勇者「天才的な才能を持つ俺は、勇者の能力を強制発現させた」 (61)

淫魔の城

クイーンサキュバス「ふふふ、私に会いに来てくれたの?」

勇者「もちろんだ」

クイーンサキュバス「うれしいわね。でもやっぱり貴方からは殺気がもれてる」

クイーンサキュバス「仕方ないから死なないように痛みつけてあげる♪」

勇者「悪いがお断りする。淫乱女は苦手だし」

勇者が剣に手をかけた瞬間、クイーンサキュバスは多彩な魔法を展開させる。

炎、雷、水、氷、魅了、麻痺、毒・・・。それら多くの魔法が勇者めがけて一斉に襲い掛かる。


数分後

勇者「サキュバスの女王もこの程度・・・か。がっかりだ」

勇者の左手にはクイーンサキュバスの生首が握られていた。

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魔王城

側近「魔王様・・・」

魔王「分かっているとも。くくく、今回の勇者はちと面白そうだな。この我を楽しませてくれるかも知れぬ」

側近(女王サキュバスほどの者がやられたというのに、何という余裕・・・!)

人間国

勇者が人間国にたどり着いた。これまでの歴史ならば勇者が帰還すると近くの住民は総出で勇者を出迎えに行くが、現代勇者にはそのような事は無い

むしろ白い目で見られていると言っても良い。

何故ならば、先代の勇者が引退を決意したところで、とある重鎮に勇者のシステムが移ろうとした時、現代勇者が意志の力により強引に横取りをしたからだ。

勇者「・・・」

彼の向かう先は宿。勇者の拠点である。

勇者(金を取って、食事処に行くだけだ)

部屋で武具の整備をし、その後行きつけの店へ向かう。


酒場

清潔に保たれた店内。しかし、それに似合わぬ喧騒。

強豪たちがクエスト欲しさに屯する場所でもあるからか。礼を弁えない者が多い。

勇者「いつものを」

マスター「了解」

そのやり取りだけで伝わる。このマスターとは旧知の仲であり、口数が少ないのは特に仲が悪いというわけではない。

カウボーイ「おぉい!知ってるか?ここの近くで魔狼が出たんだってよ!」

短刀使い「それは本当かよ。やばいじゃないか」

大砲使い「いや、手柄を上げるチャンスだろう。魔狼なんて簡単に倒せるようなもんじゃないし」

カウボーイ「俺らで組んで倒しに行こうぜ!余裕だろ!」

短刀使い「でもなぁ・・・」

大砲使い「いんや、いいかもしれない。この俺の秘密兵器の大口径大砲をぶつけるには丁度良い相手だ」

などと言うやり取りが聞こえる。

マスター「ボードに張ってあります。よろしければどうぞ」

勇者「いや、遠慮する」

あの三人の話を聞いていたのがばれていたのだろう。だが、魔狼を相手にする気分ではないので断っておいた。

しばらくして・・・。

勇者は食事を終えると、町をうろついていた。特にする事も無い。

淫魔の城で一通り金目のものは奪い去っておいたので、金には困っていない。


勇者「んー、暇すぎるのも少し・・・。でもまた魔物と戦う気分でもないし・・・」

ふらふらと歩いていると、目の前に見知らぬ少女が立ちはだかった。

勇者「ちょっとごめんねー。どいてくれるかなー?」

少女「・・・」

反応無し。

勇者「じゃあ、俺がどこう。どうぞどうぞ」

少女「・・・」サッ

勇者が道を譲ろうと右へ避けると、少女はそれに合わせるように横へずれた。

勇者(何この人・・・)

メンドくさいけど肩押して行くか。

勇者「失礼するよ。君も退く気がなさそうだしねー」

少女の肩に手を置いたとき・・・。

ドクンッ!と心臓が跳ねたかのような感触を全身に受ける。

勇者(!!?? これは・・・)

勇者「お前、何者だ?」

少女「私ですか?」

初めて勇者の問いに答えた少女。

少女は不気味な笑みを浮かべ・・・。

少女「詳しくはこちらの方でお願いしますぅ~~!」

勇者「いや・・・あの・・・」

背中を押されて暗い影の差す場所へと連れて行かれる。

勇者(それよりもこの娘)

