花売り「私が勇者!?」 新装版 (52)
このSSは『花売り「私は勇者!?」』の移転作品です。
エロ・グロ、倫理観を損なう表現が多めです。
今まで書いた文を加筆・修正(予定)を少ししています。
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花売り「私が勇者!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420045507/#footer)
---魔王。
これを聞いて諸君はどんな姿を想像するのだろうか。
多くの者は我々と同じ人型と思うだろう。
しかし、しかしだ。それを大衆は見たことがあるのだろうか。
真の姿はごく一部の者にしか分からぬ。
多くは「ただの敵」としてしか認識していないのだ。
つまるところ、我々の決めつけでしかないと言うことである。
近年は共同で世界を変えようとする話が増えているが果たしてどうだろう。
私は滑稽だと考える。
何故なら魔王とは---
生涯かけても知ることが出来ぬからである。
見えたとしてもそれは幻に過ぎぬのだ。
栄枯の国 シュイズェラ
「すみませんー。この花下さーい。」
エミリー「はい!ただいまー。」
「しかしエミリーちゃん……よく働くねぇ。どうだ、俺の息子と交換しないか?」
エミリー「はは……あ、10フランになります。はい、お釣りは1/2フランです!ありがとうございましたー!」
「あら、エミリー。客はどうだい?」
エミリー「うん!だいじょーぶだよ!フランチェスカおばあちゃん!」
フランチェスカ「そうかい。じゃあ店じまいでもしようかねぇ。晩御飯は好きなチーズフォンドゥだよ。」
エミリー「おお!益々手伝わねば!」
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フランチェスカ「この仕事には慣れたかい?エミリー?」
エミリー「うん!慣れたよ。大丈夫!大丈夫!」
エミリーの仕事、正確には家の商売は花屋だ。多くの種類、色とりどりの花をそろえている。
フランチェスカ「そう言えばまた魔王軍の攻撃が激しくなったんだってねぇ。南の村が大変なことになっているそうだよ。」
エミリー「魔王……」
フランチェスカ「墓参りには行ってるかい?」
エミリー「うん……。でも慣れたよ。」
フランチェスカ「まさかトリの炎に巻き込まれるとは思わなかったよ……」
エミリー「な、泣かないでよ!大丈夫、大丈夫だから!」
魔王軍は主にトリを主力にしている。
そして火を降らせたり、細い銃を2つ付けている。
魔王軍との戦争はエミリーが生まれてからずっと行っている、らしい。
戦場こそが日常。
フランチェスカ「済まないねぇ……」
エミリー「ささ、食べちゃおうよ!せっかくの料理が冷めちゃうしさ!」
尾を引くチーズに気を付けつつ食べる。
エミリー(ん~!美味しい!)
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エミリー(パパ……ママ……)
食事後、居るのは家から南西にある共同墓地だ。
石の十字架をただ等間隔に並べてあるだけであり、その下には平らな石で名前が掘られている。
エミリー(どうして魔王軍は……こんなことを……)
エミリー(何故来たか。不明。対抗策。無し。軍はほぼ壊滅。しかも道中で。)
エミリー(なのに何で……消えちゃうの……?)
エミリー(大切な人を奪うの……?)
