アンチョビ「はぁ? 嫌にきまってるだろ」
ペパロニ「そ、そうっすか……うう、ショックっす……」
アンチョビ「……」
ペパロニ「うぅ……」
アンチョビ「……え、何? ていうか、そんな事を言うために私を呼び出したのか?」
ペパロニ「え? はいそうすっけど……って、ぅわっ、姉さんが、かつてないくらいの渋い顔になってる」
アンチョビ「うあー……私の中でのお前の評価が、がっくーって下がった……ものすごい下がった」
ペパロニ「えーっ」
アンチョビ「私はお前の事、結構評価してたんだけどなぁ」
ペパロニ「そ、その嫌味な言い方、姉さんらしくないっす。なんでそんな事言うんすか」
アンチョビ「あのなぁ……明日は私の卒業式なんだぞ? 分かってるだろ?」
ペパロニ「はい、悲しいですけど、いよいよっすね」
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*百合百合しい話にはしないつもりです。
*ただし、二人は潜在的にレズビアンです。
アンチョビ「卒業式を明日に控えて、今日は高校生活最後の日だ。思わず私もセンチメンタルになってしまう、人生で一度しかない特別な放課後。それが今という特別な時間なんだ!」
ペパロニ「姉さん! 私もなんだか切なくなっちゃいます!」
アンチョビ「そうかそうか、つまりはそういう夕方だ! お前が私を学園校舎の裏に呼び出したのは、そういう夕方なんだっ」
ペパロニ「はい!」
アンチョビ「あのな、私は、一緒に帰ろうって誘ってくれたクラスメートの誘いを断ってここにきた! お前のためにだ! 何かよほど特別な用事なんだろうって、いったい何なんだろうなって、次期ドゥーチェのお前が去りゆく私に何を言うのだろうなって、正直ちょっとワクワクドキドキしてたんだぞ!?」
ペパロニ「感激っす! あと姉さん、カワイイっす!」
アンチョビ「やかましい!」
ペパロニ「すんません!」
アンチョビ「それなのに、いざフタを開けてみたら……何? カノジョになれだって? そんなくだらない冗談を……」
ペパロニ「え、いや……」
アンチョビ「あーあ……なんか、がっかりしちゃったなぁ……」
ペパロニ「……」
ペパロニ「姉さん、その言い方はちょっと、ひどくないっすか?」
アンチョビ「あん?」
ペパロニ「私は、真剣な気持ちなのに」
アンチョビ「……は?」
ペパロニ「それなのに、なんかふざけてるみたいに言われると……正直ちょっと……むかつくっす」
アンチョビ「……はい?」
ペパロニ「『はい?』 じゃないっすよ」
アンチョビ「……えと……なんだって?」
ペパロニ「私の方こそ、なんかがっかりっす。姉さんが、そんな風に人の気持ちを馬鹿にするなんて……あーあー……」
アンチョビ「いや、ペパロニさん?」
ペパロニ「ちぇっ」舌打ちしつつ足元の小石ケリー
アンチョビ「……」
ペパロニ「せっかく思い切っていったのに……ひどいっすよ……」
アンチョビ「いやいやいや……ええええー……」
アンチョビ「だってお前、そいういう趣味は無いって、前に自分で言ってたじゃないか。なら、今日のこれも冗談なのかなって、思っちゃうじゃん……」
アンチョビ(……ていうか困る! 私はノーマルだ! ペパロニもそうだって信じてたのに、いきなりそんなマジトーンでこられても……)
アンチョビ「いきなりそんな事いわれても、そりゃ冗談だろうと思うだろ……」
ペパロニ「今のは、冗談なんかじゃ……ないっす……」
アンチョビ「そ、そっか……まぁだけど、お前のキモチは嬉しいんだけど、ただ……わかるだろ? 私達は女同志なんだし」
アンチョビ(最後の最後にやめてくれよ。気持ちよく卒業式を迎えさせてくれよぅ……)
ペパロニ「そりゃまぁ……私もそういう趣味は無いっすけど……」
アンチョビ「……は?」
ペパロニ「……」
アンチョビ「……おいっ!」ポカッ
ペパロニ「痛っ!? た、叩いた! 姉さんが私のこと叩いたぁ!!」
アンチョビ「お前、わたしをおちょくってるのか?」
ペパロニ「い、いやそんなつもりはありませんっすけど」
アンチョビ「ほぉ、そーかじゃあマジのケンカを売ってるんだな!? 卒業する先輩へのお礼参りか!? あーもー! 何がしたいんだよお前はー!」 ポカポカポカッ
ペパロニ「いたたたた! 落ち着いてくださいよ! また生理すっかぁ!?」
アンチョビ「なっ……」
アンチョビ「こ、こ、このバカやろーっ!」
ペパロニ「痛っ、痛いですってば! ……ええいっ」ガシ
アンチョビ「う……!? こ、このっ、腕を離せ……!」
ペパロニ「へへん、遅い成長期のおかげで、身長も力も、今じゃ私の方が上なんすからね!」
アンチョビ「くっ……このっ……図体ばっかりでかくなりおって」
ペパロニ「とにかくいったん落ち着きましょうよ、ね、まぁベンチに座りましょ?」
アンチョビ「うーっ誰のせいだと思ってる!」
~5分ほど時間が経って~
アンチョビ「くそっ……高校生活最後の放課後を、こんなくだらない茶番で……お前の呼び出しなんて無視するんだった!」
ペパロニ「いや姉さん、なんていうか、誤解ですってば」
アンチョビ「何がだっ!」
ペパロニ「姉さんに私の彼女になってほしいっていうのはけっこう本気っす……って痛っ!?」
アンチョビ「っ! っ!」デュクシデュクシ
ペパロニ「無言でどつかないでくださいよぉ」
アンチョビ「このあんぽんたん! お前はレズなのか? それとも私をおちょくってるだけか!?」
ペパロニ「レ、レズじゃないですし、おちょくってもないっすよぅ」
アンチョビ「じゃあ、『彼女』になれって、なんだ!」
ペパロニ「いやぁ……『彼氏彼女』になれたら、姉さんが卒業した後も、一緒にいられるかな~って……」
アンチョビ「説明がたりん!」デュクシ
ペパロニ「す、すんません。だって……姉さんはもうこの船からいなくなっちゃうじゃないですか」
アンチョビ「当たり前だろ」
ペパロニ「春になったら、別々の学校で、それぞれの生活が始まるわけで……」
アンチョビ「そうだな」
ペパロニ「姉さんはきっと大学の戦車道でも活躍するだろうし、また新しい仲間もできるだろうし……」
アンチョビ「お前だって、来年はドゥーチェとしてみんなをひぱっていくんだぞ。後輩たちの手も引いてやらなきゃ」
ペパロニ「もちろんっす。それに、戦車道大会優勝っていうでっかい目標もあるっす」
アンチョビ「お互いにそれぞれ目標がある。良いことじゃないか」
ペパロニ「それは……そうなんですけど……」
アンチョビ「なんだ煮え切らないなぁ」
ペパロニ「それだけじゃ、嫌っていうか。なんていうか……姉さんとの仲が途切れるのが、いやで」
アンチョビ「……む」
ペパロニ「だから、なんとかして、姉さんとつながっていたいっす」
アンチョビ(……最初からそう言え、ペパロニのアホ。……ま、そう思ってくれるのは、素直に嬉しいけどさ)
アンチョビ「あのなペパロニ。私はずっとお前の先輩だ。この学校を卒業しても、それは変わらない」
ペパロニ「はあ」