先ほど触れたときの感触だ。あれは、自身の持つ魔力よりも強大な魔力に出会ったときに起こる現象。

身体が相手の格の違いを教え逃げるべきとの判断を促がしてくれる、自己防衛反応。ある程度の実力を持つ者に備わるスキルである。

つまり、この少女は勇者よりも圧倒的に強いことを示す。

暗闇まで連れて行かれた勇者。

何をされるんだ、と不審に思う。

少女は――

少女「お願いしやす、大将!あっしに弟子入りさせてくださいぃー!」

勇者「え!?」

――土下座をし始めた。

勇者「えぇと・・・、あの?」

少女「あなた様を勇者様と見込んで、アッシは頼んでるですよぉー!」

初めての弟子入りだ。どうしよう。

ではなくて・・・。

勇者「君は一体何者?」

少女→魔王の娘「あ、ご無礼をスミマセン!あっしは魔王の娘です!」

勇者「・・・へ?」

勇者(落ち着け落ち着け。まずは整理しよう)

少女は自分を魔王の娘だと名乗る。それは、先程の勇者のスキルによって証明してくれた。

魔王は人間の敵であり、人間を傷つけて来た者。

じゃあやっぱり。

勇者「ここで斬るしかないじゃないか!氏ねぇーー!」

魔王の娘「いやぁーー!アッシの話を聞くんですよー、お願いしますぅー!」

魔王の娘が勇者の刀から身を庇うように手を出す。

・・・よくよく考えれば、殺す気ならあの町で出会った瞬間に殺すだろう。

弟子入りには何か重要な意味でも・・・。

勇者「分かった。話を聞こう・・・」

魔王の娘「それじゃあ、お勧めのお店があるのでついてきて下さい」

魔王の娘「うーん、ここの団子はやっぱり美味しいですねぇー。師匠ー、何でそんなに不機嫌なんですかー?」

勇者「お勧めって・・・。この店、闇族の店じゃないかー!何で空間移動魔法使ってるんだ、ばればれじゃないか!」
  「っていうか、まだ俺はお前を弟子と認めたわけじゃない!」

ひとまず騒ぐ。それから。

勇者「それで、何故仇敵である俺に弟子入りをしたいと?」

魔王の娘「あっしの親父、あっしに冷たいんですよー。だから、親父を悲しませてやろうと師匠の手下になってやろうと」

勇者「それだけ!? それだけの理由!?」

魔王の娘「親父が気になるのって、多感な時期によくあるじゃないですかぁー。人間、魔物に限らずそうだって聞きましたよー?」

勇者「・・・」

クシャクシャと、頭を掻き毟る。これ程までに判断に困らせられるとは。

なんというか、馬鹿そうで本当の事言っているように思える。というか、これって魔王との交渉に有利なんじゃ・・・。

勇者「ようし、分かった。お前を俺の弟子にしてやる」

魔王の娘「本当ですかー?あっしは師匠のためなら何でもできちゃいますよー?」

勇者「いや、別に・・・」

魔王の娘「それじゃあ、行きましょうかー」

勇者「か・・・帰るのは徒歩か。ここからだとかなり長いよ」

魔王の娘「いやですねー。お師匠様なら簡単でしょうー?」

勇者「そりゃ勇者は基礎体力が常人離れしすぎてるし、魔力併用したらとんでもない速力出るけど・・・」

魔王の娘「それじゃあ行きましょー♪」

魔狼の森

銃撃や剣の音が森の中をこだましている。時折、獣の吼える音も混じる。

カウボーイ「ひゃっほぉーい!撃て撃てぇえい!」バンバンッ!

大砲使い「おらあああああああ!俺の自慢の弾を喰らえぇいやーー!」ドガアアン!ドガァアアアアアアアアン!

短剣使い(駄目だ・・・。カウボーイは能天気すぎて状況読めてない。それに大砲使いはただ大砲かますだけの馬鹿だし)

短剣使いは自身のポーチの中を覗いた。

短剣使い(どうすんだよ。魔狼に会う前に魔物との戦いでかなり回復薬を消費してるんだが!?)

大量の魔物との連戦。それによって三人は消耗戦を強いられていた。

カウボーイ「これで最後・・・だぜぇえ!」ダァアン!

最後の魔物、巨大蜂を打ち落とす。

大砲使い「大したことねぇ雑魚ばっかだな。魔狼の森にいるからどんな魔物かと思いきや」

短剣使い(何言ってんだよ!こっちは回復薬使いまくってたじゃないか、よく言うな!)

