朝・食堂
エレン「なんか最近騒がしいな……目に見えて人が減ってるし、ミカサとアルミンもあわただしそうだし」
ライナー「それで俺たちと飯を食うのが不満か?」
ベルトルト「ひどいなあ」
エレン「や、そういうワケじゃねえんだけどよ……二人とも何してんのかぜんぜん教えてくれねえから」
ジャン「……」モグモグ
コニー「ジャンが何か知ってますって顔してんな」
エレン「なんだと! 吐けこの野郎!」グィッ
ジャン「!?」
ライナー「おいよせ、なんか別のものを吐きそうだぞそいつ」
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ベルトルト「はいはい、仕切りなおして」
エレン「……で、だ。お前は何を知ってる、ジャン」
ジャン「けほっけほっ……あー、悪いが俺も詳しく知ってるわけじゃねえ。ただ」
ライナー「ただ?」
ジャン「……選挙を、しようとしてるらしい」
「「「選挙?」」」
エレン「…………」
ジャン「誰が立候補だとか、そういうのを詳しく知ってるとしたらマルコだぜ。あいつが選挙管理委員長らしいからな」
エレン「……ミカサやアルミンが忙しくしてんのは、その選挙が関わってるってことか」
ライナー「ほお。王政のこのご時勢で選挙なんて見られるとはな」
ベルトルト「話を聞く限りはこの訓練所の中でのことみたいだけど……いったい何を選出するんだろう?」
コニー「な、なあエレン。選挙ってあれだよな、『コニー・スプリンガー、コニー・スプリンガーに清き一票を!』とかいうやつだよな?」
エレン「典型例としては、な。……にしても選挙か、親父からいろいろ教えてもらったけど、こんな狭いとこでやるのか……」
ライナー「なんにしても面白そうな話じゃないか。マルコに話を聞いてみるのもいいかもしれん」
ジャン「お、俺はこの件には詳しく関わらないって決めてんだ。じゃあな」ガタッ
ベルトルト「……怪しい」
コニー「……何か隠してんな」
午前・対人訓練
エレン(やっぱりおかしい。教官もあんまり注意してねえし、普段なら怒られるような怠け具合でも怒られてないやつが数名いる)
エレン「……なあライナー」
ライナー「気づいたか。こりゃあひょっとすると、俺たちの知らないところで大事になってるのかもしれんな」
エレン「ハブられてるみてえでいい気分はしねえな」
アニ「…………」
エレン「よお。普段はうまいことサボるけど、今日はずいぶん疲れてんな」
アニ「……今に分かるよ」ボソッ
エレン「あ?」
アニ「……まああんたにはまだ関係のないことさ」
エレン「チッ。いいからやろうぜ。今ならお前に勝てそうだ」
アニ「甘く見ないでよ」
エレン「え、ちょっ」
ドガッバキッドゴッ
夜・食堂
エレン「いてぇ」ヒリヒリ
ライナー「派手にやられたな」
ジャン「……あんまかかわんなって、あちこちピリピリしてんだぞ」
エレン「お前……俺に助言してんのか? おい珍しいな」
ジャン「うるせえ。大体今晩には明らかになるはずなんだからよ」
ベルトルト「明らかになる? 何が?」
ジャン「ほら来た、黙って聞いとけ」
コニー「あ、マルコだ。後ろに女子ぞろぞろ引き連れてんぞ」
エレン「…………」
ミカサ「全員! ちゅうもおおおおおおおおおおおおく!!」
一同『』ビクッ
ミカサ「……どうぞ」ササッ
マルコ「ありがとうミカサ。……ごほん。この度の選挙管理委員長を務めます、104期生マルコ・ポットです」
パチパチパチ
コニー「え、拍手する流れなのかこれ」パチパチ
ベルトルト「場に流されやすい体質の人が集まってるからね」パチパチ
ライナー「お前もだろ……俺もだが」パチパチ
エレン「…………」パチパチ
マルコ「みんなもいい加減気にはなっていたと思う。その戦いに、決着をつけるときがきた」
マルコ「すなわち――『進撃の巨人』のメインヒロインとは誰なのか」
ライナー「メインヒロイン……だと……!?」
コニー「俺知ってるぞ、主人公のつがいの相手だよな!?」
ベルトルト「言い方が生々しい!」
エレン「……ふうん」
マルコ「これから二週間、各候補者の皆さんには訓練所各所で演説を行ってもらいます」
