八幡「俺が仮面ライダーに……?」 (60)
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』と『仮面ライダー龍騎』のクロス作品です。
俺ガイルのキャラがライダーとなって戦います。
以前こちらに投稿していた『仮面ライダーぼっち』『ぼっちライダーディケイド』の改稿、完全版です。
前作を読んでくださっていた方、スレを落としてしまい誠に申し訳ありませんでした。
疑問点等ありましたら、些細なことでもお答えしますのでお気軽にどうぞ!
感想もらえたらとても励みになります!
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「おい比企谷、聞いているのか?」
「高校生活を振り返って」という作文の課題を提出した俺こと比企谷八幡は、職員室で説
教を受けていた。
「なぁ、比企谷。私が君たちに出した課題は何だったかな?」
現代文担当の教師平塚静が俺に詰問する。
「……はぁ、高校生活を振り返って、だったと思いますが」
「それで、どうしてこんなものが出来上がるんだ?」
「どうしてといいましてもね……俺は素直に思った事を書いただけですよ?」
「君は素直になると犯行声明を書いてしまうのか?」
静がため息をつく。
「犯行声明って……ずいぶん物騒なことを言いますね」
「物騒なことを書いたのは君なんだがな。……まぁ、一応言い訳くらいは聞いてやる」
「言い訳、ね。その時点で俺の意見を認める気がないじゃないですか。そんな人に言うこと
はありませんよ」
「ほう、言うじゃないか。だがこういうものは普通、自分のことを省みると思うのだがな」
「普通、ね。嫌いなんですよその言葉。俺いっつも集団からはじかれるような人間なんで」
「屁理屈を言うな、小僧」
「小僧って……そりゃあなたの歳からしたらゴフゥッッ!」
腹パンされた。なんだこいつ……。
「何すんすか……」
「言葉では伝えられないこともあるだろう」
「あんた国語教師だろうが。早々に言葉の力をあきらめてんじゃねぇよ」
「ふっ、国語教師だからこそさ。言葉にはできることとできないことがあると知っている」
だからといっていきなり暴力に頼るか……。
「わかりましたよ、書き直せばいいんでしょう書きなおせば」
「当たり前だ。それと比企谷、きみに質問がある」
「なんですか?」
不機嫌さを隠さずに俺は言う。
「君は、部活とかやっているのかね?」
「いいえ」
「友達とかはいるのか?」
「平等を重んじるのが俺のモットーなんで、特に親しい人間は作らないようにしてるん
すよ」
「つまりいないんだな?」
「まぁ、そういう解釈もできますね」
「やはりそうか!私の見立て通りだな!」
俺を傷つけるだけの事実確認がしたかったのか?
「彼女とか、いるのか?」
「今はいないですね」
まぁいたことないけどね!
「そうか……よし、こうしよう。レポートは書き直せ」
まぁ、異論はない。さっき自分で認めたしな。
「はい」
「だが、君の心ない言葉に私が傷ついたのも事実だ。女性に年齢の話をしないのは常識だろ
う」
「不文律を根拠に責められるのは釈然としませんね……それに、
そっちは俺の体を傷つけたんだからお相子でしょう」
「体の傷はすぐに治る、だが心の傷は一生治らないんだよ」
知ったこっちゃねぇよんなもん。
「罪には罰を与えないとな。君には、奉仕活動をしてもらう」
「奉仕活動……?」
なんだよ、面倒くせえな。俺の揚げ足とって自分の仕事手伝わそうとしてるんじゃ
ねぇの。つーか、落ち度の面でいえば圧倒的にこいつのほうが大きい気がするんだが……
仕方ない。今後は当たり障りのないことを書くようにしよう。
そう自分に言い聞かせる。 正論が通じない人間はことのほか多い。
「付いてきたまえ」
平塚に連れられて、特別棟の廊下を歩く。
嫌な予感がする。というかこの人といて嫌な予感がしなかったことがない。
階段を上り、ついに最上階の四階まで来た。
「着いたぞ」
平塚が立ち止ったのは何の変哲もない教室。プレートには何も書かれていない。
俺が不審に思っていると、彼女はがらりとそのドアを開けた。
教室内には机と椅子が無造作に積み上げられており、そのスペースの約半分が埋め尽くさ
れている。
物置代わりか何かだろうか。特別な内装などは一切ない、普通の教室。
その中心に、彼女はいた。
