学者「ひとと」魔女「けもののひと」 (33)



※このお話は以下のものと繋がっています。


男「キミの抜け殻を食べたい」蛇少女「えっ」

蜘蛛幼女「きすしてあげよっかー?」男「いらん」

魔女「できたわ! ゴーレム娘よ!」

魔女「できたわ! ゾンビ娘よ!」

密猟者「おーい! そこのお嬢さん!」三首犬娘「ん?」

狼少女「…………食べちゃいたい……」





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蜘蛛女「…………ぅ」

蜘蛛女「こ、コ……は」


ギッ ミシッ

蜘蛛女(……鎖で、縛られてる。……けど、こんなものっ)


ミシミシッ


「無駄ですよ」

蜘蛛女「! 誰……?」

学者「……私は、あなた方を研究する者です」

蜘蛛女「お前……私をどうする気?」

学者「どうもしませんよ。ただ、治療中や、ケガが治るまでは、暴れられると困るので拘束させていただいたまで」

蜘蛛女「治療……」

学者「脚を何本か、それと……片腕。ヒトにやられたのですか? それとも、けものがみ同士の争いで」

蜘蛛女「我々は争わない、ニンゲンとは違うわ」

学者「……そうですか。では、水と食事を置いておきます。……なにかあれば呼んでください」

蜘蛛女「…………」





………


学者「どうですか、調子は」

蜘蛛女「……」

学者「……食べていない、みたいですね。……困りますよ、いくら治療を施しても、栄養を摂取しなければ回復しない」

蜘蛛女「……栄養と言うなら、ニンゲンを喰うのが一番早いわ」

学者「……」


ザシュッ

蜘蛛女「!? なにをっ」

学者「っ……私の、血です。……死ぬわけにはいかない、けれど……分け与えられるものはある」

ドク……ドク

蜘蛛女「…………なぜ。私は、たくさんのニンゲンを喰らってきた」

学者「でしょうね」

蜘蛛女「ならっ」

学者「だからこそ…………あなたには、生きてもらいたい」

蜘蛛女「なに……」

学者「私はね、…………けもののひとと、人間が、共存できる世界を目指しているんです」

蜘蛛女「はっ……馬鹿じゃないの。ニンゲン同士ですら争い続けているというのに!! どうしてこんなにも違う私達が共存できるというの!? 見なさい!!」


ミシミシッ ギギッ

蜘蛛女「この、背中から長く伸びた、何本もの脚を。下半身の、太い尾を。……そして」


シュルッ

学者「ぐっ……!」

蜘蛛女「この、強靭な糸を。…………こうして縛られていてなお、私はお前を絞め殺すことができる。……こんな不気味で…………恐ろしい存在と、どうやって」

学者「ぅ…………っ、わた、しをころ、しては……くさりを、とく、ものがいない」




パッ

学者「がはっ……はぁ、はぁ……」

蜘蛛女「…………こうして、けものびとを縛り、奴隷のように飼うことが共存とでも?」

学者「……いいえ。それは違います」

蜘蛛女「……」

学者「確かに……人間とけもののひと、その力の差は大きい。…………けれど、容姿や力の差がなんだと言うのか」

蜘蛛女「違いがあるということは、同じには扱えないということよ」

学者「そんなことはない……違いがあるということは、互いに補いあって生きていけるというこ」

