二宮飛鳥「星が瞬くこんな夜は…ってね」 (19)
モバP(以下P)「飛鳥~!お~い!!!」
飛鳥「ん?どうしたんだい?そんな大声をあげて」
P「どうしたもこうしたもない、もうダイビングの撮影時間だぞ」
飛鳥「……フフ、すまない。ボクとしたことが物思いに耽っていたら忘れてしまっていたよ。ありがとうプロデューサー」
P「共演者のあやめちゃんや頼子さんに悠貴ちゃんはもうスタンバイできてるからサクっと準備しちゃえよ」
飛鳥「ああ、わかったよ……。ところでプロデューサー」
P「ん?」
飛鳥「この撮影は全員水着を着て泳ぐみたいなんだが本当かい?」
P「そりゃあダイビングの撮影だからな、水着に関しては俺が飛鳥に似合う柄をしっかりちひろさんと選んだから安心していいぞ」
飛鳥「いやボクが言いたいのはそういうことじゃないんだが……まあいいか」
P「なんだよ不安なのか?」
飛鳥「キミの選ぶ水着に不安を覚えているわけじゃないさ、ボクはキミを信頼している。それは知ってるだろう?」
P「――じゃあ何が不満なんだ?」
飛鳥「果たして今日の撮影にボクは必要なのかな、と、ふと思ってね」
P「いや必要だろ」
飛鳥「即答だね」
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P「当たり前だ、全く何を言い出すかと思ったら……」
飛鳥「まあまあボクの訴えも聞いてくれ」
P「手短にな」
飛鳥「ダイビングの撮影ということは泳ぐ画も少なからずあるわけだろう?」
P「絶対少なくないけどあるだろうな」
飛鳥「そこでもし、もしも誰かが……主にボクが溺れてしまうような事態になったらまずいと思わないかい?」
P「まあそりゃあまずいけど近くにプロのダイバーが常に待機しててくれるって言うし、スタッフ陣だって船の上でしっかり待機してるから大事にはならないと思うけどなぁ」
飛鳥「む…つまりあくまでキミは安全に撮影できると言いたいわけかい?」
P「一応はそうなるな」
飛鳥「まあ確かにキミの言ってる事は正しいだろう、それはボクもそう思っている。でも人間というものはどうにも不便な生き物でね、一度それを感じるとずっと頭をその負の感情が付きまとってしまうのさ。ゆえにボクはこの撮影に不安を覚えていて、それが撮影の足を引っ張ってしまうんじゃないかと邪推しているのさ」
P「う~ん、まあ気持ちはわからなくもないな……」
飛鳥「そうだろう?キミなら理解ってくれると思っていたよ。だから撮影の不穏分子になり得る可能性を持つボクは果たして必要なのかな…とね」
P「でもそこは周りを信じてもらうしかないとしか言いようがない」
飛鳥「ああ、それはボクも理解してるつもりさ。しかし……いや、これ以上はいたちごっこだね」
P「…分かったこうしよう飛鳥」
飛鳥「ん?」
P「もし、もしもお前が溺れるようなことがあったら俺が全力で助ける。これでいいか?」
飛鳥「……フフ、あはははは!中々面白いことを言うね、キミらしくない」
P「そんなに笑うことないだろ……」
飛鳥「いや、でも…うん、キミの気持ちは嬉しいよ。――それにもしかしたらボクはキミにそれを言って欲しかったのかも知れない」
P「ん?なんだって?」
飛鳥「いいやなんでもないさ、独り言というやつだよ。さて、今のキミの恥ずかしい一言の衝撃が大きすぎてボクの不安はどこか虚空へと消えてしまったようだ」
P「そうかいそりゃあ何よりだ、『恥ずかしい一言』ってのが余計だけどな」
飛鳥「フフ、じゃあボクは急いで準備に入るとするよ。少々時間を使いすぎてしまったようだしね」
P「ああ、頼んだぞ」
飛鳥「――これでいいかい?」
