遊要塞『行きます! 航空隊、発艦はじめ!』

鈴谷『でしょでしょ! これすごくない!』

熊野『そんなこと言っている場合ではありませんわ! はやく対空に移行しますわよ!』

提督「……おおう」

サラトガ「これ、サラの声ですよね」

提督「聞く分にはな」

サラトガ「ど、どういうことなんでしょう? これはもしかして、サラは実は浮遊要塞だったということなのでは……」

提督「いや、混乱するのはわかるが、それはないから安心しろ」

サラトガ「うぅ……」

提督(まあ、こういう場合は直接訪ねるのが一番だな)

―???―

提督「説明を頼む」

ヲ級「……本当、貴方は人間なんでしょうか……」

提督「いや今そういう話してないから」

ヲ級「……本人に直接聞いてください」

提督「本人……おお、もしかしてそこのたこ焼きが」

浮遊要塞「たこ焼きじゃないです!」

提督「やっぱりサラの声だな……いったいどういうことなんだ?」

浮遊要塞「実は声が似ていたので、真似てみたんです!」

提督「……それだけ?」

浮遊要塞「はい!」

提督「……とりあえずさ、お前見た目ももうちょっとこだわろう」

ヲ級「そこじゃないと思うんですけど」

浮遊要塞「はい! 将来はサラトガさんのような見た目の姫級になるのが夢です!」

ヲ級「そんなこと思ってたの!? 相手は敵なのだけど!?」

―執務室―

提督「敵ながら面白い奴だった。ついでにサラが言ってくれなさそうなセリフとかも言ってもらってしまった」

提督「しかし、サラ本人にはなんて説明するか……ま、放っておいていいか!」

下2

―演習場―

提督「クレー射撃を主砲でするぞ」

大和「難易度が上がっていませんか」

提督「ははは、だろうな」

ビスマルク「でも、面白そうじゃない」

アイオワ「そうね。ここには各国の戦艦が集まっているのだしね」

ガングート「誰が一番か決めるいいタイミングということか」

リシュリュー「あら、そんなことするまでもないんじゃない」

ガングート「くく、これが謙虚というものか」

リシュリュー「……ふうん」

リットリオ「け、喧嘩はやめてください!」

ウォースパイト「にぎやかね……」

提督「ふっ、みな闘志は十分ということか」

大和「まだやるとは言っていないのですが……」

提督「このボタンを押せば、あっちの方にクレーが飛ぶ。それを狙って当たった数が多い方が勝ちだ」

大和「有無を言わせないんですね」

アイオワ「一番手はもらうわね。さあ、来なさい!」

提督「ぽちっとな」

シュシュシュシュシュ

ビスマルク「クレーってあんなにたくさん出るものだったかしら?」

提督「すまん、普通に不具合だ」

アイオワ「構わないわ。こっちのほうが、面白そうじゃない!」ドンドン

リットリオ「あれだけ飛んでいたクレーが全部割れました!」

リシュリュー「いえ、全部じゃないわ」

ウォースパイト「八割というところね」

ガングート「とはいえ、予想外の場面であそこまでできるのなら、たいしたものだ」

リットリオ「な、なんだか皆さんすごいですね……」

提督「国の威信を背負っていると思えば、こんなものだろ。最近着任した奴らは真面目な奴が多いしな……」

ビスマルク「私もまじめよ?」

提督「いいから撃てよ」

ビスマルク「冷たいわね!」

~~~~~~~~

提督「結果は……」

ガングート「平等ではなかった! 再戦を要求する!」

リシュリュー「飛んできた数は違っても、割合で考えれば結果はでたじゃない」

ビスマルク「私の時は一つしか出なかったわよ!」

アイオワ「外したからゼロ点ね」

ビスマルク「ちが……ってはないけど、私も再戦したいわ!」

リットリオ「私の時はとんでもないほど出たんですけど……」

ウォースパイト「設定はどうなっているのかしら?」

大和「提督、どうしますか」

提督「……実は妖精さんが作ったものだからよくわからん」

