高垣楓「『ラスト』クリスマス」 (61)

・モバマスのSS

・書き溜めありなのでさくっと終わる予定

・関連作
 高垣楓「プロデューサーの家が……」(高垣楓「プロデューサーの家が……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436105363/))
 P「隣の楓さん」(P「隣の楓さん」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437053307/))
高垣楓「隣のプロデューサー」(高垣楓「隣のプロデューサー」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439121923/))
 これらの続編です

・基本的に
 Pが諸事情で楓さんの隣の部屋に住む事になったよ! でも部屋が中の扉で繋がってるよ!
 これだけ把握してれば読めますが、前作も読んでもらえたらもらえたら嬉しいです。

それでは初めて行きます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1451046825

/12月某日夜・行き付けの喫茶店

P「それじゃあ今日も」

楓「ええ。一日お疲れ様でした」


「「乾杯!」」チン


P「……」ゴクゴク

楓(Pさん、今日はいい飲みっぷり)

P「……ふぅっ」

楓「一息つきました?」

P「ええ。いやホント、久々にお酒が美味しいですよ」ハハ

楓「ここの所、お互いに忙しかったですものね」

P「こういう仕事ですから、こればっかりは。まあでもそれも落ち着いて、今日は早めに上がれましたし」

P「久々にここで晩御飯ってのも、いいものですね」

楓「ええ、そうですね。でも一緒にお食事なんて、部屋での晩酌を除けば……2ヶ月ぶりくらい、かしら」

P「あー、それくらいになるかなぁ。この時期はどうしてもイベント絡みで仕事が多いですからね」

楓「確かに忙しかったですけれど……私達芸能関係の人間には、嬉しい悲鳴、ですね」

P「ですね。いやでも、しかし……」

楓「?」


~ Jingle bells, jingle bells,Jingle all the way♪


P「……なんかもう、すっかりクリスマスですねぇ」

楓「ふふ、もう12月も半ばですから」

P「なんですけどね。なんだかイマイチ実感がわかないというか」

楓「あ、それは分かります。ものによっては、もう大分前からクリスマス関係の収録もありましたから」

P「ええ、その前はハロウィンでしたし。なんだかいまいち季節感が掴みづらくて」

P「今日、ちひろさんと小学生組がツリーを出してるのを見てハッとしたってな具合です」

楓「そういえばあのツリー、とても大きかったですね。凛ちゃんや奈緒ちゃんも目を輝かせてましたし」フフ

P「あれ、なんでも桃華が実家に頼んで取り寄せたとか……まったく」

楓「あら。さすがは桃華ちゃんですね。私もちょっと欲しくなっちゃいました」

P「いやいや、綺麗だけど流石にあの部屋にあのツリーは大きすぎるでしょう……」


楓「ふふっ、冗談です。でもツリーはあるので、出そうかなと思ってます」

P「お、そうなんですか。なんだか意外ですね」

楓「私だって女の子なんですから。クリスマスは大好きですよ?」

P「女の『子』……? いやすいませんなんでもないです」

楓「もうっ……それで、あの」

P「はい?」

楓「……」

P「楓さん?」

楓「……Pさんはクリスマスの予定、どうなってますか?」

P「……あー。えー、そうですね。まあ一応仕事はありますけど……そんなに遅くはならない予定ですけど


楓(……よかった)ホッ

楓「私は確か、朝の生放送出演の後にラジオ収録で、夜は空いてますよね?」

P「えーっと……ええ、そうなってますね」

楓「それで、あの。よければ一緒にどう、でしょうか」

P「僕の方は全然OKですけど……その、いいんですか?」

楓「ええ。私から誘ってるんですから、勿論」

P「それじゃ、喜んで。あー、でも場所とかどうしますか? 今から予約とか取れるかなぁ」

