勇者「 ……冒険的な、アレ 」 (23)
思い付きでやっていくわ
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ここは、多種多様な種族が暮らす愛と平和の『フュンフレイル王国』
世に名を知らぬ者なし四大国が一つ、広大な土地と比類なき軍事力を、王と民が力を合わせて築き上げた偉大なる国だ
如何なる支配もせず、させず、を掲げる今代の賢王によって、自国の防衛の徹底を欠かさず、同時に周辺国の諍いや争いの仲裁と解決に尽力しており
既にいくつもの戦争を終結させ、傷つき疲弊した両方の国力回復に協力するなど
正しく世界平和を実現せんとする様は『光の国』と呼ばれるまでに世界から支持を得ていた
だが、
「 お、王よっ、大変です、大変です、大変です!!!!嗚呼、なんということだ、こんな……ッ!?は、早くこれを!!! 」
ある日、北部の魔導研究機関から王へ緊急の報せが届く
ドタドタと、まるで死に物狂いのように玉座へ駆け込んできた顔面蒼白の魔導士は、震える手で紙の束を王へと手渡すと
どさりとその場に崩れ落ち意識を失ってしまう
王は確りと紙束を受け取り、そしてすぐに兵の一人に魔導士を担がせ、医師のもとへ送らせた
書類仕事も何かと多い王には、速読の特技があった。十数枚はある魔導研究機関からの報告書をあっという間に読み終えると、静かに目を覆い呻いた
「 ぬぅ…、……そうか。いや、信じよう…。我がフュンフレイルの魔導士は優秀だ、……こんなことを何かと間違える筈があるまい 」
王がここまで乱れるのは中々ないことだ、一体どれほどの問題か
尋常ならざる様子に兵達が尋ねようとしたが、その前に答えは示された
王の口からではない。その手にある報告書からでもない。医師のもとへ担がれている気絶した魔導士なわけもない
「 もう遅いのか。遅すぎるのだな 」
ビキィッッッッ!!!!!!!
何かが砕かれたかのような音の直後。文字通り、世界に激震が走った
生きとし生ける者すべてに、その『産声』は聞こえた。否、叩き込まれたといった方がしっくりくるような、絶対の恐怖が
ヴォオオオォオォオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォォォオォオオオォオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッッッッ!!!!!!!!!
一瞬か、永遠かも分からぬ、絶望そのものと言える産声が止んだとき、静寂の中で王は呟いた
「 いやぁ、これは反省せねばいかんな 」
王の手から零れ落ちた一枚には、遥か昔の大戦から千年、世界から絶えた筈の『魔物』がつい先日観測されたと記されていた
「 世界平和を目指すなどとほざいてみたが、結局は、未だそんなことでがちゃがちゃしている時点で 」
王の手から零れ落ちた一枚には、魔物の出現に伴って、世界各地で魔力の異常減少が起きていると記されていた
「 『彼』から見れば、私たちは平和ボケしたとしか見えんのだろうなぁ。事実その通りだと、私も思うよ 」
王の手から零れ落ちた一枚には、減少した魔力はどうやら消えているのではなく、あるポイントへと移動しているようで、それが僅か数日で何かの形を成し始めていると記されていた
「 謝罪せねばだ。身内で殺しあうことと、それを止めることに夢中で、我らは貴方との『約束』を……あろうことか、忘れてしまっていた 」
「 折角勝ち得た千年、これでは無駄にしたも同然だ。悔いても悔いても悔やみきれん、この愚かさを謝罪しよう 」
余りにも濃密、常軌を逸して極大。観測器はたちまち狂ってしまい、現地へ直接調査に向かった者の半数は発狂
想定外の犠牲を払いつつかき集めた情報から計算し導き出された未来は、失われかけた過去の記録の一つと一致した
もはや一般には伝説としてしか語られず、史実などとは誰一人夢にも思わず。風化していくばかりの物語と共に、架空とされた存在
しかし彼は甦る
「 王よ、まさか、これは!!まさか!!?!? 」
死と地獄と恐怖と絶望の体現者
「 そうだ 」
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約束の時だ、準備は出来ているのだろうな?どうでもよいが
『戦わない』のであれば、まぁ黙って滅ぶがいい
ワタシは寝起きが悪くてなぁ。塵芥とてきちんと一つ一つ嬲り殺してやりたいんだが、面倒だしサクッと消し飛ばして構わんよな?