―執務室―

提督「非難されたけど、次までに調整と鍛えてくるという話で完結した」

提督「というか、主砲で当てるってとんでもないことなのに当てやがって……実戦でもうちょっと生かしてほしい」

下2

―鳳翔の店―

提督「――で、慰め会ってわけか」

天龍「別に慰めてほしいわけじゃないからな!」

神風「まあ、私も昔のことを考えれば、そう思われるのに理解がないわけじゃないけど……」

提督「わざわざ口で言ってる時点で自分に言い聞かせているだけだな」

神風「うるさい!」

ガングート「……」

提督「それで、ガングートはどうしたんだ?」

ガングート「敬老、とは言われたが、何のことかわからないのだ」

提督「ロシアにはないんだっけか。日本発祥だし仕方がないのかもしれないが」

ガングート「? 意味を聞いてもよいのか」

提督「周りの反応でわかると思うが……」

~~~~~~~~

ガングート「……!」ガタッ

提督「なんで拳銃をもってこっちに向ける! そもそも、だれに祝われたんだ!」

ガングート「……ヴェールヌイだ。そうか、そのように思われていたのか……」

天龍「俺もだ。まあ、第六駆逐艦どもからなんだけどよ……」

神風「私は清霜たち……と、響もいたわね」

提督(さすが響だ。見事にダメージを与えていきやがった!)

神風「何にやにやしてるの」

提督「いやいや、なんでもない。それより、お前たちの慰めになる人を連れてきたんだ」

天龍「慰めはいらねえって」

神風「いえ、それより、慰めになる人って……」

提督「そうだ、地味にうちの中でガングートの次におばあちゃんという、金剛先輩だ!」

金剛「おばあちゃんじゃないデース」

神風「そういえば、金剛さんは……なるほど」

天龍「これが大先輩か……」

金剛「いい加減にするデース! おばあちゃんじゃないって何度言ったらわかるのですカ」

提督「言ってはないぞ」

ガングート「なるほど、だが、なんの慰めになる」

提督「聞いて驚くな。そんな経歴がありながら、彼女は誰からも祝われなかったのだ!」

金剛「ちょっと待ってくだサイ。それはつまりまだまだ若いと思われているということデス」

神風「そうなんですね……」

天龍「あー、ほら、一緒に飲むか」

ガングート「……考えてみれば、慕われているということでもあるのか。ふん、まあいい」

金剛「シット! テイトクー、こんな慰め方は聞いていないデース!」

提督「まあまあ、不満なら俺から祝うから」

金剛「そういう意味で言ったんじゃないデース!」

―執務室―

提督「金剛は年齢的にはウォースパイト超えてるんだが、なんかイメージ的にはそこまで歳っぽくない」

提督「いいことなんだろうが、忘れられているということでも……いや、なにもいいますまい」

下2

提督「ここちよう昼下がり。これはもう昼寝をするしかないな」

龍驤「……きみ、言葉につながりがないで」

提督「そんなことは重要ではない。さあ、布団なら用意した」

龍驤「いつもながらこういうことは早いんやな」

提督「ふふっ、そう褒めるな」

龍驤「褒めとらんわ! ……はぁ、このやりとりも何回目やろ」

提督「お前とは昔からの付き合いだからな。だから、今更だろう」

龍驤「せめて誘い方をなぁ……」

提督「? はぁ、少女漫画風に誘えばいいのか」

龍驤「……そないやから、うちも心配しとらんけど」

提督「とりあえず、寝るってことでいいな」

龍驤「まあええわ。おさわりは禁止やで」

提督「湯たんぽにして抱きしめるだけだからセーフだな!」

龍驤「思いっきり触っとるやろ!」

提督「そんな細かいこと気にするな。大きくなれないぞ」

龍驤「うちが、小さいって、言いたいんか?」

提督「滅相もないです」

龍驤「……さ、先に寝とるで」

提督「自分から横になるなんて。やはり龍驤も眠かったのか」

龍驤(冗談で言っとるんか判断つきにくいなぁ……)

