幼馴染「どこにでもいるありふれた魔法使いですけど?」(45)

男「はぁ……魔法使いかー。今度は何のアニメの影響?」

幼「アニメじゃないですけど?」

男「じゃあラノベ?」

幼「違いますけど?」

男「んー、じゃああれか。 ドラマか!」

幼「ドラマでもないですけど?」

男「わからん、なんだ?魔法って」

幼「魔法使いっていっても、使える呪文は一つだよ」

男「あ、それヨシヒコのヤーツだろ? メレブ的な」

幼「ヨシヒコは観たけど。メレブじゃないし。むしろムラサキだし」

男「ムネ・タイラさんって所?」

幼「なめんなよ、おう?」

男「スミマセン」

幼「まぁ、いつ魔法が使えるかは私にもわからないんだけどね」

男「そうなんか」

幼「まぁ、相手次第、気分次第……って感じ?」

男「どんな魔法かによるな……」

幼「世界が変わる魔法だよ」

男「世界が!? 地球破壊爆発魔法みたいな?」

幼「そんな物騒な変化ではない!」

男「なんだろう……世界中の女性が巨乳になる魔法とか?」

幼「それ誰得?」

男「……俺得?」

幼「ちょっとタイキックしていい?」

男「スミマセン」

幼「まぁ、スカートだからキックとか無理だけど」

男「世界を変える……男女が入れ替わる魔法とか?」

幼「誰と誰が?」

男「え?」

幼「あの映画みたいに私らと同い年くらいの男女が入れ替わるの?都合よく?」

幼「世界中が?そんな事に?」

男「スミマセン」

幼「あ、今日もおばちゃんの駄菓子屋に寄ろう」

男「ん、いいですとも」

幼「今日は奢ってあげよう」

男「え?マジで?どうした!?インフルエンザか?熱に浮かされた冬の日の幻か?」

幼「私が奢る事ってそんなに珍しいかな?」

男「……スミマセン 結構奢ってもらってます」

駄菓子屋

幼「おばちゃーん、これくださーい」

おばちゃん「はいな。いつもありがとうね、幼ちゃん」

幼「こちらこそだよ、おばちゃん。いつもお世話になってます」

おばちゃん「あらあら、幼ちゃんからそんな事言われるなんて……」

男「幼、そんな事言うもんじゃないぞ?」

幼「何で?」

おばちゃん「雨が降るかもしれないからね、ほっほっほ」

幼「普段からありがとうって思ってるよ、おばちゃん!」

おばちゃん「わかってるわよ、幼ちゃん。ほっほっほ」



男「で?」

幼「ん?」

男「魔法とやらはどうしたんだ?」

幼「んー」

男「今日は魔法使えないのか?」

幼「相手次第って言ったでしょ」

男「俺相手には発動しないのか?」

幼「気分次第とも言ったでしょ?」

男「はぁー……あ!しまったな!?」

幼「何?」

男「俺もおばちゃんとこで何か買えばよかった」

幼「戻る?」

男「……いや、まあいいや。明日の帰りに寄ればいいし」

幼「あ、そ」

男「幼は?何を買ったんだ?いつものすももあめ?」

幼「んーん。これ、はい」
スッ

男「ん? チロルチョコ? くれるの?」
ペリペリ
モグモグ

幼「じゃあ質問。今日は何月何日だ?」

男「んー、2月14日」

幼「せーかーい」

男・幼「……」

男「え?今の質問何?」

幼「何事も過ぎるのは良くないよね」

男「?」

幼「ホアチャー!」
ズビシ

男「痛っ! 何? 地味なローキック……」

幼「ハチョー!」
ズビシ

男「いったいな!」

幼「……今日学校でさ」

男「んん?」

幼「チョコレート貰ってたっしょ」

男「あぁ、袋に詰めたクッキーとかチョコとか入ったやつな」

幼「逆になんで気付かないん? 男、ボケてしまってるん?」

男「おいおい、俺はどっちかっていうとツッコミ役だぞ?」

幼「そういう事を言っちゃう所がボケてるって言うの!」
ズビシ

男「スネを蹴るのをやめろ!」

幼「今日、クラスで配ってたのはー」

男「ん」

幼「クラスの女子全員が、お金を出し合って買ったお菓子の詰め合わせで」

男「んん?」

幼「貰えなかったらかわいそうっていう、委員長さん主導で行われたー」

男「あっ!」

幼「バレンタインデーのやつです」

