理樹「………終点?」佳奈多「グゥ………」 (53)

「終点、日根野、日根野です。右側のドアが開きます。ご注意ください……」

理樹(僕の心地よい眠りは機械的なアナウンスで妨げられた)

理樹「………終点?」

理樹(その言葉の意味を理解するのに数秒とかからなかった。そして理解した瞬間、全身の血液が冷たくなるのを感じた。胃の底からすっと力が抜け、周囲の環境音が妙に大きくなったような気がした)

理樹「終点だって!」

理樹(もう一度その言葉を繰り返し、思わずシートから立ち上がった。乗った時はあれだけ混雑していた車内が今はすっかり静かだった)

「グゥ………」

理樹(そんな中、すぐ隣から間の抜けたイビキが聞こえた。そうだ、そういえば今日は2人で来ていた。だからこそ油断してしまったんだ)

佳奈多「……んん……」

理樹「…………どうすればいいんだ」

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早朝



佳奈多「ほらっ、葉留佳が起きないうちに早く出るわよ……っ!」

理樹「分かってるよ……!」

理樹(二木さんに急かされ、静かに素早くドアを開けた。葉留佳さんのいつもの起床時間を考えるとここまで早くアパートを出るのは慎重すぎるが、二木さんの性格上諦める他ない)

理樹(アパートの外は鳥のさえずりが明確に聞こえるほど静かだった)

佳奈多「ああ、携帯を忘れちゃったわ」

理樹(鍵を閉め後で二木さんが眉をしかめながら言った)

理樹「いや、僕も部屋に置いてきたよ。どうせ今日はずっと電源を切っておかないといけないしね」

理樹(葉留佳さんからかかってきた時、わざわざ拒否するのも嫌だ。それに家に電話が置いてあるという事は「心配はいらない」というメッセージにもなる)

佳奈多「……ま、いいか。それじゃ行きましょ」

理樹「うん」

理樹(今日は二木さんがバレンタインデーに向けて葉留佳さんに渡すチョコを厳選する予定だ。なんでも今は女の子が男の子に渡すだけではないらしい。こういうイベントを利用して積極的に仲を縮めていこうという策略なんだろう。つくづくこういう所は鈴に対する恭介を思い出す)

現在




理樹(時計は0:30分を指している。帰りの電車はない)

理樹「ハァーー………」

理樹(隣の二木を起こしたくない。出来ればこのまま二木さんを放って全力で逃げ出したい。しかし、この見知らぬ土地のどこへ逃げようというんだ)

佳奈多「……………」

理樹(座り直し、もう一度二木さんの方をちらりと振り返る。起きる気配ない。いったいどうしてこんなことになったんだろう。慣れない早朝に起き上がって出かけたから?久々の都会に2人してテンションが上がって関係ない所を見て回りまくったから?おそらく両方だろう。少なくとも終電ギリギリまでいなければ終点まで寝ていてもまだなんとかなったはずだ。ああ、無情)

理樹「二木さん」

佳奈多「……着いた?」

理樹(ゆっくりと目を開いた。まだ寝たりなさそうだ)

理樹「いや、その……」

理樹(どうオブラートに包もうか迷っていると後ろの方から見回りに来た車掌さんがストレートに言った)

「終点でございます。ご乗車お疲れさまでしたー」

佳奈多「なっ」

理樹(二木さんのクールな顔が一瞬で崩れた数少ない瞬間だった)

駅前

理樹(乗り越し精算を済ませて駅を出るまで二木さんは無言だった)

佳奈多「……………」

理樹「こ、これからどうしようか……」

佳奈多「ふっ……ふふっ…」

理樹「!?」

佳奈多「……最悪ね。本当に……最悪」

理樹(突然笑ったかと思うとこの世の終わりを彷彿させる顔に変化し、アスファルトの地面に三角座りした)

理樹「ちょっと、こんな所で!服が汚れるからやめなよっ」

佳奈多「どうすればいいの……帰りの電車はないし終点まで来たせいでタクシーを呼ぶ程のお金も残ってない……」

理樹(あまりの沈みように二木さんが絶望の海に溺れているような錯覚を覚えた。そんな時、ふと名案が思い浮かんだ)

