まつり「私の、王子様」 (97)


グリマスSSです。
もちろんグリPです。
765Pではありませんが、765Pも一応いるとお考えください。
キャラに対してある程度の自己推測が存在します。
一部モバマスからもキャラが出てきます。

以上の事を踏まえた上で読んでもいい、という方はどうぞゆっくりしていってください。



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―――事務所―――

P「お疲れ様みんな!」

星梨花「あ、お疲れ様です。プロデューサーさん」

伊織「お疲れ様」

まつり「お疲れ様なのです」

P「今日も調子いいみたいだな。ほら、オレンジジュース」

星梨花「わ、わざわざありがとうございます……」

P「いいんだよ。俺にはこれぐらいしかできないからな」

伊織「いい心がけじゃない。ありがたくいただくわ」

まつり「ありがとうなのです」

P「そうだ。律子さんがこの調子で行けばCD出すのも夢じゃないって言ってたぞ」

星梨花「私達のCD、ですか」

P「そう。このユニット『PRINCESS』としての初CDだ」

伊織「ま、このスーパーアイドル伊織ちゃんがいれば当然の事だけどね」

まつり「CD、楽しみなのです~」

P「まだ出すと決まったわけじゃないからな」

伊織「釘を刺さなくてもわかってるわよ」

P「ならいいんだ。で、次の仕事なんだけど」

まつり「あ、待ってくださいなのです」

P「ん?どうしたまつり?」

まつり「後で……お仕事とは別の事でプロデューサーさんとお話したいのです」

P「わかった。じゃあ時間を作っておくよ」

まつり「よろしくなのですー」

星梨花「わ、私も!」

P「え?」

星梨花「私もプロデューサーさんにお話が……いいですか?」

P「わかった。じゃあ星梨花の分も開けておくよ。伊織は?」

伊織「私は何もないわよ。というか、そんな簡単に時間を空けられるの?」

P「空けられなくても空けるのがプロデューサーとしての務めだ」

伊織「そ。ならいいの。暇だから空けられるって言われたらどうしようかと思ったわ」

P「それはないよ。伊織達が頑張ってくれてるからな」

伊織「ありがと。素直にその言葉は受け取っておくわ」

P「じゃあ改めて次の仕事についての説明だが―――」

まつり「……」チラッ

星梨花「……」チラッ

―――数十分後―――

P「……むむむ」

伊織「どうしたのよそんなしかめっ面して」

P「おお、伊織か。まつりと星梨花は?」

伊織「まだレッスン中。私は休憩をもらったからこっちに来ただけ」

P「そうか……」

伊織「で、どうしたのよ」

P「いや、二人に話されたことでちょっとな」

伊織「何か言われたの?」

P「そうじゃないんだ。今度の休日について聞かれてな?」

P「二人共、休日は一緒にお出かけをして欲しいって……」

伊織「ああ、なるほどね」

P「とりあえず、その事は保留にしといたんだがちゃんと答えないといけないと思ってな」

伊織「もういっそ三人で出かけたら?」

P「あ、それでいいか」

伊織「……本気で言ってる?」

P「ダメなのか?」

伊織「こりゃ二人共苦労するわね」ボソッ

P「え?」

伊織「とりあえず、悩むくらいならじゃんけんでもなんでもして、負けた方は次の休日とかでいいんじゃないかしら」

P「なるほどな。それなら不平等にならずに済むか」

伊織「少しは考えなさいよね」

P「すまんな。別の事で頭がいっぱいでさ」

伊織「別の事、ねぇ」

P「今は詳しくは話せないんだがな。いずれ話すよ」

伊織「別にいいわよ。悩み事の一つや二つあるのは人間として不思議なことじゃないわ」

P「そう言ってくれて助かるよ」

伊織「それじゃあ私はレッスンに戻るから。二人が来たらちゃんと言いなさいよ?」

P「わかってる。ありがとな伊織」

伊織「別にお礼を言われる事じゃないわ。じゃあね」

P「さてと、俺は俺で仕事を片付けちゃいますか」

小鳥「あ、プロデューサーさん」

P「はいなんでしょうか?」

小鳥「先ほど、まつりちゃんのお父様から、まつりちゃん向けにお電話がありましたよ」

P「わかりました。あいつに言っておきます」

小鳥「私はじゃあお茶を入れてきますね」

P「……」

P「あの、小鳥さん」

小鳥「なんですか?」

P「小鳥さんって……その……恋愛経験、豊富だったりしますか?」

小鳥「」ガシャーン

P「うわっ!?だ、大丈夫ですか?!」

小鳥「だ、大丈夫です……はい。まだ、大丈夫……」

P「えーっと……それで、質問の答えは……」

小鳥「……NOです」

P「えっ、意外ですね」

小鳥「それはどういう意味ですか?」ニコッ

P「あ、いや、小鳥さんみたいに家庭的で美人な人が恋愛経験がないだなんて」

小鳥「ない事はないですよ別に。今も絶賛片思い中ですし」ボソボソ

P「へ?」

小鳥「なんでもないです。それでいきなりどうしたんですか?」

