男「嘘をついたら死ぬ世界に来てしまったようだ・・・」【SF短編】 (29)

男「いつからこの世界に入っていたのかはわからない・・・いつも通り自分の部屋で目覚めただけだ」

男「ひきこもりだから人と話さずに済んでいるがテレビを見ている限りでは間違いない」

男「俺は死にたくない・・・この世界じゃ嘘をつくわけにはいかない・・・微細なリスクさえ冒したくはない」

ピンポーン

男「・・・アマゾンかな?はい」ガチャ

女「あの!すみません…匿っていただけませんか!」

男「は!?な、なんで・・・どちら様!?」

女「実は悪人に追われてて・・・お部屋に入れてください!」

男(怪しい・・・適当な嘘ついてでも入れさせるわけには…)

男(って!!嘘ついたら死ぬんだ!駄目だ嘘で追い返したりしたら・・・ん?ってことは・・・)

女「あの!お願いします早く!!」

男(この女、死んでないってことは嘘をついていない!)

男「入ってください、早く早く!」

ガチャ

男(ふう・・・あやうく一人の女性を見殺しにするとこだった)

女「ありがとうございます!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1477746040

ピンポンピンポンピンポーン

男「はいはいはーい」ガチャ

女「ちょっ…」

男「あっ」

悪人「おい!ここに髪の長い女が入ってこなかったか!?」

男(あの人は・・・隠れたな、よし)

男「え?入ってきてなんていませ…」

男(待て待て!!!!嘘ついたら死ぬんだ!!正直に吐くしか……)

男(ん?クローゼットの隙間・・・)

女(た・す・け・て)ウルウルキラキラ

男(や、やばい・・・!!どうすれば・・・)

悪人「おいどうした兄ちゃんよお!!」

男「い、いやあの・・・・・」

隣人「おいうるせえよ!大声出すならよそでやれや!警察呼ぶぞこら!」

悪人「あ・・・いやなんでもねえんですよ!はは……!?」ドクン

悪人「ぐふっ………あ………ついうっか…り……」バタン

隣人「え・・・?あ・・・し、死んでる」

男「あ・・・ああ・・・・・・」

女「た、助かりました!ありがとうございました!」

男「あ・・・うん・・・・・」

男(そ、そうだな・・・た、助かった)


ピーポーピーポー


男「死体は運ばれて行ったわけだけど」

女「本当にありがとうございました!なにかお礼を・・・」

男「いや、いいですよ本当に」

女「いえ、そうだ今度お食事にでも」

男「えっ」

女「本当に助かりました!また後日連絡しますね!では!」

男「帰った・・・・・・」

男「可愛かったな……」

男「女の子と食事なんて初めてだよ・・・どうしよう春がきたのかな」

そして後日

男「明日食事に行くことになったよ」

男「なんやかんや楽しみだ・・・明日童貞卒業ってことも・・・ってそんなわけないな」

男「でもなんで追われてたんだろう・・・?・・・・・・まあ女に秘密は付き物か」

男「そんなことより仕度仕度!」

次の日

女「本当にありがとうございました」

男「いえいえ・・・逆にありがとうございます」

女「・・・・・・なぜ追われていたのか気になります?」

男「いえ!そんなこと・・・・・・・・・・・・あります」

男(あぶねえ!嘘ついたら死ぬんだった)

女「実は・・・父の形見のこの指輪・・・これが数百京円の価値があるらしくて・・・しばしば狙われるんです」

男「・・・・・・・・・・・・えっ?」

女「ああ、あなたなら信用できるかと思って話してしまいました・・・絶対に誰にも言わないでください
警察ですらもこれを奪おうとしたことも何度かあるんです」

男「ん・・・・・・?京?億のつぎの丁のつぎの・・・?」

女「はい・・・」

男「・・・・・・・・・・・・・・・!?」

男(死なない・・・・・・マジかよ・・・え?)