理樹「あっ、そうだ!葉留佳さんに電話してタクシーで来てもらったらどうかな!?携帯は家にあるけど幸い公衆電話を使うほどのお金は残ってるし」

佳奈多「ダメよそんなこと!葉留佳に黙って出て行ったのに今更おめおめと助けを求められる訳ないじゃない!」

理樹(確かに、経緯からしてそんな事を言おうものなら一生笑いのネタにされるだろう。そうすると僕らは完全なる間抜けだ)

理樹「で、でもそうは言ったって他にどうするのさ?」

佳奈多「分かってるでしょう?方法は一つ…………歩いて帰るのよ」

理樹「ええー」

理樹(その言葉は1番聞きたくなったが、そう言うに違いないとも思っていた)

深夜ごとに更新していく
おやすみ(∵)

駅名は知ってる終点を適当に書いたから深い意味はないぞ
再開

理樹「…………」

佳奈多「…………」

理樹(不幸中の幸いというか、2月というのにこの数日とても気温が穏やかで深夜だというのにあまり寒くなかった。まあ二木さん的には気温がどうであれこの選択に変わりはなかったんだろうけど)

理樹「………」

理樹(しかし、いざ歩いてみたけどこれはなかなか困るな。これまでのお出かけは周りがキラキラしていて僕らを飽きさせなかったけど今は民家が並んでいる道をひたすら歩き続けるだけだから、なんというか、その、沈黙が気まずい。二木さんは顔を見るなり平気そうだけど……)

佳奈多「………?」

理樹「あっ、いや……」

理樹(お互い黙っている時に目が合ったら更にきまりが悪い。慌てて適当な会話を繕うことにした)


1.本日はお日柄もよく
2.僕の分のチョコレートってある?
3.しりとりしよう

これから上のような選択肢をたまに出すから次のレスの人が選んでくれ

理樹「えっと……このまま黙ってても面白くないし、しりとりでもしない?」

佳奈多「しない」

理樹「いきなり却下しないでよ……」

佳奈多「あなたとそんなことするくらいなら星を数えた方がまだマシだわ」

理樹「悪い話じゃないと思うんだけどな……」

佳奈多「良い話でもないわよ」

理樹「よ……よ……夜は長いし、きっと気も紛れるよ?」

佳奈多「さっきから嫌にしりとりに執着するわね」

理樹「ね?……ね……むくならない為にはしりとりが一番なのさ」

佳奈多「……ねえ……」

理樹「え?」

佳奈多「私の語尾で無理やりしりとりするのやめてくれないかしら。とてもムカつくんだけど」

理樹「………どうもごめんなさい」

佳奈多「チッ」

理樹(もうやめておこう)

佳奈多「……まあでも、確かに黙ったままだと体感時間も長くなるわね。少しお話でもしましょうか」

理樹(二木さんが前を向きながら言った)

理樹「そうだよね。どんな話をする?」

佳奈多「これは前々から聞きたかったんだけど、どうしてあなたまで着いてきたの?」

理樹「えっ、だって二木さんが意見を聞きたいからって連れてきたんじゃないか」

佳奈多「そうじゃなくて、どうして今回の逃亡にあなたが着いてきたかって言いたいの」

理樹(今度はばっちり僕の目を見て言ってきた。顔からはどんな感情を抱いているか読み取れない)

理樹「えっ、それは……」

佳奈多「別に生活するだけなら葉留佳と2人きりでもよくないかしら?用心棒としては頼りないし、家事も特に得意という訳ではないじゃない」

理樹(さっきまで一定の距離を保っていた二木さんがここにきて距離を詰めてきた)

理樹「い、いやっ、なんというかその……話の流れで……」

佳奈多「どうせ変な下心があったんでしょう?」

理樹「い、いやいやいや!」

佳奈多「すけべ、変態、むっつり」

理樹「…………っ」

理樹(なにか言い返そうと口を開いたが、具体的な反論が出てこなかった)

理樹「…………………」

理樹(言われてみればあの時勢いで逃げてきたけど確かにどうして僕は2人と一緒にいる必要があるんだろう。そう考えるとなんだか本当に下心がある気がしてきた)

理樹「……………うぅ…」

理樹(それから急に自分がとても恥ずかしい存在に見えてきた。思わず二木さんを見ながら情けない声をこぼしてしまった。夜がセンチな気持ちにさせるのかジワリと目尻に水が溜まりもした)

佳奈多「…………いや嘘よ?これ冗談だから。冗談」

理樹「………っ?」

佳奈多「ふん、もしかして真に受けたの?まったく騙されやすいわね。いざという時は男の腕が必要だったりするし、もしあいつからがここを嗅ぎつけたら第三者の存在が重要になるもの」

