吹雪と那智と親潮と雷が出てくる (37)
何も考えずに書きはじめたSSです
内容は何も考えていないものとなっています
ご了承ください
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1468458396
吹雪「那智さんって、私のことをあまり好きじゃないのかもしれません。どうすればよいんでしょうか」
親潮「なんで私に聞くんですか…」
突然妙なことを言い出した吹雪に、親潮は困った顔になる。
親潮がここにやってきたのは3日前なのだ。
吹雪「誰に聞いてもそう思うんなら本人に聞いてみればって言うんです」
親潮「それならそうすればよいと思いますが」
吹雪「でも恥ずかしいし…」
親潮「着任3日目の私に相談するのは恥ずかしくないんですか。正直あまりお二人のこと知らないのですが」
吹雪「もう親潮ちゃんしかいないんです!」
親潮「必死ですね…」
親潮はとても困った顔になった。
仕方ないので親潮は那智に実際に聞きに行くことにした。本人が恥ずかしいなら自分が代わりにやればいいのだ。万事そうだ。
親潮「那智さん! お時間よろしいでしょうか」
那智「どうした親潮。深海棲艦の殺し方を聞きたいのか」
親潮「違います」
那智「そうか。では用件がわからないな」
那智も結構アレだなと親潮は思った。
親潮「実は吹雪さんが那智さんに嫌われているのでは、と心配しているんです」
那智「なぜ」
親潮「さあ…那智さんに心当たりはないんですか」
那智「無い」
力強い断言だ。力強すぎて逆に不安になる。少なくとも吹雪は不安がっているのだ。
親潮「いつも吹雪さんとどんな話をしていますか?」
那智「深海棲艦の殺し方だな」
親潮「…他には」
那智「無い」
力強い断言だ。力強すぎて本当に不安になる。
那智「吹雪はよく私に深海棲艦の殺し方を聞きにくるんだ」
親潮「本当ですか」
那智「ああ。聞き終わった後にものすごく疲れた顔になる。恐ろしく真剣に聞いているようだな」
親潮「これはだめそうですね」
親潮「というわけでだめそうなのであの人はやめたほうがいいですよ」
吹雪「なんで勝手に言っちゃうのーーーーーー!!!」
親潮「だからやめたほうがいいですってば」
吹雪「や、やめるとかそういう問題じゃなくて…」
親潮「やめましょう」
吹雪「やめないから!!」
親潮「えー」
吹雪はあの人のどこがいいんだろうか。
親潮「私にしておくのはいかがでしょうか」
吹雪「えっ!? 親潮ちゃん、私のこと…?」
親潮「いえ別に」
吹雪「ちょっと!?」
親潮「たとえばですよ、たとえば」
吹雪「親潮ちゃんがわからなくなってきた」
親潮「相談相手を間違えましたね」
吹雪「自分から言うんだ」
親潮「さてそれじゃあこれからどうしましょうか」
吹雪「そ、それを私は相談していたはず」
親潮「ここはひとつ告白とかしましょう」
吹雪「どういう流れでそうなったの!」
親潮「だってそうしないと話が進まないんですよ。もう思いつきだから話を考えるのめんどくさくなっちゃって」
吹雪「手抜きしたい気持ちをキャラにしゃべらせるのやめようよ」
親潮「吹雪さんがしないなら私がします」
吹雪「おかしいよ!」
親潮「好きです吹雪さん」
吹雪「うそつき!」
「というわけで私が吹雪に呼び出されたわけだが。いや、どういうわけかは知らないのだが。画期的な深海棲艦の殺し方を思いついたのだろうか」
そこへやってきたの吹雪。かちこちになって、右手と右足が同時に前に出ている。
「な、那智しゃん!」
「那智シャン? 私はシャンプーにはこだわらないほうだ」
「えっ、そんなに長くてきれいな髪なのに…って噛んだだけです、話を広げるのやめましょう!」