女「ですが私はこれを絶対に手放したくはないんです。父の形見ですから」

男「あ、はい・・・・・・」

女「あの・・・・・・あしたはご予定は?」

男「な、なんにもないです」

女「よかった・・・・・・もしよろしければですが、明日ハイキングにでもいきませんか?」

男「いいですよ、ハイキングねはい」

男「・・・ちなみになぜハイキング?」

女「ああ…ハイキングが趣味なんです。山ガール?っていうんですかね?」

男「はは・・・」

女「では・・・また明日・・・」

男「あ、はい・・・」

男「数百京円・・・・・・・・・欲しい」

男「一生遊んでくらせる・・・いやそれどころじゃないぞ」

男「・・・・・・・・・・・・手に入れよう」

男「殺してでも」


ーその次の日ー

女「お待たせしました!」

男「いえ・・・今ついたとこですよ」

女「じゃ、このコースですね行きましょう」

男「はい」

女「自然の空気っていいですよね!私大好きなんです」

男「そうなんですか」

男(指輪は・・・はめてるな)

男「あの・・・コースはずれてみません?」

女「えっ?」

男「あの・・・えっと・・・あっちが真の絶景ポイントらし・・・」

男(って嘘はつけない!!)

男「じゃなくて、(僕にとって)いいものがあるんです!」

男(・・・)ドキドキ

男(よかった・・・死なないこれはセーフだ)

女「?・・・わかりました」

男「よしっ!」

男「ところで例の指輪ってなんでそんな価値があるんですか?」

女「美術的価値がすごいらしいんです」

男「へえ・・・じゃあ売るとしたら美術館か」

女「やめてくださいよぉ!そんな冗談」

女「・・・ところで大丈夫なんですか?ここ全然人もいなそうだし道にもなってないし」


男「だから連れてきたんですよ」

ゴスッ

女「え………………」バタン

男「へ、へへへ・・・」ガサガサゴソ

男「こ、これが数百京円の指輪・・・」

男「・・・さて戻るか、ずいぶん山奥だな」

ガサガサッガサッ

男「!?だ、だれだ!!」

熊「あ゛あ゛く゛・・・」

男「く・・・熊・・・」

男(だ、大丈夫だ・・・こんな時は死んだふり・・・)

男(・・・って!!死んだふりは嘘をついたことになるんじゃないか!?)

男(ど、どうすれば・・・・・俺にはこの指輪を持って帰るという使命が…)

熊「あ゛あ゛あ゛!!!」

グチャッ

俺『「嘘」と「金」、どちらも人間が生きていく上で欠かせないものであり、どちらも人間を狂わせてしまうものです』

俺『・・・ところで男は生きていたとしたらその後どのような人生を歩んだのでしょう?』

俺『嘘をついたら死ぬ世界で殺人という秘密を抱えたまま、果たしてまともに生活できていたのでしょうかね・・・?』


第一話・完

※各話ごとの同姓同名の人は「俺」以外別人です

男「・・・昨日夕飯を食べてからものすごい目眩と吐き気がするんです…」

医者「ちなみに昨日の夕飯は?」

男「ラーメン屋の出前でした。でもそこの店のは毎週食べてるんであんま関係ないかと」

医者「なるほど」

男「ここの病院に来た時もものすごい頭痛とさっきの症状がでて…倒れるところでした」

医者「今は大丈夫なんですか?」

男「少しは引きましたが・・・まだちょっとクラクラしてて・・・熱はないんです。ここのとこずっと天気が悪いしその影響も少しはあるんじゃないかって思うんですが・・・」

医者「・・・」

男「あの、先生?」

医者「ああ、失礼・・・では別室で検査しましょう。少し時間がかかりますが」

男「えっ・・・?ここでじゃなくて?でかい機械つかったりするんですか?そんなに重めかもしれないんですか?」

医者「まあ・・・・・・じゃ、あちらの部屋で」

男「はい・・・・・・」

────────
───

医者「つらいところお待たせしました。検査の結果が出ました」

男「どうでしたか・・・?」

医者「ずばり言いますと、あなたは大変珍しい病気にかかっております」

男「えっ・・・・・・・・・・・・?それは・・・どういう…」

医者「・・・・・・『陽灰病』です。・・・そう、かかった当初は吐き気や頭痛、目眩といった症状が出ますが、発病から1日も経てばそれは消えるでしょう。」

医者「問題はここからです。なぜ『陽灰病』と言うのかというと、それこそが恐ろしいもので・・・」

医者「太陽の光を浴びると浴びた部分が灰のようになってしまうのです。」

男「・・・・・・はい?」

医者「原因は全く不明です。例えガラス越しにでも太陽の光を浴びてしまうと浴びた部位がさっぱり無くなり、灰のようになって体から落ちていきます。」

医者「治療法も見つかってはいません。男さん、あなたご家族は?」

男「・・・父は既に亡くなっています。母は介護施設で寝たきりです。配偶者もいません」

医者「では今日から入院してください」

男「そ、そんな・・・・・・」

一週間後

男(一生太陽のない部屋に閉じ込められるのか・・・)