座って本を読んでいる少女は、まるで世界の終わりが来ても彼女だけはそうしているんじ
ゃないかと思わせるような、そう錯覚させるような雰囲気。
不覚にも俺は見とれてしまった。
彼女は来訪者に気付くと、本を閉じてこちらを見上げる。
「平塚先生、ドアを開ける時にはノックをお願いしたはずですが……いつになったらあな
たには常識が身につくんですか?」
端正な顔立ち。しかしそこから放たれた言葉は刺々しかった。
「ノックしても君は返事をしないだろう?」
「返事をする前に先生が入ってくるんですよ」
彼女は不満そうな顔をする。
俺は、この少女を知っている。二年J組雪ノ下雪乃。常に学年一位をとる秀才。
その上容姿端麗で、この学校で知らない者はいないというほどの有名人だ。
「それで、そのぬぼーっとした人は?」
ぬぼーって、お前。俺は水地面タイプのポケモンじゃねぇッつーの。
「彼は比企谷八幡。入部希望者だ」
「二年F組比企谷八幡です。って、おい、入部ってなんだよ」
「君にはペナルティとしてここでの部活動を命じる。異論反論抗議質問口答えは認めない」
「そうですか……」
俺はくるりと背を向けて歩き出す。俺は早々と帰ることにした。
「おい!どこへいく!」
「いや、口答えすんなっていったのはそっちじゃないですか。だから行動で示してるんで
すよ」
「そんな言い訳が通じると思うのかね」
「俺は別に悪いことしてませんからね。先生に年齢の話をしたからって理由だけで部活な
んてまっぴらごめんですよ」
「知らないのか?女性に年齢を聞くというのは、それだけでセクハラになるんだぞ?」
「別に聞いたわけじゃねーし。なら訴えるなりなんなりご自由にどうぞ」
ったく。こんな茶番に付き合っていられるか。
「デス・バイ・ピアーシングッッ!!」
何故ブラックロータスの必殺技を?と聞く前に俺は勢いよく蹴り飛ばされていた。
「何すんだよ!」
「うるさいうるさい!口答えするな!いいからここで部活しろ部活しろ部活しろー!」
なんだこの人……子供かよ。
平塚先生に腕を掴まれ、再び教室内に引き戻される。
「というわけで、彼はなかなか根性が腐っている。そのせいでいつも孤独な哀れむべき奴
だ」
こいつ本当に殴ってやろうかな。
「人との付き合い方を学ばせれば少しは変わるだろう」
暴力でしかコミュニケーション取れないあんたが言っても全く説得力ねーけどな。
「こいつを置いてやってくれ。彼の孤独体質の改善が私の依頼だ」
「それなら先生が殴るなりなんなりして躾ればいいじゃないですか」
なんてことを言いやがるんだこの女は。
「私だってそうしたいが最近そういうのはうるさくてなぁ」
テメェさっき思いっきり俺に攻撃しただろうが。
「お断りします。その男の下卑た目を見ていると身の危険を感じます」
雪ノ下が襟元をなおしながら、俺を睨みつけながら言う。
「はっ!言ってくれるな、自意識過剰女」
「自意識過剰、ね。仕方ないじゃない。私はあなたと違って美しいんだから」
その通りなのが腹正しいところである。
「安心したまえ、その男は自己保身にかけては長けている。決して刑事罰に問われるよう
なことはしない。こいつの小悪党ぶりは信用していいぞ」
「釈然としねぇ……。それは常識的判断ができるとか言えないんですかね」
「小悪党……。なるほど」
なんで初対面の相手にこんなに罵倒されなならんのだ。
「まぁ、先生からの依頼とあれば無碍にはできませんね。いいでしょう、その依頼、受け
ましょう」
「そうか、なら後は頼んだぞ」
あー、面倒事に巻き込まれちゃったよ。ポツンと取り残される俺。
なんだあいつは。もしかして美少女と二人で同じ部活をやっていれば、アニメやラノベよ
ろしく人気者になる!とでも思っているのだろうか。だとすればとんだ見当違いである。
訓練されたぼっちは甘い話など断じて持ち込ませない。
それに俺は、好きで一人でいるのだ。他人にどうこう言われる筋合いはない。
……つーか俺は、ここでこの美少女様と何をすればいいんだろう。
「何か?」
俺の視線に気づいたのだろうか。雪ノ下が声をかけてきた。
「ああ、どうしたものかと思ってな」
「何が?」
「いや、俺何も説明受けてなくてな。ここがなにする場所なのかもいまだにわかってない」
俺がそういうと、雪ノ下は不機嫌そうに本を閉じ、こちらを睨みつけた。
こいつ睨まないと会話できねぇのか?