……、はぁ……勇者よ、さっさとお前も飛んで来い。こんな劣化共でも、愛した者達の末裔ならば守ってやらねばならんのだろう
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瞬く間に
空は、あらゆる光を断つ黒雲に覆われた
海は、魔物以外生きられぬ死の海と化した
大地は、瘴気立ち込める病魔と悪魔の世界に変わった
統率された軍のように、化け物共は進撃を開始する
百を超える種族が力を合わせて立ち上がる……隙も与えず
死の灰が舞い、地獄の炎が暴れ狂い、終わりのない恐怖に悲鳴も絶えず、やがて絶望が全てを呑み込んで初めて静寂が訪れ、今度は化け物の嘲笑が溢れていく
「 魔王が、復活した 」
あまりにもあっけない
四大国もその他百七国も、一週間とかからず滅亡した
次元の違う敵。象に踏みつぶされる蟻どころではない。隕石に降り注がれる亀といったところか
一通り世界を蹂躙した魔王は居城を築くと、飽きましたと言わんばかりの仏頂面で引き籠った。魔王が仏とはこれ如何に
「 くっそつまらん。畜生の相手をしてやるために甦ったのではないぞ 」
地も海も空も魔物が跋扈し、人々は家畜の如く生かされている
魔の時代が六年ほど経った頃
人々が、そして魔王が待ち望んだ、希望の光が降り立つ
天より黒雲を切り裂き現れたそれは、双眸に黄金の炎を揺らめかせ、山のような逞しき巨体をしならせ、大気を圧縮する
落下の衝撃への緩衝材にしたのだ。そうして驚くほど静かに着地したそれは、ゆっくりと深呼吸をした
「 ……懐かしい。が、できればこっちの臭いは二度と嗅ぎたくなかった 」
「 まぁそう言うなよ 」
誰もいないはずの虚空から返答があった
直後、空間が歪んで窓のように魔王の顔が現れた
「 待ちくたびれたぞ敵(とも)よ!!退屈で死にそうとはよく言ったものだ、いやあお前と私はなんだかんだで互いに必要不可欠な…… 」
「 お前の顔も二度と見たくなかったよ 」
「 ちょっとー!?ワタシも傷つくことあるんだぞー!?といっても、ワタシを傷つけられるのはお前だけでもあるんだがなあ!!フハハ!! 」
「 黙れクソが 」
「 うっわ、お前ほんとに救世主?口悪ぃー!あれかい、寝起きでむしゃくしゃしてんのかい!? 」
「 寝起きが悪いのはお前の方だし、俺の口が悪いのもお前が悪い。ただでさえ阿呆共のせいで現界が遅れたんで機嫌がすこぶるよろしくないってのに、テメエと開幕顔合わせとなりゃストレスがマッハなんだよクソ馬鹿 」
「 あーはいはい、はーいわかった。わかりましたよ。しっかたないなぁもー!!せっかくの再会だってのにぃ……。…あー、おほんっ!そんじゃ、ま、改めまして 」
「 ……ああ、再開しようか。魔王よ 」
「 再開しよう、勇者よ。此度にて正真正銘終わるとよいが、さてどうだろうな。死力を尽くして戦うことには変わりない 」
「 では、俺は前回同様仲間集めて世界を巡る冒険の旅から始めるのだな。……面倒、と言っていいものでもないだろうが 」
「 そこばかりは、お前の気の持ちようだ、まぁ頑張れ 」
「 ……はぁ。首洗って待っていろ魔王。お前を倒して世界平和だ 」
「 身体の隅々まで洗って待っているよ勇者。お前に倒されて繰り返しだ 」
「「 GAME START 」」
くっそ短いがここまで。また後で書くわ
酉つけとくわ
魔王「 うん。まぁ。STARTっつって本当に色々始まってくれたらよかったんだけど 」
魔王「 こう、なんかそれっぽい感じのかっこよさげな雰囲気で開幕宣言したらば、うまい感じに爺婆がなんかしてくれるかと思ったんだけど。なりませんね、はい 」
勇者「 乗っておいてなんだがふわっとし過ぎだクソ馬鹿。俺は今超絶恥ずかしい 」
勇者「 ……これは、やはりスタートとして少々どころではない支障、いや、問題があるな。正直言うとGAME OVER以外の何物でもない 」
勇者が一面を見渡す
降り立った場所は何処とも知れぬ荒野で、ぽつりぽつりと廃墟がある以外には何もない。枯れ草木も死体も、何一つ
廃墟と一口に言っても、全壊で瓦礫の山だったり、半壊で内部が魔物の棲家となっていたり
どうやったのか、ハンマーで打たれた杭のように綺麗に地面へ埋まっているものなど様々だ
死体がないのは魔物が食ったからだろう。残らず全て片づけたのか……意外と綺麗好きなのだろうか、と変な感想が湧いた
魔王「 ぁゃー…、やっぱりか?まぁワタシも思っていた。やりすぎちゃったよな 」
