魔王「異世界を侵略する?」魔王父「そうだ」 (47)

魔王父「『知恵の世界』……神も魔物もいない、ただ一つ『科学』といった概念のみで統制された世界がある」

魔王♀「聞いたことがあります。確か、その世界からの転生者が、見たこともない技術で魔物を撃退した、なんていう話があるとか」

魔王父「うむ、知っているのなら話が早い。勇者を倒し、人間界を手中に収めたことで我らにもだいぶ余裕ができた。これから天界に挑まんとするならば、この『科学』の概念は必ず必要となる」

魔王父「『知恵の世界』に攻め込むならば、今が好機だろう」

魔王「……話はわかりました。では、私は何をすればよろしいのでしょう」


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魔王父「侵略する、とはいったものの、やはりこちらには『知恵の世界』の情報が欠けている。それはあちら側も同じとはいえ、やはり情報戦では我々がリードしておきたい」

魔王「なるほど、つまり私の役目は……一足先に『知恵の世界』へ乗り込み、『知恵の世界』に関する情報を集めること、ですね」

魔王父「ふふふ……我が娘ながら、お前は本当に優秀だな。その通りだよ、この世界と異世界とを繋ぐ『ゲート』はもう完成させてある。勇者との戦いが終わったばかりで疲れてるとは思うが、これも魔王軍のため……頼まれてはくれないか」

魔王「魔王軍のためとあらば……喜んで。この身を賭して、魔界の人々に尽くし、お父様、お母様への恩を返す……それが私の使命ですから」

魔王父「その小さい体に、よくそこまでの覚悟を……やはり、その艶やかな銀髪といい、お前はまるでお前の母親の生き写しのようだ」

魔王「光栄です」

魔王父「会議で決まったことではあるものの、やはり親心としてまだ幼いお前を一人異世界にやるのは少々気が引けていたのだが……そこまでの覚悟があるならば、もう何も恐れるものはない」

魔王父「行って参れ、魔王よ!そして、必ずや『知恵の世界』の攻略に有効な情報を仕入れてくるのだ!」

パチンッ!

(突如空間が裂け、光が溢れ出す)

魔王父「……これが『ゲート』だ。この先に、『知恵の世界』が広がっている」

魔王「『知恵の世界』には……いくつかの国があり、それによって言語も異なると聞きますが」

魔王父「言語についてはテレパスを応用すればいいので問題はない。まぁしかし、今から行く場所については教えておこうか」

魔王父「お前がこれから暮らすこととなるのは『日本』という国だ。『知恵の世界』の中で最も治安がよく、かつ情報網がかなり発達していることから、ここに転生先を選んだ」

魔王「日本……」

魔王父「お前は、この世界の文化や生活、そして『科学』にまつわる様々なことを学び、その学んだことをレポートにまとめ、週に一回我々に提出してくれれば良い」

魔王「過ぎた真似はするな、ということでしょうか」

魔王父「つまりはそういうことだな。資金については心配しなくていい。魔術の概念がないあの世界では、貨幣などいくらでも偽造可能だ」

てす

魔王「………なるほど、だいたいのことは把握できました。では、そろそろ出発するとします」

魔王父「………一つ、いいか、娘よ」

魔王「なんでしょう」

魔王父「頑張れ」

魔王「………っ!はい!」

魔王(お父様のその一言で、私は勇気を奮い立たせ、ゲートを潜ることが出来た)

魔王(本当は、不安でしょうがなかったのだ)

魔王(お父様の前では、見せなかったけど)

魔王(それでも、私は行かなきゃならないから)

魔王(魔界をもっと繁栄させて、魔物たちを幸せに導く)

魔王(それが、魔王として産まれた私の、たった一つの使命なんだから)