ギシィッ

蜘蛛女「黙れ!!!! それはニンゲンが、我々を都合よく利用したいだけだ!!!」

学者「……けもののひとは、その気になれば、人間の姿でいることも可能なはず」

蜘蛛女「……それが、なに?」

学者「しかしあなたはそうしていない。そしてヒトを嫌い、ヒトを喰ってきた。…………だからこそ」


学者「そんなあなたと、共存できれば……きっと、ニンゲンと、けもののひとが……姿をあかし共存する未来も……」

蜘蛛女「…………くだらない。……本当に、そんなくだらないことに、私を巻き込むなんて」

学者「……私の血を、飲めば……少しは治りも早くなる。…………まずは傷を癒してください」






蜘蛛女「傷を……癒す?」

蜘蛛女「ふっ……あはは」

蜘蛛女「ははっ、ははははははは! 傷なんて」

蜘蛛女「…………二度と、治るわけ…………ないじゃない」








………


蜘蛛女「……」

学者「……血は飲んでくれたようですね。……食事は、口に合いませんか」

蜘蛛女「……いらないわ」

学者「……?」

蜘蛛女「私は、お前と仲良くなる気なんてない。時間の無駄。殺すなら、早く殺して。私はニンゲンの敵よ」

学者「…………私は、あなたの味方です」

蜘蛛女「うるさいっ……私をこれ以上苛立たせるなっ……!」

学者「……次は、肉料理でなく、魚料理にしましょうか」





………


蜘蛛女(…………縛られているのは、蜘蛛の脚や、尾だけ)

蜘蛛女(……それをしまえば簡単に抜け出せる。けど)


蜘蛛女(それは、ニンゲンの姿になるということ…………)



蜘蛛女「ぅ、く…………はっ、はぁ」

蜘蛛女「ずっと、この姿だったせい……? きつ……っあ」

蜘蛛女「はっ、ぐ……! …………やっと、しまえた」




………


タタタッ

蜘蛛女「はぁっ、はぁ」


蜘蛛女(町を出て、森に入ればっ)


ガクッ

蜘蛛女「あっ!」

ドサッ

蜘蛛女「いっ……たぃ…………ヒトの足で走るの、久々で……感覚が」



ごろつき1「……! おい、誰か倒れてるぞ」

ごろつき2「あん? 女じゃねぇか。なんだ布きれ一枚だぞ」

ごろつき3「誘ってんのかぁ? なぁ! お嬢さんよぉ」

蜘蛛女「っ……!」


サスッ

ごろつき1「きれーな足じゃん。なんで裸足なわけ?」

蜘蛛女「ひっ……さわらないでっ!」

ごろつき2「それ言うなら、まずなんで裸なのかでしょ。ほら」

モミュッ

蜘蛛女「いっ!? いやっ、やめて!!」

ごろつき3「ははは、ほんとどーしたの。なんかあったの? 俺らが匿ってやるよ。悪いようにはしないって、なぁ」

グイッ

蜘蛛女「ぐ、ぅ……!」




蜘蛛女(こんなやつら……!)

ググッ

蜘蛛女(……!? だ、め……脚、……糸も……出せない……)

ごろつき2「おっぱいでけー。ほら触ってみ」

ごろつき1「まずどっか運ぼうぜ。ここじゃまずいだろ」

蜘蛛女(……これも、ずっと化物の姿でいたせい……? ちゃんと、ヒトと生きて、姿を変える練習をしなかったから…………?)

ごろつき3「よいっしょ。おらいくぞ!」

蜘蛛女(私……こんなやつらに…………やだ……やだよ……)


蜘蛛女「たす、けて……」



ザシュッ!