「では、ゲームをしましょう」
「ゲーム?」
「そう、ここが何部かを当てるゲームよ」
「あんた以外に部員は?」
「いないわ」
ふむ、そうだな……。ぼっちには、常人にはない能力が一つだけある。それは、深い思考力
だ。普段の生活で他人との会話にエネルギーや時間を使わないため、その分自分
の中での思考は高度なものとなる。
特別な道具を必要とせず、一人でも活動が成り立つ。
ピカンと来たぜーッ!
「文芸部、だな」
「違うわ。……死ねばいいのに」
なんでクイズに失敗しただけで死ななならんのだ。
「あー、お手上げだお手上げ。わかんねぇよ」
「今私がこうしてあなたと会話していることが最大のヒントよ」
なんだそりゃ?さっぱり正解に結びつかない。
「比企谷君、女子と最後に会話したのはいつ?」
……そう、あれは二年前の六月のことだ。
女子『ねぇ、ちょっと暑くない?』
俺『ていうか、蒸し暑いよね。』
女子『え?あ、うん。』
まぁ、俺に話しかけられてたわけじゃないんだけどね。俺の黒歴史の一つである。
「持つ者が持たざる者に救いの手を差し伸べる。これを奉仕というの。ホームレスには炊
き出しを、もてない男子には女子との会話を。困っている人に救いの手を差し伸べる。そ
れがこの部活よ」
一呼吸おいて、彼女は続けた。
「ようこそ奉仕部へ」
ふむ、つまりはスケット団みたいなものか。
「優れた人間には、哀れな人間をすくう義務がある。あなたの問題を矯正してあげるわ。感
謝なさい」
「憐れむべき人間……か。そんなふうに思っている奴には、誰も救うことなんかできねぇよ」
「へぇ……口だけは立派ね」
「つーかお前俺とあってから十分もたってねぇだろうが。俺が口だけかどうかなんてわか
らないんじゃねぇの?」
「……やはり、あなたの孤独体質はそのひねくれた考え方が原因のようね。それに、目も腐
っている」
俺の目は関係ないだろ……。
「目のことはいいだろ」
「そうね、今さら言ってもどうしようもないものね」
「そろそろ俺の両親に謝れよ」
「確かにそうね。いちばん傷付いているのはご両親よね」
「お前には自分の非を認めるということができないんだな。なら、これ以上話すこと
はない」
「そうね、ある程度の会話シュミレーションは終了ね。私のような美少女と会話ができた
のだから、大抵の人とは会話できるはずよ」
雪ノ下は満足そうな表情を浮かべている。
「はいはいそれはどうも」
「納得していないようね……」
「今まであってきたやつらは、お前が綺麗だからって特別扱いしてくれたのか?ずいぶん
おめでたい人生だったんだな。羨ましいぜ」
突如、がらりとドアが開けられる。
「雪ノ下、苦戦しているようだね」
「この男がなかなか自分の問題を認めないんです」
問題ね……。
「いい加減にしろよ、あんたら。さっきから変革だの問題だのと好き勝手に言いやがって。
俺はそんなもの求めてない。あんたらの自己満足のために俺を巻き込むな」
「はたから見ればあなたの人間性には大きな問題があると思うわ。そんな自分を変えたい
と思わない?向上心が皆無なの?」
「少なくとも、お前らよりはまともな人間だと思ってるよ。変わるだの変われだの、他人
に俺の『自分』を語られたくねぇンだよ。つーか、人に変われと言われた程度で変わる
なら、そんなもんは『自分』じゃねぇ」
「自分を客観視できないだけでしょう?あなたのそれは、ただの逃げよ」
「変わることだって、現状からの逃げだ」
「それじゃぁ悩みは解決しないし、誰も救われないじゃない」
「ああ、その通りだ。さっきも言っただろ、お前にはだれかを救うことなんてできない」
俺と雪ノ下は激しく睨みあう。
「二人とも、落ち着け」
険悪な状態の俺達を、平塚が止める。