アンチョビ「何か悩みがあればいつでも聞くし、お前達の試合にはもちろん応援しにいく」
ペパロニ「……ありがとうございます」
アンチョビ「それに、戦車道を続けているかぎり、ワタシ達は同じ道の上にいるんだ。また会うための、一時の別れだよ」
ペパロニ「なるほど、ものは言いようっすね……あいてっ」
アンチョビ「だからさ、新しい環境でお互い頑張ろうじゃないか」
ペパロニ「……」
アンチョビ「そーやって人間成長していくんだよ、きっと」
ペパロニ「……まぁ、そういうもんなんだろうなーって私も思ってはいるんですけど……」
アンチョビ「そうだよ。お前だって、本当はちゃんと分かってるんだ。お前はバカじゃない、私は知ってるぞ」
ペパロニ「照れるっす。だからまぁ、辛いのも受け入れなきゃなーとは思うんですけど」
アンチョビ「うん」
ペパロニ「……だけどやっぱり、嫌だなーって……」
アンチョビ「……お前、私のイイ話が台無しじゃないか」
ペパロニ「すんません」
アンチョビ「ていうか、嫌だ嫌だとダダをこねたところで、どうしようもない事じゃないか」
ペパロニ「うんにゃ、私はそうは思わないす」
アンチョビ「はぁ?」
ペパロニ「諦めなければ、道はあると思います。それで考えたのが……『そうだ、カノジョになればいいじゃん』って」
アンチョビ「……なんで?」
ペパロニ「だって恋人どうしなら、いっぱい連絡とりあったり、予定を合わせて一緒にどこかへ遊びに行ったり……それが当たり前になるでしょ?」
アンチョビ「……」
ペパロニ「あの姉さん、渋い顔しないでほしいっす」
アンチョビ「発想が飛躍しすぎてて、アホすぎて」
ペパロニ「ひどいっす」
アンチョビ「だいたいなぁ、そんなわけのわからん大義名分がなくても、会いたきゃ会えばいいし、連絡したけりゃすればいいじゃないか」
ペパロニ「……ふぅ~」
アンチョビ「なんだその、わざとらしいため息!」
ペパロニ「姉さん、こう言っちゃ失礼ですけど……」
アンチョビ「なんだよ」
ペパロニ「ぜんっぜん乙女心が分かってないっすよね……恋愛小説が大大大好きなくせに」
アンチョビ「ああん!?」
ペパロニ「私にとって姉さんは特別なんす。だからやっぱり普通じゃないつながりがほしいんですよ。……そういうの、わかんないっすかねぇ」
アンチョビ「あのさぁ、一応聞くけど」
ペパロニ「はい?」
アンチョビ「お前、ほんっとーにそっちの趣味は無いんだろうな!?」
ペパロニ「無い無い、ないっすよ! 何でそんな確認をするんです」
アンチョビ「だって、今までにうけたどの告白よりも、なんかねちっこいんだもん」
ペパロニ「ね、ねちっこいって、やだなぁ」
アンチョビ「……うーん……」
アンチョビ(『カノジョ』とかそういうのは嫌だ。やっぱりおかしい)
アンチョビ(……けどまぁ、別にこいつが会いたいっていうのを断る理由は無いんだ。誰かと繋がりがあるのは悪いことじゃないし。それに、私だってペパロニと一緒にいるのは、嫌じゃない)
アンチョビ(こいつは私に無いものを一杯もってる。直観力というか、猪突猛進のバカというか……そういうものを、持ってる。私はそれが嫌いじゃないし、それに、一緒にいて不思議と楽しいんだ)
アンチョビ「……まぁ一応、ペパロニの気持ちは理解した」
ペパロニ「じゃあ、姉さん、私のカノジョに……」
アンチョビ「それは断る! 気持ち悪い!」
ペパロニ「え~」
アンチョビ「え~じゃない。そこは絶対にゆずらないからな」
ペパロニ「じゃ、じゃあ『ごっこ遊び』ならどうすか?」
アンチョビ「ごっこ遊びぃ?」
ペパロニ「姉さんのことっすから、大学にいったらきっとすぐに彼氏ができちゃいますよ。だって姉さん、かわいいし、明るいし、元気だし……だからそれまでのごっこ遊びっす!」
アンチョビ「彼氏って、どうかなぁ……いやいやとにかく、何を言おうと、そういう変なのは認めないからな」
ペパロニ「え~」
アンチョビ「えーじゃないよ」
ペパロニ「……でもでも、なんか不安なんです。なんかこう、形式というか、カタチというか、そういうナニかが欲しいっす……」
アンチョビ「……お前って、こんな寂しがりやだったかなぁ」
ペパロニ「姉さんが特別なだけです」
アンチョビ「特別特別ゆーな、なんかはずいだろ」
アンチョビ(……まぁ、だけど……繋がり、ねぇ……)
アンチョビ(……しかたないなぁ……)
アンチョビ「おいペパロニ」
ペパロニ「はい?」
アンチョビ「私のリボンを、やる」
ペパロニ「へ?」
アンチョビ「私のを一つお前にあげる。だからお前が今つけてる髪留めを、私にくれ。交換だ。……私だって他のやつとは、こんな事はしないんだからな」 シュルシュル
ペパロニ「……! う、嬉しいっす! けど姉さん、私の髪留め、ほんとただのヒモっすよ? バランス悪くないっすか……?」
アンチョビ「入学したら、最初のうちは大人しめなリボンにしようと思ってたし、いいんだ。もう片っぽもこれに合わせる」
ペパロニ「イメチェンっすか……そっか、じゃあ私も、このリボンが似合うくらいに、サイドをもっと長くしようかな」
アンチョビ「そうだな、今の感じだと、ちょっとちぐはぐだもんな」
ペパロニ「へへ……やった、ありがとうございます! 姉さんの頭皮の汗と努力がしみ込んだリボンGETだ!」
アンチョビ「こら匂いを嗅ぐな! そーいうことをするなら返せ!」
ペパロニ「ごめんなさいもーしないっす! でも、ほんと、嬉しいっす、へへ……そうだ、姉さん」
アンチョビ「ん?」
ペパロニ「今から、艦橋の展望台に上りましょうよ! 夕日が沈むのを眺めましょ! 最後の夕日っすよ!」
アンチョビ「だけどなぁ、あそこ階段が長いんだよなぁ。エレベーターも無いし」
ペパロニ「じゃあ、私が姉さんを抱えてのぼるっす」
アンチョビ「いや、階段狭いし急だし危ないだろ? ……ってうわぁ! 何すんだ下ろせえ!」
ペパロニ「やー姉さん軽いっすねぇー! お姫様だっこ余裕っすよ。よっしゃ、まずはこのまま艦橋までランニングっすよ~」
アンチョビ「はぁ!? やめろ馬鹿! こんなとこ人に見られたらどーする!!」
ペパロニ「どうせ下船するんだからいいじゃないっすかぁ、それと、あんまりしゃべると舌かむっすよぉー!」
アンチョビ「お、下ろせぇーーー!!」
ドゥーチェ
『ただまぁ……「今から祭場に来い」って言われたのには、ちょっと焦りましたけど(;´д`)ゞ』
アンチョビ
『「あんま調子にのるな!」って怒っといたよ』
『背中にモッツァレラチーズのかけら入れてやった』
『んで、食材を無駄にするのは許さんって、ちゃんと食べさせた』
ドゥーチェ
『ぎゃーΣ (゚Д゚;)』
アンチョビ
『けどさ、きっぱりあいつの呼び出しを断ってくれて、ありがとね』
ドゥーチェ
『まぁさすがにねー、勢いで言ってるだけって感じだったですし』
『ホントに私が行っちゃったら、変な空気になっちゃうだろーなーって』
アンチョビ
『ペパロニって、そーいう空気、意外とちゃんと読むよな』
ドゥーチェ
