泰葉「人形の館」 (52)
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みく「みくは猫だよ!」
みく「みくは猫だよ!」 - SSまとめ速報
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寺生まれのPさんとか、ふじともとか、ひじりんとか、妖怪みくにゃんとかでます
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みく「……」
聖「みくさん、何読んでるんですか……?」
みく「うにゃっ!?」
みく「……あ、聖チャン」
聖「……もしかして、邪魔しちゃいましたか……?」
みく「んーん、別に大丈夫にゃ」
みく「ちょっと雑誌読んでただけだし」
聖「雑誌……?」
みく「うん、アイドルが載ってるやつ」
みく「ここアイドル事務所だし……勉強勉強」
聖「おぉ……まじめ……」
みく「当然にゃ!」
みく「みくはマジメネコチャンだもん!」
聖「マジメネコチャン……ふふ」
みく「ちゃんとメガネもしてるよ!」
聖「別に、無理してメガネをつけなくても……」
みく「えっ、でも芳乃チャンが言ってたにゃ」
みく「マジメはメガネをつける物だって」
聖「芳乃お姉ちゃん……」
みく「だから、芳乃チャンが自分の持ってるやつ貸してくれたの」
みく「レンズの入ってない……えっと、伊達眼鏡っていうんだっけ、それを」
聖「持ってたんだ……」
みく「しかし、なんだかんだここは快適にゃあ」
みく「ご飯も出るし、涼しいし、おふとんもあるし……」
みく「いたれりつくせりにゃあ」
みく「首輪も鎖も外れたし」
聖「あ……外れたんだ……よかった」
みく「あいつに外してもらったにゃあ」
みく「みくはいいって言ったんだけど……」
聖「……私たちも、ずっと首輪をつけてるみくさんを見るのは忍びなかったので……何回か相談してたんです」
みく「そうだったんだ……」
聖「はい……」
聖「みくさんが猫とかだったらまだよかったのかもしれないけど……」
みく「みくは猫だよ!」
聖「あ、そうでした……」
聖「でも、今は同じ人間の姿ですから……」
みく「……そうだね」
みく「みくはいつ猫の姿に戻れるのかなあ……」
聖「……」
聖「か、神様に祈る……とか?」
みく「あんな神様に祈るくらいなら一生このままでいいにゃあ」
聖「あはは……」
朋「おはよー」
聖「あ、朋さん……おはようございます――あっ」
みく「おはにゃー」
朋「……なにそれ?」
みく「今考えた挨拶にゃ」
みく「にゃはよーの方がよかった?」
朋「……別にどっちでもいいと思うけど」
朋「なんで急にそんなことを……?」
みく「いや――」
聖「――あの、みくさん」
みく「ん?」
聖「朋さんに占ってもらえば、わかるんじゃないですか……?」
みく「……どゆこと?」
朋「あー……あたしの占いって百発百中なのよ」
みく「へー」
朋「で、何の話?」
みく「さっきまで、みくはいつ猫に戻れるのかって話をしてたのにゃ」
聖「なので、朋さんに占ってもらえば……」
みく「みくがいつ戻れるかわかる!」
聖「はい……!」
みく「なるほどにゃあ……朋チャン、いい?」
朋「……別に占うのはいいけど」
朋「もし、占いで100年後とかでたら100年後まで絶対に戻らないし、永遠に無理って言われたら一生そのまんまよ」
朋「百発百中だし」
聖「あ、そっか……」
みく「……それだったら、知らないままでいいにゃあ」
朋「まあ、そうよね」
聖「うぅ……すいません……」
みく「いや、聖チャンが謝ることはないにゃ!」
みく「あ、そうそう」
みく「さっきの話なんだけど……みくね、アイドル事務所にいるじゃない?」
朋「そうね」
みく「だから、アイドルを勉強しようと思って」
聖「そのために、雑誌も読んでるんですよね……」
みく「うん……で、この雑誌でいろんなアイドルがインタビュー受けてたんだけど」
みく「そのうちの一人が初見でインパクトを持たせるために挨拶を特徴的なものにしてる
って言うから」
みく「真似してみたの」
朋「……それでさっきの挨拶?」
みく「にゃあ」
朋「ふーん……」
聖「……みくさんの場合は、語尾もありますから……」
聖「そんな変な挨拶じゃなくても……」
朋「あたしもそう思うわ」
みく「……そっかー」
朋「……ちょっと雑誌見せて?」
みく「んー」
朋「えっと……あ、この辺のページね」
朋「本当……いろんな子のインタビューが載ってる……んーっと」
朋「アイドルの勉強なら、そういう変わったアイドルよりもっと普通の――」
朋「――ほら、この子とかいいんじゃない?」
朋「岡崎泰葉ちゃん」
>>5 訂正
みく「あ、そうそう」
みく「さっきの話なんだけど……みくね、アイドル事務所にいるじゃない?」
朋「そうね」
みく「だから、アイドルを勉強しようと思って」
聖「そのために、雑誌も読んでるんですよね……」
みく「うん……で、この雑誌でいろんなアイドルがインタビュー受けてたんだけど」
みく「そのうちの一人が初見でインパクトを持たせるために挨拶を特徴的なものにしてるって言うから」
みく「真似してみたの」