「それではこうしよう。今から君たちのもとに悩める子羊たちを送り込む。彼らを君たち
なりに救ってみたまえ。そして自分の正しさを証明するといい。スタンドアップ!ザ!ヴ
ァンガードっ!!」
「お断りです。それと先生、年甲斐もなくはしゃぐのはやめてください。見ていて気分が
悪いので」
「と、とにかくっ!勝負しろったら勝負しろっ!お前らに拒否権はないっっ!」
俺達は表情を曇らせる。
「むぅ……なら君たちにメリットを用意しよう。勝った方がなんでも命令できる、という
のはどうだ?」
なんでも……か。
「この男が相手だと貞操の危険を感じるのでお断りします」
「貞操、ね。本当にお花畑な頭だな。……俺が勝ったらお前には、死んでもらう」
「へぇ、おもしろいわね。いいわ、その勝負、受けてあげる」
「決まりだな」
しまった……いつの間にか乗せられていた……。
そんな俺達を見て、平塚先生は嫌らしい笑みを浮かべていた。
「勝負の裁定は私が下す。まぁ、適当に頑張りたまえ」
そう言い残し、平塚は部室を去った。残された俺達は、それ以降一切口を利かずに、読書を
して、チャイムが鳴ると帰路に就いた。
ああ、面倒臭いことになっちまった。
さて、あんなことがあった次の日のことである。
やっと授業が終わった。早く帰ること風のごとし!
俺は急いで帰り支度を済ませる。
部活?何それ。食べられるの?
教室のドアを開けると、そこには悪魔がいた。
「やぁ、比企谷。今から部活かい?」
「……ご明察ですね」
「そうかそうか。それは良かった。逃げたらどうなるか、わかっているな」
「わかってますよ」
しぶしぶ俺は、奉仕部の部室へと向かう。その足取りは当然重い。
「ん?なんだこれ?」
三階から四階へとつながる階段で、俺は黒いカードデッキを見つけた。拾い上げてみてみる
が、 表にも裏にも何も書かれていない。
よく見てみると、バックルには2枚のカードが挟まれていた。
「SEAL」と書かれたカードと、「CONTRACT」と書かれたカードだ。
トレーディングカードか何かだろうか?まぁいいや。後で紛失物入れに入れといてやろう。
そう思い、ポケットの中にデッキを入れる。
部室に着くと、鍵は開いていた。
椅子にすわり、一人読書をする。まぁ、こんだけでいいんならさほど生活に支障はないかな。
そう思った瞬間、
「うっっ」
今までに味わったことのないような激しい頭痛に襲われた。
気持ちわりい。なんなんだこれ……。
次の瞬間、俺は自分の目を疑うことになる。
教室の窓から、突如糸が伸びてきて、俺の体に巻きついたのだ。そしてその窓の中には、巨
大なクモの化け物が。
「が…はっっ…」
ものすごい力で糸に引っ張られる。
「や、めろ……くそ、ほんとに何なんだよ……」
そして俺は……、
鏡の中に入った。
何を言っているんだと思うだろうが、事実なのだから仕方がない。
間違いなく、俺は鏡の中に入ったのだ。
鏡面に触れた瞬間、重力が消えた。謎の浮遊感に見舞われる。頭痛はいつの間にか消えてい
た。
浮遊感が消え、目を開けるとそこは、先ほどと変わらぬもとの奉仕部の部室だった。
いや、変わらないわけではない。そこには、俺を引きずりこんだクモの怪物がいた。
「ひうっっ……」
俺は情けない声をあげてしまう。ふと、自分の手を見ると、それは自分の物ではなかった。
灰色なのだ。手が、灰色。灰色で、金属質な感じがする。
「ああ?」
これは、夢だ。そうに違いない。鏡の世界なんて存在するはずがないし、俺の体
おかしくなってるし。
すると、クモが巨大な脚で俺に攻撃を仕掛けてきた。
「ガァッ!」
痛い。めちゃくちゃ痛い。たとえ夢だとしても痛いのは嫌だ。つーか待て、夢の中って五感
が鈍くなるはずだろ……?なんでこんなリアルな痛みが……?
