二宮飛鳥「シンデレラパーティー」 (12)

アイドルマスターシンデレラガールズのエイプリルフールネタ、シンデレラパーティーの世界観でのSSです。
見切り発車です。
とりあえず書いていきたいと思います。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459452351

飛鳥「……『勝ち残った者は願いを叶えられる』か」

 ちひろさんから言われた言葉を思い出す。『シンデレラ』に覚醒したボクは、ちひろさんから様々な説明を受けた。自分と同じシンデレラに覚醒した少女と戦い、シンデレラハートを奪い、『アイドル』になる。それがこの催しの目的らしい。

飛鳥「……叶えたい願いがないわけではないけれど」

 この悪趣味な催しに参加したいとは思わない。それがボクの結論だった。

飛鳥「と言っても、それで何か解決するわけではないのだろうね」

 この催しに参加するかどうかはボクの意志でどうこうすることができるものではないのだろう。この世界の理には抗うことができない。シンデレラとして覚醒した時点で、この争いからは逃れられない。

飛鳥「……それなら、ボクの目的は決まった」

 ボクに残された選択肢はこの争いに参加するかどうかじゃない。この争いで勝利するか敗北するかだ。
 敗北するよりは勝利する方がいい。しかし、ただ勝利するだけではこの悪趣味な催しを開いた存在には敗北したも同然だ。
 なら、ボクの目的はただ一つ。
 この争いに勝利して――この争いの否定を願う。
 それだけだ。


――

 夜。

 ボクは学校に向かっていた。シンデレラならば戦う場所に夜の学校を選ぶと考えたからだ。誰がシンデレラかはわからないが、夜の学校なんて場所に居るのはシンデレラくらいしか居ない。誰がシンデレラなのかを探すことが最も面倒くさいことだが、この方法ならば最も簡単にシンデレラを見付けられると思ったのだ。

 ただ生き残るだけが勝利条件ではない。シンデレラハートを多く持っていた者の願いが叶うならば誰もが積極的に戦おうとするはずだ。それは誰もが思っている。しかし、シンデレラが集まる場所とは……? シンデレラの誰もが共通して知っている場所。それは学校である。昼間は戦えないが、夜間であれば好戦的なシンデレラは皆学校に集まることだろう。

飛鳥「……誰も居ない、か」

 学校に着いた。既に誰かが戦いを始めていてもおかしくないと思ったのだが、まだ、戦いは始まっていないらしい。
 ボクは校庭の中心で辺りを見回した。誰かがどこかに隠れていないか……しかし、隠れていたとしても、そう簡単には見付からない。
 とりあえず、ここで待っていれば誰かが攻撃を仕掛けてくるはずだ。そこを――


蘭子「魔王を讃えし漆黒のヴェール!」

 その声が聞こえた瞬間、ボクの周囲に黒いカーテンのようなものが展開され、ボクの背後でパキィと何かが勢い良く弾けたような音が聞こえた。

 後ろか。

飛鳥「蘭子。やってくれ」

蘭子「クックックッ……闇の炎に抱かれて消えよ!」

 蘭子の右手から炎が現れ、ボクを狙った何者かに向かって一直線で飛んでゆく。

 ……悲鳴のようなものは聞こえない。

蘭子「もう終わったか? 他愛もない」

飛鳥「……そうみたいだね」

 ボクと蘭子はゆっくりと未だ火炎の上がっている校舎に向かって歩いて行く。一歩、二歩、三歩……そして、炎の中心に至ったその瞬間。

飛鳥「蘭子。たぶん次も後ろだ」

蘭子「ああ――聖なる左手には、氷を!」

 ボクは蘭子に命令して背後に居ただろうシンデレラかアイドルを凍らせる。……先程の炎で倒せたなどとは最初から思ってはいない。あれはただの威嚇だ。本命はむしろこっちだ。

 先程の攻撃で倒したと思った……そのように油断しているように見せかけて、わざと隙をつくった。そして、相手はまんまとそれに引っかかり、ボクを待ち伏せし、攻撃しようとした。

飛鳥「……アナスタシア、か」

 氷漬けにされている少女はボクのクラスメイトだった。……この子も、シンデレラだったのか。相棒であるところのアイドルも居るが、誰なのかはわからない。アナスタシアと同じ銀髪で、銃を持っている。この銃で攻撃されたのだろう。
 アナスタシアとこのアイドルの戦略は間違っていなかっただろう。銃という遠距離からの攻撃手段を持っているならば、隠れて隙だらけの相手を狙うことが最適だ。相手に認識されるより前に、相手に必殺の一撃を叩き込む。そうすることができるならばそうした方が良いのは当然だ。