P「いや、その……ちょっとした恋愛相談をと思ったんですけど、やっぱりいいd」

小鳥「恋愛相談ですか?!どうぞどうぞ!!私でよければ相手しますよ!?」ズイッ

P「うわっ!?な、なんですか急に?!」

小鳥「人の恋愛ほど面白いものはないって言うじゃないですか」

P「言いませんよ?!」

小鳥「とにかく、私に話してみてください。人に話せば、多少は楽になりますから」

P「それはそうなんですけど……」

小鳥「さぁ、さぁ、さぁ!」ズズイッ

P「わ、わかりましたよ……でも、絶対に秘密にしてくださいね?」

小鳥「わかってますよ。ぴへへ」

P「……心配だなぁ」

―――数分後―――

星梨花「お疲れ様でした」

まつり「お疲れ様なのです」

P「お帰り二人共」

小鳥「おかえりなさい二人共」ニコッ

まつり「……?」

小鳥「どうかした?」ニコニコ

まつり「いえ、なんでもないのです」

小鳥「そう」ニコニコ

P「……」

星梨花「?」

P「えーっと、それでだ。休日の話なんだけど……」

まつり「休日はまつりと一緒に出かけてくれるのですよね?」

星梨花「わ、私と一緒ですよね?」

P「休日なんだけど、二人でじゃんけんをしてくれないか?」

まつり「じゃんけん、なのです?」

P「そう。じゃんけんして勝った方が次の休日。じゃんけんで負けた方が次の次の休日に付き合うって事でどうだ?」

星梨花「……そう、ですよね。仕方ないです」

まつり「わかったのです。負けないのですよー!」

まつり&星梨花『最初はグー!』

まつり&星梨花『じゃんけんポン!』

―――数日後 Pの部屋―――

ピピピピピピ

P「ふぁぁ……」

P「よし、時間通りに起きれたな」

P「ん?メール……小鳥さんから」

小鳥『今日は頑張るんですよ!\(*⌒0⌒)♪』

P「……」

P「言われなくてもそのつもりですって……全く」

P「小鳥さんもお仕事頑張ってくださいねっと。送信」

P「さて、じゃあ出かける前にー」ピポパ

P「……もしもしー。美希ちゃん?」

P「ちゃんは止めて?ああ、ごめんごめん。それで美希に聞きたいことがあってさ」

P「珍しいってそんな……まぁ、確かに美希に俺から電話をかける事自体は少ないけどさ」

P「そうそう、お店を紹介して欲しいんだ」

P「え?見返り……そうだなぁ。先輩に美希が一緒に出かけたがってたって言っておくとか?」

P「デートの約束まで漕ぎ着けるの?……しょうがないなぁ。頑張ってみるよ」

P「それで知りたいのは、この辺にあって美味しい焼きマシュマロが食べられるお店なんだけど」

P「そんなもん知らないって?いやいや、そこを何とか頼むよ」

P「わかった。少し待ってる」

―――数分後―――

P「……うん、うん。わかった。ありがとうね。美希」

P「それじゃあまた……わかったよ。約束はどうにかするから」ピッ

P「よし。準備は万端。それじゃあ行きますか」

―――公園―――

P「……まだアイツはいないか」

P「流石に早く来すぎたかな。2時間前だし」

P「いやでも、アイツ遅れると怒るからなぁ……」

P「とりあえずコンビニかどっかで暇を潰そう」

???「……」キョロキョロ

P「ん?」

???「……あ、ちょうどいいですわ。そこのアナタ」

P「俺?」

???「ええ、アナタですわ。道案内をしてくださらないかしら」

P「道案内はいいけど……っていうか、子供?」

???「失礼な。わたくしは子供ではありませんわ」

P「ごめんごめん……えーっと。それでどこに行きたいのかな?」

???「まだ若干、子供扱いをしているように思えますけど……まぁいいですわ。ここまで行きたいんですの」サッ

P「ここは……えっ」

???「何か?」

P「(うちのプロダクション……)」

P「ちょっと待っててね?」

???「ええ、わかりましたわ」

P「……」プルル

P「もしもし、小鳥さんですか?」

小鳥『はい。どうかしましたか?もしかしてデートが上手くいかなかったとか?!』

P「そうじゃなくて。今日、プロダクションにお客様が来る予定とかあります?」

小鳥『今日ですか?……あ、他のプロダクションからアイドルが一人、打ち合わせに来るそうです』

P「なるほど……もしかして、そのアイドルのプロデューサーさんって多忙だったりします?」

小鳥『はい?あー、そうですね。実は今日もアイドルと一緒に来られるかどうかすら怪しいと」

P「わかりました。ありがとうございます」

小鳥『えーっと。それでデートの方は……』

P「後で結果は報告しますから。そしてデートじゃありません。それじゃあ」ピッ

P「お待たせ。ごめんね、待たせちゃって」

???「構いませんわ」

P「もしかして君、アイドルやってたりする?」

???「あら。わたくしの事を知っていらっしゃるの?」

P「実は君が行こうとしている所のプロデューサーをやっててね。今日は俺休みだからこんなとこにいるんだけど」