朋「……それでさっきの挨拶?」
みく「にゃあ」
朋「ふーん……」
聖「……みくさんの場合は、語尾もありますから……」
聖「そんな変な挨拶じゃなくても……」
朋「あたしもそう思うわ」
みく「……そっかー」
朋「……ちょっと雑誌見せて?」
みく「んー」
朋「えっと……あ、この辺のページね」
朋「本当……いろんな子のインタビューが載ってる……んーっと」
朋「アイドルの勉強なら、そういう変わったアイドルよりもっと普通の――」
朋「――ほら、この子とかいいんじゃない?」
朋「岡崎泰葉ちゃん」
朋「この子なら有名だし……正統派だし」
朋「変わったアイドルもいるけど、アイドル自体を勉強するならまずは基本的なのからいかないと」
みく「あー……確かに、それもそうにゃ」
ちひろ「勉強ですか?」
みく「うにゃあっ!?」
朋「きゃっ!?」
聖「ひゃっ!?」
ちひろ「ふふ、三者三様の驚き方ですね」
みく「きゅ、急に出てこないで欲しいにゃ!」
みく「もっと、ゆっくり、脅かさないで!」
ちひろ「あら、ごめんなさい」
ちひろ「それなら、今度はこうやって」スーッ
朋「……消えた?」
ちひろ「こうやって現れますね」ボソッ
みく「うにゃあっ!?」
聖「あ……みくちゃんの後ろに」
みく「余計驚くにゃ!」
みく「なんで脅かすの!?」
みく「悪霊か!」
朋「……あながち間違ってないわね」
ちひろ「いえいえ、私は神様ですよ」
ちひろ「ごめんなさい、反応が可愛いのでつい、ふふ」
ちひろ「……それで、アイドルの勉強してるんですか?」
みく「……そうだよ」
ちひろ「じゃあ、アイドルしてくれるんですか?」
みく「したとしてもお前には一文たりともやらんにゃ」
みく「お前の助けも絶対に乞わんにゃ」
ちひろ「あら、嫌われてますね」
ちひろ「でも、じゃあなんで勉強してるんですか?」
みく「みくだって、一応ここの一員だし」
みく「……デビューだってしたし」
みく「…………アイドルの仕事もちょっと興味あったし」
モバP「興味あるなら受けてみるか?」
聖「あ、プロデューサーさん……」
朋「お帰り」
朋「……いつ帰ってたの?」
モバP「ほんのついさっきだ」
モバP「で、みく、またアイドルの仕事してみるか?」
みく「……なんのお仕事?」
モバP「今日、朋と聖が脇役ででるドラマの仕事あるだろ?」
朋「ええ」
モバP「それの端役だ……ほぼエキストラみたいなもんだな」
みく「ふーん……」
ちひろ「出演依頼が来てたんですか?」
モバP「いや、誰でもいいから可愛い子はいないかって相談されたんだ」
モバP「みくなら大丈夫だろうと思ってな」
みく「……」
みく「……じゃあ、やってみるにゃ」
聖「本当……!?」
みく「うん……前のお仕事は……まあ楽しかったし」
みく「ちょっとやってみたいしね」
ちひろ「やっぱりやってくれるんじゃないですか、ふふ♪」
みく「……ただ、それで入るお金をあんちくしょうに渡さなければ」
ちひろ「あら」
モバP「……じゃあ、決まりだな」
朋「ふふ、よろしくね、みくちゃん」
みく「ん、よろしくー」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
みく「……猫耳はつけちゃダメなんだよね?」
朋「そうね」
朋「今度はドラマの仕事だから……その役に猫耳が必要ならつけてもいいけど……」
聖「そんな役じゃないですし……」
朋「特に、今回みくちゃんってエキストラみたいなものみたいだし」
朋「あまり特徴的な姿しちゃうと……」
みく「そっか……」
みく「……アイドルしてたらずっと猫ちゃん衣装ってわけにもいかないんだにゃあ」
聖「うん……」
朋「でも、いつもの自分と違う役を演じるっていうのも楽しいわよ」
みく「ふーん……」
みく「今回じゃそれはわからなそうにゃあ」
朋「……まあ、そうよね」
???「おはようございます」
朋「ん……あ、おはようございます」
聖「おはようございます……」
みく「おはようにゃ……あ、泰葉ちゃん?」
泰葉「はい、岡崎泰葉です」
泰葉「今日の共演者の方ですよね?」
聖「はい……望月聖です」
朋「藤居朋よ」
みく「前川みくにゃあ」
泰葉「聖ちゃんに朋さんにみくちゃん……覚えました」
泰葉「今日はよろしくお願いしますね」ニコリ
朋「うん、よろしく」
泰葉「それでは」
朋「……」
みく「……あんな話してすぐ泰葉ちゃんに会うことになるとは思わなかったにゃあ」
朋「あたしは知ってたけどね」
みく「えっ」
聖「私も……」
みく「な、なんで……!?」
朋「や、共演者のことはちゃんと調べとかないと」
みく「あ、そっか……」
聖「……でも、みくちゃんが一緒に来るとは思ってなかったので」
聖「そういう意味では……私も驚きです……」
朋「そうね、ふふっ」
朋「……ま、ちょうどいい機会じゃない」
朋「今回の仕事の泰葉ちゃんの動き見てたらアイドルの勉強になるんじゃない?」
みく「……そうだね」
みく「まあ、台詞も1つしかないし」
みく「みくの出番終わったら観察してみるにゃ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
みく「朋チャン、聖チャン、お疲れ様」
朋「ありがとみくちゃん」