勇者「 お前を責めはしない。役目をこなしただけだ。そもそもあの阿呆共が全て悪いこと 」
魔王「 そう、それ!勇者やけに遅かったよなぁ。何やってんだ天上は!だからワタシもむしゃくしゃして……まぁ、こんなことに。本当ならワタシが復活した時点で… 」
勇者「 俺も現界し、お前と一戦交え、恐らく痛み分け。互いに傷を癒すため拠点に籠り、魔物対その他全種族の戦いへと移る。…あ、魔族もいたか 」
魔王「 実はまだ出してないんだがなっ。どいつもこいつもしょぼすぎて、魔物だけで済んじゃったから。あの子たち出番がなかったのさ 」
魔王「 んで、その魔物や魔族ならば例外なくワタシの意思が及ぶから烏合の衆にはならず、塵芥共も祖先が千年前にお前から力を分け与えられているから、それをきちんと目覚めさせれば 」
勇者「 両者手加減無しの全面戦争は拮抗。天秤は揺れつつも釣り合い、舞台がやっと整う。そして、俺達再登場で本当のゲームスタート。そんな流れだった筈だ 」
魔王「 ……はぁ。自分らでおっ始めたゲーム、用意したざっくりシナリオ、その初っ端からこけてちゃ話にならん。ああああ一度でいいから天上のジジババを殴り殺したいぃぃ!! 」
見ただけであらゆるものを殺せる呪極の殺気を瞳に込めて、魔王が天を仰ぐ
直後、その天から勇者が何かを感じ取った。
勇者「 ……っ?……、…あぁ。安心しろ魔王、そろそろ『対処』するとさ 」
それが魔王の言う爺婆、勇者の言う阿呆共からの形無き信号と理解する
魔王「 んあ?……おぅ、おーおーおーう!やっとか。中身の無ェすっかすかの議論で何を時間かけんだか知らねえが 」
勇者「 中身が無ェすっかすかの議論だからグダって時間がかかるんだ。無駄を愉しむのが楽しみなのさ、天上の連中はな 」
勇者と窓越しの魔王が一度視線を下ろし、深い溜め息を吐いて、改めて空を見上げる
別に黒雲の上に神様がいるわけではない。ただ、なんとなく上を向いただけ
程なくして『なにか』が世界に干渉し、修正……否、改変していく
あるぇ?酉ミスってる
これかな
気持ちの悪い感覚。千年以上も前、戦いの中で抱いたあのどうしようもない嫌悪感まで込み上げて、勇者も魔王も揃って顔を歪め、吐き捨てた
勇者「 慣れたつもりだったんだがな、駄目だ。胸糞悪い 」
魔王「 やめとけやめとけ考えるな、同意だけど。ワタシ達は、我らが造物主様であらせられるくそったれな爺婆共の道化だって自覚さえありゃぁイイんだ 」
諦めと共に強引に呑み込んで、気付く
一分とかからず改変は済んだようだ。景色が激変している。改めて周囲を見回してみれば
「 ――んな、ぁっ!?い、いつの間に!!誰だお前たちは!? 」
「 !、戦闘態勢ッ!! 」
「 侵入者だ、王をお護りしろ!!両方から異常な魔力を感じる……、先程の異変と関係があるかもしれん、油断するなァ!!! 」
「 ……く、はは。何だ、今度は何だ。滅びを受け入れる覚悟は出来ているぞ、当然死ぬまで戦う覚悟もな……!! 」
勇者と魔王は知らなかったが、そこは世に知らぬ者無し四大国が一つのフュンフレイル王国首都中心、王宮内、玉座の間だった
二人に驚く大勢の兵士と、何かの紙束を持ってへたりこんだ王がいる
これらはすべて、魔王から見て六年前に滅んだ、否、滅ぼしたもの。今この世界に存在しない筈のもの
しかし魔王本人はそこを欠片も気にしておらず、ただただ喧しいとイラついた
魔王「 わっは、一気に賑やかだぁ。うるせぇ殺してぇ 」
勇者「 …おい魔王よ、お前いつの間に俺の隣に。城にいたんじゃなかったのか 」
ほんの数十秒前まで、魔法で作った窓越しに魔王は勇者へ根城の中から話しかけていたのに何故、今ここに実体を持って立っているのか
勇者は方法を訊いているのではない。意図を訊いている
魔王「 ふぁ?気づかなかったのか?『修正』のせいだよ、どうやら時間巻き戻し的なことをしやがったみたいで城も何もありゃしねえのさ 」
勇者「 で? 」
魔王「 ……あー、説明役かい、そうですかい。おーけー、つまりだ 」
1、ワタシ(魔王)復活。世界終了のお知らせ
2、このなんちゃら国含め、ありとあらゆるもの、場所を全て滅ぼす。死ぬがよい。
3、世はまさに大魔界時代。\(^o^)/オワタ
4、魔王城建てて六年待ったら漸く勇者様登場キャーステキーケッコンシテー
5、天上への愚痴で盛り上がるアットホームなひととき
6、爺共がよっこらせ。GAME OVER状態をGAME STARTできる状態まで時間を巻き戻す
