カツオ「姉さん、前々から思ってたんだけど、なんで置き傘しないの?」
サザエ「置き傘?」
カツオ「だっていつも急な雨の度に誰かが傘を持って行ってるじゃん。会社に置き傘してこればいいでしょ」
サザエ「何馬鹿な事言ってるの。余分な傘を買うお金なんてうちにはないわ」
カツオ「傘なんてコンビニで500円で買えるでしょ。ってか家族に持ってこさせるくらいならコンビニで買えばいいじゃん」
サザエ「バカな事言ってないで早く持って行きなさい」
カツオ「はぁ…わかったよ」
駅
カツオ(もう一時間も待ってるのに、父さんもマスオさんも来ないなあ…)
サザエ「カツオ」
カツオ「あ、姉さん!さっきからずっと待ってるのに父さんもマスオさんも帰ってこないんだよ!」
サザエ「ええ、急に残業が決まったらしいの。だから傘はもういいわ」
カツオ「そんな!僕ここで一時間も待ったんだよ!?そうならそうでもっと早く知らせてくれればよかったのに!」
サザエ「そんな事言ったって、天ぷらを作ってた途中なんだからしょうがないでしょ」
カツオ「はぁ…こんな時携帯があったらすぐに連絡出来たのに…」
サザエ「子供のあんたがそんな物持ってても仕方ないでしょ。そもそも携帯なんて贅沢よ」
カツオ「贅沢って…今の時代携帯やスマホは普及率が138.5%以上だってこの前ニュースで言ってたよ。むしろ持ってないうちの方が変だよ」
サザエ「うちはうち、よそはよそです。携帯なんてなくても困らないわ」
カツオ「今困ってたばかりじゃないか!」
サザエ「まあ!この子ったらなんて子なの!」
翌日
中島「それは災難だったねぇ」
カツオ「まったくだよ。それにしても、僕達子供はともかく大人で携帯を持っていないなんて絶対に困るだろうに」
中島「でも僕の家も誰も携帯は持っていないよ?」
カツオ「でも普及率が138.5%以上だってこの前ニュースで…」
中島「きっとそのニュースが間違ってるんだよ。僕達の知り合いで携帯を持っている人なんて殆どいないじゃないか」
カツオ「確かにそうだけど…」
ヒュー
カツオ「うう…寒い…」
中島「え?そうかな?」
カツオ「中島は何とも思わないのかよ?っていうか今思ったけど、どうして僕達こんなに寒いのに短パン履いて登校しているんだ?」
中島「そんな事今まで疑問に思った事はなかったよ」
カツオ「せめて長パンならこんな思いしなくて済むのに…」
中島「磯野。本気で言ってるの?」
翌日
カツオ(はぁ…長パンを履いているだけでこんなに寒さが凌げるなんて思わなかったよ)
カツオ(僕は一体今までなんであんなに寒い思いをしてまで毎日短パンを履いていたんだろう)
中島「よお磯野…って、磯野なんだよその恰好!あははは!」
カツオ「中島?何がそんなにおかしいんだ?」
中島「だってその恰好…もやしみたいじゃないか!あはは!」
カツオ「もしかしてこの長パンの事を言ってるのかい?一体何がそんなに笑えるんだ?」
花沢「いーそーのーくん!って、何その恰好!あはははは!」
カツオ「花沢さんまで…」
花沢「あはははは!変な格好!まるで病気の子供ね!そんな格好磯野君には似合わないわ!あははははは!」
カツオ「なんだよもう…」
教室
先生「それでは出席を取る」
生徒達『クスクス・・・クスクス・・・』
先生「なんだか今日は騒がしいな?」
カツオ「……」
先生「ん?磯野、なんだその恰好は?」
カツオ「いや…寒かったもんで…」
先生「はぁ…磯野、ちょっと立ちなさい」
カツオ「はい…」
生徒達『あははははははは!!!』
先生「皆静かに!」
生徒達『シーン・・・』
先生「磯野、そんな格好じゃ皆から笑われるぞ?」
カツオ「……」
先生「子供はな、寒い中でも短パンを履いて元気に外で遊ぶ物なんだ。そんな格好をしていたら病弱な子供だと思われる。わかったな?」
カツオ「……はい」
先生「明日からはいつも通り短パンで登校するように」
カツオ「……」
夜
家族一同『あはははは!!』
カツオ「笑いごとじゃないよ!」