『うす、ノリと勢いをコントロールするのが、今年の目標っす』
アンチョビ
『頼んだぞ、ドゥーチェ』
ドゥーチェ
『(*TーT)b』
アンチョビ
『んと、明日の卒業式って、結局全員きてくれるのかな?』
ドゥーチェ
『そっすよ』
『戦車道1年2年は全員列席っす』
『別に強制参加にはしなかったんすけどね』
アンチョビ
『嬉しいなぁ、3年を代表して感謝感謝』
ドゥーチェ
『ていうか、卒業式って在校生は自由参加だったんすね』
『てっきり全校生徒でやるものだと思ってました』
アンチョビ
『艦内全員が卒業式に集まっちゃうと、課によってはいろいろ都合がね』
ドゥーチェ
『にしても、卒業式の後に普通に授業があるって、なんかへん!』
アンチョビ
『そうだよなぁ。まぁ、卒業式に出ない生徒からすると、ただの午前休みなんだろうな』
ドゥーチェ
『どうせなら丸っと全部休みにしてほしー』
『姉さん達の送別会、放課後にならないとできないし』
アンチョビ
『まぁ、しゃーない』
ドゥーチェ
『姉さん達、式が終わった後は放課後までどうするんすか?』
アンチョビ
『皆で』
『カラオケに』
『行くぞ!』
ドゥーチェ
『えー!』
『カラオケいーなー!!━━━(゚Д゚;)━( ゚Д)━( ゚)━( )━(゚; )━(Д゚; )━(゚Д゚;)━━━!!!!! 』
『私も行きたい!!!』
『授業さぼって行く!!!』
アンチョビ
『こらこら』
『いけないドゥーチェだ』
ドゥーチェ
『ずるいっすー! 盛り上がりすぎて、壮行会すっぽかさないでくださいね!』
『ちゃんと学校に戻ってきてくださいよ!。・゚・(ノД`)・゚・。』
アンチョビ
『馬鹿、忘れるもんかい』
アンチョビ
『ところでさ』
ドゥーチェ
『はい』
アンチョビ
『ペパロニにお願いがあるんだけど』
ドゥーチェ
『なんです?』
アンチョビ
『明日の朝、私の部屋に来てくれないか?』
ドゥーチェ
『え』
『え!』
『ええええええ(///)』
ドゥーチェ
『dousitessuka?(//////////////)』
アンチョビ
『あほ』
『壮行会の時にさ、皆に私からプレゼントがある』
ドゥーチェ
『え』
アンチョビ
『ブローチなんだけどね。皆のイニシャルをそれぞれ刻んである』
ドゥーチェ
『マジすか……』
アンチョビ
『全員分発注したんだけど、いやぁ届いてみたら結構かさばってってさ。一人じゃ重くて』
ドゥーチェ
『わかったっす! 運びにいきます!』
アンチョビ
『うん。お願い』
ドゥーチェ
『えっと、これって、みんなには秘密のサプライズですよね?』
アンチョビ
『そうだよ。だから秘密だぞ』
ドゥーチェ
『かしこまりっす! まじで嬉しいっす……』
アンチョビ
『まぁ、おまえらも、なんか用意してくれてるみたいだしな』
ドゥーチェ
『は!?』
『えええええなんで知って』
『えええええ!?』
『
ヽ('A`)ノ え
ヽ('A`) え
ヽ(. 'A) え
(ヽ´) え
( .)ソ え
ヽ( )ノ え
. ヽ .) え
(`ヽ.) え
(A` )ソ え
('A`)ソ え
ヽ('A`)ノ !?
』
アンチョビ
『やめい』
ドゥーチェ
『秘密だったのに!!!!!!』
『ばれてる!!!!!』
『どうしよう、作戦失敗。私、立場がないっす』
アンチョビ
『知ったのはたまたま』
ドゥーチェ
『どういうことです???』
『なんでですか???』
アンチョビ
『まぁ、そこはあんまり追及してやるな』
『お互い、情報作戦するときは『壁に耳あり障子に目あり』それを忘れるなって事だ』
『それに』
『サプライズの事は私しか知らないし』
『私もちゃんと、知らなかったていで驚くから』
ドゥーチェ
『はい、お願いします……』
『ていうか……』
『姉さんの』
『意地悪!』
アンチョビ
『なんで?』
ドゥーチェ
『どうせ知らなかった事にするなら』
『私にも黙っててほしかったす……』
アンチョビ
『まぁ、そうなんだけどさ』
『んー』
『えっとなー』
ドゥーチェ
『?』
アンチョビ
『お前には』
『私と同じ立ち位置にいてほしくて』
ドゥーチェ
『え?』
アンチョビ
『だから、』
『私なりにお前を』
『おまえ曰くの「特別」とやらにした』
『ってこと!』
ドゥーチェ
『う?????』
アンチョビ
『だから~、お前にだけは私の企んでることとかぜんぶ-----』
アンチョビ「……って、こんな恥ずかしいこと文字に残してたまるかっ」
アンチョビ(ええい、自力で理解しろ! わかれ! 分かるまで既読無視しよーっと……)
アンチョビ「……」
アンチョビ「……」
アンチョビ(ペパロニめ、何か言えよ、なんか落ち着かないじゃないか)
アンチョビ(……絶対こっちからは何も言わないからな)
アンチョビ「……」画面チラチラ
< ……テケテテケテトゥリン~♪ テケテテケテトゥリン~♪
アンチョビ「っ!?」
アンチョビ「LINE着信、ペパロニから……」
アンチョビ「わかった、のかな……?」
アンチョビ(けど……電話なんかしてくるなよ! 文章だからこそってのあるだろ!)
アンチョビ(なんか恥ずかしいだろ!)
< テケテテケテトゥリン~♪ テケテテケテトゥリン~♪
アンチョビ「うう、なんかやだなぁ」
<……ピポ
アンチョビ「……もしもし?」
ペパロニ『……』
アンチョビ「……なんかしゃべれよ」
ペパロニ『……えへ』
アンチョビ「なんだっ」
ペパロニ『いやぁもー……姉さんマジっすかぁ?……えへうひ』
アンチョビ「何がだ! キモイ悪い笑い方するなっ」
ペパロニ『うー、なんか身体がバタバタしちゃうっすーっ』
アンチョビ「もー……」
ペパロニ『ひゃーっ』
アンチョビ「はあ……なんだかなぁ、お前と話してると、明日卒業って気が全然しないぞ」
ペパロニ『あはは、ほんと、私もっす』
アンチョビ「まーだけど、部屋がすっごい広くなったよ」
ペパロニ『あ~、荷物片づけたからっすか?』
アンチョビ「うん。必要な物以外は、もう全部梱包して出しちゃったからな」
アンチョビ「この部屋こんなに広かったのかぁーって感じ」
ペパロニ『なるほどぉ……』
ペパロニ『んー……あのう、姉さん』
アンチョビ「ん?」
ペパロニ『今から、姐さんの部屋、行ってもいいっすか……?』
アンチョビ「へ……今から? ……えっと、なんで?」
ペパロニ『掃除した部屋、どんな感じかなーって』
アンチョビ「あー……うん、まぁ、別に……いいけど……」
ペパロニ『と、言うかですね』
アンチョビ『うん?』
ペパロニ『どうせ明日の朝姉さんの部屋に行くのなら』
ペパロニ『今晩はもう姉さんの部屋で寝ても、いいかなーって……』
アンチョビ「え!? んぁー……だけど、ええーと……」
アンチョビ(……な、なんだよペパロニのやつ……えらくグィグィくるな……)
アンチョビ(……や、まぁ私の部屋に泊まったことはなんどもあるし、今日で最後だし、おかしくはない、のか?)
アンチョビ(……あれ? じゃあなんで私ためらってんだろ。あれ? あれ?)