理樹(一気に淡々と説明する二木さん)

理樹「え…え……ほんと?」

佳奈多「本当よ。いるだけで何かと都合がいいのよ。私がいる前であなたなんかが葉留佳に手を出す勇気はないだろうし」

理樹「ふ、ふふっ……確かにその心配はいらないね!」

理樹(今度はみるみるうちに自信が湧いて、心に希望が灯った。少し濡れた目を擦ると何故か一瞬ホッとした顔の二木さんが見えた)





佳奈多「少し……疲れたわ」

理樹(歩き続けてから1時間くらい経った頃、二木さんが足を軽く曲げて小さな声で言った。そしてその時、僕はようやく二木さんがパンプスを履いている事に気付いた)

理樹「あっ……ど、どうしよう……そうだ、靴交換する?」

理樹(幸い僕のスニーカーは女性が履いていても違和感がない)

佳奈多「あなた馬鹿?………とりあえず少しそこのベンチで10分ほど休ませてくれれば充分よ」

理樹(と言う訳でバス停のベンチで休憩する事にした)


………………………………


理樹「ええと……今はここだから……うわ、まだまだかかりそうだね。二木さんは眠たくない?」

佳奈多「風紀委員の頃は夕方から次の日の朝までほぼ眠らず張り込みを続けていた時もあった。これくらい平気だわ」

理樹「無粋な質問だったかな」

理樹(うちの風紀委員を警察と錯覚するのは多分ほとんどこの人のせいなんだろう)

佳奈多「あなたこそ大丈夫なの?私の後をずっと追わされていたけど」

理樹「まあ君ほどじゃないけど僕もやる時はやるよ」

佳奈多「…………」

佳奈多「それはどうかしら?」

理樹「えっ?」

佳奈多「疲れというのは徐々に来ない。来る時は一気に来るものよ。これでも食べて今のうちに備えなさい」

理樹(というと二木さんが肩にかけていたカバンの中から青色の缶を渡してきた)

理樹「これは?」

理樹(包装を剥がし、缶の蓋を開けると甘い匂いが鼻をくすぐった)

佳奈多「カフェインが入ったドイツのチョコよ。糖分を補い、意識を覚醒させるにはそれが一番ね。直枝にも食べやすいようにミルクチョコレートを選んでおいたから何回かに分けて食べなさい」

理樹「ありがとう!二木さんも食べなよ」

佳奈多「いや……私は自分のがあるわ」

理樹「そう?」

理樹(二木さんがタダでお菓子をくれるなんて珍しいこともあったものだ。とりあえず気が変わらないうちにチョコレートを一つ手に取った。なんだかチーズのような形だった)

理樹「じゃあいただきます」

佳奈多「うん」

理樹(口に放り込んだ瞬間、思わず顔がにやけた。長い間こういう物を食べていないせいだろうか、甘い刺激が口の中を駆け巡り唾液が溢れた。カフェインの苦味のお陰で後味もいい)

佳奈多「どう?」

理樹「うん。美味しいよ」

佳奈多「そ、なら良いわ。じゃあそろそろ歩きましょうか」

理樹「そうだね」

理樹(そうそっけなく言って立ち上がる二木さんの足は少し軽そうに見えた)

深夜な気分になったらまた更新する(∵)

………………………………………………



…………………………








理樹「だいたいあと何時間で着くんだろうね」

佳奈多「………ねえ、もうそれ3回目よ?重要なのは何時間経つかじゃなく、どれだけ歩くかよ。つべこべ言わないでさっさと歩く!」

理樹「い、いや~……ただ、そろそろ景色を眺めるのも飽きたなって……」

佳奈多「私にそれを言って何をさせたい訳?ポケットから車を出してくれるとでも思ってるのかしら」

理樹「ごめん……」

佳奈多「ふんっ」

理樹(朝から長時間の移動で流石の僕らにも疲労と苛立ちが募ってきていた。このままでは喧嘩とまではいかなくても凄く悪い雰囲気になるのは確実だ。というか二木さんの方はもうかなりそれに近い)

理樹(ここは僕から一つ、清涼剤となるものをこの空気に投入しなければ。さて……)

1.踊る
2.泣く
3.筋肉

理樹(上着をその場に脱ぎ捨て、月に向かって雄叫びをあげた。筋肉祭の開催である)

