「最後の夢」(76)
ミーンミンミンミン
?『一番大きな木にね、実がいっぱい付くんだよ?』
男「あぁ、この木に実が付いたのは初めてだ」
?『でね、向かいの花畑が真っ黄色に染まって』
男「一面にひまわりが咲いてるな」
?『それで、この鳥―――』
ミーンミンミンミン
男「・・・・・・今日か」
―――20年前・某神社
男「お~い、少女~」
幼馴染「あっ、男!」
男「ふぅ~ しかしこの神社階段多いな」ハァ ハァ
幼馴染「いい加減慣れなよ」
男「こんな朝早くから掃除か?」
幼馴染「結構早くから参拝者の人が来るからね」
男「大変だねぇ~ 神社の娘も。 できれば巫女さんの格好だと嬉しかったんだけど」
幼馴染「一々あんな格好できないよ、面倒だし」
男「ふ~ん」
幼馴染「でも、どうしたの? こんなに朝早くに」
男「渡す物があるから来いって言ったのお前だろ・・・」
幼馴染「? あっ、そうだった! ちょっと待ってて」タッ タッ タッ
男「おい、転ぶなよ~」
幼馴染「わっ! とっとっ。 大丈夫!」
男「本当かよ・・・」
―――数分後
幼馴染「はい、これ!」
男「お守り?」
幼馴染「大学進学でしょ? お父さんに男のために祈願してもらったから絶対受かる!」
男「へぇ~ こりゃ御利益満点だな。 かなり早いけど・・・」
幼馴染「お代は結構! 私からのプレゼントって事で」
男「受かったら神様にお礼しに来ないとな」
幼馴染「え~ 良いよそんなの」
男「なんでお前が断るんだよ・・・」
幼馴染「・・・あはは、そうだよね。 ごめんなさい神様」パンパン
男「そうだ、日曜とか暇?」
幼馴染「日曜? 大丈夫だよ」
男「買い物付き合ってもらいたいんだけど・・・ お礼と言っちゃ何だけど食事代オレ負担で」
幼馴染「わ~ 行く! 食費代浮いてラッキ~」
男「んじゃ、朝迎えに来るわ」
幼馴染「うん、待ってる」
―――日曜・朝
男「ふぁ~ おはよ」
母「さっき幼馴染ちゃんから、急用が入って今日行けなくなりました、って電話あったよ」
男「ん・・・」モソモソ
母「デート?」
男「買い物」
男「しゃーねーな、一人で行くか」
―――昼
男「さてと、買い物の前に何か喰うかな」
テクテク
男「ん? あれって・・・」
A夫「どこ行くの~?」
幼馴染「ん~」キョロキョロ
A夫「ねぇ、幼馴染ちゃん?」
幼馴染「もう少しブラブラしたいかな」キョロキョロ
男「(幼馴染とA夫・・・ なんであんな所に・・・)」
男「(急な用事ってA夫とお出かけ?)」
幼馴染「A夫君! 避けて!!」
A夫「え!?」
キキキーーーッ
A夫「うわっ!!」
ガシャーン
男「ちょ! トラックが!」
幼馴染「A夫君! A夫君!」
A夫「痛つつっ、間一髪」
幼馴染「良かった・・・」ホッ
A夫「幼馴染が声かけなかったら・・・ ヤバかったな・・・」
男「・・・・・・」
―――夕方・神社
幼馴染「」ボー
テクテク
男「幼馴染?」
幼馴染「」ボー
男「幼馴染!」
幼馴染「!? えっ?」
男「どうしたんだ、こんな隅っこでボーッとして」
幼馴染「あっ、男・・・」
男「今日はどうしたんだ?」
幼馴染「え!? あ、ちょっと急用が・・・」
男「・・・・・・」
幼馴染「・・・ごめん」
男「なぁ、今日花火大会だよな」
幼馴染「そうかも」
男「この神社なら高台だから見えるよな」
幼馴染「うん、たぶん裏に回れば見えると思う」
男「一緒に見ないか?」
幼馴染「私と一緒でも良いの?」
男「お前と見たいんだけど・・・///」
