盗賊と 魔女の素敵なプレゼント 編 (42)
魔法
長ったらしい呪文を唱えれば、火が出たり雷が落ちたり……
例えを上げればきりがない。
そもそも何故呪文を唱えれば火が出るのだろう?
どのように調節されている?
その呪文はどうやって解明された。
その呪文はいつから存在したのだ。
そして一体何故、魔法は滅んでしまったのか。
全てが謎だ……
果たして本当に存在したのかどうか、確かめようがない。
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しかし今、この国には魔法が存在している。
魔界だなんだという、異界の力を借りて呼び出したりするものではない。
悪魔と契約し、代償を払い、力を行使するというものでもない。
この国の魔法は全く別のものだ。
では、この国の魔法は何によって支えられ、何を代償としているのか。
単に生贄や儀式、という点ではありきたりなのかもしれないが……
答えは、赤ん坊の魂だ。
いや、魂と言うと、さも形のない、不定のように聞こえるな。
それでは想像しにくいだろうから言い方を変えよう。
赤子の死体
と言えば容易に想像出来るだろうか。
ああそうだ、その通りだ。
正に鬼畜、外道、畜生、塵屑共の狂った所業だ。
千や万の言葉を用いても決して表現出来ない醜悪な人間の所業だ。
生まれたばかりの子を母から奪い、命をも奪い……
無垢なる魂を、幼子の未来を、錬金術師とやらが輝く宝石に変える。
美しくも何の色も持たぬ宝石は、どんな色をも生み出せる。
文字通り、無垢なる生命の宝石。
それは炎、水、氷、雷……様々な色へと変化する。
喜び悲しみ
怒り憎しみ、愛、希望、苦悩、葛藤。
どの色も知らないからこそ、どんな色も与えられる。
扱う者の好きなように、扱う者の欲する色に、それは変化する。
彼等はそれを売り捌く
あろうことか子を亡くした親達へと、ささやかな希望を与える為に……
それが何から生み出されたとも知らず、何を代償としているのかも知らず。
この国の者達は、今日も魔法を使う。
それが愛する我が子とも知らずに、今日も魔法を使うのだ。
ーー古ぼけた手記より抜粋…
盗賊「……魔女、今帰った」
魔女「遅かったな、今日は幾つ盗ってきた」
盗賊「今日は37『人』だ」
魔女「ほう、37『個』か、今日は随分と多いな。何かあったのか?」
盗賊「もうすぐ目標の数に届く、そうなればお前と一緒に過ごすこともなくなる」
盗賊「オレはこの腐った国を抜け出して、早く自由になりたいんだ」
魔女「自由か、良き夢を持つのは勝手だが、私が約束を守ると思うのか?」
盗賊「……その時は、そこにぶら下がってるオレの心臓を刺して死ぬだけだ」
魔女「待て待て、そんな顔をするんじゃない。冗談だ、約束は守る」
魔女「大体、まだ子供の癖に死ぬなどと……簡単に口にしてはいかんだろう」
盗賊「……人を殺す術を教えた奴が善人ぶったことを言うな、言葉が腐って使えなくなる」
魔女「ほー、言うようになったな。それを教えたのは私だがな」フフン
盗賊「黙れ」
魔女「いいや、私は黙らんぞ」
魔女「拾い、育て、読み書きを教え、武術を教えたのは私だ」
魔女「如何に憎もうとも、お前が生きているのは私がいたからだ」
盗賊「……黙れと言っただろう。殺すぞ」
魔女「まったく口の悪い奴だ、そんな言葉を教えた覚えはないぞ?」
盗賊「くどい、お前に殺意を抱かない人間がいたら是非お目に掛かりたい」
魔女「この圧倒的且つ魅惑的芸術的な美しさに惹かれ実らぬ恋をするというなら分かるが……」ウン
魔女「まさか殺意を抱かれるとは……驚きだ」
盗賊「外見を帳消しにする程に脳と心が醜く歪んで濁り腐っているんだよ」
魔女「ほぉ、そうか、お前はそんなに私を怒らせたい……ん?」
盗賊「なんだ」
魔女「私の美しさを否定しなかったな?ほほう、さてはお前、内心では私を
盗賊「安心しろ、内心でも殺したい。悪いが会話に飽きた、オレはもう寝る」
スタスタ…
魔女「なっ…まったく誰に似たのだ!育ての親に向かって何たる口の利き方!」
魔女「しかも、この私との会話を楽しむことすら出来んとはな……フゥ」
魔女「やれやれ、なんとも虚しく哀れな、感受性のない、貧相な奴だ……」
魔女「そうか分かった、分かったぞ……」