マルコ「基本的なルールは選挙細則に掲示していますので閲覧は個人で自由にしてください」
マルコ「投票は一人一票。原則として普通選挙、秘密選挙とします」
マルコ「……直接投票なので、当選者は皆さんの新任を受けたということでメインヒロインに就任します」
マルコ「決して後に悔いのないよう、慎重な審議をよろしくお願いします」
マルコ「質疑応答は僕か、キース教官まで」
ミカサ「以上! 解散!!」
ザッザッザッザッ
エレン「教官まで巻き込んでんのかよ……やけに大規模だな」
ライナー「立候補者一覧が掲示されてるみたいだぞ、食堂前の掲示板だ」
コニー「うーん、難しいことはよく分かんねえけど、主人公がいるからメインヒロインなんだよな……主人公って誰だ?」
ジャン「そりゃお前……」チラッ
ライナー「まあ……」チラッ
ベルトルト「妥当なところで……」チラッ
エレン「だよな……」チラッ
ダズ「!!?」
ベルトルト「違う! 君だ君、エレン!!」
エレン「まあまあ、その辺は置いといて候補者一覧見ようぜ、ほら」
ライナー「まったく……これは、錚々たる顔ぶれだな」
『立候補者
ミカサ・アッカーマン
アニ・レオンハート
クリスタ・レンズ
サシャ・ブラウス
ミーナ・カロライナ』
エレン「……一人を当選させるんなら、中選挙区とか小選挙区とかじゃねえみたいだな」
ベルトルト「……比例代表とかでもないだろうね。というか代理人制度もないし、すごいシンプルだね」
エレン「じゃああれか、メインヒロインは多数の支持を受けるために、過剰なサービスショットをしたりするんじゃないのか」
ベルトルト「そんな衆愚政治みたいなことがあるの?」
エレン「まあ選挙を進めていく中でメインヒロインとしての資質が磨かれていく可能性もあるしな」
ベルトルト「じゃあ選ぶ側の訓練兵たちが正しい資質をもったヒロインを選べなかったら?」
エレン「リコール制度があったら完璧なんだけどよ。さすがにチェック・アンド・バランスまで求めるのはなあ」
ベルトルト「……議会に値する場がないからね」
エレン「サブヒロインじゃだめなのか?」
ベルトルト「間違いなくメインヒロインとサブヒロインの間で意見の相違が起こる」
エレン「政府閉鎖(ガバメント・シャットダウン)――いや、物語閉鎖(ストーリー・シャットダウン)か」
エレン「そもそも今のメインヒロインって誰なんだ?」
ベルトルト「ミカサだったらしいよ」
エレン「どうやって決まったんだ」
ベルトルト「……ほかのヒロインたちの承認を得てらしい」
エレン「あー……絶対だめだそれはだめだ」
コニー「……な、なあ、あの二人の会話にさっきからぜんぜんついていけないのは、俺がバカだからじゃないよな!?」
ライナー「ああ。俺もさっぱり分からん」
ジャン「こいつら何語喋ってんだよ」
ライナー「な、なあ。メインヒロインを、ヒロイン同士の承認で決めたら、どうしてダメなんだ?」
エレン「……なあライナー。サブヒロインの支持を基盤にしたメインヒロインがどうなるか、想像してみろよ」
コニー「主人公と[規制事項]して終了」
ベルトルト「そうはいかないんだ」
ジャン「いや、おかしいだろ、そいつがメインだってサブたちが認めたんだろ? なんで問題があるんだ」
エレン「簡単な話、メインのやることにサブがいちいち文句をつけてくるんだ」
ベルトルト「支持基盤がサブヒロインにある以上、逆らうわけにはいかないからね」
ライナー「……そうか、そういうことか!」
ジャン「つまり……こういうことか? サブの気に入らないことをすればメインとしての承認を取り消されるかもしれない、だからサブの言いなりになる」
エレン「言いなりになるとまではいかないかもしれねえけど、メインヒロインの一強ってことにはならねえな」
コニー「だからミカサのやつ、深夜にエレンのベッドまで行ったところでアルミンにすげえ目で見られて引き下がったのか」
ライナー「そんなことしてる時点でメインヒロインとしてどうかと思うがな」
ジャン「アルミンがサブヒロインの一員になってるのも問題だろオイ」
ベルトルト「ねえこれ……」
『立候補者
ミカサ・アッカーマン
アニ・レオンハート
クリスタ・レンズ
サシャ・ブラウス
ミーナ・カロライナ
アルミン・アルレルト』
