勇者「現れたな、魔女!」魔女(そうだ、勇者を味方に……) (119)

注意
 ・初投稿どころか全てにおいての初心者
 ・短時間でテキトーに作られたストーリー
 ・説明不足アリかも
 ・ぶれるキャラ設定
 ・ちょっと主張が強いかも
などなどです。それでも読んでいただけたらこの上なく嬉しいです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1395718373

書きそびれました。(テキトーな)書き溜めアリです。
では始めます。



魔女(でもこの弱さじゃ使い物にならないわね……。そういえばこの勇者、たしか腕は強くても頭は弱いって聞いたわ。フフ、だったら少し鍛えてあげましょ)

勇者「おい魔女! 聞いてるのか!」

戦士「なあ魔女さんよ、無視とはひでぇんじゃねえの?」

僧侶「ちょ、ちょっと、二人ともあんまり挑発しないでくださいよ」

遊び人「うお~美女が空飛んでるぞ」

僧侶「遊び人さんはなんでそんなに呑気なんですか!」

勇者「怖いのか? 僧侶は」

戦士「まだまだか弱い嬢ちゃんだねえ~」

僧侶「そりゃ怖いですよ! だって魔女って、四天王の一人なんですよ? 私たちのレベルじゃまだ勝てる相手じゃありません!」

勇者「知るか! 根性だよ根性!」

魔女(ウワサ通りの勇者さんね。ま、扱いやすくて良いわ)

魔女「あなた達が勇者さん達? 見たところ弱そうだけど」

勇者「黙れ! グダグダしてないでさっさと地上に降りてこい!」

魔女「それって、僕たちは空を自由に飛んでいる私を撃ち落とすこともできないぐらい弱いですよ~って教えてくれてるのかしら?」オソラヲヒラヒラ~

勇者「チッ……」

戦士「言われてるなあ、勇者さんよ」

遊び人「俺もお姉さんと空飛びたいよ~」

僧侶「魔女の言う通り、私たちは彼女を撃ち落とすこともできません。ここは撤退しましょうよ、ね」

勇者「撤退はしない! 国王陛下と国を、人間界を守るため、俺は戦うんだ!」

僧侶「勇者さ~ん(泣)」

魔女「フフフ……」

勇者「何がおかしい!」

魔女「まったく、今のあなた達を倒したところでなんにも面白くなさそうだわ。オークさん達! この勇者さん達を倒しちゃって良いわよ!」

オーク達「覚悟しろ勇者!」

勇者「バカにしやがって……」

戦士「おい勇者、今は目の前の敵に集中しろ」

僧侶「そうですよ。オークぐらいなら私たちでも倒せますし」

遊び人「あ! 急にカジノでの用事を思い出して……」

勇者「……わかったよ。さあ来いオーク、返り討ちにしてやる!」

魔女(その調子その調子)

――数ヶ月後、王宮――

王「勇者が旅立ってから随分と月日が経った。あやつらはまだ魔王を倒せんのか?」

側近「はっ、四天王の一人、魔女に苦戦しているそうで」

王「まったく、あのバカ共は本当に魔王城に到着できるのだろうか……」

側近「お言葉ながら、すでに勇者達は四天王のうちの三人を倒し、魔女が唯一の生き残り。あの三人もこの街を旅立ったときとは違い、逞しく成長し、魔王を凌駕する程の力を着々と蓄えております」

王「しかし……魔王を早いところ始末してくれねば困る」

側近「と、申されますと?」

王「砂漠の国だ」

側近「…………」

王「我が国の同盟国であるはずの砂漠の国に、最近では同盟から独立し、豊かな我が国の土地を侵略しようと企む組織が多い。ついには砂漠の王までもが、公式の場でわしをこき下ろす程だ」

側近「……悩ましいことですね」

王「だからこそ勇者には、早いところ魔王を倒してほしいのだ。魔王を倒し魔族を従えたとなれば、砂漠の国も、我が国を侵略しようという気が少しは薄れよう」

側近「…………」

王「それにしても魔族め……あれだけ譲渡してやったというのに戦争を始めおって」

側近(王は未だにわかっていらっしゃらない。砂漠の国が我が国への侵略を考えるようになったのは、あの国が魔界との境界であるがためだ)

側近(砂漠の国と魔界は歴史的に仲が悪い。そもそも砂漠の国と我が国が同盟を結ぶのも、魔界と敵対するが故だ)

側近(しかし王は、魔界との融和を目指し、人間界と魔界での自由協定や土地の共同開発などのありとあらゆる政策を行った)

側近(これは魔界の要求に従ったものであり、砂漠の国の意見を王は聞き入れていない。砂漠の国の魔界化に等しい政策だ。当然、砂漠の国は反発)

側近(それでも王は、魔界との融和策を乱すなと砂漠の国を痛烈に非難、魔界の要求を受け入れ続けた)

側近(魔界の要求は日に日にエスカレートし、遂には魔界の軍勢が砂漠の国に駐留する事態となる)

側近(砂漠の国は我が国に軍の派遣を要求したが、王は魔界との戦争を避けるためにその要求をはね除けた。すると魔界は砂漠の国の併合を要求した)

側近(さすがの王もこれを断ると、魔界は人間界に本格的な侵攻を開始し、戦争状態となった。勇者殿の活躍で砂漠の国から魔族は撤退したが、すでに遅い)

側近(王自身の弱腰と行き過ぎた譲渡、これが魔界との戦争を呼び込み、砂漠の国からの信用を失った原因だ。失ってはならないバランスを失わせた)

側近(しかし王は、それをわかっていらっしゃらない。そもそも魔界を支配したところで……)

王「どうしたのだ側近、そんな難しい顔をして」

側近「いえ、なんでもありません」

側近(これを直接申し上げたところで、今の冷静さを失った王は私を国家反逆罪に処すだけであろう……。いかがしたものか……)