ペパロニ『それで、えっと、よかったらカルパッチョにも声かけよーかなーって』
アンチョビ「え、」
アンチョビ「あ、」
アンチョビ「……そうなのか」
ペパロニ『え……だめっす?』
アンチョビ「へ?」
アンチョビ「い……いやいや」
アンチョビ「そんなワケないだろ! うん、もちろんカルパッチョも呼べ!」
ペパロニ『そっすよね!』
アンチョビ「そうだとも!」
アンチョビ(……??? 私は一体何をためらったんだ?)
ペパロニ『うし! じゃ、ちょっとしたらそっち行きますね?』
アンチョビ「う、うん。あ、けどごめん、ちょっと先にシャワーを浴びたい」
ペパロニ『あ、そっか、そっすよね』
アンチョビ「まぁだけど、部屋の鍵は開けとくから。勝手に入って待ってればいいぞ」
ペパロニ『わっかりました~。じゃ、後でっ』
アンチョビ「ほいほーい」
……ピッ
アンチョビ(……。)
アンチョビ「……さっさとシャワールーム行ってこよ」
<シャワワワワワワワー
アンチョビ(あーほんと、なんか笑っちゃうなぁ。明日、卒業なんだぞ? なのに、いつもとナニもかわらないじゃないか)
アンチョビ(まぁだけど、いいさ。こういう最後の夜も。ふふ)
アンチョビ(……ていうか、ペパロニ)
アンチョビ(お前、ほんっとにそーゆー趣味は無いんだろうな!? なんかちょっと不安になってきた……)
アンチョビ(……。)
アンチョビ(……冗談でも、なんかフザケたことしてきたら、きっぱりブッ飛ばそう、うん)
アンチョビ(……まぁ、カルパッチョも一緒に来るんだしだし、そんな事を想像する私こそ、変か……)
~アンチョビの自室
<がちゃり
ペパロニ「あ、姉さんお帰んなさい~。お邪魔してるっす」
アンチョビ「うい、お待たせー」
ペパロニ「いやー、部屋、ほんとに広いっすね! 私の部屋とおんなじ間取りとは思えないっす」
アンチョビ「ほんとな~」
アンチョビ「……ていうか、あれ? カルパッチョは?」
ペパロニ「それがですね、お腹、痛いらしくて」
アンチョビ「え……そ、そうなのか……」
>>19までは、下記の別スレ
ペパロニ「アンチョビ姉さん、ちょっとカノジョになってもらっていいっすか?」
と同じほぼ同じ内容の投稿です。
しかしながらその際に私のミスで投稿に漏れがあり、意味不明なSSになってしまいました。
そのため、こちらのスレにて改めて投稿させていただきました。
以下、続きです。
アンチョビ(そうか、カルパッチョ、い、いないのか……)
アンチョビ(……だ、だからなんだ! 別に、ペパロニと二人でいるのに何を意識する必要がある)
ペパロニ「あの、姉さん?」
アンチョビ「……おぅ!?」
ペパロニ「どうしたんです? 部屋の真ん中に突っ立って……」
アンチョビ「あ、いや……べつに」
ペパロニ「?」
アンチョビ(うー……何なんだ私! 変だ、なんか変だ……。)
アンチョビ「ちょっと化粧水、つけちゃうから」
ペパロニ「あ、どぞどぞ」
アンチョビ「ん」
アンチョビ、ベッドに腰を下ろして化粧水ボトルを股に挟み、頬っぺたにペチペチ
ペパロニ「姉さん、ちゃんとそーいうのするんですねぇ」
アンチョビ「うん? ペパロニはしないのか?」
ペパロニ「めんどくさくて」
アンチョビ「うーん、若い時はまぁそれでもいいみたいだけどなぁ」
ペパロニ「姉さん年いくつっすか……」
アンチョビ「ていうか、ごめんな。床に直で座らせて。家具、もうベッドしか残ってないからなぁ」
ペパロニ「いあいあ。いっつも地面に寝っ転んでますから、むしろこーいう感じが好きです」
アンチョビ「変なやつ」
ペパロニ「それと、タオルケットを持ってきたっすから、寝るときも床でオッケーっすよ」
アンチョビ「ん……まぁ、だけど、さ」
ペパロニ「はい?」
アンチョビ「お前も、今はベッドに腰掛けたら、いいぞ」
ペパロニ「え、いいんすか」
アンチョビ「うん、まぁ、二人だけならそんなに狭くもないし」
ペパロニ「やーだけど、なんか申し訳ないっす」
アンチョビ「何がだ。そんなの気にするな」
ペパロニ「そっすか? へへ、じゃ、お隣に失礼するっす!」
ギシッ……
……フワッ
アンチョビ(……あ、この香り)
アンチョビ(私が上げたボディーソープ、まだ残ってたんだな)
アンチョビ「ペパロニ」
ペパロニ「はい?」
アンチョビ「それ、いいだろ? そのソープ」
ペパロニ「え……? あ、はい! いいっすよ。お肌すべすべっす!」
アンチョビ「そっか」
ペパロニ「えへへー、私の身体、いい匂いでしょ?」
アンチョビ「うん」
ペパロニ「でも白状しちゃうと……私ってあんまり、質の違いとかそーいうのは分からないんですけどね、あはは」
アンチョビ「なんじゃそりゃ」
ペパロニ「でも姉さんが私にくれたんだし、絶対良いやつなんだろーなーって、使わせてもらってます!」
アンチョビ「そうだぞ、いいやつだぞ」
ペパロニ「とにかく、気に入ってるっす!」
アンチョビ「そうか」
ペパロニ「はい」
アンチョビ「うん」
ペパロニ「……」
アンチョビ「……」
アンチョビ(……。う……)
アンチョビ(何か、なんか言葉がつっかえる。言葉がすぱっと浮かばない。なんか嫌だなぁ……もどかしい)
化粧水パチパチパチパチパチ……
アンチョビ(うー、もう化粧水じゃもう間が持たない)
アンチョビ(なんかしゃべらないと、えーとえーとえーと……)
ペパロニ「……そういえばですね、姉さん」
アンチョビ「お、おう?」
ペパロニ「ちょっと、聞いてもらっていいっすか?」
アンチョビ「ん」
ペパロニ「私ねー、ちょっとだけ……自信がついたっす、今日、姉さんに告白して」
アンチョビ「その表現は、や・め・ろ」
ペパロニ「なら……打ち明けた?」
アンチョビ「それならOK。……で、何だっけ」
ペパロニ「えっとですねー……あ~、姉さん、私ちょっと、語っちゃっていいっすかっ?」
アンチョビ「おー、語れ語れ、聞いてやるぞ」
アンチョビ(好きなだけしゃべってくれ……むしろ間がもって助かったぞ……)
ペパロニ「んっとぉ~」
ペパロニ「世のなかには、どーしようもないことっていっぱいあるじゃないっすかー」
アンチョビ「お、おお? なんだ急に、ペパロニらしからぬ……」
ペパロニ「だけども、思いっきり足掻けば、ちょっとぐらいは何とかなったりすることもあるんだなーって、今日、思いました」
アンチョビ「ほほう」
ペパロニ「明日になったら、先輩達はみんな卒業しちゃうじゃないですか」
アンチョビ「うん」
ペパロニ「私はそんなの嫌だけど、でも、それはどうしようもないじゃないっすか。姉さんも言ってたけど」
アンチョビ「まぁ、そだな」
ペパロニ「だからしかたないことなんだーって私もずっと諦めてたけど、だけどやっぱりどうしても嫌で」
アンチョビ(放課後の時にも、言ってたな)
ペパロニ「だから思い切って今日、最後のチャンスに、私は姉さんに告白したんす」
アンチョビ「だから……」
ペパロニ「間違えました。頑張って打ち明けたら、おかげで、私は姉さんにこのリボンをもらえました」
アンチョビ「ま、今はちょっとやっぱり、リボンが大きすぎるみたいだけど」