幼馴染「・・・ありがと///」
ヒュー
ボンッ ボンッ
幼馴染「花火綺麗だね」
男「あぁ」
幼馴染「・・・・・・ねぇ、男?」
男「ん?」
幼馴染「私ね・・・」
男「どうした?」
幼馴染「男に隠していることがあるの」
男「今日A夫といたことか?」
幼馴染「知ってたんだ・・・ それも関係してるんだけど・・・」
男「私、神様なんです。 か?」
幼馴染「うん、私・・・ 神様・・・ って、え!?」
男「幼稚園の時も小学校の時も聞いた」
幼馴染「中二病全開だよね」ハハッ
男「でも、中学の時は聞いてないな」
幼馴染「ごめん、やっぱ忘れて!」
男「いや、きっと本当なんだろ?」
幼馴染「えっ?」
男「今日のお前を見て、何となくそう思った」
幼馴染「男・・・ あの現場にいたんだ」
男「お前は嘘を絶対につかない事くらい知ってるってーの」
幼馴染「・・・・・・」
男「A夫の事も本当に急用だったんだろ?」
幼馴染「うん」グスッ
男「おい・・・ なにも泣くことないだろ」
幼馴染「ありがとう」グスッ
ヒュー
ボンッ ボンッ
男「その・・・ もし良かったら神様とかいう話を聞いても?」
幼馴染「人の夢に入るの」
男「夢に?」
幼馴染「うん・・・」
男「もしかして、オレの夢とかに入ったことある?」
幼馴染「ないよ! だって私が入りたいと思って入る訳じゃないし・・・」
男「無差別って言うか、自分の意思と関係なくって事?」
幼馴染「・・・・・・」コクン
男「夢に入ってどうするんだ?」
幼馴染「何もしない・・・ ただ姿を見せるだけ」
男「それだけ? 神様なら予兆とかお告げとかするんじゃないの?」
幼馴染「・・・・・・」
男「ごめん、言いたくなければ―――」
幼馴染「亡くなる・・・」
男「え?」
幼馴染「私が夢に入って姿を見せた人は・・・ 死ぬ・・・の」
男「そんな・・・」
幼馴染「・・・・・・」
男「まさか、A夫も!?」
幼馴染「うん・・・ 昨日夢に・・・」
男「でも、A夫は死んでないぞ?」
幼馴染「物理的に原因を取り除けば回避できるみたいなんだ」
男「・・・それで今日A夫と一緒に」
幼馴染「A夫君は知ってる人だったから、なんとか助けることができたけど」
男「夢って頻繁に入るの?」
幼馴染「不定期。 1日に数回の時もあれば1ヶ月以上無いときもある」
男「もしかして、この神社と関係が?」
幼馴染「うん。 代々そういう力を持ってるって」
男「お父さんも?」
幼馴染「持ってない。 お父さん婿養子だから。・・・でもお母さんは持ってたみたい」
男「幼のお母さんもか・・・」
幼馴染「お母さんは私が小さいときに亡くなっちゃったから直接聞いたことないんだけど・・・」
幼馴染「夢神って言うんだって」
男「ゆめがみ・・・」
幼馴染「どうしても男には言わなくちゃいけないと思って・・・」
男「そうか」
幼馴染「でも・・・ こんなの、死神・・・ だよね・・・」
男「A夫を助けたんだろ?」
幼馴染「・・・・・・」
男「だったら死神じゃないだろ。 立派な神様だ」
幼馴染「そんなことない・・・」
男「幼馴染のことだ、きっとA夫みたいに救った人いっぱいいるんだろ?」
幼馴染「でも助けられない人も・・・ 目の前で・・・」グスッ
男「幼馴染・・・」ガバッ
幼馴染「ちょ、男?」
男「よく今まで我慢できたな」
幼馴染「お・・・とこ」ポロ ポロ
男「辛いよな」
幼馴染「嫌だよ・・・ こんな力嫌だ・・・ 欲しくないよ・・・」ポロ ポロ
幼父「・・・・・・」
―――冬