両親は7年前に死んだ。魔王軍の攻撃によって。
死因は、幼いエミリーを庇ったためである。
エミリー「ぅう……ぅ」
涙が出て来る。ここに来ると何故か出てきてしまう。
エミリー「お花、置いておくね。これね、ぐず、ガーベラって言うんだよ……」
エミリー「……行かないと。またね、パパ、ママ」
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エミリー「いらっしゃいませー!……ってアニーお兄さん!?」
アニーはいつも花を買ってくれる常連客だ。
アニー「エミリーちゃん……僕はしばらく、いやずっと離れるかもしれないんだ。その挨拶に来たんだ」
エミリー「どうして?」
アニー「……呼び出されたんだ。中央にね。」
エミリー「そう、なんだ……」
何も珍しい事ではない。
彼は店の常連客で、先月に彼女が出来たと言う。
エミリー(可哀そう……すぐお姉さんと離ればなれになるなんて……)
今月半ばに結婚式を挙げる予定であり、そのブーケをここで頼んでいた。
アニー「だから行ってくるね。エミリーちゃん。」
エミリー「……うん。行ってらっしゃい、アニーお兄さん……」
エミリー(また、行っちゃった……)
白い花弁の中央に黄色い器のような物が一つ。
アイリスの花。
エミリー(……そんな眼で見つめないでよ……)
エミリー(私だって、悲しいんだよ……)
---運命とは不確定な要素を含む物だ。
運命は変えられないとか変えてみせるなどと言う愚か者が居る。
見えないものを信じ見えると思うことこそが愚か者であると言う証拠。
良くても悪くても、言うであろう。
これは運命なのだから仕方ないのだと。
あゝ、馬鹿馬鹿しい。
どのような者でもある程度は予測が付くのではないだろうか。
行いさえ振り返れば。
君よ、惑わされたもう無かれ。
---栄枯の国より発見された詩集の一文より。タイトル及び作者は何故かインクで消されており、不明。
数日後。夜。
「エミリー・ハートさん!居ませんかー?」
エミリー(こんな遅くに誰だろう)
眠い頭を醒まさせる。どうやら郵便屋の様だ。
エミリー「エミリーは私です。何の御用でしょう?」
「郵便です。では失礼!」
エミリー(陽がだいぶ落ちているのに元気だなぁ)
エミリー(宛名は、王国かぁ……なんだろ?)
赤い蝋(これで封をしていた)をナイフで開ける。
中には一枚の高級な紙が入っており、一文には分りやすいようこう書かれていた。
だが彼女にはただぐちゃぐちゃに書かれている線にしか見えない。
エミリー(……?落書き?でも王様がこんな事するはずないのに)
エミリー「……」
だが、これが届いたことが意味するものは解っていた。
かねがね噂になっていたからだ。
勇者。それはだいたいは王家の血筋や英雄の血を引くもの。
エミリー(最近は士気を高めるための材料……って)
エミリー(カッコいいだろうなぁ)
剣を振り回し、魔物を一刀両断。
困っている人々を救い、魔王を討ち永遠の平和をもたらす者。
エミリー(勇者かぁ……)
エミリー(そうとなればおばあちゃんに伝えないと!)
エミリー「おばあちゃーん!手紙ー!」
無理やり起こし、手紙を渡す。
フランチェスカ「はいはい。これエミリー宛てじゃないかい!中は……」
見る見るうちに険しい顔をし始める。
フランチェスカ「……いいかい?この話はちゃんと断るんだよ。明日の朝10時、王都にある城へ行く。いいね?」
エミリー「……?うん!」
エミリー(そう書かれていたのかな?)
エミリー(もしかして私、悪い事を!?つまみ食いしたり、野原で勝手にお昼寝した事がバレた!?あわわ……)
だが眠気がそれを覆いこむ。
エミリー「ふわぁ……んー……」
エミリー「行ってくるね!」
少し立派なカバンのなかにハンカチ、インクが途切れないペン、メモ帳と昨夜届いた手紙と駄賃の入った袋。
それらを入れたことを確認する。
フランチェスカ「ハンカチは?それに財布は持ったかい?後駄賃は……」
エミリー「心配し過ぎー!行ってくるね!」
エミリー(きっと分かってくれる。けどその前に……)
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少し暗い森を抜けた先にあるのは複数の太陽であった。
エミリー「うわぁ……!ここは変わらないね!」
少し入った先にある、秘密のひまわり畑。両親と一緒に来た場所。
真っ直ぐ、綺麗に咲いている。
エミリー「魔王軍の人達もこれ見たら……やめてくれるかなぁ?」
エミリー(お花は皆好きってママが言ってた!本当は誰も居れたくないんだけど……しょうがないよね)
エミリー(……そのためにも行かないと!)
そこを抜け、しばらく歩く。
王都へはここから真っ直ぐ行けばいい。
エミリー(でも何で私なんだろう?)
そんな疑問を抱きながら王都へと向かうのであった。
王都には歩きで行く。馬車が出ていないからだ。
道中にはのどかな風景が広がっている典型的田舎情緒が広がり飽きさせないためか、転々と建物が建つ。
風はそよそよ、陽はぽかぽか、川はせせらぎ、人の音よりも鳥の声が聞こえている。
エミリー「~♪」
その中に不気味な音が聞こえる。
遠くからだが二枚の羽。
エミリー(あれ?大きな鳥……でもこの音……)
エミリー(両方の翼に黒い正十字……)
エミリー(魔王のトリだ……!)