魔女「おそらく、脳に重大な障害があるか心を病んでいるに違いない!!」
魔女「嗚呼、なんと不憫な子か!」
魔女「神よ、どうか病める少年を救いたまえ!!」
盗賊「うるせえよ」
魔女「なんだ、まだ起きていたのか?早く寝ないと疲れがとれんぞ?」
盗賊「……お前の声が大きいから、眠れないんだ」
魔女「何だと!?私の愛くるしい声が子守唄になるかと思ったのだが……」
魔女「さては耳もおかしいのか?」
盗賊「脳も心も耳も全て正常だ。毛布を被って『さっさと死ね』」スタスタ
魔女「!!ふふっ、ああ、『おやすみ』」
魔女「……ん?そうか、なる程なる程…やっと分かった」
魔女「いや、そもそもこの頭脳を持ってして分からぬものなどないが……」ウン
魔女「これが世の親が口にする反抗期というやつだな?くくっ、そうか、そうだったのか」
魔女「甘えたいのに甘えられん、ついつい口悪く言ってしまう。ははーん、そういうことだったのか……」
魔女「今頃、素直になれぬ自分を許せず自責の涙で枕を濡らしているに違いない」ニヤ
魔女「まったくもって仕方のない世話の焼ける奴だ。どれ、私の方から行ってやるか」
スタスタ…
盗賊「…スー…スー…」
魔女「何故だ、何故寝ている……」スッ
魔女「枕が濡れていないだと……まあ、寝ているならよいか」ウン
盗賊「…スー…スー…」
魔女「……しかし、まさか私が子を育てるとは思ってもみなかった」
魔女「まあ、並の親になど千年掛かっても到底真似出来ないであろう独学我流の天才的育児を編み出した私のお陰でこんなに立派に育ったわけだが……」
盗賊「……スー…スー…」
魔女「何年経っても、この愛くるしい寝顔は変わらんな。褒美に撫でてやろう」
盗賊「…スー…スー…」
魔女「……自由を手にした時、お前はどうする?ここから去り、何を成す?」
魔女「人の生は短いぞ?生き急いで損はない」
魔女「いや、それよりも目標が己の自由だと?」
魔女「それではあまりに夢がなく、小さいのではないか?」
魔女「お前は仮にも、この偉大なる大悪魔的天才美魔女である私の…その…コホン……」
魔女「私の子なのだから夢は大きく、世界を掴む、くらいでないと困るんだ」
盗賊「…スー…スー…」
魔女「……さて、今日の寝顔も拝んだことだ。そろそろ戻るか」スタスタ
バタン…
盗賊「……声が大きいんだよ…アホ…」
※※※※
オレはあいつに、魔女に育てられた。
幼児を抱いた母親の死体から、オレを拾い上げたらしい。
あいつの言うことを信じればの話しだけど…
そもそも、あいつに初めに教えられたのは疑えということだ。
あいつの話す知識を疑い、書物で確かめ、書物を疑い、実践する。
当時は家の外に自由に出れたし、確かめる方法など幾らでもあった。
それからは読み書き、躯の使い方、まあ色々だ。
でも、この国のこと……
魔法の存在と、その裏側を知った時に全て変わった。
いや、知って疑って、本当に理解した時に、か。
その時に心臓を奪われて、生命の宝石を盗む日々が始まった。
武術云々は、全てこの為に教えられた技術だったんだろう。
自由はオレの望みだけど、オレは望んで盗み続けている。
夢も希望もない、醜悪な、魔法という奴が大嫌いだからだ。
魔法が浸透した今では、魔法はなくてはならないもの、必需品。
それが例え赤ん坊の命だと知っても、今更誰が手放すもんか。
あいつは、それが大量に欲しいと言う。
あいつが、オレの盗んだ生命の宝石を何に使おうが知ったことじゃない。
あいつは魔女と名乗りながら
オレの心臓を奪った時以降、魔法らしきものを使ったことがない。
心臓を奪われても、恨んでるかと言われれば少し悩んでしまう。
家に篭もり、妙な研究と不健康極まりない生活を送っている姿を見てるから。
熱心で、純粋な顔をして、唸って、夜を徹して研究を続けているから。
その点で悪用はしないだろうと、ほんの少しだけ信じてる。
それにもし悪用したとしても、オレには止める術がない。
今この瞬間に爆発が起きて国が吹き飛んでも、オレは別に構わない。
だって、石に閉じ込められた赤ん坊が天に昇って行くだけだから。
天使が、いるべき場所に帰るだけ。
その中には、もしかしたらオレの兄や姉がいたりするのかな。
※※※※※
今日も明日も、大人は魔法で大はしゃぎ!