提督「では俺も失礼して」

龍驤「ん……」

提督「はぁー、今日は疲れたなぁ」

龍驤「嘘やろ。朝から外で走っている姿、みとるで」

提督「あれは……そう、部下とのスキンシップだ。なにもおかしくはない」

龍驤「今回のも?」

提督「そんなものだな」

龍驤「そか。……ところで、一つ聞いてもええか」

提督「なんでもどうぞ」

龍驤「うちの状況って、よく駆逐艦相手を誘うって聞いたんやけど」

提督「……せ、潜水艦もだぞ」

龍驤「相手は」

提督「る、ルイ」

龍驤「……喧嘩売っとるやろ?」

提督「……zzz」

龍驤「寝たふりやめや!」

提督「zzz! zzz!」

~~~~~~~~

提督「ふぅ、今日の龍驤は優しかったな」

提督「そもそも温かいんだからしょうがないよな。別に間違った選択はしていない」

下2

―庭―

提督「空を見ろ。あんなにも眩く輝いているぞ」

雪風「しれぇ! このお団子美味しいですよ!」

谷風「やっぱ月見に団子は粋だねぇ」

磯風「このくらい、私にも……」

浦風「それはやめてくれぇや」

提督「……そもそもうちの鎮守府には花より団子派が多いのではないだろうか」

浜風「私は月が綺麗だと思いますよ」

提督「もう私死んでもいい的な?」

浜風「いえ、そこまで言いませんが」

初霜「えっと、それって……」

浜風「どうかいたしましたか?」

初霜「いえ……」

浦風「浜風はそういうことには疎いんじゃねぇ」

浜風「?」

提督「まあ真面目に受け止める奴には言えないしな」

磯風「よくわからんが、団子は食べないのか」

谷風「もう残り少ないけど」

提督「お前ら食いすぎだろ」

浦風「ええよ、次作っちゃるけぇ」

磯風「ふっ、この磯風も手伝おう」

浦風「いらん」

磯風「!?」

谷風「そんなに驚くことかねぇ」

雪風「雪風も手伝いますか?」

提督「なら、俺も手伝おうかな」

浦風「それじゃ、浜風たちはちょいと待っとき」

浜風「ええ」

磯風「なぜ二人はいいのだ!」

谷風「わかってないところが恐ろしいってね」