???「縁とは不思議なものですわね……もしかして貴方が765プロダクションを作り上げた……」

P「いいや。それは俺の先輩。俺はまだまだ新人のプロデューサーさ」

???「それは少し残念ですわね。一度765のプロデューサー様にお会いしてみたいと思っていましたのに」

P「ごめんね。でも今日先輩は出社してるはずだから、プロに行けば会えると思うよ」

???「それは光栄ですわね」

P「それまでは俺が道案内をするけどいいかな?」

???「よろしくお願いしますわ」

P「それでえーっと……」

桃華「桃華、ですわ」

P「桃華ちゃん?」

桃華「呼び捨てでお願いしますわ。ちゃん付けはくすぐったくって」

P「わかった。じゃあ桃華、早速行こうか」

桃華「ええ」

P「(時間もあるし、まだ大丈夫だよな……?)」

―――公園前の道―――

P「桃華はどうしてアイドルになろうと思ったんだい?」

桃華「あら、唐突ですわね」

P「個人的に興味があってさ。うちのプロダクションのアイドル達も様々な理由でアイドルを始めてるからね」

桃華「そうですわね……退屈な日常にうんざりしたから、かもしれませんわね」

P「退屈な日常?」

桃華「わたくしの親は過保護で……なんでもお願いは聞いてくださるけど、あまり外には出られないような生活をしていましたの」

P「なるほどね」

桃華「だけど、週に一回のお散歩の日……わたくしは出会いましたの」

P「君のプロデューサーにかい?」

桃華「ええ。最初はわたくしをじっと見ているものでしたから、変質者や犯罪者かと思いましたわ……けど、そんな人とは目の色が違いましたの」

P「目の色……」

桃華「まるで、一瞬でわたくしの全てを見定めているかのようでしたわ」

P「……その話を聞いて思っただけだけど、君のプロデューサーはきっと凄い人なんだろうね」

桃華「ええ。それはもう。過保護なわたくしの親を説き伏せて、わたくしをアイドルにしてくれましたから」

P「俺もいつかは先輩やその人みたいになりたいものだ」

桃華「あら、わたくしから見てアナタも中々の逸材ですわよ?」

P「そうかな」

桃華「普通、見ず知らずの、しかもアナタから見て子供に道案内をしてくれと言われて了承する人間は少ないですもの」

P「そうでもないと思うんだけどなぁ」

桃華「現にわたくし、さっき一回断られましたの」

P「冷たいヤツもいたもんだ」

桃華「そうやって謙虚にしているフリをして本当は照れている所も、なかなかわたくしのプロデューサーにそっくりですわよ」

P「……」

桃華「あら、図星?」

P「……あまり褒められる事には慣れてないんだよ。子供にもね」

桃華「初心で可愛いですわね」

P「それは褒められてる気がしない」

桃華「あら、褒めてますのに」

P「ならありがたく受け取っておく」

桃華「くすっ、やっぱり面白い方ですわね」

P「おっと、そこの角を右だ」

桃華「わかりましたわ」

桃華「……あら?」

P「どうかしたか?」

桃華「いえ、今後ろに誰かが……きっと気のせい、ですわね」

P「まぁ、何かあったらお客さんだし俺が守るよ」

桃華「……」

P「どうかした?」

桃華「いえ……やはりプロデューサーという職業はみんな『こう』なのですわね……」

P「?」

一旦飯落ちします。30分後くらいに再開。

意外と早く戻って来れたので再開します

―――プロダクション前―――

P「それじゃあここでお別れだ」

桃華「アナタは入っていかないのかしら?」

P「休日だし、人も待たせてるからね」

桃華「もしかして、デート?」

P「……違うよ」

桃華「ふふっ、隠せてませんわよ」

P「早く行けよ、もう」

桃華「照れてますわね。ふふふっ」

桃華「そうだ。少しの間ですけど、一緒にいて中々に楽しかったですわ」

P「……それならよかった。必死に話を繋いだ甲斐があったよ」

桃華「もし次に会った時は、今度はわたくしが何かお持て成しをしますわ」

P「いや、別に気にしなくていいぞ?」

桃華「それではわたくしの気が済みませんの。ですから、次に会うときを楽しみにしてるといいですわ!それじゃあ!」タタタ

P「……行ったか」

P「なんか不思議な子だったな。やっぱアイドルって何処も個性豊かだなぁ」

P「っと、そろそろ待ち合わせ時間だな。急いで戻らないと!」

P「……でも、なんだろうなぁ。桃華ってどっかで聞いたことある気がするんだよなぁ」

P「まぁ、アイドルなんだし当然か」

―――公園―――

P「よ」

まつり「……」ムッスー

P「あれ、時間通りだよな?」

まつり「……そうですね」ムッスー

P「じゃあなんでそんなに怒ってるんだ?」

まつり「怒ってないですよ。ただ拗ねてるだけなのです」

P「拗ねてるって……」

まつり「……桃華さん」

P「」ビクッ

まつり「桃華さんとのデートは楽しかったですか?プロデューサーさん」

P「いや、あれはデートじゃなくてだな」

