【艦これ】提督「継続しているものの」【安価】 (107)

仕事の息抜きでしたが、供養も兼ねて投稿します。


・地の文ありのSS
・独自設定キャラ崩壊強
・嫁が死んでも自己責任
・前回よりさらに遅筆


一応前作【艦これ】提督「続投しましたけど…」

【艦これ】提督「続投しましたけど…」 - SSまとめ速報
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00

人を殺したこともなければ、殺したいとも思わない。
けれど自分は遠からず人を[ピーーー]だろう。
それを賞賛される仕事についた以上しかたがない。

僕は提督である。
いつか人を[ピーーー]確率が高い職業である。

この自ら望んだ道に後悔はないが、間違えたと思えばどうしたものか。
道から降りるには未練があるし、歩けば先がないのも分かっている。
けれども軍属であり、戦時にこの職を辞すなど出来はしない。
そう思うと、この運命なる偶然が憎く思える。
現代社会が自由意志と偶然の否定を目標としても、結局我々は何度でも選択なる乱数に頼る。
人生を巻き戻せもしないのに、我々は乱数を選び続け死の坂を下り続ける。

その長い人生の中で、人を[ピーーー]可能性はいくらでもある。
事故、あるいは偶然。
もしくは僕のように自ら望んでしまったりとか。

なら偶然「安価」でも仕方ないんじゃないか。
そう思いながら、僕は今日も仕事を始めた。


01


事務作業を終えると間を空けず秘書艦が入ってきた。
黒い髪のサボっていた女。
こいつノックもせずに執務室に入るような適当な人間である。
女は背もたれを抱えるようにして椅子に座る。
おしとやかさの欠片すらない。
苛立ちも込めて僕は彼女に抗議することにした。

「サボりは楽しかったかな、なあ北上」

「全然、馬券は負けた。車券もパア、あとはスロの【安価】でも打つかだけど」

こいつ、と思うと彼女は言った。

「いい時代だねー、ネットで買えるもん」

そのままポケットからタバコと携帯灰皿を出す女。
古びたターボライターを取り出すなり火を付ける。

「…煙い」

「いいじゃん、それくらい」

北上はそうカラカラ笑う。
咎める気にもならなかった。
彼女はサボっていた。
だが、自分の仕事は終わらせている。
この北上が追加の仕事をするようなマメなタイプではない。
見れば分かる。また揉めたくもない。
この女の自艦隊内での立ち位置が微妙なことを考えると、
まともに相手にするのは面倒だった。
僕は最後の書類にハンを押すと、執務を終えることにした。

「お、終わり?」

目ざとく彼女は僕を見る。

「なんだ」

「外食にでようじゃないか、提督」

「給食があるだろう」

「つまんないねー。固い固い」

と彼女は煙の輪を吐きつつ言った。

「自室に戻る」

これ以上会話する気もなかった。
そう北上に言うと、女はタバコを手にした手を振りつつ言った。

「おー。んじゃ、また明日」

【安価】は次投稿までの、コンマ奇数の中で抽選。
抽選方法は、13579より、安価指示レスのコンマ以下の合致したものを拾う。
偶数の場合は、コンマ以下合計に1を追加し抽選。

>>4 北上は【安価】で何の台を打ったか?

23


テレビが流れていた。
タバコをくゆらす男の目はそれを見ていない。
醜くゆがんだ右耳。痩せ頬骨の浮いた顔。
その上酷く目の落ち窪んだ男だった。
彼は真っ白な顔のまま、灰皿がわりのビール缶にタバコをねじ込む。
その横で、ベッドの上でボリボリと腹をかく少女がスマホ片手に言った。

「サラトガが近海で発見だってニュースどうなった?」

「ああそう」

「あいつらの買い物って何時戻り?」

「さあ」

男は新しいビールを開ける。
一息で半分ほど飲むと、男はそこにウィスキーを流し込む。
くるくると男は缶を振る。
水音がテレビの音に混じった。

「ねえそれ、何杯目?」

「うん」

グビリとボイラーを煽る男の後頭部に少女は聞いた。
男は答えない。
少女は立ち上がると、男に言った。

「寝るなら吐いてからにしてよね」

「……それな」

男はウィスキー瓶の蓋を開けた。
明らかに泥酔しているくせに、男の表情は死んでいた。
少女は半ば生ける屍じみた男の脇を通る。
テレビボード横の冷蔵庫から、彼女もビールを取り出す。
そのプルタブに指をかけた時だった。
男が身を乗り出していた。
少女はまた嘔吐しやがんのか、と焦った。
だが男は嘔吐することなく、
テレビ画面を食い入るように見ている。