ライナー「これはAUTO」
それから、選挙週間が始まった――
ミカサ「アッカーマン党、正統派のアッカーマン党に正統な一票を!」
アニ「レオンハー党はいつでも投票を待っています! ヒロインに自由を、特に理由のない暴力の根絶を!」
ユミル「女神党こそが!! 今後の大局的観点からして、最も投票されるべき党であります!」
クリスタ「は、恥ずかしいよユミル、もうやめようよぉ……」
サシャ「新党蒸かした芋は約束します! 殺伐とした作風をグルメ系に変えて誰も死なないようにすると!!」
ミーナ「え、えっと、黒髪おさげ党のアジェンダは――」
アルミン「アルレル党はこの度、GDP(グレート男子ポイント)上昇のため『アルミクス』政策を導入します!」
エレン「……ポピュリズムが始まるぞ」ボソッ
コニー「ん? エレンなんて言ったんだ?」
エレン「見たところみんなマジメにやってるだろ? これ衆愚政治は回避された」
ベルトルト「スピーチの話術だけで、具体的な方針を何も示さずに票数だけをかき集めるタチの悪い政治手法のことさ」
ライナー「え、ミカサとかは当てはまらないのか?」
エレン「そもそも具体的な政策が示しにくい条件だからギリ許せる。ただこっから先が問題なんだ」
ベルトルト「ポピュリスムが怖いのは、やってる本人だけでなく、やらせている一般人にその自覚がないことだよ。自分もそのポピュリズム政治の要因のひとつだと気づけない」
ジャン「待て待て、ひとまずそのポピュリズムってのは何なんだ」
エレン「こうした直接選挙だと、どうしたら被選挙権を持った人間の支持を得られる?」
ライナー「そりゃ……挨拶回りとか、印象付けてだな」
コニー「金やったら支持してくれんじゃね!?」
ジャン「買収じゃねえか」
ベルトルト「……うん、一番正解に近いのはコニーだね」
ジャン「!?」
ライナー「なん……だと」
ベルトルト「つまりはね、被選挙権を持った人間の望むことをしてあげたら、その人は味方についてくれるでしょ?」
エレン「分かりやすく国政の話をするぞ。国王を選挙で選ぶとする」
候補者A『私は国のために、重厚長大型産業を軽薄短小型産業へ……』
候補者B『私が当選した暁には、国民一人一人に、平等に銀貨3枚を配布します!』
エレン「どっちに投票する?」
コニー「B!」
ライナー「Bだな」
ジャン「まあ……B、だろうな」
ベルトルト「まさにこれぞ、って感じのポピュリズム政策だったね」
エレン「古来の中国だと、国ってのは指導者三代分、約100年を単位として考えられていたんだ。100年の計ってのはここからきた言葉だな」
ジャン「……なるほど、話が見えてきたぜ。長期的なスパンでは利益になるかもしれないが、民衆に痛みを強いる政策」
ライナー「それに対抗するのが、短期的なスパンで民衆に利益を与える政策だった場合」
ベルトルト「民衆はそっちを選ぶってワケ」
コニー「……ん?」
目先の欲望に弱いからな
消費税増税を防ぐ、って言っとけば一定の支持は稼げる
エレン「どうしたよコニー」
コニー「でもよ、民衆のためになるんだったら別にいいんじゃねえのか、それ」
ジャン「んー……あ、銀貨バラまきとか、国の財政に負担をかけるからいけないってことか?」
ライナー「そうとは言い切れないだろう。それほどの負担とは思えないし、金のばら撒き以外にも、そのポピュリズムってのはありそうだ」
エレン「銀貨配ってみんながそれを使えば、経済の好転につながるかもしれねえだろ? 一般の支出増大が本当に起こるんなら経済効果はあるさ」
ベルトルト「一応補足しておくと、減税とか、TPP反対とか、原発廃止とかも拡大解釈すればポピュリズムになる」
エレン「その辺はケースバイケースだな」
エレン「>>29も言ってるように、基本的に日本じ……ゲフンゲフン王国民は流されやすい上に目先の利益につられやすい、この分析はある程度当たっている」
ベルトルト「まあばら撒きを批判する人だっているわけだから、一概には言えないけどね」
ライナー「……俺たちの場合、どんな政策になるんだよ」
エレン「……クリスタのサービスショット、とか?」
ライナー「ポピュリズム万歳!」
エレン「おい」