まつり「でも楽しそうだったのです。まつりからしたら、あれはデートに見えたのです」

P「デートなワケないだろ。そもそも俺が―――」

P「……」

まつり「俺が?なんなのです?」

P「いや、なんでもない。だけど、あれはデートじゃなくて道案内をしてただけだと言っておく」

まつり「……まぁ、最後にはプロダクションに行きましたし、信じてあげるのです」

P「助かるよ」

まつり「それで、今日はプロデューサーさんがまつりをエスコートしてくれるのですよね?」

P「まぁね。一応、プランみたいなのは立てて来たつもり」

まつり「姫、お腹がすいたのです。何か甘いものが食べたいのです……ね?」

P「早速か……まぁいいや。ならこっち」

まつり「甘いものですよ?」

P「わかってるって。任せろ」

―――喫茶店―――

P「ほらメニュー」

まつり「ありがとうなのです……ほ?」

P「どうかしたか?」

まつり「メニューに焼きマシュマロがあるのです。珍しいのです」

P「お前好きだろ?焼きマシュマロ」

まつり「わざわざ探してきてくれたのですか?」

P「もちろん」

まつり「流石プロデューサーさんなのです」

P「他にもマシュマロを使ったメニューなら沢山あるから、好きな物頼んでいいぞ。今日は俺の奢りだ」

まつり「しかも太っ腹なのです!」

P「今日くらいはな」

まつり「じゃあ、これとこれと……あ、これも……」

P「俺は普通にコーヒーでいいや。決まったら言ってくれ」

まつり「わかりましたのです。うーん……こっちのも美味しそうなのです……」

まつり「そうだ!プロデューサーさんは、これとこれ、どっちが美味しそうと思いますか?」

P「え?俺?」

まつり「そうなのです。プロデューサーさんの意見を聞きたいのです。ね?」

P「じゃあ俺なら……こっちかな」

まつり「なら姫、これを頼むのです」

P「いいのか?俺が選んじゃって」

まつり「いいのです。せっかくプロデューサーさんがいるのですから」

P「まつりがいいんなら俺はそれでいいや」

まつり「他には他には~♪」

P「(……やっぱ可愛いな)」

―――数分後―――

まつり「わー!凄いのです。マシュマロが沢山なのです」

P「見てるだけで胸焼けしそうだな……」

まつり「本当に全部食べてもいいのですか?」

P「ああ。いいよ。ちゃんとお金はおろしてきたし」

まつり「どれから食べようか悩むのです……むむむ」

P「時間はあるし、ゆっくりでいいからな」

まつり「とりあえず、この焼きマシュマロのトーストから……はむっ」

P「どうだ?」

まつり「とっても美味しいのです!ふわふわなのです!」

P「そりゃよかった」

まつり「プロデューサーさん」

P「ん?」

まつり「あーん、なのです」

P「えっ」

まつり「プロデューサーさんがお金を払うのですから、プロデューサーさんもこれを食べるべきなのです」

P「いや、俺は別に」

まつり「ほらほら、あ~ん、なのですよ」

P「……あーん」

まつり「はい。美味しいですか?」

P「やっぱ甘い」

まつり「そうですか?」

P「うん。だから俺はもういいや」

まつり「そうですか……じゃあ次はプロデューサーさんがあーんしてくださいなのです♪」

P「いやいやいや」

まつり「あーん……」

P「……」

まつり「ふろでゅーしゃーしゃん?」

P「……あーん」

まつり「はむっ。もぐもぐ……美味しいのです」

P「そっか……」

まつり「顔を背けてどうかしたのですか?」

P「いや、なんでもないよ」

まつり「変なプロデューサーさんなのです」

P「(いやだって……あーんって……これ……)」

P「(待て。先輩はこういうのはただのスキンシップだと言っていた。動揺するな、俺)」

まつり「♪」

P「(まぁ、まつりは楽しそうだしいいか……)」

―――水族館―――

P「次はここだ」

まつり「水族館なのですー?」

P「ウミウシを展示してる結構珍しい水族館だ」

まつり「ほ!ウミウシさんですか!」

P「ウミウシ好きなんだろ?」

まつり「ウミウシさんは可愛いのです。家で飼ってみたいのです」

P「……可愛いかアレ?」

まつり「可愛いのですよ!」

P「俺にとっちゃウミウシよりも―――」

まつり「ウミウシさんよりも?」

P「……イルカのが可愛いかな」

まつり「プロデューサーさんはわかってないのです。今日はウミウシさんの魅力をたっぷりプロデューサーさんに教えてあげるのです」

P「(あっぶね……変にクサい台詞を言うところだった……)」

P「(ウミウシよりもお前のが可愛いよ、とか……うわぁ、自分で言おうとして鳥肌立ってきた)」

まつり「こっちなのですよー!」

P「はいはい」

P「(俺の悪い癖だ。直さないとな……)」

―――ウミウシ展示場―――

まつり「わー!沢山いるのです!可愛いのですー!」

P「……」

まつり「どうかしましたか?」