幼馴染「・・・・・・」ソワソワ
幼馴染「・・・来ない」ソワソワ
男「幼馴染っ!」
幼馴染「うわ! 」ビクッ
男「こんなに寒いのに外で何やってんだ?」
幼馴染「男! あれ? ずっと参道見てたのに」
男「裏から入った」
幼馴染「え? もー裏から来るならいってよ!」ムスッ
男「ごめんごめん、駅から直接来たから裏から入った方が早くて」
幼馴染「直接って・・・ 家に戻ってないの?」
男「幼馴染に最初に伝えようと思ってさ。 待っててくれたんだろ?」
幼馴染「あぅ・・・///」
男「大学、受かってた。 合格だった」
幼馴染「本当!?」
男「嘘ついてどうすんだよ」
幼馴染「やったー! おめでとう! やったー!」ピョンピョン
男「なんで俺よりお前の方がテンション高いんだよ・・・」
幼馴染「だって~ 嬉しいよ~」ピョンピョン
男「そんなに飛び跳ねてると転けるぞ?」
幼馴染「大丈夫~ わっ! とっとっ」
男「ほら、だからい言ったろ?」ガシッ
幼馴染「あっ・・・ ごめん」ダキッ
男「お前の巫女姿、初めて見たかも」
幼馴染「普段は着ないからね」ハハッ
男「似合ってる」
幼馴染「はぅ・・・ ありがと///」
幼父「ゴホン!」
男「!?」
幼馴染「あっ、お父さん!」
幼父「男君」
男「はい!」
幼父「イチャイチャするのは良いけど、ここは神社だよ?」
男「あっ、すいません・・・」
幼馴染「・・・///」
幼父「ふふっ、合格おめでとう」
男「ありがとうございます! おじさんから貰ったお守りの力かと!」
幼父「ははっ、娘が見よう見まねで作ったお守りだから心配してたんだが」
幼馴染「お父さん! それ言わないでよ!」
男「え? このお守り、幼馴染が作ったの?」
幼馴染「あ・・・ うん。 でも祈願はお父さんにしてもらったし、袋だけ」
男「それで刺繍が歪だったんだ・・・」
幼馴染「うっ、それは・・・ でも! 気持ちが入っていれば、見てくれは悪くても・・・」
男「あぁ、確かにそうだな」
幼父「昨日から娘がやっていた願掛けもそれは酷い物だったよ・・・」
男「願掛け・・・ ですか?」
幼馴染「わっ! お父さん、それは言っちゃダメ! っていうか見てたの!?」
幼父「隠す必要ないだろ」
幼馴染「でも!」
男「まさか・・・」
幼父「昨日から本殿に籠もって、さっきまで男君の合格祈願をずっと願掛けしていたようだ」
男「幼馴染・・・」
幼馴染「・・・///」
男「それで今日はこんな格好してたのか」
幼馴染「いや、ほら・・・ 私も神社の娘として、その位はやっておかないと・・・ 示しが付かないというか・・・」
幼父「普通はもっと前からするんだけどな?」
幼馴染「初めてなんだから良いでしょ! そのくらいおまけしてくれても!」
男「ありがとうな」
幼馴染「いや、そこまで礼を言われるようなものじゃ・・・」
男「神様が直接祈願してくれたんだ。 これで受かってなかったらマズかったな」ハハッ
幼馴染「私は、そういう力なんか無いし・・・ 男の努力の賜だよ」
男「じゃぁ、共同作業って事で」
幼馴染「!? ・・・うん///」
―――数年後
男「・・・・・・」
幼父「・・・・・・」
男「お、おじ・・・ お父さん」
幼父「・・・・・・」
男「む、むす、娘さんと・・・ 娘さんと結婚させて下さい!」
幼父「結婚か・・・」
男「はい! 婿養子として嫁がせていただきたく思います!」
幼父「ぷっ、嫁ぐか」ハハハッ
男「あ、いえ・・・その///」
幼父「ちょっと変わった娘だが本当に良いのか?」