P「うんうん、やっぱりお前によく似合ってる」
飛鳥「フフ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか、素直に受け取っておくよ」
P「そうしてくれ、じゃあ撮影に行こうか」
飛鳥「ああ、キミの口車に乗ってこの大海原たるエデンの海に身を投じに行くとしよう」
スタッフ「飛鳥ちゃん来ました~!それじゃあ本番行きま~す!!」
飛鳥「ふう、綺麗な海で泳ぐとはいえやっぱり疲れるものだね。この疲労感が忌まわしいよ」
P「とりあえずおつかれさま。無事に撮り終えられて良かったよ」
飛鳥「ああまったくだね。撮影中に頼子さんが『もしサメが来たらどうする?』なんて言い出した時は肝を冷やしたけどね」
P「ははは…シャレにならんなそれ……」
飛鳥「まあそれも杞憂に終わったんだがね。そう言えばプロデューサー、今からの時間は好きにしても良いはずだったよね?」
P「ああそうだぞ、スタッフ陣なんか釣りなんて始めちゃってるしな」
飛鳥「キミは何か予定はあるのかい?」
P「いいや特には決めてない。日も暮れてきたし綺麗な景色でも楽しもうかなぁとか考えてたところ」
飛鳥「フフ、奇遇だね。ボクもこの壮大な景色を眺めて楽しみたいと思っていたところなんだ」
P「お、そうなのか。そういえばさっきスタッフの誰かがこの時間のこの海域はイルカが現れたりするらしいって言ってたの聞いたよ」
飛鳥「へえ、イルカか。興味深いね」
P「飛鳥はイルカ見たことあるか?」
飛鳥「あると言えばあるがないと言えばないね。写真や映像で見たことはあるのさ。ただ、生で実物を見たかと聞かれると首を横に振らせてもらうよ」
P「そっか、実は俺もなんだ。この歳にして未だに水族館とかに行ったことがなくてな……」
飛鳥「そうなのかい?まあ別に行ったところで何かステータスになるわけでもないだろうし気にすることはないんじゃないかな」
P「そう言われるとその通りではあるけど…。お、ちょうどあの辺に現れるらしいぞイルカ」
飛鳥「あの辺?一体どこだい」
P「だからあの辺だって、というかなんか浮いてないか?もしかしてイルカ?」
飛鳥「む、キミのその抽象的な表現だと分かり辛くてかなわないな。指でもさしてくれ」
P「すまんすまん、ほらあの辺だよ」ユビサシ
飛鳥「――ああ、本当だ。確かに何か浮いている様に見える」
P「…というかこっちに近づいてきてないか?」
飛鳥「よくよく見たら複数個浮いているように見えるね。あれは――」
P「背びれだ!イルカだぞ飛鳥!!」
飛鳥「――そんなに騒がなくても隣に居るんだしボクにもしっかり聞こえてるし見えてるよ。でもまあ、ボクも内心驚いてる」
P「凄い!本当にイルカが見れるなんて思わなかったよ」
飛鳥「それはボクもさ、でもキミのはしゃぎ様も中々面白くて『凄い』よ。もしかして楽園の雰囲気にあてられたのかい?」
P「自覚はないけどそうなのかも。ま、こういう時は楽しければなんでもいいってやつだ」
飛鳥「雰囲気に飲まれるというのはボクはあまり好きなほうじゃないんだが、でも…うん、この雄大で壮大な景色を見ていると、そんな些細な事などどうでも良くなってしまう気がするよ。人々が楽園に惑わされ行く理由を垣間見ている気分だ」
P「それにしても船に寄って来るなんて随分人懐っこいんだなぁイルカって」
飛鳥「楽園には種族の差なんて粗末な概念でしか無いのかも知れないね。この大海原の前では全て等しく同じ命なんだ、故に恐れる必要もないんだろう」
P「観光客が多いから人を見慣れたんじゃないかな、なんて無粋な事は言わないでおくよ」
飛鳥「残念ながら口から漏れてるよプロデューサー。でもまあ、本当に綺麗だ……。願わくばこのイルカ達と泳ぎたいね」