サザエ「だって長パン履いてそれだけ笑われるって、だから私だって行く前に止めたのに!」
マスオ「サザエ、もうよしてやれよ。カツオくんだってたまには長パンが履きたくなることだって…あははははは!」
カツオ「皆おかしいよ!どうして長パンを履いたくらいでそんなに笑うんだよ?」
ワカメ「だって子供が長パンを履くなんて変よ」
タラオ「変ですぅ」
波平「左様。子供は冬場でも短パンを履いて外で元気に遊ぶ物だ」
フネ「その通りですよ。長パンなんて履いて外に出たら病気の子だと思われますよ」
カツオ(なんでだよ…皆何かおかしいよ…)
数日後のある日の夜
波平「お、お!打ったー!」
カツオ「ねえ父さん。僕アニメが見たいんだけど…」
波平「アニメだと?そんな物より野球の方が面白いぞ。カツオも一緒に野球を見ないか?」
カツオ「野球なんかよりアニメがみたいよ。野球なんていつもやっているじゃないか」
波平「何を言っておるんだ。同じ試合は二回とないんだぞ?」
カツオ「そうかもしれないけどさ、ワカメやタラちゃんだってたまには野球じゃなくてアニメがみたいだろ?」
ワカメ「別に。お父さんが野球がいいって言うなら野球でいいわ」
タラオ「僕はお爺ちゃんが見たいのが見たいですぅ」
波平「そうかそうか。ほれ、タラちゃんもお爺ちゃんと一緒に野球を見よう」
タラオ「わーいですぅ」
カツオ「はぁ…ビデオが付いているテレビなら録画して見れるのに…最近のテレビは標準で録画機能が付いてるのも多いらしいし」
サザエ「何言ってるの。そんな金うちにはないわよ」
波平「ん?テレビの様子がおかしいぞ?画面が乱れて映らなくなったわい」
タラオ「壊れたんですか?」
フネ「どれ?」トンドン
サザエ「駄目ね。完全に壊れちゃったみたい。買い換えるしかないわ」
カツオ(やった!これで録画機能の付いたテレビが買えるぞ!)
翌日
波平「みんなー、新しいテレビを買ってきたぞー」
タラオ「わーいですぅー」
カツオ「待ってました!」
マスオ「いやぁ、とても重くてお義父さんと二人がかりでも大変でしたよ」
カツオ「これって…」
サザエ「まあ!前のテレビと同じだわ!」
マスオ「電気屋に行ったら丁度前と同じ型のテレビがあったんだ」
波平「やはりこのテレビがうちには一番似合っている」
カツオ「そんな!こんな分厚いテレビじゃ録画も出来ないじゃないか!」
波平「そんな機能なくても別に困らないだろ」
カツオ「困るよ!裏番組が見たい時困るでしょ!」
波平「そうなのか皆?」
ワカメ「困らないわ」
フネ「困りませんね」
タラオ「困らないですぅ」
波平「うむ。やはり我が家にはこのテレビが相応しいと言う事だな」
カツオ「なんだよもう…」
数日後
サザエ「はぁ、今月も赤字だわ」
フネ「この前買ったテレビ代が負担になったんだねえ」
サザエ「はぁ…どうしようかしらねぇ」
カツオ「パートでもしたら?」
サザエ「パート?」
カツオ「家事や育児の合間にパートをするんだよ。うちには母さんだっているんだし、今時の主婦ならパートくらいするでしょ」
フネ「カツオ!あんた何言ってるの?」
サザエ「そんな事したらタラちゃんが寂しがるでしょ!」
カツオ「いや、パートしている間タラちゃんは母さんが面倒を見れば…」
サザエ「じゃああんたはマスオさんが会社で働いている間、私には家事をほっぽり出してパートをしろって言うの!?」
フネ「妻が家を守らないんで一体誰が家を守るんだい!?」
カツオ「いや、だから母さんが…」
波平「男は家庭。女は仕事と昔からそう決まっておる」
サザエ「そうね。生活費は上手く節約して何とかするわ」
カツオ「……」
カツオ(やっぱり何か変だよ…)
>>30
ミス 波平「男は家庭。女は仕事と昔からそう決まっておる」
○ 波平「男は仕事。女は家庭と昔からそう決まっておる」
ある日
波平「母さん、お茶」
フネ「はい」
波平「……」ズズズズ
カツオ(お礼くらい言っても…なんて言ったらまた変に思われるんだろうなあ…)
カツオ(男女平等のこの時代に、男は仕事で女は家庭だなんて)
