……何。駄目に決まってるでしょ。一緒だよ。……もう、プロデューサーだって分かってるでしょ、私たちの関係。そ、私とプロデューサーは一緒なの。一緒。そうじゃないのは認めないから。

ん、それでいいの。……ああ。あとあれ、寝るのもそうだから。前みたいにベッドの端に寄るのも駄目だよ。あんな身体外に出しちゃったら風邪引いちゃうし寂しいじゃん。今日は、ちゃんと真ん中で寝ること。

……。

…………プロデューサー……。

……もう、そうだよ。それでいいの。……初めからそうやって答えてくれればいいだけなのに。ほんと、なんていうか。

まぁうん。それじゃ、今日はそういうことで決まりね。ちゃんと守ってよ？ ……ん、よし。

……と。うん、そうそれ。着替えといて。脱いだのはそのままソファに。ん、それでいいよ。

じゃあ着替え終わったら先に座っといてね。大丈夫、待たせたりはしないから。どうせ籠へ入れに行くだけだし、すぐ行くよ。

ああ、そういえばプロデューサー。ここ、ポケット何か入れっぱなしにとかは？ ……大丈夫？ 分かった。そしたらジャケットはとりあえずここでハンガー掛けちゃうね。

……。

…………プロデューサー。

ああいいよ。着替えながらで。そんな大したことじゃないし。

うん、べつにちょっとしたこと。なんか今日はジャケットからプロデューサーじゃない人の匂いがするなぁ、って思って。

誰のだろ。香水っぽい匂いだし大人組の誰かだよね。……楓さんか……楓さんから飲みに誘われた時、そこに礼子さんとかも居たのかな？

……あれ、違うんだ。……ああなるほど、奏ね。そういえば今日は収録一緒だったっけ。化粧品の？ そっか、確かにイメージあるからね。そこで付いたんだ？ ふぅん、そっか。

あ、脱げた？ それじゃ渡して。ほら、持ってくよ。

……ん、だからべつに怒らないって。大したことじゃないからって言ったじゃん。あー今日はそういうことがあったんだなーって、そんなふうに思うだけだよ。

女の人が周りにあんなたくさん居て、それでそういう仕事なんだからさ。匂いだとか何とか、そういうのはむしろ無いほうが変なくらいでしょ。

実際何かをしたわけじゃないんでしょ？ まぁ奏のことだし、何かを理由にしてキスを迫られたりとかはしたのかもしれないけどさ。……ん。もう、だから分かってるよ。そんな言わなくても。してないんだよね。はいはい。

大丈夫。信じてる……っていうとなんか違うような気もするけど、まぁとりあえず分かってるから。私とプロデューサーの仲というか、関係でしょ。そんなことでどうこうしたりなんてしないよ。

そ。だからほら、それ。……ん、ありがと。それじゃあ持ってくね。着ちゃったら先に座ってて。

……。

…………あっ、ごめん。プロデューサー！

聞こえてるー？ ……うん。ごめん、ちょっと一個。お箸だけ出しといてもらってもいいー？

ん、ありがとー。

……。

…………ん、っと。

……。

…………お待たせ。ん、お箸ありがと。

ああ、他はいいよ。もう全部並べ終わってるから。飲み物も、プロデューサーは最初それからで良かったでしょ。

ん？ うん、そうだよ。作ったの。お昼頃だったかな、食べたいって言ってたの聞いてたからさ。ちょうど何を作るかまだ決めてなかったし、言ってたそれを完璧に全部叶えるのは流石に無理だったけど、それでもある程度までなら材料も揃ってたから、それならと思って。

……もう、何を固まってるの。食べてくれる相手の食べたいものを作ってあげよう、って、そういう気持ちはべつに変なものじゃないでしょ？

ほら、それじゃあ食べよ。出来立てだから冷めないうちにね。……あ、お味噌汁だけは気を付けて。それもよそったばかりだから、猫舌のプロデューサーにはちょっと熱いと思うよ。