 ただ、相手が悪かった。

飛鳥「……とりあえず、一人目だ」


――

 その日はそれで終わりだった。他にシンデレラが一人も居なかった……なんて思うほどボクの頭は楽観的にはできていない。おそらくはただ様子見していただけのアイドルが数多く居たはずだ。

 彼女たちがボクたちのことを攻撃しなかった理由は一つ。『勝算がまだなかった』からだろう。

 完全に不意を突いたと思われた攻撃を防ぎ、すぐさま相手の居場所を感知。大火力での遠距離攻撃で相手の居場所をそのまま破壊し、勝利する。

 ……自分でも異常だと思う。『神崎蘭子』というアイドルは強すぎる。相手の攻撃を不意打ちであっても防ぐという絶対防御と隠れていても無関係の大火力を有する。そんな敵に何の策もなく突っ込むバカは居ないだろう。

 だが、神崎蘭子なんていうアイドルが居るということは、他にもこれだけ強いアイドルが居てもおかしくはない。それがわからないほどボクもバカではない。

 にも関わらず、ボクがあんな風に蘭子の力を見せびらかした理由……それは。

奏「飛鳥ちゃん。ちょっと、いいかしら?」

飛鳥「……ああ」

 ……シンデレラたちを、『釣る』ためだ。


――

 昼休み、体育館裏。

飛鳥「それで、何の用だい? 奏さん」

奏「わからない?」

飛鳥「推測で何かを決めつけるのは嫌いでね。実際に観測されるまでは絶対のものなんてこの世には一つもないとは思わないかい?」

奏「……そうね」

 と言っても、奏さんがシンデレラであることはまず間違いないだろう。それも、昨日ボクたちの戦いを見ていたシンデレラ。

 ボクたちの能力を見ていたということは不意打ちが通じないことはわかっているはずだ。だからいきなり攻撃を仕掛けてくることはないだろう。奏さんのアイドルの能力によってはわからないが……その場合のことも、考えていないわけではない。

奏「私はシンデレラよ。昨日、あなたたちの戦いを見せてもらったわ。そこで提案なのだけれど……私たちと、手を組まない?」

飛鳥「……最後に勝ち残るアイドルは一人だけ、じゃあないのかい?」

奏「ええ。そうね。でも、最後まで勝ち残らなければ意味がないでしょう?」

飛鳥「……最後の二人になるまで、か」

奏「そういうことね」


飛鳥「……ボクのアイドルの能力は知っているだろう? はっきり言って仲間なんて要らない。その上で、『私とは組む意義がある』と言えるのかな」

奏「ええ。そうでなければ持ちかけないわ。……そもそも、この提案は最後の二人になれば『私が勝てる』と言っているようなものよ? 私のアイドルの能力を間近で見ることができる……それだけで、十分に意義があると思うけれど」

飛鳥「そんなに強いならキミの方がボクと組む意義がないんじゃないか?」

奏「あるわ。だから、私はこんな提案を持ちかけているのよ。……今、あなたと戦わずに、ね」

飛鳥「……」

奏「……迷っている、かしら? それなら、また放課後に会いましょう。その時までに決めておいてくれればいいわ」

飛鳥「……ああ。そうしてもらえると、嬉しいよ」


――

 速水奏。彼女が何を考えているのかはわからないが、ボクが望んでいたのは『こういう状況』だ。だから今回のことは好都合だ。

 それなのにどうして迷っている風に装ったか? ……最初から『仲間を探している』といった風に話せばそれはすなわち弱みをさらしているに等しい。『仲間を探している』ということは『仲間が必要な状況にある』ということだからだ。

 奏さんが話していたこともすべてが真実というわけではないだろう。ボクと同じで、何か隠していることは確実だ。

 ボクが奏さんに尋ねたことはほとんどが本当に気になったことでもある。返事を迷ったこと以外はあまり嘘をついていない。

 奏さんはボクに勝つことができる……これは本当かどうかわからないが、ただのブラフという可能性の方が高い。ボクと組もうとしている理由は単に『神崎蘭子の能力を間近で見ることによって何か穴がないかを調べる』ためだろう。

 そのことをわかっている上で奏さんと組もうとしている理由は、言うまでもなく、そうした方がいいと思ったからだ。

 神崎蘭子の能力はおそらくアイドルの中でも規格外だ。ただし、そこに欠点がないわけではない。その欠点を隠すために、他のシンデレラと組むべきだと考えた。

 速水奏。彼女のアイドルの能力が何なのかはわからない。

 わからないが、利用させてもらう。

 利用される代わりに、利用してやる。

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