聖「みくさんも……お疲れ様」
みく「ありがとにゃ」
朋「それで……どうだった?」
みく「……語尾を隠すのって辛いにゃ」
朋「あー……」
聖「みくさん……それが自然ですから……」
みく「うん……自分で『にゃ』って故意につけてるわけでもないから」
みく「1つの台詞だったけど、ちょっとムズムズしちゃったにゃ」
みく「みんなすごいにゃあ」
聖「私たちは……そこまで、特徴的な語尾とかがないから……」
みく「ま、そっか……」
みく「うーん……こういうお仕事よりはみくは歌ったりするほうが好きにゃ」
みく「自由にできるし」
朋「ふふっ」
みく「あ、そうそう」
みく「あと泰葉チャンの演技を見てたんだけど――」
泰葉「――私がどうかしましたか?」
みく「にゃっ!?」
聖「あ、泰葉さん……」
泰葉「どうも、皆さんお疲れ様でした」ニコリ
泰葉「それで、私が何でしょうか?」
みく「ん、いや……」
みく「……」
みく「……泰葉チャンの演技、素敵だったにゃって話」
泰葉「ありがとうございます」
泰葉「みくちゃんの演技も素敵でしたよ」
みく「……たった一言だけどにゃあ」
泰葉「たった一言でも、それが下手な演技だったら作品自体の評価を下げます」
泰葉「みくちゃんの演技にはその心配がありませんでした」
泰葉「素敵な演技でしたよ」
みく「にゃはは……ありがと」
みく「……ちょっと照れるにゃ」
聖「……でも、泰葉さんの演技もすごかった……」
聖「監督に言われたことを忠実に再現して……」
泰葉「こういう仕事には慣れてますから」
朋「……何かコツとかあるの?」
泰葉「そうですね……まあ、一応」
朋「あ、やっぱりあるんだ……」
泰葉「長くこういうお仕事やってきたので……」
泰葉「よかったら教えましょうか?」
朋「いいの!?」
泰葉「はい」
泰葉「せっかく知り合えたので」
みく「やったにゃ!」
朋「ありがと、泰葉チャン!」
泰葉「いえいえ」
泰葉「それでは、私の家に向かいましょうか」
朋「えっ」
聖「泰葉ちゃんの家……?」
泰葉「はい」
泰葉「ここでは誰が聞いてるかわからないので」
みく「そ、そんなにすごい内容なの……?」
泰葉「それはもう」
泰葉「これを知ってるか知らないかだけでお仕事の成功率が2倍3倍変わります」
みく「一気に胡散臭くなったにゃ」
朋「詐欺かしら?」
泰葉「冗談です」
泰葉「……でも、これを知ってるのと知らないのだと、本当に変わりますよ」
聖「そんなに……?」
泰葉「はい」
泰葉「そんなすごいコツだからこそ」
泰葉「誰ともわからない他人じゃなく、皆さん3人に教えたいんです」
朋「……」
みく「どうするにゃ……?」ボソボソ
朋「いや……どうしよっか……?」ボソボソ
聖「……」
泰葉「……」
泰葉「……本当は」
朋「ん?」
泰葉「本当は……みなさんと友達になりたくて」
聖「!」
泰葉「私……実は友達がほとんどいなくて」
泰葉「でも、このままじゃダメだと思って……今日、がんばって皆さんに話しかけたん
です」
泰葉「皆さんと友達になりたくて」
泰葉「だから、家に招待したいんです」
泰葉「お菓子も、飲み物も、遊び道具も家にあるので」
泰葉「みなさんと食べて、飲んで、遊んで、友達になりたいなって思ったんです」
朋「……」
泰葉「勿論、コツも教えます」
泰葉「なので、よかったら来てくれませんか?」
聖「……朋さん」
朋「……」
みく「……」コクリ
朋「……わかったわ」
泰葉「ありがとうございます」
泰葉「それでは、ついてきてください」ニコリ
朋「……」
みく「でも、泰葉ちゃんってこのお仕事いっぱいやってるんでしょ?」
泰葉「はい」
みく「じゃ、友達くらいいてもおかしくないんじゃ――」
朋「――ちょっと、みくちゃん……!」
泰葉「いえ、大丈夫です、事実ですから」
朋「……」
泰葉「そうですね……仕事をしてれば友達もできるのが普通かもしれません」
泰葉「ですが、私は常に色々な人から敵視されてきました」
泰葉「なので、特定の誰かと仲良くなることもありませんでした」
泰葉「……それに、昔の私は人形だったので」
聖「人形……?」
泰葉「はい」
泰葉「自分から体を動かさず、自分の思いを込めず」
泰葉「誰かの為すがままになるだけの人形……」
聖「……」
朋「……でも、それって昔の話でしょ?」
朋「今は違うんじゃないの?」
泰葉「今……」
泰葉「今は――」
泰葉「――あ、タクシー乗り場につきましたね」
泰葉「それじゃ、乗りましょうか」
朋「え、タクシー乗ってくの!?」
泰葉「はい、少し遠いので」
朋「……招待するんだから、近いもんだと思ってたわ」
みく「……みく、お金持ってないんだけど」
聖「私も、あまり……」
朋「どうしよ、足りるかな……」
朋「プロデューサーを呼んで――」
泰葉「――あ、だいじょうぶです、私が全部払うので」
朋「えっ!?」
泰葉「たくさんお仕事したので、お金はいっぱいあるんです」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
泰葉「つきました」
聖「……」
みく「……」
朋「……ねぇ、あたしの目が間違ってなければ森しか見えないんだけど」
泰葉「間違ってませんよ」