……。

…………。

………………ほら、プロデューサー。

どうしたの、早く食べなよ。せっかくプロデューサーのために作ったんだから、ね？

……。

…………何。

はぁ……やめてよ。またそれ？

嫌だよ。というか、駄目。私がここを出るとか、そんなの、絶対できないから。

プロデューサーだって分かってるはずでしょ？ ちゃんと、私とプロデューサーの関係は。

そう、そうだよ。

私はプロデューサーに監禁されてて、プロデューサーは私を監禁してるの。

だったら、駄目でしょ？

監禁されてる私が外に出るなんて許されちゃ駄目。プロデューサーが一緒に居るか、アイドルとしてプロデューサーに手綱を握られてるとき以外は、さ。

そんなことになったら私、叫んじゃうよ？ 大勢の人の前で『私、監禁されてるんです』って。……そんなの、駄目だよね？

そう、駄目なの。駄目なんだよ。

……本当。プロデューサーはさ、もう少し自覚を持ったほうがいいよ。というか、持たなきゃ駄目。

もっとちゃんとして。もっとちゃんと、私のこと監禁して。

しなきゃ駄目。荷物を持たせたり、雑用を押し付けたり、しなきゃ駄目。

ご飯を作らせて、お風呂の中へ連れ込んで、寝るときは逃げられないように痛いくらい抱かなきゃ駄目。

駄目なんだよ、プロデューサー。

だってほら、私はちゃんとしてるんだから。

プロデューサー以外とは話さないよ。触らないし、感じない。プロデューサーのアイドルとして振る舞うときだけは仕方ないけど……私、アイドルじゃない渋谷凛、プロデューサーに監禁されてる私のときはプロデューサー以外となんて関わってない。

場所も、言葉も、何もかも。プロデューサーのことは何だって分かるようにしてる。どこにいて、どんなことを喋って、どうしてるのか。全部全部。ずっと見てるしずっと聞いてる。

私はちゃんと、プロデューサーに監禁されてるんだから。

だからプロデューサーも。私のこと、ちゃんと監禁して。

思いきり縛り付けて。思うまま独占して。壊れるくらい求めて。

縛られてあげる。プロデューサーだけのものになって、求められる全部に愛を返してあげる。

だから、ちゃんとして。

私はプロデューサーのもので、プロデューサーは私のものなんだから。

前に言ってくれた通りにさ。

出逢ったあの時に私が言った『あんたが私のプロデューサー？』って、あれに答えてくれたみたいに。

いつかのライブの時の『私はプロデューサーのアイドル……プロデューサーの、渋谷凛だから』って、あの言葉に答えてくれたみたいに。

私はプロデューサーの、プロデューサー私の、なんだからさ。

だからもっとちゃんとして。

私はプロデューサーのものなんだ。って、しっかり刻み付けてよ。

本当にさ……プロデューサーがちゃんとしてくれないから、最近ちょっと困ったりもしてるんだからね。

ちゃんと監禁してくれない。ちゃんと証を刻んでくれない。

……ほら。プロデューサーがくれたの……これ、このチョーカーくらいしか無いし。

傷も、痕も、何もくれない。……というか、チョーカーだって本当は首輪のほうが良かったのに。

首輪と、手錠と、目隠しと……無理やり拘束して、縛り付けて、それでどうしようもないくらいに私を犯してくれたっていいのに。

……うぅん。そうして、ほしいのに。

本当、プロデューサーはもっとちゃんとしなきゃ駄目だよ。

もっとちゃんと監禁して、もっとちゃんと証を刻んで、もっとちゃんと私を愛してくれなきゃさ。

駄目。駄目だよ、許さない。

許さないから。

……うん、そう。そうだよ。それでいいの。

私はプロデューサーのもの。プロデューサーは私のもの。監禁されてて、監禁してる。

それ以外は無いんだからさ。だからそう。それ以外……私を縛って愛する以外の未来なんて、見なくていいの。考えなくていい。選ぼうとなんてしなくていいんだよ。

大丈夫、幸せだよ。他のどんな未来なんかよりもきっと、ずっと、もっと。

だからさ、ちゃんとしてよ。ちゃんと、ちゃんと、してよ。

ねぇ、プロデューサー。



「愛してあげる。愛を返して、愛を贈ってあげる。……だから、そうして私がプロデューサーのことを愛せるように……ちゃんと、私のことを愛してよ……」

以上になります。
お目汚し失礼しました。