飛鳥「恋人にしたくない女性?」 (22)

飛鳥(Pを待っている間、退屈しのぎに仕方なく事務所に置いてあった雑誌を手に取ってみたものの)

飛鳥(興味のない記事ばかりだ……ん?)

飛鳥(恋人にしたくない女性Top5、20~30代の独身男性を対象にしたアンケート調査の結果報告、か)

飛鳥(くだらないな。こんなものに躍らされて偽りの仮面を手にしろというのか? ボクは自分を捨ててまで作りたいとは思わないだろうな、恋人なんて)

飛鳥(……) チラッ

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飛鳥(まぁ暇だし……敢えて躍らされてみるのも一興かな)

飛鳥(異性の心理は想像で測り切れないのも確かだ。漫画で創作活動する上でもこういったサンプルは多いに越したことはない)

飛鳥(さて、じゃあ若い独身男性から最も票を集めたという恋人にしたくない女性のタイプを見てみよう)

飛鳥(『ファッションが派手すぎる』……お金がかかりそうだから、か)

飛鳥(……) ←ただでさえエクステで派手にみえる



蘭子「ククク、我が友あs……ひぃっ!?」

蘭子(ど、どうしたんだろう。真っ黒なオーラに包まれてて声を掛けにくいよぅ……)

飛鳥(……いや、別にブランドだからって目を奪われたりはしないし、浪費癖だってない。エクステも最早ボクにとって商売道具みたいな側面があるから例外だ)

飛鳥(ボクはそんなにお金のかかるヤツじゃないから当てはまらない、よな?)

飛鳥(ま、まぁ、ボクが良いなって思うものの値が張ることはなくもないけど……我慢出来るし、うん。大丈夫)

飛鳥(一位は乗り越えた。もうあまり怖くないな、二位も見てみようか)

飛鳥(『無愛想』……なかなか笑顔を見せてくれない人だと近寄り難い、か)

飛鳥(……) ←感情を表に出さないようにしてる自覚がある



蘭子「あっ。ククク……我がtえーっ!?」

蘭子(元の飛鳥ちゃんに戻ったと思った瞬間真っ黒にー! どうしたの飛鳥ちゃん!?)

飛鳥(……いや、別にボクは感情を失ったわけじゃない。笑顔だって忘れてないし、何も問題はないじゃないか)

飛鳥(そりゃあ表情豊かな方ではないが、ボクにだって愛想くらい多少は)

飛鳥(……ある、のかな? 愛想……そうだ、この前5人で行った握手会は何故かボクも評判良かったみたいだから、最低限はあると思っていいだろう)

飛鳥(怖くない怖くない。次は三位か、いこう)

飛鳥(『精神的な女性らしさが足りない』……言葉遣いや態度が悪いと人前で一緒に居づらい、か)

飛鳥(……) ←1人称がボク、口調も態度も中性的



蘭子「……。あ、また」

蘭子(飛鳥ちゃん、何か読んでるけどあれのせい? 飛鳥ちゃんをあんな風にさせちゃうなんて何が書いてあるんだろう……?)

飛鳥(……いや、大丈夫。今のボクはアイドルだ、これでキャラが立っているのなら何も恥じることはないはず)

飛鳥(そもそもこんなボクをスカウトしたくらいだから、Pだってボクのことをそんな理由で敬遠したりは--)

飛鳥(って何故Pが出て来るんだ!? ボクは別に、Pの好みを探る一環でこんなもの読んでるわけじゃないぞ。あくまで……暇つぶしなんだ)

飛鳥(そう、これはただの暇つぶし。よし落ち着いた。落ち着いたということにしておこう。このまま何も考えず四位を確認してみるか)

飛鳥(『礼儀をわきまえない』……互いの立場を尊重せずタメ口だったりすると萎える、か)

飛鳥(……) ←年上(P)の上司(P)に初対面からずっとタメ口



蘭子「…………」

蘭子(よくわからないけど、落ち込んでる飛鳥ちゃんってかわいいかも? いつも格好良くて弱いところとか見たことないもんね)

飛鳥(……いや、ヒトは相手に合わせて仮面をいくつも使い分けるんだ。ボクだって誰彼かまわずタメ口を使ったりはしない)

飛鳥(ボクとPの関係性だって、敬語を使わなければ保たれないような薄っぺらいものじゃないはずだ。第一気にしてるならさっさと指摘の一つでも)

飛鳥(……だから、何故Pが……? こんなもの読んでるせいか、ボクの周囲にいる知人で唯一の調査対象に該当する男性であるPを意識してしまっている……?)