P「いや、思ってたよりも色んなのがいるなって……」

まつり「シンデレラウミウシさんにアオミノウミウシさん、更にアカテンイロウミウシさんにパンダツノウミウシさんまでいるのですー!」

P「詳しいんだな」

まつり「当たり前なのです。まつりはウミウシさん博士と言っても過言ではないのですよ」

P「じゃあ聞いていいか?まずウミウシってなんだ?」

まつり「正確に説明するのは難しいのですが、貝殻が退化したり全くなくなった巻貝の仲間、なのです」

P「巻貝なのか」

まつり「なんだと思っていたのですか?」

P「いや、なんかナメクジっぽいなって……」

まつり「ナメクジさんもウミウシさんの親戚みたいなものなのですよ」

P「そうなのか」

まつり「牛さんの角みたいな触角を頭に持っているので、ウミウシさんと呼ばれるようになったと言われているのです」

P「確かによくよくみると、角みたいだな」

まつり「場所によっては触角を耳にたとえてウミネコさん、とも呼ばれているらしいのですよ」

P「それ紛らわしくないか……?」

まつり「あとあと、肉食だったり、草食だったりするのです。アメフラシさんみたいなのには草食が多いですね」

P「質問。毒は?」

まつり「毒を持っているウミウシさんもいるのです。だから気軽に触らない方がいいのです」

P「へぇ……」

まつり「最後に、ウミウシさんは綺麗な色をしていますが、中には光るウミウシさんもいるのですよー」

P「それはちょっと見てみたいかも……」

まつり「また今度一緒に見に行くのです。ね?」

P「そうだな。また休みが取れたら一緒に見に行こう」

まつり「はいなのです。それで、どうですか?少しはウミウシさんに興味を持ってもらえましたか?」

P「それなりには。なかなか綺麗なウミウシもいるし、意外と可愛いかもしれないな」

まつり「それはよかったのです♪」

―――数時間後 水族館前―――

まつり「今日は楽しかったのです」

P「そっか。喜んでもらえてよかったよ」

まつり「久しぶりにウミウシさんを見れて、まつりは満足なのです」

P「……なぁ、まつり」

まつり「ほ?なんですかプロデューサーさん」

P「まつりは……えーっと……」

まつり「?」

P「その……こういう風に、男と一緒に出かけた事はあるか?」

まつり「変なことを聞くのですね。プロデューサーさん」

P「気になったんだよ。別に答えなくてもいい」

まつり「……プロデューサーさんが初めて、ですよ」

P「えっ」

まつり「お父さんとも水族館に一緒に行ったことはないですし、男の子とも一緒に来たことはないです」

P「そ、そっか」

まつり「プロデューサーさんは……どう、なんですか?」

P「俺か?」

まつり「まつりが初めて……なのですか?」

P「俺も……まぁ、初めてになるのかな。こんな風に女の子と休日に出歩くのは」

まつり「意外なのです。プロデューサーさんはもっと女の子と一緒にデートをしているのかと思ってました」

P「で、デートって……一緒に出歩いたとしても、大体は仕事だよ」

まつり「そう、ですか……ふふふっ♪」

P「なんで笑うんだよ」

まつり「なんでもないのですよ。改めて、今日は楽しかったのです」

P「俺も楽しかったよ」

まつり「それじゃあまた明日なのです」

P「ああ、またな」

P「……」

P「結局……言えなかったなぁ」

P「当たり前か。俺とアイツはプロデューサーとアイドルなんだから……」

―――まつりの家―――

まつり「ただいまーなのです」

まつり「……」

まつり「一人暮らしはやっぱり、少し寂しいのです。ウミウシさんを飼おうか悩むのです」

まつり「……ほ?電話……」

まつり「お父さん、から?」

まつり「ちょっと前にかかってきてるから、今かけなおしたら大丈夫……ですよね?」

まつり「……」プルルルル

まつり「もしもし、お父さんですか?まつりに何かご用が―――」

まつり「―――えっ?」

まつり「ま、待ってくださいなのです!まつり、そういうのは嫌だって」

まつり「ちゃんと話を聞いてください!お父さん!!」ブツッ

まつり「……そん、な」

まつり「まつり、どうすればいいのですか……?」

―――翌日 事務所―――

P「おはようございますー」ガチャ

小鳥「ぴよっ。おはようございます。プロデューサーさん」

P「まだ小鳥さん以外には誰も来てないみたいですね」

小鳥「そうですね。だから、存分に話してくれて構わないんですよ~?」

P「……何をですか?」

小鳥「とぼけても無駄ですよぉ~。デ・エ・ト、の事ですよ!」

P「……あれはデートじゃないですってば」

小鳥「プロデューサーさんがそう思ってるならそれでいいんですけどね。それで、どうでした?」

P「どう、とは?」

小鳥「告白、しました?」

P「ぶっ」

小鳥「もしかしてもしかして、キスとかまで―――」

P「落ち着いてください小鳥さん」

小鳥「ぴよ?」

P「俺は告白もキスもしていません」