~~~~~~~~

提督「作りすぎた」

初霜「お疲れ様です」

提督「問題はなかったか? 磯風が独断で毒団子作ったりとか」

谷風「おっ、それはおやじギャグかい?」

提督「違うわ」

初霜「そ、そこまで心配しなくとも、大人しくしていましたよ」

浜風「少々ショックだったようでしたが」

提督「自覚のない飯マズはとんでもないな……」

浦風「ほら、そんなにすねちょらんで、新しい団子じゃ」

磯風「む…………美味いな!」

提督「機嫌が直るのも早いな」

初霜「いいところですよね」

提督「まあ、そうともいうのか。雪風も手伝ってもらってありがとな」

雪風「いいえ、むしろ楽しかったです! 来年もみんなでお月見したいですね!」

―執務室―

提督「いやしかし、混ぜてこねて茹でるだけの団子をまずく作る方法は……」

提督「……ありそう、だな。さすがに月見どころじゃなくなるのは避けたい」

下2

提督「山に行くか」

高雄「私は部屋に戻りますね」

提督「ちょっと待て、お前がここにいるときに口にしたということは、わかっているだろう」

高雄「提督と二人、ですか」

提督「行先も行先だし、それでもいいが……」チラッ

高雄「外に……?」

提督「どうせなら巻き込むか」

高雄「ほどほどにしてあげてくださいね」

―高雄山―

提督「高雄山といえば複数あるが、有名なのはここ、京都の山だな」

高雄「紅葉がきれいですね」

浦波「さすがに有名なだけはあります。磯波姉さん、ここからの景色とか最高だよ」

磯波「せっかく買った一眼レフのいい被写体……」

浦波「設定は?」

磯波「ひとまずはオート。何か撮りたいシーンがあればその都度変えるつもりだよ」

提督「……あいつら、なんか予想以上にガチじゃないか」

高雄「誘うときもカメラの使い方の練習をしていましたからね」

提督「……まあ、写真撮影の時は頼ろうか」

高雄「そういえば、高雄山に来た理由は……いいですけど、目的は何ですか?」

提督「理由と目的って同じ意味だと思うのだがな。目的といっても、観光だが」

高雄「この辺りには寺院もありますし、麓には有名な食事処もありますけど」

提督「時間的に全部回るのは厳しいか。なら、護神時を見回った後、麓の料亭で軽く食べた後、少し見て帰ろうか」

高雄「はい」

~~~~~~~~

提督「川のせせらぎも木々のざわめきも、近所の山とは大違いだな」

高雄「あら、身近の山もいいところではないですか」

提督「だけど、ここまで四季もはっきりしているさまも珍しいだろう」

高雄「他の有名な山も、こんな感じですよ」

提督「高雄、なんだか今日は素直に認めないな」

高雄「それはその、なんだか自分の名前の山を褒めるのは恥ずかしいじゃないですか」

提督「お、珍しい高雄が照れているシーン。磯波、撮ってくれ!」

高雄「あ、や、やめてください」

磯波「……」

提督「磯波?」

磯波「……! 提督! 今一瞬のシャッターチャンスを待っているんです! 邪魔しないでください!」

提督「す、すまん」

浦波「だめですよー。この状態になった磯波は戦艦相手でも殴り掛かるくらい狂暴なんですから」

提督「えぇ、磯波性格変わってるじゃん……」

高雄「カメラを持つと性格変わる人ってたまにいますよね」

―執務室―

提督「恥ずかしいとは言っていたが、高雄山の観光そのものには満足してくれたみたいでよかった」

提督「磯波は……現像した写真は、確かに素晴らしいものだったな……」

下2

提督「よーし、かくれんぼをするぞー」

占守「かくれんぼっしゅか! 負けないっしゅよ~」

国後「そんなことしてる余裕あるのかしら」

提督「余裕はあるものじゃない、作り出すものだ」

択捉「……! な、何となくいい言葉のような気がします!」

国後「それは気のせいだと思うわ」

占守「えー、クナたちやらないっしゅか?」

国後「占守、遊んでばっかりいられないのよ」

提督「いや、遊ぶ余裕があって言ってるんだぞ」

国後「司令が言っても信用ならないんだけど」

松輪「それなら……あの人に許可をとれば……どうですか」

国後「あのひと?」

―公園―

提督「さあ隠れるがいい!」

占守「わー!」

国後「こけたりしないように気をつけなさいよ」

択捉「かくれんぼ、初めてします」

松輪「松輪も……です」

提督「そうなのか? まあ難しいことはない。この公園の中であれば、好きな場所に隠れていいぞ」

択捉「でも、どこに隠れましょう?」

松輪「司令……あの、どこに隠れたらいいと思いますか」

提督「え、俺に聞くの?」

国後「こら、鬼に隠れ場所聞いちゃダメでしょ!」

択捉「ですけど、こういうのは遊びをよく知っている司令に聞くといいと聞きましたが」

提督「その選択肢は間違いではないが、時が悪いな」

占守「そうっしゅよ! 占守が教えてあげるから、早く隠れるっしゅ!」

択捉「は、はい!」