泰葉「私の家はこの森の先にあるので」
朋「えぇ……」
聖「なんでこんなところに……?」
泰葉「ここなら、私を敵視している人に襲われることもないので」
朋「敵視してない人だって寄り付かないわよ、こんなとこ」
聖「……でも、こんな森の中にあるってことは」
聖「家の中……虫とかすごそう……」
泰葉「あ、大丈夫ですよ」
泰葉「私の家、生物ひとついないので」
みく「呪われてるんじゃないの?」
泰葉「……さ、行きましょう」
泰葉「はぐれないようについてきてくださいね」ニコリ
聖「うぅ……」
聖「まだ太陽出てるはずなのに……すごい薄暗い……」
朋「そうね……結構木が生い茂ってるからかしら」
みく「こんなところにすむなんて泰葉チャン物好きにゃあ」
泰葉「慣れたら何てことないですよ」
泰葉「ここって夏でも結構涼しいですし」
朋「まあ、日の光があたらなきゃねぇ」
泰葉「あ、はぐれて迷ったら本当に危ないので、ちゃんとついてきてくださいね」
聖「……」ビクッ
みく「なんでそんなところに家があるのにゃあ」
泰葉「敵視してる人に襲われにくいので」
泰葉「みんなこの森で迷ってくれます」
みく「泰葉チャンの家は暗殺業でもやってるの?」
泰葉「まさか、普通の家庭ですよ」
みく「普通ってなんにゃ……」
聖「と、朋さん……」
聖「大丈夫ですよね……?」
朋「……まあ、泰葉ちゃんがおいてこうとしない限りそんなことはないと思うけど」
泰葉「もちろん、そんなことするつもりはありませんよ?」ニコリ
朋「そうよね……だから大丈夫よ、聖ちゃん」
聖「はい……」
聖「……」
朋「……」
朋「……聖ちゃん、手つなぐ?」
聖「……はい」
泰葉「あ、見えました」
聖「わぁ……!」
朋「立派な洋館ね……」
泰葉「ようこそ、ここが私の家です」ニコリ
聖「……こんなの、初めて見た……!」
朋「あたしも……!」
みく「みくはこういうの何回か見たことあるにゃ」
朋「そうなの?」
みく「昔は結構いろんなところ散歩してたりしたからにゃあ」
みく「こういう変な家は結構みたにゃ」
泰葉「変な家ですか……」
みく「……あ、でも、今まで見た中じゃ一番きれいだよ!」
泰葉「……」
朋(……いや、変な家は否定できないわよね)
朋(見ためはすごいいいんだけどね……場所が場所だし)
泰葉「……まあいいです」
泰葉「それでは中に入りましょう」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
泰葉「クッキーと紅茶です、どうぞ」
朋「ありがと!」
朋「いただきまーす……ん~っ、美味しい!」
みく「ほんと、美味しいにゃ!」
泰葉「市販のものですけど……そこまで喜んでくれたらうれしいです」ニコリ
泰葉「聖ちゃんもどうですか?」
聖「いただきます……!」
泰葉「……一応ベッドから降りてくださいね」
聖「あ……はい……」
朋「ベッド気持ちよかった?」
聖「うん……すごくふかふかで……」
聖「ちょっと……ピョンピョンって飛び跳ねてみたいなって……思うくらい」
泰葉「別にかまいませんよ」
聖「……ううん……恥ずかしいから……」
朋「ふふっ」
聖「いただきます……あ、おいしい」
泰葉「よかったです」ニコリ
朋「こっちの紅茶も美味しいわよ」
朋「ね、みくちゃ――」
みく「ふーっ……ふーっ……!」
朋「……そっか、みくちゃん猫舌なのね」
みく「当然にゃあ」
聖「みくさん……猫だから……」
泰葉「?」
聖「あ……なんでもないです……」
みく「こんな熱いの飲めるわけないにゃあ」
みく「ふーっ……ふーっ……!」
聖「ふふ……」
聖「私も猫舌だけど……でもこの紅茶美味しい……」
みく「そりゃ、みくと聖チャンじゃ――」
みく「――まあ色々違うからにゃ」
みく(みく、人間の姿だけど、元は猫だし)
みく「ふーっ……ふーっ……!」
朋「……でさ、泰葉ちゃん」
泰葉「はい?」
朋「さっきいってたさ、コツってなんなの?」
泰葉「……もう少し後で話しませんか?」
泰葉「折角こうしてお茶会もしているんですから」
泰葉「もっと楽しいお話をしたいです」
泰葉「友達になりたいですし」
朋「そっか……」
朋「……じゃ、何の話する?」
泰葉「そうですね……」
泰葉「……趣味の話とか」
朋「趣味?」
泰葉「はい」
泰葉「仲良くなりたいので、知りたいです」
聖「趣味……私は」
聖「歌を歌うこと……かな」
泰葉「歌ですか?」
聖「うん……口ずさむのも……大きく歌うのも好き……」
聖「それと……みんなが、それを聞いてくれるのも好き」
泰葉「なるほど」
泰葉「聞いてもいいですか?」
聖「えっ……」
聖「う、うん……いいです……けど……」
泰葉「ありがとうございます」ニコリ
聖「いえ……えっと……」
聖「それじゃ、歌いますね……」
聖「すぅ……」
聖「~♪」
聖「~♪……」
聖「ふぅ……」
朋「やっぱ聖ちゃんの歌って素敵よね」
みく「落ち着くにゃあ」
泰葉「とても素敵な歌でした」
聖「あ、ありがとうございます……ふふ」
泰葉「朋さんは?」
朋「あたし……の趣味よね」
朋「うーん……占い雑誌みたりとかかしら?」
泰葉「自分で占いはしないんですか?」
朋「趣味ですることはないわ」
聖「……」
