図書少女「――“小説は劇薬ですよ、魂の病人のサイミン薬です”」(3)

不意に立ちあがったと思えば、妙な節を付けて読み始める
図書室にいた数人の生徒がこちらに注目するのを感じつつ

男「……なんだそれ」

振り返ってみると、やはりというか、なんというか

図書少女「坂口安吾ですよ、今日の現国で習いましたよね?」

男「そうではなく、こう、なんだ」

いたずらっぽい目元、得意げに細められた目、肩までの飾り気のない黒髪

図書少女「どうぞ」

男「いきなり、なんなんだ」

指定のブレザーを羽織り、芝居がかったポーズを決めてこちらを見ている少女

図書少女「今日も、君に構って貰いに来たんです」

オレンジ色のカーテンを遮るその少女は

図書少女「さびしがりや、ですから」

立て逃げです
終わり

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