~~~~~~~~

占守「さすが司令っしゅ。この占守を見つけるなんて……」

提督「お前が一番最初に見つかったんだがな」

占守「しゅ~……」

国後「ところで、択捉は?」

松輪「まだ……見つかってないみたい……」

提督「もう公園全域探したと思うんだけどなぁ」

占守「占守のアドバイスの賜物っしゅ」

国後「結局何もアドバイス出来てなかったと思うけど」

提督「うーむ、あとはその辺の茂みの中とか」ガサガサ

占守「さすがにそんなところに隠れてはいないっしゅよ~」

択捉「あ、見つかってしまいました」

提督「……本当にこんな近くにいたんだな」

択捉「その、意外な場所のほうが見つかりにくいって松輪が言ってましたから」

国後「松輪が?」

松輪「うん……」

提督「なるほど、確かに松輪も見つかりにくいというより、なかなか探さない場所にいたな」

国後「これは、かくれんぼは二人の勝ちかしらね」

択捉「あ、ありがとうございます!」

松輪「ありがとう……ございます?」

―執務室―

提督「さて、許可を得たあの人というのは秘書官だったが、別に保護者というわけではないんだぞ」

提督(というか、今まできちんと秘書官に話を通したことってほとんどなかったな……)

提督「……そもそも、そろそろ潮時かもな」

提督「秘書官を任せるのは」

~~~~~~~~

霞「解任、ねぇ」

提督「異論はないな」

霞「……別に、異論も、未練もないわ」

提督「ま、だろうな。秘書官……霞からすれば、とんだ迷惑な話だっただろうしな」

霞「ええ……」

提督「霞に任せたのは、叱咤激励をきちんとしてくれる。そして、決して甘くはない相手だったから」

霞「聞いてるわ」

提督「仕事もどんどん積極的にやってくれるようになったよな」

霞「だんだんと私の割合も増えていったけれど」

提督「……す、すまん」

霞「別に構わないわ。今日で解放されるわけだから」

提督「ああ、今までご苦労だった」

霞「……ふん」

~次の日~

吹雪「それで昔のように秘書艦を順番にってことですね」

提督「心配かけて悪かったな」

吹雪「いえ、それはいいんですけど……でも、心配ですね」

提督「心配? 何がだ」

吹雪「霞ちゃんですよ。今まで仕事漬け……というほどではないにせよ、今までやっていた日課が急になくなるんですから」

提督「日課って、あんなものを日課にされる方も迷惑だろう」

吹雪「それはそうかもしれませんけどね」

提督「しかし、流石に仕事量が一気に増えると大変だな」

吹雪「今までみたいに遊ぶことが出来なくて残念ですね」

提督「今こうしていると、毎日遊んでいた日々が輝かしいものに感じてくるよ」

吹雪「じゃあ、霞ちゃんをを再び秘書官の枠に戻しますか?」

提督「そんな自分のわがままで撤回できるか。ほら、これを工廠まで持っていってくれ」

吹雪「はーい」

―朝潮型の部屋―

朝潮「この前、可愛い犬を見つけたの。ほら、写真にもとって……」

霞「……」

朝潮「……大丈夫、霞?」

霞「……」

霰「燃え尽きてる……」

荒潮「聞いたことあるわ~。今まで精魂込めてやっていたものを失うと、こんな感じになるって~」

満潮「定年退職した人みたいね……」

大潮「飴食べる?」

霞「……あんまり勝手なこと言わないで」

朝潮「やっぱり、司令官に言いに行きましょう。戻してほしいって」

霞「別にそういうのじゃないわよ。ちょっと、心配なだけよ」

荒潮「倒れたことあるものねぇ。それで、秘書官、なんて枠を作ったのだけど」

霞「そうよ。それにしては息抜きの期間が長すぎたと思ったけど……」

朝雲「……正直、話はよくわかんないんだけど、霞は秘書官嫌だったの?」

霞「それなりにはね」

山雲「でも~、あんまり嫌そうにはしていなかったと思う~」

朝潮「やっぱり言いに行きましょう」

霞「いいってば!」

スタスタ ガチャ バタン

朝潮「あ……」

大潮「正直じゃないよね!」

霰「うん……」

荒潮「それなら、提督の方に伝えてみましょう?」

朝潮「……そうしましょうか」