エレン「じゃあ話を本筋に戻すか。なんでポピュリズムは悪いのか、だったよなコニー」
コニー「え? お、おう! だって民衆が喜ぶことなら別にいいんじゃねえの?」
ジャン「確かに、な。……国家の役割が国民の生活を守り、国民の幸せを確保することなら、ポピュリズムはむしろ政治家の本分にすら該当するかもしれない」
エレン「……まあ判断の分かれるとこだと思うぜ、ここは」
ベルトルト「ポピュリズムっていうのは、裏を返せば国民に痛みを与えることを極端に嫌がるってことなんだ」
エレン「民衆に直接支持を得て立場の基盤を築いてることは、つまりその民衆からの支持を失ったら最後、引きずりおろされることになりかねない」
ベルトルト「当然国民の反感を買わないようにする」
ライナー「……! そうか、長いスパンで見れば必要であっても、国民に痛みを強いる政策は導入できない!」
エレン「増税、社会保障制度切り詰め、TPP。例を挙げればキリがねえぜ」
ベルトルト「山積する課題への取り組みが歪められてしまう。これは、良いこととは言えないよね」
エレン「っと、スープが冷めちまった」ズズズ
コニー「はー……選挙ってむずかしーんだな」
ベルトルト「今回は首長を一人、直接選挙で選ぶわけだからね。複数の議員を選ぶんなら話は違ってくる」
エレン「でもアルミンは賢いからな。誰かの勝利が確定して、それが自分じゃなかったらすぐにサブヒロインの連立を取り付けて、議会を設置しに来るぞ」
ライナー「ん? 直接支持を得ているメインヒロインに逆らえるのか?」
ベルトルト「その話はまた今晩にしようか。……そろそろ訓練だ」ガタッ
訓練・立体機動
ミカサ「エレンっ」
エレン「おう。選挙活動がんばってるみたいだな」
ミカサ「……待っててエレン。今度こそ、私はあの偽りの器を砕いて、真のメインヒロインになってみせる」
エレン「ああ、早くそうしてくれよな。……いい加減お前らと飯食いたいし」
ミカサ「!! ……絶対に負けない!」
エレン「おーう」
エレン(まあ誰が勝っても結果は変わんねえけどよ)
夜・食堂
エレン「で、だ。何の話だったかな」
ライナー「さえぎってすまんが、一つ」
ジャン「……アレのことか?」ユビサシ
クリスタ「ううぅ……なんでこんな格好しなきゃだめなの?」(メイド服)
ユミル「勝つために決まってるだろ! こうしときゃバカな男どもが釣れるんだよ!」
クリスタ(エレンに見られてる、こんな格好で……なんでこんな大事になってるの、こんな選挙なんていやなのにぃ)
エレン「おお、見事なポピュリズムだな」
ベルトルト「これは……他の候補者も、釣られちゃうかもね」
エレン「ん? 類推じゃなくて断定すべきだろ。これはデッドレースになるぞ」
ジャン「どういうことだ?」
エレン「この調子ならミカサも何かコスプレする。スク水なら腹筋隠れてちょうどいいかな」
ライナー「スク水越しに隆起を露にするだけだろ。アンダーアーマーと大して変わらん」
ジャン「…………」ドバドバ
コニー「おーい、しっかりしろジャーンッ! どう考えても助からない量の血が鼻から吹き出てんぞ!?」
エレン「それより俺はアニに白スクをだな」
ベルトルト「興味深いね」
止血処置後
ライナー「……で、だ。どうしてメインヒロインに対抗して議会を設置するかだったな」
エレン「悪い、ちょっと冷静になって考えたら、アルミンがメインヒロインになったとしてもユミルかアニが絶対設立するわ」
ベルトルト「サブヒロイン連合と言ってもいいかもね。これを提案されて、わざわざ反対する人は訓練兵にはいない。つまり大体100%の確立でメインヒロイン=首長と、サブヒロイン連合=議会の二重構造が完成する」
ジャン「その議会ってやつの存在意義がよく分かんねえんだけどよ」
エレン「人数的には二院制は無理か。ねじれがないってのは民主主義としてどうなんだ?」
ベルトルト「うーん、そもそも議員っていうより閣僚寄りな気がするけどね。全会一致だったらドンピシャだし」
エレン「でも各省庁がないだろ。普通に議会と首長で政治的対立が発生する、このプロセスの方が堅いし分かりやすい」
ベルトルト「それもそうか」
これってよくある萌え教科書とかみたいなもん?
