29XX年、こちら宇宙コロニー日本『オーパーツ研究所』 (49)


──これは人類が地球を離れた後の物語。


23世紀、それまで途上国であった多くの国家がほぼ同時期に経済発展を加速させた。

引き起こされた急激な環境汚染の結果、国連は当時の人口を保ったまま母なる惑星を再生する事は不可能と判断し、先進国を筆頭に巨大な宇宙コロニーが建設される事となった。

そして24世紀、全ての人口が地球を離れ軌道上のコロニーで生活するようになった。


コロニー建設のために多くの資源を採掘されはしたものの、地球はその後ゆるやかに再生を始めた。

人類の見通しでは29~30世紀には19世紀頃ほどの環境を取り戻すと考えられた。

その時までに人類は総人口を2分の1にまで減少させ、甦りし惑星への帰還に備えるという壮大な計画。

それは順調に進み、28世紀からは少しずつ帰還に向け準備が開始された。


コロニーは軌道上に点在する。

国力により一国家で1つないし複数のコロニーを持つ国も、逆に複数で1つの共同コロニーに住まう国家もあった。

これはそんな内のひとつ、日本の第2コロニーでの記録である。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1461329974


……………
………


…西暦29XX年


チーフ(26歳♂)「──なにか解ったかい?」

助手(23歳♀)「チーフ、これ陶器でできてるみたいだよ」

チーフ「それは取り出した瞬間から解ってる。つまりこの30分は成果なしなんだな?」


助手「失礼な、重さが120グラムという事も解ったしー」フンス

Hip(♀型アシスタントロボット)《それ、私が秤に載せたじゃないですか》

助手「だからあたしが目盛りを見てあげたんでしょ?」シレッ

チーフ「成果なし、と」ハァ…


Hip《ところでこちらの方は?》

チーフ「ああ、紹介しよう。今日から新たに研究メンバーに加わる事になった──」


新人(20歳♂)「──し、新人です! よろしくお願いします!」ペコリ

助手「おぅ若けぇの、足引っ張んなよ」

Hip《私はアシスタントロボットのHip、こっちの貧乳は助手です。よろしくお願いしますね》

助手「殺す」


チーフ「じゃあ改めて……僕はチーフ、一応ここの室長だ。頼むよ、新人」

新人「はい、頑張ります! …けど」

Hip《…けど?》

新人「この研究室でやる事、いまいちよく解ってないんです……すみません」


チーフ「そうか、まあ特殊な部署だし無理もない。Hipに説明させようか」

新人「Hipさん……変わった名前ですね?」

Hip《呼び捨てで結構ですよ。なんでも太古、人々のアシスタントをしていた『尻』というコンピュータがいたそうで》


助手「あたしが名づけたんだよ」フフン

新人「へーぇ…」

Hip《でもこの名前、ほんとは若干不本意…》

助手「じゃあ『ケツ』にしよっか?」

Hip《素敵な名前でお気に入りなんです!》


チーフ「さあ…まだまだ鑑定しなきゃいけない品が山積みだぞ。早いとこ説明を」

Hip《はい、では──》


──人類が移動したコロニーでは本来、概ね地球と同じように生活ができるはずだった。

しかしやはり実際に稼動し始めてみれば、各部で様々な不具合が起こった。

農耕にせよ工業にせよ、コロニー内でその世界に合わせた新たな方式を模索する必要があったのだ。

人類は当初、その辻褄合わせに追われる事となった。


それらが落ち着く頃には人間にとって数世代が変わるほどの時間が過ぎていた。

結果として地球では当然だった技術のいくらかはロストテクノロジーとなり、そのために使われていたであろう器具などはそれが何なのかさえも解らなくなっていたのだ。

しかしそれらの技術やそのためのパーツは、いつか人類が地球に戻る時に必要とされるかもしれないもの。

帰還を目前としたこの時代、解らないものをそのままにしておくわけにはいかなくなっていた──


Hip《──この研究室こそ、日本のコロニーから発掘されたオーパーツの正体を解き明かす機関なのです》

新人「オーパーツ…?」