理樹「うぉおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!」

佳奈多「なっ、なに!?」

理樹「今、僕の筋肉が真っ赤に燃えるっ!!!筋肉旋風を起こせと轟き叫ぶ!!筋肉イェイイェーイ!!筋肉イェイイェーイ!!」

理樹(僕はこう叫びながらやっと真人の筋肉イェイイェーイダンスの意味を理解した。これはただ真人が考案したものではない。自然とそうなってしまうのだ。例えば腕が痒ければ自然と掻いてしまうように、筋肉に感謝を示そう考えると自然とこの動きに行き着くのだ。僕はその域に達せた喜びを感じつつ、思う存分腕と足をくにゃくにゃさせた)

佳奈多「な、なに……っ!?」

理樹「筋肉イェイイェーイ!筋肉イェイイェーイ!ほらっ、二木さんも一緒に!」

佳奈多「は……はぁ!?何を言い出すの!」

理樹「ストレス解消にも最適だよ!?ほら!腰を振ってワンツーワンツー!」

佳奈多「……ふざけないで。近所迷惑よ」

理樹「うっ………」

理樹(まずい。二木さんの怒りが本気のトーンになってしまった。僕がやろうとしていることはもしかして逆効果なのか?いや、そんな訳がない。筋肉を……筋肉を信じるんだ。そうすれば二木さんもきっと!)

理樹「き、筋肉イェイイェエエエエエエエエ!!!!ゴホッ…イ、イェエエエエエエエエ!!!」

佳奈多「なっ、喉を潰すつもり!?というか近所迷惑だからやめなさい!」

理樹「いいや、君が堕ちるまで僕はやめない!!筋肉うぉおおおおおおおおお!!!!」

佳奈多「な、なにが直枝をここまで駆り立てるの!?」

理樹「何が元風紀委員長だ!君だって筋肉の観点から言えば1人の女の子じゃないか!真人抜きでも僕は筋肉旋風を起こしてみせるぞ!!」

理樹(その時、僕の体が黄金の光に包まれたような気がした)

佳奈多「ハッ!こ、この光は!?」

理樹「いける……いけるぞ!今だっ!!」

理樹(僕は筋肉がはち切れんばかりに腕と腰を振った。するとどうだろう。最初はそよ風程度だった僕の周りが次第に大きな風となったではないか。みるみるうちにそれは激しさを増し、とうとう”旋風”となった)

佳奈多「ば、馬鹿な……!本当にこれがあの直枝理樹なの!?」

理樹「二木さんに届け!僕の筋肉よ!!」

佳奈多「キ、キャアアアアアアア!!」




…………………………



……………


佳奈多「筋肉いぇいいぇーい!筋肉いぇいいぇーい!」

理樹(勝った。僕は二木さんの意思に打ち勝ったんだ。辛く厳しい戦いだったが、遂にやったのだ!)

理樹「ふふっ、筋肉イェイイェーイ!」

佳奈多「筋肉いぇ………はっ!?」

理樹「えっ?」

佳奈多「………あ……あ……」

理樹(しばらく筋肉に興じていた二木さんが急に声を出さなくなってしまった。そして次にその顔がみるみるうちに青くなってしまった)

理樹「ふ、二木さん大丈夫!?」

佳奈多「な、なんて事やらすのよ!」

バチンッ

理樹「痛い!」

佳奈多「ふんっ!全く、妙な事で時間を無駄にしてしまったわ……ああ、それにしてもなんで今まで私はあんなことを……」

理樹(二木さんは僕を全力でビンタしたかと思うと、なにやら独り言をブツブツと言ってヨロヨロと先に行ってしまった。やはり今の僕では完全な洗の……旋風を起こすのは難しいのだろうか?)

