乃々「机の下を卒業します」 (18)
乃々(どうも、もりくぼです)
乃々(本日は4月1日)
乃々(俗に言うエイプリルフールの日です)
乃々(嘘をついてもいい日です)
乃々(むしろ、嘘をつかなければならない日のような気もします)
乃々(許されるのであれば、つかないのはもったいない)
乃々(そんな感情にみんな囚われているのような気もします)
乃々(……)
乃々(……私も、その一人です)
乃々(せっかくだから嘘をついてみたい、そんな私がいます)
乃々(うそくぼです)
乃々(……なので)
乃々(ちょっとした冗談を言うことにしました)
乃々(その嘘というのが)
乃々(机の下を卒業する、というものです)
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乃々(もりくぼは、アンダーザデスクというユニットを組んでいます)
乃々(キノコさんとまゆさんともりくぼの三人のユニットです)
乃々(キノコさんはお隣さん、まゆさんは同居人です)
乃々(みんな机の下にいるからアンダーザデスクです)
乃々(……とても単純な名前でした)
乃々(プロデューサーさんは何を考えているのでしょうか)
乃々(いえ、気に入っているので別にいいんですけど)
乃々(そう、気に入っているのです)
乃々(もりくぼはこのユニットが大好きです)
乃々(……恥ずかしいですが、まゆさんやキノコさんにも何回か話しました)
乃々(そうしたら、向こうからも同じような答えが返ってきました)
乃々(……とてもうれしかったです)
乃々(本当に……)
乃々(話がそれてしまいました)
乃々(ええと、つまり、そんな大好きなユニットを卒業する)
乃々(そういった嘘をつきたいと思います)
乃々(……重ねて言いますが、今日は4月1日、エイプリルフールです)
乃々(嘘をついても許される日、嘘をついていい日です)
乃々(事務所内も、そういった嘘が横行しています)
乃々(みんなみんな、冗談や嘘をついて、だまして、うそだと明かして、お祭りみたいに、みんな楽しんでいます)
乃々(その様子をもりくぼは)
乃々(いえ、もりくぼたち3人は机の下で聞いていました)
乃々(そう、聞いていたはずなのです)
乃々(今日が何日か知らない、わからないなんてことはまゆさんにもキノコさんにも無いはずです)
乃々(無いはずなのです)
乃々(なのに……)
まゆ「乃々ちゃんのお別れパーティ……何作りましょうか?」
輝子「き、キノコ……は、おいておいて」
輝子「そ、そうだな……ボノノさんの好きなもの……」
輝子「……って、なんだ?」
まゆ「なんでしょう……乃々ちゃん、何がいいですか?」
乃々(もりくぼのお別れパーティを開くことになったんですけど……)
まゆ「乃々ちゃん……?」
乃々「……はっ」
乃々「あ、ごめんなさい……えっと――」
まゆ「――せっかく乃々ちゃんの主役のパーティなんですから、乃々ちゃんの好きなものを作りたいんですけど……」
まゆ「何がいいですか?」
乃々「何が……え、えっと……ええっと……」
乃々「……な、何でもいいんですけど」
輝子「フヒ……ずるい答えだ」
乃々「あうぅ……」
乃々「えっと……それじゃあ……えっと……」
乃々「……は、ハンバーグで」
まゆ「うふふ、わかりましたぁ」
乃々(……そして、今はその食材買出しです)
乃々(……)
乃々(どうしてこうなったんでしょうか)
乃々(嘘をついて、その後になにもしなかったわけではありません)
乃々(その後に、嘘ですって言いました)
乃々(言ったんですけど……)
輝子「し、しかし……ボノノさん、卒業しちゃうのか」
輝子「悲しいな……」
まゆ「今日何回目ですか、それ?」
輝子「たくさん言った気がする……フヒ」
輝子「だが、やっぱり……悲しいから」
まゆ「……そうですね」
まゆ「まゆも、それは同じです……」
輝子「……」
まゆ「……」
乃々「……あ、あの」
乃々「その、卒業って、あの、エイプリルフールの、嘘なんですけど……」
輝子「……いいんだ、ボノノさん」
輝子「無理して嘘ってことにしなくても……いいんだ」
乃々「いや、あの、無理してないんですけど……」
まゆ「あの引っ込み思案の乃々ちゃんが自力で外に出る宣言をしたんです」
まゆ「最初に聞いたときはびっくりしちゃったけど……でも、もう大丈夫です」
乃々「いや、だから、あの……」
まゆ「まゆたちのことを考えて嘘ってことにしなくてもいいんです」
輝子「この悲しみを乗り越えて、私たちもがんばるから」
まゆ「だから、乃々ちゃんも机の下を卒業してもがんばってくださいね」
輝子「で、でも……たまには戻ってきてほしいな」
まゆ「そうですね……まゆたちはいつでも待ってますから……」
乃々「……」
乃々(む、むーりぃ……)
乃々(なんでですか……何で今日の二人はこんなに強情なんですか……)
乃々(もりくぼの言葉が何一つ受け入れられません)
乃々(机の下を卒業するという嘘が根強く植えつけられてます)
乃々(うそくぼ強すぎです)
乃々(……そう、こんな感じで)
乃々(さっきから何度も嘘といっているんですけど、信じてもらえません)
乃々(真実を嘘だと思われてます)
乃々(もはやどっちが嘘かわかりません)
乃々(……)
乃々(いや、嘘は机の下を卒業するほうですけど!)