男「なるほどなぁ……」

幼「で、今、男が食べちゃったチロルチョコはー」

男「おお」

幼「私からの義理チョコでした!」

男「毎年ありがとな。そんな事ならもっと味わえば良かったか?」

幼「味はいつもと一緒でしょ。時間かけて食べても、ガリガリかみ砕いても」

男「いや、気分的にさ」

幼「それを誰かに指摘される前に気付けるように頑張って」

男「……はい」

幼「で?」

男「?」

幼「……そろそろさ」

男「そろそろ?」

幼「本命チョコ欲しいとか思わないの?」

男「そりゃ思わなくもないけどさ……」

幼「思わないけど?」

男「そういうのはなんかこう、流れだろ?」

幼「流れ」

男「時間が解決してくれる、的な」

幼「時間が」

幼「……」
ズビシ

男「いたっ!」

幼「…………」
ズビシッ

男「おいっ、やめろ!他から見たら暴行事件だぞこれ」

幼「…………」
ズビシ



男「……気は済みましたか?」

幼「大体は」

男「はぁ……なんでこんな事に」

幼「それじゃあもう、魔法発動しちゃおうかな」

男「唐突だな!?」

幼「ここに何の変哲もないチロルチョコがあるじゃろ?」
スッ

男「うん、俺がさっき食べたヤツと同じヤツだな」

幼「はんにゃらほんにゃらぬーん」

男「ぬーん!?」

幼「はいっ!」
サッ

男「え?は?」

幼「急いで!急いで食べて!」

男「え?え?」

幼「間に合わなくなっても知らないよ!?早く!!」

男「おう!」
ペリペリ
パク

幼「ふぅ……間に合ったね」

男「何に?」

幼「魔法」

男「何の魔法?」

幼「鈍感なのも大概にしなさいよ、マジで」

男「またキックか!?」

幼「キックはもうしないけど」

男「しないけど?」

幼「魔法はもう使ったから、かかるかどうかは、男次第」

男「俺、次第……?」

幼「私が使える魔法はね……」

男「おう……」
モグモグ

幼「ギリをホンメーに変える事が出来る魔法」

男「……ホンメ?」

幼「……」

男「幼、お前一体……」

幼「どこにでもいるありふれた魔法使いですけど?」

男「ホンメってなんだ?ギリーって?」

幼「将来は耳鼻科の医者になるのが夢な、ただの魔法使いですけど」

男「そろそろ答え教えてくれよ」

幼「魔法は発動しなかったみたい。また一年後くらいに使うかもね」
タタタ

男「おい、なんだ?どうした?」

幼「今、顔見られたくない……」

男「何だ?体調不良か?」

幼「いいから!先帰るね!」
タタタタッ

男「待てって!」
タタタタッ
ガシッ

幼「もう!鈍感!」
ズビシ

男「ぐわっ……と」

幼「……手、放してよ」

男「答えがまだだし。体調不良なら、おぶっていくし」

幼「もう!ギリは義理チョコのギリよ!ホンメーは本命チョコの本命よ!」

男「義理……本命…………ハッ!?」

幼「はっ!?じゃないわよ、本当に……もういいから離して」
パシッ

男「す、すまん」

幼「で?今の反応だと、答え解ったみたいよね?」

男「う、あの……その……」

幼「世界、変わった?」

男「……」

幼「……変わらなかったか」

男「そ、そんな事はなかったりあったり」

幼「なかったりあったり?」

男「幼が使う魔法が、その……そういう魔法だっていうならさ」

幼「うん?」

男「俺、とっくの昔に魔法にかかってるから、世界は変わってないっていうか」

幼「うんん?」

男「幼稚園の時にチョコ貰った時から、俺の世界は変わったっていうか」

男「そういう意味では、幼は魔法使いなのかも……」

男「って意味で答えに困るんだけど……幼?」

幼「…………」

男「あのさ」

幼「何も言わないで」

男「でも」

幼「私が鈍かった。男の鈍さだと思ってたのは私の鈍さだったんだ」

男「それは」

幼「だから物理攻撃系に変更!」

男「???」

チュッ

男「!?」

幼「…………何か言いなさいよ」

男「お」

幼「お?」

男「俺のターン!魔法発動!」

幼「え?なんの……」

男「俺と結婚してください!」