すると、ズン、と空気を震わせるほどの振動が起きた。

短剣使い「!?」

大砲使い「おぉお!?」

カウボーイ「ついにきやがったぜ・・・」

――魔狼。圧倒的な重厚感を辺りに振りまき、それは現れた。

魔狼「グルルル」

自分の森を荒らされた事に起こっているのか、かなり機嫌が悪い。

カウボーイ「さあ、やろうぜ。俺たちの戦いをな」

カウボーイが銃を構えた刹那――

魔狼が走り出す。

その速度は、三人には全く反応の出来ないほど・・・。

カウボーイ「ぐはぁっ!」

気付くと、血まみれでカウボーイが倒れていた。

魔狼「フシュルウウウウウ!」

魔狼が周囲を威圧するように、荒く息を吐く。

大砲使い「やろぉ・・・、なめやがって」

大砲使いが大砲の弾を撃ちまくる。使う弾は中に無数の爆弾が仕込まれていて、発射すると同時に爆弾が飛び散る使用となっていた。

攻撃範囲はかなり大きくなる・・・が。

大砲使い「ぐぇあ!」

魔狼からは血のいってきすら出ていない。どころか、毛並みの一つも焦げていない。

短剣使い「・・・」

頭に自然と青筋が立つ。許せない。

短剣使い「仕方ない」

速力の宝玉。それを叩き割る。

短剣使いの周りに風が沸きあがり、短剣使いを包む。

と、短剣使いの速力をこれまでよりも圧倒的に上昇させる。

短剣使い「はぁああああああ!」

魔狼「グルゥウウウウ」

双方がぶつかり合う。

今日はここまでー

速力の宝玉は、文字通り所持する者の速力を上昇させる効果を持つ。

それを叩き割り、直に効力を浴びれば、通常よりもかなり大きな効果を得られる。

これで、何とか短剣使いは魔狼の速さに対抗することが出来た。しかし、自分の力量に合わない速さを手に入れても身体は追いつかない。

斬りあうが、見る見るうちに短剣使いの身体に傷が出来ていく。

短剣使い(やはり、これでは駄目か)