乃々(机の下を卒業したくなんかないんですけど!)
乃々(……)
乃々(この言葉も二人の前で言ったのですが)
乃々(やはり、無理して嘘をつかなくていいと言われるだけでした)
乃々(……)
乃々(ど、どうすればいいんでしょうか?)
乃々(やっぱり、今日という日が終われば、もりくぼの嘘に気がついてくれるでしょうか)
乃々(……いえ、今日がエイプリルフールだと知っているはずなのに二人は卒業が嘘だと信じてくれません)
乃々(だとしたら、明日も、明後日も変わらないでしょう)
乃々(ど、どうすれば……)
乃々(どうすればもりくぼの言葉を信じてくれるのでしょう……)
乃々(このままだと、机の下に戻ろうとしても戻れないような気がします)
乃々(まゆさんやキノコさんが、もりくぼはここにいるべきではないとか言いそうです)
乃々(いえ、二人は優しいから言わないかもしれません……言わないでしょう)
乃々(でも……)
乃々(でも……)
乃々(……うぅ)
乃々(結局、その後もパーティの準備は続きました)
乃々(買出しは終わり、またまゆさんの部屋に集まり)
乃々(料理の準備も終わり、みんなのコップに炭酸を注ぎました)
乃々(後は乾杯するだけです)
まゆ「それじゃ、乾杯しましょうか」
輝子「そうだな……」
乃々(まゆさんお手製ハンバーグや、その他もろもろ、たくさんの料理)
乃々(冷蔵庫の中には買ってきたホールケーキなんかもあります)
乃々(このパーティの後、もりくぼは、もりくぼはここを本当に卒業しなきゃいけないん
でしょうか)
乃々(もりくぼは……もりくぼは……)
まゆ「じゃあ……乃々ちゃん」
乃々「は、はいっ……!?」
まゆ「一言何かもらってもいいですか?」
乃々「一言、ですか?」
まゆ「はい……最後に、一言」
乃々「最後に……」
乃々「……」
乃々「……」
乃々「……もりくぼは」
乃々「……」
乃々「もりくぼは……」
乃々「もりくぼは……!」
乃々「もりくぼは、アンダーザデスクを卒業したくないんですけど……!」
乃々「卒業するって言うのは……嘘、嘘なんですけど!」
乃々「もりくぼは、卒業したくないです!」
乃々「こんなにも、準備してもらいましたけど……でも」
乃々「でも、もりくぼは」
乃々「もりくぼは、卒業したくないです……したくないんですけど!」
まゆ「……」
輝子「……」
乃々「……」
乃々「……以上です」
乃々「……」
まゆ「……それじゃあ、乾杯しましょうか」
乃々「……!」
輝子「ああ」
乃々「……」
まゆ「それじゃあ――」
まゆ「――乃々ちゃんが次のイベントの主役になったことを祝して」
まゆ「乾杯!」
輝子「乾杯!」
乃々「かんぱ――」
乃々「――!?」
まゆ「うふふ、乃々ちゃん、おめでとうございます」
輝子「おめでとう、ボノノさん」
乃々「――」
まゆ「……乃々ちゃん?」
乃々「――」
輝子「ぼ、ボノノさん……固まってる」
乃々「――」
輝子「フヒ……ほっぺやわらかいぞ」プニプニ
まゆ「あら、本当ですね……ふふ」プニプニ
乃々「――」
乃々「……はっ!」
輝子「あ、起きた」
まゆ「大丈夫ですかぁ?」
乃々「あ、はい、大丈夫です」
乃々「……」
乃々「いや、大丈夫じゃないんですけど!」
まゆ「きゃっ!?」
輝子「ど、どうした……?」
乃々「どうしたじゃないんですけど!?」
乃々「こういう時って、普通『門出を祝して』とかのはずですけど!」
まゆ「お別れパーティとかならそうでしょうねぇ」
乃々「いや、これってお別れパーティじゃないんですか……?」
乃々「……いや、お別れしたくはないんですけど!」
輝子「ああ、それ嘘だ」
乃々「……嘘?」
輝子「うん、嘘だ」
乃々「……」
乃々「……!?」
乃々「え、えっ……え、ええっ!?」
まゆ「うふふ、驚いてますねぇ」
輝子「大成功だな……フヒ」
乃々「え、いや……あの……の、飲み込めないんですけど……!」
まゆ「炭酸苦手でしたか?」
乃々「そうじゃなく!」
乃々「あの、これ……このパーティが、嘘ってことですか……?」
まゆ「パーティは嘘じゃありませんよぉ」
輝子「お別れパーティは嘘だけど……フヒ」
乃々「嘘……」
まゆ「このパーティは乃々ちゃんがイベントの主役になったことのお祝いパーティですよ」
乃々「あ、はい……確かになりましたけど……」
乃々「……」
乃々「え、じゃあもりくぼ、だまされてたんですか……?」
まゆ「騙しちゃいました♪」
乃々「うぅ……」
乃々「ひ、ひどいんですけど……」
輝子「ひどい……?」
輝子「……ひ、ひどいのはどっちだああああぁぁぁっ!」