昼食とってました。
続けます。

――魔王城――

魔王「魔女よ、貴様の前線部隊長の任を解く」

魔女「え?」

魔王「貴様は四天王の中で最も賢い。だからこそ貴様は、勇者に自ら戦いを挑むことはない。ゆえに、四天王の最後の生き残りとなった」

魔女「それと前線部隊長の任、一体なんの関係が?」

魔王「勇者は私すらも凌駕する力を得ようとしている。それはなぜか? 魔女よ、貴様の代わりとして戦った者達との戦場が、勇者のよき修行場となったからだ」

魔女「回りくどい言い方しないでください。つまり、私が勇者を育てちゃったと言いたいんでしょ?」

魔王「物わかりが良いのは良いことだ」

魔女「前線部隊長が結果的に勇者を育てちゃってるなんて冗談じゃないですもんね」

魔王「魔女よ、貴様の前線部隊長の任を解く」

魔女「二回言われなくてもわかってますよ」

魔王「……理由はまだある」

魔女「え? 早く言ってくださいよ」

魔王「ガーゴイルから、貴様を解任しろとねだられた」

魔女「あの好戦野郎が?」

魔王「穏健な貴様を煙たがっているからな」

魔女「でも、魔王様はなんでそれを聞き入れたんです?」

魔王「あやつは勝つためならば手段を選ばぬ。勇者に追いつめられた我らには、そのような魔族が必要とされている」

魔女「ようは人間との戦争に勝つため、ですか」

魔王「魔界はこの魔王が君臨するからこそ一つにまとまっているが、その私が勇者に倒されれば、魔界での派閥同士の争いが起きる。人間が魔界を支配できるとも思えまい」

魔女「派閥争いか。みんな馬鹿力だから、そんなことになったら魔界は終わりですね」

魔王「一度始まった戦争は、勝たねばならぬのだ」

魔女「……そもそも、この戦争を起こす理由はあったのですか?」

魔王「我らとしても人間界との融和は良き選択であるはずだったが、王があれほどの譲渡をするとは思わなかった」

魔王「おかげで好戦派閥を勢いづかせ、戦争に発展してしまった。これは好戦派閥の暴走により始まった戦争……」

魔女「魔王様、魔界の支配できてないじゃないですか」

魔王「しかし魔界は安定しておったであろう。私とて限界はある」

魔女「まあ、前線部隊長の任を解かれた私にはもう関係のない話ですね」

魔王「何か、言いたいことでもあるのか?」

魔女「はい?」

魔王「貴様が悪態をつくときはいつもそうだ」

魔女「敵いませんね~。魔王様の言う通り、ありますよ」

魔王「聞かせよ」

魔女「私に妙案があります。戦争に勝つための」

魔王「ほう、興味深い」

魔女「では説明します。人間界だって一枚岩ではありません。ですから……」

再開したばかりで申し訳ないですが、ここで第一次投下分は終わりです。
第二次投下開始はちょっと(しばらく、もしくはだいぶ)たってから開始しますので、それまでお待ちいただければ幸いです。

第二次投下開始です。
そんなに長くないストーリーなので、この第二次で半分くらいまで投稿できたらと心の隅で思っています。

――3日後、王宮――

魔女(人間の旅人に化けて、なんとかここまで来られたわ)

姫「あなたが旅人さんかしら? 妾を呼び出すとは良い度胸ですわね」

魔女(よかった、バレてないようね)

魔女「姫様も、一介の旅人である私めにお会いしていただけるなど、大胆なお方であらせられる」

姫「言うですわね、そういうの嫌いじゃないですわ。で、なんの用かしら?」

魔女「姫様のお父上、国王陛下についてです」

姫「お父様がなんですの?」

魔女「お嫌いだそうで。殺したい程に」

姫「!?」

魔女「続きをお話しても?」

姫「……どうぞ、部屋の周りには誰もいないですし」

魔女「護衛もなしで私にお会いしてくださったんですか! やはり大胆なお方です」

姫「妾が大胆なのは知っていますので、話の続きをしてちょうだい」

魔女「では単刀直入に申し上げます。王を暗殺するのです」

姫「……単刀直入すぎやしませんの? もう少し段階を踏んで」

魔女「では紙に段階とお書きください。思いっきり踏みつけますんで」

姫「それ冗談のつもり?」

魔女「ええ」

姫「ひねりがないですのね」

魔女「……ともかく、王の暗殺をお勧めします」

姫「フフ、王宮で、しかもこの姫の前でそのような話を……。覚悟はできていますの?」

魔女「もちろんです」

姫「なら、説明してごらんなさい」

魔女「まず、王を人目の付かないところにお呼びください」

姫「いきなりそれっぽいですのね」

魔女「雰囲気も大切ですから。それで、姫様は私の仲間と共に、王を待ち構えるのです」

姫「あなたの仲間?」

魔女「ええ、彼もまた王を憎む者です」

姫「そうですの。それから?」

魔女「王がやってきたら、私の仲間が王を殺害します。そして姫様は、侍女達に私の仲間を処断するように指示するのです。王を殺害したのはコイツだと叫んで」

姫「それだけ?」

魔女「それだけです」

姫「えらく簡単なんですのね。でも、だからこそうまくいきそう」

魔女「王が死ねば、あなたがこの国の女王です」

姫「え? それはどういうことかしら。王が死んでも兄上がいるはずでは?」

魔女「そちらも私の部下に暗殺させます。そのために姫様、王子を迷いの森に行かせるようお頼みしたい。狩りでもどうかと勧めれば、うまくいくかと」

姫「フフフ、面白いことを言うわね」

魔女「王の暗殺を決意していただければすぐにでも準備を開始できます。しかし暗殺をしないのならば、今ここで、私を国家反逆罪で処刑してください」

姫「逃がすって選択肢は?」

魔女「王を暗殺することもできない姫様に逃がされるくらいなら、処刑された方がマシです」

姫「オーホッホ、勇ましいですわね。でも、どうやらあなたのことを妾は気に入りました」

魔女「それでは……」

姫「ええ、お父様を暗殺します。あのクソ親父とバカ兄貴は、始末してやらなければ私の気が収まりませんもの」

魔女「それではすぐに準備を」

魔女(うまくいったわ。王子とは腹違いの姫が、王や王子のことを嫌っていたのは知ってたけどまさかここまでとはね)

魔女(いろいろと苛めもあったみたいだけど、その類希なる能力でここまでのし上がった姫。彼女の野望は大きい)

姫(ヘタレ親子が死ねば、この国は妾のもの。お母様、ようやくお母様の望んだこの国の強さを、世界に思い知らせるときが来たのですね)

姫(それに、あのクソオヤジの匂いも、ようやくなくなる。バカ兄貴の鼻につく高い声も聞かなくて済むようになる。あ~、夢のよう)

魔女(でもこれで、戦争の終わりは近くなったわね)

姫(ンフフ、ここからが戦争の始まりよ)

――翌日――

側近「いかがなさいました? 姫様」

王子「なんだお前か」

姫(このキーキー耳に響く高い声、あ~ムカつきますわ)

姫「お兄様、最近は忙しそうですね」

王子「俺も王子だからな。お前と違って重責がある」

姫(嫌み? 最低な男ですわね) 

姫「でも、あまり働きすぎるのも体に良くありません」

王子「お前が俺の体を心配するか。不気味だな」

側近「若君、姫様のお優しさをそのような言葉で……」

姫(側近は誰にでも優しいのね)

姫「兄上、たまにはリフレッシュに狩りなどどうです? 迷いの森辺りで」

王子「迷いの森だと! ……だが、たまには狩りもよかろう」

姫(ちょろいもんですわ)

側近「しかし若君、お仕事の方は?」

王子「そこの女に任せればよい」

側近「は、はぁ。申し訳ないが、お願いしますぞ姫様」

姫「わかりましたわ」

姫(ええ、任せてくださいね。兄上の仕事全てを)ニヤリ

――玉座の間――

側近「おや姫様、今度は陛下に御用ですか?」

姫「お父様、私どうしてもお話ししたいことがありまして」

王「お前がわしに話を? なんの風の吹き回しかね?」

姫(喋るたびに鼻が砕け散りそうな匂いがするわね、このオヤジ)

姫「たまには親子で水入らず」

王「わしは忙しいのだ」

側近「陛下、姫様の頼みですぞ。聞いてあげてもよろしいのでは?」

姫(側近、また私を庇うのですね)

王「……おい、それはすぐに終わる話なのか?」

姫「ええ、すぐに」

王「わかった。いつ、どこでだ?」

姫「明日、屋上で」

王「屋上だと?」

姫「ええ。空の下でお話がしたいのです」

王「ならば庭園でもよかろう」

姫「そ、空に近い方が心が澄みます」

姫(妾は何を言っておるのだ?)