ともあれ逃げようと思い、動こうとしたがその前に蜘蛛が糸を吐き出し、再び俺の体を拘束
した。
身動きが取れない俺に、蜘蛛は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
その足が、俺の体を抉ろうとしたまさにその時。
何かがその攻撃を止めた。
「驚いたわ。まだ契約していないライダーがいるなんて。」
どこか蝙蝠を連想させるような体の色をした、俺と同様金属で身を覆われたそいつは、そう
語りかけた。
「け、契約……?」
「本当に何も知らないの……?後ろで隠れてなさい。」
「Sword Vent」
そいつは俺が手にしたのと同じようなデッキ(ただ、そいつのそれには中央に蝙蝠型のマー
クがあった。)からカードを取り出し、持っていた短剣にスキャンさせると、空から細長い
槍が降ってきた。
その槍で蜘蛛に攻撃を繰り出す。
なるほど、あれで武器を出すのか。
「Sword Vent」
俺もバックルからカードを取り出し、(いつの間にかカードが一枚増えていた。)左手の機械
にスキャンする。
同じように、空から剣が降ってくる。
「よしっっ!」
しっかりと剣を両手で握る。
助走をつけて、斬りかかる。
「馬鹿、やめなさい!」
俺の振るった剣が、蜘蛛の足に当たった瞬間、剣が無残にも砕け散った。
「ブランク体でモンスターが倒せるわけないでしょう!いいから下がってて!」
「す、すまん……。」
そいつは、蜘蛛と激しい戦いを繰り広げる。すげえ迫力だな。
「これで決めるわ!」
「Final Vent」
すると、どこからともなく蝙蝠型のモンスターが現れる。
「ま、またモンスター!?」
「ダークウイングッ!」
そいつはそう叫び、高くジャンプする。すると、その体を蝙蝠が覆った。どうやらあいつは
味方らしい。
蝙蝠と合体し、ドリルのような形で、敵に向かって急降下する。
「飛翔斬っっ!」
⇒⇒⇒12
ありがとなす!
⇒⇒⇒13
受験勉強やべぇ!ってなったからです……。
今回は、落とさないはず……です。
その攻撃は、蜘蛛の銅を貫いた。
大きな爆発を挙げて、蜘蛛が消滅する。
「すげぇ……」
戦いを終えたそいつが、俺の方に向かってくる。
「あなた、いったい何者?どうも巻き込まれただけのようだけど」
「な、なぁ!これっていったい何なんだよ!教えてくれ!」
「呆れた……本当に何も知らないのね。まぁ、いいわ。元来た道を戻りなさい」
「元来た道?」
「鏡からこの世界に入ったでしょう。入ってきた鏡に体を触れれば、もとの世界に戻れる
わ」
「そ、そうか……うぁっっ!」
突如空から、炎が降ってきた。見上げると、赤い龍のモンスターが空からこちらを見下ろし
ていた。
「無双龍、ドラグレッダー……」
そいつはつぶやき、
「ハアアァァァッッ!」
勢いよく龍のモンスターに向かっていく。
でも、相手は空中にいるんだぞ?攻撃届くのか?