けれど羨む子供は一人もいない…
泣き声一つ聞こえやしない…
固まっちまって泣けやしない…
子供はいらぬが魔法は欲しい?
そりゃ駄目だ、子供がいなけりゃ魔法はやれん!
魔法が欲しけりゃ子供を作れ!
魔法が欲しけりゃ子供を作れ!!
生まれたその日にお届けするぜ?
二人の愛の結晶を!二人が愛するこの石を!!
産まれて間もない誕生石を!!!
ーー魔法に恋する僕等の歌より抜粋…
ーーー
ーー
ー
盗賊「これで終わりだな」
魔女「……うむ、これだけあれば足りるな。目標達成だ」
盗賊「用は済んだ、さっさと心臓を返せ」
魔女「心臓?何のことだ?」
盗賊「ふざけるな、其処にあるオレの心臓を返せ!」
魔女「心臓ならお前の胸の中にあるだろう?ほれ、手を当てて確かめてみろ」
盗賊「これは魔法で連結してるから鼓動は感じるだけだと、お前が言っ……!!」
魔女「くくっ、疑えと言ったのにすっかり信じていたようだな」
盗賊「……てめえ」
魔女「大体、心臓が別の場所にありながら鼓動を感じられることを不思議に思わなかったのか?」
魔女「そんな都合のよい魔法なんぞ、あるわけがないだろう?」
盗賊「じゃあ最初から…」
魔女「勿論、心臓なんぞ奪っていない。この心臓はただの模型だ」ヒョイ
ドクン…ドクン…
魔女「どうだ、良く出来てるだろう?定期的に空気を入れて動かしているんだ」
盗賊「………」
魔女「どうした?声も出ないか?」
盗賊「いや、騙されたオレが馬鹿だった」
魔女「ん?意外だな……激昂して殴り掛かってくるかと思っていた」
盗賊「もう子供じゃないんだ、そんなことはしない」
魔女「ふふん、子供はそう言うんだ」
盗賊「……で、完成するんだろ?何をするか知らないけど」
魔女「ああ、今から始めようと思う」
盗賊「……そうか。じゃあ、オレは行くよ」
魔女「ん-、ちょっと待て、良ければ見ていってくれないか?」
盗賊「……うん、分かった」
魔女「まったく、そんな顔をするな。大丈夫だ」
盗賊「心配なんかしてねえよ」
魔女「ん?心配してくれてるのか?可愛い奴め」
盗賊「うるさい、撫でるな、とっとと始めろ」
魔女「分かった分かった。よく見ていろ?これが、私の魔法だ……」
月明かりのない闇夜。
赤い絨毯、黒い壁紙、シャンデリア。
その部屋の中心には黒衣の魔女が一人。
長い黒髪に陶器のような白い肌、青白い指先、細い腕。
腕を広げ天を仰ぐ様は、大舞台で女優が歌い出すかのように見えた。
美女を自称して憚らない彼女の真の美貌が、最大限に生かされている瞬間だ。
腕を広げてからやや遅れて、輝きを失っていた生命の宝石が一斉に輝き出す。
光は瞬く間にそこかしこから溢れ出し、闇夜を切り裂き、国を丸ごと包み込む。
盗賊は魅入っていた。
彼女の姿、満足感と自信に満ち溢れた笑み。
本来なら目を眩ませる程の光も、この美しき魔女には到底敵わない。
光の爆発は収まり、次なる現象が起きる。
生命の宝石が彼女に吸い寄せられ、一つ一つが体内へと沈んでいく。
帰る場所を見つけたように、子供達は一斉に母の下へと走り出す。
盗賊は気付いた。
いつも余裕を崩さぬ彼女の顔が、徐々にではあるが変化していることに。