王「まあよい。これ以上話をしていても面倒だ」

姫(私も御免ですわ)

姫「ありがとうございます」

姫(でもこれで、暗殺計画は順調ですわね)

――魔王城、ガーゴイルの部屋――

魔女「ヤッホー好戦野郎」

ガーゴイル「魔女か……酔ってるのか?」

魔女「当たり前でしょ! あんなに頑張ったのに、前線部隊長の任を解かれちゃうんだから~」

ガーゴイル「近寄るな!」

魔女「いいじゃないガーゴイル〝前線部隊長〟」

ガーゴイル「顔が近……酒くさ!」

魔女「美女に向かってなんてことを!」

ガーゴイル「お前は我の敵だ。さっさと出て行け!」

魔女「んだよつまんねえなあ。これでもまだ出て行けって言う?」

ガーゴイル「あいにくお前の豊満な胸など見せられても嬉しくなど……」

魔女「あれ? にやけてるよ?」

ガーゴイル「ええい! 煩わしい! 出て行け!」

――魔王城、ガーゴイルの部屋――

魔女「ヤッホー好戦野郎」

ガーゴイル「魔女か……酔ってるのか?」

魔女「当たり前でしょ! あんなに頑張ったのに、前線部隊長の任を解かれちゃうんだから~」

ガーゴイル「近寄るな!」

魔女「いいじゃないガーゴイル〝前線部隊長〟」

ガーゴイル「顔が近……酒くさ!」

魔女「美女に向かってなんてことを!」

ガーゴイル「お前は我の敵だ。さっさと出て行け!」

魔女「んだよつまんねえなあ。これでもまだ出て行けって言う?」

ガーゴイル「あいにくお前の豊満な胸など見せられても嬉しくなど……」

魔女「あれ? にやけてるよ?」

ガーゴイル「ええい! 煩わしい! 出て行け!」

しまった! 連投してしまいました。
初心者なのでどうかお許しください。

では気にせず続けます。

魔女「何よ。あ~もうむしゃくしゃする! 魔王ぶっ殺しちゃおうかなあ」

ガーゴイル「…………」

魔女「評議会での魔王は無防備だからねえ、そこ狙えば……」

ガーゴイル(評議会での無防備な魔王……これは良い情報を得た。しかも魔女はあの調子、明日と明後日は二日酔いで評議会にも出られないだろう)

ガーゴイル(ここが狙い時か)

魔女(ちょっとやり過ぎたかな)

――翌日、王宮屋上――

王「なんだねこんなところに呼び出して」

姫「お父様……」

王「ん? どうしたのだ? 王子が狩りになど行ってしまって、わしは今忙しいのだ」

姫「妾はお父様を、昔から憎んでおりました」

王「……何を言い出す」

姫「お母様が若くして亡くなった時、お父様は笑っていたそうですね。あの戦争バカがようやく死んだと」

王「わしは……」

姫「たしかにお母様は軍人の家の出、多少はお父様の言うようなところはありましたわ。しかし、お母様はいつも正しかった」

姫「妾はお母様を信じて、ここまで耐えてきた」

王「だからなんだ?」

姫「お父様はわかっていない。この戦争も、砂漠の国の動きも、全てがあなたの責任であることを!」

王「な、何を言うか! あれは魔族が悪いのだ!」

姫「魔族〝も〟ですわ。魔族の悪しき部分を、あなたが融和の名の下に増長させてしまったのです」

王「融和を目指して何が悪い! わしは魔界との共存を!」

姫「お父様の融和は、融和ではありません。共存でもない。お母様が言っておられました。共存関係というのはお互いが対等でなければならないと」

姫「しかしお父様は、譲歩をしすぎた。決して対等でない共存を選んでしまわれた。このバランスの崩れが、この争いを生んだのです!」

王「…………」

姫「人間界と魔界のバランスが崩れ争いが始まった。この争いは、すでに人間界のバランスをも崩しております」

姫「魔王を倒しても、その先に人間同士の戦争が待ち構えていることでしょう」

王「今さら何を言うか! ではどうすれば良いのだ!」

姫「……人間界を、力によって支配するのです」

王「ハッ、やはりお前はあやつに似ておる。なにかあればすぐに力だの軍隊だの言い出すお前の母親にな!」

王「わしがそれを了承すると思うか? どうしてもそのようなことがやりたいのならば、わしを暗殺してみよ! 話はそれからだ!」

姫「わかりましたわ」ニヤリ

グサッ

王「え?」

王の背中から腹にかけて、一本の鋭い刃が突き刺さっていた。

暗殺者「お命頂戴」

王「お、おのれ……」

バタリ




すでに息のない王は床に崩れ、そのまま血溜まりに浮かぶ。


姫「キャーー! お父様が!」

侍女1「姫様! いかがなさいました……」

侍女2「陛下!」

姫「そやつだ! そやつがお父様を殺したのだ!」

暗殺者「おい姫! 何を言って……」

侍女1「貴様!」

ズバッ

侍女1の一太刀で、暗殺者の首元から鮮血が吹き出す。

暗殺者「グワッ! マジかよ……」

バタリ

王の隣に、暗殺者は仰向けで倒れた。

侍女2「姫様、お怪我は?」

姫「お父様……」

側近「一大事でござい……って陛下! な、何があった!」

侍女2「刺客に襲われたのです。私たちが駆けつけたときにはもう……」

側近「なんということだ……若君だけでなく、陛下まで」

姫「若君だけでなく?」

側近「はっ、狩りに出掛けていた若君が何者かに襲われたらしく……」

姫達「「「王子が!?」」」

側近「若君は……お亡くなりに」

姫「そんな!」

側近「……姫、陛下と若君が亡き今は、あなた様がこの国の……」

姫「なぜじゃ! なぜこのようなことに!」

側近「姫様……」

姫(うまくいったうまくいった。これでこの国は妾のもの。この世界は妾のもの)

魔女(始まったわね)