泰葉「なるほど……みくちゃんは?」
みく「みくは……趣味はないにゃあ」
みく「そのかわり、自由に毎日を生きてるから……」
みく「……ある意味、毎日が趣味?」
朋「ふふっ、何それ?」
みく「だって本当にそんな感じだもん!」
みく「やりたいことやってるから、趣味って感じがしないにゃあ」
泰葉「なるほど……」
聖「泰葉さんの趣味は……?」
泰葉「私……?」
泰葉「私の趣味……」
泰葉「……人形作りでしょうか」
朋「自分で人形作ってるの?」
泰葉「はい」
みく「……でも、そのわりにこの部屋にはいないにゃあ」
泰葉「……」
泰葉「傷つかないように、大切にしまってるんです」
みく「ふーん」
聖「……私、ちょっとみてみたい」
聖「泰葉さんが作った人形……」
朋「あ、あたしも気になる!」
泰葉「そうですか……」
泰葉「……」
泰葉「では、後で会わせてあげますね」
聖「やった……!」
朋「どんな人形なのかしら?」
泰葉「普通の人形ですよ」ニコリ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
朋「――ってことが前にあってね!」
泰葉「そんなことが……」
朋「うん」
朋「で、あたしもうすっごく――」
聖「――あ、あの、泰葉さん……」
泰葉「はい?」
聖「その……」
聖「……お手洗い……借りていいですか……?」
泰葉「……」
泰葉「わかりました、案内しますね」
聖「あ……教えてもらえれば、大丈夫なので……」
泰葉「いえいえ、きっと案内したほうが早いと思うので」
泰葉「一緒に行きましょう」
聖「……」
聖「それじゃあ……お願いします」
泰葉「はい」
泰葉「それでは、案内してきますね」
朋「んー」
みく「はーい」
泰葉「この部屋です」
聖「ありがとうございます」ガチャ
聖「……?」
聖「……泰葉さん、ここただの部屋――」
泰葉「――」ドン
聖「きゃっ!?」
聖「や、泰葉さん……?」
泰葉「……」バタン
聖「な、なんで押して……ドアまで閉めて……」
泰葉「……」
泰葉「……聖ちゃん」
泰葉「望月聖」
泰葉「趣味は歌うこと」
泰葉「自分の歌をいろんな人に聞いてもらうのが楽しい」
泰葉「13歳」
泰葉「誕生日は12月25日」
泰葉「聖ちゃんのことも、今日でたくさん知れました」
泰葉「これで、『泰葉』ちゃんの友達としては困りません」
聖「……」ゾクッ
聖「あ、あの、泰葉――」
泰葉「――『泰葉』ちゃんが一人では寂しそうだったので」
泰葉「聖ちゃん、友達になってください」スッ
聖「えっ……」
聖(泰葉さんの手が……私に伸びてきて――)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
朋「ね、みくちゃん」
みく「ん?」
朋「泰葉ちゃん、どう思う?」
みく「変なやつにゃ」
朋「あはは……確かにそうね」
朋「……こんなところに家があるし」
みく「それもそうだし」
みく「泰葉ちゃんの会話ってなんだか機械的な感じがするにゃあ」
朋「……」
みく「表情も、真顔か、笑顔かの2種類しか見せないし……」
みく「なんというか……感情を感じなかったにゃ」
朋「……」
朋「……ドラマの撮影のときはちゃんと、表情も作れてたのにね」
みく「うん……でも」
みく「……素の泰葉チャンが見えなかったにゃ」
朋「素……?」
みく「うん……朋チャンも、聖チャンも、自分を隠そうとしてるけど隠し切れてない何かがあったにゃ」
朋「あ、そうだったんだ……うーん、練習しなくちゃかしら」
みく「……でも、泰葉ちゃんにはそれが見えなかった」
みく「言われるがままに、完璧に真似している」
みく「……それこそ人形みたいに」
朋「……」
みく「……」
みく「……あとね、朋チャン」
朋「ん?」
みく「みく、さっきからこの部屋に気配を感じるの」
みく「人間の」
朋「……あたしじゃなくて……ってことよね」
みく「うん」
みく「朋チャンとも……聖チャンとも違う、誰かの気配を、さっきからずっと――」
みく「――あのクローゼットから感じてたにゃ」
朋「……」
みく「……ねぇ、開けてみていいかにゃ?」
朋「何かいる……なんていわれたら気味悪くて仕方ないし」
朋「……開けましょ」
みく「ん……じゃ、開けてみるねー」
みく「えい――」ガチャ
みく「――うにゃ!?」ガラガラ
朋「みくちゃん、大丈夫!?」
みく「ん、大丈夫にゃ……」
みく「何かみくの上に落ちてきて――」
みく「――これ」
みく「人形……?」
朋「わ、本当……」
朋「私たちほどじゃないけど……でも結構大きいわね」
朋「これが泰葉ちゃんが作ったって言ってた人形かしら」
みく「たぶんそうにゃ」
朋「……ねぇ」
朋「これ、なんとなく泰葉ちゃんに似てない?」
みく「うん、みくもそう思う……」
みく「……あとね」
朋「ん?」
みく「……人間の気配」
みく「この人形から感じるにゃ」
朋「!」
朋「……でも、これ、人形よね?」
みく「見た目は……触ってみても、人形の手触りにゃ」
朋「……本当だ」
朋「ってことは、もしかして……」
みく「この人形は、人間だったってこと……かも」
朋「……っ!」
朋(泰葉ちゃんの趣味は人形作りって……まさか……っ!)