ペパロニ「ま、ま、しばらくは。……だけどもし私が今日打ち明けなかったら……やっぱり、ナニかがちょっと、今とは違ってたとおもうっす」
アンチョビ「そう……かな?」
ペパロニ「たぶん、そうです」
アンチョビ「ふむ……」
アンチョビ(……その何かが、ナニなのかは、分からないけど……何かが違っていただろうっていうのは、分かる、かな)
ペパロニ「とにかく、だから、言ってよかったす」
アンチョビ「ん……」
ペパロニ「言えば、頑張れば、何かが変わるんだって、ちょっと、実感できたっす」
アンチョビ「……」
ペパロニ「へへ、姉さんがちゃんとオッケーしてくれたから、リボンをくれたから、こんな風に思えるっすよよ! 姉さんのおかげっす!」
アンチョビ「そ、そうか、感謝しろ?」
ペパロニ「はいっす!」
アンチョビ「う、うん……」
アンチョビ(……ええい、そう真直ぐにジッとこっちを見つめるなっ)
アンチョビ(……だけどまー、なんいうか、こいつのこーいう、にごりのない真直ぐな目……すごいよなぁ……)
アンチョビ(なんだか力強くて、それに見てるこっちまで心にさっと陽がさすよーに明るくて)
アンチョビ(ペパロニのこの目、好きだな……)
アンチョビ「……って、なんで女同士で見つめあってる!」
ペパロニ「えー、だって私、姉さんの目、好きっすよー?」
アンチョビ「っ!?」
アンチョビ「き、気色悪いことゆーなっ」
アンチョビ「ま、まぁだけど……こほん……お前の言ったことは私も分かるぞ
アンチョビ「嬉しかったこととか楽しかったこと、頑張ったこと、そーいう記憶が自分に自信をつけてくれるんだ、そーいうことだよな」
ペパロニ「記憶……そっか、それだ記憶! さすがっす姉さん!」
アンチョビ「お、おう?」
ペパロニ「そっか、記憶なんだなぁ……」
アンチョビ「……てかさ、ちょっと聞いていいか?」
ペパロニ「なんすか?」
アンチョビ「そうやって姉さん姉さんって言ってくれるのは嬉しいけどさ」
ペパロニ「はい」
アンチョビ「なんでだ?」
ペパロニ「へ? なんでって……」
アンチョビ「慕ってくれるのは嬉しいし、私も自信つくし、それは全然いいんだけど……お前こそ……明るいし、友達多いし、元気だし、頑張りやだし……ごめんちょっとナニ言ってるかわかんなくなったけど、だからつまり」
ペパロニ「はぁ」
アンチョビ「だからなんでそんなに……わざわざ私のことを、あー、慕うんだ? ……って事。」
アンチョビ(やばい照れる……だって友達にだってあんまりこんなこと聞かないだろ!? 私のどこが良いんだ、なんて事!)
アンチョビ(だけど、やっぱり、聞かずにはいられない)
アンチョビ(だってこいつは、なんかちょっと、違う。ただの仲の良い後輩じゃない、なんか特別な、普通じゃない後輩。きっと、私にとっても……)
ペパロニ「えっとですね、それがなぜかっていうのが、やっぱ、姐さんが今言ったっとおり、記憶なんすよ」
アンチョビ「……うん?」
ペパロニ「記憶といいますか、思い出、っすかねー……」
アンチョビ「思い出」
ペパロニ「自慢じゃないけど、わたし友達は多いっす。だから、誰かと遊んだり頑張ったりした思い出、いっぱいあります」
アンチョビ「うん」
ペパロニ「だけど、そーいうのをいろいろ振り返ってみると、やっぱ一番でかいのが」
アンチョビ「うん」
ペパロニ「姉さんとの思い出……っす」
アンチョビ「そ、そうか……照れるな」
ペパロニ「私も言ってて照れるっす」
ペパロニ「とにかく、なんていうか、すごく嬉しかったり、すっごく楽しかったりって記憶があって、そのどれにも姉さんがいるっていうか……」
アンチョビ「う、うん?」
ペパロニ「て、ていうかむしろ! 出来事とかはどうでもいいくらいで!!」
アンチョビ「お、おう!?」
ペパロニ「姉さんがこうしたとか、ああ言ったとか、そーいうのを思い出すと……なんかすっごい……元気がでるっす!」
アンチョビ「そ、そうか」
ペパロニ「それでですね!」
アンチョビ「はい!?」
ペパロニ「そーいう記憶って、一個だけじゃないんす、たくさんんたくさんあるんす! こーなるともう、どうしようもなくて、他にも楽しいことはいっぱいあるんですけど、どーしてもそれが一番気持ちの中ででっかくて!」
アンチョビ「うん? ……うん??」
ペパロニ「……だからまぁ、つまりはやっぱ私にとって姉さんはやっぱり「特別」なんだろうなぁ……って……そんな感じ……だと思うんですよぅ……」
アンチョビ「まぁー……わかったような……」
ペパロニ「うあー、なんかマジ恥ずかしいっす……ちょっともう、止めてもらっていいっすかね……顔が熱い……」
アンチョビ「そ、そうだな、止めよっか……ていうか」
ペパロニ「……ふぁい?」
アンチョビ「特別特別って、お前、もっと他に表現はないのか? そしたらもっとちゃんと伝わるんじゃないのか?」
アンチョビ(お前の感じ方、すごく面白いし、そんなふうに言われると嬉しいし……うう、そんなふうに全力で私を肯定するなよう! う、嬉しくなっちゃうだろ!? ……でも、お前の考えてる事、もっと詳しく知りたい……)
ペパロニ「い、いやぁー、私、語彙力ないっすからねぇ……」
アンチョビ「むぅー……だったら小説をよめ! 小説を」
ペパロニ「本読むと眠くなっちゃうっすよー」
アンチョビ「読書の楽しみを知らないからだ! よし、今度私の小説を貸すから、読め! いいな!」
ペパロニ「えーだってどうせ恋愛小説っしょー? スンマセンけどちょっとそういうのは私あんまり……」
アンチョビ「お前……また私をバカにしたなっ」
ペパロニ「し、してないっすよぉー……」
アンチョビ(……お? なんかいつの間にか普通にしゃべってる……まぁいっか、あはは)
続きは後日、書きあがり次第になります。
前スレでコメントをくださっていた方へ、
私の不手際で、申し訳ないです。
~卒業式当日・早朝
<チュンチュン……チュン
アンチョビ「んぁ」
アンチョビ(朝、か)
アンチョビ(……)
アンチョビ(……うあっ!? 寝坊してないだろうな!?)
アンチョビ(……あぁ、よかった、まだまだ大丈夫だ)
ペパロニ「むにゃ……」
アンチョビ(そっか……けっきょく昨日、一緒のベッドで寝たんだっけ)
アンチョビ(二人でカルパッチョの部屋に様子を見に行って……だけどやっぱり辛そうだったから、ちょっとだけ三人でしゃべってすぐ戻ってきて……で、なんか楽しくて気分がいいから、お前も一緒に寝ていいぞ~ってペパロニをベッドにあげさせて……。)
アンチョビ「ペパロニー、朝だぞー」
ペパロニ「ん……んぅー?」
アンチョビ「あっ、おい、こらっ。……もー……ひっつくなよ」
アンチョビ(ペパロニめ、こんなに抱きグセがひどかったとは……。そういえば、普段から抱き枕を使っていると言ってたっけ)
アンチョビ(ていうか、こいつのほうから身長デカいから、完全に私がくるまれてるよなこれ)
アンチョビ(むぅ……がっちり掴まれて離れられない)
アンチョビ「おい、こら、起きろってば……。……まあ、いっか。目覚ましにもまだ早いし、私ももう少し寝ようかな。ふぁぁ……」
アンチョビ(けど……家具のほとんどない空っぽの殺風景な部屋、ベッドの中で後輩に抱かれて……変だろ!)