―執務室―

提督「で、俺のところに来たわけね」

朝潮「はい。司令官も、霞のことが嫌いなわけではないですよね」

提督「あったりまえだろ。でもなぁ、今まで苦労かけてきたわけだし」

満潮「今更よ」

荒潮「今更ね~」

提督「えぇ……」

吹雪「いいんじゃないですか」

提督「吹雪までそういうか」

吹雪「そもそも、前に倒れた時より今のほうが格段に仕事も増えているじゃないですか」

提督「艦娘も増えたしな」

吹雪「パンクします」

提督「……そうか?」

吹雪「今はまだいいですが、末になるととんでもない量になります。秘書艦もろとも倒れます」

提督「マジで」

吹雪「マジです」

提督「あー……なら、しょうがないか」

吹雪「はい。しょうがないので、頭を下げて迎えに行ってください」

提督「まさか一日で連れ戻す羽目になるなんて……吹雪、いない間に何かあればすぐに知らせてくれ」

吹雪「了解しました」

ガチャ バタン

朝潮「……なんだか、思ったよりあっさりなので拍子抜けしました」

吹雪「司令官も、たぶん内心で必要だと感じていたからだよ」

朝潮「そうなの。なんとなく、嬉しいですね」

―母港―

提督「ここにいたか」

霞「……何よ」

提督「いや、なんというかな……」

霞「……はっきりしなさい。そして、用があるなら目を見て言いなさいな!」

提督「はは、昔はそういって叱られたな」

霞「あんたは今ほど私たちに目を向けることはなかったから。ふん、一度遊び始めたらここまで堕落するとは思わなかったけど」

提督「凝り性なんだ。もともとこんな感じさ」

霞「……で、何の用」

提督「その、だな。昨日ああいったはいいが……もう一度、秘書官をやってくれないか」

霞「吹雪たちの役割はどうするのよ」

提督「秘書艦の方なら続けるさ。せっかく、こうして親交を深めたわけだしな」

霞「そう」

提督「もちろん、霞に振る仕事は減らすから――」

霞「――今まで通りよ」

提督「え?」

霞「今まで通り。私の方にも同じだけ仕事を渡しなさい」」

提督「大変だったんじゃなかったのか?」

霞「大変よ! 期限だっていうのに、ギリギリまで書類が戻ってこなかったり! 明らかなミスを何度も直したり! 徹夜したことも少なからずあるわ!」

提督「それは……なら、なんで引き受けようと思うんだ」

霞「……知らないわよ。私でも」

提督「なんだそりゃ」

霞「でも一つだけ言えることがあるわ。それは、あんたが放っておけないから」

提督「お前……」

霞「一人にしたら何をしでかすかわかったものじゃないわ」

提督「ガキ扱いか……ま、俺も霞がいてすごく助かっていたと実感したよ」

霞「……ほら、戻るわよ」

提督「うむ。……秘書官」

霞「何」

提督「なんでそんなに顔がほころんでいるんだ?」

霞「――!」

                               ヽ`
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<シテキシタダケナノニー!

霞「そういうことは、わかっていても言わないのよ! クズ!」

―完―

今回のスレで完結です。
閲覧ありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年09月23日 (土) 05:52:51   ID: W8qPtWij

毎日の楽しみが終わってしまった…
しかし綺麗な完結だった

2 :  SS好きの774さん   2017年09月23日 (土) 19:01:39   ID: mZEuNsR4

3年以上続くとは…
最初に電とかくれんぼを始めたときには想像もしなかったです

3 :  SS好きの774さん   2017年09月23日 (土) 22:04:36   ID: m7XJEVW8

唯一毎日チェックしてたSSが終わってしまった。多分次回作はなさそうな感じかな。

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