乃々「!」ビクッ
輝子「お前の嘘でなぁ!」
輝子「私たちが……私たちがどんだけ悲しんでたと思ってんだああああああぁぁぁっ!」
乃々「!」
輝子「お前が勝手に卒業するなんて、納得行くわけねぇじゃねぇか!」
輝子「簡単に引き下がれるわけねぇだろうがあぁっ!」
乃々「……」
まゆ「……輝子ちゃん、今は夜だから、もうちょっと静かに、ね?」
輝子「あ……ご、ごめん」
輝子「……でも」
輝子「これが、私たちの思いだ」
乃々「……」
まゆ「……乃々ちゃんに卒業するって言われたとき、本当に悲しかったんですよ」
まゆ「今日がエイプリルフールだって気づくまで……本当に」
乃々「……」
輝子「まあ、そんなに時間もかからず気づいたんだけどな」
輝子「でも、嘘で悲しくなったのは本当だから……だから、仕返ししたんだ」
乃々「仕返し……?」
輝子「ああ」
輝子「ボノノさんのお別れパーティを開くって言う嘘だ」
まゆ「輝子ちゃんと話をあわせて……二人で乃々ちゃんを騙そうって」
まゆ「無事成功したみたいですね……うふふ」
乃々「……」
乃々「……」
乃々「……やっぱり、ひどいと思うんですけど」
乃々「でも、もりくぼもひどいことしちゃったんですよね」
輝子「……」
まゆ「……」
乃々「もりくぼも、お別れパーティが開かれようとして……」
乃々「ユニットからはずされるんじゃないかって、本当に悲しかったので……」
乃々「だから、あの……ごめんなさい」
まゆ「……」
輝子「……わ、私たちもやりすぎた、かな」
輝子「ほとんど、ボノノさんを無視したような感じになったし」
輝子「……ごめん」
まゆ「私も……ごめんなさい」
乃々「……」
輝子「……」
まゆ「……」
乃々「……」
輝子「……」
まゆ「……」
まゆ「……こ、この空気どうしましょう?」
乃々「いや、聞かれても……」
輝子「……し、仕切りなおして、乾杯しよう」
輝子「今日は祝いの場……だから、フヒ……こんな空気、ダメだ」
まゆ「……そうですね」
まゆ「今日はエイプリルフール、嘘を許す日ですからね」
乃々「うぅ……エイプリルフールに弄ばれてしまいました」
輝子「私たち、みんな四月馬鹿だな」
まゆ「ですね、ふふ」
まゆ「……それじゃ、改めて乾杯しましょうか」
まゆ「乾杯!」
輝子「乾杯!」
乃々「乾杯!」
輝子「……でも、卒業しないでくれて、本当によかった」
乃々「う……だ、だからあれは嘘なんですけど……」
まゆ「そうですね」
まゆ「乃々ちゃんは全く卒業する気がないみたいですし」
乃々「確かにそうですけど……」
乃々「……い、今になって恥ずかしくなってきました」
輝子「嘘を吐いた報いだ……フヒ」
乃々「うぅ……」
乃々「そ、それなら二人も報いを受けるべきなんですけど……!」
まゆ「わかりました」
まゆ「すぅ……」
まゆ「もりくぼ、このユニットを卒業したくはないんですけど……!」
乃々「それただのもりくぼの物真似なんですけど!」
まゆ「じゃあ……さくま、アンダーザデスクを卒業したくはないんですけど……!」
乃々「さっきとほとんど変わってないんですけど!」
乃々「……というか、恥ずかしがってもいないんですけど!」
まゆ「ふふっ」
輝子「じゃあ……私も……」
輝子「ほし、アンダーザデスクを卒業したくないんですけど……!」
乃々「私の真似しかしてないんですけど!」
乃々「あうぅ……な、なんかずるいんですけど……!」
輝子「じゃあ……えっと……恥ずかしいこと……」
輝子「……」
輝子「……これからも、3人でがんばろうな」
まゆ「ええ」
乃々「はい」
輝子「恥ずかしくはないけど……フヒ、やっぱり照れる」
輝子「何回も言ってるのに……なんでだろ?」
乃々「そういうものです……私にはわかるんですけど」
まゆ「ふふっ」
まゆ「……3人でがんばるためにも、卒業するなんてもう言わないでくださいねぇ」
まゆ「今日だからよかったけど、違う日だったら……まゆも、輝子ちゃんも……!」
乃々「……大丈夫です」
乃々「ちょっと、今日はもりくぼの中のうそくぼが強かっただけです」
乃々「私、絶対卒業なんてしないんですけど」
乃々「机の下は楽しいですから……ふふ」
おしまい
間に合いました
いつか、アンデス3人のユニット曲が出ることを信じてます
誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません、読んでくれてありがとうございました
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