アンチョビ(こういうおかしな朝が、私の高校生活最後の朝、か……うぅ、これは一生忘れないだろうなぁ……)
アンチョビ「お前のせいだぞ、こんにゃろ」鼻ピン
ペパロニ「ふがっ……スヤァ……」
アンチョビ「こいつ……。……そんなに私の身体は、抱き心地がいいのか?」
アンチョビ(……。実際、誰かにひっつくってどんな感じなんだろ。……ちょ、ちょっとだけ)
……ゴソゴソ……ぎゅっ
アンチョビ(……うぁっ、気持ちいい! 気持ちいいぞこれ! おっぱいと、おなかと、腰と太ももにギュってなる感じ、すごい気持ちいい! うおおー……)
アンチョビ(それに、ペパロニ、柔らかい。図体はでっかくなったけど、身体はちゃんと女子だな……親戚のところの赤ちゃんを抱いた時みたい……なんか落ち着く……)
アンチョビ(……もうちょっと、もうちょっとだけ)
<……ドタドタドタ
アンチョビ「!?」
アンチョビ(だ、誰だ! 朝早いのに廊下をドスドス、うるさいぞ、び、びっくりするだろ!)
<ドタドタドタ……ドタドタドタ……ド タ ド タ ド タ……
アンチョビ(足音、なんか、だんだんこっちの方に近づいて---)
アンチョビ(それに複数、まさか---)
アンチョビ(---ドアの鍵ッ、昨日ちゃんと閉めたよな!?)
アンチョビ(寝る前に確認を……してない! 昨日は確認してないっ)
アンチョビ(わああまずいまずいまずい!!! 万が一こんな所を見られたら! タオルケットだから丸見えだし! 後輩にベッドの上で抱かれてるなんて---!! )
アンチョビ「おい! ペパロニ起きろ!」
ペパロニ「んぁ~……?」
アンチョビ「んあーじゃないイイから早く起きろ腕をほどけ私を離せ!!!」」
<ガチャリッ
<『お、カギ開いてるじゃん』
<『千代美、もう起きてるのかな?』
<ギィー
アンチョビ「ひっ! ペパロニ起きろって早く離れ---」
クラスメー子1「おーい千代美ー! おっはよ~~~! 今日はクラス全員で一緒に朝ごはんをたべようぜー……え……?」
アンチョビ「」
クラスメー子2「ねーちょっと、何固まってるのよどうしたの……よ……?」
アンチョビ「」シロメ
クラスメー子1&2「」ボーゼン
ペパロニ「……も~……何ですかぁ? うるさいっすよぉー……お?」
全員「「「「……」」」」
ペパロニ「……あ、ども……先輩、おはようございます……っす……」
クラスメー子1「……え、あ、うん……おお……」
クラスメー子2「えっと……お邪魔、しました……じゃあ私達はこれで……」
とた、とた、とた、とた……
<キィィ……
<バタン
アンチョビ「……」
ペパロニ「……」
<『ぶはっ! あはははははははははははははは! まじかよ千代美! 千代美ぃーーー! あははははははははははは!』
<『ごめんごめんごめんほんっとごめん! だけどやばいってやばいってあはははははははははかっかっかっかっかっか!』
<ドタドタドタドタ……
<シーン……
アンチョビ「……」
ペパロニ「あの、姉さん」
アンチョビ「……あ……あぁぁぁ……」
アンチョビ「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
ペパロニ「ね、姉さん、そんなグリグリ私の胸に顔を押し付けたら、窒息しちゃうっすよ」
アンチョビ「あああああああああああああ! うるさいうるさい! お前が悪いんだっ!」
ペパロニ「ま、まぁまぁ、大丈夫ですって大丈夫」
アンチョビ「何が大丈夫だよもおおおー! あああああああああああああ!!」
アンチョビ「ばかばかばかばかー!!!」
~少し時間がたって、学園内。戦車車庫へ向かう道すがら。二人で荷物を運びつつ。
ペパロニ「姉さん、そろそろ元気だしてくださいよー」
アンチョビ「……」
ペパロニ「もうすぐ大切な卒業式なんすからぁ」
アンチョビ「……穢された。私の特別な朝が穢された……」
ペパロニ「先輩達にはちゃんと説明したんだから、もう問題ないじゃないっすか」
ペパロニ「ていうか、説明、ぜーんぶ私がしたんすからね? 姉さんってばアワアワしてるだけでなんですもん」
アンチョビ「う、うるさい! 食堂に入るなりクラスの全員からはやしたてられて……そりゃアワをくうだろっ」
ペパロニ「あーいうきこそ、どっしり構えて落ち着いて説明すりゃあ、それでモノゴト収まるんですよ。実際おさまったじゃないっすか」
アンチョビ「て、ていうかお前、私ら三年にまざって朝飯一緒に食べてるし!」
ペパロニ「先輩達が食べて行けって言ってくれたんですもん。それに、あの場に、姉さんを一人だけおいていけないっす」
アンチョビ「ぐ、む……お前、なんか……ずぶとくなったなぁ……」
ペパロニ「へへ、姉さんに鍛えられたっすから」
~戦車車庫内
アンチョビ「ふぅ……運ぶのを手伝ってくれてありがとな。やっぱり私一人じゃ無理だった」
ペパロニ「いえいえ。嬉しいっすよ。マジで全員分用意してくれたんですね」
ペパロニ「……って、姉さん? どしたんすか? ぼーっとどこ見てんすか? ……P40?」
アンチョビ「うん……。あの子、とうとう修理してやれなかったなぁ」
ペパロニ「あー、修理代、まだまだ貯まんないっすねぇ……」
アンチョビ「お前達の負担にならないように、なんとか私らのいる間になおしてやりたかったんだけどなぁ」
ペパロニ「心配ないっすよ。みんなで金策して、学校にも掛け合って、来年の大会までには絶対復帰させてみてます」
アンチョビ「すまないが、頼む」
ペパロニ「っす」
アンチョビ「……はー……ここともお別れか……」
アンチョビ(……今更だけど、ほんと、広い倉庫だな……カルロベローチェもタンケッテも、戦車が小さく見える。昔はもっともっとたくさんの戦車があったんだろーな……この学校の戦車道の立て直しに、もっと役に立ちたかった……)
アンチョビ「……なぁペパロニ、すごいぞ。倉庫を眺めてると、なんかとっても、感慨深いぞ」
ペパロニ「いろいろあったすもんねぇ。ここで戦車を洗って、戦車なおして、作戦立てて、疲れたらみんなで飯食って」
アンチョビ「そうだなぁ……」
アンチョビ(……ん?……なんか、静かだ。この倉庫って、こんなにシーンとしてたっけ)
アンチョビ「……あ、そっか」
ペパロニ「?」
アンチョビ(今日は朝練をしてる部活もいないし、他の生徒もまだいない……学校全体が、まだ静かなのか)
アンチョビ(その代わりに、車庫を流れる風の音が聞こえるな。コォーって。……)
アンチョビ「……。……あ、ごめん。またぼーっとしてた」
ペパロニ「や……なんかとっても、渋い横顔でした」
アンチョビ「いざ最後だなぁって思うと、ほんとすっごいや。なんか寂しい。びっくりした」
ペパロニ「実はっすね……私もそーいう感覚、なんか最近、分かるようになってきました」
アンチョビ「そっか、お前にも分かるか……スゥーーハァーー」
アンチョビ(深呼吸をすると、鉄と油の匂いがいっぱいだ……朝の空気はヒンヤリしてて、だけどちょっとここはカビくさい。でも……嫌いな臭いじゃないんだ。落ち着く匂いだ……)
アンチョビ「……。式まで、まだちょっと時間があるな。ペパロニは、どーする?」