男「え? そんな、変わっただなんて」
幼父「娘から聞いているだろうが、あいつはちょっと変わった力を持っている」
男「夢神でしたっけ」
幼父「あぁ、大変だぞ?」
男「お父さんは大変でしたか?」
幼父「・・・・・・ふっ、良い返しだ」
男「すいません」
幼父「男君と娘は生まれたとき病院のベットも一緒だったな」
男「そうみたいですね」
幼父「私が娘といた時間より、もしかしたら男君の方が長いかもな」
男「そんなことは・・・ 無いと思いますが」
幼父「娘をよろしく」
男「はい!」
幼馴染「男、本当に婿養子なんか大丈夫なの?」
男「うちの父さんも言ってたろ? バカが一人減って助かるって」
幼馴染「面白いお父さんだったね」
男「幼馴染、これからもよろしくな」
幼馴染「不束者ですがよろしくお願いします///」
男「さてと、しばらくは神主になる勉強をしないとな」
幼馴染「男の神主姿似合わなそ~」
男「そんなことないんじゃないか? たぶん・・・」
幼馴染「まぁ、ゆっくりと勉強したまえ」
男「ははぁ~ 神様」
幼馴染「うむ」ニコッ
―――数ヶ月後
男「お~い 幼馴染~」
男「あいつどこ行ったんだ?」キョロキョロ
シクシク
男「ん? 幼馴染・・・」
幼馴染「・・・・・・」シクシク
男「おい、幼馴染どうしたんだ?」
幼馴染「男・・・ おとこー!」ガシッ
ウワーン ウワーン
男「ちょ、どうしたんだよ」
ウワーン ウワーン
―――社務所
男「少し落ち着いたか?」
幼馴染「」コクン
男「何があった? まさか夢神か?」
幼馴染「お父さんが・・・」
男「!?」
幼馴染「お父さんの夢の中に・・・ 私・・・」
男「まさか!?」
幼馴染「どうしよう・・・ やだ・・・ やだよ・・・」
―――幼父の部屋
幼父「そうか・・・」
幼馴染「・・・・・・」
男「出張参拝を取りやめていただけますか?」
幼父「・・・・・・」
男「お父さん」
幼馴染「お願い、お父さん」
幼父「やはり、夢に出てきた女神はお前だったのか」
男「え?」
幼父「悪いが、出張は予定通り行くことにする」
幼馴染「そんな! ダメ!!」
幼父「それが私の運命なら、神のお告げには従わないとな」
男「でも・・・ そしたら・・・」
幼父「・・・・・・」
幼馴染「ヤダ、行かないでよお父・・・さん」シクシク
幼父「私も母さんとは幼馴染だったんだ」
男「え?」
幼父「母さんから夢神の件を聞いたときはビックリしたよ」
幼馴染「・・・・・・」
幼父「母さんは元々体が弱くてね、重い役目を必死に耐えて生きていた」
幼父「そんな母さんを支えたくて、私は結婚してこの神社を継いだ」
男「・・・・・・」
幼父「将来、男君と娘に子が授かるならば間違いなく女の子が生まれ夢神の力を持つ」
男「!!」
幼父「私も、お父様から話を聞いたとき正直悩んだよ・・・」
幼父「しかし、私たちは娘を生むことにした。 幸せだったよ」
幼馴染「・・・お父さん」グスッ
幼父「でも、お前には辛い思いをさせてしまっているかもしれない」
幼馴染「そんなことない・・・」
幼父「なぁ、男君」
男「はい」
幼父「この神社は男君に全て任せる」
男「お父さん・・・」
幼父「この神社を続けるならこのまま継いでくれ」
幼父「処分するなら廃社申請をして欲しい」
男「・・・・・・」
幼父「これは、廃社申請に必要な書類だ。 申請すれば絶対に通るように話は付いている」
幼馴染「いやだ・・・ こんなの嫌だよ」グスッ