魔狼「・・・」

短剣使いの身体に疲労が見えた瞬間、魔狼は、大きな爪で思い切り引っ掻いた。

短剣使い「うぁあ!」

バタリ、と倒れ動けなくなる。

短剣使い「回復薬を・・・」

短剣使いは飛びそうになる意識を懸命に保ち、ポーチの中から回復薬を取り出そうとした。

しかし――

グシャリ、と回復薬をポーチごと踏み潰された。

短剣使い「・・・ぁ」

魔狼は人語を話す事はない。しかし、それは知性を話せないと言う事柄を証明するわけではない。

人間と同様、それ以上の知性を備えていた。人間が回復薬という代物に頼ることを、道具に頼ることを。

その予防策として、短剣使いのポーチを踏み潰したのだった。

短剣使い「終・・・わ・・・」

痛みと失血により短剣使いは意識を失う。このままでは、確実に死ぬだろう。

別の場所

勇者「めんどくさいなぁ。こういう所ってやたらと小うるさい蜂が多いんだよ」

魔王の娘「別にいいじゃないですかー。無視すれば寄ってやきませんよぉー」

勇者「いや、魔王の娘に手を出す魔物があるかよ・・・」

やって来たのは魔狼の森だった。

と、奥から斬撃音がした。

勇者「何だ、人が居るのかな?」

魔王の娘「ここは魔狼の森ですからねー。荒らすような悪い子ちゃんは魔狼に真っ赤になるまでお仕置きされちゃうんですよ?」

勇者「やばっ!行くぞ!」

魔王の娘「痛い痛いですぅー!髪の毛引っ張らないで下さいぃ~」

・・・全く痛そうには見えないが。

やがて、たどり着いたその場所には、三人と一匹の対峙する間だった。

酒場で見かけた、カウボーイ、短剣使い、大砲使いだった。

全員死にかけだ。

魔王の娘「全員やられちゃってますねぇー」

と、緊迫した状況に似合わない明るい声を出す。

魔狼が二人に気付いた。

ゆっくりと、威圧感を漂わせ、二人に向かって歩み・・・。

勇者「え?」

・・・頭を下げた。

正確には、魔王の娘に向かってだが。

さすがは魔狼と言うべきか。仇敵と歩く君主に対し、瞬時に状況を把握し柔軟に対応した。

魔王の娘「えらいえらい」

魔王の娘は魔狼の頭を撫でる。

魔王の娘「師匠も撫でたらどうですかー?この子の毛並みフワフワですよー?」

勇者「そ、それじゃあ・・・」

恐る恐る手を伸ばすと、凄まじい眼光で睨まれた。

勇者「・・・やっぱりやめる」

魔王の娘「さてと・・・」

何かを始めるつもりなのか、ふと後ろへ下がる。

勇者「な、何をするつもりだ?」

魔王の娘「何って、それはもちろん―」

魔狼「?」

手を前にかざすと、大質量の魔力弾で魔狼を掻き消したのだ。

勇者「!!??」

驚きと疑問が頭の中を駆け巡る。

魔王の娘「―師匠の敵の排除に決まってるじゃないですかー」

勇者「あいつは君の手下だったんだろ?」

魔王の娘「言ったじゃないですかー。あっしは師匠の弟子なんです。だから、師匠の敵の魔狼ちゃんはあっしの敵です」

勇者「・・・」

もさもさと喋る彼女からは想像も着かない冷酷さ。それに勇者は戦慄を覚えた。

とりあえず、魔狼にやられた三人が生きているか調べる。

ぎりぎりで生きているようだ。後少ししたら死んでいたかもしれない。

回復魔法を三人にかけた。

カウボーイ「ああ、勇者か。悪いな世話かけちまった」

短剣使い「助かる。絶対に俺らは死んでいたはずだったから」

大砲使い「絶対俺の大口径大砲まともに喰らってたらあいつ死んでたぜ?」

回復するとそれぞれ好きに喋りだした。

勇者「それじゃあ、皆で町を目指そう」

今日はここまでー。次の更新は木曜日か金曜日あたりになると思いますー。

ここまで見てくださった方、ありがとうございます!