カツオ(それだけじゃない。長パンの件といい、テレビの件といい…)
カツオ(何かがおかしい…)
空き地
中島「おーい磯野、野球しようぜ」
カツオ「悪いけど、そんな気分じゃないんだ」
中島「珍しいなあ。磯野が野球しないだなんて」
カツオ「僕だってそういう気分の時もあるさ」
中島「ふーん。まあいいや。じゃあな」
カツオ(こんな寒い中、あんな短パン履いて空き地で野球か…)
カツオ(なんで皆何かが変だって気付かないんだろう…変だって思うのは僕だけなのかなあ…)
堀川「お兄さんどうしたんですか?浮かない顔して」
カツオ「堀川くんか…ちょっと気になる事があってね」
堀川「そうなんですか。僕も最近気になる事があるんですよ」
カツオ(堀川くんの事だからまた訳のわからない事を気にしているんだろうなあ)
堀川「ワカメちゃんくらいの歳の女の子って、どうして皆いつもパンツを見せてるんだろうなあって」
カツオ(やっぱり堀川くん、訳のわからない事に興味を持っているなあ…)
堀川「大人の女の人とか、お兄さんと同じくらいの年の女の子は皆ちゃんとパンツが見えないようにしているじゃないですか。変ですよねえ」
カツオ(変…?変と言えば、僕達が履いてるこの短パンだって…)
カツオ「ねぇ堀川くん。それを言ったら僕らがいつも履いているこの短パンだって変だと思わないかい?こんなに寒いのにこんなのを履いているんだよ」
堀川「言われてみれば変ですよね。どうして皆長いズボンを履かないんでしょうか?」
カツオ「え…?」
堀川「え?って、どうしたんですかお兄さん?お兄さんの方から変だと言ったんじゃないんですか」
カツオ(僕が長ズボンを履いた時、他の皆は皆笑っていたのに…)
カツオ「実は僕、前に寒いのに耐えかねて長ズボンを履いて学校に行った事があるんだ。そしたら皆から笑い物にされて、先生にも病気の子と思われるからやめろって怒られたんだ」
堀川「えー!長ズボンを履いて学校に行っただけでそんな目にあうんですか!?」
カツオ「え!?」
堀川「え!?って、お兄さんの方から言ったんじゃないですか!」
カツオ「ほ、堀川くんは長ズボンで学校に登校する人がいても変だとは思わないのかい!?」
堀川「だって寒いじゃないですか。むしろこんな寒い中短パンで外を歩いてる方が変ですよ。今更になって気付きました」
カツオ「ほ、堀川くん…君はこんな事を変だと思う僕の事を変だとは思わないのかい?」
堀川「思いませんよ。というかそんな事くらいでお兄さんを笑い物にする周りの人たちの方がよっぽど変です」
カツオ「うう…うう…よかった…よかった…」
堀川「お、お兄さん!?どうして急に泣くんですか?」
カツオ「よかった…僕以外にも、僕以外にも気付いてくれた…本当に良かった…」
数時間後
堀川「そうなんですか…そんな事があったんですか…」
カツオ「ああ…」
堀川「男女平等の今の時代に女の人が働くと言っただけでその反応…信じられませんね」
カツオ「携帯やテレビの時だってそうだよ。なんか口では上手く言えないんだけど、皆新しい事を拒んでいるって言うか、そのままの場所でいつまでも留まろうとしているか…」
堀川「異常な程に保守的…という事なんですかね…?」
カツオ「僕が変だと思った事を変だって言うと、皆が僕を変だと言うんだ…」
堀川「変なのは…周りの人達ですよ」
カツオ「そうだよね…今まで僕は皆じゃなくて僕がおかしくなったんじゃないかって思ってたけど、実際は違うんだ。やっぱりおかしいのは皆なんだ」
堀川「一体なんでこんな風になってしまったんでしょうね…」
カツオ「わからない…何とかする方法があればいいんだけど…こんな事が続いていたら気が狂いそうだよ…」
堀川「そうですね…そうだ!身の回りの変な事に気づいたらここで二人で報告し合うってのはどうですか?そしたら何かいい手が思いつくかもしれませんよ!」
カツオ「そうだね…うん!そうだよ!そうしよう!」
数日後
カツオ「タラちゃん見たいな小さい子供が一人で外を出歩いているのはやっぱり変だよ」