幼父「こうして最後にゆっくり話せる時間がもらえたんだ。 お前の父親で良かった」ハハッ
幼父「それに・・・ 私が愛したお母さんとまた会えるんだ」ニコッ
あと2~3回の投稿で終わる予定(書いてないけど)
―――数ヶ月後
幼馴染「ねぇ、男?」
男「なんだ?」
幼馴染「良いの? 神社を継いでも」
男「あぁ、幼馴染のお父さんもお爺さんも守ってきたんだ。 オレもそうするよ」
幼馴染「分かった」
男「でも、お前が辛いんならすぐにでも廃社申請するから言ってくれ」
幼馴染「私は、男について行くよ」
男「そっか」
幼馴染「それより、赤ちゃんの名前どうする?」
男「そうだな~・・・」
男「やっぱり幼馴染が決めてくれよ」
幼馴染「そういう所はいつまでたっても優柔不断だね」ニコッ
―――数日後・病院
男「そんな・・・」
医者「生まれてくるお子さんか、お母さんどちらを優先するかお聞かせ下さい」
男「どうにもならないんですか・・・」
医者「最善は尽くします。 しかし、どちらかの命を取らざるを得ない状況の方が大きいです」
―――病室
ガチャッ
幼馴染「あっ、男」
男「調子はどうだ?」
幼馴染「うん、ちょっと辛い」
男「そうか・・・」
幼馴染「ねぇ、男?」
男「ん?」
幼馴染「赤ちゃんをよろしくね」
男「何言ってんだ?」
幼馴染「男ってすぐ顔に出るんだもん」
男「・・・・・・」
幼馴染「さっき、私の夢に女神が出たの」
男「!?」
幼馴染「自分の夢に自分が出るなんて、なんだか不思議」
幼馴染「でも、とっても綺麗な姿だった・・・」
幼馴染「私、みんなにあんな風に見えてたのかな? だったら嬉しいな」
男「・・・・・・」
幼馴染「自分で自分を褒めるなんて変だよね」フフッ
幼馴染「ねぇ、男?」
男「なん・・・ だ」
幼馴染「きっと、生まれてくる子は他の子より辛い思いを一杯すると思う」
幼馴染「でもね? それを打ち消すくらいとっても幸せな人生が待ってる。 私がそうだったんだもん」
男「幼馴染・・・」ポロ ポロ
幼馴染「男にも大変な思いをさせちゃってごめんね」
男「そんなこと言うなよ・・・」ポロ ポロ
幼馴染「そうだ、神様特権で良いこと教えてあげる」
男「・・・・・・」
幼馴染「大きな木にね、実がいっぱい付くんだよ?」
男「大きな木・・・ 本殿前のやつ? あの木に実が?」
幼馴染「でね、向かいの花畑が真っ黄色に染まって」
男「・・・・・・」
幼馴染「それで、鳥居の向こうから石段を登って女の子が歩いてくるの」
男「女の子?」
幼馴染「そう、・・・・・・私」
男「幼馴染が?」
幼馴染「私が見た、最後の夢」
幼馴染「何年後なんだろう・・・ 楽しみ」ニコッ
――――――
―――
―
―――16年後・現在
ミーンミンミンミン
テクテク
A夫「よっ!」
男「A夫か? 久しぶりじゃないか」
A夫「盆休みだし実家に帰ってきてさ」
男「そうか」
A夫「はい、これ」
男「ん?」
A夫「この本殿、建て替えるんだろ? 寄付金だよ」
男「お~ 態々すまない」
A夫「良いって、大した額じゃない」
男「ありがたく受け取らせてもらうわ」
A夫「しかし、お前がこの神社の神主になるとはねぇ~」
男「それは言うなって」
A夫「その格好、中々サマになってる」ハハッ
男「結構似合うだろ?」
A夫「なぁ男・・・」
男「どうした?」
A夫「幼馴染のことなんだけど」
男「?」
A夫「俺さぁ、高校時代彼女に命助けられたことあるんだよ」
男「へぇ~」
A夫「急に偽デートしろって言われてさぁ」
男「偽デート?」