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魔王「………」ピコピコ

魔王「…………おらっ、そこだっ」ピコピコ

魔王「……!いけるっ!やれやれっ!」バキューン

魔王「……………っあ」

魔王「あああああ!?っざけんな!?ここまでお前を追い詰めるためにどれだけ体力使ったと……!」

魔王「………あーつまんね、切断厨マジ死ねよks」

魔王「ゲームも飽きたし、アニメでも見るか」

魔王「PC起動っと……あ、日付変わってる。てかもう朝なんだ。知らなかった」

魔王「ってうわ、うっげぇ、今日レポートの提出の日じゃん。めんどくさいな……」

魔王「いーや、また適当なこと書いとこ」

魔王「『知恵の世界を支配しているのは、学園都市と呼ばれる異能力研究施設の能力開発実験によって生まれた超能力者たち……その実力は魔王にも匹敵するレベル……』」

魔王「これだけ書いとけばあのクソ親父共も地球侵略に来たりしないでしょ」

魔王「ふわぁ〜……ねっむ、アニメ見ようと思ったけど、それはいっぺん寝てからかな……」

魔王「……ん、布団、布団……あーめんど、もういいや、ソファで」

魔王「おやすみなさーい……むにゃむにゃ……」


ドスン ドスン ドスン


男「……お〜っす、おはよー……」

男「って魔王お前っ!」

魔王「…………ぁ"?」

男「また徹夜でゲームしてたのかよ!?なんで居間のソファで寝てんだ!」

魔王「……あーもううるさいうざいしね。私は眠いんだよ寝かせろボケ」

男「よく居候の分際でそこまでの罵詈雑言が出てくるなぁ!?ていうか寝ようとするなよ!今日学校あるんだぞ!」

魔王「………ぁぁぁ?学校ぉ?知るかんなもん一人で行け」

男「お前が行かなきゃ意味ねーんだよ!ただでさえ出席日数ヤバいのにこのままだと留年だぞ留年!」

魔王「私には魔法があるからいいもーんっだ。まずこの家の家計を一体誰がまかなってやってると思ってんの?」

男「魔力だって限りあんだろ?」

魔王「……うぐっ」

男「そりゃ今はいいかもしれんが、もしお前の魔力が尽きたら、お前は変な髪の色をしたただの一般人になるんだぜ?そうなったらどうやって生きていくんだよ」

魔王「……………ぐぐぐ」

男「そりゃ俺はお前のおかげでバイトせずによくなったし、感謝はしてるけどさ。だからこそお前が落ちぶれる未来は見たくないんだ」

魔王「ヒモのくせに生意気だなお前」

男「誰がテメーの飯を作ってると思ってる」

魔王「…………くそう」

男「いいからさっさと支度しろ。俺は朝飯作ってくるから」

魔王「………わかったよ」

魔王「ごちそうさまでした」

男「相変わらず食事のときだけは殊勝だな」

魔王「染み付いたものってなかなか抜けないから」

男「この半年ですっかり抜けきってんだろが」

魔王「私そんなに変わった?」

男「少なくとも出会った頃は礼儀正しいいい子だなぁっていう印象だったよ」

魔王「……世界を侵略しにきた魔王に好印象持ってたの?」

男「世界とか割とどうでもいいからな。俺が生きてさえいればそれで」

魔王「男のそのクズさは素っぽいね」

男「誰がクズだと?」



魔王「〜〜〜あ〜〜〜溶ける〜〜〜」ダラダラ

男「もう夏だからなー。そろそろ衣替えしてもいいと思うのになぁ」

魔王「もーやだ歩きたくない……男ぉ、おぶって連れてってぇ……」

男「じゃあずっとそこで日光に曝されながら体育座りしてるといいよ」

魔王「この鬼畜……」



魔王「……やっと、着いた……」ゼェゼェ

男「息上がりすぎだろ。運動しろ運動」

魔王「うるさいっ!私ら魔物はお前ら人間とは違うんだよ」

男「知るか。そういえば一時間目体育だな」

魔王「……あー、ヤバい。さっき陽に当たりすぎてちょっと頭がくらくら……ごめん男、私保健室に行ってくるね」

男「そりゃ大変だ。都合よくそこに冷水機があるからそれで頭を冷やすといいよ」

魔王「ごめんっ!ごめんっ!悪かったから頭掴まないでっ!禿げるっ!禿げちゃうからっ!」



ガラガラッ


男「ちぃーっす」

魔王「おはよー」

友「うわ。魔王ちゃん酷いクマ。どしたの」

魔王「男が寝かせてくれなくて」

男「魔王、たった今、今日の晩飯は茄子田楽になった」

魔王「徹夜でゲームをしていました」※茄子嫌い

友「相変わらず二人は仲いいね」

男「まぁ、従兄妹だしな」

友「お前まだその言い訳使ってんの?」

男「何のことだか」

友「いやだって魔王ちゃん明らかに日本人じゃないし」

魔王「複雑な家庭環境なんです」

友「ま、認めたくないってんならそれはそれでいいけどさ?」

魔王「男、コイツ洗脳していい?」

男「勢い余って脳組織壊しそうだからダメだ」

女「わ、魔王ちゃん!久しぶり!」

魔王「そーだ思い出した、貸してやってた漫画返せ」