彼女の躯に変化はないが、負担が大きいのは確かだ。
何しろ身に宿す生命が多すぎる。
千やそこらではない膨大な生命が、彼女を母として回帰しているのだ。
強く噛み締める彼女の唇から赤い筋が見えた。
握り締めた拳、その隙間から零れ落ちた赤が、絨毯に飲み込まれる。
これ以上は危険だと、光の世界を、盗賊が駆け抜ける。
きっと、彼女は子供達を救うつもりだったのだろう。
自らが母となり胎内へと導くことで、永遠の安らぎを与えるつもりだったのだろう。
その為に膨大な数の生命の宝石を集めさせたのだろうと、光の中で盗賊は思う。
救われたのは子供達だけではない。
自分も彼女によって救われた。
何より、盗賊は生きている。
全ての星を掻き集めたような
生命の流れ星の中で、盗賊だけが肉体を得て生きているのだ。
何故彼女が見て欲しいと言ったのかは理解出来なかったが、盗賊は母を助ける為に走った。
安住の地へ回帰する子供達と、母を守ろうと奔走する子供がいた。
しかし、群がる星の子供達は容赦なく襲い掛かる。
光の中で光が動く、そんなものに対応できるはずもなく盗賊は呆気なく膝を突いた。
もう止せと、あらん限りの声で叫んでみても、彼女から返ってくるのは痛みを堪えた微笑み一つ。
這いずって彼女の下へ辿り着いた時には、彼を除く全ての子供達が回帰していた。
血の気が失せたその顔には、未だしぶとい笑みが残っている。
何故こんなことをしたのだと
泣き叫びながら問う彼の表情は母を想うそれに違いなかった。
彼女を抱き締め、尚も叫ぶ。
オレの母を返せと、彼女へ帰っていった子供達に向けて怒りを爆発させた。
無駄だと分かっていながら、彼は叫び続けた。
すると、多くの光が彼女の胎内から現れ、彼をぐるりと囲んだ。
多いとは言え、彼女へと帰って行った子供達の一割にも満たない光だろうが……
同情したのか、母を失いたくないのか、無垢なる光は彼を見つめている。
その光景を眺め呆然とする彼の頬を、青白い指先が撫でた。
すぐさま手を握るが、酷く冷たい。
しかも、袖が捲れ露わになった腕は生命の宝石同様の輝きを放っていた。
瞬時に理解出来た。
彼女の躯そのものが生命の宝石へと変貌するのだと…
ここへ来て、彼は彼女の真の目的を知った気がした。
おそらく自分自身が生命の宝石となることで
これから産まれるであろう子供達の犠牲を防ごうとしたのではないか、と。
彼女の躯の一欠片さえあれば魔法は使えるだろう。
そしていずれは、欠片も残らず、砕かれてしまうだろう。
母は微笑み、泣き止まぬ我が子を撫で続けていた。
一度も見せたことのない、慈愛に満ちた笑みだ。
何故この魔女は自分を助け、育てたのだろうか?
ずっと訊きたかったことだが、彼は遂に訊かなかった。
きっと母は、魔女は、はぐらかすに決まっているだろうから。
手を握り祈るように目を閉じる我が子に、母は残りの命を絞り出すように口を開いた。
ーーお前に名を与えよう
ーー俗物共の言う、誕生日プレゼントというやつだ……
ーー今日はお前を拾った日、私がお前の母になった記念日だ
ーー色々悩んだが、やはりシンプルな方がよいと思う
ーービト……ビト・アバスカル……どうだ?気に入っ…たか?