「そうか。ところで私が吹雪を嫌っているのでは、と思っているそうだが」
「うっ、それはその、実際そんなことはないと思っているのですが、実際どうなのかはわからないので、実際どうすればいいのでしょう」
「実際そんなことはないぞ」
「実際ですか! じゃなくて本当ですか!」
「本当だ」
あ、名前を入れ忘れました
いれずに書いてたので今いれています
那智「というわけで私が吹雪に呼び出されたわけだが。いや、どういうわけかは知らないのだが。画期的な深海棲艦の殺し方を思いついたのだろうか」
そこへやってきた吹雪。かちこちになって、右手と右足が同時に前に出ている。
吹雪「な、那智しゃん!」
那智「那智シャン? 私はシャンプーにはこだわらないほうだ」
吹雪「えっ、そんなに長くてきれいな髪なのに…って噛んだだけです、話を広げるのやめましょう!」
那智「そうか。ところで私が吹雪を嫌っているのでは、と思っているそうだが」
吹雪「うっ、それはその、実際そんなことはないと思っているのですが、実際どうなのかはわからないので、実際どうすればいいのでしょう」
那智「実際そんなことはないぞ」
吹雪「実際ですか! じゃなくて本当ですか!」
那智「本当だ」
吹雪「じゃあその、深海棲艦とのちょっと凄惨な戦闘法を毎回お話してくれたのは、遠まわしな私に対する殺害衝動の表明というわけではなかったんですね」
那智「そう思われていたのがショックだ」
吹雪「ご、ごめんなさい」
那智「話題が思いつかなかっただけだったんだ。私のほうこそ悪かった」
こうして誤解は解け、二人は笑いあう。そして、ふと那智が疑問顔になった。
那智「ところで、深海棲艦の殺し方を聞きにきたのでなければ、過去の訪問は何の用だったんだ。そして今回の用件は」
吹雪「えっ、その、えっと」
那智「やはり深海棲艦の殺し方を聞きたかったのか」
吹雪「いえ、それもまあ、何と言いますか、興味深くはありましたけど…」
親潮「吹雪さんはですね、那智さんのことが好きなんですよ」
那智「なるほど、そうだったのか」
吹雪「ちゃーーーーーっ!!?!??!(ちょっと親潮ちゃんせっかくいい雰囲気だったのに、どこから出てきたの、何また勝手に言ってるの、そしてなるほどって那智さんどうなんですか私のこと!?)」
親潮「私はずっとそこの曲がり角で待機してました。そろそろ話を終わらせたくなったので代わりに言ってあげたのです」」
那智「私も吹雪のことは好きだぞ」
吹雪「なにゃーーーーーーーーーーっ!???!?!?(なんで二人とも言葉にならなかったスキって私の気持ちを完全に汲み取ってスキって返答できてるの那智さんがスキって好きってスキスキスキ)」
完全に処理能力を超過して吹雪は倒れた。
親潮「あっ、吹雪さんが倒れてしまいました」
那智「そうだな、倒れている」
二人はしごく冷静に吹雪の身体を二人で抱えて、医務室へと運んだ。
今日の医務室当番は雷である。
雷「えっ、なになに!? ちょっと、吹雪はどうしたわけ?」
雷が出てきたところで中断します
最後までいきます
今思えばここから雲行きがおかしくなりました
艦娘は変なキャラも多いが、こう見えてみんな建造後すぐに秘書を勤めることができるほどのインテリだ。
ちゃんと学べばお医者さんとして働ける。雷もそんな一人だった。
親潮「会話中に突然倒れました」
雷「なんですって!? 重大な疾患の可能性があるわ! すぐに精密検査の準備をするわね!」
那智「そうしてほしい」
ツッコミがいなかったので、吹雪は精密検査にかけられた。当然どこも異常はなく、むしろとても健康。倒れた理由が雷にはわからない。