ペパロニ「そっすねぇ。えっと、姉さんはどうします?」
アンチョビ「私はしばらく、ここにいようかなって」
ペパロニ「じゃあ、私も一緒にいていいですか?」
アンチョビ「ん、いいぞ」
ペパロニ「うす」
アンチョビ「なんか、ここを眺めてたいなーって」
ペパロニ「私も、隣で眺めてますね」
アンチョビ「うん」
ペパロニ「……っす」
P40の砲塔に腰掛けて、どこを見るでもなく車庫を見渡す。
明りをけした車庫は洞窟の奥みたいにほの暗い。
けれど、天井にはいくつもの天窓が空を覗いていて、そこから差し込む朝の光が、そこかしこに光の柱をつくっている。
傾いたその柱の中には、キラキラと、星の数ほどのホコリが瞬いていた。
壁際に整然と並ぶ戦車の列、乱雑とした道具置き場、鉄骨むき出しの赤さびた天井……見慣れたはずそれらの眺めが、今はどうしようもなく瞳を引き付けた。
それら一つ一つを、もう飽きるほど見つめ続けているのに、いつになっても、これでもう満足だという気持ちにはたどり着けない。
開け放たれた倉庫の入り口からは、涼しい風が舞い込んで、ときおり肌を撫でていく。
そうした瞬間にふと香る鉄と油の風味。
また、時々ペパロニが身じろぎをして、微かに聞こえる制服の衣擦れの音。
そういう穏やかなものに五感をゆだねていると、時間がとめどなく過ぎていく。
いつの間にか、生徒たちの楽し気な声が、風に乗って届くようになっていた。
<オハヨー……
<キャハハ……
<ソウダヨネー……
アンチョビ「……あのな、ペパロニ」
ペパロニ「はい?」
アンチョビ「壮行会の最後に、皆の前で、私のマントをお前に譲るつもりだ」
ペパロニ「……っす」
アンチョビ「その段取りを、今のうちに確認しておこうか」
ペパロニ「へ?」
アンチョビ「リハーサルをやろうってこと」
ペパロニ「リハーサル……でも、そーいうのって、いきなりやってこそ泣けるんじゃないですか?」
アンチョビ「そうだけど、だって、皆の前でまごついたら、カッコ悪いじゃないか。言っとくけど、この練習のことも皆には絶対秘密だぞ」
ペパロニ「ええ……またそーいうのですかぁ。なぁーんか、私の感動だけがどんどん薄れていくんすよねぇ……」
アンチョビ「私のたくらみ事、お前にだけは全部話すって、昨日そう言っただろ?」
ペパロニ「うー……都合よく扱われてるだけな気がしてきたっす……」
アンチョビ「ブチブチゆーな! やるぞ!」
ペパロニ「はいはい」
アンチョビ「さて……本番では、私がマントをケースから取り出して、それをペパロニに着せる感じにしようかな?」
ペパロニ「ん~、それでもいいっすけど……でもやっぱ、どうせなら最初は姉さんがマントをつけといて、それをシャッと脱いで私に着せる……その方がカッコよくないっすか?」
アンチョビ「ふむ……そっか、そうだな、そうしようか」
ペパロニ「そうしましょう」
アンチョビ「では、こうしよう。私の最後のスピーチが終わったら、壇上からペパロニを呼ぶ。そしたらお前も壇上に上がってきてくれ。 いいか、『え? なんだろう?』って顔しながらだぞ」
ペパロニ「演技って苦手なんすけどねぇ」
アンチョビ「じゃ、一回ほんとに、その流れでやってみようか」
ペパロニ「そですね」
アンチョビ「じゃあマントを出して羽織るから、ちょっと待っててくれ」
ペパロニ「ほーい」
アンチョビ「……よし、お待たせ」
ペパロニ「……あ……」
アンチョビ「ペパロニ? ……な、なんだよ。無言でそんな、まじまじと私を見るな」
ペパロニ「……あの、ちょっと、そのまま、じっとしてもらっていいですか」
アンチョビ「へ?」
ペパロニ「姉さんのマント姿を、よく見ておきたいです」
アンチョビ「な、なんか、恥ずかしいな」
ペパロニ「……お願いです」
アンチョビ「わかったよ。えと、ただ立ってればいいのか?」
ペパロニ「はい」
アンチョビ「こ、こうか?」
何のかざりっけもない、直立。
ペパロニが、妙に力のこもった視線を向けてくるから、なんとも言えない居心地の悪さに襲われる。
けれど、本当は決して嫌な気分じゃあない。
むしろ、少しばかりの快感を得てさえもいる。
ペパロニの真直ぐな眼差しが、いかにも年頃の女の子らしい虚栄心を満たしてくれるからだろうか?
……先ほどマントを羽織る時も、実はちょっぴりカッコをつけて、これみよがしに羽織ってみせたんだ。
「なぁペパロニ、まだか?」
「もうちょっとっす」
そのやり取りが3度繰り返された後、心の恥じらいが、とうとう、この場の奇妙な空気に押し流され始めてしまった。
「……こんな感じか?」
腰に手をあてて、ちょっぴり顎を引いて視線を鋭くし、映画にでてくる女探偵を気取ったつもりになって、おどけてみせる。
いっちょうピースサインでもしてやろうか……そんな風な考えさえもがちらりと頭をよぎる。
その時だった。
「……っ」
一瞬。
ほんの一瞬。
ペパロニの唇が震え、眉間に皺がよった。
じっと見ていなければ見逃してしまうほどの、僅かな揺らぎ。
「……?」
ペパロニの見せたその奇妙な揺らぎ。
しかしその一瞬のブレが、ペパロニの表情に張り付いていた強がりを、あっと言う間に剥がしていった。
「ペパロニ」
妙に力の籠っているその眼差しは、良く見れば、力んでいるというよりも不自然なまでに硬直しているじゃあないか。
真剣に見えあその表情も、よくよく観察してみれば、まるで何かをかみ殺しているかのように、ひたすらに硬い。
「姉さん」
聞き間違いようもない。
呟かれたペパロニの声は、かすれて、震えていた。
それまでかたくなに閉じられていた唇が、かすかに開いて、ふるふると震え始める。
しだいにその揺れがひどくなり、口角がひっきりなしに隆起するようになった。
二つの瞳はいまだになんとか強がりを続けているけれど。
二本の眉毛は、すでに急角度に傾き始めている。
「……はぁっ……あっ……」
ペパロニの口が、酸素を求めて喘ぐように、なんどもパクパクと開かれる。
同時に、引き付けをおこしたような、押し上げられたような吐息がもれている。
もう、その頃になるとその表情ははっきりと崩れていた。
顔のあちこちが震え、どこもかしこもが歪み、なによりも、瞳の端には今にもこぼれそうなほどに涙がたまっていた。
「……姉さん……ひっ……ふっ……ふぐぅぅっ……」
つられて泣いてしまいそうな気持ちも無いではなかったが、それは割合でいえば1割ほどで。
残りの9割はと言えば、可笑しみというか、可愛らしさというか……自分でバカをやってしまって泣いている子供を目にしたときに、つい寄り添って慰めてあげたくなるような……そういったムズ暖かい気持ちが、心のうちのほとんどを占めていたる。
ペパロニの頭に手を伸ばして、よしよしと頭をなでてやる。
本当は、いっそのこと抱きしめてやりたかったけど、子供じみた恥じらいが、それをさせてくれなかった。
「なんだなんだ、どうした、今の今まで平気そうな顔してたくせに」
笑ってやる。
そうするとペパロニはもう、もはや感情を少しも隠そうともせず、その瞳からぽろぽろと大粒の涙をこぼし始めるのだった。
ペパロニが喘ぎながらしがみついてくる。
何をするでもなく、うんうんと頷いてやる。