エミリー(隠れないと!)
近くにある橋の下に急いで隠れる。
空気を斬る音。謎のうめき声をあげてタタタタと言う乾いた音が聞こえる。
それは幸いにも彼女には来ず、うめき声はどこか遠くへと消えていく。
エミリー(……いなくなったよね……?)
エミリー(何処の誰かは知らないけど、ごめんなさい……)
エミリー(大きな羽……トリだ……)
エミリー(……早く行かなきゃ!出ないと次は私……)
変な事に少し元気になる。
エミリー「良し!では再び王都へ!おー!」
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午後。王都。
エミリー(すごい人混み……!)
活気ある色とりどりの店の数々。
往来する荷車。荷車。馬車。人。人。人。
エミリー(あわわ!)
エミリー(活気ある道を『大通り』って言うんだっけ?)
エミリー(……目線が向いてる気がするのはどうしてなんだろう?)
エミリー(別に恥ずかしい事してないのに、王都の人達って変なの)
エミリー(えーと、お城には真っ直ぐ行けばいいだよね!うん!)
しばらく歩き、門の前に着く。
大きな石を何重にも積み上げた厚くて堅牢な入口。
門番「あなたは?」
カバンから手紙を取り出し、見せる。
エミリー「えーと……これでいいですか?」
門番はどこか複雑そうな顔をして通す。
門番「……はい。エミリー・ハートさん。どうぞ。」
エミリー(緊張するなぁ……)
城内
中は広く長い赤い絨毯が敷かれ、壁には綺麗な絵がかけられている。
天井には大きく煌びやかなシャンデリア。
エミリー「うわぁ……!綺麗……」
思わず声を漏らしてしまう。
今居る場所は会議室。
つまり国の中枢。
エミリー(椅子ふかふかだぁ)
王「ようこそ。エミリー・ハート殿。遠方はるばるご苦労である」
いつの間にか王が来ていた。
エミリー「そ、そんなこと……」
思わず、畏まってしまう。
王「では要件は……」
エミリー(確かおばあちゃんは断れって言ってたっけ。きっと誰かと見合いさせられるとか、なのかなぁ)
エミリー「お断りします!だって私はただ暮らしたいんです!罪人でもないですし!」
兵士「貴様、何たる失礼を!」
槍を向けられ、「ひっ」と小さく声をあげてしまう。
王「……内容は読んだのか?エミリーよ」
エミリー「……?私はただ、断れっておばあちゃんに言われて……」
王「……はぁ。所詮は庶民か……、仕方あるまい、率直に言おう」
ごくりと唾を飲み込む。
王「栄枯の国の王として命じる。勇者になれ。エミリー・ハート」
エミリー「ゆう、しゃ……?」
その言葉に呆然としてしまう。
エミリー(何で?どうして?私は何かあるって訳じゃない!まして英雄の子でも貴族の子でも王様と関係ある人でもない!)
エミリー「待って下さい!どうして……私、なんですか……?」
王「お告げじゃ。今年ならやってくれるだろうと。魔王を倒してくれるだろうと」
エミリー「は、はあ……ですが……私、いきなり言われても、その」
うじうじとしている小娘をさっさと追い出したい気持ちが見えている。
王「そうか……いきなりで混乱したのかもしれぬ。今夜は泊っていきなさい。」
エミリー「でも……それじゃ……おばあちゃんが……」
王「……では送っていくとしよう。決めるのは1週間までじゃ。よいな?」
エミリー「……はい」
兵士「では案内しよう。こちらへどうぞ」
城外
気持ちのいい春風があたり、気持ちよくなってくる。
エミリー(1週間かぁー。どうせ変わらないしいいや)
まばらになってゆく道。ふとツンとくる腐った臭いが鼻孔をくすぐる。
『それ』はかつて人の体をした何かであった。
体中が穴あきチーズのようになっている。
そこからマグマのように白く細長いものが蠢いている。
エミリー「だ、大丈夫です……か?」
近づくにつれて臭いがキツくなり、これ以上近づくのをやめた。
しばらくして、彼女は『それ』を思い出してしまい口の中が酸っぱくなるまで吐きつづけた。
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エミリー「はぁ……はぁ……うっ……」
吐き気が未だに襲いかかる。
生理的嫌悪。
エミリー(あれって……魔王軍が……したんだよね……)
魔王軍。それは少なくとも千年以上に渡り戦い続けている。
どんな武器も兵士も魔物の前ではあっという間に全滅。
これを繰り返している。
人間の戦争もその合間に起こっており、戦場こそが日常、そう考える人も少なくは無い。
何よりも、魔王の正体は未だに分っていないと言う点だ。勇者はことごとく魔王にやられている。
エミリー(勇者、カッコいいけど私なんかが役に立つのかなぁ)
エミリー(勇者かぁ)
想像してみるが、どことなく間抜けな自分を思い浮かべてしまう。
エミリー(家帰っておばあちゃんにただいま言って、店番して)
エミリー(暖かいご飯とお風呂とベットに入って。うん!これが私らしいよね!)