堀川「確かに…あんな小さい子供が一人で出歩いていたら誘拐や事故に合うかもしれませんもんね」
カツオ「やっぱり堀川くんもそう思うのかい?」
堀川「勿論ですよ。あと気づいたんですけど、僕たちの周りには異様に刈り上げの人が多いです。今の時代で刈り上げと言うのは相当珍しい筈なのに」
カツオ「刈り上げか…それは僕も気づかなかったなあ…そういえば、僕の周りは和服を普段着にしている人が多いけど、これもやっぱりおかしい気がする」
堀川「それとあれから色々調べて見てわかったんですが、やっぱり子供がいる家でお母さんが働いている家は僕達の周りでは一軒もありませんでした」
カツオ「やっぱりそうか…それにしても、堀川くんのお陰で色々な事がわかるようになってきたよ」
堀川「周りが変だって事以外にわかった事があるんですか?」
カツオ「まず僕たちの周りの人達は未来を一切見ていない」
堀川「それは一体どういう意味なんですか?」
カツオ「よく将来がどうとか、僕達大きくなるととか言っているけど、実際は過去に生きている。未来を受け入れようとしない。だからどんな微量な変化も受け入れない」
堀川「携帯見たいな新しい物を嫌うのはそのせいなんですか?」
カツオ「多分そうだよ。家具一つ増えるだけでも決して許さない。常に元の状態に戻す為に皆が働く。変化や改革は望まず、平穏で変わらない毎日を求めている。そんな感じだよ」
堀川「極端な話、時間が止まればいいと皆考えていると言う事ですか?」
カツオ「そう言う事。あともう一つ気づいたんだけど、僕たちは一見すると良好な人間関係を構築している。だけど実際は違うお互いがお互いをけん制し合っていて、常に誰かを監視している」
堀川「どういう事です?」
三郎「やあ、カツオくん。堀川くん」
カツオ「あ…三郎さん」
三郎「最近堀川くんと仲がいいんだね」
カツオ「え…まあ…」
三郎「仲がいいって事はいいことだよ。じゃあね」
カツオ「ふう…もう行ったな?」
堀川「お兄さん?どうしたんですか?そんな顔して」
カツオ「今のがそうだよ。三郎さん、僕達の事を監視していた」
堀川「か、監視ですか!?」
カツオ「前に姉さんが道端で助けてもらったお婆さんにお礼をしたいと言った事があった。でも連絡先はおろか住所や名前もわからなかった」
堀川「……」
カツオ「姉さんはその事を三郎さんに話したんだ。そしたら三郎さん、そのお婆さんの住所と名前と電話番号を教えてくれたんだ」
堀川「そ、それって完全に個人情報保護法違反じゃないですか!?」
カツオ「ああそうだよ。でも僕らの周りには個人情報の概念なんてないんだ。あれは近年出来た法案だからね」
堀川「法律においても新しい物を受け入れないんですか?」
カツオ「ああ。でも怖いのはその事だけじゃない」
カツオ「前にマスオさんが仕事帰りに釣り堀に寄ったら、次の日の朝にはもう町内中に広まっていた事がある」
堀川「え…」
カツオ「父さんがダンス教室に通った時も、近所の人の家に家具が一つ増えた時も、こんな些細な話題ですら半日もしたら町内の皆が知っている」
堀川「それって…どういう事です?」
カツオ「三郎さんだけじゃなくて、他にも多くの人が関わっているんだろうけど、恐らく常に周りの人の事を知っていないと我慢できないんだと思う。だから多分僕らの事も…」
堀川「今日の所は…解散した方がいい見たいですね…」
カツオ「ああ…今度からは会う方法を変えよう。周りに感ずかれないで情報を交換する方法を探そう」
堀川「携帯やパソコンがあれば簡単に出来るんですけどね…」
カツオ「そうだね…」
堀川「お兄さん。気をつけてくださいね」
カツオ「堀川くんの方こそ。色々わかってきたとはいえ、結局実態は何もつかめていないんだから」
磯野家茶の間
波平「カツオ、今日はお前の好きな番組を見ていいぞ」
カツオ「え?」
フネ「アニメでも何でも好きな物を見ると良いわ」
カツオ「え、うん。じゃあ…」
カツオ(何か変だ…もしかして僕と堀川くんが最近色々な事を調べていると感づかれた?)