楓「あ、その。できれば私達の部屋でやりたいな、と。人が多いときに、外に行くのもどうかと思いますし」

P「え、それじゃいつもとあまり変わらないですけど……」

楓「ええ。それで……いえ、それがいいんです」


P「それじゃ、そうしましょうか」

楓「はい、そうしましょう」ニコッ

P「……っ」ドキ

P「いやなんか……いつも隣で生活してますけど、なんだか改めてこういう話をするのは気恥ずかしいもんですね」

楓「ふふ、そうですね」

P「それじゃあクリスマス、楽しみにしてますね」

P「そうだ。折角ですし」

楓「?」

P「もしよかったらですけど……プレゼント交換、しませんか? なんというか、クリスマスですし」

楓「あ、いいですね。やりましょうか」

P「まあ僕のセンスなんで、楓さんの満足いくものが選べるかは、わかりませんけれど……」

楓「ふふ、そんな卑下なさらないで下さい。この間のネックレスだって、とっても嬉しかったんですから」

P「そう、ですかね?」

楓「ええ、だからお互い、楽しんでえらびましょう?」

P「了解です」

楓「あ、プレゼント交換以外に1つだけお願いがあるんですけど。いいですか?」

P「勿論。なんですか?」

楓「できればクリスマスの日、モンブランが食べたいんです」

P「え。いやまぁ、それは全然かまわないですけど。なんでモンブラン?」

楓「栗で済ます、クリスマス。なーんて」

P「……はぁ。いや、楓さんらしくて、いいと思いますけどね」

楓「ふふっ♪」


/数日後昼・CG事務所

P「……」カタカタカタ

P(……楓さんのクリスマスプレゼント、どうしようかなぁ。アクセサリーは、前にあげちゃったし)

加蓮「ね、PさんPさん」

P「ん、どうした」

凛「はい奈緒、どうぞ」グイッ

奈緒「え、ちょ、なんであたしなんだよ!」

加蓮「いいからいいから。ほら」

P「TPが揃いも揃ってどうした。それに奏に海も」



奏「ふふ、ちょっとね」

海「まあ、奈緒のいう事聞いてあげてよっ」

奈緒「くそっ、全員で面白がりやがって……!」

P「で、どうした? 何かあるんだろ」

奈緒「いや、さ。もうすぐクリスマスだろ?」

P「ああ、うん」

奈緒「そ、それでさ。あたし達アイドルだし……まあその、仕事以外はヒマじゃん」

P「まぁ、そうだな」

奈緒「それでここに居る全員と、あと何人かでクリスマスパーティすることにしたんだけど……」

P「おお。いいんじゃないか? ハメを外し過ぎない程度に楽しむのは全然OKだぞー」

奈緒「いや、そうじゃなくて! もしよかったら、Pさんも一緒にどうかってことだよ!」

P「……あー」

凛「まあ、そういうこと。どうかな、Pさん」

奏「アイドル達に囲まれたクリスマスっていうのも、なかなか役得だと思うのだけれど?」

P「あー、いや。誘いは嬉しいんだが、仕事もあるし、ちょっと予定もあるんでな。悪い」

加蓮「え、クリスマスに予定って、もしかして」

P「彼女ではないからな?」

加蓮「ふーん、それじゃあ仕事関係とか?」

P「まぁ、そんなところだ」

凛「そっか残念だけど、まあ仕方ないね。計画したの昨日だし、誘うのが遅かったかな」

P「悪い。まあ、クリスマスプレゼントは用意しておくから。パーティ前に事務所に来てくれたら渡すよ」

加蓮「ホント!? ありがとう!」

P「ま、期待はしないで待っててくれ」

奏「ふふ、ばっちり期待させてもらうわ」

P「やめろって。ほら、これからみんな仕事だろ。行って来い」

TP奏「「「はーい」」」スタスタ


海「……」

P「お、どうした海」

海「いや、なんでもないけど……クリスマス予定があるって、もしかして楓さんとデートとか?」

P「……いやいや、なんでまた」

海「楓さんもレナさん達の誘い断ってたし、もしかしてって思ってさっ。最近仲いいみたいだし」

P「そうか、まあ楓さんも何か予定あるんじゃないのか?」

海「ん、そうだねっ。変な事聞いてゴメン!」

P「いいよ。それじゃ、仕事頑張ってな」

海「うんっ!」


P(……危ない危ない。楓さん、海に料理聞いたりしてるって言ってたし、何か感づいてるのかもしれないな。気を付けないと)

海(うどんの事といい、もしかしたらって思ったんだけど……ウチの考えすぎかな)




/同日夜・街中

楓(あと数日でクリスマス……なんだか、心なしか街も騒がしくなってきてる気がする)

楓(Pさんと過ごすクリスマス。少し恥ずかしかったけれど、思い切って誘ってみて、本当によかった)

楓(そのせいで、レナさん達には、悪い事しちゃったかな。今度、何か埋め合わせをかんがえておかないと)

楓(……それにしても、Pさんへのクリスマスプレゼント、どうしようかしら)

楓(中々良いものがみつからないけれど)

楓「……あっ、これ」

楓(前にクローゼットを見た時、Pさんは私服が少なかった記憶がある)

楓(サイズも合いそうだし、これなら)

楓「あの、すいません――」


―――

――



/クリスマス当日朝・CG事務所

P「え、インフルエンザ!?」

ちひろ『はい、本当にすいません、年の瀬の忙しい時期に……』ゴホゴホ

P「いやいや、気にしないでください。僕も風邪ひいたりしちゃいましたし。とにかく今はゆっくり休んで下さい」

ちひろ『わかりました。それじゃ失礼します。できるだけ早く出られるようにしますので』

P「ええ、お大事に」ピッ

P「……まいったなぁ。よりによって、今日とは」


楓「あの、ちひろさん、インフルエンザになられたんですか?」

P「あ、楓さん。ええ、そうみたいですね。さすがに出てこられないみたいです」

楓「ちひろさん、病状が悪化しないといいですけれど……」

P「まあ、そこばかりは神のみぞ知る、ですね。安静にしてもらうしかないです。んー、しかし今日は少し大変かもな、こりゃ」

楓「あの、よければお手伝いしますけれど」

P「お気持ちは嬉しいですけど、なんか悪いですし。幸い、今日は外回りが少ないので時間さけますし」

P「なんで、今日ちょっと帰るの遅くなっちゃうかもしれないですけど……夜、先に帰って待っててもらっていいですか?」

楓「それは……ええ、勿論」

P「すいません。さて、それじゃ早速仕事に取り掛かるかな」

楓「頑張ってください、応援してますから」ニコッ

P「それだけで元気満タン、ですよ」ハハ


楓(……)

楓(Pさんがかえって来るまで少し時間できちゃったし……何か料理でも作ってみようかな)

楓(私の腕じゃ、できるものはたかが知れてるかもしれないけれど)

楓「さて、何作ろうかな……」




/夕方・CG事務所

P「……」カタカタ

P「……」カタカタ

P(……やべぇ、これ本当に終わるのか? とんでもない仕事量だ……)

ガチャ

加蓮「やっほー、Pさん。メリークリスマス」

P「メリークリスマス、加蓮、凛、奈緒……と、それにつかさもか」クルッ

凛「ん、メリークリスマス」

奈緒「お、おう」

つかさ「よっ」

P「荷物とかみるに……これからパーティか?」

凛「うん。Pさんは、まだ仕事?」

P「だな、けっこうな量があってまいるよ」ハハ

加蓮「予定あるんじゃなかったっけ」

P「まあそうだけど……これでも社会人だしな、仕事優先だよ。な、つかさ」

つかさ「ま、そうだな。仕事もちゃんと出来ない大人とか、信用ゼロだろ。少なくともアタシは嫌だね」

P「と、いうわけだ。相手にゃ悪いとは思うけど、こればっかりはな」

加蓮「なるほどねー」


つかさ「まぁその根性は見上げたもんだけど。1人でキツいならアタシが手伝ってやってもいいぜ?」

P「気持ちはありがたいけど、今はパーティ楽しんでこいって。羽根を伸ばす時は伸ばすのも、社会人の務めだろ」

つかさ「……それもそうか。んじゃ悪いが、今日は楽しませてもらうことにすっかね」

P「おう、そうしろそうしろ」

加蓮「ところで、だけど……Pさん?」

P「あ、プレゼントだよな。ちょっと待てよ、っと」ゴソゴソ

P「ほい、これな。少し大きいけど、中に全員分入ってるから。パーティで開けてくれ」

凛「ありがと。中身は分からないけど……大事にするね」

奈緒「あたしも。ありがとな、Pさん!」



P「おう。海や奏は後から合流か?」

つかさ「そ。これからアタシらで迎えに行くとこってワケ」

P「そうか。それじゃ、楽しんできてな。あ、ハメ外しすぎて問題になるようなことだけはするなよー!」

全員「「「はーい!」」」

P「……さて、と。仕事に戻るとするか」

P(楓さんの為にも早く終わらせないと、な)

P「……」カタカタ

P(……やっぱり、意地張らないでつかさに手伝ってもらえばよかったかなぁ)

/少し後・CG事務所

P「……」カタカタ

P「……」カタ

P「」

P(お、おわらない……定時までにはなんとかなるかと思ったけど、これは流石に無理がある……)

P(あー……楓さん待たせちゃうなぁ、これ。あとで連絡入れとかないと)

??「あれ、プロデューサー、まだ残ってたんスか?」

P「……ん?」クルッ

比奈「どうもっス」

P「比奈。いつ帰ってきた?」

比奈「昼過ぎくらい、っスかねぇ」

P「え、姿全然見なかったんだけど」

比奈「帰ってきて、すぐに仮眠室いったんで。今の今までぐっすりっス」

P「……そんな疲れたのか、仕事」

比奈「あ、いや、そうではなく……その、冬のお祭りの準備が」

P「ああそっち……まぁそういうとこも含めてアイドル『荒木比奈』だから止めやしないけど、無理はするなよ」

比奈「っス。気を付けるっス。んでプロデューサー、今日は予定あるんじゃなかったんスか」


P「しごとがおわりません」

比奈「クリスマスに事務所で……お疲れ様っス」

P「それは比奈もだろ」

比奈「アタシはほら、アイドルっスから。言い訳立つんで」

P「まぁそうだけど……たく、このままじゃクリスマスじゃなくて苦理済ますだよ。サタンが来そう」

比奈「んな仏道じゃないんスから」

P「お、よく知ってるな。こっちでも世代ってわけじゃないのに」


比奈「ちょっと前にアニメ化もされたんで。それに原作は屈指の燃え漫画としても有名っスからね」

P「なるほどな……と、お喋りはここまでにして、仕事に戻るわ」

比奈「ういっス。頑張って下さい」

P「とはいえ、まあ気分は乗らないけどな……」

比奈「ま、それは仕方ないっスね」

P「だな」

/同刻・楓の部屋

楓(一応、一通りの準備は終わったけれど……)

楓(この時間になっても連絡もないってことは、Pさん、やっぱりお仕事大変なのかしら)

楓(無理言ってでも、手伝って来ればよかったかしら)

楓(何か励ましたいけれど、仕事の邪魔になってもいけないわよね)

楓(でも、何か……)

楓(……)

楓「よしっ」ガサゴソ


/同刻・CG事務所

ヴーッ ヴーッ

P「お、LINE」ピッ

楓『待ってますね』

P「……お、おおう」

P(LINEには、そんな言葉と共に胸元と足に大きく切れ込みの入ったサンタ衣装を着た楓さんの写真が……やばい、破壊力がスゴイ)

P(ぶっちゃけその、なんというか……エロい)

比奈「? 何かいいことあったんスか?」

P「……今、ニヤけてる?」

比奈「めっちゃニヤけてるっス」

P「見逃してください……」


比奈「まぁ、いいっスけど。でもその様子だと、『苦理済ます』にならずに済みそうっスね」

P「そうならないように、仕事頑張るわ」

比奈「ええ、ファイトっス。それじゃ、私は帰るんで」

P「おう、気を付けてな」

比奈「っス。プロデューサーも」

P「ああ。よしっ、やるぞー!」

比奈(一気に元気になったなぁプロデューサー……でも、一瞬見えた名前が楓さんだった気がしたけど)

比奈(気のせい、っスかね)


/夜・Pの部屋

P(あれからなんとか猛スピードで仕事を終わらせて、然程遅くならないうちに上がることができた)

P(頼まれてたケーキも買って、予約しておいたチキンも引き取って、プレゼントも持って)

P(今、いつもの扉の前に居る)

トン トン トン

楓『はい、どうぞ』

P「どうも、遅くなってすいません」ガチャ

楓「お帰りなさい。ふふ、そんなに待ってませんから、お気になさらず。いろいろ準備もしてましたし」

P「……おおう。サンタ衣装、着たまんまなんですね」

楓「これ……どうですか? スポンサーさんから、衣装として着たものを記念にと頂いたんですけれど」ヒラリ

P「いやなんていうか……その、すらっとした楓さんに良く似合ってると思いますよ。うん、最高です」グッ

楓「あら、本当ですか? 結構大胆ですし、本当は少し恥ずかしかったんですけれど……Pさが喜んでくれるなら、よかったです」

P「そ、そうですか」

楓「ええ」ニコッ

P(……やばいなー、抑えが効かなくなりそうなくらい魅力的だ)

楓「それじゃ、私の部屋でいいですよね? もう、準備してありますので」

P「あ、はい。それじゃ、失礼します、っと」


/すぐ後・楓の部屋

楓「シャンパン、準備大丈夫ですか?」

P「ええ。それじゃ」スッ

楓「はい」スッ

P「楓さん」

楓「Pさん」


「「メリークリスマス!」」チンッ


楓「……ふぅ。普段はシャンパンなんてあんまり飲まないですけれど、これは美味しいですね」

P「ええ、かなり飲みやすくて。甘すぎなくてキリっとしてるのもいいですね」


楓「Pさん、辛党ですものね」

P「楓さんも、でしょう?」

楓「ええ……ふふっ」

P「どうしました?」

楓「いえ……いつの間にか、お互いの好みをちゃんと把握してるなって、思ったので」

P「あー、もうこの生活も始まって、結構長いですしね。何度も一緒に呑んだりしてますから、まあその辺は阿吽の呼吸というか」

楓「あ、うん」

P「……楓さん……」

楓「ふふっ。冗談です、そんなげんなりしないでください」

P「いやね、まあそういう所も楓さんなんですけどね……」


楓「さ、ご飯いただきましょう。ね?」

P「……ええ。って、あれ、このグラタン、どうしたんですか? グラタン、用意するなんて言ってましたっけ?」

楓「ふふ、実は作ってみました」

P「え、楓さんがこれを?」

楓「はい。Pさんが遅くなるってことでしたので、ホワイトソースから作ってみました」

P「おお、そりゃ凄い。最近の料理練習の成果、ですかね?」

楓「成果になってるといいんですけれど……」

P「腕が向上してるのはよく知ってますから。お弁当とか作ってもらってましたしね。それじゃ早速」パクッ

P「……」モグモグ

楓「どう、ですか?」

P「うまいっ!」


楓「……よかった」ホッ

P「いやいや、ホワイトソースって初心者には結構ハードル高いって聞きますけど、かなり美味しいですよ!」

楓「そんなに喜んでもらえるなんて……作ってよかったです」

P「いやだって、ほんと美味しいですから。ほら、楓さんも食べて」

楓「ええ、それじゃあ」パクッ

楓「……」モグモグ

楓「!」パァァ

P「ね?」

楓「はい。自画自賛になっちゃいますけど……これは、本当に美味しくできたと思います」


P「いやー、楓さん。本当にありがとうございます!」

楓「喜んでもらえて何よりです。さ、他のものも頂きましょうか」

P「ですね。あ、これ買ってきたチキンです」

楓「あら、美味しそう。こっちに買ってきて下さったケーキも出しておきました」

P「ああ、モンブラン、買ってきておきましたから」

楓「それじゃあ一緒に、栗で済ませましょう」

P「ええ」ハハ

楓「ふふっ」


/数時間後・楓の部屋

P(食べ始めてから、少し時間が経って。用意した食べものやお酒は、あらかた呑み終わった)

P(大分呑んだけれど、まあこれくらいなら許容範囲だろう)

P(そして、楓さんはといえば)

楓「Pさーん♪」

P「なんですか?」

楓「なんでもないでーす♪ んふふっ」


P(楓さん、久々にめっちゃ酔ってるなぁ……王様ゲームとか言い出さないといいんだけど)

P「あ、そういえば」

楓「どうしたんですかー?」

P「あ、いえ。プレゼント用意してきたのに、渡してないなと思って」

楓「そういえば……わたしも、用意してきたんですよ! Pさん!!」

P「お、おおう。そうですか。それじゃ、プレゼント交換といきますか?」

楓「はい、そうしましょう♪」

P「それじゃ、はい。どうぞ、楓さん」

楓「ありがとうございます。Pさんには、はい、こちら」

P「お、けっこう重さありますね。これは……うーん、なんだろ」

楓「どうぞ、開けてください」

P「それじゃ、失礼して……っと」

バサッ

P「お、これ……コートですか?」

P(入っていたのは、黒のコート。華美な装飾はついていない、けれど各所にデザインの効いている、ビジネスでも使えそうな一品だ)

P(しかもこのブランド……うーん、まずったかなぁ)

楓「はい。Pさんの部屋で前にクローゼットを見た時、服がとてもすくなかったので」

P「あー」

楓「コートも、それが1つだけでしょう? 大分くたびれてるようですし、良いかな、と思って」

P「いや、これほんと嬉しいです。ありがとうございます」

楓「着てみてもらってもいいですか?」

P「あ、はい。これで……っと。どうですかね?」クルリ

楓「思った通り。Pさんにぴったりです。締まって見えますよ」グッ





P「さすがは元モデルさんの見立て、ですね。いやほんと、ありがとうございます」

楓「いいえ。それじゃ、私のほうも……いいですか?」

P「ええ、勿論。でも……ちょっとまずったかなぁと思わなくもないですが」

楓「……? とりあえず、開けますね」

P「どうぞ」

楓「開封~……って、あら、これ」

バサッ

楓「白いチェスターコート……あの、しかもこのブランドって」

P「ええ……コートでかぶった上に、ブランドまでかぶっちゃいました」


楓「まぁ。すごい偶然ですね」

P「ええ、本当に。楓さんみたいなすらっとした人には、チェスターコートが似合うかなと思ったんですけど……」

P「うーん、まさか楓さんもここをチョイスしてくるとは。ミスったなぁ」

楓「いいえ、そんな、ミスだなんて……このブランド、好きですし、本当に嬉しいです。あの、着てみますね」

P「どうぞ」

楓「……よいしょ、っと……どう、でしょうか?」

P「うん、似合ってると思います。サイズ、大丈夫ですよね?」

楓「ええ、ぴったりです。ふふ……困っちゃいますね」




P「え?」

楓「いえ……ネックレスと同じで、これも宝物だなって。そう思ったらちょっとだけ着るのが勿体なくて」

P「はは、それは僕も同じですけど。まぁコートは使ってなんぼですし。お互いに使うことにしましょう」

楓「……そうですね。あの、それじゃあもう1つ、いいですか?」

P「はい?」

楓「実は、もう1つプレゼントを用意してあるんですけど……いいですか?」

P「え、ホントですか。是非お願いします」

楓「ふふ、わかりました。といっても、歌なんですけどね。お隣の迷惑になっちゃいますから、少し抑え目でいきます」

P「楓さんの歌……楽しみです」

楓「それじゃ、行きますね」スゥ


―― Last Christmas I gave you my heart♪

P「……あっ」

P(この曲は……)

―― But the very next day you gave it away♪

P(Wham!の、Last Christmas)

P(往年の名曲で、僕達にとっては少しだけ特別な意味を持つ曲)

―― This year to save me from tears♪

P(楓さんの声は、とても澄んでいて、そして綺麗で)

―― I'll give it to someone special♪

P(まるで冬の精か何かのように、見えた)

―――

――


楓「……ふぅ。終わり、です」

P「……いや、なんか圧倒されちゃいました。最高のクリスマスプレゼントですよ」

楓「ありがとうございます。本当は失恋ソングですから、ちょっと縁起が悪いかなと思ったんですけれど」

楓「でも、やっぱり私達にはこの曲かなと思ったので」

P「ですね。失恋ソングですけど……まあそこは名曲ですし、いいってことで」

楓「ふふ、そうですね。それにふと思ったんですけど、『Last』って、去年のとか、そういう意味だけじゃありませんから」

P「……と、いうと?」

楓「正確にはthe lastですけど……受験の時、やりませんでした?」

P「んー……ああ!『最新の』でしたっけ」

楓「ええ。当たり、です」フフッ

楓「この曲の歌詞の意味は失恋で、もう終わってしまったもののことですけれど……」

楓「私達にとっては、『去年』ではなく、常に『最新の』クリスマスであればって、そう思いますから」

P「……楓さん」

楓「……ふふっ。今は、ここまでにしておきましょうか」

P「……そう、ですね。ええ。そうしましょう」

楓「……」

P「……」



/しばらく後・楓の部屋

P「さ、そろそろ解散にしましょうか。明日もありますし」

楓「そうですね……ちょっとだけ、名残惜しいですけど」

P「……ええ」

楓「さて、と。片付けは……」

P「あ、臭いの強いものだけやって、後は明日にしましょう。僕も手伝いますから」

楓「すいません、お願いします。あ、今日の分は、私がやっておきますから」

P「……そうですか?」

楓「ええ。今日、パーティの為にお仕事頑張って片付けて下さったんでしょう?」ニコッ

P(さっきまで酔ってた人とは思えないよなぁ……)



P「うーん……それじゃあお言葉に甘えてもいいですか?」

楓「ええ、どうぞ。それじゃ、おやすみなさい」

P「はい、おやすみなさい。また明日」

楓「ええ、また明日」フリフリ

バタン


/数日後昼・CG事務所

楓「ただいま戻りました」

凛「楓さん、お帰り」

楓「凛ちゃん、ただ今。皆はお仕事?」

凛「うん。私は加蓮たちを待ってるとこ」

楓「そう。あ、向い、座ってもいいかしら」

凛「勿論。どうぞ」

楓「ありがとう」

凛「……楓さん。そのコート、新しいやつ?」


楓「ええ、そう。この間……そうね、友達にプレゼントしてもらって」

凛「プレゼント……その人、楓さんのことよく分かってるみたいだね」

楓「そうかしら?」

凛「うん。すごく楓さんに似合ってるから」

楓「ふふ、ありがとう。私も気に入ってるから嬉しいわ」

凛「……でも、なんだか偶然だね」

楓「あら、どうして?」

凛「Pさんも、今日新しいコートを着てるの見たから」

楓「……あら、そうなの」

凛「うん。けっこうかっこよかったかな……なんだか、私も新しいコート欲しくなってきちゃった」

楓「ふふ、いいんじゃないかしら。凛ちゃんなら、トレンチコートなんかも似合いそうね」

凛「そうかな? ねぇ楓さん。今度、よかったら買い物付き合ってくれない? コート選びとか」

楓「あら。凛ちゃんから誘ってもらえるなんて。ええ、喜んで」

<リーン イルー?

凛「あ、加蓮きたみたい。それじゃ、私いくね。今度連絡するから」

楓「ええ。それじゃあ、また今度」

凛「うん、じゃあね」バイバイ

楓(……Pさんも、今日から新しいコート着てる。それが分かっただけで、少し舞い上がってる私が居た)

楓(私とPさんの秘密のプレゼント交換。そんな些細な『秘密』が、今はそれだけで嬉しい)

楓(そして同時に、思う)

楓(このプレゼント交換は……クリスマスは。Pさんと隣で過ごし始めて『最初』のクリスマス)

楓(だからこそ、これで『最後』にはしたくない)

楓(これが『最新』でありたいと、脱いだコートを胸に抱いて、そう思った)


ガチャ



P「ただいま戻りましたー!」

楓「あ、Pさん。お帰りなさい」

P「楓さん、ただ今戻りました……なんかいいことありました?」

楓「ふふ、実は今凛ちゃんと――」

これにて終了です。

クリスマスは書いておきたいなぁとか思いつつ時間がとれず、結局今日一日で書き上げました。疲れた。
そんなもんでいつもより粗が目立つかもしれません。生暖かく見ていただけたらうれしいです。
久々の投稿でしたが、続き的な何かはまた気が向いたら書こうと思います。
バレンタインネタは書いておきたいかなぁ……などと思いますが。

それでは。

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