佳奈多「………」

理樹「………」

理樹(とは言え、お互いに声を張り上げたお陰で雰囲気が良くなった。相変わらず二木さんは黙ったままだけど)

理樹「それにしても葉留佳さん今頃どうしてるんだろうね」

佳奈多「さあね。そりゃ心配はしてるだろうけど、あの子の事だしもう寝てるでしょう。葉留佳ほど楽観的な人間なんていないわ」

理樹「もし警察に捜索願を出してたらどうしよう?」

佳奈多「私が将来貴方と結婚するレベルであり得ないわ」

理樹「そいつは凄いレベルだね」

佳奈多「うっ……」

理樹「どうしたの?」

理樹(二木さんが急に頭を抑えだした)

佳奈多「………いや、今のちょっと想像したら頭が痛くて……ちょっとそこのベンチで休ませてくれない?」

理樹「ええ……」

佳奈多「…………ぐぅ」

理樹「なるほどよほど眠たかったんだね」

理樹(二木さんは駅前のベンチで横になったかと思うとすぐに瞳を閉じて何も言わなくなった。やはりいくら風紀委員であったとは言え体力の限界が近づいていたのだ)

理樹「所で今は……おっ、もうここか!あと2駅分って所だな」

佳奈多「すぅ………」

理樹「……………」







…………………………………………………



…………………………






佳奈多「……………ん」

理樹「二木さん、やっぱ軽いな」

理樹(もう今や車すら通らない時間となり、周りの音は僕の靴がアスファルトに擦れる音と二木さんの吐息だけとなった。このペースだとあと30分もあるけば僕らの家に着くだろう)

ザッ

理樹「ん?」

理樹(前の方から別の音がした)

「…………この時を待っていたぞ」

理樹「あ、あなた達は!」

「ふっ、馬鹿め!私達が何故今まで姿を現さないと思っていた!」

理樹(それはあの時の結婚式で見た一番偉そうな爺さんだった。今まで二木さん達に訴えられてほとんどの人間は捕まったが、何故かこの人だけは捕まらなかったんだ。それが今、3人の体つきの良い男の人を前に立っていた)

男「へへ……」

理樹「そ、その人たちは誰だ!何が目的なんだ!」

佳奈多「んん……何?」

理樹(二木さんが僕の大声に目を開けた)

佳奈多「……ハッ!あ、あなたは!」

理樹(事態をすぐに理解すると僕の背からパッと降りて、前に出た)

「佳奈多よ。ようやく会えたな。今までこうして邪魔が入らん機会を待っていたよ」

佳奈多「なんですって?」

「例の騒ぎから逃げ伸びた後、私は貴様ら姉妹に復讐する日をずっと待っていた。ずっとお前達を遠くから監視していたのだ。こんな隠れ家がいつまでも見つからないとでも思ったのか!」

佳奈多「な、直枝!逃げるわよ!」

「おおっと!」

理樹(その爺さんがそう言うと後ろの方からどこからともなく別の3人が現れた。どれも屈強そうでとても強行突破は出来そうにない)

「この時のためにいくら時間と金を費やしたと思っている?さあ大人しく私の元に戻って来い佳奈多!またあの頃のように”お仕置き”してやるぞ!」

佳奈多「くっ……そいつらは金で雇ったって訳ね…」

「ククッその通りだ。そしてお前の後は葉留佳だ。お前達2人さえ消えてくれれば奴1人を攫うのがとても楽になる。だから今のうちに厄介な問題から片付けるという通りよ」

理樹(僕らの前後にはガラの悪そうな人達がナイフや酒ビンを持って囲んでいる。こんな夜中だからいくら叫んでも人が来る頃には僕らは連れ去られているだろう。そうなると全てが終わる。葉留佳さんもきっと真実に気付くまえに彼らに襲われるはずだ)

理樹「うう、ここまでか……!」

???「警察だ!」

「むうっ!?」

葉留佳「貴様らを逮捕する!」

理樹「なっ……!?」

佳奈多「は、葉留佳!」

理樹(前の方から声がしたと思ったらそこには何を隠そう葉留佳さんその人がいた)

「ば、馬鹿な。何故ここにいる!?……い、いや。むしろ捕らえる手間が省けたというもの!捕まえろお前達!」

葉留佳「ふっふーん!私が何の策も考えずに姿を現したと思うてか!我は風紀委員から逃げるためにあらゆる作戦を使ってきたのだよ!カモン我が部下よ!」

真人「誰が部下だよ!」

謙吾「ここに」

来ヶ谷「まあ、たまにはいいじゃないか。可愛い子の頼みだ」

佳奈多「く、来ヶ谷さん!?」

理樹「真人!謙吾!みんな!」

「お、お前達はまさかあの学校にいた……!」

男B「構うものか!たかが、学生だ!やっちまえ!」

恭介「おおっと、そいつらを甘く見ない方がいいぜ?」

理樹「恭介!」

理樹(どうしたものだろう?何ヶ月も会ってなかったみんなが、一番いて欲しいタイミングで今ここに集結している!)