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魔王「 時が築城前に戻りゃ城も消えるだろ。但しワタシと勇者の座標は変わらん 」
魔王「 ワタシ椅子の上でふんぞり返ってたから、そのままだと無様に落下するんだわ。だったら勇者んとこ行っちゃお的な。ついでに腕組んじゃおう的な 」
勇者「 そうかい 」
魔王「 軽い 」
勇者「 ……つまり俺が立っていたあの荒野は、元々この王宮?っぽいとこだったのか 」
魔王「 突然空中に現れては飛んでくる瓦礫を避けつつ、作られていく壁や床や天井やオブジェに巻き込まれないよう上に跳んでいたら丁度この部屋に。偶然だなぁ 」
二人が呑気に話している間に、兵達はどんどん恐慌状態に陥っていく
魔王というものは悪性の極みにして死と地獄と恐怖と絶望の体現者である
本人にその気がなくとも、特に何もしていなくとも、存在するだけで致命的害悪を撒き散らすのだ
「 ぅ!?……っぐ、あああ゛あ゛あ゛!!!!! 」
「 おい、どうした!まさかあいつらが何かしたのか、精神系攻撃魔法か!?おのれ、よくも……っぁがっ!? 」
「 ……な、ンだッ、頭が…いた…イ、ぎっ?……あ、がああああああ!!!?!?? 」
「 馬鹿な!!?くそ、全員私の後ろへ下がれェ!!!奴を直視し続けるな、奴の、あの黒い魔力に精神をやられるぞ!!!!! 」
魔王「 なぁ、腕組もうぜ 」
勇者「 いやどす 」
魔王「 つらたん 」
「 詠唱終了、構築完了!!複合属性結界、展開!!!! 」
「 前衛の護りを緩めるな、後衛も侵入者から意識を外さぬように、そして視界には決して留めぬように!!精神系治癒魔法の準備を急げ!!! 」
「 大丈夫かっ、気をしっかり持てお前ら!!俺達王直属兵は精神の耐性だって常人より遥かに強く鍛えてきただろ!?この程度、でえぇ……!!?!? 」
「 ぐぃ、っぎ、にぇうあ…やっ、ゃ。は。はゅ…………し……xpj08yid0wgubml;-9qr92h4i[@r]f@[vp-we.f;c-orriv,efpooa3;\we[c: 」
「 だめだ、だめだ、だ、だめ、だめだめだめだめだめだめだめだめ、こWAレ、ル、KOわれル。る、る。RAっ???? 」
「 ぐっ……!!くっそォおおおおおおお治癒だけじゃ追いつかん!!!精神系強化魔法と多重フィルターも併せて、早く、早く!!!! 」
勇者「 なぁ魔王さんや 」
魔王「 なんだい勇者さん 」
勇者「 瘴気わざと放っておいてるだろテメェ。引っ込めてやれ 」
魔王「 えぇーいいじゃんもう少し経てば勝手に静かに……わかったわかったから睨まないで。引っ込めますって、ほい 」
玉座の間に広がっていた地獄は、魔王の「ほい」という適当な一言で消し飛んだ
全てが突然過ぎて、兵達は何一つ理解が出来ていない
ただ魔王が『敵』であろうこと、そして隣の勇者も次元の違う存在であろうことは本能で判ったのか、怯えを隠し切れずとも武器を構えたままだ
しかしここで、今度は別の動きがあった
「 そこの御二人、訊きたいことがあるのだが、よいだろうか 」
ブルースクリーンほんとクソ
ちょっと待ってメモ吹っ飛んだから書き直してくるわ
一人の男が、口を開く
何人かの兵は魔王の姿を直視し続けたせいで視覚から瘴気の影響を受け、精神に深刻なダメージを負ったが、この男は平気なようだ
冷静且つ素早い判断が出来るうえに、実力もある。兵が張った結界とは別に、逸早く自前の、かなり高度な魔法防護を行っていた
勇者が「誰だお前は」と眼で問う。魔王は全く興味を示していない
「 私はこの国の、フュンフレイル王国の王だ。名はデレストロ・ガンエ・フュンフレイル 」
王「 これはほぼ直感なのだが……貴方達は、………魔王と勇者、ということで…よいのか? 」
勇者「 そうだ。俺が勇者、こいつが魔王だ 」
答える勇者
指差しで紹介された魔王は鼻をほじっている
王「 そう、か。伝説は史実。千年前の約束も、伝承に誤りがなければ、真か…… 」
王「 ……ふ…くくっ、………はは…は。いや、すまない。己の愚かさを嗤ったんだ 」
勇者「 ああ。正直、多分未来はこうなっているだろうとは、あの時も……千年前の戦いが終わった時も、可能性の一つとして浮かんでいたよ 」
勇者「 まぁマシな部類ではあるんだが、落胆している 」
王「 ……っ、すまない…… 」
勇者「 お前一人のせいであるわけがないだろう。そこまで苦しまなくてもいい 」
魔王「 なぁー勇者ー。おぉーい 」
肩を叩かれ、勇者は隣にいる魔王へと振り返り
直後
キュオッッッッ!!!!!!