夕方
エミリー「ただいまー!」
フランチェスカ「おお。お帰り。どうだったかい?」
エミリー「うーんとね、断ってきたんだけど少しだけ時間くれたよ!」
フランチェスカ「そうかい。そうかい。今夜はもう寝なさい。疲れただろう?お風呂すぐ入れるからね。」
エミリー「うん!」
エミリー(魔王は誰かがやっつけてくれるよね。私じゃない人が!)
エミリー(怖いのは……嫌いだしさ……)
エミリー(それに、私は勇者になんて向いていないよ)
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数十日後
店に客は一人もいない。
今日も閑散としている。
エミリー(今日もお花は綺麗だなーっと)
エミリー「いらっしゃいませー!」
「ああ……エミリーちゃん……この花くれないかな?」
顔に生気のない男の老人が訪れる。この日初の客である。
動きはどことなく震えている様な、そんな気がした。
エミリー「はい!糸水仙とハナミズキですね。2フランになります。……はい、ちょうどですね。ありがとうございましたー!」
エミリー(あれって確か……アニーお兄ちゃんのお父さんだよね……)
エミリー(明るくて時々お菓子くれたり楽しいお話とかしてくれるいいおじさんなのに)
彼の息子が徴兵されてからずっとこの調子である。
エミリー(でも何であんな悲しい顔してたんだろう?嬉しそうにしてたのに)
フランチェスカ「……エミリー。今日はここで終わろうか。」
エミリー「どうして?」
顔を伏せ、裏へと連れて行かれる。
エミリー(意味が分んないや。それにあの糸水仙とハナミズキ……確か花言葉は――)
フランチェスカ「アニーがね……」
エミリー(――思い出と永続性)
フランチェスカ「死んだんだよ……。だから、その、葬式だよ。」
エミリー「……え?」
数十日前に笑顔で去った英雄の訃報であった。
その日の夜、どこかが揺れた。
それが何かは分からないが、不安を消し飛ばした気がした。
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翌日。王都。城内にて。
王「真か、真なのだな?」
エミリー「……はい。もう失いたくないので……」
祖母を何とか説得させ、小さな袋をベルトにかけて王都へと向かった。
それがついさっきまでの事である。
王「……そうか。ではこれを授けよう。」
渡されたのは少女でも扱えるだろう短い剣と謎の模様と線が彫られた小さな黒い板。
王「これは関所を通ることが出来る手形じゃ。さらには宿も無料に出来る。」
小さな袋の中に入れる。
エミリー「必ず魔王を、討ちます」
少女が勇者としての、一歩が始まる。
---この世界はどこかおかしい。
レンガ作りの建物に飾られるは刃が光る刀剣類。
この時代にふさわしくない崩れかけた機械仕掛けのビルにいるのは、剣と弓を使う盗賊団。
そして、大都会に見慣れない銃と見慣れたナイフを使う田舎臭い殺人鬼。
西の国。午前10時半すぎ。
ミリー「あの……これ……」
「はいはい……確かに。お通り下さい。」
手形を見せ、関所を無事通過。
エミリー(流石王国の手形だなぁ……効き目凄い!)
旅立ちから2日目。
宿の取り方も歩きなれなていない体も、それなりには馴染んできている。
エミリー(少しだけ慣れてきた、かなぁ)
今いるのは西の国。
名物はソーセージだ。
エミリー(まずは魔王について聞いてみようかな)
大通り。
エミリー(聞くときは人が好さそうなのがいいんだっけ?)