――さらに翌日、魔王城評議会――

ガーゴイル「魔女めが失脚し、我らがいよいよ人間へ逆襲するときがやってきた」

魔王「そうであるな」

ガーゴイル「だが、まだ邪魔者はこの魔界に存在する」

オーク「なんだと?」

ガーゴイル「そいつは愚かにも人間との共存を計り、愚図な人間のせいでこの戦争を始めた」

ドラゴン「おいガーゴイル、口を慎め。魔王様の御前だぞ」

ガーゴイル「慎まないね。俺はその邪魔者を潰し、さらに強い魔界を作り上げる!」

ドラゴン「ガーゴイル!」

ガーゴイル「そのためには……」

魔王「ククク……」

オーク「魔王様?」

魔王「ガーゴイルよ、この私を始末する気か?」

ガーゴイル「そうだ」

オーク「ガーゴイル、貴様!」

ガーゴイル「我はお前を始末し、魔界を手に入れ、人間界を滅ぼし、全てを手に入れる! 手に入れてみせる!」

ドラゴン「ガーゴイル、貴様は正気の沙汰ではないぞ! 人間界を滅ぼすなど、世のバランスが乱れる!」

ガーゴイル「世のバランス? ドラゴンよ、お前も始末されたいのか?」

ドラゴン「なんだと!」

魔王「ガーゴイルよ、貴様にそれができるというのか? 貴様にこの魔界を、統治できると思っているのか?」

ガーゴイル「魔王を始末すれば、できる」

グサッ

魔王「ほう、この魔王を……刺すか……」

魔王の後ろには二体の魔族がそれぞれ槍を持ち、その先端は魔王の体内に食い込んでいた。

バタリ

魔王が、椅子から崩れ落ちる。

オーク「魔王様!」

第二次投下はここまでです。
心の隅に置いといた、半分まで投稿するという目標はなんとか達成できました。
ここまで読んでくださった皆様、もう感謝しすぎてなんだかよくわかりません。

できることならばストーリー全てを明日中に終わらせたいのですが、明後日に持ち越しの可能性が高いです。
第三次投下は明日(3月25日)の早朝か昼間か夜中になります。それまで気長にお待ちいただければ幸いです。

第三次投下をちょっとだけ行います。
では続きです。

――数日後、魔界のどこか――

勇者「ハッ!」

ズバッ

戦士「フン!」

バシッ!

僧侶「えい!」

ピカリン

遊び人「とう!」

ウワー

モブ魔族「か、敵わん! 逃げろー!」

サブ魔族「……チッ」

勇者達の強さに魔族は恐れをなし、我先にと逃げて行く。

勇者「思い知ったか!」

戦士「いやー勇者、絶好調じゃねえか」

勇者「なに、戦士と僧侶、それに覚醒した遊び人のおかげさ」

遊び人「私はただ、勇者様に命をかけているまで」

勇者「こんな俺をここまで支えてくれるなんて……」

僧侶「もう、私たちも勇者さんがいてこそだよ」

勇者「みんな……」

兵士「勇者様! 一大事です!」

勇者「我が国の兵士か。よくここまで来られたな。で、どうした?」

兵士「国王陛下と王子が、刺客により暗殺されました!」

僧侶「なんですって!」

兵士「刺客は既に処刑されております」

戦士「おいおいマジかよ」

勇者「ということは、姫様が……」

遊び人「女王となったか」

兵士「女王陛下は、魔王討伐を中止し帰国するようにと」

戦士「はあ? ここまできて帰ってこいたあ、ひでえ話だ」

僧侶「でも、この混乱の隙に人間界で人間同士の戦争が起きる可能性もあるよ。そうしたら、勇者さんの力は必要不可欠」

勇者「俺が、人を斬るのか……」

遊び人「あの姫ならば、やるだろう。人間同士の戦争を」

戦士「魔王を倒す前に人間と戦争ってか? やってらんねえぜ」

僧侶「…………」

勇者「俺は……」

魔女「みなさんお久しぶり~」

僧侶「ま、魔女!」

戦士「ついにお出ましか」

遊び人「数々の賭博での修羅場を越えた私に挑むか、空飛ぶお美しい魔女さん」

勇者「久しぶりだな、魔女」

魔女「みんな成長著しいわね」

魔女(レベルに合わせたちょうどいい怪物と戦わせて、ここまで勇者を育てたのは私だけどね)