魔王の手から発射された何かが、光速に迫る速度で勇者の口内目掛けて飛来していた
勇者「 あっっっっっっっっぶねえだろォがこンのクソアマアアアアアアアアアアアアアアア!!!!??? 」
勇者が刹那の世界で叩き落としたそれは
魔王「 ワタシを待たせ過ぎだぞ……ッ、それもこんな塵芥の為にぃ!! 」
魔王「 六年も退屈の苦しみに耐えたんだ!もっと構えや遊べや馬鹿野郎っ!! 」
ムキーーッ!!と喚く魔王が先程までほじくっており、たった今指で弾いた、鼻くそであった
勇者「 俺それ嫌いだっつったよな。どんな悪逆非道も等しく嫌悪し憎悪する正義の味方勇者様たる俺でも、それだけは飛びぬけて大ッ嫌いだって何度も言ったよな 」
魔王「 ワタシは魔王だ。言うだけ無駄だ♪ 」
キレた勇者の双眸に、黄金の炎が灯る
またしても王や兵は蚊帳の外に置かれ、二人は唐突に戦闘態勢に入った
勇者「 ……そういや。天上の示すこの後の流れからすれば、今お前とヤりあった方が早いのか 」
魔王「 ん、そうなるなぁ。おっじゃぁなになに!?久々に全力でバトっちゃいますかぁ!!? 」
勇者「 そこのおっさん達……王だっけか?彼奴らに説明したって意味ないしな。どうせ全て壊れちまうし、もう一回くる『修正』で更に全部なかったことになる 」
魔王「 ワタシはこーしてお前とダベってるのも楽しいから、なんだったら爺共が痺れを切らすまでずっと遊んでようぜ 」
勇者「 役はこなせ馬鹿。……取り敢えず、さっきの鼻くその礼をさせてもらうか駄魔王。ついでに諸々のストレス発散もさせてもらう。サンドバッグの悦びを教えてやるよ 」
魔王「 イイねー痺れるねー濡れちゃうねー。ワタシのマゾヒズムを満たしてくれるのはお前だけなんだよなあ!! 」
勇者の手には聖剣……ではなく、徒手空拳の構え
魔王にも武器はなく、どういうわけか勇者の放つ殺気を浴びて軽く絶頂していた
終始真剣味に欠けた掛け合いだったが、殺し合いのゴングは鳴る
言葉では言い表せぬ何かが二人を中心に溢れ
そして、全てが呑まれる
天上の考えなど、二人とも分かっている
そもそも修正がこんな『半端なカタチ』で止まっているのはわざとで
勇者と魔王が千年ぶりに力を開放し、全力で戦い、その次元違いの力の衝撃に巻き込まれ世界が脆く壊れた後で『修正』を再開し
物語の始まりを整えやり直そうというのだ
天上は二人の戦いと、世界が壊れるのを眺めて愉しんでいる
まったくもって理解できない歪んだ娯楽趣味だが、そいつらの作った箱庭の人形である以上従う他ない
神というのは人智を超えた存在であるとされ
森羅万象は神の創造物であるとされ
つまり全ては神の意のままに
気付いてしまえば、知ってしまえば。なんと残酷で滑稽か
謳歌せよ、愚者。嘆けよ、賢者
少々無駄が過ぎる開幕前だったが、これにて
果ては神のみぞ知る道化の冒険譚
始まり始まり
短いがここまで
思い付きで書いてるから、いきなりPC落ちて保存前のデータ飛ぶと書き直すの大変だわ。思い出せない
見てくれてThanks。また後で
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