A夫「文字通り全然デートの欠片もなくてさぁ、幼馴染ったらずっと周りをキョロキョロしてて」
男「・・・・・・」
A夫「あいつ俺が事故に遭うことを知ってて、助けるために一緒にいんじゃないかって・・・」
男「考えすぎじゃないか?」
A夫「いや、この町の人も結構あいつに命救われたことがあるみたいでさぁ」
男「偶然ってあるもんだな」
A夫「偶然なのかねぇ~」
男「あいつはどこから見ても普通の子だったよ。 幼馴染で夫の俺が言うんだ、間違いない」
A夫「でも・・・ 事故に巻き込まれる前に幼馴染によく似た女神?っぽいのが夢に出てきたし」
男「とうとうあいつも女神扱いか」ハハッ
A夫「あっ、悪い・・・」
男「気にすんな、あいつも喜んでるだろうよ」
ミーンミンミンミン
A夫「しかし、この木デカいよな~」
男「あぁ、樹齢500年だそうだ」
A夫「暑い夏は日陰が広がって助かるねぇ」
ポトッ
A夫「ん?」
男「どうした?」
A夫「いや、なんか実が落ちてきた」
男「実? この木に実なんか・・・」
男「!?」
A夫「じゃ、おれ帰るわ」
男「え? あぁ、気をつけてな」
スタスタ
A夫「しかし、相変わらずこの神社は階段が多くて大変だわ・・・」 ザッ ザッ ザッ
ミーンミンミンミン
幼馴染『一番大きな木にね、実がいっぱい付くんだよ?』
男「あぁ、この木に実が付いたのは初めてだ」
幼馴染『でね、向かいの花畑が真っ黄色に染まって』
男「一面にひまわりが咲いてるな」
幼馴染『それで、鳥居の向こうから石段を登って女の子が歩いてくるの』
ミーンミンミンミン
男「・・・・・・今日か」
ザッ ザッ ザッ
?「ハァ ハァ」
男「・・・・・・」
ザッ ザッ ザッ
?「ふぅ~ 夏の階段はやっぱきついね」
男「幼馴染・・・」
?「今日は暑いね~」
男「・・・・・・」
?「どうしたの? お父さん」
男「えっ!? ・・・いや」
娘「?」
男「来る途中、A夫に会わなかったか?」
娘「階段ですれ違った。 なんか私見て凄いビックリして口パクパクさせてたんだけど」
男「だろうな、父さんも混乱してる」フッ
娘「?」
男「髪・・・ 切ってきたのか?」
娘「うん、似合う?」
男「あぁ、父さんが20年若かったら間違いなく告白してたな」
娘「なにそれ・・・///」
男「さっき、友君から電話あったぞ」
娘「本当?」
男「あぁ、図書館で待ってるって」
娘「携帯に連絡くれれば良いのに」
男「携帯、切れてるんじゃないか?」
娘「うわ、バッテリー無くなってる・・・」
男「相変わらずだな・・・ ちゃんと身の回りの管理は―――」
娘「はいはい、分かりましたよーだ」ベー
男「ほら充電池」ポィ
娘「おっと、ありがと! ちょっと行ってくる」タッ タッ タッ
男「おい、階段なんかで転ぶなよー」
娘「わっ! とっとっ。 大丈夫!」
ザッ ザッ ザッ
男「本当かよ・・・」
男「さてと、夕飯の支度でも―――」
娘:こんにちは~
?:こんにちは
男「?」
ザッ ザッ ザッ
男「・・・・・・」
?「この神社階段多いよね」ニコッ
男「・・・・・・いい加減 ・・・慣れろよ」ポロポロ
?「久しぶり」
あぁ、また・・・ 会えたな・・・
神様は嘘つかないんだよ?
「最後の夢」 ―END
途中からプロットと全然違うストーリーにしちゃったから辻褄あってない箇所ある……
ごめんなさい(ドゲザ)
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