小鳥「なぁんだ……少し期待していましたのに」

P「……俺はアイツのプロデューサーですから」

小鳥「なるほど……どうしてプロデューサーさんはみんなこう、頭が硬いんでしょうかねぇ」ボソッ

P「何か言いました?」

小鳥「いえいえ何も。それじゃあ仕事を―――」コンコン

小鳥「お客さん?はーい。ただいまー!」

まつり父「失礼する」ガチャ

P「あ、まつりの……」

まつり父「久しぶりだね。プロデューサー君。まつりの面倒を見てくれていてありがとう」

P「いえいえ。それも仕事ですから」

まつり父「今日は高木社長に用事があってきたのだが、いらっしゃらないかな?」

小鳥「社長なら今社長室にいらっしゃいますよ。ご案内します」

まつり父「助かる」

小鳥「では、どうぞこちらへ」スタスタ

P「……ふぅ、驚いたな」

P「まさかいきなりまつりの親御さんが訪ねてくるなんて……何か悪いことしたかと冷や汗かいちまったぜ」

P「社長に用事って言ってたし……何か仕事関係の話かな?」

小鳥「緊張したぴよ……」

P「おかえりなさい」

小鳥「流石にアイドルの親御さんと言えど、あの人と一緒にいるとプレッシャーが……」

P「まぁ、【水瀬】【箱崎】と並ぶ巨大財閥【徳川】の社長さんだからなぁ……まつりはその一人娘なわけで」

小鳥「それ言っちゃったら、星梨花ちゃんや伊織ちゃんだってそうですよ」

P「……なんで俺そんなヤバイ3人を抱えてるんですかね?」

小鳥「さぁ……運が良かったんじゃないですか?」

P「ある意味、運が悪いとも言います」コンコンコンコン

小鳥「またお客様ですかね?はーい。ただいまー!」

P「これでもし、星梨花や伊織の親御さんが来たら俺はどうすればいいんだろう……」

まつり「プロデューサーさん!!」ダッ

P「うおっ!?まつり?!」

まつり「い、今、お父さんが来なかったですか!?」

P「お、落ち着け。そんな息を切らしてどうしたんだ!?」

まつり「いいから答えてくださいなのです!お父さんは今どこに―――」

まつり父「まつり」

まつり「あ……」

まつり父「話はついた。さぁ、帰るぞ」

まつり「い、嫌、なのです」

まつり父「嫌と言われてもな……」

まつり「待ってくださいなのです。まつりは嫌だって言ったじゃないですか!!」

まつり父「……すまない」

まつり「……」

P「あ、あの……」

まつり父「事情は帰ってから話す。頼む。今は……」

まつり「……わかりました、なのです……」

まつり父「ありがとう……それでは、ご迷惑をかけた」

まつり「……プロデューサー、さん」

P「え?」


まつり「さよなら、なのです」


まつり父「行くぞ、まつり」ガチャ

まつり「……」バタン

P「……」

小鳥「……え、えーっと」

P「なんだったんですかね……今の」

小鳥「さ、さぁ……お嬢様の世界には色々あるんじゃないんですか……?」

P「そうなんです……かね?」

社長「おはよう。二人共」

P「あ、おはようございます」

小鳥「おはようございます、社長」

社長「……プロデューサー君。君に言わなくてはならないことがある」

P「なんでしょうか?も、もしかして俺、クビになったり」

社長「そうじゃないんだ。クビになんかならないよ……君は」

P「俺、は?」

社長「今日限りで―――【PRINCESS】は解散だ」

P「……え?」

―――数時間後 事務所―――

P「……と、いう事らしい」

星梨花「そ、そんな……」

伊織「……よくある事ね。政略結婚は」

P「よくあるのか?」

伊織「ええ。私にも何回かきたことがあるわ。ただ、お父様が全部断っているらしいけど」

星梨花「私は……よくわからないです。けど、そういうのは全部、パパが断っているんだと思います」

P「そうか……じゃあ今回、親御さんが直接ここに来てそう言ったって事は……」

伊織「もしかしたら、【徳川】自体が大分危ないことになっているのかもしれないわね」

P「……それじゃあ、まつりは」

伊織「結婚、しなくちゃならないでしょうね。十中八九」

P「……」

星梨花「でも、それは……」

伊織「望まれない結婚、望んでもいない結婚、ね。私だったらまっぴらごめんよ。まつりだってそう思ってるはずだわ」

P「だけど、手立ては何もないんだろ?」

伊織「何もなくはないわ。経済支援とかなら別だけど……」

星梨花「じゃ、じゃあ私がパパに頼んで」

伊織「そう簡単な話じゃないのよ。経済支援なんてのは」

伊織「何も関係がなかった別の財閥から経済的な支援や寄付があった。その場合、周りの人間は」

伊織「裏で何かあったんじゃないか?ヤバイ取引が行われたんじゃないか?」

伊織「なんて思うに決まってるわ。星梨花、アンタ父親にそんな悪いイメージをつけたいのかしら?」

星梨花「わ、私は、そんなつもりじゃ……」

伊織「……そりゃそうよね。私だって出来ればまつりを助けたいもの」

伊織「政略結婚の怖さは、よく知ってるもの」