ーーああ、気に入ったよ。ありがとう、母さん
そうか、と嬉しそうに笑いながら目を閉じた母の躯は、既に生命の宝石へと変わっていた。
帰る場所を亡くした子供達は、彼を見つめたまま動かない。
そこで彼は、こう口にした。
ーーお前らも、オレと生きていかないか?
ーーお前らもビト・アバスカルとして、母さんの息子として……
ーーいつかこの手で、世界を掴もうぜ?
光は舞い踊り、彼の誕生日を大いに祝福したのち、自由な魂へと身を委ねる。
それに伴う多少の痛みはあったが、母の痛みに比べれば大したことはない。
両手を広げ聖母のように微笑む母を何とか立たせ、その手を握る。
ーーいつか必ず、此処に帰って来るから
ーー行って来ます、母さん
母に別れを告げ、光の爆発で混乱する国を駆け抜ると、彼は世界へと羽ばたいた。
おしまい
あまり気分の良い話しではないと思いますが
読んでくれた方、ありがとうございました
以前に書いた
盗賊と不思議な宝石の中で盗賊の能力説明が足りないので書きました、分からなかった方は申し訳ない。
盗賊と終わりの勇者ではあまり戦う所を書けなかったので…
また何か思い付いたら書きます。
ありがとうございました。
※※※※
Serafima Shamina
盗賊「んー、彫られてんのは名前だけか。つーか、やけに綺麗な墓石だな」
盗賊「宝石やなんかじゃねえだろうな……他に墓はねえし、妙な場所だ」
盗賊「……にしても、でっけえ墓だ。これでもかってくらいに派手だし」
彼女が先祖の名付け親にして育ての親。
偉大なる魔女であり、偉大なる母だ。
オレ達は絶対に、彼女を忘れちゃならない。
だからいつか必ず行って来い、彼女の眠る場所へ……
盗賊「名付け親で育ての親ってのは、まだ分かるんだけどさ……」
盗賊「魔女…魔女ねえ、どんな人だったんだろうな」
少女「知りたい?」ヒョコ
盗賊「うおっ!!幽霊、じゃねえよな?あー、びっくりした…」
少女「初めまして、こんばんは」ニコッ
盗賊「は?あ、はい、初めまして」
少女「あなたが、ビト・アバスカル?」
盗賊「そうだけど?」
少女「私はセラフィマ、よろしくどうぞ」ニコッ
盗賊「……墓に彫られてんのと同じ名前ですか、奇遇ですね」
少女「ふふっ、やっと会えた。本当に、彼の生まれ変わりみたい」
盗賊「あの、彼って誰ですかね?」
少女「最初のあなた、あなたのご先祖サマ」
盗賊「へぇ、そりゃまた…随分と長生きしてますね」
少女「お蔭様で長生きしてます」
盗賊「……あの、きみは
少女「このお墓はね?あなたのご先祖サマが生涯を賭して集めた宝石で出来てるの」
盗賊「!!」
盗賊「……これで一つ、じゃないのか?」
少女「元々は一つだったけど砕かれてしまったの。その欠片全てを、彼は集めた……」
少女「近付いてよーく見ると、ほらっ、継ぎ接ぎでしょ?」
盗賊「……なんで墓石の為にそこまで?魔女…彼女はどんな存在だったんだ?」
少女「ご先祖サマと魔女のこと、もっと知りたい?」
盗賊「是非知りたいね、何で墓石が光ってるのかも含めて」
少女「じゃあ座って話しましょ?」トスン
盗賊「墓石を背もたれにすんのか?罰が当たるぜ?」
少女「私のお墓だからいいの、ほら早く」
盗賊「……本人がいいなら、まあいいか。つーか、やっぱり幽霊?」トスン
少女「ご先祖サマのことも魔女のことも私の正体も、聞けば分かるよ?」
盗賊「そっか、では早速ですがお聞かせ願います」
少女「ふふっ、じゃあ始めるね?」
少女「……今はなき魔法の国で、二人は出逢った……」
少女「あれは、そう……雪の降りしきる夜のことーーー
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