ごろつき1「ぐげぇっ!?」

ドサッ

蜘蛛女「!?」

ごろつき2「なんっ……ぐがっ」

ごろつき3「てめっうぼぁ」


ドサドサッ




蜘蛛女「今……なにが」

学者「無事ですか?」

蜘蛛女「っ!? お、お前、……お前が?」

学者「…………無茶をしましたね。嫌いな、人間の姿になってまで」

蜘蛛女「っ……」

学者「……確かに、あなたの言う通り、こうして人間にはクズも多い。ヒトがヒトを襲い、争い、傷つける」

蜘蛛女「……あなたも、ヒトが嫌いなの?」

学者「……嫌いな面もあります。……けれど自分が人間であるという事実は変わらない。だから…………人間の方を変えたい」

蜘蛛女「それって、……」

学者「力を、貸していただけませんか。……人間を、この世界を変えるために」

蜘蛛女「…………ヒトを裏切る気?」

学者「あなた方と共存する、未来のためならば」

蜘蛛女「……くだらない。…………馬鹿々々しすぎるわ………………」

学者「戻って、傷が治るまでは安静に。……今度は、拘束しませんから」

蜘蛛女「…………」





………


魔女「あの娘は?」

学者「随分、おとなしくなりました。血も飲んで、食事も」

魔女「戦力になりそう?」


魔女「ニンゲンに戦を仕掛けるための、戦力に」

学者「……どうでしょう。そのままでは難しいかもしれません」

魔女「……ヒトと私たちが共存する世界を創るために……一度、全て壊さなければならない。……そのためなら、あの娘に術をかけてもいいわ」

学者「意志を縛り、操り人形にしてもいい、と? 確かに今の状態なら、治療のためと言って契約の儀式を行うことも可能でしょうけれど……」

魔女「……いざってとき、使えない可能性があるよりは、従順になってもらったほうがいい」

学者「分かりました……では、そちらも、そちらの準備を」

魔女「えぇ、ぬかりなく」





魔女「……あなたは、どうするの?」


蛇少女「……」

魔女「一緒に、新しい世界を創らない?」

蛇少女「…………私は、一緒には行けない」

魔女「ならせめて、彼の治療を受けていきなさいな。……その大火傷で、よく追手から逃げのびれたものだけど、そのままじゃ」

蛇少女「逃げのびたわけじゃない」

魔女「……?」

蛇少女「とにかく、治療はいらない。自分で脱皮して治すから」

魔女「脱いだ皮は、燃やそうと、匂いが残って痕跡になる」

蛇少女「…………ニンゲンに食べてもらう」

魔女「ニンゲンに……? 確かに、ヒトの体内に入れてしまえば、幻子は体に貯蔵され、痕跡は残らないけれど……そんなことをするニンゲンが……」

蛇少女「……さよなら」


蛇少女「本当に、ヒトと共存できる世界を創れるのなら」

蛇少女「その新世界で、また会いましょ」


魔女「……そうね。また」




………



ゾンビ娘「あああ……ああああ」

キョンシー娘「……」


魔女「二人とも、ご苦労様。……充分増やしてくれたみたいね」



ゾンビたち「あああ……「……ああ「あああああ……あああ……ああ」あああ」……ああ……」

魔女「これだけの数がいれば、町一つは一晩で制圧できるでしょうね」

ゾンビ娘「あああ……」

魔女「……なに?」

ゾンビ娘「…………」

キョンシー娘「……無理、しないで」

魔女「無理なんて」

ゾンビ娘「ああ、ぁ……うしろ、いれば……いい、から」

魔女「…………分かった。前線には出ない。全部あなた達に任せる」


ゾンビ娘「ああああああ」

キョンシー娘「……」




…………


ゴォオオッ


ドガァッ



キャー! ワー! グォオッ

ウワー! ギャァア!!



ボォオオオオッ……




魔女「…………町が燃えてる」

魔女「私が……私たちが、やってるんだ」


魔女「これも…………未来のため。あの娘たち、の」



ガタッ


魔女「! ……ここまで来るなんて、たいしたニンゲンがいたものね」





ゴーレム幼女「……」

魔女「!? あなたはっ……!!」

ゴーレム幼女「おひさしぶり、です」

魔女「なんで、ここ、に……いえ、それよりその姿は」

ゴーレム幼女「ニンゲンに拾われました」

魔女「ニンゲンに……? っ……! そう、か…………」

魔女「……私と、主従があったせいで、体が肥大化していた……? なら原因は幻子の供給過多…………だからニンゲンとの主従ならば、そのままでいられる……そういうことなの?」