ペパロニの言葉は、その大粒の涙と同じように、もはや本人にはどうしようもなく、とめどなくあふれるらしかった。
「姉さんのマント姿、もう見れなくなるんだなって思った」
「そしたら急にすごくさびしくなって」
「そっか、もう、姉さんいないんだって」
「そんな事とっくにわかってたはずなのに」
鼻をすすりながら、なんどもヒィヒィと喉を鳴らし、喘ぎながら、言葉を咽び吐く。
そうかそうか、と頷きながらひたすらに受け止めてやる。
不思議と、悲しいよりも嬉しかった。
それは、いわゆる「嬉しい」というのとは少し違うような気がする。
今までにないくらい、心が、内側から温められるようにジンワリとしている。
けれど、それをなんと表現しようと思えば、やっぱり「嬉しい」というのが一番近いように思えた。
「姉さんがいなくなっちゃう」
「私どうやってドゥーチェになったらいいんだろう」
「私どうやって戦車道したらいいんだろう」
「姐さんはもういないのに私はどうしたらいいんだろうって」
「そうしたらもう、どうしようもなく寂しくなってきて」
「姉さん、姉さん、姉さん」
大丈夫だよ、心配ない、大丈夫だよ、と、何度その呟きを繰り返したろうか。
ペパロニはそのたびにぐずって、嫌だ嫌だとむせび泣き。けれど少しも困った気持ちにはさせられず。なんとも不思議な心持ちがする。
大丈夫だよ、という言葉がようやく届いたのかは分からないけれど、決壊したダムのようだったペパロニの涙の勢いも、時をおいて、だんだんとその勢いを弱め。
最後には、スプレー缶の残りかすのような吐息を、断続的に漏らすだけになった。
ひたすらにペパロニの頭をだいてやっている。
幸い車庫をのぞきにくる生徒もなく、ペパロニは、誰は恥じることなく気がすむまで思いっきり泣けたのだ。
ペパロニの呼吸がほとんど正常にもどって、そのタイミングを見計らうと、また笑ってやった。
「ほれみろペパロニ、リハーサルしといてよかっただろ?」
するとペパロニが、
「……んひっ」
っと、いまだ鼻水にしめった声で、弱弱しく笑った。
涙を拭いてやった後、ペパロニとは車庫の前で別れた。
卒業式は何事もなく終わって、カラオケも何事もなく終わった。
当たり前にしんみりして、当たり前に皆で騒いだ。
そんな当たり前の時間の中、ちょっぴりおかしなところもあって、
卒業式の間も、みんなでカラオケで騒いでいる時も、
心の中には、ずっとペパロニがいた。
彼女の大きな体が、一生懸命にすがりついてくるあの感覚が、ずっと身体のあちこちにのこっている。
肩に、頬に、胸に、背中に……これまでに感じたどんな暖かいものよりも心地よく、触れ合った後の感覚がのこっている。
それがなんなのだというと自分でもわからないのだけれど、何か、とても大切なものだと、そう感じている。
それが何なのかは、これからの人生で確かめてゆけばいいのだ。
ともあれ……今日はなんと素晴らしい一日だろう。
新しい事を知った。新しい出発だ。
そんなすがすがしい気持ちのまま今日は終わるのだろう。
かつてなく深い充足を心に抱き、、今日という日を終えるのだ。
と……私は、そう思っていたのだけどなぁ。
~戦車道壮行会・スピーチ終了直後
アンチョビ「……では諸君、私の挨拶は以上だ! 清聴感謝する!」
一同<『わーんドゥーチェー!!』
アンチョビ「……しかしながらまだ終わりではないぞ!、もう一つやることがある!」
一同<『アンコールっ!アンコールっ!(←?)』
アンチョビ「ドゥーチェペパロニよ! 私の隣にこ……ぐっ、う……」
一同<『……?』
アンチョビ(……わあっ、まずい! まずいまずい! すっごい泣きそお!)
アンチョビ(こうやってみんなの前でお話しするのも、一緒に集まるのも最後なんだって思ったら、すっごい悲しくなってきたぞおおおお!)
アンチョビ(だけど泣いちゃだめだ! 私はドゥーチェなんだ! みんなの見てる前で情けない姿を見せてたまるか!)
一同<ザワザワ……ドゥーチェ? ドシタノ? ザワザワ……
カルパッチョ<『みんなー静かにねー』
アンチョビ(い、いかん、変に思われる)
アンチョビ「……ごほん! 失礼諸君、なんでもない。えー改めて! ペパロニ! 私の隣に来ーい!」
ペパロニ<『ほーい』
<ザワザワ……ナンダァ? ザワザワ……
ペパロニ<『うーん、なんだろー、わっかんないな~』
アンチョビ(アホ! もうちょっと上手く演技しろ! ……ぐすっ、ううう、ああ、また来た、やばいやばい……)
ペパロニ「ドゥーチェ、きましたよ~……って、うわっ、姉さん?」
アンチョビ「……ううっ」
ペパロニ(ど、どーしたんすか? 目じりにめっちゃ涙たまってるじゃないっすか、目もちょっと赤いし……)
アンチョビ(しかたないだろっ……ていうか、お前は、なんでそんなに平気そうなんだっ)
ペパロニ(いやー。今朝、姉さんに思いっきり泣かせてもらったら、なんか吹っ切れちゃって、もうへっちゃらっす。えへへ)
アンチョビ(ずるいぞお前だけ!)
ペパロニ(ずるいって言われても……ていうか、泣きたいなら泣けばいいんすよ。みんなだって、その方が嬉しいし思い出にのこるっすよ)
アンチョビ(やだよ! 最後の最後に恥ずかしいもん)
ペパロニ(もー……変なところで恰好つけようとするんだから……こほん)
ペパロニ「……あのですね姉さん」
アンチョビ「なんだよ、ぐずっ」
ペパロニ「誰がどう思おうと、私にとって姉さんは世界一の姉さんっすよ」
アンチョビ「……だ、だからなんだ!」
ペパロニ「スゥ---おーいお前らー! よく聞けー!」
一同<『?』
アンチョビ「!? おいペパロニ!?」
ペパロニ「いいかお前ら! ドゥーチェアンチョビはなー! お前らと別れるのがつらくて本当はいっぱい泣きたいんだ! だけどお前らの前ではないちゃいけないって、必死に我慢してるんだ! だから私らは応援してやろーぜー!!」
アンチョビ「」
一同『ドゥーチェ……ドゥーチェ頑張レ! ドゥーチェ頑張レ----! 姉サーーーン!!!! ウワァァァァァンン!』
カルパッチョ<『みんなもっと大きい声でー』
一同『ガンバレエエエエエエエエ!!!』
アンチョビ「ば、ば、バカものおおおおー! お、お前ら止めろ! そん、そんなことされたら余計に……余計に……うわあああああああもうだめだああ! うわああああああああん! わあああああん!!! みんなああああああ!!!」
ペパロニ「姉さん、頑張れ~」
アンチョビ「ぺパロニのばかああああ! わあああああん!」
こんなに恥ずかしいことは、今までの人生で一度も無かった。
こんな屈辱は初めてだ。
人目もはばからず、私は大声をあげて子供のように泣いたのだ。
それもこれも……全部ペパロニのせいだ!
お前、責任、とりやがれよ!?
FINE
急に字の文章をぶっこんですみません。
どうしても他に他に表現のほうほうがず……。
スレを立て直したりなんだり(おまけにさらに間違えたり)、いろいろポンコツでほんと申し訳ない。
このSSまとめへのコメント
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