チーフ「本来その言葉は地球の古代文明における『不自然な』遺物の事。その時代に存在したと思えないような超技術の欠片を指すんだがね」

助手「コロニーに古代遺跡は無いから、ワケの解らないものは便宜上そう呼んでるんだよ」


Hip《それでたった今も、オーパーツのひとつを解析していたわけです》

チーフ「30分かけて重さだけな」

助手「しゃらっぷ」


新人「なるほど、ここがどういうところかはよく解りました」

チーフ「さて……ではその先入観の無い新しい目に期待しようか」

助手「今、解析してるのはコレだよ──」


http://blog-imgs-94.fc2.com/o/o/p/oopartsss/katoributa.jpg


新人「これですか……なんだか丸っこくて可愛いですね」

助手「あたし、食器か何かじゃないかと思うんだよねー」

Hip《陶器だから食器とか、安直過ぎませんか》


チーフ「ポイントは、明らかになにか動物を象っている事だろうな」

助手「あー、じゃあつまりあれじゃん? 古墳とかから出てきたっていう土器。やったね、一個解決ぅ!」

Hip《古墳時代ってコロニーに引っ越した24世紀頃とは二千年くらい開きがありますよ》

助手「ぐぬぬ」


チーフ「みんな、なんの動物だと思う?」

助手「せーので言おうよ。…せーのっ──」


一同「「「──ぶた!」」」


チーフ「まあ…そうだよな、豚なのは間違いないだろう」

Hip《豚は偶蹄目の哺乳類、主に食肉の用途で古代から家畜とされてきました。このコロニー内でも農業区で盛んに飼育されています》

助手「もうある程度の機械文明が発達してた20世紀以降に、なんでこんな土器みたいなものが作られたんだろう…」


新人「ほんとは鼻にあたる部分でしょうけど、口みたいに大きな穴が空いてますね」

Hip《お尻の側も同じですよ》

助手「さすがケツロボット」


チーフ「口…尻……穴………まてよ、そうか! オナn──」

助手「黙れエロ親父!」ボスッ!

チーフ「うぐっ」ゴフォッ…

ここまで。まったりいきます


新人(…豚の形をしているのは何故だろう)

新人(どうみても食器としての使い勝手は良さそうにない)

新人(コロニー内の美術館で見た美術品としての陶器は、もっとずっしりと重厚感のある作りだった)


新人(前後に設けられた大きめな穴、中は空洞)

新人(……空気を取り入れるため?)

新人(だとすると…火を使うものかもしれない)


新人(恐らくさほど高級な品じゃない、食器以外の日用品…)

新人(豚の形をしてる事で機能性が高まるというわけじゃなくて、単にちょっとした置物なんじゃないだろうか)


Hip《…中に針金のようなパーツがありますね》

助手「何か引っ掛けて使ってたのかな?」


新人「あ、あの…もしかしてなんですけど──」

チーフ「ん?」

新人「──これ、お香みたいなものを中で焚く置物なんじゃないでしょうか」


助手「お香? アロマみたいなやつ?」

チーフ「アロマなんて、とんでもない高級品だぞ」

Hip《過去のデータベースによると、コロニー内と違い地球では農耕地や工業地の面積が広々と確保できたので、嗜好品の生産も盛んだったようです》

助手「今は高級品のアロマも安かったかも…ってこと?」

新人「アロマかどうかは解りませんが…」


助手「中の針金にお香を引っ掛けて焚きながら、部屋の置物とする…か」

チーフ「しかしお香というのは針金に引っ掛けられるような形状をしていたかな?」

Hip《検索します…………棒状のもの、あるいは粉末や山型のものを皿に置いて火を灯すケースが多かったようです》ピピピッ

助手「それじゃあ無理ですね、違うかぁ」


Hip《ただ詳細が不明ですが、渦巻き型をした『カトリ-センコウ』という種のデータがあります。これはアロマではないようですが…》

チーフ「それはなんだ?」

Hip《『蚊』という昆虫を殺すためのお香だったようです》

助手「怖っ、毒ガスでも出るって事?」


チーフ「蚊か…よほど恐ろしい昆虫だったんだろうな」

Hip《検索します…………蚊とは、初夏~秋にかけて特に多く見られる小型吸血マシン。何者かが地球上の生物のDNAを得るために送り込んだとされる…との事です》ピピピッ