「Advent」
カードをスキャンすると、再び蝙蝠のモンスターが現れる。
そして、そいつの背中にくっつくと、そのまま空中に飛び上がった。
なるほど、こうやって空中戦をするつもりか。
しばらくは力が拮抗していたが、敵は炎攻撃という遠距離技を持つのに対し、どうもあい
つはそれを持たないようで、徐々に押されていった。
「グガァァッッ!!」
龍が突進を仕掛ける。その勢いを殺しきれず、そいつは思い切り地面に叩
きつけられる。
龍は咆哮を上げ、追い打ちをかけるように、炎を吐く。
やばいだろ。このままじゃあいつやられちまうぞ。
俺はとっさにそいつのそばに駆け寄る。
「お、おい!しっかりしろ!」
「は、早く逃げなさい。あなたには何も……」
いや、一つだけ可能性がある。俺がもっている「Contract」というカード。こ
れは確か、「契約」とかそういう意味だったはずだ。
こいつが蝙蝠のモンスターを使役しているのを見る限り、このカードを使えば、龍のモ
ンスターを味方にできるかもしれない。
まぁ、この状況ではそれ以外に手はないだろう。
「おい!龍野郎!これを見ろっ!」
契約のカードを龍に向けてかざす。
「ば、バカ……そんな事をしたら!」
龍が、俺に突進してくる。
くそ、無理だったか……?
衝撃を覚悟し足に力を込める。
しかし、俺が吹き飛ぶことはなかった。
龍のモンスターはカードに吸い込まれていった。
カードの絵柄が変わる。
先ほどまで渦が描かれていたそこには、赤き龍の絵が。
「Drug Redder」
「ドラグ……レッダー……」
突如、俺の体に変化が起きる。
さっきまで灰色だったその体は、深紅の色に染まる。
力が、みなぎる。最後に、真っ黒だったデッキの中央に龍の紋章が浮かび上がった。
「仮面ライダー……龍騎……」
そいつは静かに、つぶやいた。
「龍騎、ライダーになったからには、あなたは私の敵よ!」
そして突然、俺に攻撃を仕掛けてきた。
「な、何だ!何のつもりだ!」
なんだこの変わりようはっ……!
「ライダーは、共存できないっ!」
「なに言ってっ!」
「冥土の土産に聞きなさい。私はナイト……仮面ライダー、ナイトっ!」
そいつ、いや、ナイトは、鋭敏な動きで槍を突き出す。
「くっそっ!とち狂いやがって!」
俺はデッキに触れる。契約したことで、そのカードは増えていた。
「何かないか……これだ!」
「Guard Vent」
龍の腕の形をした楯2つを手に持ち、攻撃をしのぐ。
しかし、守るだけではジリ貧だ。
「この野郎、いい加減にしろっ!」
「Strike Vent」
龍の頭を模した武器を、右腕に装着する。
「くらえッッ!」
それを突き出すと、後方からドラグレッダーが現れ、勢いよく炎を吐き出した。
苦悶の声を上げ、ナイトがのけぞる。
ったく、こっちには戦う気なんかないっつーの!
「ちょっとだけ時間を稼いでくれよ」
「Advent」
攻撃を終え、いとどは消えた龍を再び呼び出す。
いとどは⇒一度
ドラグレッダーにナイトの相手をさせている隙に、この世界に来るときに引き込まれた鏡へと急ぎ、
元の世界へと帰還した。
改めて奉仕部の椅子に座り、龍の紋章が入ったカードデッキを眺める。
「しっかし、これはいったい……」
夢だと切り捨てるには感覚がリアルすぎる……。
「いや、だがあれは……」
と、そこに雪ノ下雪乃が入ってきた。
「よお」
「こんにちは、もう来ないと思った……え?」
「ん?どうした?」
「あなた、それ……」
俺のカードデッキを指さしてそう言った。
「ああ、これか。俺もよくわかんねぇんだけどよ」
「そう、ふふ。奇妙な縁もあったものね」
「あ?何言って……」
雪ノ下はそう言って、ポケットに手を突っ込む。
「本当に、奇遇よね」
彼女が手にしたのは、俺が今持っていたのと同じようなカードデッキ。そしてその中央に描かれて
いるのは、蝙蝠のエンブレム。
「お前……」
「そう、私は仮面ライダーナイトよ。比企谷君。いいえ、仮面ライダー龍騎」
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