魔女「特に遊び人さん、あなた何があったの?」

遊び人「遊びとて、いや、遊びだからこその地獄を見たまで」

魔女「えっと……まあいいわ」

勇者「何をしにきた! 俺たちは忙しいんだ!」

魔女「そうよね、忙しいわよね。王様と王子様が死んじゃったんだもん」

僧侶「やっぱり知られてる……」

魔女「女王様は人間世界の完全な統一を狙ってる。あなた達も国に帰らなきゃでしょ?」

遊び人「やはり、姫はそれを狙っているのか」

戦士「というか、なんでそれを魔女さんが知ってんだ?」

魔女「だって女王様、強硬派で有名でしょ?」

勇者「そこまで知ってるか。だったら話は早い。俺たちは国に帰る。お前達とはここで休戦だ」

僧侶「魔族もこのままだと戦力崩壊は免れません。休戦は渡りに船では?」

魔女「そうね」

勇者「だったら今すぐにでも休戦だ! 魔王にもそう伝えろ!」

魔女「でも、それは無理だわ」

戦士「テメェ」

魔女「だって、そういう話が分かる魔王様が死んじゃったんだもん」

勇者「……は?」

魔女「ガーゴイルさんが突然ね、部下を使って魔王様の背後からグサリと」

勇者「ちょっと待て! え? え? どういうこと?」

魔女「だから魔王様が死んじゃった」

勇者「ウ、ウソだ! 魔王を倒せるのは俺だけだろ!」

魔女「人間界ではそう伝わってるみたいね」

勇者「ワケワカラン」

魔女「魔王様は力は強いし魔力も強い、頭もいい。人間では勇者さんしか倒せない存在」

勇者「や、やっぱりそうだよな! ハハハ」

魔女「でも今回魔王様を殺したのはガーゴイルの部下。つまり魔族」

勇者「ハハハ、ハ、は?」

魔女「魔王様って、魔族には簡単に殺されちゃうのよね、これが」

勇者「ウソダロ」

戦士「本当なのか? 本当に魔王はおっ死んだのか?」

僧侶「そ、そうですよ。魔女の嘘にだまされちゃ――」

魔女「本当よ」

僧侶「ウ、ウソウソ」

遊び人「いや、あの魔女の目を見ろ。あれは嘘を言っている目ではない」

魔女「遊び人さんは話が通じるのね」

僧侶「ワケワカンナイ」

戦士「ケッ、一体何が起こってやがるんだ……」

勇者「なあ魔女、もしかして現在の魔界を統べてるのはガーゴイル?」

魔女「そう」

勇者「俺が世界を救うために倒すのは、魔王じゃなくガーゴイル?」

魔女「そう」

勇者「魔王城での最後の決戦はガーゴイルと?」

魔女「そう」

勇者「ここまでもこれからも必死に戦うのは、たかがガーゴイルを倒すためって目標に変更?」

魔女「そう」

勇者「……なんか、やる気なくす」

魔女「その気持ちわかるわ。私もガーゴイル大嫌いだから」

勇者「大嫌い以前に小者すぎるだろ。お前も小者が統治する魔界を守るために戦うのか。なあ、やる気なくした?」

魔女「ええ」

勇者「じゃあやる気ない同士で手を組もうか。なんてな、冗談」

魔女「そうね、ぜひ手を組みましょう」

勇者「え?」

魔女「ガーゴイルって強硬なだけのバカで、あなたの言う通り小者。魔界の統治なんか101回死んでも無理よ」

魔女「それでガーゴイルに対する抵抗勢力も出てきててね、私はその勢力の幹部。だから勇者さんが魔界解放のために協力してくれれば嬉しいなって」

勇者「ワケワカラン」

魔女「私たち魔族も人間界と平和な関係を結びたい人達がいっぱいいるわ。むしろ戦争が始まってから多数派がそうよ。抵抗勢力はその多数派が集まってできたの」

魔女「魔界と人間界の真の共存。その架け橋として、ガーゴイルを勇者さんと一緒に倒せたらなって」

勇者「架け橋……」

魔女「私、ずっと見てみたかったんだ。魔界と人間界が共存する世界を」

勇者「……たしかに俺も、人間と魔族が仲良くなれたらって思ってる」

魔女「勇者さんはわかってくれるのね」

勇者「俺はバカだから難しいことはわからない。もしかしたら魔女の言ってることが全部嘘で、俺は騙されようとしてるのかもしれない」

魔女「それはないわ」

勇者「もしもの話だ。でも、それでも、俺は人間界と魔界の共存する世界ってのを見てみたい」

魔女「なら人間だけでなく私の、ううん、私たち魔族の、味方になってくれる?」

勇者「ああ魔女。俺は、お前らに協力する」

僧侶「え~? なにこの展開、付いていけな~い(泣)」

遊び人「ただ勇者に従うまで」

勇者「魔女、よろしくな」

魔女「こちらこそよろしく」

魔女(ようやく、勇者を味方にできたわね)

戦士(モウワケワカラン)

第三次投下はここまでです。
続きまでまたもしばらくお待ちいただけると幸いです。

ちょっとだけ第四次投下です。
なにぶん時間をかけずに考えたストーリーなので、少しアラが出てくるかもしれませんがどうかご容赦ください。

でははじめます。

――人間界のどこか――

勇者「もうすぐ熱帯の国……ってうん? あんなところに人が」

戦士「どれどれ、っておい、あれ魔族だぞ」

僧侶「捕らえてください!」

遊び人「動くな!」

謎魔族「ヒッ!」

勇者「なんでこんなところに魔族が?」

――王宮前広場――

『勇者様だ! 勇者様のご帰還だ!』
『おお、精悍になられた』
『戦士様は渋いなあ。俺もああいう男になりてえ』
『僧侶ちゃん可愛い』
『僧侶ちゃん結婚してー!』
『だれだ? あの歴戦の勇士みたいな奴』
『あれ、遊び人じゃないか?』
『あれが? 笑えねえ冗談だな』
『いや、あの顔は遊び人だよ』
『ないない』

姫改め女王「よくぞ無事に帰ってきたな、勇者殿」

勇者「お久しぶりでございます、姫……女王陛下」

女王「まさかお父様と兄上があのような……」

勇者「…………」

――玉座の間――

女王「聞きましたわ。魔王が死んだそうですわね」

勇者「我々も驚いております」

女王「魔界で何十年もの間その力を振るったあやつも、最期はあっけないですわね」

勇者「魔王を殺したのはガーゴイルの一派。いま魔界を統治しているのもガーゴイルの一派です」

女王「ガーゴイルか」

勇者「かなり好戦的な一派だそうですが、魔界全体を統治するまでにはいってないそうです。なのでしばらく、我が国は平和となりましょう」

女王「まだですわよ。平和はまだ先ですわ」

勇者「一体どういうことでしょうか?」

女王「これから砂漠の国を攻めます。お父様の残した負の遺産を、徹底的に叩き潰すのです」

勇者(女王陛下、本当に人間界で戦争を始めるのか!)

勇者「お、お言葉ながら、その戦争を民衆は支持するでしょうか?」

女王「お父様と兄上を暗殺した刺客が砂漠の国の人間、だったらどうだ?」

勇者「!!」

女王「本当かどうかはわからぬが、きっとそうであろう」

勇者「だ、だとしても、同盟国である砂漠の国への侵攻は侵略行為。他の同盟国からの反感を買い、不信感を煽ります」

女王「逆らうものは皆、潰せば良いであろう」

勇者「何を!」

女王「この世は力で成り立っているのだ。人間界最強の我が国がその力を存分に発揮すれば、世界は平和になるであろう」

女王「政変で混乱する魔界もしばらくは人間界に攻め寄せてきそうにないしな」

勇者「しかし我が国に対する反抗勢力が人間界に現れて――」

女王「さあ勇者よ、戦争の用意をしなさい」

勇者「まさか、もう攻め込むおつもりで?」

女王「戦は早い方が有利、強きものが勝つ場であろう」

勇者「民衆にまだ伝えていないではないですか!」

女王「これから妾が伝えますわ。妾の演説を勇者にも聞かせたいところだが、勇者には戦争の準備を進めてもらいたい」

勇者「…………」

女王「さあ戦争ですわよ。一心不乱の大戦争ですわよ! オーホッホッホ」

勇者「お待ちを! 女王陛下……」

側近「女王陛下はずっとあの調子です」

勇者「側近さん」

側近「このままでは陛下の仰る通り、人間界で人間同士の大戦争となります」

側近「今の勇者様のように私も女王様を止めようとしたのですが、今のように女王様は聞く耳持とうとしません」

勇者「なんてこった……」

側近「ところで、その魔族は?」

僧侶「あ、帰り道で捕らえました。人間界に侵入していたようです」

側近「ほう、そうでしたか」

侍女1「あ!」

側近「どうかしました?」

侍女1「その魔族、国王陛下を暗殺した者です!」

勇者「なに?」

謎魔族「バレたか」

戦士「あ? おいテメェ、どいうことか説明しやがれ!」

謎魔族「実はだな……」

ちょっと早すぎますが、キリがいいので第四次投下はここまでです。
続きは明日(3月26日)になります。
それまでしばらくお待ちいただければ幸いです。
完結まで読んでいただければ幸いを通り越した何かです。

第五次投下開始です。
でははじめます。

――数時間後、王宮前広場――

女王「――妾は父と兄の仇を討つため、砂漠の国を滅ぼす!」

『魔王が死んだなんて、信じられねえ』
『砂漠の国が王と王子を暗殺? 許せねえ』
『砂だらけの国なんかぶっ潰しちまえ!』
『王の融和政策に逆らっただけある。砂漠の国もいよいよ終わりか』
『魔王が死んだのに戦争は続くなんて』
『女王様結婚してー!』