数値に出ない、見えない疲労やストレスだろうか。
雷「吹雪は艦娘を引退したほうがいいかもしれないわ…」
親潮「そんなに悪いんですか」
那智「心配だな」
繰り返すがツッコミがいない。
雷「悪いのかどうかは、まだわからないけれど…。艦娘が突然倒れるなんて、並大抵のことじゃないわ。この状態で前線に出すのは危険よ」
親潮「…そうですね、戦闘中に同じ症状が出たりしたら」
那智「ああ。わがままかもしれないが、吹雪には生きてほしい」
ツッコミ不在のまま話が進む。雷は二人に状況を聞いた後、検査結果とまとめて報告書を作成し提督に提出。吹雪が目覚める前に全ては完了する。
艦娘は生まれた時から優秀な上、錬度の上昇速度からわかるように、学習能力も高い。結果として恐ろしく仕事が速くなる。
雷の全ての作業が終わったころ、吹雪がベッドの中で動いた。
吹雪「うーん」
雷「あっ、吹雪が目覚めたわ!」
吹雪「い、雷ちゃん? ここはどこですか」
雷「医務室よ。吹雪は親潮と那智さんとの会話中に、突然倒れて運ばれてきたの」
吹雪「親潮ちゃん……? 那智さん……あっ!」
突然吹雪が頭をかかえてうずくまった。雷はものすごく慌てる。
雷「ふ、吹雪! 大丈夫!? 頭が痛むの!?」
吹雪「あ、その、親潮ちゃんと那智さんは今どこに?」
雷「吹雪にしばらく付き添っていたけど、私が吹雪を見ているからって言って、ひとまず帰ってもらったわ」
吹雪「そ、そうですか」
雷「大丈夫? 吹雪。突然倒れたって聞いたけど…何か原因に心当たりはある?」
吹雪「え、それはー、あのー」
雷「どうしたの、吹雪。顔が赤いわ」
みるみるうちに落ち着きをなくす吹雪を見て、雷はやはり心因性のものではないかという疑いを強くする。
そんな風に思われているとは知らずに、吹雪はしどろもどろになるばかりだ。
雷「吹雪、私にできることがあれば、何でも言って。…恥ずかしいことじゃないわ」
吹雪「は、恥ずかしいこと!?」
吹雪はそこだけ聞いて、二人から雷が全てを聞いたものと思い込んだ。ますます顔が赤くなる。
一方、雷は詳細な会話内容までは聞いていなかった。結果として、吹雪が戦いのストレスを感じているものと考えている。艦娘のストレスといえばやはり、戦闘なのだ。
艦娘の心身医学、精神医学はまだまだ研究が進んでいない分野。少なくはない艦娘が自分でも気づかないストレスが原因で大怪我をして、後遺症を残した結果引退するのを見てきた。当然、そのまま死んでしまうことだって、ある。
こういった症状はどんな艦娘にも突発的に起こりうる、というのが雷の現状の結論だ。近いうちに論文として発表し、艦娘の心理的ストレス軽減策を実現しようと思っていた。
雷「そうよ。恥ずかしいことじゃないわ」
吹雪「いえ、その。やっぱり私は(那智さんに普通の調子で好きって言われたり、親潮ちゃんにぶっちゃけられるのは)恥ずかしくて…」
雷「…誰でもそうなることからは逃れられないの」
吹雪「ええー…。私は(二人が)特殊だったんだと思ったのですけど」
雷「そんなことない!」
雷は吹雪の手をぎゅっと両手で握る。
雷「吹雪、誰でもいつかは戦い続ければおかしくなるのよ。それが早いか遅いかだけで…」
吹雪「な、なにかひどいことを(那智さんや親潮ちゃんに)言ってる気が」
雷「…そう聞こえたらごめんなさい。でも本当のことなの。何人も同じような艦娘を見てきたわ」
吹雪「…それは、大変ですね」
親潮や那智のような艦娘を相手にするのは大変だろう。
それでも吹雪にとっては大切な仲間だ。那智は特に。親潮も…うん。
雷「そう。だから、ゆっくりと治療をしていくことが大切なのよ」
吹雪「治療!?」
雷「ええ。提督にはもう報告してあるわ」