ゴーレム幼女「りくつは、ふめいです。けれど」


ゴーレム幼女「ボクは今、ヒトと生きている」

魔女「!!」

ゴーレム幼女「……こんなこと、するひつよう、ないです」

魔女「…………かも、しれないわね」

ゴーレム幼女「なら」

魔女「でも!!」


魔女「私は、この国を……世界を、…………ヒトを変えると、決めたの」

ゴーレム幼女「……今、ともに生きているひとを、犠牲にしてもですか」

魔女「……そう、…………そうよ」

ゴーレム幼女「…………」

魔女「私を、止める?」

ゴーレム幼女「……ボクにはその権利がない」

魔女「…………私を見逃すと? ヒトとの主従を結びながら、ヒトに害を成す私を、逃がすの?」

ゴーレム幼女「あなたを止めるのは……ボクじゃない。友達同士の、二人」


ゴーレム幼女「ヒトと……けもののひと」

魔女「…………なら、それを見せてもらうわ」

ゴーレム幼女「……」

魔女「あなたが見た、その二人の絆。ヒトと、けもののひと。……その共存の可能性を」






……


狼少女「ガぁアアアっ!!」ザシュッ!


ゾンビ兵1「あぁアあ」バタッ

ゾンビ兵2「ああア」グオッ

ゾンビ兵3「ぁあアアあ」ズリズリ


狼少女「くっ……これじゃきりが……!」


学者「そこまでです!」ビュオッ!


ビシィッ!!

狼少女「うぐァああっ!!?」ドタッ

ゾンビ兵4「あぁああッ」

狼少女(しまっ……やられる……!!)




人の少女「やぁあああっ!!」

ブオンッ


ドグシャァッ


ゾンビ兵4「ぁ……あ」ドサッ




人の少女「はぁ、はぁ……だいじょぶ? 狼少女ちゃん」

狼少女「え……えっ、なんで、ここに」

ギュッ

人の少女「ごめんね……一人にしちゃって」

狼少女「……あやまらないで」

人の少女「私、狼少女ちゃんのこと、傷つけちゃったから」

狼少女「……こわくないの。わたしのこと」

人の少女「こわいよ! そりゃこわかったよ!! だっていきなり、すっごい爪出して! そんでなんかすっごい! すっごいあれするし! すっごい!」

狼少女「……なに言ってるの」

人の少女「でもさ、友達だもん。……こわくてもいいよ」



学者「…………素晴らしい……あなた方は本当に素晴らしい! そうです。そうやってけものびととヒトは分かり合えるのですよ。だから我々は」

人の少女「ふざけるな!!!」




人の少女「狼少女ちゃんに、ひどいことしておいてっ……なにがっ」

学者「それは、仕方のないことでしたから。私の考えに賛同して頂ければ、自由を奪うような真似をせずに済んだのですが。……しかしこうなっては、再度問いましょう。お二人に」

学者「半幻獣と人の共存を望むのなら、共に行きませんか。……誰もが素性を隠すことなく、本当の姿で向き合える世界を、作りましょう。その理想を、あなた方は体現しているのですから」

人の少女「あなたの理想を、押しつけないで!」

学者「……なぜ。半幻獣との共存を選びながら」

人の少女「違う」


人の少女「私は、半幻獣との共存なんてどうでもいい」

学者「なにを」

人の少女「私はただ、狼少女ちゃんと友達でいたい。それだけ。だから」


人の少女「こうして狼少女ちゃんを傷つけた人の言葉なんて、例えどんな素晴らしい理想でも……聞くわけないでしょ、この頭でっかち!」

学者「っ……あなた、は、あなた方はっ」


学者「自分たちさえ良ければ、それでいいとっ……!? 自分の友人さえ傷つかなければ、今傷ついているものたちはっ、今後理想に救われるものたちは、どうでもいいと言うのか!?」

人の少女「うん。そうだよ」

学者「ぉ、な、っ……あなたのようなっ身勝手な人間がぁあっ!!!」


ビュオッ!!




パシッ!