伊織「だけどそれは……家が許してはくれないでしょうね」

P「……結局、俺は何もできないんだな」

星梨花「プロデューサー……」

P「……っ」ポロポロ

伊織「っ?!な、なんで泣いてるのよ!」

星梨花「ぷ、プロデューサーさん!?」

P「ごめ、大の大人が気持ち悪い、よな。少し、待っててくれ」

伊織「……アンタ、まさか」

P「ち、違うんだ。これは、ただ」

伊織「……星梨花」

星梨花「は、はい」

伊織「……覚悟、決めなさい」

星梨花「覚、悟?」

伊織「プロデューサー。一つ聞いていいかしら」

P「あ、後にしてくれない、かな」

伊織「いいえ待たないわ。アンタ、まつりの事が一人の女性として、好きなの?」

星梨花「!?」

P「な、そ、そんなわけ」

伊織「正直に言いなさい。どうなの?別れるのが嫌で、泣くくらい好きなの?」

P「……それは、答えられない」

星梨花「……っ」

伊織「それ、言ったようなものよ」

P「俺の口からは、言えない。俺はアイツのプロデューサーだったから」

伊織「そう。でも今は違うわよね?」

P「……何が言いたいんだ」

伊織「手立て、あるわよ。まつりを助け出せる」

P「本当か?!」

伊織「だけどそれを実行するには……プロデューサー。あんたの人生をかけなくちゃいけないわ」

P「俺の、人生?」

伊織「失敗すればあんたの人生泥沼よ。しかもプロデューサー業なんて非じゃないほど過酷な条件付き。それでもやるの?」

P「……」

P「……やるよ」

伊織「……そう」

P「俺の全部、お前に預ける。だから……」

星梨花「どうして、ですか?」

P「何がだ?」

星梨花「どうしてそこまで、まつりさんの事……」

P「……どうしてかな。自分でもよくわからない」

P「けど、頭の中で考えたんだ。俺の人生を全部捨ててでも、アイツの笑顔を見たいかって。アイツと一緒にいたいかって」

P「天秤なんてかける暇もなかった。答えはYESしかなかったよ」

星梨花「……そう、ですか」

伊織「まつりは幸せね」

星梨花「そう、ですね」

伊織「それじゃあ説明するわよ。まず―――」

星梨花「……」

―――数分後―――

伊織「って感じ」

P「本当に上手くいくのか?それ」

伊織「うまくいくわけないじゃない。もうこの時点から賭けは始まってるわ」

P「……」

伊織「今、新堂に調べさせてるわ。そろそろ連絡が来るはず……」プルルル

伊織「もしもし新堂?流石ね。ジャストタイミングよ」

伊織「……うん、そう。わかったわ」

伊織「ご苦労さま。また声をかけるかもしれないけど、よろしくね」プツッ

P「どうだった?」

伊織「まず第一段階はクリアってところね。まつりの正式な結婚相手はまだ見つかっていないらしいわ」

P「よかった……ここでつまづいたらどうしようかと……」

伊織「安心するのはまだまだ早いわよ。今度はアンタが死ぬ気で頑張る番」

P「……わかってるさ」

伊織「それじゃあ星梨花。こいつをよろしくね」

星梨花「わかりました。任せてください!」

伊織「とりあえず今日は解散。アンタはさっさと準備済ませてきなさい」

P「わかった。……伊織」

伊織「何よ」

P「ありがとな」

伊織「別に。ただもらった恩を返してるだけよ」

P「俺、何かしたっけ?」

伊織「オレンジジュースをくれたじゃない。そのお礼だと思えばいいわ」

P「……流石お嬢様、スケールが違うなぁ」

伊織「いいからさっさと行きなさい。時間は待ってはくれないわよ」

P「おう、じゃあまた」ガチャ バタン

伊織「……行ったわね」

星梨花「……」

伊織「星梨花。大丈夫?」

星梨花「……大丈夫、ですよ」ニコッ

伊織「無理に笑わない方がいいわよ。余計に悲しくなるから」

星梨花「……伊織、さん。初恋ってやっぱり叶わないんですね。パパの言ってた通りです」

伊織「……そうでもないと思うわ。ただアンタは運が悪かっただけよ」

星梨花「私、好きだったんです。本気で、好きだったんです」

伊織「知ってる。アンタがアイツのために頑張ってた事も、全部ね」

星梨花「なのにっ、なのにっ……」ポロポロ

伊織「……よくここまで我慢したわね。ほら、泣きなさい。少しは楽になるわ」ダキッ

星梨花「ひぐっ、うぐっ……プロデューサーさん、プロデューサーさん……」ボロボロ

伊織「よしよし。あんたは頑張ったわよ……」

星梨花「うああああぁぁぁぁ……」

―――2ヶ月後 パーティー会場―――

伊織「ごきげんよう、皆様」ニコッ

星梨花「こ、こんにちは……」ペコッ

「おい、水瀬のお嬢様がいるぞ……?」「こっちには箱崎のお嬢様も……」「星梨花たんprpr」

来賓客「こんにちは、箱崎様」

星梨花「こ、こんにちは……」

来賓客「よろしければ、こちらの名刺を……」スッ

P「はい、すみません。そういうのはお嬢様ではなく、俺が受け取る事になっていますので」パシッ

来賓客「そ、そうですか……チッ」