エミリー(あの人は怖そう……このお姉さんは……忙しそうだし……子供は……ない、よね)
人ごみの中に優しそうな青年が目に入る。
エミリー(このお兄さんなら!そんなに急いでなさそうだし)
波をかき分け、尋ねる。
エミリー「あの!すみません!」
声が少し上ずる。
「何かね?」
エミリー「魔王についてお聞きしたいのですが……」
「敵だろう?それ以上でも以下でもない。」
エミリー「は、はあ……」
聞きたいことはそれではないが、どうにもうまく今は説明できない。
「そろそろ行かねば。失礼。」
エミリー「ありがとうございました。」
エミリー(うーん、急いでいたのかな……?)
エミリー(どこも同じなのかな?もう少ししてみよう!)
世界が終-る日は着-と近--ており-す-
ぜひと-わが社の--で-る---ターを
ご利用く-さい!
---社
----西の国で見つかったポスター。洞窟のような何かに人が中にどんどん入っている。
大通り沿い。ベンチ。昼過ぎ。
エミリー(駄目だぁー!同じ答えしか返ってこないよ……)
半ば諦めかけたが、どうにか聞き出したい。
どこか聡明そうな男が通りかかる。
エミリー(最後にあの人に聞いてみよ!)
エミリー「すみませんー!」
青年「何かな?」
エミリー「魔王についてお聞きしたいのですが……」
青年「さあね。僕も知らないよ。」
エミリー「そう、ですか……」
青年「でも最近ここら辺で殺人鬼がうろついてるそうだよ。」
エミリー「もしかして魔王ですか!?」
すると彼は、「はは、そうかもね」と茶化す。
青年「君はもしかして勇者かな?」
エミリー「はい!」
手形を見せる。
青年「ふぅん、君は栄枯の国の出か。でもこんな少女が勇者だなんて……信じられないよ。」
エミリー「魔王を倒して平和にする!それが私の目的です!」
青年「……そうか。うん、頑張ってよ。あ、殺人鬼の情報はここから真っ直ぐだ。御触れに書かれているかもね」
エミリー「ありがとうございます!」
青年は何か言いたそうにしてたが、エミリーはすぐさま向かい始める。
青年(もう行っちゃったよ。まあいいかな)
しばらく町を歩いていると人が集まっていた。
何かあった様だ。
「何あれ、酷い……」
「殺人鬼の犠牲になってしまったのか」
「これで何人目だ……これじゃあおちおち出歩けないぞ!」
「兵士は何してるんだ!」
エミリー「なにこれ……」
隙間から覗くと切り刻まれた人の形をした『何か』があった。
その周りを兵士が囲んでいる。
「殺人鬼だ……殺人鬼の仕業だ……!」
「こんなことするのは魔王軍に違い無いのよ!そうに決まってるッ」
エミリー(殺人鬼……?さっきからずっと言ってるなぁ)
エミリー(うん、聞いてみよう。きっと手がかりがつかめるかも)
エミリー「あのすみません。殺人鬼について聞きたいのですが……」
「殺人鬼について?はは、嬢ちゃん。知ってどうするんだい?」
エミリー「それは……その、えっと……つ、捕まえます!」
ふんす!と鼻息を荒くして答える。
「子供はそんなことしちゃいけない。大人に任せなさい。でもせっかくだし少し話してあげようか。」
たしなめられた気もするが、情報を聞けるのはありがたい。
エミリー「……!お願いします!」
話しかけたのはいつぞやに見た青年である。
「そうだね、まず君はなんでこの事について聞くんだい?」
「ましてやまだ幼いじゃないか」
エミリー「私、魔王を倒さないといけないんです。勇者なんですよ!」
証である黒い板切れを出す。
「これが勇者の証か……初めてみたよ。なるほどね、なるほどなるほど」
うんうんと彼は勝手に納得している様だ。
「殺人鬼はこの国で一番の問題だからね。どうやら魔王軍がそうさせているって皆言ってるよ」
「それで、殺人鬼はいつから出てきたんですか?」
「そうだね、かれこれ1年位前かな。手口不明、凶器は鈍器か刃物か銃とかいろいろ言われている。はは、これじゃ誰でも犯人だね」
「殺された人数はもう20人以上。大体は殴打らしい」
「警察も威信にかけて捜査中。以上かな」
カリカリとメモを取る。これで忘れない。
エミリー「ありがとうございました!」
「ああ。気を付けるんだよ。」
エミリー(まとめると殺人鬼はもう20人以上殺している。手がかりは無し)
エミリー(ほとんどが殴られている。……う~ん……)
夜 ホテル
エミリー(疲れた……寝よう……)
近くの宿に寄る。
手形を見せ、部屋を案内させる。
エミリー(凄い……!こんないい部屋入った事ないよ!)