『…未明、演習の…沈没…現場では…』

「何?どうした?」

少女が問うと、男は立ち上がった。

「……」

何かあったか?と少女は思ったが、
立ち上がらんとする直後に男は体制を崩した。
そのまま千鳥足ゆえ彼は空き缶を踏んで転倒した。
鈍い音がした。
そのまま悪態をつき男は真っ青な顔になった。

「吐くなら便所!」

少女は思い切り、男の背中を蹴り飛ばした。


鶯谷の改札を抜ける女らがいた。
そのまま風俗街へと二人の女は歩いていく。
金髪と茶髪の外人女。
彼女たちはラブホテル脇の雑居ビルに入る。
キャバレーが入居する階。
かつてはスナックだった一室。
そのドアを開く。
そして彼女たちは、同居人とばったり出くわした。

「…あら」

金髪が言うと、少女は答えた。

「おかえり。どこほっつき歩いてたの?」

「じゃがいもに付き合って池袋」

茶髪がそう言うと、金髪は笑う。

「ひどいわね」

「あんたの放浪に付き合う事も考えてほしいわね」

そう嫌味を言った彼女たちは奇妙な声を聞いた。
外人二人は顔を見合わせ、金髪が少女に尋ねた。

「あのひと、また吐いてるの?」

「そ。だけど」

「だけど?」

茶髪が問い返し、少女が答える前だった。
フラフラの足取りでトイレから男が出てきた。
男は壁に手をつけながら、女たちを見ると言った。

「やる事が出来た」

「わかった……ズボン吐いてから言え阿呆」

少女は辛辣な言葉を吐いた。
男は下がったままのズボンを上げようとして、再度転んだ。
悪態をつきながら男は立ち上がる。
女たちは、仕方ないと言った顔で彼に近寄った。
男は金髪茶髪に引きずられるがまま、椅子に座らされる。
あまりの醜態に少女が見かねてミネラルウォーターを出した。
男はそれをがぶ飲みしながら、女たちを見て言った。

「…協力してくれ」

「拒否」

「反対」

「嫌よ」

三人に否定された男は頭をかく。
苛立ちからか、男は立ち上がろうとした。
が、泥酔した体は思うように動かなかったらしい。
男は肘でミネラルウォーターを倒した。
少女は、醜態を晒す男に向けて露骨に嫌な顔を向けた。

「ねえ、アル中。鏡見た?」

「見た」

「今もカスでクズなあんた」


「……」

「そんな汚物が『協力してくれ』って言って、『はい喜んで』と私たちが言うと思う?」

茶髪はこぼれた水を布巾で拭き取る。
男は淀んだ目で言う。

「それでもたのむ」

金髪はタバコをくわえながら、少女に続いて男に諭すように言う。

「わかった。また何時もの死にたいってワガママでしょ?」

「ちがう」

「はいはい分かった。私はあなたに死んでほしくないから嫌」

布巾をテーブルの脇に置いた茶髪も、男に言う。

「貴方に死なれると困るので」

男は目を閉じる。
それから、口を開いた。

「ちがうんだ」

「それが何?」

すっぱりと少女が言う。
彼女はテーブルに身を乗り出して、男の無精髭を厭わず彼の顎をつかんだ。

「泥酔してる蕩けた頭でもわかるように言うわ。
 お前は死んだの。
 今更何?協力して何がしたいわけ?」

「…」

「復讐した、金も稼いだ。これ以上何が欲しいの?」

「…」

「違う?
 やる事なくて女をはべらせて、
 タバコふかして日がな一日朝から酒飲んで、
 毎晩毎晩女と寝て「人生下らねえ、死にたい死にたい」って言って、
 泥酔していられるこの状況を終わらせたいってこと?」

ギリギリと少女は男を締め上げる。
男は酔ったままだが、少女の目を見て言う。

「それでも…やることがある」

「どういうこと?」

茶髪が食いついた。
金髪も灰皿にタバコを置くと、男を見る。
男は少女の手を払うと言った。

「おれのあと釜が船ごと沈められた。おれたちも狙われるかもしれない」

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