P「お、それいいな飛鳥。泳ぐか」
飛鳥「え?今のはほんの冗談のつもりだったんだが……」
P「大丈夫大丈夫、なんか周りもドルフィンスイムする気満々みたいだし」
飛鳥「言い出してこう言うのは何だがアレだけど、危険じゃないのかい?もう水中はライトでもなければ見渡しづらい時間だろうに」
P「取り敢えずダイバーさんに聞いてくるよ、ちょっと待っててくれ」
P「夕暮れで海中は暗いだろうから潜るのは危険だけど海面で浮いてるぐらいなら大丈夫だってよ」
飛鳥「そうか、それならボクも安心だ」
P「じゃあ今日の記念に何枚か写真撮ってちひろさんに送っとくかな、ほら入った入った」
飛鳥「まあそう急かさないでくれ。――よっと」ジャブン
P「よーし、じゃあ撮るぞ~」
飛鳥「む、キミは入らないのかい?プロデューサー」
P「入りたい気持ちは山々なんだが俺水着持ってきてないからなぁ、それに俺まで入ったら誰が写真撮るんだよ」
飛鳥「はあ、全くキミは準備が悪いね。…ボクはキミと一緒に泳ぎたかったのに」ボソッ
P「ん~?なんか言ったか?」
飛鳥「なんでもないよ、さあ早く撮ってしまおう。この幻想的な風景もあと少しで暗闇に落ちてしまうからね」
P「それもそうだな。お、ちょうど後ろからイルカが近づいてきてるぞ。少しだけ寄ってくれ」
飛鳥「理解った、――こうかい?」
P「良いぞ良いぞ。そんな感じ」パシャパシャ
飛鳥「――いくら南国の楽園と言っても流石に日が暮れてくると海水も冷たくなってくるね」
P「あ、すまん身体冷えちゃうよな。あと数枚で終わらせるから少しだけ我慢してくれ」
飛鳥「いや別にそこまで冷たいわけじゃないさ。むしろ心地良い気がする」
P「いずれにせよ直ぐ終わらせるよ。飛鳥も疲れてるだろうし、ほら目線くれ~」
飛鳥「ん、そうしてくれると助か――ッ!!」
P「ん?どうした飛鳥」
飛鳥「あ、足が!うッ!!」ジタバタ
P「お、おい飛鳥!?――まさか溺れて!?待ってろ今行くぞッ!!」
飛鳥「はあ、はあ……」
P「全く、どうなることかと思った…」
飛鳥「ま、まさか足が攣って溺れるなんて……一生の不覚とは正にこの事だ」
P「でも飛鳥に大事がなくて本当に良かった」ホッ
飛鳥「――恥ずかしいところを見せてしまったね……なによりキミの服がびしょ濡れになってしまった」
P「なあに、こんなの飛鳥を助けられたのに比べたら安いもんだって」
飛鳥「っ!…キミはよく真顔でそんな恥ずかしいことが言えるね!そんなこと言われたらこっちまで恥ずかしいじゃないか!」カオマッカ
P「ははは、すまんすまん」
飛鳥「まったくキミはこんな時まで……これじゃあ羞恥に溺れそうだよ本当に」
P「顔が紅くなった飛鳥も可愛いな、うんうん」
飛鳥「だから!全くキミは本当に……はあ、ボクの負けだ。平気な顔でそんなことを言えるキミには完敗したよ。……でも、助けてくれてありがとう。これだけはしっかり伝えておかなきゃね。有言実行したキミには返しても返しきれない恩ができてしまったようだ」
P「いやいや、そもそも飛鳥が疲れてるの知ってたのにさっさと切り上げなかった俺も悪いよ。お互い様ってことにしとこう」
飛鳥「――あまり腑に落ちないがキミがそう言うのなら取り敢えずはそういうことにしておくよ。でも、本当にありがとう。助けてくれて」
P「それはさっきも聞いたって、ほらみんなも心配してるみたいだし大丈夫だって言って来い」
飛鳥「フフ、そうだね。そうしようか」
スタッフ「それではみなさん!今日の撮影お疲れ様でした!乾杯!」
全員「「「「「「かんぱ~い!!」」」」」」