新人「Hipのデータはどんな資料から収集されてるんですか?」

チーフ「数年前、過去のデジタルデータベースと思われる記録が発見されてね。百科事典的なものだったようだ」

Hip《『ウィキペディア』と『アンサイクロペディア』、それから『2ちゃんねる』というものです。どれも断片的でしたが、それらの情報から混成されています》エッヘン

新人「へえ…すごいんですね」


助手「そんな強い虫に対抗しようとためのものが可愛い豚さんの形なんて不自然だよ」

チーフ「確かに…」

新人「すみません、僕の素人考えで…」ショボーン

助手「いいってことよ、いったん保留して次いってみよっか──!」


──鑑定品No.256、保留。覚えのため仮に『かとりぶた』として記録──


チーフ「──次の品は?」

助手「なんか今度はかなりメカニカルなオーパーツだよ」

Hip《明らかに金属製ですね》

新人「ちょっとかっこいいな…」フンスフンス


http://blog-imgs-94.fc2.com/o/o/p/oopartsss/reel.jpeg


チーフ「このハンドル状の部分は、やっぱり手で回すところだろうな」クルクル

助手「おー、倍速くらいで周りの腕みたいなのが回転するよ」

Hip《その腕にはローラーが仕込まれているようです》

新人「まあ普通に考えて、なにか糸状のものを巻き取る装置でしょうね…》


チーフ「あとは『たかが糸を巻き取る』ために、なぜこんな凝った機械を使う必要があるか…だな」

新人「当時も電気駆動のモーターなどはあったでしょうから、わざわざ手動機械というのもポイントなのかな」

助手「巻き取り早さを微妙に調整する必要があった…?」ウーン…


チーフ「──わかった」

助手「閃いたの? やるじゃん」


チーフ「これは確認してみる必要があるな」

Hip《何だと思うんです?》


チーフ「まず、助手が着ている服の繊維がほつれたところを探す」

助手「へ?」

チーフ「それを軽く引き出し、このローラーを経て本体に結んで…」ゴソゴソ

助手「ちょ、くすぐったい」ムズムズ


新人「縫製に関係するものですか?」

チーフ「いや、縫製じゃない──」


…クルクルクル
シュルルルルルルッ…!


チーフ「──逆だ、服をほどき巻き取る大人の玩具!」ムハーーーッ

助手「ギャーーーー!?」


新人「……3分の1も巻き取れずに本体が一杯になりましたね」ヤレヤレ

Hip《そりゃそうですよ、どうみても服一着巻き取れるような容量ないじゃないですか》

助手「へそチラくらいですんで良かった…」ハァ…

チーフ「」ピク…ピク…


Hip《でも、この上部のT字型部分を手に持って使う動作は合っている気がします》

新人「そのT字の部分、何か棒状のものに沿うように曲面になってますね」


チーフ「棒状…!?」ピーン

助手「寝てろ!」ドスッ


新人「…これ、狩りか漁で使うものだったりしませんかね?」

Hip《獲物を捕らえるため、という事ですか》

助手「当時は既に狩りなら銃器、漁なら船舶による網漁が行われてたはずだよ?」

チーフ「」ピク…ピク…


新人「この本体サイズじゃ、例えば毛糸ほども太さのあるものは大した長さを巻き取れません」

助手「そうだね、せいぜい数メートルが限度かな?」

Hip《確かに…それだけの長さを巻き取るために、こんな凝った構造は要りませんね》

新人「だからかなり細い、それこそ獲物が気づかないくらい細い糸を手作業で繊細に操るための器具なんじゃないかと思ったんですが…」

助手「でもそれだと一度にたくさんの獲物を得る事はできなさそうだね。うーん…あまり効率的じゃないような」


チーフ「痛てて……いや、面白い考え方かもしれないよ」

新人「チーフ」パァッ


チーフ「そんなに大量に獲物を捕らえる必要は無い、非商業的な狩りや漁なら考えられる」

Hip《しかしこの器具が使われた推定年代の日本では、食用肉も魚も充分量の流通があったはず》

チーフ「そうだね、でも人間というのは『楽しみ』を必要とする生き物だ。ましてコロニーみたいに様々な制約のある空間でなく、まだ環境も著しくは破壊されていなかった時代なら」

