幼馴染「ほんとしょうがないんだから」(28)

チュンチュン

男「Zzz」

幼馴染「朝よー起きなさいったら」

男「Zzz」

幼馴染「遅刻するわよ?」

男「Zzz」

幼馴染(ほんとしょうがないんだから)

幼馴染「おきなさーいっ!」バサッ

男「はむっはふはふはふっ!」

幼馴染「アンタねえ、もっとゆっくり食べなさいよ。喉につまっても知らないわよ」

男「はむっ、だっておまえの作る飯、はふっ、うまいから」

幼馴染「あーもうっ。ほっぺたにご飯粒ついてるじゃない」ヒョイッ

男「す、すまん」

幼馴染(ほんとしょうがないんだから)

男「戸締りよーし。火の元よーし。忘れものなーし」

幼馴染「バカ。言ってるそばから忘れてるじゃない」

幼馴染「はい、お弁当」

男「サンキュ。いつもわるいな」

幼馴染「ちょっと。勘違いしないでよね。別にアンタのためじゃないんだから」

幼馴染「たまたま多く作りすぎただけよ。腐らせて生ゴミにするのももったいないし」

男「はいはい、いつもありがとな」

幼馴染「ふんっ、わかればいいのよ。わかれば」

キーンコーンカーンコーン

男「っしゃ、間に合った!」

幼馴染「待って。ネクタイ曲がってる」

男「いや、これはアレだ。ファッションだ」

幼馴染「アンタにファッションのなにがわかるのよ」

男「失礼な。俺はこれでも世界的に有名なファッショリニストになる予定の男だぞ?」

幼馴染「バカ言ってるんじゃないの。ほら、動かないで」

キュッ

男「…………」

幼馴染「はい、できたわよ」

男「なんか恥ずかしいな」

幼馴染「なんでよ?」

男「だってこういうのってなんか……」

男友「よーっすお二人さんっ」ドンッ

男「うわあっ!」

幼馴染「きゃあっ!」

男友「朝からお熱いねえ。どっからみても恋人同士にしかみえねーな」

男「誰と誰が?」

男友「本気か? おまえと幼馴染ちゃんに決まってるだろうが」

男「ないない。俺たちはそんなんじゃないって」

男友「またまた~」

男「ほんとだって。なぁ幼馴染?」

幼馴染「うん、男は手のかかる弟のようなもんだから」

男友「なるほど。いわゆる腐れ縁ってやつ?」

男・幼馴染「「そのとおりっ!」」ピタッ!

男友(息ぴったりだなー。ほんと仲いいよなこの二人)

男友(でもなぁ……なんか納得いかんなぁ)

キーンコーンカーンコーン

男友「やべ本鈴だ!」

幼馴染「…………」

幼馴染「ねぇ男。さっき言いかけたことって」

男「え?」

幼馴染「ほら、ネクタイを結びおわったあと……」

男友「おーい、急がないと遅れるぞー!」

男「すぐ行くー!」

男「で、ネクタイがどうしたんだ?」

幼馴染「なんでもないわよっ」プイッ

キーンコーンカーンコーン

男友「男ー昼飯食べようぜー」

男「おう」

下級生1「失礼します!」ガラララッ

下級生2「男先輩いますか?」

男友「きみたち一年? かわいいねー名前なんていうの?」

下級生1「きもいです」

下級生2「目障りです」

男友「」ザクザクッ

男友「きれいな花には棘があるってか。き、効いたぜ」ガクッ

男「なに? 俺が男だけど」

下級生1「今日の放課後予定空いてますか?」

下級生2「空いてますよね。というか命に代えても空けてください」

男「なんなの。全然話が見えてこないんだけど」

下級生1「放課後体育館裏で待ってますから。一人できてくださいね」

下級生2「逃げたらあることないこと言いふらしますから」

ガラララピシャッ

男「…………」ポカーン

男友「なんだありゃ」

男「俺に聞くなよ」

幼馴染「どうしたの? 疲れ切った顔してるけど」ガラララ

男友「聞いてくれよ幼馴染ちゃん。男のヤツ、放課後呼び出されたんだよ」

男友「俺はカツアゲだと予想してるんだけどな」

男「下級生の女の子にカツアゲされる俺って一体……」

幼馴染「えっ!?」ガタッ

幼馴染「女の子!? 相手は女の子なのっ!?」

男「お、おい。ちょっと落ち着けよ」

幼馴染「だって……」

男友「行くのか?」

男「行くしかないだろ。変なウワサ流されるのもいやだし」

男友「ふーん」

男「ついてくんなよ」

男友「やーだっ☆」

バキッ

男友「し、しどいよ。殴るなんて」

男「ぜったいについてくんなよ。ぜーったいだからな」

幼馴染「…………」

先生「えーこの英文の訳はー」

幼馴染「…………」ボーッ

幼馴染(女の子か。どんな女の子なんだろう。かわいい子なのかな)

幼馴染(男になんの用があるんだろう)

先生「……長……令を」

幼馴染(告白なのかな)

先生「あーゴホンッ!」

幼馴染「!」

先生「委員長、号令を」

幼馴染「あ、はいっ。起立、礼」

幼馴染(まさかね)

