雪女「春ですねー」 (26)
雪女「春ですね」
男「せやな」
雪女「私、そろそろ山に帰りたいです」
男「帰ればいいだろ」
雪女「私の山、家、なくなっちゃいました」
男「・・・」
雪女「なんか、ゴミ処理場になるみたいです」
男「そうか」
雪女「どうしましょう」
男「どうしような」
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雪女「このままだと、私とけて死んじゃうんですよねえ」
男「ここで死ぬなよ」
雪女「死ぬならここです」
男「勘弁してくれ」
雪女「じゃあ死なせいようにしてくださいよ」
男「どうしろってんだよ」
雪女「知らないですよ」
男「なんだよそれ」
雪女「これまでは山の神様が春から秋まで私の体に術をかけてくれてたから生きられてたんです」
男「また山の神様とやらに頼んでみろよ」
雪女「山が崩されたので、死んじゃいました」
男「・・・そうか」
雪女「どうしよっかなー」
男「割と楽観的だな」
雪女「優しい人が近くにいるので」
男「いくら優しくても同居はゆるせぬ」
雪女「今まで通りでいいんですよー」
男「いやだ、春までって約束だったしお前がいると寒い」
雪女「貴方の部屋にいる間に山が崩れたんですから責任とってくださいよー」
男「俺のせいじゃないし」
雪女「薄情者ー私が死んでもいいのかー」
男「それは・・・」
雪女「フフン」
男「勝ち誇った顔すんな」
雪女「まあここで暮らしたところで死にますけどね」
男「意味ないじゃねーか」
雪女「最期くらい好きな人のそばにいたいじゃないですか」
男「俺はお前は好きじゃない」
雪女「私はあなたが好きですよ?」
男「好意はありがたいが重すぎる」
雪女「重いですかー?
男「もうすぐ死ぬ女の愛を軽く受け取ってはいけないと思う」
雪女「貴方も結構重いですね・・・」
男「そうか?」
雪女「そうですよ」
男「どのへんが」
雪女「このあいだ
「付き合うなら結婚まで考えないと失礼だ」
って言ってましたもん、こいつめんどくさいなーって思いました、あと今も」
男「わざわざ真似して言う必要あった?・・・ってかそんなめんどくさい?」
雪女「この平成の世の中で交際=結婚で考える人って少ないと思いますよ」
男「そうかねえ」
雪女「そうですよ」
雪女「でも楽しかったですよーこれまで」
男「たった5か月だけどな」
雪女「私にとっては五か月も、です」
男「妖怪って寿命長いんじゃないの?」
雪女「いくら長くても生まれて五年で消えるんじゃねえ」
男「そう考えると大きいな」
雪女「でしょう?しかも人里に降りて過ごすなんて妖怪としては考えられませんもん」
男「ダメなのか?」
雪女「ダメではないですけど『人里に降りると不幸になる』って」
男「見事にその通りだな」
雪女「ええまったく」
雪女「神様もしかしてわかってて私を送り出したのかなー」
男「そうかもな」
雪女「だっていつも行くなーって言ってるのになんとなく聞いたら『いいぞ』ですもん」
男「そこで察するべきだったな」
雪女「まあ山崩れて死ぬのは変わりないので、最期に楽しい思いができてよかったです」
男「・・・そうか」
雪女「ええ、ありがとうございます本当に」
男「楽しい冬だったよ」
雪女「私もでした」
男「雪女拾うとは思ってもなかったよ」
雪女「ふへへ」
男「腹減ってるって言って倒れてたから助けたのによ、家に着くなり元気になりやがって」
雪女「雪の妖怪が空腹で倒れるとでも?」
男「雪女なんて信じられるか!って言ったらみかんを箱ごと凍らせるし」
雪女「あれくらい余裕ですよ」
男「それからもストーブでぶっ倒れるわ、真冬にプールに連れ出されるわ」
雪女「でも楽しかったでしょう?」