男(唯一の楽しみは病院食だけ・・・)

男「・・・だったけど…今日の餃子は不味いな」

医者「男くん、具合はどうかな?」

男「あ、もうすっかり大丈夫です」

医者「まあ、いずれ治療法も解決策も見つかるさ。さあ診察だ」

男「はい・・・」

男「あの・・・電話したいんですが」

医者「・・・・・・!だめだ、電話ボックスまでの廊下には陽射しの入る窓ガラスがたくさんあるし、携帯電話の使用も禁止されている」

男「夜なら部屋から出てもいいんですよね?」

医者「・・・駄目だよ、というか無理だ
この個室には外側からしか開閉できない鍵がついている
鍵を開けたままにはできない」

男「な、なんでそんな・・・」

医者「・・・・・・落ち着いてきたら許可が出されるかもしれない、すまないとは思うが我慢してくれ」

医者「具合が悪くなったりしたらナースコールを押してくださいね
それじゃ」

バタン… ガチャチャ

男(なにが「落ち着いてきたら」だ・・・充分落ち着いてるし症状も治まってる・・・太陽の光に気をつけるだけだってのに・・・・・・部屋から出す気なんてさらさらないんだ)

男(これじゃ監禁状態だ・・・ふざけるな)

男「ふざけるなよ・・・!!」

男(一週間も連絡できずに会えてもいない
心配してるに決まってる・・・なにより会いたい 会いたくてしょうがない)

男(彼女と付き合いはじめてちょうど1年くらい
このまま監禁が続いて会うことも話すこともできない・・・?耐えられるわけがない)

男「抜け出そう」

男「抜け出すなら雨の日か夜中だ」

男「鍵のかかった部屋・・・なんとか抜け出せるか」


男「着替えは・・・この棚の中か」

テレビ『キャスター「明日は一日中雨になるでしょう。傘を持っておでかけください」』

男「よし・・・・・・」

男「明日の朝に決行だな」



次の日の朝

ナースコール『ビーーッ』

タタタッ

カチャカチャガチャリ

看護婦「どうされましたか?」

看護婦「・・・ってあれ?い、いな…」

男「ごめんなさいほんとに!」

ガンッ!ガン!

バタッ

男「ふ、ふう…よかったあの先生じゃなくて女の人がきて・・・死んではいないと思うけど・・・」

男「見つかんないように早く行かなきゃ」

サーーー

男「よし、雨の音だ早くエレベーターに乗り込もう」

チーンウィーン

男「意外と余裕だったな」

ウィーン
タタタッキィー

男「よし!病院から脱出成功!今日のうちに彼女に会いに行かないと・・・」

男「携帯は・・・充電切れ・・・!?財布には・・・2000円しかない!」

男「仕方ないタクシーで行ける所まで行ってそこから歩くか」



タクシー運転手「はい、どこまで?」

男「あの・・・2000円でどのくらい行けます?」

タクシー運転手「・・・ま、大体5kmくらいかな」

男「5kmか・・・・・・じゃあとりあえず・・・市役所まで」

タクシー運転手「はいよ」

ブロロロロロ

 

男(市役所から彼女の家まで歩いて1時間くらいかな)

男(まあ雨の中だけど濡れて行くか・・・彼女に会えるならなんでもいい
傘を忘れて来ちゃうなんてドジだったな)

男「信号長いな…」チラ

男「!!?」

男(あ、雨が止んで晴れてる!!?ここはちょうどビルの日陰か・・・!!このままタクシーの中にいたら日が射して灰と化してしまう)

男「す、すみませんやっぱ今すぐここで下ろしてください!はい2000円!おつりはいりません!」
ガチャッバン!

男「や、やばい・・・こんな中途半端な日陰で」

男(いずれ日の向きも変わってここもひなたになるかもしれない・・・早くなんとかしなきゃ)

男(どうするか・・・)うろうろ

男「熱っっ!!痛っっった!!!!」

男「ハア・・・な、なんだ?ハア・・・」サラサラ・・・

男「あっ!こ、こ、小指が無くなってる・・・?ハァ、ハァな、なんで・・・」

男(あ・・・向かいのビルに反射した日光・・・・・・これも駄目なのかよ!!)