吹雪「そ、そこまでしなくても!」
雷「こういうのは早いほうがいいのよ」
吹雪「あの、早いとかそういうことじゃなくて」
雷「大丈夫、保険は適用されるわ」
吹雪「えええ、本当ですかっ…」
まさかあの二人が本当に病気だったなんて。保険まで適用されるなら仕方ない。
納得した吹雪を見て、雷はほっとした。
雷「明日からでも、長期の療養を取ることができるわ。吹雪のほうは、どう?」
吹雪「えっと…」
保険が適用されるほどの症状なら、(二人とも)すぐに療養したほうがいいのではないかと思う。
吹雪「私もそれがいいと思います」
翌日。艦娘用の搬送車に吹雪が乗せられた。
親潮「ゆっくり休んでくださいね、吹雪さん」
那智「恥じることも、心配をする必要もない。戦争は私達に任せておけ」
吹雪「なんでですかー! 私は正常です! 離して、離してください!」
雷「ああ吹雪、さっきまでは落ち着いていたのに、急に…」
吹雪「那智さん、親潮ちゃん、助けて! …やめて! そんな顔をしないで! そういう目を向けないでー!」
雷「吹雪…! 私が傍にいるから、安心して、ね?」
吹雪「雷ちゃんも潤んだ瞳で優しくしないでー! おかしい、おかしいですよ!! うわーん!!」
どうしてこんなことに。わからない。何もわからない。作者にもわからない。
ただ確かなのは…。
吹雪「私は正常ですっ!」
雷「そうよ、何もおかしくなんかないわ。だからゆっくり休んで…」
吹雪「じゃなくて!」
なぜかふぶなちが、ふぶいかになってしまったことだ。
吹雪「なってませんからぁ!」
雷「吹雪? 誰と話して……あっ…」
吹雪「ちがっ」
おわり
以上です
何も考えずに書き始めて何も考えずに書き終わりました
ところで最後にトリップをつけわすれてたと思ってつけたら間違えました
すいませんでした
こっそりと続編がスタートします
なぜスレをおとさなかったかというと続編を考えていたからなのです
なぜこっそりかというと 理由は想像におまかせします
ここからはシリアスになりますがちゃんと考えていないのでならないかもしれません
第二話「叢雲が出てくる」
吹雪「はあ」
吹雪は艦娘用の病棟にいた。なぜ。どうしてこんなことに。答えは出ない。
吹雪「私は病気じゃないのに……」
たまたま会話中に気絶したら、何がどうなったのか吹雪は戦闘による強いストレスによる病状の可能性を疑われ、実際にパニックを起こしてしまったことでその疑いが決定的になった。
吹雪「病院って退屈だなー。疲れてるわけじゃないのに休んでると、逆に疲れる気がする」
吹雪「なにか飲もっと。フリードリンクコーナーはこっちだったかな」
雷「あら、吹雪。どこへ行くの?」
吹雪「わっ、雷ちゃん」
吹雪はいつもの制服、雷は制服の上に白衣を着ている。
雷「何か用事があったの?」
吹雪「ちょっと飲み物がほしくなったんです」
雷「そうだったのね。私も一緒に行こうかな」
吹雪「はい、そうしましょうか」
雷「吹雪は飲み物は何が好きなの?」
吹雪「あー、たまにはお酒が飲みたいですねー」
雷「さすがに病院では難しいかな……」
雷は少し困ったように笑う。
吹雪「ですよねー。そうだ、私を退院させてください。一緒におさけを飲みましょう。私がお金を出しますから」
雷「吹雪……その、気持ちはわかるのだけど」
吹雪「そ、そんな顔しないでくださいよ、言ってみただけですから!」
雷「ふがいない主治医でごめんね。私、がんばるから」
吹雪「あ、あははは、よろしくお願いします……」
吹雪(雷ちゃんが一時的に転属までして、主治医になってくれるなんて……なんだかすごく申し訳ない)
雷(吹雪が落ち込んだ顔をしてる。私ががんばらなきゃ!)