ゴーレム幼女「二人にふれるな。うすぎたない人間が」

学者「……! このようなものまでっ、……ではまとめて、あなた方は研究素材にしましょうか。……行け! 死体どもよ!」



学者「反応がないっ……!? なぜっ」


スタッ

密猟者「ここいらのゴミは、この俺がぜぇーんぶ片付けちまったってわけ。臭くてしょーがなかったからよぉ」

学者「獣狩りっ……だと」

密猟者「つーかマジでゴミしかねーじゃねぇかコラぁ! こんな粗悪品のクズ、売り物にならねーぞ!!」

学者「くっ……!」

密猟者「しゃぁあああっ!!」ヒュオンッ!



ガキィイッ


魔女「……」ギギギッ

密猟者「……へぇ、いるじゃねぇか。とっておきの上玉がよぉ」

魔女「ふんっ……」ヒュッ


バキィッ

密猟者「ぐぁっ……!! が、ぐっぅ」




狼少女「っ……!」

人の少女「狼少女ちゃん!」

狼少女「下がってて……!」


魔女「……けなげなお嬢さんだことね。けどもう、限界のはずよ」

狼少女「……っ」

魔女「…………安心なさいな。ここで事を構える気は、こっちもないの」

狼少女「なにっ」

魔女「あなたたちのせいなのでしょうね。人間の兵力が動くのが、思ったよりもずっと早かった。ここでこれ以上損耗するのは割に合わないわ。……引くわよ」

学者「そう……ですか。いえ、そうですね」

魔女「いずれまた逢いましょう? ヒトとけもののひとが分かり合い、手を取り合う……理想の世界で」

シュォオ……



密猟者「待ちやがれこのっ…………くそが!」





狼少女「無茶……して」

人の少女「えへへ……ごめん」

狼少女「…………ありがと」

人の少女「狼少女ちゃん……」

狼少女「うん……だいじょうぶ。だいじょうぶ、だから」

人の少女「帰ろっか。おうちに」

狼少女「………………うんっ」






…………



人の少女「おかえり」

狼少女「……ただいま」



人の少女「それじゃあ、ご飯にする? お風呂にする? それとも」

狼少女「?」


人の少女「乱暴する? エロ小説みたいに!」

狼少女「」ブフッ




狼少女「……しない」

人の少女「そう?」

狼少女「というか、なに言ってるの」

人の少女「今、都会ではこのお出迎えが流行ってるんだって!」

狼少女(……そんなことないと思う)


狼少女「……とにかく、他の人にしちゃだめ」

人の少女「そりゃそうだよ。狼少女ちゃんだけ」

狼少女「!?」

人の少女「他のお客さんをからかったりなんてしないよ~失礼だし」

狼少女「!?!?」

人の少女「どしたの?」


狼少女(……からかわれてたんだ)




人の少女「実際どうする? ご飯? お風呂?」

狼少女「今日はもう休みたいから」

人の少女「じゃあお部屋にごあんなーい」

トタトタ


人の少女「でも、もう自分の家みたいだよね。だいぶ長く泊まってるし」

狼少女「そう? 30日くらい……?」

人の少女「こんな峠の宿には長い方だよ。まだしばらくはいるんだよね?」

狼少女「うん。……たぶん」

人の少女「……そっか」


ガチャッ

ボフ


人の少女「さ! おいで」

狼少女「……なんで先にベッドに」




人の少女「いいから。かもん!」

狼少女「うぅ……」

人の少女「ほらはやく!」グイッ

狼少女「わわっ」ボフッ



人の少女「えへへ」ギュー

狼少女「ぅー」

人の少女「ね、ね、あのさ」

狼少女「?」

人の少女「……けも耳、出してよ」

狼少女「えー……」

人の少女「しっぽも、ね?」

狼少女「……いいけど」


フサァ

狼少女「わぅ」フサフサ

人の少女「おぉ……」




人の少女「やわらかい」モミュモミュ

狼少女「耳もまないで」

人の少女「けっこう太い」ニギニギ

狼少女「尻尾にぎらないで」


人の少女「……」ワシャワシャ

狼少女「……」

人の少女「……」クンクン

狼少女「かっ、かがないで!」

人の少女「……」

狼少女「?」

人の少女「やっぱり、濡れタオルで拭くぐらいしとこうか」ドッコラセ

狼少女「えっ」


狼少女(え……わたし、におうの……?)