>>40
内容というかストーリーは勝手につくってる
まあキャラ借りてるしそんな感じの印象でおk
コニー「メインとサブ連合が対立? メインの方が強そうだぞ?」
エレン「ところがそういうわけでもない。どっちも民衆の支持を基盤にしてるからな」
ベルトルト「異なるプロセスを経て正統性を得ている以上、どちらも引けない」
エレン「そもそもの問題として互いに信条というか方向性が違うんだ、非協力的になるのは当たり前だ」
ライナー「……だが、議会、サブヒロイン連合はいったい何をするんだ? 何もできないのなら、空中で睨み合いが続くだけなんじゃないのか?」
ベルトルト「予想ではあるけど、メインヒロインの行動に、サブヒロイン連合の承認が必要とする、みたいな制約がつくんじゃないかな」
ジャン「……は、ハァッ……!? 対立してるんだろそいつら、一つも通るわけねえじゃねえか!!」
ベルトルト「政府閉鎖(ガバメント・シャットダウン)……」
エレン「まあそれはアメリカの法律上の制度的対策だけどな。前年度の立替とかで対応してる国だってある」
ライナー「ど、どういうことだ?」
エレン「普通は首長が議会に解散権を持っているか、議会が首長に不信任決議権を持っているかでバランスをとろうとするんだ。実際にチェック・アンド・バランスを厳格にするにはその詰めが必須だ」
ベルトルト「でもまあ、そんなの詳しく決めないほうが都合がいいよね、議会としては」
ジャン「メインヒロインに何もさせなきゃいいのか……それもそうだな」
コニー「ヒロインが何もできなかったら、話が進まないんじゃないか?」
エレン「ああ。そうなったら――またヒロインを変えるしかないだろ?」
コニー「……選挙、こえぇ」
ベルトルト「まあ、今までの話には民主主義が前提として含まれている面が多少あるからね。概ねは僕らが話したとおりに推移していくだろうけど、違いは出るよ」
エレン「……まあ、一応、停滞用の対策は用意してる。後は、選挙結果と、それに対する反応を見ようぜ」
ジャン「なあ、ところで……おまえら、なんでそんなに詳しいんだ?」
エレン「親父から習った」
ベルトルト「企業秘密ってことで」
――その後、事態はほとんどエレンたちの予測したように推移していった。
――加熱するアピール合戦。
――増加する肌色率。
――腹筋を解禁しニッチ層を虜にしたミカサ。
――蹴り技を解禁しマゾ層を取り込んだアニ。
――経過の支持率速報では、この二人がほぼ同率でのツートップ。他を大きく引き離していた。
――訓練兵に変態とマゾが多いことが分かった。エレンは少しひいた。
ミーナ「う~ん、支持率伸びないなぁ。でもクリスタたちみたいに大胆な格好とかできないし……」
ミーナ(少しでもエレンと近づけたら、って思って一念発起したんだけど……同じ班っていうだけでも僥倖だったし、仕方ないかな)
サシャ「むー、伸び悩んでますねー」
サシャ(メインヒロインになったらご飯が豪華になるかとふんでいたんですが、そちらの目的も旗色が悪いですし、かなり厳しい風向きですね)