女「わかってるよ。はいこれ!すっごく面白かった!続き読みたい!持ってきてくれる?」

魔王「別にいいよー」

女「ありがとー♪」


男「不登校のくせに意外とクラスに馴染んでるよな魔王のヤツ」

友「まぁめちゃくちゃ可愛いしなぁ。それに魔王ちゃんの不登校はただのサボりグセだし、本人自体の性格に難があるわけでもないし」

男「あれで性格に難なしというのかお前は」

友「少なくともお前よりはマシだよ」

男「ははははぶっ殺すぞ」


パンパンパン

先生「はいはーい、みんな席について!」

魔王「おー、先生来た。じゃ私いくね」

女「じゃあね魔王ちゃん!また休み時間に!」

友「知ってた?今日転校生来るんだって」

男「なぜこのタイミングでバラす?」


先生「……みんな席についたね!それじゃ、ホームルームをはじめまーす」

先生「その前に!今日からこのクラスの一員となる、転校生の紹介をしたいと思います!」

男「マジできたよ」

友「だから言ったろ」

女「どんな子かなぁ……」

魔王「zzz………」

先生「じゃ、入ってきて」

「は、はい!」

先生「ほら、黒板に名前を書いて」

「わ、わかりました!」


カツ…… カツ……


男「……?」

男「あの名前、どこかで……」




「…………ふうっ!」

勇者♀「今日からこのクラスでお世話になります、勇者といいますっ!」

勇者「こっちに引っ越してきて日も浅いのでご迷惑をかけるかもしれませんがっ!よろしくお願いしますっ!」

寝ます。
ご覧の通りほのぼのです。
そう長くは続かせない予定です

乙です!
ガヴリール・ドロップアウトって漫画もあったな

>>24
もう名前が上がるとは思わなかった。
そうです、この魔王ちゃんの元ネタはガヴリールドロップアウトのガヴです。

ー昼休みー

購買へ昼食を買いに行く二人。


男「うーん……誰だったっけなぁ」

魔王「何があったか知らんがいちいち唸るな鬱陶しい」

男「実はさ、俺あの勇者って転校生の名前知ってるんだわ」

魔王「別に聞いてない」

男「でも名前以外は全く身に覚えがなくて。これは幼馴染みフラグとかもあるのではと思っているんだけど」

魔王「いやどうでもいいから」

男「つれないなぁ」

勇者「焼きそばパン一つください」

おばちゃん「毎度あり」

男「噂をすればなんとやら」

魔王「話しかけてみれば?もしかしたら向こうは覚えてくれてるかもよ?」

男「男の方は忘れちゃうけど女の方は未練がましく覚えてるってのは定番だよな」

魔王「ここはアニメの世界じゃないよ」

男「わかってら」

男「おーい、勇者さん!」

勇者「ふぇっ!?な、何かご用で……」


勇者「ってひえええええええっ!?」

男「開幕泣かれました」

魔王「まぁどんまい。生きてりゃいいことあるよ」

男「なんでこういうときだけ優しいかなぁ……あぁやばい泣きそう」

勇者「な、な、なんっ……なんで魔王がこの世界にいるの!?」

魔王「えちょっと待て」

男「え、何こいつお前の知り合い?」

魔王「たぶん」

勇者「たぶん!?」

魔王「あーそう考えると辻褄あうな……だからぶっ殺したはずの勇者の死体がなかったのか」

男「ぶ、ぶっ殺、え?」

魔王「前にも一回話したことあったでしょ、魔王を倒しに単身魔王城に乗り込んだぼっち勇者の話」

勇者「ぼ、ぼっちじゃないもん!仲間はいたけど……みんな途中で帰っちゃっただけだもん!」

男「魔王を倒す大事な旅の途中に帰っちまうような仲間は果たして仲間と呼べるのか……」

魔王「私のもとにたどり着いたこの子はもう満身創痍で、かわいそうだったから一撃で吹き飛ばしてあげたんだけど」

男「そのときお前が使った魔法によって空間が歪み、勇者はその際偶然生まれた『ゲート』に吸い込まれてしまって……こっちの世界に来ちまった、と」

魔王「そういうことかな」

男「なるほど、だから俺は勇者さんの名前を知っていたんだな」

魔王「さてと」

パチンッ

(魔王たちのいる空間だけが隔絶される)

勇者「………ッ!?」

男「お、おい……まさか」

魔王「私だってこんなことしたくないよ。だって面倒くさいし。でもこいつは間違いなく私に怨恨がある。どうせ戦うことになるのなら、今のうちにスパッと潰しておいた方がいい」

男「いや、そうはいっても」

勇者「……………」

魔王「何か文句でもあるの。ここでこの子を消したところでもともとこの世界にいるべきじゃない人間が消えるだけ。大したことは起きないよ」

勇者「………」

男「いやそういう問題じゃなくて……ただ俺が一方的に虐殺される女の子なんてみたくないんだよ。トラウマになりそうで」

勇者「………………」

魔王「知るか。目でも塞いでろ」

勇者「…………………」

魔王「ほら、かかってこい勇者。今度こそ、ここで終わらせてやるから」

勇者「……………………………………ぃ」



勇者「いやだぁぁぁぁぁっ!!!」Dash!!