助手「楽しむために自ら獲物を捕らえてた…って事?」

新人「産業というより、文化という事ですね」


Hip《検索します…………20世紀頃の文化・娯楽、狩りあるいは漁──》ピピピッ

新人「………」ゴクリ


Hip《──候補が見つかりました、最も有望なものは娯楽『魚釣り』です。対象魚の好む餌を針につけ『釣竿』と呼ばれる棒状の器具から伸びた糸の先に装着》

助手「棒状の器具…ビンゴじゃない!?」

Hip《仕様は多種多様ですが、その釣竿に『リール』という糸巻き器を取り付けるケースも存在します。リールの映像イメージを抽出しました、形状はオーパーツと95%合致します》

チーフ「おお、やったな。新人、お手柄だ」パチパチ

助手「すごいじゃん、さすがあたしの弟子」フフン

Hip《師匠さんとは大違いですね》

新人「いやぁ…まぐれですよ、えへへへへ」ホクホク


──鑑定品No.257『リール(スピニング式)』として確定登録──


チーフ「しかし娯楽のためのもの…か。過去の文化記録としてこれも大切な成果だけど、人類の帰還に不可欠な発見ではないな」

Hip《功を急く気持ちも解りますが、ひとつひとつ着実に…ですよ》

チーフ「うん、解ってる。…すまない」


新人「がんばって大発見をしたいですね!」

Hip《言うそばから急いてるじゃないですか。新人さんも落ち着いて、でも今回はお見事でした》

チーフ「あはは…頼もしい限りだよ」


助手「……大発見なんて、いらないよーだ」ボソッ


Hip《次の品はこちらです》

チーフ「今度のは多少メカニカルさはあるが、構造はかなり単純だな」

新人「これも主に金属でできてますね」

助手「ここは指を通すところで間違いないと思うけど……今も使われる工具のハサミに似てるね」


新人「先の部分はラバーになってます。ものを切るわけではなさそう…」

Hip《ハサミに似た形状でイメージ検索を試みましたが、これというものはヒットしませんでした》


http://blog-imgs-94.fc2.com/o/o/p/oopartsss/byura.jpeg


新人「先のラバーがついた部分、グリップを動かすとスライドして開閉するようになってますね」カチャカチャ

チーフ「その動作で使うものなんだろうな」


Hip《先のところ、湾曲してますね》

助手「さっきのリールの釣竿とかいうのにくっつく部分も湾曲してたよね」

Hip《同じ考えでいけば、湾曲した形状に沿うようになっている…と?》

新人「この位の曲面で沿うものってなんだろう…」


チーフ「断面が円形状のもの…まさか……いや、俺のはそんなに太くない」

Hip《チーフの?》

助手「訊かなくていいから、ケツロボット」

新人(一度は下ネタに引っ張らないと気がすまないのかな)


Hip《柔らかいラバーで保護する必要のあるもの…》

助手「でも手で扱うから、対して力がかかるわけじゃないよね。グリップのところも細っこいし」

新人「……それでも保護しなきゃいけないとしたら、よっぽど繊細な物に対して使うんでしょうか」


チーフ「例えば柔らかい果実とか、布製品とか……。でも使う対象が定まらない限り、解りようがないな」

Hip《ここに無いものをあてずっぽうに言い挙げても仕方ないですしね》

新人「これは迷宮入りかなー」


助手「…だったら、ここにあるものだけでも試してみたら?」

チーフ「ここにあるもの?」

Hip《他のオーパーツという事ですか?》

助手「のんのん」チッチッ


新人「……僕ら、ですか」

助手「そう、人体の繊細な部分に対して使うもの…って可能性は、大いにあるよね」

チーフ「繊細…つまり敏感。よし、助手…奥の部屋へ行こう」スッ…

助手「てりゃっ!」ドゴォッ

チーフ「がふっ」


Hip《下ネタ抜きで、人体の繊細な部分と言えば…》

新人「口…鼻……目、それから…耳とか?」

助手「その中でこの曲面が沿いそうなところ……」ウーン


Hip《あてがってみます?》

助手「うん、そだね。はい、横になってチーフ」キラーン

チーフ「え! 僕!?」ガーン


助手「んー、まずは耳たぶとか」ギュッ

チーフ「痛ててててて! 挟む意味なくない!?」ギャー


新人「唇とか舌はどうでしょう」

助手「この隙間だと皮一枚挟むようになるねー」カチカチ

Hip《それは痛そうです》

チーフ「違う! それたぶん試すまでもなく違うって!」ジタバタ


新人「鼻は無理でしょうし、じゃあ後は…」

助手「…目?」ユラァ…

チーフ「ひいぃ」ガクブル


助手「眉毛は……チーフの形じゃ合わないね」ウーン

Hip《まぶたも丸みを帯びてますよ?》

新人「まぶた挟まれるとか超こわい」ゾッ


チーフ「もうお蔵入りで良くない!? ねっ!?」ドキドキ

助手「んー……? まつ毛に沿いそう…かな?」スッ

チーフ「怖えええええぇえぇぇ!!」

助手(思った以上にぴったり。ラバー部の隙間にまつ毛が入るよ…?)