アルミン「……ねえ、そこの二人とも。少し話があるんだけど、いいかな?」
エレン(アルミンが動いた――その情報はすぐに届いた)
エレン(どうやらサブヒロイン連立をくみ上げ、議会の多数派を握るつもりらしい)
エレン(首長とは異なった政党が議会の多数派を占めると、首長の意見は通らず、激しい対立が起きることになる)
エレン(所謂分割政府と呼ばれる状態だが――甘く見るなよアルミン)
エレン(そもそも、分割政府どころか、非協力的体制にすら持ち込ませねえよ)
ベルトルト「エレン。そろそろ開票の時間だ」
エレン「おう、秘密選挙なんだろ? 気兼ねせずにぶちこめていいよな」
コニー「なあ、どうなっちまうんだろうな、ヒロイン。何もできないヒロインになったら、話の進みが……」
ジャン「…………」
ライナー「…………」
エレン「…………」
エレン「俺に、任せとけ!!!」
ライナー「なに……?」
エレン「確かにメインヒロインとサブヒロイン連合が非協力的体制になれば、停滞が発生する。けれど問題はそこじゃないんだコニー」
ベルトルト「……正直に言おう、エレン。僕は今、君の発言の真意を測りかねてる」
ジャン「俺もだ。お前に、何ができるんだ?」
エレン「それを見せてやるよ……行こうぜ」
エレン(アルミン、お前が手回ししたのは、サシャ、ミーナの三人)
エレン(クリスタは中堅ってとこか、アニとミカサの一騎打ちに近いな)
エレン(最後の最後にアルミンの策にひっくり返されて、メインヒロインのヤツは悔しがるだろう)
エレン(……そこが、勝負だ)
マルコ「皆さんありがとうございます。ご協力の結果、投票率は99%を上回りました」
エレン(やべえ投票してねえの俺だけなんじゃねえの)
ベルトルト(結局投票してなかったよねエレン……)
マルコ「では結果を発表します」
マルコ「投票の結果、『進撃の巨人』のメインヒロインは――アニ・レオンハートさんです!」
ミカサ「」
アニ「……っし! ……っし!」グッグッ
アルミン(さあて、仕掛けどころはどこかな)
マルコ「では当選されたレオンハート君から、所信表明演説を……」
エレン(アルミン……動け、動け、動け……)
アルミン(喋りだす直前……マイクを……)
エレン(椅子から腰が浮いてる……マイクを……ひったくった!)
アルミン「ごめん! みんなに聞いてほしい話があるんだ!」
ジャン(そこからアルミンが話したのは、エレンが語ったとおりの内容だった)
ライナー(一見ただの監視機構だが、その実メインヒロインをがんじがらめに縛る鎖)
コニー(前もって説明聞いてなかったら、完全に騙されてたぜ)
ベルトルト(アルミンは一番衆愚政治に向いてるパターンだね……さあエレン、君の力を見せてくれ)
そもそも王政下で選挙について知ってることがおかしいってのは突っ込んだら負けかね。
>>52
そんな発想早く駆逐するんだ
アルミン「だから僕は、サブヒロイン議会――衆議院の設立を提案する」
エレン(……場の空気を呑んだな。アニが当選したって覚えてるやついるのか?)