あやめ「飛鳥殿!もう大丈夫なのですか!?飲み物ならあやめが持って来ますよ!」
頼子「飛鳥ちゃん大丈夫?お料理持ってこようか?」
悠貴「飛鳥さん大丈夫でしたか!?私も何か持ってきましょうか?」
飛鳥「あ~……ボクはもう大丈夫だからみんな安心してくれ」
悠貴「本当に?無理してないですか?」
飛鳥「本当さ。でも心配してくれてありがとうみんな、ボクは良い共演者に恵まれた様だね。それじゃあボクは少しプロデューサーに用があるからまた後で」
飛鳥「プロデューサー」
P「ん?なんだ飛鳥か、どうしたんだ?」
飛鳥「キミこそどうしたんだい?宴会の場はこんな浜辺には無いよ」
P「いやな、夜空が…星が綺麗だなあって」
飛鳥「星…確かに綺麗だ」
飛鳥「……ねえプロデューサー」
P「ん?」
飛鳥「さっきの事故、キミはお互い様と言ったけど、やっぱりそれじゃボクの納得がいかない。何かさせて欲しい」
P「ん~そう言われてもなあ。特に何か思いつくわけでも……あっ」
飛鳥「なにか思いついたのかい?」
P「じゃあ隣でこの夜空を一緒に見てくれないか?一人だと寂しいなって思い始めたところだったんだ」
飛鳥「フフ、なんだそんな事かい。お安い御用だよ」
P「それにしても綺麗だな~ホント」
飛鳥「大昔の船乗り達はこの暗闇をあの小さな星粒一つ一つを頼りに航海をしたらしい。しかし星の放つ光というのは何万年も前の光であるわけだ。その実今見ている星は既に滅んでいるかもしれない。そう考えると死してなお輝く星を頼りにこの暗闇を渡るというのは中々興味深いと思わないかい?」
P「……とても儚い気分になるな」
飛鳥「そう、儚いんだ。それでもヒトは強いからね。前へ前へと進み続ける。こんな風に、それがどんな暗闇だろうとね」
P「お、おい飛鳥そっちは海だぞ」
飛鳥「フフ、プロデューサーも来なよ。この深淵はとても魅力的だ」
P「待てって飛鳥、……飛鳥ッ!」ギュッ
飛鳥「……痛いくらい手を握ってくれるんだね」
P「当たり前だ。それ以上行かせないぞ、危険だ」
飛鳥「大丈夫さ。かつてボクたちは海から生まれた存在。故郷に還るだけだ」
P「いいやダメだ。絶対に行かせない」
飛鳥「………フフ、あははは」
P「……何が可笑しい」
飛鳥「いや、冗談だよプロデューサー。確かにこの巨大過ぎる程の深淵はとても魅力的さ、でもそれに身投げをするほどボクは愚かじゃないよ。フフ、あはは」
P「ったく…冷や冷やしたぞ……」
飛鳥「どうやらボクもこの楽園に惑わされてしまったらしい。好きに責めてくれ、キミにはその権利がある」
P「……色々言いたい事はある、だが取りあえず後回しにしておくよ。そろそろみんなのところに戻らなきゃな。心配するだろうし」
飛鳥「それもそうだ。――にしてもこの手は放してくれないんだね」
P「あ?あ、いや、すまん今放すよ」
飛鳥「いや良いよ、このままで」
P「……ホントに?」
飛鳥「ああ、今はキミとこうして手をつないでいたい。キミを近くで感じていたいんだ…ダメかな?」
P「ダメじゃないけど……どうしたんだよ急に、いつものお前らしくないな」
飛鳥「それを言うなら昼間のキミだってらしくない発言をしていたじゃないか。ま、たまにはこういう時があっても良いだろう?星が瞬くこんな夜は、ってね……」
おしまい
終わりました、アイプロ飛鳥記念のヤツです
頼子やあやめ、悠貴は他のPが担当しているという設定ですが分かり辛いですね
モバ本編の飛鳥像よりも柔らかく表現してみようとしたんですけどあまり上手くいきませんでしたすいません
俺もハワイ行きて~なぁ~
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