朋「聖ちゃんが危ない……っ!」
朋「急がなきゃ!」バタン
みく「うん!」
みく「……でも、どこに……」
朋「大丈夫、あたしが占って見つけるわ!」
みく「……それは?」
朋「ダウジング用の針金よ」
朋「これで……聖ちゃんはどこ……!」
みく「にゃっ……針金が動いた!?」
朋「これの向いた先にいるわ!」
朋「……あっちね!」
みく「……それって、占いなの?」
朋「占いよ……ほら、行きましょ!」
みく「……うん!」
朋「聖ちゃん!」ガチャ
泰葉「あ、朋さん、みくちゃん」
泰葉「聖ちゃんならお手洗いですから、ここにはいませんよ?」
朋「……もうとぼけないでいいわよ」
朋「その人形が聖ちゃんでしょ?」
泰葉「……」
みく「う……一歩遅かったにゃ……」
泰葉「まさか」
泰葉「人間が人形に変わるなんてありえません」
朋「そりゃ、自分からは変わらないわよ」
朋「……あんたが変えたんでしょ?」
泰葉「……」
みく「朋チャン」
みく「言わなくてもわかると思うけど……あの人形から人間の……聖チャンの気配を感じ
るにゃ」
泰葉「……」
朋「早く聖ちゃんを元に戻しなさい!」
朋「それと……」
朋「……」
朋「……あの部屋にいた、泰葉ちゃんも!」
泰葉「……」
泰葉「そこまでバレてたならもう隠す必要もありませんね」
朋「やっぱりそうだったのね」
朋「……泰葉ちゃんの方は勘だったんだけど」
泰葉「その勘は正しいですよ」
泰葉「聖ちゃんも、この『泰葉』ちゃんも……確かに私が人形にしました」
泰葉「……ばれないと思ってたんですけど」
泰葉「なんでばれたんでしょう」
朋「……ほとんど、みくちゃんのおかげよ」
泰葉「みくちゃんの……」
泰葉「そういえば、気配を読めると言ってましたね」
みく「みくは妖怪だからにゃ」
みく「その辺の人間はだませても、みくはだませないにゃ」
みく(妖怪の力……全部消えてなくてよかったにゃ……)
泰葉「……なるほど」
泰葉「じゃあ、みくちゃんさえいなければ成功していたんですね」
泰葉「失敗してしまいました」
朋「……たとえあたしだけだったとしても成功はしなかったわよ」
泰葉「朋さんも妖怪だったんですか?」
朋「いや、あたしは人間だけど」
朋「友達を……仲間をこんな風にされて、気づかないわけないじゃない」
泰葉「……」
朋「……聖ちゃんを元に戻しなさい」
泰葉「それはできません」
みく「なんでにゃ」
泰葉「だって、『泰葉』ちゃんが友達を欲しがってましたから」
朋「……」
泰葉「『泰葉』ちゃんは、いつも一人だったんです」
泰葉「この広い屋敷には、私と『泰葉』ちゃんしかいないんです」
泰葉「でも、私は『泰葉』ちゃんを操る立場で、『泰葉』ちゃんに人形の友達はいません」
泰葉「だから、きっと友達を欲しがってると思うんです」
泰葉「……聖ちゃんは、『泰葉』ちゃんの友達です」
泰葉「だから、元に戻すわけにはいきません」
朋「……そんなこというなら、聖ちゃんはもともとあたしたちの友達よ」
泰葉「知ってます」
泰葉「だから、あなたたちも人形になりましょう」
朋「!」
みく「!」
泰葉「『泰葉』ちゃん、聖ちゃん、朋さん、みくちゃん」
泰葉「四人もいれば『泰葉』ちゃんも寂しがることはないでしょうから」ニコリ
みく「にゃっ!」ダッ
朋「あ、みくちゃん!」
みく「うっさいにゃ、人形になんてなってたまるか!」
みく(あいつも人の形ならたぶん人間……首筋を噛めば動きが止まるにゃ!)ガブ
みく「――!?」
みく「――かった!?」
みく「なんにゃ、こいつの体!?」
泰葉「……」
朋「みくちゃん、離れて!」
みく「うにゃっ!」ダッ
みく「……あいつの体、すっごい硬かったにゃ」
泰葉「当然じゃないですか」
泰葉「私、人間じゃなくて、人形なんですから」
泰葉「人間と同じ体じゃありません」
朋「!」
泰葉「……でも、私、もう人形として操られるだけなのは嫌なんです」
泰葉「何も考えずに、誰かの為すがままに体を動かして」
泰葉「そんなのは嫌……」
泰葉「嫌だから……」
泰葉「……私が、今度はその誰かになるんです」ダッ
朋「きゃっ!」ダッ
泰葉「もう、心も、体も、誰かの代弁にならない」
泰葉「人形にならない」
泰葉「私は私になるんです」ピトッ
朋「やっ、離れて……っ!」
泰葉「わかりました、離れましょう」
朋「……?」
朋「……」
朋「……!?」
朋(足が……動かない……!?)
泰葉「……私の手のひらに触れた人は、人形になります」
泰葉「これで、朋ちゃんも『泰葉』ちゃんと友達になれますね」ニコリ
朋(嘘……どんどん動かなくなってく……!)
朋(胴体も……腕も……!?)
みく「朋チャン!」
朋「みく……ちゃ……――」
朋「――」ポン
みく「!」
みく(朋チャンが聖チャンと同じような人形に……!)
泰葉「……あとは、みくちゃんだけですね」
みく「……」
みく(……どうしよう)
みく(あいつの手のひらに触れたら、みくも人形になっちゃう……そしたらゲームオーバー)
みく(だから、手のひらに触れないようにして……あいつにダメージを与えて……)
みく(……あの体にダメージって通るのかにゃあ……?)