女王(民衆を煽るのなぞ簡単なこと、フフ)

女王「さあ、怒りの鉄槌を砂漠の――」

勇者「お待ちください!」

女王「なんだ勇者。妾の演説がそんなに聞きたかったか?」

勇者「女王、いや、裏切り者! お前が王と兄を殺したんだな!」

女王「な、何を言うか!」

勇者「こいつがすべてを吐いた!」

謎魔族「アハハ、バレちった」

女王「お、お前は!」

女王(バカな! お父様をあのとき始末した暗殺者は魔族だったというのか? しかしこの顔は間違いなくあの暗殺者ではないか)

女王(魔族ならば処刑されても生きていることが納得できる。では、あの旅人は……)

勇者「どうやらその顔は図星を突かれたようだな」

女王「無礼者! お父様の死に乗じてクーデターを起こす気ですわね!」

勇者「ここにいるみんな! こいつは王や王子を子供の頃から恨み続け、ついには魔族と協力して暗殺を実行したんだ!」

『どいうことだ? 王や王子を殺したのは砂漠の国の奴らじゃ』
『女王様と勇者様、どちらを信じれば……』

女王「この者の言うことを信じてはならぬ!」

勇者「証言者はいくらでもいるぞ!」

側近「女王陛下、これではさすがの私もお支えできません」

侍女達「まさか女王陛下が……」

『側近様と侍女達? 女王様に一番近い人達がこぞって』
『まさか本当に、女王陛下が王と王子を暗殺?』

女王「側近! まさか、お前まで妾を裏切るのか!」

側近「申し訳ございません。ただ、恐れながら裏切ったのは姫様であります」

女王「そ、側近! 何を言うのだ! いつものように妾に味方せよ!」

側近「できません」

『あんな側近様見たことない』
『側近様が王家の言葉を否定するってことは、やはり女王は……』

勇者「それでは証言者に質問します」

女王「黙れ! 妾の邪魔をするな!」

勇者「どうやら王を屋上に呼んだのも、王子を狩りに行くよう勧めたのもこの女なんだってな」

側近「……その通りでございます」

女王「おのれ……側近め………」

『女王、あんなに焦ってるぞ』
『これはあの女、真っ黒だな』
『ひっこめ親殺し女ー! 裏切り者ー!』

女王「誰だ! 今の言葉を口にした者は処刑ですわよ!」



『親殺し!』 『親殺し!』 『親殺し!』

『裏切り者!』 『裏切り者!』 『裏切り者!』

勇者「どうやらこれじゃ、民衆全員を処刑しなきゃな」

側近(民衆は煽られやすいだけあって、手の平返しもまた簡単なのですね……)