二人のすれ違いは会うたびに深刻化している事実を、彼女たちが知ることはない。
吹雪「それにしても、病院なのにみんな制服なんですね。私もですけど」
雷「いろいろ試したのだけど、やっぱり艦娘は制服が一番落ち着くのよね。吹雪もそうでしょう?」
吹雪「はい、なんだか守られている感じがします」
雷(普段は意識されないけど、艦娘は人間とは違う存在。その心の形も違う。
それ故に、艦娘はみんな人間よりも精神を病みづらい、と言われてはいる。でも、今のように一日に何度も同じ艦娘が出撃する状況では、ストレスも膨大なものになる……)
どんなに雷たち艦娘医が手を尽くしたとしても、戦況自体はどうすることもできない。
落ち着くまでやり過ごすしかない。
雷「ねえ、吹雪…あら?」
雷が少し考え込んでいる間に、吹雪の姿が隣にない。後ろを見ると、吹雪が立ち止まって横を見ている。曲がり角の廊下の奥を見ている。何を見ているのかはわからないが、吹雪の顔は驚きに染まっていた。
吹雪「あれ……まさか」
雷「吹雪? ……吹雪!」
雷の声も聞こえないように、吹雪が走り出した。
吹雪「叢雲! 叢雲でしょう!」
吹雪はひとりの艦娘に向かって走り出した。
その声に、艦娘が体をびくりと硬直させてゆっくりと振り向く。間違いない。
吹雪「やっぱり叢雲だった。久しぶり……」
叢雲「あ、あ……吹雪姉さま……」
吹雪「む、叢雲……?」
吹雪の目の前で、叢雲がぶるぶると震え始める。視線があちこちに泳いで、ひどく落ち着かない。
叢雲「ご……ごめんなさい、ごめんなさい、私……」
吹雪「ど、どうしたの叢雲、何が」
そこまで言って吹雪は止まった。
何かあったに決まっている。だってここは……ここにいる艦娘は……。
叢雲「あ、や……ごめんなさい!」
吹雪「あ、むら……」
叢雲は走り去り、吹雪の伸ばした手は弱々しく宙をかく。
手を伸ばしたまま、吹雪は立ちすくむ。自分がしてしまったことの重さにつぶされそうになる。
雷「吹雪」
吹雪「い、いかず……ちゃ……わたし……」
雷「いいのよ。大丈夫」
雷はやさしく微笑み、吹雪を抱き寄せた。
雷「吹雪のせいじゃない」
吹雪「いか、ず……」
吹雪は泣きたかった。
それでも、叢雲が苦しんでいる間は泣けないと思い、耐えた。
ドリンクコーナーで雷と吹雪は並んで座っている。手にしているのは、雷は緑茶、吹雪は水。
両手でコップをつかんだまま、吹雪が言う。
吹雪「叢雲は……何があったんですか。教えてください」
雷「……知るほうが辛いかもしれないわ。知ったからといって、何かができるとは限らないの」
吹雪「私は、妹の苦しみから逃げはしません。絶対に」
吹雪の声にこもる静かな覚悟。
雷は少しだけ悲しげに眉をひそめる。まっすぐに前を見つめる吹雪は、それに気づかない。
雷「彼女は、戦闘中に硬直症状が起きた。砲撃戦の途中で、海の上で棒立ちになってしまったの」
吹雪「そこを、深海棲艦に?」
雷「……違うの」
雷は緑茶を一息に飲み干した。そして、感情をこめずに記憶していた報告書の概要を読み上げる。
雷「その場にいた隊の全員が叢雲を援護しつつ撤退を開始。結果、叢雲は無傷で帰還。彼女以外の全員は轟沈。その一部始終を彼女は目撃していたと思われる」
吹雪「…………」
雷「……沈んだ艦娘の中には、彼女と同室の駆逐艦娘もいた」
叢雲は、自分の病室のベッドに膝をかかえて座っている。
毛布をかぶったその体はまだ、震えていた。
つづく
その夜。
吹雪「…………」
吹雪は自分の部屋で、雷から受け取った叢雲が最後に参加した戦闘の調査報告書を読んでいる。
吹雪(この戦闘が行われたのは、8ヶ月前)
吹雪(……叢雲は、この作戦以前から同じ症状を発症して、警告を受けていた)
吹雪(はじめての症状は、この作戦の3ヶ月前の演習中に発症。その後、訓練中に2度、演習中に3度の硬直症状)
吹雪(ただ、この3ヶ月間に参加した11回の戦闘では症状の兆候は現れず。それを理由として本人の希望で精密検査を拒否。その判断を提督も支持)
吹雪(この時、叢雲が所属していた鎮守府では、深海棲艦の支配海域に対する、大規模な侵攻作戦が行われていた……)
吹雪(一人でも多くの艦娘を必要とする状況だった。それはわかる)
吹雪(でも、その結果は)
吹雪(一度に叢雲を含め、6人の艦娘を喪失。結果、戦力が不足しそのまま作戦は失敗。提督は自ら辞任、降格処分を受けた)
「……知るほうが辛いかもしれないわ。知ったからといって、何かができるとは限らないの」
その通りかもしれない。吹雪はそこで読むのをやめて、書類を脇のテーブルに置いた。
叢雲の治療はその糸口さえ見つかっていないという。
雷がこの8ヶ月で、叢雲は22回の自殺未遂を起こした。当然、その全ては未然に防がれて……でも、間隔は徐々に短くなっている。
叢雲は心身ともに衰弱しつつある。自殺が成功しなくても、そのまま死んでしまう可能性は高い。
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