二宮飛鳥「キミとボクの特別な夜」 (9)
飛鳥「──……ああ、誰かと思ったらキミだったか」
飛鳥「……『やっぱりここに居た』、か。フフ……やはりキミは、ボクの事をよく理解っているみたいだ」
飛鳥「…………」
飛鳥「コーヒーの差し入れ? ……やれやれ、別に気を遣わなくてもいいのに」
飛鳥「まあ、だからといってキミの好意を無碍にする気はないよ。……さすがに少し肌寒いと思っていたからね」
飛鳥「ん。砂糖とミルクも用意してるって? 随分と用意がいいね」
飛鳥「それじゃあ、砂糖は貰うとしよう。……ああ、ミルクはいいよ。折角のコーヒーの風味が薄れてしまう」
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飛鳥「…………」
飛鳥「……うん、美味い。やっぱり、××××の淹れるコーヒーはボクの舌によく馴染むみたいだ」
飛鳥「…………なんだい、その顔は」
飛鳥「砂糖をもっと入れなくていいのか……って? ……参ったね。どうやらボクはキミの前では嘘を吐くことができないらしい」
飛鳥「……でも、いいよ。一度張ってしまった虚勢だ。最後まで貫き通さなければ、みっともないにも程があるだろう?」
飛鳥「…………」
飛鳥「それにしても、今年は本当に色々なことがあったね」
飛鳥「キミと出会い、偶像世界という未知の場所に飛び込んで……」
飛鳥「蘭子や乃々、小梅、比奈さん……それにファンのみんな……」
飛鳥「……ボクのセカイを尊重してくれる、得難い理解者と廻り逢うことができた」
飛鳥「……ねぇ、××××」
飛鳥「ボクはずっと、不特定多数の誰かとは違う、特別な存在になりたい──……そして、ボクという存在を世界に刻みつけたい──……」
飛鳥「そんな夢見がちなことを考えながら……だけど、そのために一体何をすればいいのか理解らないまま、日々を無為に過ごしていたんだ」
飛鳥「ボクはまだまだ無知で無力な子どもだったから……出来ることといったら、エクステを付けたり、ファッションに拘ってみたり、ちょっと小難しい言い回しを使ったりすることくらいで……」
飛鳥「だけど、そんなささやかな抵抗しかできなかったボクに、キミはありのままのボクを表現するための舞台(ステージ)と、世界と戦うための歌や踊り(ブキ)を与えてくれた……」
飛鳥「ボクという存在は、キミと出会って初めて、この世界において意味を持ち始めた……大袈裟だとキミは笑うかもしれないけど、ボクは心からそう思っているんだ」
飛鳥「…………」
飛鳥「……ボクという存在を見つけてくれてありがとう、××××」
飛鳥「そして……これからも、ボクの共犯者でい続けて欲しいな」
飛鳥「…………」
飛鳥「……こんな素直(ストレート)に自分の気持ちを吐露するなんてガラじゃないって、我ながら思うけれど……まあ、今宵は特別な夜なんだ。こんな時くらいはこういうのも悪くはない……だろう?」
飛鳥「…………」
飛鳥「……『言われるまでもない』、か。フフ……キミならきっとそう答えてくれるって信じていたよ」
飛鳥「だってボク達は、《似たもの同士》なんだから、ね」
飛鳥「…………」
飛鳥「……なんて言っている内に、どうやら年が明けたようだね」
飛鳥「あけましておめでとう。まだまだ未熟なボクだけれど、今年もよろしくしてやってくれ」
飛鳥「……さて、と。それじゃあボクは寮に戻るとするよ」
飛鳥「門限破りの件で寮監に絞られるだろうけど……自分で蒔いた種なんだ、ちゃんと享受はするさ」
飛鳥「…………何? ……『俺も一緒に怒られてやる』?」
飛鳥「……全く、キミと言う奴は、過保護というか、お人好しというか……」
飛鳥「……まぁ、そんなキミだからこそ、多くのアイドル達が慕い、想いを寄せるのだろうね」
飛鳥「…………さて、と。それじゃあ行こうか、ボクの大切な共犯者よ」
飛鳥「乗り越えるべき障害はとても強大だけれど……キミが隣に居てくれるなら、ボクは迷わずに挑むことができるのさ」
………
…………
この後二人で寮監に滅茶苦茶怒られた。
そして夜が明けた後、徹夜明け特有の妙なテンションで初詣に乗り込み、屋台で買い食いをしまくった。
──……その結果、飛鳥は見事に正月太りをしてしまい……プロデューサーともども
マスタートレーナーの地獄の特訓を受けることになるのだが……それはまた別のお話。
おわり
早く飛鳥の声が聞けますように
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