男「」

魔王「」

魔王「……おい、逃げるな。というか逃げても無駄なんだけど」

勇者「ひぃぃぃぃぃぃぃ」ガタガタガタガタ

男「怯え方が尋常じゃないんだが」

勇者「やだっ!やだぁっ!離してっ!離してっ!」バタバタバタバタ

魔王「……わからんが、たぶん私はこいつにとってなんらかのトラウマになってるのかも……」

男「まぁ一回殺されかけた相手だしなぁ」

勇者「ひぅっ……ぐずっ……もう、やめて、よぉ……わたしが何をしたっていうの……」エグエグ

魔王「なぁ?さっきからものすごい勢いで戦意が削がれていくんだけどどうしよう」

男「奇遇だな。本気で人をかわいそうと思ったのは生まれて初めての経験かもしれない」


勇者「嫌だぁぁぁぁっ!死にたくない!死にたくなーーーいっ!!!」

男「…………」

魔王「………………」

魔王「…………はぁ、ったく……」

パチンッ

(魔王の張っていた結界が解ける)

勇者「………っあ」

魔王「………………」

勇者「ひっ!ひぃぃぃぃっ!」ガバッ

男「ちょっ!?なんで俺の後ろに!?」

魔王「……本当にあの勇者と同一人物なのかな?こいつは……」

男「その点に関しちゃお前も似たようなもんだろ」

魔王「私は何があっても魔王だからいいでしょ。でも勇者から勇気がなくなったら何も残らないじゃん」

勇者「……………」

男「え?なんだって?」

勇者「……魔王は、なぜ、この世界に?」

男「あぁ、えぇと……」


男(一応、名目上は地球侵略のための調査なんだよなぁ……)


魔王「魔界に飽きたから移住してきた」

男「!?」

勇者「……やはり、こっちの世界へは、意図的に?」

魔王「そうだ。だが、この世界へは私が秘密裏に魔界とこの世界を繋ぐ『ゲート』を開発しこっそり来たのだ。だから世界線を超える技術は私しか知らない」

魔王「もちろんこの世界をどうこうしようという気もさらさらない。お前に戦う意思がないというのならお前と闘うこともしない。ただ私は平穏に暮らしたいのだ」

勇者「………ほ、ほんと…?」

男「ついに堂々と裏切り宣言しちゃったよこの子……」

魔王「元からこの星に骨を埋める気ではいたし」

勇者「本当に世界にも、わたしにも危害を加えないの?」

魔王「ん、まぁ本当だぞ。面倒くさいしな」

勇者「そ、そっか………よかった」

魔王「………ふん」

勇者「……じゃ、じゃあそろそろわたしは行くね……魔王"さん"、男くん、ばいばい」

魔王「……ああ、ばいばい勇者」

男「ちょっと待ったァ」

勇者「?今度は何?」

男「勇者、お前は最近引っ越してきたばかりなんだよな?」

勇者「う、うん。そうだけど……」

男「友だち、欲しくないか?」

勇者「……………!」

魔王「お前どういうつもりだ!?」

男「俺たちと友達になろう。平穏に暮らすのも悪くないが、みんなでわいわいやるのも刺激があって楽しいぞ」

勇者「で、でも……わたしは……」

男「……そっか、やっぱり勇者みたいな美少女だと俺みたいな男は友達にすらできないのか」

勇者「!?いえいえ!そういうことではなく!ただ……」

男「え、そうなの?じゃあ俺たち友達ってことでいいんだよね?はい決定!じゃあ友だちらしく今からみんなで飯くおうぜ!」

勇者「は、はわわぁ!?な、なんで!?なんでこうなるの!?」

魔王「おいぃぃ!!お前、どういうつもりだ!?なんて私が勇者なんぞと飯を……」

男「それは理由を聞いているのか?」

魔王「は?……いや、まぁ、そうだけど」

男「理由なんてただ一つだろう」








男「面白そうだから。それだけだっ!」

魔王「いっぺん死ね。メラゾーマ」







性格の悪いハーレム男、怠惰でニートで廃人な世界最凶の魔王、ビビリで臆病な勇者。
基本的にこの3人を主体としていきます。
今日は寝ます。お疲れ様でした

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