男C「うおおおーっ!」

理樹「あっ!」

理樹(その時、男の1人が鉄パイプを持って謙吾に殴りかかった)

謙吾「タァッ!」

ブンッ

男C「う、うぉおおお!?」

ドカッ

理樹(しかし謙吾は相手の走ってきた勢いを利用して敵の攻撃をいなし、見事に空中を一回転させて転ばせた)

謙吾「俺に物を振るうのは100年早い!次はどいつた!」

男A「うう……!」

理樹(謙吾の技を見た他の人間は怖気付いたのか、次々と戦意を喪失した表情を見せた)

「くっ……ここは一旦逃げるしか……!」

葉留佳「いや、もう無駄だよ。ちゃんと本物の警察もいるからね。おーい!こっちですよー!」

理樹(僕らの後ろ方にそう声をかけると、すぐに寝ライトを持って来ている警官がこちらにやってくる姿が見えた。ちょうど恭介達と警官と僕らに挟まれた形となった)

警官「もしや彼らがその言っていた人物達か!?」

「ぐ、ぐうっ!」

葉留佳「あはははっ!観念するですヨ!」

ピーポーピーポー

理樹(その後、お家の人間で僕らに敵意を持った最後の人間がパトカーに運ばれていったのをみんなで見届けた)

佳奈多「……ありがとうございました。本当に危ないところを助かりました」

恭介「俺は何もやっていない。礼なら三枝に言いな」

理樹「そうだよ!なんでこんな時間にみんながいたのさ!」

葉留佳「え?え、えーっとそれは……」

来ヶ谷「ふふっ、葉留佳君はな、いつまで経っても帰ってこない君達を心配して捜索願を出す勢いで警察署に駆け込んだ挙句、まだ心配なので夜中に私や恭介氏らを叩き起こして今の今まで家の周辺から捜索していた訳なのさ」

警官「本来ならこう言うのはすぐには行動出来ないんだがこの子に上目遣いで頭を下げられたら断るわけにもいかないさ」

理樹(そう言って警官の人は軽く笑った)

佳奈多「そんな事があったの……」

謙吾「それで2人は俺たちがここまでする程の理由で失踪したんだろうな?服はかなり気合が入っているようだが……」

理樹「そ、それが……」





葉留佳「そ、そんな事で!?」

来ヶ谷「はっはっはっ!それはそれは大変だったな!」

真人「おいおい……ここまでのタクシー代高かったんだぜ…」

恭介「まあ結果的にはそれじゃお釣りが来るほどの活躍が出来て良かったじゃないか。かっこよかったぜお前の登場シーン。なあ理樹?」

理樹「あっ、そ、そうだね!」

真人「えっ、本当か!?」

来ヶ谷「………さてそれじゃあそろそろ帰るとするか。もうすぐ夜が明ける」

佳奈多「そうですね。それにしてもこれで私たちが潜伏する理由も無くなりましたけどね」

恭介「まあ、その辺は後でゆっくり考えるとしよう。とにかく今はお前らの家に戻りな」

理樹「うん。そうだね」

真人「じゃーなー!」

葉留佳「バイバーイ!今日は本当ありがとうみんな!」

理樹(それから家に戻った後、いくらか会話をして僕らはもうすぐに寝てしまった。3人とも眠気が限界を超えていたのだ)

数日後

アパート



葉留佳「ふあぁ……おはよう」

佳奈多「あら、おはよう佳奈多。これ、チョコだけどいる?」

葉留佳「あっ、もしかしてそれってこの間選びに行ったっていうバレンタインデーチョコ!?キャホー!私もやっと貰ったー!」

佳奈多「ば、馬鹿。察しが良すぎるわよ。……ん?……私『も』?」

葉留佳「へっへっへー!実はあの日の話を理樹君から聞いたんだけどはるちんはピーンと来ましたヨ!理樹君にもさり気なく渡してたでしょ!?」

佳奈多「は、はあ!?別にそういうんじゃないし!バレンタインの日に渡した訳じゃないし!義理だし!」

理樹「ふあぁおはよう……ん…甘い匂いがするな」

葉留佳「おっ、良いタイミングですな理樹君!それでどうだった?佳奈多のチョコの味は?」

理樹「へっ、チョコ?」

佳奈多「は、葉留佳ーーー!!」




終わり

次は留年ネタでも描くかな…….

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