狼少女「……」クンクン

狼少女(……自分じゃわからない)




人の少女「おまたせーお湯で濡らしたタオルで、っと」

人の少女「はい、しっぽこっちに向けて」ペシペシ

狼少女「わ、わかった、から」


ギュッ

狼少女「ぅ……わぅ」

人の少女「じっとしててねー」ゴシゴシ

狼少女「う、んっ……ぅ」

人の少女「先っぽもきれいにしましょうねー」ゴシッゴシキュッキュ

狼少女「ぁうっ……ん、そ、それ」

人の少女「きもちいい?」

狼少女「ぅ…………ん」

人の少女「付け根もね」ゴシゴシグリグリ

狼少女「ぁっ、あ!」

人の少女「でもほんと不思議……ほんとにはえてるんだもんね」グリッ…コリコリ

狼少女「えっ、や、やめ、つけねこりこりだ、めっん」

人の少女「……」コリコリコリコリ

狼少女「ぁはっん! ぁっなんっ、や! だめって、あっ! あ!」


人の少女「むらむらしてきた」

狼少女「や、やめて……」




人の少女「はいじゃあ、けも耳ね。ひざに頭のっけて」ポンポン

狼少女「ぅう……へんなことは」

人の少女「しないしない」

狼少女「ぅー……」ゴロン


人の少女「外側からー」モミュモミュ

狼少女「ん……」

人の少女「うちがわへ!!」ズボォッ

狼少女「!!??」ビクゥッ


狼少女「な、なにし」

人の少女「きれいにするだけだよー」ズポズポ

狼少女「あっ! あっだめ! あっあ! それやっぁ! めっ、ぁ」

人の少女「この耳穴を征服してる感がたまらんね」ズッポズッポズッポ

狼少女「やぁあ!! あっほんっ! ほんとにやぁ!! あっあっああああ!! あっ……」ビクンッ



人の少女「……」

狼少女「はぁ……はぁ」

人の少女「……ごめんね」

狼少女「……」

人の少女「つい……」

狼少女「……いいけど」


人の少女「じゃあ反対側もね」ズポッ

狼少女「やぁああああ!!!」




狼少女「はっ、ぁ……あ…………ぁ」

人の少女「はぁーきれいになった」

狼少女(……けっきょく…………ぜんぶ)


人の少女「今日はさ」

狼少女「……え?」

人の少女「一緒に寝よ? ね」

狼少女「…………ぅん」

人の少女「ん、よかった」ギュッ

狼少女「んっ」ギュー


人の少女「狼少女ちゃんてさ」

狼少女「?」

人の少女「ねこだよね。おおかみのくせに」

狼少女「」




狼少女「なんの、はなし」

人の少女「誘い受けだよね」

狼少女「やめて」


人の少女「だって、ね」

狼少女「ぅうー……がう」

人の少女「あれ?」

狼少女「えいっ」ドサッ

人の少女「きゃっ」


狼少女「…………たべちゃうぞ」

人の少女「……やん」

狼少女「……」

人の少女「……? どったの?」


狼少女「また、聞いてもいい?」

人の少女「なにを?」

狼少女「……こわく、ないの」

人の少女「……」




人の少女「こわいよ」

狼少女「……」

人の少女「けど、一緒にいられなくなる方が、もっとこわい」

狼少女「……そう」

人の少女「もしも、これから……ううん、なにがあってもさ」

狼少女「…………うん」

人の少女「……ずっと」


狼少女「………………うん」






けもののひと、狼の少女、完。


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