エレン(まあ、いい)
マルコ「えっと、これは」
アルミン「同じように投票をすればいいよ。なんならここで挙手でも」
エレン「……」スッ
アルミン「……エレン? それは、賛成の挙手かい? それとも」
エレン「反対だ」
アルミン(――やっぱり、最後に立ちふさがるのは君か)
エレン「俺は、衆議院の設立に反対する」
アルミン「エレン……これは必要なチェック機能だ。メインヒロインの独裁を許すわけには」
エレン「俺は!!!!」
一同『!?』ビクッ
エレン「俺は!!!! 不透明な政治がだいっっきらいだ!!」
エレン「気づいたら増税が決定したり、同じ党のくせにTPP賛成と反対がどっちもいてどっちも当選したりしていて!!」
エレン「民衆のための政策のはずなのに、他の政治化との利害で審議の場にも出されず廃案になったり!!」
エレン「100年先を見ることを忘れて、民衆の感性に引っ張られて目先のことしか考えない政治家が勝手に判断したり!!」
エレン「そういうことが全部!! 政府や与党の中で行われていることには腸が煮えくり返って仕方がない!!」
一同『…………』
エレン「お前らだってそうだろう!? そう思うだろう!?」
エレン「政治は俺たちのためのもののはずだ!! 国民なくして国家は成り立たない!!!」
エレン「それとおんなじなんだ!!」
エレン「俺たちモブがいないのなら!! ヒロインは際立たない!!」
エレン「メインヒロインが真に思うべきは主人公じゃない!! 登場人物すべてなんだ!!!!」
エレン「だから俺は――ポピュリズムも衆愚も、物語停滞(ストーリ・シャットダウン)も超えて、俺たちの意志を100%反映させたいッッ!!!!」
一同『……ッ!』
エレン「選挙管理委員長!」
マルコ「……!」
エレン「この選挙は、各ヒロイン候補によるアピールで我々の投票を振り分け判断するというものでしたが――そこには大きな、致命的といってもいい欠陥があります」
マルコ「……けど、もう選挙は終わってるんだ……!」
??「構わん。発言を続けろ」
マルコ「ッ! 教官……!?」
キース「どうしたイェーガー……続けるんだ」
エレン「ハッ! ありがとうございます!」バッ
エレン「確かに候補者の中で、最も俺たちの望むヒロインにはなるでしょう――ですが、逆に言えば」
エレン「『立候補者以外』は絶対にヒロインになれない」
エレン「ヒロインとして十分なステータスでありながら、謙虚さゆえに立候補を辞退してしまった人間……」チラッ
ユミル「!!」ビクッ
エレン「そういった人間がいることも想定される以上、このシステムでメインヒロインを選び出すのには、真の適正を持った人間を取りこぼしてしまう可能性が必ず付きまとう」
エレン「それが自分の愚考するところであります!」
アルミン(そうか――君は)
キース「ならば、貴様ならどうする?」
エレン「はっ……今回の選挙は向こうとし、一週間の周知徹底期間を設けた後、あらゆる人間を候補者と考え、自由投票にて選挙を再度行うことを提案します」
キース「つまり、今回の立候補者以外への投票も許可すると」
エレン「条件としては、さしずめ、存命中の人間である、ぐらいが妥当かと」
アニ(そうか、私は――あんたのヒロインに、なれなかったのね)
アルミン(――僕の、負けだ)
ベルトルト(エレンの提案は受け入れられた)
ベルトルト(アニは泣いていたけど、その時にエレンに慰めてもらったのでちょっと役得だったと思う)
ベルトルト(個人的に驚きだったのは、今回の立候補者全員が、主人公、つまり自分のお相手がエレンだと知った上で立候補していたことだった)
ベルトルト(あのサシャでさえも、食事が云々とか言っていたけど、それってエレンとそういう関係になるのはやぶさかではないということだよね)
ベルトルト(なんにしてもエレンは見事、ヒロイン停滞の危機を回避した)
ベルトルト(サブヒロイン連合は『不透明なヒロイン決定』の要因になるとして、廃止された)
ベルトルト(いまや……僕らは、真のヒロイン一人だけを選ぶことしかできないわけだ)
ライナー「……誰に入れた?」
ジャン「分かってるだろ……サシャだよ。ミカサにだけは絶対に入れん」
ライナー「俺はアルミンに入れた。クリスタに入れてたまるか」
コニー「まあ当選した人はエレンに持ってかれちまうんだから、仕方ねえよな」
ベルトルト「ところで、本人は誰に投票したの?」
エレン「ん、ああ。自分で存命中って縛りつけちまったからな。それなかったら母さんだったんだけど」
ジャン「マザコンだったのかよお前」
エレン「言うな、自覚はある。んで投票は、リコさんに入れた」