男「あっ、ビルとビルの間に薄暗い通路が・・・怖いけどここを通ろう」

ザッザッ



男(それにしても・・・痛い・・・小指ひとつ無くなるだけでこんな痛みが・・・いや、小指はでかい)

男(あ・・・廃人・・・こんなとこで寝るんだ…なんか気まずいな・・・跨ぎますよ)

男「しかしこの道からどうやって彼女の家に行けばいいんだ・・・」ハァ…ハァ…

男「彼女の家までまだあと5kmちかくあるぞ・・・」

男「小銭は・・・あと30円か・・・こんなんじゃタクシーにも乗れない」

男(夜中に5km歩いて行くか)


  

ー病院ー
医者「男くんが逃げた!!?」

看護婦「はい…申し訳ありません!!」

医者「今更謝ったって・・・今日は晴れてるじゃないか!」

看護婦「はい・・・あの!探してきます!」

医者「当たり前だ!早くしろ!!」

看護婦「生きてることを祈りましょう」

医者「問題はそれだけじゃないんだ・・・・・」

看護婦「?」

男(よかった・・・路地に出た・・・ここも日陰になってる)

男「あっ!公衆電話!」

男(反射光は・・・どこにもないな)

タタタッ

チャリンチャリンチャリン
男「かかれ・・・」
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
ガチャ

彼女『はい、もしもし?』

男(出た!!!)

男「もしもし!俺だ!男だ!」

彼女『男くん!!?男くん今どこなの!?家にも帰ってなかったし本当に心配したんだよ!!』

男「彼女・・・・・・本当にごめん色々会って・・・今から会いに行くよ!家にいてくれ!」

彼女『えっ…』

男(ん・・・?待てよ、彼女にここまで来てもらえば会えるじゃないか!
・・・というかそもそも俺の病院と病室を教えたら見舞いに来てくれるじゃないか!!そしたら後はもう夜が来るまで路地裏で待って病院に戻れば・・・・・・よし!これだ!)

男「あのさ!彼女…」

受話器『ツーツーツー』

男「切れてる!!!」

男「仕方ない・・・こうなったら日陰に沿って注意深く歩いて向かうしかない・・・」

テクテクテク

男「っと、日陰はここまでか」

男「服でガードしても繊維の隙間から光が入って灰になるって先生言ってたしな」

男(遠回りしたら道があるかもしれない、歩こう)

男(・・・・・・ってもう4時か・・・そろそろ日が暮れるかな)

男(・・・朝から何も食ってない…ほんとは歩きたくないくらい腹ペコだ
彼女の家についたらなにか食べさせてもらおう)


  
  

看護婦「問題が太陽だけじゃないってどういうことです?」

医者「彼には嘘をついていたんだがね・・・
『陽灰病』なんて病気はない」

看護婦「えっ!?」

医者「だが日光に触れると灰になるのは事実だ・・・」

   
ーーー午後11時40分ーーー


彼女(今日・・・一週間ぶりに男くんから電話がきた・・・)

彼女(昼前に『今日家に行く』って言ってたのにまだ来てない・・・心配で心配で・・・玄関先まで来ちゃったけど・・・)

彼女「・・・ん?」


彼女「あれ・・・」

  

男「彼女・・・・・・!!」ふら・・・ふら・・・

男「ごめん・・・うろうろしてたら道に迷っちゃって」


彼女「男くん!!男くーーーーん!!」ダダダダダッ

男「ああ・・・!!」タッタッタ



ガブッッ


   
   
  

  

医者「彼の本当の病名は『ドラキュラ・シンドローム』・・・
日光に触れると灰になり、ニンニクを摂取すると体調が崩れ、十字型のものを見ても体調が崩れる」

医者「だから彼の病院食にはニンニクを抜いたものを出させた…」

医者「そして何より一番の特性だが・・・」

医者「空腹になると人肉を欲する・・・血ではなく人肉をだ、それこそ無意識の内に」

医者「だから彼を隔離しておいたんだ」


 

 


 

 

男「・・・」ガブッガッ

グチョッグチャ・・・

ガブッグチッグチャッ

グチョッ


俺『我に返ったときの男はどれほど絶望するのでしょうかね』

俺『彼は自分の病気のせいで、と気付くのでしょうか?気付けなかったら・・・?』

俺『でもまあ、なんやかんやで男にとっての「太陽」に会えたのでよしとしましょうかね』


第二話・完

ごめんなさい

※※第一話以外の話の世界は嘘をついたら死ぬ世界ではありません※※

※※各話ごとに世界観も登場人物も完全にリセットされます※※

※※全て一話完結です※※

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