泰葉「考え事してていいんですか?」ダッ
みく「!」
みく「やば――」
泰葉「はい、タッチ」ピトッ
みく「あっ!」
泰葉「これで、みくちゃんも『泰葉』ちゃんと友達になれますね」ニコリ
みく「……っ!」
みく(……本当にゃ……体が、どんどん動かなくなってって)
みく(このままみくも、人形に……!)
みく(……そんなの、嫌にゃ!)
みく(誰か……誰か……!)
みく「助け――!」
モバP「――任せろ」
みく「――」ポン
モバP「……みくも人形になったか」
モバP「少し遅かったな……」
泰葉「……誰ですか?」
モバP「こいつらのプロデューサーだ」
泰葉「そうですか」
泰葉「……まあ、誰でもいいんです」
泰葉「これを見られたからには、返すわけには行きません」
泰葉「あなたが『泰葉』ちゃんの友達になれるかはわかりませんが」
泰葉「ここで人形になってもらいます」ダッ
モバP「……いいや」
モバP「人形に戻るのはお前だ」
モバP「破ぁ!!!」
泰葉「え――」
泰葉「――」
泰葉「――」ポン
モバP「……ふぅ、人形に戻ったな」
モバP「じゃあ、あとは朋たちだな」
モバP「破ぁ!!!」
朋「……んっ」
みく「ん、んー……?」
聖「ぁ……あー……」
モバP「よう」
聖「あ、プロデューサーさん……」
モバP「無事か?」
朋「……うん、あたしは大丈夫」
みく「みくも大丈夫にゃ」
聖「プロデューサーさん……助けてくれてありがとうございます……!」
モバP「当然のことをしただけだ」
モバP「三人ともうちのアイドルで、仲間なんだから、助けないわけがないだろう」
みく「!」
朋「……この人形が、さっきの泰葉ちゃん?」
モバP「ああ」
モバP「取り付いていた霊は俺がもう除いた」
モバP「こいつはもうただの人形だ」
朋「そっか……」
モバP「悪いな、もう少し早くこれたら人形になることもなかったんだろうが」
モバP「ここの森を抜けるのに時間がかかった」
モバP「すまん」
聖「あ、いえ……来てくれたので……ぜんぜん……」
朋「……むしろ、よく一人で抜けてこれたわね」
モバP「大体の場所は気配を読めばわかるからな」
朋「……あんたも大概人間じゃないわよね」
モバP「俺は寺生まれのただの人間だ」
朋「……」
モバP「……みくも、ありがとな」
みく「うにゃっ!?」
モバP「朋と聖を助けようと、動いてくれただろ?」
モバP「逃げてもよかったのに……」
みく「……お前に首輪を外してもらったけど、あんちくしょうからの監視は外れてないからにゃ」
朋「……」
みく「それに……」
みく「……」
聖「みくさん……?」
みく「……短いとはいえ、一緒に事務所にいるんだもん」
みく「みくだって、こいつらを……仲間だって、友達だって思ってるにゃ」
モバP「……そうか」
朋「……ありがと、みくちゃん」
聖「私も……みくちゃんは、友達だと思ってます……!」
みく「……う、うっさいにゃ」プイッ
朋「ふふっ」
モバP「じゃあ――」
朋「――あ、待って!」
朋「もう一人助けて欲しい子がいるんだけど」
朋「この、人形の子……きっと、本物の泰葉ちゃんなの」
モバP「わかった」
モバP「破ぁ!!!」
泰葉「きゃっ!」
泰葉「……あ」
泰葉「あっ……も、戻った……戻ってる……!」
泰葉「やった……よかったぁ……!」
泰葉「戻れた……戻れた……っ!」
泰葉「ぐすっ……よかったぁ……っ!」ポロポロ
朋「わっ!」
聖「えっと……ハンカチどうぞ」
泰葉「あ、ありがとうございます……ひっく」
泰葉「ごめんなさい……もう戻れないって思ってたから……っく」
泰葉「本当にうれしくて……うれしくて……っ!」
泰葉「……すいません、取り乱しました」
朋「いや……気持ちはわかるわよ」
聖「うん……」
泰葉「でも……あんなに泣いちゃって……恥ずかしい……」
朋「いいじゃない、それだけうれしかったんでしょ?」
泰葉「はい……」
泰葉「……ずっと前、私と同じ姿の人が現れて……私を人形にしちゃって」
泰葉「それから、ずっと、ここで、動けなくて……」
泰葉「意識はそのままで、視界もあって……でも、やっぱり動けなくて……」
泰葉「おなかも減らないし、疲れも感じないから、私ここで、一生……ううん」
泰葉「永遠に動けないんだって思うと、寂しくて、寂しくて……」
泰葉「だから……本当に、今、こうして自分の足で立ってて、しゃべれてるのが……!」グスッ
泰葉「あっ……も、もう……涙見せたくないのに……!」
朋「ふふっ」
泰葉「……こほん」
泰葉「あの、助けてくれて、本当にありがとうございました」
泰葉「……名前、聞いてもいいですか?」
泰葉「……あっ、私は岡崎泰葉って言います!」
泰葉「……って、知ってるんでしょうか?」
朋「そうね……人形の泰葉ちゃんにも自己紹介したし、されたし」
朋「でも、まあ改めて……というか、はじめまして、かしら」
朋「えっと、あたしは藤居朋よ」
聖「私は望月聖です……」
みく「前川みくにゃあ」
モバP「俺はT」
モバP「寺生まれの、プロデューサーだ」
泰葉「プロデューサー……」
泰葉「……もしかして、芸能関係の……?」
モバP「ああ」
朋「あたしたち3人はアイドルよ」
泰葉「アイドル……!」
泰葉「じゃあ、私と同じなんですね……!」
聖「はい……!」
泰葉「……あっ」