今まで見たことないような作り。
高級そうなふかふかベッド。
明るく輝くシャンデリア。
こけても痛くなさそうな羽毛の床。
彼女が向かったのは最初の物である。
エミリー(もう遅いし寝よ……おやすみ、おばあちゃん……)
>>>>>
深夜。路地裏
今まさに誰かが死を覚悟していた。
青年の手には幅が広いナイフを持っている。
それを笑顔で斬りつけ、腕を一つ飛ばす。
青年「~♪」
ガタイの良い男は大声を上げ、逃げ出そうとするも心臓を一突きの後、刃を回転させ引き抜く。
体からワインの様に血があふれ出て、倒れる。
そこから別の物を取り出す。
ナイフではなく、拳銃でもない。
しかし、それは楕円のものであった。
激しい音をたてながら切断してゆく。
異常とも言える光景から動くことすらままならなかった。
「や、やめ、てよ……!」
月明りから見えるは、女。
ゲロと涙、鼻水と体液で顔をくしゃくしゃにさせている。
青年「やだよ。僕が死ぬからね。」
そして激しい音の正体がそれの周りから出る空を切る音と理解する。
だが、付きつきられたものから徐々に命が終わる事が刻々と迫ることを意味していた。
「死……が……み……」
青年「そう」
そして彼女の人生は幕を閉じた。
「あがぁ……」
肉塊となった死体を彼は言い訳を言いながら解体してゆく。
青年「あそこの男は君をレイプしようとしたんだよ?殺されて当たり前じゃないのかい?」
エミリー(同時に2人も[ピーーー]なんて……)
青年「ひどいことをする人もいるものだ……」
エミリー「あ!昨日の!」
青年「あの時の。どうだい?手がかりは掴めそう?」
エミリー「それが……あはは……」
「魔王軍の仕業だ。きっとそうに違いない!」
「どこかに紛れ込んでるのか?おいおい、冗談じゃないぞッ」
「そんな事どうでもいいわ!警察や軍がまともじゃないからこうなったのよ!きっとそう!」
青年「魔王、ね。そうかもしれないね。」
エミリー(……何か違う気がする)
謎の違和感。
青年「おっと。そろそろ時間だ。急がないと。じゃあね。」
エミリー(これ、少し調べてみようかな)
エミリー(同時に2人も[ピーーー]なんて……)
青年「ひどいことをする人もいるものだ……」
エミリー「あ!昨日の!」
青年「あの時の。どうだい?手がかりは掴めそう?」
エミリー「それが……あはは……」
「魔王軍の仕業だ。きっとそうに違いない!」
「どこかに紛れ込んでるのか?おいおい、冗談じゃないぞッ」
「そんな事どうでもいいわ!警察や軍がまともじゃないからこうなったのよ!きっとそう!」
青年「魔王、ね。そうかもしれないね。」
エミリー(……何か違う気がする)
謎の違和感。
青年「おっと。そろそろ時間だ。急がないと。じゃあね。」
エミリー(これ、少し調べてみようかな)
エミリー(同時に2人も殺されるなんて……)
青年「ひどいことをする人もいるものだ……」
エミリー「あ!昨日の!」
青年「あの時の。どうだい?手がかりは掴めそう?」
エミリー「それが……あはは……」
「魔王軍の仕業だ。きっとそうに違いない!」
「どこかに紛れ込んでるのか?おいおい、冗談じゃないぞッ」
「そんな事どうでもいいわ!警察や軍がまともじゃないからこうなったのよ!きっとそう!」
青年「魔王、ね。そうかもしれないね。」
エミリー(……何か違う気がする)
謎の違和感。
青年「おっと。そろそろ時間だ。急がないと。じゃあね。」
エミリー(これ、少し調べてみようかな)
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