>>31
酉で情報漏らしてしまったじゃないか・・・。

再開しまーす

大砲使い「お?何か知らない嬢ちゃんがいるな。勇者の知り合いか?」

カウボーイ「そういやそうだな。娘さん引き連れるなんてやるじゃねえの」

勇者「まあ・・・な」

勇者は魔王の娘が強力な魔力を放った事を見られていないか心配したが、大丈夫だったようだ。

瀕死だったので、意識を失っていたからと考えられる。

町を目指して歩き始めた。

大砲使い「もしかして、アレか!勇者の彼女か!勇者、お前も隅に置けねえなぁー」

魔王の娘「違いますよー。あっしは師匠の弟子なんですー」

大砲使い「へぇ!そうなのかよ。何で勇者には弟子が居るのに、俺にはそういう奴らがいないんだぁあ!」

カウボーイ「お前は弱いからさ」

大砲使い「うるせぇ!俺はこの中で一番強ぇんだよ!」


騒ぎ立てる大砲使いを尻目に勇者は先頭に立ち進む。

短剣使いが勇者に話しかけてくる。

短剣使い「なあ、あの娘って結構強いのか?最近受け入れた弟子かと思ったんだが」

勇者「別に。気になることがあるのか?」

短剣使い「俺は、速さの宝玉は壊してあったんだ。それでも、微弱な力は残ってあるんだ」

短剣使い「懐に入れていたんだが、あの娘、俺の懐をチラッと見たんだよ」

勇者「なるほど。いや、俺はまだ何も教えていないからな」

宝玉を割った後、力は所有者に与えられる。しかし、微弱な力は残る。

残った力は極々少ないので、一般的な魔法使いでも見抜くことは出来ない。

あの娘がただならぬ者ではないのか?と言いたいのだろう。

短剣使い「どういう経緯で知り合ったかは分からないが、気をつけたほうがいいんじゃないか?」

勇者「ああ、忠告ありがとう」

大砲使い「俺の大砲を見てみろよ。これで多くの魔物をぶっ潰してきたんだぜ。水竜を退治したのは、何を隠そうこの俺・・・」

カウボーイ「嘘付けよ。お前が水竜倒せるなら、俺なら邪神だって倒せるってもんよ」

大砲使い「おらぁあ!俺に何言ってんだよ!」

魔王の娘「喧嘩はやめましょうよー。拳銃も大砲も大して変わりませんよー」

大砲使い「ぐおっ!結構グサッと来るぜ」

カウボーイ「お前、怒らないのな」


勇者「お前は大変なチームで頑張ってるのか・・・」

短剣使い「かなりやばいよな・・・」

しばらく歩いた後、王国が見えた。

勇者「やっと着いた」

大砲使い「行きと帰りじゃ時間の流れが違うな。結構余裕で着いたじゃないか」

短剣使い「時間は行きよりもかかっているが」

カウボーイ「魔狼倒したのは勇者だけど、俺らが報酬貰うぜ」

勇者「別にいいけど」

町まで着いた後、途中、三人とは酒場で別れた。

勇者は宿へ向かう。

・・・が、大事な事を忘れていた。

勇者「魔王の娘、お前をどこに置くかなんだけど」

魔王の娘「師匠と一緒がいいですねー。師匠を狙う不届き者から師匠を守るんですー」

勇者「やめてくれ」

魔王の娘「いいじゃないですかー。別に減るものじゃないですよー」

勇者「何を言ってるんだよ。そういうのじゃなくてだな・・・」

魔王の娘「お金、一文なしなんですよー、おほん」

勇者「・・・」

早々に諦める勇者であった。

今日はここまでですー。

それでは次の日に!

再開しまーす。

書き溜めがありませんからなぁ・・・。

宿屋に着いた勇者と魔王の娘。

広間に入ると、そこそこ居た客が一斉に勇者達を見る。

この宿屋は食堂としても利用されていたりするので、滞在客以外にも人は集まる。

主人「たまげたなぁ。勇者に恋人が出来ちまったとは。これは号外もんだぞ」

主人が、部屋を目指して横切った勇者と魔王の娘に話しかけた。

勇者「いや、冷やかしは頼むから。この子は俺の弟子」

主人「ははは、悪い悪い。まあ勇者には弟子の一人ぐらいいるもんだろうしなぁ」

主人「万年パーティー無しで頑張るかと思っていたんだがな」

勇者「まあ、それじゃ部屋に行くから」

しかし、ふと気付いた。魔王の娘が勇者と一緒に居たいと言い張って居る件への対処法である。

勇者(もう一つ部屋借りればいいだけなんじゃないか?)