幼「は、はぁ?急に何言って…」

男「俺の片思いだと思ってたけど、違うんだよな?」

幼「片思い?」

男「だって、毎年バレンタインデーはチロルチョコだったじゃねーか」

幼「そうだけど……」

男「義理チョコだと思うだろ?高校2年にもなってチロルチョコ一個って!」

幼「…………」

男「それが!今日!本命に!」

幼「…………」

男「これって両想いって事…」

ズビシ

男「痛い!?」

男「あれ?間違ってた?だってちゅーしたじゃん!」

幼「大声で!いう事じゃないでしょ!バカ!鈍感!」

ズビシ

男「やめろ!俺の足がもう限界だぞ!」

幼「………」
タタタタッ

男「幼?」

クルッ
幼「私が男に、チロルチョコしかあげなかったのは……」

男「?」

幼「小2の時、手作りチョコレートを上げたら、不味いって言われたからよ!」

男「え!?」

幼「……覚えてないんでしょう」

男「いや、克明に覚えてるけど」

幼「……本当に?」

男「カレー風味だったもんな」

幼「…………それもうチョコが入ったカレールーだもんね」

男「でも俺、不味いとは言ってないぞ?」

幼「え?」

男「俺は『カレーだけどチョコだね』って言っただけで」

男「不味いとは言ってないぞ。だって美味しかったしな」

幼「それ、カレーとしてって事?」

男「幼からバレンタインデーに貰った物が、カレーなはずねーだろ」

男「ちゃんとチョコとして食べたさ。嬉しかったし」

幼「……ますます私が鈍感だったって事じゃない」

男「来年はさ」

幼「?」

男「手作りチョコ、くれよ」

幼「……」

男「いや、気持ちこもってれば、チロルでもブラックサンダーでもなんでもいいけど」

幼「必ずや!」

男「う?」

幼「必ずや、男が美味しいって言ってくれるチョコを作って渡すから!」

幼「まずはガーナに飛んで、カカオの原料を手に入れる所から!」

男「やり過ぎだろ!それはやめろ!」

幼「でも……」

男「自分で言っただろ、ありふれた魔法使いだって」

幼「魔法は……」

男「幼が使う魔法で、チロルだって本命チョコに大変身だろ?」

幼「それは……」

男「貰う俺がそれが良いって言ってるんだから、いいじゃん」

幼「…………わかった」

男「なら良かった。ガーナとか行くなよ?」

幼「出来る限りの努力をします……」

男「じゃあ取り合えず」

幼「?」

男「さっきキャンセルされちまったんで、ちょっと弱めの俺の魔法」

幼「弱め?」

男「幼さん!俺と付き合って下さい!」
ペコ

幼「あわわ、それもう魔法じゃないし。ただの告白だし……」
オロオロ

男「幼の気持ち次第で魔法になるヤーツ」
ニヤリ

幼「くっ……」

男「返事は?」

幼「……さっきのキスでわかるでしょ!」

男「それでも、魔法の言葉が欲しい訳よ。俺としては」

幼「……私で良ければ、お願いします」
ギュッ

男「!?」

幼「……こうして抱きつくのも久しぶりだよね」

男「ちょ、照れる。流石に。道の真ん中では」

幼「これからも、ずっとぎゅってしていくから」
ぎゅー

男「マジ、ちょっと。いくら寒くてもこれは無い」

幼「嬉しくて恥ずかしさなんかわからん!」
ぎゅーーーー

男「なぁこれからさ」

幼「んんーー?」
ぎゅうーー

男「ずっとこうやって過ごせたらいいよな」

幼「そうだね、ずっとね」

男「でもそろそろな?」

幼「?」

男「そろそろ離れないと、公衆の面前だぞ?」

幼「私は別に誰に見られてもいいもん!」

男「……じゃあさっきからさ」

幼「さっきから?」

男「道向こうから俺の事、すっげー睨んでるおじさんをさ」

幼「おじさん?」

男「説得する魔法、使えるようになってくれよ?」

幼「んー、どうだろう。そんな魔法は使えない、ありふれた魔法使いですから」
ぎゅーーー

幼馴染の父「…………」ジーーー


男(俺は今夜、死ぬかもしれん)

おわり

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