泰葉「……でも、私こんなに休んでて……大丈夫なんでしょうか?」
泰葉「まだアイドル続けられるのかな……」
みく「大丈夫だと思うにゃ」
みく「あの人形の泰葉チャンがお仕事してたみたいだし」
泰葉「えっ、そうなんですか?」
朋「うん……私たちがここにきたのも、お仕事で人形の泰葉ちゃんとあったからよ」
泰葉「へぇ……」
泰葉「……何か変なこといってませんでした?」
聖「変なこと……」
聖「あ……友達がいないって……」
泰葉「えっ!?」
泰葉「い、いますよ、私にだって、友達!」
みく「そうなの?」
泰葉「はい! 仲良い子だって、たくさんいますっ!」
泰葉「友達がいないはうそです、うそ!」
朋「……そうね」
朋「こんなに明るくて、感情豊かで、楽しい子だもんね」
朋「友達たくさんいそうね、ふふっ」
モバP「ああ、そうだ」
モバP「この人形に覚えがないか?」
泰葉「これ……あっ!」
泰葉「ずっと昔に私がなくした人形です……!」
モバP「そうか……」
モバP「あの、泰葉を演じていた人形の正体がこいつだ」
泰葉「この子……」
モバP「どのくらい前かは知らないが……この人形でたくさん遊んでいただろう?」
泰葉「はい……」
泰葉「って、なんでわかるんですか……!?」
モバP「この人形が泰葉の形になったからな」
モバP「たくさん遊んでいたからこそ、この人形に泰葉の記憶が……心が残ったのだと思う」
泰葉「人形に……」
朋「……そんなことありえるの?」
モバP「ありえるさ」
モバP「だからこそ、泰葉を人形とした後も、泰葉のそばにいたとも考えられる」
モバP「もし、『人間になる』だったり『成り代わる』が目的だった場合、そんなことしなくてよかったはずだからな」
モバP「泰葉を人形にして、その辺に捨てて、泰葉として生きることだってできたはずだ」
泰葉「……っ」
モバP「それをしなかったのは、泰葉に何らかの執着があったからだろう」
モバP「そして、それは泰葉から与えられた心からできたのがあいつだったからだ」
みく「……確かに、あいつは泰葉チャンのことを考えて動いてたにゃあ」
聖「私たちを連れてきたのも……泰葉さんの人形の友達を作るため……って」
泰葉「……じゃあ、私って心の片隅であんな風に考えてたりするんでしょうか?」
モバP「いや、あくまであれは泰葉の心が元となっただけで、泰葉の心そのものってわけではない」
モバP「無くされてから、与えられた心が歪んで、変質して言ったのだろう」
モバP「芯のところは変わってないかもしれないがな」
泰葉「そうですか……」
モバP「……もう、その人形には何も残ってない」
モバP「だが……怖いなら俺が処分しておこう」
泰葉「いえ……大丈夫です」
モバP「……そうか」
泰葉「……今度は、無くさないようにします」
モバP「さて……それじゃ、帰るか」
朋「そうね」
みく「じゃ、泰葉ちゃんまたねー」
泰葉「……えっ」
泰葉「私、おいてかれるんですか!?」
聖「……ここって、泰葉さんの家じゃないの……?」
泰葉「違います!」
泰葉「こんな変なところに住むわけないじゃないですか!」
朋「……いや」
朋「あの人形の泰葉ちゃんがここが私の家ですって言ってたから……」
泰葉「なんでそんな変なことばっかり言ってるの!?」
みく「……ちなみに、ドラマの演技のコツってあるのー?」
泰葉「え、こ、コツ……?」
泰葉「なんで急に……」
みく「あの人形の泰葉チャンが教えてくれるって言ってたんだけど」
みく「結局教えてくれなかったから、本物の泰葉チャンに聞いてみようかなって」
泰葉「あ、そうだったんだ……」
泰葉「まあ……一応、あるにはあるけど……」
聖「おぉ……!」
朋「え、なになに、教えて!」
みく「気になるにゃ!」
泰葉「え、えっとですね――」
泰葉(……今、こうして笑って、会話できるなんて本当に夢見たい)
泰葉(朋さんが、みくちゃんが、聖ちゃんが……そして、みんなのプロデューサーさんがいなかったら、私……)
泰葉(……寺生まれってすごいし)
泰葉(寺生まれのいる事務所ってすごい)
泰葉(初めて私はそう思った)
おわり
>>36 訂正
朋「……んっ」
みく「ん、んー……?」
聖「ぁ……あー……」
モバP「よう」
聖「あ、プロデューサーさん……」
モバP「無事か?」
朋「……うん、あたしは大丈夫」
みく「みくも大丈夫にゃ」
聖「プロデューサーさん……助けてくれてありがとうございます……!」
モバP「当然のことをしただけだ」
モバP「三人ともうちのアイドルで、仲間なんだから、助けないわけがないだろう」
みく「!」
朋「……この人形が、さっきの泰葉ちゃん?」
モバP「ああ」
聖「こんなに小さくなっちゃった……」
モバP「取り付いていた霊は俺がもう除いたから、元のサイズに戻ったんだ」
モバP「こいつはもうただの人形でしかない」
朋「そうなんだ……」
寺生まれのPさんとか、ふじともとか、ひじりんとか、妖怪みくにゃんとか、いろんな意味で人形泰葉とか書きたかったのを混ぜました
誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。読んでくださった方ありがとうございました。
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