ライナー「は?」
エレン「リコさん。駐屯兵団のリコ・プレツェンスカさん」
ベルトルト「誰!?」
アルミン(もう……僕らは負けたんだ……)
ミーナ(誰か一人になる……勝てない)
サシャ(なんでしょ、この……変な、感じ)
アニ「……」
ミカサ「……正解を導く、力がある」
クリスタ「ミカサ……? どうしたの?」
ミカサ「私にも、正解を導く力は、ある」
ミカサ(戦わなければ勝てない――けれど、この戦いは負けられない)
ミカサ(分の悪い賭けに乗る必要はない。場を収めさえすればいい。なら、私は)
アニ「……投票の番だね」
ミカサ「――私は」
クリスタ「?」
ミカサ「私は!! エレン・イェーガーに投票する!!!!」
一同『!!??』
エレン「は?」
ライナ「ヴァッ!?」
ベルトルト「これは……起死回生の一撃ってことかな?」
コニー「エレンが主人公でメインヒロイン? いやメインヒロインで主人公? 欲張りすぎだろ!」
ジャン「どういう……ことだ……?」
ミカサ「ヒロインは、女の子」
ミカサ「いつからか決まったその掟に、誰もが縛られてきた」
ミカサ「けれど、本当の定義は違うはず」
ミカサ「ヒロインとは……主人公を支えるもの」
ミカサ「今のエレンは、誰かに支えてもらっているわけじゃない」
ミカサ「逆に言うとエレンは、誰かに支えられることも、誰かを支えることもできる」
ミカサ「これは応急処置。まだエレンは、ヒロイン一人と向き合う段階ではない」
ミカサ「ので、エレン自らをヒロインとする!!」
ベルトルト「良いこと言ってるっぽいね」
コニー「良い話の気がするぞ!」
ジャン「気がするだけだ。言語力もすげえ残念なことになってるしよ」
ライナー「いや……待て、あれを見ろ……」
アルミン(ミカサ……そうか、君は……逃げなかった)
アルミン(これは逃げなんかじゃない……勝利への布石だ……ミカサは……分かってる)
アルミン(…………僕は)
アルミン(………僕も)
アニ(……私も)
サシャ(……私だって)
クリスタ(……自分の気持ちを信じて)
ミーナ(諦めなくていいって言うなら……!)
アルミン(逃げなんかじゃない、戦略的な――ッ)
「「「「「私/僕も、エレン・イェーガーに投票します!!!!!!」」」」」
エレン「…………」
エレン「いやおかしいだろ」
エレン「なんで他の連中も勢いに乗せられて俺に投票してんだよ」
【ベルトルト「場に流されやすい体質の人が集まってるからね」パチパチ】
【エレン「>>29も言ってるように、基本的に日本じ……ゲフンゲフン王国民は流されやすい上に目先の利益につられやすい、この分析はある程度当たっている」 】
エレン「いやそりゃさ、二回も、民衆は流されやすいとは言ったけどさぁ」
エレン「待てよ。これ本当に誰が得をするんだよ。……え、サブヒロインズ?」
エレン「――それただの利益誘導じゃねえかッッ!!!!」
翌朝・食堂
エレン「…………」
ベルトルト「おはよう、メインヒロイン」
ジャン「よおメインヒロイン」
ミカサ「おはようエレン。寝癖がついてる」
エレン「ふッッざけんなよテメェ!! 昨日の夜から俺の扱いがシンデレラ状態なんだよ! ヤックデカルチャー!」
アルミン「まあまあ。逆にあの場でメインヒロインを決められても、困ったのはエレンなんだよ?」
エレン「う……そりゃそうだけどよぉ」
アルミン「それにしても、やっぱりエレンはすごいね。政治の話になると、正直ついていける気がしないよ」
コニー「おお、アルミン先生の判子つきか。やっぱスゲーんだなエレン」
ミカサ「もっと褒めてもいい」ドヤァ
エレン「お前じゃねえよ」
アルミン「ふふっ、小さいときから、ずっとよく分からない本ばっか読んでたもんね」
エレン「あ~、まあな。今回は民意の反映についての話で良かったぜ。しかも遊びみたいなレベルだったしな」
アルミン「ちゃんと次は民意を反映できるような形式をとるよ」
エレン「おーおー。がんばってくれよ。………………………………」
エレン「………………………………は? ……次?」
サシャ「そうですよ!」
ミーナ「だってヒロインはエレンになったんでしょ?」
アニ「じゃあ、決めなきゃいけないものが出てくる」
クリスタ「攻略する側かぁ……緊張するね、ユミル!」
ユミル「言っとくけど、いくらお前に薦められて立候補したからって、容赦はしないからな!」
ミカサ「次の選挙は一ヵ月後」
エレン「…………選、挙?」
アルミン「そう。主人公を決めるんだ!」
終わり
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。いい