飛鳥(次が最後だ、ここまできたら最後まで読んでしまおう。そして忘れよう……えっと、五位は)

飛鳥(『痛々しい』……同類と思われたくない、か)

飛鳥(……) ←中二病で「痛いヤツ」の自覚があり、しかもPを同類呼ばわりしてる



蘭子「そろそろ大丈夫かな? こほん……我gひゃーっ!?」

蘭子(びっくりしたびっくりした、だんだん反応が薄くなってきたのに今日一番の真っ黒! いったい何を読んでるの飛鳥ちゃん!?)

飛鳥(……これは、これだけは言い逃れ出来ない……)

飛鳥(ははは……。まさかPはボクのことを近寄り難いだとか、一緒に居づらいとか、同類に思われたくないとか……本当はそんな風に思って……)

飛鳥(…………ん、まだ続きがある……。『なお、第一印象さえ乗り越えてしまえば相手にとってこれらも立派なチャームポイントとなり得るので、避けられてないかどうしても気になる相手にはこの方法を試してみよう!』……だって?)

飛鳥(……うわぁ。で、でもボクは敢えて躍らされると決めてここまで読んだんだ。こんなとりとめのない記事にだって、最後まで躍らされてやるさ……!) ガタッ



蘭子「……あ、読んでる本そのままにして行っちゃった。何読んでたのか見ぃちゃおっ」

蘭子「えっと、『恋人にしたくない女性Top5』!? 飛鳥ちゃんもこういうの気にしたりするんだ……かわいいなあ♪」

蘭子(せっかくだし読んでみよっと。プ、プロデューサーが苦手に思ってるタイプもわかるかも……?)

蘭子(……『ファッションが派手すぎる』) ←ゴスロリ

蘭子(…………『無愛想』) ←笑ったところで高笑い

蘭子(………………『精神的な女性らしさが足りない』) ←普段の1人称が我、言葉遣いも尊大

蘭子(……………………『礼儀をわきまえない』) ←年上(P)の上司(P)を我が下僕or友呼ばわり、普段は敬語も無し

蘭子(…………………………『痛々しい』) ←自称堕天使

P「危ない危ない、渋滞で遅刻するところだった。とはいえ早く事務所に行かないと」

飛鳥「……待っていたよ、P」

P「飛鳥? 何でこんなところに。確かにいつもよりは遅れたけどまだ時間は」

飛鳥「そんなことはいいんだ。ちょっとそのまま黙って立ってて貰えないか?」

P「え、でもそこまで時間に余裕があるわけでも」

飛鳥「いいから」

P「お、おう? これでいいのか」

飛鳥(……最後に書かれていた、好意的に想われているかの確認方法。それは――) ギュッ

P「!? あ、飛鳥……さん? いきなり何を、してくださいますの?」

飛鳥「……いいから」ムギュッ

飛鳥(無関心、あるいは敵対心を持った女性に抱きつかれても、何か裏があるんじゃないかと悪い予感を優先してすぐに振り解くものらしい)

P「あの、飛鳥? 誰かくるかも……まずいって、というかなんでまたこんなこと」

飛鳥(ボクにされるがままになっているということは、少なくとも好意的には想ってくれている。そう受け取っていいんだよね、P?)

P「わっ、マジで誰かきた……ってありゃ蘭子か!? 真っ黒によどんだオーラを振り撒きながらフラフラさまよってるぞ。俺の知らない間にダークイルミネイトに何があった……!?」





ようやく解放されて頬が紅潮した飛鳥に走って逃げられた後、蘭子にも破れかぶれに抱きつかれて遅刻が決定的になったとさ

終わり

ダークイルミネイトに押し寄せられたい人生でした

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