女王「クッ……許さぬぞ側近」

側近「申し訳ございません、女王陛下」

――翌日――

僧侶「女王、あれ以来部屋から出てきませんね」

戦士「昨日から城の前は大騒ぎだ。王の座を辞めさせろって」

僧侶「王の座を辞めたら今度は裁判。判決は死刑でしょうね」

戦士「間違いねえな」

遊び人「女王陛下の三日天下、か」

僧侶「お母様の夢を叶えるって、強い人間界を作るって、女王は言ってるけど」

戦士「それも女王の狙いの一つだろうが、それが全てじゃねえな」

僧侶「それじゃやっぱり、女王自身の野望?」

戦士「そうだろうよ。じゃなきゃあんな無茶なことは言わねえし、思いつかねえよ。なんだよ人間界での大戦争って」

遊び人「いくら恨んでいたとしても、主君である以前に家族である父親と兄を殺めたのだ」

遊び人「全てを捨てた女王の心は鬼と化し、しかしそれが原因で側近や民衆にも見放される。彼女の心はもはや……」

戦士「魔族を使って暗殺だもんな。まともじゃねえよ」

勇者「…………」

側近「大変です! 王都に魔族の軍勢が!」

戦士「何?」

側近「魔女自身がすでに城の前まで使者としていらしております!」

勇者「魔女? なら通してやってくれ!」

側近「ですが」

勇者「彼女は味方だ」

――王宮のどっかの部屋――

魔女「こんにちは。二人っきりで話すのははじめてね」

勇者「どうしたんだ?」

魔女「あなたには話しておかなくちゃならないことがあって」

勇者「……王の死についてか。女王をそそのかしたのはお前だな?」

魔女「あら、気づいてたの」

勇者「あの謎魔族を見て、こんなことするのはお前しかいないと思ったんだ」

魔女「それ、褒められたと思っとくわ」

勇者「なんでそんなことを!」

魔女「世界を崩壊させないため」

勇者「……ったく、魔女の言うことはわからない」

魔女「簡単に説明してあげるわ」

勇者「バカの俺でもわかるようにな」

魔女「はいはい。それじゃ話すわよ。死んじゃった王様は、はっきり言って戦乱の元凶だわ。王の融和政策はバランスを欠いた危ういもの」

魔女「自分の思想だけで、魔界の事情も人間界の事情も一切考えてないから当然ね。そして始まった魔界と人間界の戦争は、どちらの世界も崩壊に導く」

勇者「崩壊に導く?」

魔女「ええ。魔界は派閥争いが激しいから、魔王様が死ねば内戦状態に陥るわ。人間界だって、王が生きてたら同盟国内部の抗争が始まる」

魔女「王は人間界で最も大きな力を持つ国の元首っていう自覚がないし、相変わらずヘタレるでしょうから、戦争を避けることができるとは思えない」

魔女「つまり、魔族同士、人間同士それぞれの泥沼の戦いが始まるわけね」

勇者「そうなるかはわからないだろ」

魔女「でも可能性は高い。だから私は、戦乱の元凶である王とその一族、そして魔族の好戦派閥を一気に潰そうと考えたのよ」

勇者「つまり?」

魔女「つまり、王と王子を姫に殺させ、その姫の行為が民衆に知られれば王の一族はこの国にいられないってことよ。すでに人間界の平和は一歩手前」

勇者「まさか、姫をこんな状況に追い込んだのもお前か?」

魔女「もちろん。姫が暗殺者だと信じ込んでいたのは、実は私の部下の一番人間っぽい謎魔族

魔女「王を始末して、その後すぐに暗殺者――謎魔族が処刑されたように姫を騙し、姫が魔族と協力して王と王子を暗殺したって状況を作ったのよ」

勇者「手の込んだことをするんだな」

魔女「まだ話は続くわよ。王と王子が死んだ後、王宮から逃げてきた謎魔族をわざと砂漠の国に放置したのよ、あなた達に捕まえさせるため」

魔女「あなた達はうまくそれをやってくれて、城まで謎魔族を運んでくれた」

魔女「当然、謎魔族を暗殺者として処刑した側近さん達は謎魔族の顔を知ってるから、謎魔族の〝ウソ〟の証言を信じる」

魔女「そして姫が魔族と協力して王と王子を殺したという〝ウソ〟が、王国とその民衆達の〝真実〟になるのよ」

勇者「姫は魔族と協力したつもりはないのか。じゃあ、俺たちはウソで姫を裁こうとしてるのか……」

魔女「姫が王と王子を暗殺したのは事実よ。誰と協力しようと国家反逆罪で死刑なんだから、そこを気にしたって意味ないわ」

魔女「それに、これで魔界も人間界も平和になる」

勇者「冷たいなお前。お前に味方した俺は、ただ踊らされただけかよ」

魔女「ううん。あなたの活躍はこれから」

勇者「これから?」

魔女「あなたには魔族の好戦派閥を潰してほしいの。ガーゴイル達ったら、魔王様倒して有頂天になっちゃってね。暴政の嵐よ」

勇者「それも、お前が仕組んだのか?」

魔女「そうよ。ガーゴイルに魔王を倒すチャンスを与えてあげたの」

魔女「あいつら無能だからなんの疑いもなく魔王様暗殺して、しかもすぐに暴政はじめて、おかげで好戦派閥を支持する魔族は皆無。

魔女「今じゃ魔族のほとんどが人間界との共存を望んでるわ」

勇者「お前も姫みたいに、主君を裏切ったんだな」

魔女「あれと一緒にしないで。私はきちんと計画を立てて行動してるの」

勇者「……ならいいけど」

魔女「話続けるわね。あなたの役割は簡単よ。さて、その役割とはなんでしょう!」

勇者「唐突なクイズ形式だな」

魔女「ヒントは架け橋です」

勇者「……その魔族の好戦派閥を、お前ら魔族と一緒に俺が倒せば、俺は魔界の英雄にもなって、人間界と魔界の関係が修復される」

魔女「あれ、まさかの一発正解よ。ただのバカだと思ってたけど意外と理解力高いわね」

勇者「正解なのか!? 適当に言っただけなのに」

魔女(勇者って頭が悪いんじゃなくて、ちょっと天然さんなのかな?)

勇者「魔女の言った通り、俺が架け橋になるんだな」

魔女「そうよ、立派な架け橋にね」

勇者「でも、ひとつだけ気になるんだ。一体、魔界と人間界をこれから誰が率いるんだ?」

勇者「王の一族も魔王もいなくなってんだぞ。まさか俺と魔女がそれぞれ――」

魔女「少なくともそれはないわよ」

一旦中断します。
もしかしたらこのまま「続きはまた明日!」となるかもしれません。
いつかは『明後日には終わると思います』とか言ってましたが、あれは嘘になってしまいましたね……。
ともかく、しばらくお待ちいただけると幸いです。

第五次投下は昨日の中断で強制終了となってしまいました。申し訳ございません。
残りは第六次投下として、今日のうちに完結まで投下しちゃいます。
それでははじめます。

――数日後――

女王は雪の国に亡命、王国は一時的に無政府状態となっていた。

しかしガーゴイルら魔族の好戦派閥は、混乱する人間界に攻め寄せることはできなかった。

ガーゴイルら好戦派閥が陣取る魔王城は、魔族の抵抗勢力、そして勇者に率いられた人間の連合軍に包囲されていたのだ。

僧侶「こんなに人間界と共存の道を歩もうとする魔族がいただなんて……」

戦士「へっ、魔族は魔族で、こんなに魔界と共存の道を歩もうとする人間がいたなんて、とか思ってるんじゃねえの」

僧侶「それもそうですね」

遊び人「おかげで魔王城に数日で到着し包囲、我が軍は戦力の低下もなく士気は高い」

戦士「こんならすぐに勝てるぜ。な、勇者」

勇者「ここを落とせば、人間界と魔界の新たな未来が開けるのか……」

勇者(おかしい。魔王は死んだはずなのに、まだそのオーラが魔界には残ってる。しかも、大きなオーラと小さなオーラの二つが)