つまり、魔王の娘に金がなかろうと、勇者が金を出せば済むだろうという話。

勇者「俺が負担するから、君は別の部屋で・・・」

魔王の娘「駄目ですよー?弟子はどんな時も師匠のそばに居て、師匠を見守る必要があるんですー」

魔王の娘「師匠にお金を出させるなんて弟子としては最も避けたいですねー」

勇者「ああ、はい・・・」

駄目だ、口論に勝てる気がしない。と、勇者はまたも早く諦めたのであった。

勇者の部屋は二階の奥にある。丁度、目立たない様にひっそりと隠れる形で。

魔王の娘「これから、末永くよろしくお願いしますー」

勇者「ああ」

人間と魔物じゃ寿命に絶対的な差があるから、末永くというのは無理なのは置いておいて。

二人は部屋に入る。

魔王の娘「散らかっていないんですねー。人間の男性の部屋は散らかっていると聞きましたよー?」

勇者「どちらかというと物が少ないだけで、色々あったら整理する気にはならないと思うんだけど」

魔王の娘「あれれー?ベッドの下には何もない。人間の男性の部屋はベッドの下に資料があると聞きましたよー?」

勇者「どちらかというとそういうのに興味はなくて・・・って、やめなさいよ!」

確かに、部屋が散らかっていないのは確かだ。片づけが面倒くさく、色んな物を押入れに捻じ込んでいる事は言えない。

もう夕方。

さて、ご飯でも食べに行くかな。そう思い立ち勇者は魔王の娘を呼んだ。

魔王の娘には、あまり使っていない部屋が一つあったのでそこを使ってもらう事にした。

実際は部屋など使わず勇者の斜め後ろで座っていたのだが。

魔王の娘「それは大丈夫ですー。料理なら私でも作れますよー」

勇者「おお、そうなのか。でも材料が・・・」

魔王の娘「そこも大丈夫ですー。師匠の押入れを覗いたら当たらしめの箱入りの食材がかなりあったじゃないですかー」

勇者「え!?いつの間に覗いたの!?」

全く気がつかなかった。てっきりずっと後ろにいたと思っていたのに。

魔王の娘は気配を消すのもかなり得意となる。

勇者「まあいいや。それじゃあ、ちょっと頼んでみようかな」

魔王の娘「任せてくださいー!」

魔王の娘「出来やしたよー。渾身の出来ですぅー!」

勇者「本当か!!どんな感じ・・・」

魔王の娘「火加減に手間取ってしまいましたが、よく出来てますよねー」

黒焦げの危険物質が数点。炎魔法でやらかしたのか。

勇者「・・・。よし!食事処へレッツゴーだ!」

魔王の娘「襟を引っ張らないで下さい~。伸びますよー」

酒場ではなく、宿屋の食堂で食事をした。

相変わらず、周りがうるさかったが特段気にしないようにして終えた。


それから、部屋に戻った。

魔王の娘「人間の食事も美味しいですよねー」

勇者「そうですね・・・」

勇者は、しばらく本を読んで過ごすことにした。相変わらず魔王の娘は斜め後ろに待機している。

勇者「夜にもなってきたし寝るよ。君も早く自分の部屋で寝ろよ」

自分のベッドへ行き横になる。硬くも軟らかくもない普通のベッド。寝慣れているベッドで、最早違和感などない。

違和感があるとすれば、枕元から勇者を見下ろしている魔王の娘くらいである。

勇者「何やってるんだよ!早く自分の部屋へ行けよ!そうやって寝る時にじっと見られてたら気が散るんだよ!」

魔王の娘「何を言ってるんですかー。敵に寝込みを襲われて身体を壊したらどうするんですかー?」

勇者「お前の見つめ攻撃で夜通し炙られて、俺の身体はお前に壊されるわ!早く行ってくれよ」

魔王の娘「それでは寝込みを襲われて終わりになるじゃないですかー」

勇者「お前が原因で俺は終わりだよ!もういいや、ここに布団持って来ていいから早く寝てくれ。視線があると気になって眠れないよ」

魔王の娘「了解でやんすー」

勇者(これから俺はどうなるんだろう)

先の未来に不安を抱きつつ、勇者はまどろみの中へ落ちていった。

王国城

王様と賢者の他に数名の人間が見受けられる。

先代の勇者「それで、何か御用でしょうか?陛下」

呼びかけたのは、集められた者の中の一人。先代の勇者。

齢は七十近くあろうが、かなり若作りで三十代に見えなくもない。

王様「うむ。貴殿を呼んだのは少々事情があっての事だ」

先代の勇者「ああ、これは失礼。現代勇者は不届きな行いをしていたので私が代わりを務めているのでしたね」

王様「それもあるが、な」

王様「続きは、賢者が説明してくれる」

賢者「はい。最近、魔狼の姿が発見されたのは知っていますね?」

先代の勇者「ええ勿論ですとも。しかし、どこぞのやり手に殺されたのだとか」

賢者「既に知っているとは・・・」

賢者「三人の腕利き、カウボーイ、短剣使い、大砲使いによって討伐されています」

先代の勇者「彼等に魔狼を狩れるほどの力量は会ったようには見えませんでしたがねぇ」

その時、もう一人が口を開いた。

狂戦士「それで?お前さんは王が嘘つくってぇ言ってるのか?」

先代の勇者「いえ、そんな事はありませんよ。とりあえず続きは」

賢者「魔物は知性や理性のあるものと、ただの獣みたいに非常に野生的なものの両方があります」

賢者「魔狼は中間層に位置します」

賢者「優秀な支配者の居る生態系というのは、生き物が住みやすいように素晴らしい環境が仕上がっています」

その様な場所は、魔物にとっては非常に人気がある。初代の支配者が狩られると、次の支配者の後釜を狙おうとして、魔物たちがそこへ集おうとする。

集まるのは、弱い魔物だったり、より強力な魔物だったりする。

賢者「つまりですね、魔狼の森から少し離れた所に蛇竜が現れたんですよ」

一同が水を打ったように静かに、凍りついた。

賢者「蛇を従える凶悪な竜です」

狂戦士「とんでもねぇ奴が来たんだなぁ」

傀儡士「何と・・・」

数人の悲嘆が溢れると、それを喝破する声も聞こえた。

戦乙女「何を弱き付く。貴様等は腕を見込まれてここへ召喚された戦人であろう?」

傀儡士「ふむ、・・・まあ、いずれどうなろうと一興か・・・」

今日はこれまでー。

では次回!

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