ギュッ──

チーフ「ひぎぃ」

──パッ…


助手「……あ?」

チーフ「ど、どうなったんだよ?」


新人「まつ毛が…」

Hip《…くるんと上がりました》

チーフ「へ?」キョトン

新人「なんだか片っぽだけ、目がぱっちりです」


Hip《はい、鏡どうぞ》スッ

チーフ「嘘……これが私…?」


助手「…ちょっと鏡、貸して」ヒョイ

Hip《えっ?》

新人「助手さん、なにを…」


助手「………」ゴソゴソ…ギュッ

Hip《自分に試してる…?》

チーフ「おい、目を怪我したら」

助手「黙ってて」…ギュッ

新人(めっちゃ真剣なんだけど)


助手「…できた。ねえ、チーフ──」…クルッ

チーフ「ん?」

助手「──私、可愛くない?」キラキラリーン


チーフ「……そんなに差が判らn」

助手「そいっ!!」ドスゥッ

チーフ「がっ…!?」ゴフッ!バタッ…


Hip《でもこれ、使い方はそれで合ってるっぽいです》

新人「昔の人って、今より美容とかに力を入れてたって聞いた事ありますしね」

助手「……いい」ウットリ


Hip《検索します…………20~21紀頃の文化・美容、まつ毛処理に関わる器具──》ピピピッ

新人「なんかこの瞬間、ドキドキして楽しいな」ドキドキソワソワ

Hip《──候補が見つかりました。まつ毛を上向かせ目の輪郭を強調する美容器具『ビューラー』というものがあります。イメージ画像とほぼ100%一致、間違いありません》

助手「やった、連続で二つも解析成功するなんて珍しいね!」


──鑑定品No.258『ビューラー』として確定登録──


チーフ「──痛てて……今日はあと一つで終わりにしようか」

Hip《次はこちらですね》

新人「今度は金属パーツは一切無いぞ…」

助手「もともとは本体に何か印刷してあったっぽいけど、掠れて読めないね」


Hip《蓋の中身はすごく柔らかいです》

助手「どれどれ……うわ、プニプニだ」プニョンプニョン

新人「小さな穴が空いて…なんだこれ、すごい拡がるぞ」


チーフ「………」


Hip《中は無色の粘液が塗布されているようです》トローン

助手「すごい潤滑性だね」



チーフ「ちょっと、貸してくれ」スッ

助手「なにか閃いたの?」

チーフ「ああ、だがこれは危険なものかもしれない。僕が向こうの部屋で試してくる」スタスタ

Hip《……?》

新人「チーフ、そういうものこそ下っ端の僕が…」


チーフ「いいんだ、君達にもしもの事があったらいけない。……大人しく待っててくれ、すぐに終わるさ」フッ…

助手「チーフ……」ジーーーン

チーフ「いいね、決して開けるんじゃないよ──」カチャッ…パタン


………


…カチャッ


新人「──チーフ!」

助手「だ、大丈夫だった!?」

Hip《あっという間でしたね》


賢者「心配ない、全て解ったよ」ツヤツヤ

新人「えっ、もう解析できたんですか? Hipに画像確認してもらわなきゃ」

Hip《チーフ、どういうジャンルで検索を?》ピピッ

賢者「いや、それには及ばない。後で僕が登録しておくから、みんな今日はもう引き上げてくれ」


助手「えー、教えてよー」ブーブー

賢者「世の中には知らない方がいい事もあるんだよ。さ、お疲れ様だ。僕はこれをもう少し愉し…細かに解析し、登録するとしよう」

新人「そんなに衝撃的なものなんですか…」

Hip《…解りました、ここはチーフにお任せします──》


──鑑定品No.259『名称未入力』として確定登録──

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