カツオ(いや、でも、皆の意向が読めない…だがここで皆の意向に乗れば何かつかめるかもしれない…)
サザエ「いけない。台所を掃除しなきゃ」
フネ「私もお風呂の用意をしないと」
波平「マスオくん。たまには一緒に碁でも打たないか?」
マスオ「いいですねえー」
タラオ「皆どこに行くんですか?」
ワカメ「タラちゃんは私と遊びましょ」
カツオ(なんだ?皆部屋から出て僕一人になってしまったぞ?)
数十分後
カツオ(誰も…戻ってこない…)
カツオ(一体皆何を思ってこんな事を…僕が異変に感づいた事に関係あるのは確かな筈なのに…)
カツオ(…………)
カツオ(とりあえず、テレビでも見るか…)
カチッ
テレビ『お魚くわえたドラ猫追っかけて~♪』
カツオ「アニメか…そういえばいつも父さん達がチャンネル権を独占してたせいで見た事がなかったなあ…」
テレビ『みんなが笑ってる~♪お日さまも笑ってる~♪ルルルルル~♪』
カツオ「あれ…?この光景ってどこかで…」
テレビ『カツオ!またあなたの仕業ね!』
カツオ「こ、これって…」
カツオ「な、何故…」
テレビ『僕じゃないよ!』
カツオ「なんで僕が映っているんだ…?」
テレビ『バッカモーン!』
テレビ『なんだよこれ…何なんだよこれ…僕は?僕は一体何なんだ!?』
テレビ『この世界は…この世界は一体…僕たちは一体何なんだ!?ああ!ああああああああああああああ!!!』
数時間後
波平「やれやれ。己の役割も忘れ手間をかけさせおって」
フネ「でもいいんですか?こんな荒治療して」
マスオ「病む負えませんよ。こうしないと世界の均衡が保たれませんから」
波平「左様。多少のリスクには目を瞑るしかない」
サザエ「でもよかったの?再調整で元の人格が完全に形成されるとは限らないわ」
ワカメ「大丈夫よ。父さんもタラちゃんも当初の人格から大分変異してるけど誰も気にしてないわ」
タラオ「気にしてないですぅ」
ワカメ「それにしてもお兄ちゃんも馬鹿ね。私達の存在意義も忘れて、外の世界の事に興味を持つなんて」
マスオ「まったくだよ。僕たちが今住んでいるこの世界こそ、全ての人が望む理想郷だと言うのに」
フネ「私達は長く生き続けたからねぇ。たまにこういう事が起きるんだよ」
マスオ「でももう不具合は修正されたから安心ですね」
波平「左様。我々がこの国が一番元気で美しかった姿のままし続ける事。それこそが我々の存在理由であり我々が必要とされる理由なのだ」
サザエ「全ては始祖ハセガワの意思の元に」
一同『我らの存在は始祖ハセガワと共にあり』
ある日の空き地
中島「おーい磯野、野球しようぜ」
カツオ「いいよ」
中島「じゃあいつもの空き地に集合なー」
数分後
カキーン ガチャーン
カツオ「あ、やっちゃった!」
中島「あそこのオジサン、怖いって評判なんだぞ!」
橋本「俺知らない!ボール飛ばしたのは磯野なんだから磯野が謝れよ」
カツオ「そんなー!」
オジサン「このボールを飛ばしたのは君かい?」
カツオ「あ…はい…」
オジサン「ははは!子供は元気が一番だ!子供は寒空の中でも元気に遊ぶものだ!これからも元気に遊ぶんだぞ!」
カツオ「は、はい!ありがとうございます!」
完
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