~そして放課後~

男友「あ、幼馴染ちゃん。男ならもう行ったよ」

幼馴染「そう」

男友「やっぱ不安?」

幼馴染「…………」

男友「呼び出した女の子に告白されるかもって考えてない?」

幼馴染「別に。アイツのことなんかどうでもいいし」

男友「よくいうよ。あれだけ好き好きオーラ出してんのに」

幼馴染「帰る!」プイッ

男友「待ってよ。よかったらいっしょに見に行かない?」

幼馴染「はあっ!?」

男友「だいじょうぶだって。バレなきゃ問題ナッシング!」

幼馴染「そういう問題じゃないでしょ」

幼馴染「男友くんはなにがしたいの? わたしを男とくっつけたいの?」

男友「ビンゴっ!」

幼馴染「余計なお世話っ。アイツのことなんてなんとも思ってないんだから」

幼馴染「手のかかる弟。それだけよ」

男友「でも興味はあるんでしょ?」

幼馴染「…………」

男友「俺は先に行ってるから。気が向いたら来なよ」スタスタスタ

幼馴染「なによ……」ボソッ

幼馴染(ムカつく。わかったようなこと言って。勝手に決めつけて)

幼馴染(興味なんてないわよ)

幼馴染(男が誰と付き合おうがわたしには関係ない)

幼馴染(関係ないんだから)

男「…………」

男「遅い。1時間も待ってるのに」

男「人を呼び出しといてなにやってんだか」

ガサッ

幼馴染「もうちょっとしゃがんでよ。よく見えないじゃない」

男友「幼馴染ちゃんノリノリだね」

幼馴染「勘違いしないでよ。わたしは男友くんが男の邪魔をしないように監視してるだけなんだから」

男友「はいはい、そういうことにしておくかー」

幼馴染「あっ、向こうから誰か来るみたい!」

男友(ほんとノリノリだなー)

下級生1・2「……」スタスタ

男友「おっ、どうやらこの前の下級生コンビみたいだな」

幼馴染「な、なによあの二人いまさら!!散々男のこと待たせといて……」

男友「落ち着けって。騒ぐとみつかっちまうぞ」

幼馴染「わかってるわよ……」



下級生1・2「あの、これ受け取ってください」

男「えっ……?」



男友「おっ、何か渡したみたいだぞ」

幼馴染「あー!こっからじゃよく見えないわ。一体何渡したのよ!?」

下級生1・2「すみません、なんか突然……」

男「いや、いいよ。なんだか知らんけど、ありがとな」


男友「どうやらまんざらでもないっぽそうだな」

幼馴染「もう!気になるわね!望遠鏡どっかに落ちてない?」

男友「さすがに落ちてないと思うよ……」

下級生1・2「それじゃっ……」タタッ


男友「あれ!?帰っちまうのか!? ……あっ、行っちゃった」

幼馴染「何よ……。結局何か渡しただけじゃない。やっぱり大した用じゃなかったみたいね」

幼馴染「よし!何貰ったか問い詰めに行くわよ!」ダッ

男友「お、おい。よせよ!」

幼馴染「なんでよ。いいじゃない、あの子たちはもう帰ったんだし」

男友「バカ。ほんとに大した用じゃなかったっと思ってんのか?」

幼馴染「だって何か渡してすぐ帰っちゃったじゃない」

男友「俺の勘だけど……たぶんあれはラブレターだな」

幼馴染「なっ……!!ラブ……!?」

男友「ああ。渡してすぐに立ち去ったのも、一時間遅れてきたのも、恥ずかしかったんだと考えれば納得できる」

幼馴染「ば、バッカじゃないの!?だってあの男よ!?あのあほんだらがラブレターなんて……」

男友「意外にああいうタイプも人気あるのかもしれないぜ?」

幼馴染「で、でも!やっぱりそんなことありえないわ!きっとあれは果たし状よ!」

男友「果たし状をありがとうって言って受け取る奴いないと思うよ……」

男友「まあ、ラブレターと決まったわけじゃないけど、そういう可能性もあるってこと」

幼馴染「……私帰るっ」プイッ

男友「って幼馴染ちゃん!?」

幼馴染「別に男が何貰ってようと、私には関係ないもん。あーあ。時間ムダにしちゃった。じゃーねっ」タタッ

男友「あ、おい!」

・・・・・・

翌朝

幼馴染「……」モグモグ

男「いやに今日は静かだな。何かあったのか?」

幼馴染「何でもないわよ」

男「ふうん。ならいいけど」

幼馴染「……あんたこそ、昨日は何かあったんじゃないの」

男「ああ。昨日のアレのことか。別に、大したことじゃないよ」

幼馴染「……だよねー。だと思ったわ。やっぱり大した用じゃなかったのね。期待してたでしょうに残念ねー」

男「なんだ幼馴染?もしかして妬いてんのか?」ニヤニヤ

幼馴染「ばっ……バッカじゃないの!?アンタが女の子に呼び出されようが私には関係ないわ」

幼馴染「別にあんたが何貰ったかなんて興味ないんだから」

男「お前……まさか昨日、見てたのか」

幼馴染「はっ……!ななな何言ってるのよぅ!?そんなわけないでしょ」

男「動揺しすぎだ。はぁ、待ってる間なんか声が聞こえてくるなと思ったらやっぱりそうだったのか」

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