戦士「どうした勇者。神妙な顔して」

勇者「いや、なんでもない」

戦士「今さらになって魔女を信じられなくなったか?」

勇者「…………」

戦士「あいつらを見てみろ」

オーク『我らは人間と共に、魔界を救い出す!』

女騎士『その通りだオーク。よろしく頼むぞ』

ドラゴン《これは最後の戦いだ!》

騎士《我らが手を組めば、ガーゴイルなど敵ではない》

戦士「あんだけ堅い友情で結ばれてんだ。人間界と魔界の共存は可能だろうよ」

勇者「そうだな」

僧侶「それに魔女さん結構いい人だしね」

遊び人「しかし、なぜ魔女は王宮に残ったのか……」

勇者「なにか、やらなきゃならないことがあるみたいだ」

僧侶「やらなきゃならないこと?」

勇者「そう。彼女じゃなきゃできないことがあるらしい」

遊び人「フ……なるほど、そういうことか」

戦士「遊び人よう、魔女の思惑がわかったのか」

遊び人「伊達に賭博で相手の心を読み合っていたわけではない」

戦士「へえ、その能力、俺も欲しいなあ」

兵士「勇者様、ご指示を」

勇者「もう時間か。みんな――」

戦士「はいよ」

僧侶「はい!」

遊び人「…………」

人間兵士達『ハッ!』

魔族兵士達『ハッ!』

勇者「全軍、攻撃開始!!」

――王宮――

魔女「――ですから、新王にふさわしいのはあなたしかいないのです」

側近「この私が、ですか」

魔女「側近さんはとっても有能で、世界を見る目がある。そして何より、あの王や姫を最も優しく支えていた」

側近「しかし私は、姫様を裏切りました」

魔女「それは姫のためでしょ? 鬼になろうとする彼女を止めるために」

側近「…………」

魔女「あなたはこの国を最もよく支え、最も愛してきた。そして今、こうして敵であった魔族の私と会話をしている」

側近「私と姫様の違いなど……」

魔女「違います。あの女は物事を分析する能力はありました。でも、力で解決する以外に答えを見いだせなかった」

魔女「だから、あのようなことになった。しかし側近さん、あなたはこの世が力だけでないことを知っている。だから既に答えが見えているはずです」

側近「私には答えなど……」

魔女「とぼけないでください。あなたの行おうとしている様々な政策を見ればわかります」

魔女「魔界と人間界の永遠の共存は不可能でも、あなたなら共存できる期間を最大限まで延ばせる」

側近「ですが、長きに仕えた王家を奪うような真似は、どうしても」

魔女「あなたがこの国を支えることこそ、王家への恩返しになります」

側近「…………」

魔女「あなたしかいないのです! 魔界と人間界の共存を誰よりも長く続けられるのは! ですからどうか――」

側近「重いですね」

魔女「え? 何がですか?」

側近「国を背負うとは、民衆を背負うとは、歴史を背負うとは、重いですね」

魔女「悪を背負うより楽です」

側近「……魔女さんも大変ですな」

魔女「側近さん……」

側近「わかった。私が――」

「オーホッホッホッホ。あなたがこの国の王に? バカらしいですわ!」

側近「そんな……あなた様は亡命したはずでは」

魔女「やっぱり、来たんですね」

――魔王城――

ザコ魔族「ガーゴイル様! 敵がすぐそこまで! ウワー!」

モブ魔族「ザコ? し、死んでる! ウワー!」

地味魔族「モブ、どこへ行くのだ! 逃げるなら俺も連れてけー!」

ガーゴイル「……遂に来たか、勇者」

勇者「本当はそれ、魔王に言われるはずだったんだけどな」

ガーゴイル「黙れ!」

勇者「俺たち人間界と魔界の連合軍、すげえ強いし魔王もいないから、簡単にここまで来られたよ」

ガーゴイル「黙れと言っている! 人間との共存など、我は認めない! 人間は人間同士で争っていろ! 我は魔族との戦いに忙しいのだ!」

勇者「……俺は人間は斬らない。俺のこの強さは、人間界と魔界の共存を阻む一部の魔族を斬るためのものだ!」

ガーゴイル「つべこべ言わず、来い勇者!」

勇者「行くぞ!」

――王宮――

姫「これは全てあなたの仕業ですわね、旅人さん?」

魔女「諦めの悪い女ですねえ、姫は」

姫「妾は姫ではない! 女王ですわよ!」

魔女「違いますよ、姫。あなたをそこまでどん底に突き落としたのは私。なら、後始末も私の仕事」

姫「偉そうな口を利きますわ。でもどうやら魔族は、派閥争いで忙しいみたいですわね。あなた達は、魔族同士で殺し合っていれば良いのですよ!」

魔女「……私はそんなことはしない。私の魔法は魔族を倒すためのものじゃない、魔界と人間界の共存を阻む一部の人間を倒すためのものよ!」

姫「ならば妾がお前の敵ですわね!」

魔女「覚悟!」




勇者と魔女は、新たな時代のため、自らの持つ能力を存分に打ち出した。

そしてそれは、醜き争いを断ち切るのに十分すぎる力であった。


――魔王城――

ガーゴイル「グワッ!」

勇者「一発で終わりか。ま、魔王が倒せるだけの力があるんだもんね、俺には」

――王宮――

姫「妾は……そもそも戦うことなど……できぬ……、グハッ!」

魔女「楽勝ね。姫さん、その執拗さは評価するわ」




勇者と魔女は蔓延る元凶を全て滅ぼし、人間界と魔界の架け橋となったのだ。


世界に平和が訪れた。

無政府状態であった王国は新王の選定を急ぐが、女王死後も王家が次の王の地位を狙っていた。

しかし王家は女王――姫の件でその信頼を地に落とし、民衆から見放される。

王家はついに次の王の地位を諦め、王国に新たな王が誕生することとなった。

一方の魔界では、魔王城決戦でガーゴイルら好戦派閥は玉砕し潰えた。

それからすぐに、新たな魔王が決定する。

新たな魔王は魔女ではないかと噂されていたが、魔王の玉座に座ったのは意外な人物であった。

――数ヶ月後、玉座の間――

側近改め新王「砂漠の国との関係もだいぶ改善しました。ですが、まだ油断はできません」

僧侶改め新側近「王様、また敬語キャラになってますよ」

新王「おっと、つい癖が。それで勇者よ、魔界の王はどうなっているのだ?」

勇者「はっ! 魔界での新魔王による統治は順調に進んでいるようで」

新王「そうか、それは良かった。魔界が安定していれば貿易が盛んになる」

新王「貿易が盛んになれば、輸送路として砂漠の国が豊かになる。我が国も豊かになる。魔界も豊かになる」

勇者「その通りでございます」

新王「しかし、砂漠の国においそれと魔族を住まわせるわけにもいきません。全てはバランスが大切なのです」

新側近「王様、敬語」

新王「うむ……」

戦士改め軍団長「そういや勇者、魔女って今、どうしてんだ?」

遊び人改め料理人「お! あの空飛ぶ美女魔女か! あの娘ホンマべっぴんさんやったな~」

軍団長「料理始めてから、遊び人はなんでまた性格が変わったんだぁ」

新王「そうだ、魔女はどうしているのでしょ……いるのだ?」

勇者「さあ、わかりません。でも、相変わらず暗躍しているそうで」

新側近「いい人なのに、いつも裏方なんだね魔女さん」

軍団長「変わらねえなぁ」

料理人「ちょっとぐらい性格変えた方が、おもろいのにな~」

軍団長「そう言うお前は変わり過ぎだ」

勇者(世界は今のところ平和だ。人間と魔族も今では争ってたのが嘘のように共存できてる。俺は、あいつの味方になってよかった)

――魔王城――

新魔王「う~ん疲れたよ~」

魔女「新魔王様、しっかりしてください」

新魔王「つらいよ~、魔王ってつらいよ~」

魔女「大丈夫ですよ。私が付いてますから」

新魔王「魔女~」

魔女「はいはい、良い子良い子。……ちょっと失礼しますね」

魔女(新魔王様、魔王様の亡き息子の娘、つまり魔王様の孫ってことでまだ小さい娘だから心配なところもあるけど……)

新魔王「も~う、〝魔法の草〟ちゃんと食べなきゃだめなの~?」

魔女(可愛いからいっか。それに……)

魔王「人間界との貿易と国籍に関する資料、か……」

魔女(魔王様が実は生きてて、魔界を統治してるし。これは誰にも言えない秘密だけど)

魔王「魔女よ、貴様は何を楽しそうに微笑んでいる」

魔女「なんでもありませんよ」

魔王「この魔王の死んだフリを思い出し、微笑んでいるのか?」

魔女「わけわからないですよ、魔王様。というか死んだフリ見てないし」

魔王「死んだフリをせよと言ったのは貴様だったがな」

魔女「おかげで魔界と人間界は共存関係です」

魔王「ガーゴイルの勝ち誇ったような顔を今でも思い出す。無明な奴らだった」

魔女「魔界を統治し、魔界と人間界の共存関係を長く続けられるのは、魔王様だけですものね」

新魔王「なんで魔王は魔法の草食べなきゃいけないの? 魔王やだ~!」

魔王「……あの娘はこの魔王のように、なれるのだろうか」

魔女「なれますよ、きっと。だって、魔王様は未だに魔法の草どころか、人間界のニンジンすら食べられないでしょ?」

魔女(私は主君を殺す鬼にはならない。そしてその計画もうまくいった。勇者を味方にして、大正解だったわね)

――終わり――

これにて第六次投下は終了、つまりストーリーは完結です。
何もかもがはじめてだったので緊張しましたが、なんとか完結することができてとても嬉しいです。
それに何より、このssを読んでくださった方の存在が私の大きな励みになりました。
この場で感謝の言葉を述べさせていただきます。

本当にありがとうございました!

ネタはまだないわけではないので、もしかしたらいつか新作を投稿するかもしれません。
そのときには、また読んでいただけたら幸いです。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom