高垣楓「プロデューサーの家が……」 (66)

・モバマスのSS

・書き溜めありなので、さくっとおわる予定

・法律とか詳しくないので矛盾がある場合はご容赦を

SS投稿はほぼ初心者ですが、よろしくお願いします

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/夜・とある警察署

P「どうも、Pです。とある事務所でアイドルのプロデューサーやってます」

P「これでも、けっこう人気の子達をプロデュースしてるんですよ」

P「ミステリアスアイズとか、トライアドプリムスとか。聞いたことないですか?」

P「え? それがこんな深夜になんで警察署に居るかって?」

P「いやいやいや、幼い担当アイドルに手を出したとかそういう話じゃないですからね!?」

P「いやまぁ、なんと言いますか」







P「夜中にアパート帰ったら、部屋が燃えてたんですよ……」




/早朝・CG事務所

P(……もう朝か)

P(あー、結局眠れなかった。とりあえず、アイドルが来る前にシャワーだけ借りよう)

P(隣の部屋が放火されてうちの部屋も全焼って。もうどうすりゃいいんだこれ。逆にハイテンションだよもう)

P(早いとこ部屋みつけないと。ああでもその前に保険の申請とかいろいろ……うう、ちひろさんにいろいろお願いしないと)ヌギッ

楓「おはようございます」ガチャ

P「あっ」(←上半身裸)

楓「……え、えーっと?」

P「お、おはようございます楓さん。また随分早いですね?」タラー

楓「ええ、早く起きたので、事務所前のカフェでモーニング食べようと思ったら、もうここに電気がついてたので……」チラリ

P「そ、そうなんですか」ダラダラ

楓「きゃ、きゃー、プロデューサーのエッチー」ボウヨミ

P「……なんていうか、すいません」

/シャワー後

P「あー、気持ちよかった」サッパリ

楓「コーヒー淹れておきました。あと、カフェでサンドイッチも買ってきたので」コト

P「あ、わざわざすいません。て、コーヒーはわざわざ入れてくれたんですか」

楓「そうですよ。このコーヒー一杯に、私の気持ちが一杯詰まってますから。よーく味わって下さいね?」フフッ

P「ははは、了解です。しかしさっきはすいませんでした。お見苦しいものを。朝早いとはいえ、配慮が足りませんでした」

楓「私も偶々早く来ただけですし、気にしないでください。むしろいいもの見られたというか、なんというか……」ゴニョ

P「? どうしました?」

楓「い、いえ。何でもありません。それにしてもプロデューサー、どうしてこんな時間に事務所でシャワーを?」

楓「昨日、事務所に泊まられたんですか? それにしては妙にお疲れのような……」

P「ああいや、そういうわけじゃないんですけどね。ある意味、もっとしょうもない理由といいますか」

楓「? あの、何かあったんですか?」

P「アパートがですね、燃えまして」

楓「え?」

P「隣の部屋が燃えて、ウチの部屋も全焼です」アハハ

楓「……マジ?」

P「マジマジ」


楓「……放火ですか。それで警察の方に」

P「ええ。僕も、関係者兼参考人ってことで一応署の方に行ったんですよ。家も無いですし」

P「んでいろいろ質問に答えたりとかしてたんですが、終わった時間が終電ギリギリくらいで」

P「ウチの近くはホテルとかないんで、とりあえず事務所に来たってわけです」

楓「えっと、その。なんというか……大丈夫ですか、プロデューサー?」

P「……まぁ、かなり辛いものはありますよ。途方に暮れてるってのが正直なとこです」

楓「すいせん、無神経な質問でした」ペコリ

P「ああいえ、そんなつもりじゃ! 確かにショックですけど、皆の為に凹んでるとこは見せられませんから。私、頑張ります!ってね

」ハハハ

楓「そう、ですか?」

P「ええ。アイドルの皆が、楓さんがいるから、頑張ろうって思えますよ」


楓「……っ」

楓「あの、何かお力になれることがあったら、何でも言って下さいね。私の……いえ、私達の大切なプロデューサーですから」ニコッ

P「ああ……楓さんがそう言ってくれるだけで元気が出てくるなぁ。もう、それだけで十分なくらいです」

P「あ! でもそうだ、1つだけお願いしてもいいですか?」

楓「わかってます。他の皆には内緒、ですよね? 心配かけちゃいますから」

P「すいません、お願いします。会社には報告しますけど、この件は楓さんと僕の秘密、ってことで」

楓「……ふふっ♪」

楓「でもプロデューサー、実際これからどうなさるんですか? さすがに心配です」

P「そうですね…… まぁいい機会ですし、事務所近くに新しい部屋を探すつもりです。それまでは、しばらくはホテル暮らしですね」

楓「そういえば、今まではけっこう距離ありましたものね」

P「ええ。昔はかなり金銭的にも厳しかったので、少しでも安いところをと思って」

P「幸い、今でこそ楓さん達のお陰で少し余裕が出てきましたけど。まあ使う暇がないってのがホントですが」ハハ

楓「こうして私達がやってこられたのは、プロデューサーのお陰ですから。正当な評価だと思いますよ」

楓「……とはいえこのままホテル暮らしが続くのは、あんまりよろしくないですよね?」

P「あー、それは確かにその通りですね。早く新しい部屋探さないといけないし、空き時間に不動産屋に行くかなぁ」

楓(新しい部屋……事務所近く……)

楓「……」ウーン

P「どうかしました?」

楓「えっと、あの、プロデューサー」

P「はい?」

楓「その。事務所から近い方が、いいんですよね?」

P「そうですね、その方がいろいろ都合いいかなと。まあ流石に高すぎるとこは厳しいですが」

楓「……えっと」

P「?」

楓(勇気を出すところ、よね。きっと)

楓「それなら、一カ所だけ心当たりがあるんですけれど」

P「え、ホントですか!? どこです?」

楓「それはまだヒ・ミ・ツ、です。私が案内しますから、今日はお時間作れますか?」

P「おっと、いきなりですね。えーっと、今日は夜なら多分。トライアドの営業がありますけど、それは午前中なので。楓さんは確か……」

楓「私はミステリアスアイズで雑誌の撮影が午前と午後に1件ずつあるので、夜に事務所待ち合わせでいいですか?」

P「それは構いませんけど、書類仕事があるから少し待たせるかもしれませんよ?」

楓「それくらいもーまんたーい、です」

<ワズラワシイタイヨウネ!

P「あはは、それ懐かしいですね。それじゃ、他の子も来たし夜にってことで」

楓「はい。お仕事頑張ってくださいね」ニコ

P「ええ、楓さんも」オーランコオハヨウ!

/昼・仕事中

楓(……ふぅ)

楓(今日の夜……か。勢いで誘ってしまったけれど、ちょっと踏み込みすぎたかしら)

楓(でも、困ってるプロデューサーは見ていられないし、それに、)

奏「あら? 楓さん、顔が赤いわよ。もしかして体調が優れないんじゃ……」

楓「えっ、あっ、ううん。大丈夫よ。ありがとう奏ちゃん」

楓(どうしよう……私、撮影の時よりも、ずっとドキドキしてる)

/夜・事務所

楓「プロデューサー、コーヒーどうぞ」

P「ああ、ありがとうございます。すいませんけど、もう少し待っててくださいね」カタカタ

楓「はい。いくらでも待っちゃいます」

ちひろ「あら、2人で呑みにでも行くんですか? また私も連れてって下さいよー」

奏「これから飲みに行くの? それなら私も連れて行ってもらおうかしら」

P「いえ、今日はそういうわけじゃないですよ。てか奏は未成年だろ。成人したら連れてってやるから我慢しなさい」

奏「つれないわねぇ」

P「つれるつれないの問題じゃないでしょうが」

奏「もう、冗談よ。さすがにそこはちゃんと弁えてるわ。ちょっと楓さんが羨ましかっただけ」

楓「ふふっ、ごめんなさいね奏ちゃん、ちひろさん。今日はプロデューサー、お借りしますね?」

ちひろ「どーぞどーぞ。いくらでも借りてっちゃってください。あ、でもマスコミ対策はしっかりお願いしますよ?」

楓「はい、勿論です」チラッ

P「よし、これでラスト! やるぞー」

楓「……ふふっ」

奏「ほーんと、羨ましいわ」

ちひろ「ですねぇ」ハァ

P「よしっと、これで仕事終わり! 楓さん、お待たせしました」

楓「それじゃあ、準備ができたら行きましょうか」

P「行先はまだヒミツ、ですか」

楓「はい。あ、でも途中でスーパーに寄ってもいいですか?」

P「ええ、別に構いませんけど」

楓「ありがとうございます。撮影中に、洗剤切れてたのを思い出しちゃって」

P「撮影中にそんなこと考えてたんですか……」

楓「あ、でもスタッフさんには褒めてもらいましたよ。アンニュイで良い感じだ、って」

P「そこが楓さんの凄いところなんだよなぁ」

楓「それ、褒めてます?」

P「んー、ヒ・ミ・ツで」

楓「もうっ」

/夜・スーパー

楓「すいません、付き合っていただいちゃって」

P「いえ、気にしないでください。何なら、カゴ持ちますけど」

楓「いいんですか?」

P「これから案内して下さるんですし、これくらいは」

楓「ありがとうございます。それじゃ、お願いしますね」

P「お任せを。まずは洗剤でしたっけ?」

楓「はい。あと、晩御飯の材料を少し買ってしまおうかと」

P「折角来たわけですしね、どうぞどうぞ」

楓「……食事といえば、プロデューサーって麺ものがお好きなんですか?」

P「え、どうしてですか?」

楓「いえ、いつも買ってくるお弁当が、だいたい蕎麦やパスタ、ラーメンのどれかなので」

P「あれ、そうですか? あんまり意識してなかったなぁ。でも確かに麺類は好きですね。四条貴音のラーメン探訪は要チェックです」グッ

楓「なるほど、つまりプロデューサーは麺好きのメンズ……ふふっ」

P「うーん、60点ですね」

楓「あら、獺祭みたいに辛口ですね」

P「それ、辛口評価だけど実は甘めってことですか?」

楓「ふふっ、当たりです。プロデューサー、口元緩んでますし」

P「むむ」

楓(でもそっか、麺が好きなんだ。うん、それなら私でもなんとか……)

P「楓さん? 次はどこのコーナー行きますか」

楓「あ、はい。次は……」アレトコレトソレト…

/夜・スーパー近くの路

P「しかし、楓さんが案内してくれるってことでしたけれど」

楓「はい?」

P「もしかして、不動産屋とお知り合いなんですか? 個人で案内してくれるくらいですし」

楓「うーん、そうとも言えるし、そうとも言えないといいますか……」

P「?」

楓「確かに大家さんとも知り合いですけど、ちょっとワケありなんです。詳しくは、ついてから説明しますね」

P「ふーむ。まあ、とりあえず了解です」

楓「なんだかすいません、煙に巻いたみたいで」

P「いえいえ、こちとら宿無しの所を案内してもらってる身ですしね。とりあえず、どんな場所か楽しみにしておくことにします」

楓「はい、楽しみにしててください」ニコッ

楓「……あ、そういえばですけど。会社の方には、もう報告されたんですか?」

P「ああええ、お昼に一応。社長とちひろさんにはえらく心配されましたよ。急にどうしたんですか?」

楓「事務所にいた時、ちひろさんがそう言えば何も仰ってなかったなと思ったので。ちひろさんなら、とても心配しそうですから」

P「ああ、なるほど。多分、あの時は奏が居たから気を使ってくれたんだと思いますよ」

P「社長達とも、アイドルには一応秘密の方向でって決めたので」

楓「それじゃあ、本当に知ってるアイドルは私だけなんですね」

P「ええ。なんか、却って迷惑かけてしまってるような気もするんでアレですが」

楓「私とプロデューサーの仲ですから。それくらいどーんと来い、です」

P「ありがとうございます、ほんと」

楓(そっか、本当に私達だけの秘密なんだ)

楓(プロデューサーが冗談にならないくらい大変なのは分かってるけど……)

楓(ちょっとだけ、嬉しいと思ってる私がいる)

/夜・とあるマンションの前

P「さて」

楓「はい」

P「スーパー寄って、少し歩いて来たわけですけど……」

楓「わけですけど?」

P「もしかしてと途中から思ってましたが……あの、ここって」

楓「はい。私の棲んでるマンションです」

P「ですよね。えーっと、とりあえず荷物置く感じですか?」

楓「え?」

P「あれ?」

楓「……確認ですけど、プロデューサーは、事務所から近い部屋を探してるんですよね?」

P「ええ」

楓「そして、私は一か所心当たりがあるということで、ここまで来ました」

P「ええ」

楓「つまりそういうことです、プロデューサー」フンス

P「すいませんわかるんですけどわかりたくないです……」

/夜・楓の部屋

P(とりあえず上がって話をってことで、部屋にお邪魔することになった)

P(少し上がらせもらったことはあるけれど、ほとんど初めてみたいなもんだから妙に緊張する)

P(シンプルだけど、シックで洒落た家具や小物が並ぶのはいかにも楓さんらしい感じだ)

P(そして、肝心の楓さんはといえば……)チラッ

楓「自由が歪み始め 歌の中舞い上がる♪」トントントン

P(何故かAbsolute NIne歌いながら料理してるんですけど……あの歌気に入ったのかな)

楓「未来に響かせて♪」

P(しかしエプロン姿の楓さん)

楓「勝ち取るの この歌で 絶対♪」

P(……イイなぁ)

楓「……ふぅ。冷やし中華出来ました。殆ど出来あいみたいなものですから、野菜を切ったくらいですけど」

P「あ、もしかして」

楓「ええ、麺がお好きだと仰ってましたから。はい、これプロデューサーの分です」コト

P「あ、ありがとうございます」

P「じゃなくて! あの、楓さ」ピトッ

P(……なんかいきなり人差し指で唇を抑えられた)

楓「言いたいことはわかります。でもとりあえず、今は晩御飯を食べましょう?」

P「……そうですね、ありがたくいただきます」

楓「はい、召し上がれ」

P(正直、かなりドキッとしたんですけど……)

P「ごちそうさまでした」

楓「お粗末さまでした」

P「ふぅ……美味しかったです。でも楓さん、料理出来たんですね。パーティの準備の話を聞いて、てっきり出来ないのかと」

楓「ふふっ、苦手なのは本当ですけどね。でも冷やし中華なら、野菜を切って、麺を茹でて、タレを掛けるだけですから」

P「いや、それでもわざわざ作ってくれたんですから。本当にありがとうございます」

楓「いいえ。美味しいって言ってもらえてよかったです。正直、少し不安だったので」ニコ

P「心配するようなことは何もないですよ。ほんと美味しかったです。何より作ってくれたという事実が胸に沁みます」シミジミ

楓「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいです」

P「……さて、と。それじゃあですけど」

楓「お部屋の話、ですよね」

P「ええ、お願いします」

P「確認ですけど……このマンションに案内してくれたっていうことは、そういうことですよね」

楓「はい、その通りです。このマンションに空き部屋があるってことです」

P「確かにここなら立地的に申し分ないですが……でも、ただ空いてるってわけじゃないんですよね? わけありって仰ってましたし」

楓「えっと、私の隣人の話、した事ありましたよね?」

P「ええ、はい。確か和歌山の頃からのご友人がお隣に住んでる、と」

P「見ず知らずの人に囲まれてるよりはプロデューサーとして安心だったので、よく覚えてます」

P「それがどうしたんですか?」

楓「実はその子が、数か月前に入籍しまして。旦那さんのお住まいに引っ越したんです」

P「……つまり」

楓「はい、空き部屋っていうのがその子の部屋、つまりここの隣なんです。でも、実はそれだけじゃなくて……」スクッ


P「……? いきなり立ってどうしたんですか?」

楓「プロデューサー。この扉、何か変だと思いませんか?」

P「変な所、ですか? 特に変わったことはない、ような……」

楓「うーん……それじゃあ、ここに扉があったら、どうなると思います?」

P「どうなるって別の部屋があるんじゃ……あっ」

P「あの、扉の位置的に、もしかして」

楓「はい。そういうことです」ガチャ

P(楓さんが扉を開けると、そこには別の部屋が広がっていた)

P(この部屋と同じ大きさで、それも正反対の間取りの部屋が)

楓「その隣の部屋、この部屋と繋がってるんです」

P「……いやいやいや! 流石にまずいでしょう」

楓「そうでしょうか?」

P「アイドルとプロデューサーが同じマンションの隣の部屋、しかもその部屋が繋がってるというのは……いくらなんでも」

P「ていうか、万が一ここに入居者あったらどうするつもりだったんですか?」

楓「そこは心配ありません。ここの大家さんというのが、実は友人のお父様なので」

楓「小父様は私の事情も知っていますし、一応私が借りていることにしてくれています。料金は、大分サービスしていただいちゃってますけど……」

P「いやまぁ、それならその点は安心ですが……でもですね」

楓「……本当は、ですね。女子寮を出たり、地方から出てくる子が居たら、その子に融通しようと思ってたんです。ルームシェアのような感じで」

楓「でも、そうしたらプロデューサーが火事にあわれて。それなら紹介しようかな、と。早く部屋を見つけないと大変ですから」

P「確かに部屋を紹介してもらえるのは有り難いですよ? 実際、この部屋も良い感じですし。でも……やっぱりこれはマズいですよ」

楓「そうですか?」

P「さっきも言ったように、仮にもプロデューサーとアイドルですよ? しかも、僕達だっていい年齢です。それが繋がった部屋にってのは」

楓「私は問題ありませんよ? みだりに開けなければ、普通の部屋と違いはないわけですし。それに、ルームシェアだと思えば……」

P「それは……そうかもしれないですけど。でも何か間違いが起きたら」

楓「……起きるんですか?」

P「起き……いや、起こしませんけど!」

楓「それなら、何も問題ないですよね?」ニコッ

P「う……うーむ」

楓(悩みこんじゃった、かな)

楓(……)

楓「プロデューサー。今日私が言った事、覚えてますか?」

P「え?」

楓「何かお力になれることがあったら何でも言って下さいっ、て」

P「え、ええ……勿論、覚えてます」

楓「私は、ご存知のように元モデルで、アイドルで。何か特技があるわけじゃありません。料理だって、上手くはないですし」

楓「お力になりたい気持ちは本当ですけど、きっと本当に出来ることは限られてます」

P「……」

楓「そんな私が、プロデューサーが大変な目にあわれた事をたまたま知りました」

楓「しかもそれだけじゃなくて、プロデューサーのために出来そうなことがここにあるんです」

楓「これもきっと、運の巡り合せ、天の配剤かなって思うから……だから」

楓「私がプロデューサーのためにできること、させてくれませんか?」

楓「……」

P「……」

P「……そうですね。正直、まだ迷うところもありますけど」

楓「……」シュン

P「ありがたく、お言葉に甘えさせていただくことにします。早いところ部屋を見つけたいのは本当ですし」

楓「本当ですか」パァァ

P「ええ。楓さんがそこまで僕を心配して提案してくれたことですから。断るのも野暮ってもんですよ」

楓(……野暮、ね)

楓「……えっと、あの。今更ですけど、嫌だったら断っていいんですよ?」

P「いえいえ、嫌なんてことは。ただ理性の問題というか、職業倫理というか……」

楓「?」

P「ま、まあ気にしないでください」

楓「えっと、それじゃあ」

P「はい、入居の方向でお願いします」

楓「わかりました。小父様の方には、私から伝えておきますね

P「お願いします。と、それじゃあ詳しい話はまた明日にでもってことで、今日はお暇させてもらうとしますね」

楓「え? プロデューサー、今日はどうなさるんですか?」

P「一応社長からは、落ち着くまで仮眠室使っていいとは言われてるので、今日くらいは事務所で一晩明かせばいいかなと」

P「まああんまり好意に甘えるのもどうかと思うんで、正式に入居できるまではホテル暮らしのつもりですが」

楓「そうなんですか? 私、てっきり泊まっていかれるものかと」

P「……は!?」

楓「あっ、いえ、そのですね、私の部屋にではなくて。その、隣の部屋に、ですよ?」

楓「一応私が借りてる形なので、その……『友人』を一晩泊めるくらいは問題ないかと」

P「ああ、そういう……。まぁそうですね、一晩くらいならいいか。無事入居すれば、これから毎日隣で暮らすことになるわけですし」

楓「ええ。予行演習だと思って」

P「まあそれでも、一応今晩だけってことにしときます」

楓「私は、入居まででも構わないですけれど」

P「流石にそれは良心が許さないというか……まぁ、そんな感じで」

楓「わかってます。プロデューサーは、そういう人ですものね」ニコニコ

楓「それじゃあ、間取りとかざっとお教えしますので、こちらへどうぞ」

P「はい、よろしくお願いします」

/夜中

楓(プロデューサーに隣の部屋を案内した後は、私の部屋でちょっとした酒盛りをした。プロデューサーの慰労も兼ねて)



P(でもやっぱり精神的にきていたのか、いつも2人で飲むよりも遥かに早く酔ってしまい、布団等の準備は楓さんにしてもらってしまった)



楓(そして今、プロデューサーは隣の部屋で寝ている)



P(そして今、楓さんの隣の部屋で寝ている)



楓(今までだって、友達が隣の部屋に住んでいたことはあるのに)



P(扉があることを除けば、別々の部屋だと分かっているのに)



楓(不思議と)



P(とても)






楓(緊張している、私がいる――)



P(緊張している、自分がいる――)




/一週間後・Pの部屋


P「ふぅ、これで引っ越しも一段落かな」

楓「ふふっ、お疲れ様です、プロデューサー」

P「ありがとうございます、入居の作業手伝ってもらっちゃって」

楓「気にしないで下さい。これもお隣さんのよしみ、ですよ」

P「しかし、ある程度焼け残ったはいいけど、流石に持ち出せる家具は殆どなかったし、さっさと終わっちゃいましたね」ハハ

楓「燃えちゃったのは、本当に残念ですけど……家具やその他は、少しずつ増やしていきましょう?」

P「そうですね、それも新たな生活を始める楽しみだと思って」

楓「この近辺の家具屋さんや小物屋さんなら任せて下さいね。よーく知ってますから」

P「楓さんのおすすめとなると、なんだか部屋がお洒落になりそうだなぁ」

楓「お洒落かどうかは、わかりませんけど……今度時間があるときにでも、案内しますね」

P「ええ、よろしくお願いします」

楓「そうだ、また酒盛り、しませんか? 今度は、こっちの部屋で」

P「いや、まだ夜にはなってないんですが」

楓「プロデューサー、今日のお仕事は?」

P「入居ってことで、休みをもらってます」

楓「私もオフですから、問題ないですね。どうですか、入居祝いということで、一つ」クイッ

P「……ま、それもいいですね。どうします、お酒買いに行きますか?」

楓「いえ、こういうこともあろうかと越乃寒梅の金無垢が部屋に一本」

P「あの、それ結構いい値段した気が」

楓「実は、共演者さんからの頂きものなんです。一人で頂くのも勿体ないですから、むしろ丁度いい機会です」

P「それじゃ、お言葉に甘えて」

楓「はい。越乃寒梅で乾杯といきましょう」

P「それが言いたかったのか……」

楓「ふふっ♪」

P「それじゃあ、新たな生活の始まりを祝して」

楓「私達の隣人生活の始まりを祝して」


「乾杯!」


P「ふぅ……。 これ、恐ろしく呑みやすいですね。いい酒だなぁ」

楓「ええ。こんなもの頂いちゃって申し訳ないくらいです。今度、御礼を言っておかないと」


P「しかし、楓さんと隣人か。なんか不思議な気分ですよ」

楓「ふふっ、実は私もです。男の人、しかもプロデューサーが隣人になるなんて」

P「嫌でしたか?」

楓「いいえ。プロデューサーなら……いいえ、プロデューサーだからこそ、いいかなって、そう思ったから誘ったんですよ?」

P「そ、そうですか」

楓「……ええ」

P「……」

楓「……」

P「……そ、そういえば。僕達が中高生の頃、こんなドラマがありましたよね」

楓「はい?」

P「1つの扉で繋がってた部屋で、会社の同僚の男女が隣人になって……っていう」

楓「あ、それ月9のやつですか? WHAM!の曲がEDだった」

P「そうそう。まさか自分が、ドラマと似たような立場になるなんて思いもしなかったなぁ」

楓「ホントですね」クスクス

P「あ、そういえばあのドラマ、楓さんみたいなダジャレ好きが出てましたね」

楓「テキーラ持ってきーらー、って」

P「あはは、本当に懐かしいなぁ」

楓「ふふっ、ですね。あのドラマと違って、私は病気じゃないですけど」

P「僕も、あんなに出来る男じゃないですけどね」ハハハ

P「まあ、ドラマはともかくとしても……これから、良き隣人関係を築けて行けたらって、そう思います」

楓「はい。誘いに乗らなければよかったなんて、思われないようにも」フフッ

P「まあ、そんなことは思わないと思いますけれど」ハハ





P「でも改めて、お隣さんとしてこれからよろしくお願いしますね、楓さん」

楓「よろしくお願いします、プロデューサー……いえ、Pさん♪」

おしり、じゃない、おわりです。

何番煎じかわからない家焼失ネタでした。Pの家が全焼するのは設定的に便利だからね、仕方ないね!
本当は日常的に互いの部屋に出入りするようになっていくとことかいろいろ考えてたんだけど、力尽きたので一先ずこれで締めです。
気が向いたら続きかくかもしれません。

それでは、依頼出してきます。

あっ、ちなみに
楓さんの「もーまんたーい」はデジモンテイマーズ、最後のドラマはラストクリスマスのことです。
楓さんが今25歳だとしたら知ってそうなネタを入れてみただけで深い意味はありません!

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