男「確かにそうだがお前が言っちゃうとダメだ」
雪女「ふへへ」
雪女「まさか少し人里に遊びに来ただけでこうなるとはなー」
男「びっくりだな」
雪女「びっくりですよー」
男「・・・死にたくないよな」
雪女「当たり前じゃないですか」
男「あとどれくらい生きられるんだ?」
雪女「そうですねー」
ユビサシー
雪女「あの雪だるまが解けきるまでですかね」
男「・・・小さいな」
雪女「とっても」
男「もっと大きく作ればよかったな」
雪女「男さんがめんどくさがるからー」
男「悪かったよ」
雪女「良いですよ~雪ウサギも作れましたしね」
男「葉っぱ探すの辛かったんだからな」
雪女「存じてます、アリガトウゴザイマシタ」
男「棒読みすぎ」
雪女「ふへへ」
雪女「さっきから死ぬ死ぬ言ってますけど」
男「おう」
雪女「厳密にいうと死ぬわけじゃないですよ」
男「へ?」
雪女「消えるんですよ、それこそ雪みたいに」
男「随分とロマンティックだな」
雪女「本当にきれいでしたよ」
男「誰かのを見たことがあるのか?」
雪女「だいぶ前に、一度だけ」
男「お前のほかにも雪女がいたのな」
雪女「ええ」
雪女「すごく綺麗な瞬間ってはっきり覚えてるものですねー、自分で感心するくらいちゃんと思い出せます」
男「そんなにか」
雪女「そりゃあもう、誇っていいですよ、それを最善席で見られるんですから」
男「掃除が大変そうだから、遠慮しておく」
雪女「冗談を言うのも珍しいですねー、大丈夫ですよ跡形も残らないので」
男「そうか」
雪女「淡白ですねえ、もっと悲しんでくださいよ」
男「・・・」
男「実感がな」
雪女「ほう」
男「わかねえんだ、お前が死ぬって」
雪女「消えるんですってー」
男「そりゃあずっといるわけではないってわかってたんだがな」
雪女「あれ、なんかモード切り替わってます?話聞いてます?」
男「いいから聞いてくれよ、まあとにかく今だお前が死n・・・消えるって言われても信じきれないんだよ」
雪女「んー、じゃあ証拠見ます?」
男「証拠?」
雪女「じゃーん」パサッ
男「おま・・・えっ」
雪女「雪女って変わってましてねー心臓から溶けていくんですよ」
「ある程度ならまあ何とかなるんですけどね、ここまで溶けちゃって 胸元に霜が降り始めたらもう間に合いません」
「安心してくださいよ、溶けるきるその時まで私は元気ですから」
「だからそんなに泣かないでくださいよ」
男「お前、だって、おまえ」
雪女「もしかしてこらえてました?」
男「わか、れるのに、涙、みせたくなか、ったから」
雪女「あーあーぐしゃぐしゃ、それに考え方も古臭いし」
男「うる、せー」
雪女「泣いていいんです、雪女の恋物語が幸せに終わるわけないんですから、せっかくなんでうんと悲しく終わらせましょうよ」
男「おわらせ、たく、ない」
雪女「なんか性格変わってません?、正直で凄く好きですけどね、元から好きですが」
男「俺っ、もっ、すk」
雪女「あーあーきこえなーい、・・・それにしても今日は暖かいですねえ」
「ほら」
雪だるまが溶けちゃった
男「雪おん、な・・・・・」
雪女が消えたあと、落ち着いた俺は、最後まで残っていた雪ウサギを見に行った
そこにあったはずの雪ウサギは消えていて、代わりに雪の上にくっきりと文字が書かれていた
『知ってました?雪女って人に化けることもできるんですよ』
「男さーん」
聞き覚えのある声が、後ろから聞こえた
おわり
くぅ^~疲れましたwwこれにて簡潔です!
実は半年くらい前に書いたものの書き直しですがなんとか完結させることができました!
これも一重に読者様のおかげですww
もう疲れた
本当の本当に終わり
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