伊織「にししっ、なかなか様になってるじゃない」

P「そりゃ新堂さんに1ヶ月本気でしごかれて、星梨花の執事として1ヶ月過ごせばな……」

伊織「本当に1ヶ月でやってのけるとは思わなかったけどね」

P「そりゃまぁ、根性とスパドリで」

星梨花「あの、さっきはありがとうございます……」

P「執事にお礼なんて言わないでいいんですよ。お嬢様」

星梨花「あう……やっぱりまだ慣れません」

伊織「慣れないでいいのよ。コイツの執事生活はどっちにしろ今日で最後になるんだから」

P「なんか胃が痛くなってきた……大丈夫かなこれ」

伊織「全く情けないわね。しゃんとしなさいよ」

P「わかってるって……」

星梨花「あ、あの人じゃないですか?」

まつり叔母「……」キョロキョロ

伊織「明らかにまつりの相手を探してますって感じね……ほら、しゃんとしなさい」

P「わかってるさ」

伊織「それじゃあ星梨花。頼んだわよ」

星梨花「はいっ」

星梨花「あの、こんにちは」

まつり叔母「え?ええ、こんにちは……確か貴方は」

星梨花「私、箱崎星梨花と申します。よろしくお願いします」

まつり叔母「あら、箱崎の……それで、何か用ですか?」

星梨花「現在、徳川家では経済難のためにまつりさんの結婚相手を探していると風の噂に聞きました」

まつり叔母「……よく、ご存知で」

星梨花「それで私から提案なのですが、私の執事を結婚相手に立候補させたいのです」

まつり叔母「執事?」

P「こんにちは。徳川様」

まつり叔母「この方が?」

星梨花「はい。現在、私の執事をしているPという者です」

P「Pです。よろしくお願いします」

まつり叔母「……ふむ」

星梨花「いかがでしょうか?」

まつり叔母「それによって、徳川へのメリットは存在するのですか?」

星梨花「彼がまつりさんと結婚することになった場合、箱崎家は徳川家へ経済的支援を行おうと思っています」

まつり叔母「ほう?」

星梨花「彼は私にとっても、箱崎家にとっても大事な人ですし、その人の結婚相手の家を立てるのは何も不自然ではないでしょう?」

まつり叔母「なるほど……」

星梨花「そして彼は水瀬伊織様の執事、新堂様の弟子です。つまり、水瀬家にもある程度顔がききます」

まつり叔母「あの水瀬家と」

星梨花「この結婚は徳川家にとって、損な話ではないと思いますがいかがでしょうか?」

まつり叔母「確かに魅力的です……ですが」

星梨花「……っ」

まつり叔母「実は箱崎家、そして水瀬家とパイプを持っている人間は他にも見つけてきたのです」

P「な……」

まつり叔母「それだけではまだ、結婚相手に立候補させるには弱いと申しますか……」

星梨花「そ、そんな……」

まつり叔母「残念ながら、このお話はなかった事に」

P「(やっぱり、俺じゃダメなのか―――?)」

―――数日後 徳川家―――

まつり「……」

執事「まつり様、お次の方がお待ちです」

まつり「断っておいてくださいなのです」

執事「で、ですが」

まつり「……まだ、気持ちの整理がつかないのです。もう少しだけ、待ってください」

執事「……かしこまりました」スタスタ

まつり「……」

まつり「(最初は……何か、胡散臭い人だと思ったのです)」

まつり「(だからずっと、あの人の前にいる時は演技を貫く……そんなはずでした)」

まつり「(いつからでしょう。あの人の前にいると、素になってしまうようになったのは)」

まつり「(いつからだったんでしょう。あの人を、好きになったのは―――)」

まつり「(もう、覚えてないです)」

まつり「(大嫌いだったパーティーも、あの人と一緒にいると、キラキラしてみえました)」

まつり「(自分のお金で買える指輪や靴だって、あの人に買ってもらって欲しくなって)」

まつり「(何より、あの人にずっとまつりの事を見て欲しくなったのです)」

まつり「(まつりはそれほどまでに、あの人を好きになってしまったのですね……)」

執事「まつり様」

まつり「どうかしましたか?」

執事「まつり様に、どうしても会いたい、という方が」

まつり「……」

執事「いかがなさいますか?」

まつり「わかりました。私が直接断りを入れてきます」

執事「かしこまりました」

まつり「……しつこい人も、いたものですね」スタスタ

まつり「このまま、まつりは知らない人と……」スタスタ

まつり「それだけは……嫌なのです」スタスタ

まつり「だから、言い訳を続けてでも、引き伸ばさないと……そうすればきっと……王子様が、来てくれるのです」スタスタ

まつり「私の、王子様が……」ピタッ

―――徳川家 胡蝶蘭の間―――

まつり「失礼いたします」スッ

まつり「徳川まつりです。本日はご足労いただき、ありがとうございます」

まつり「しかし、申し訳ありません。私自身、気分が優れないので次の機会に―――」

「家ではそんな話し方するんだな、お前」

まつり「……ほ?」

「あー、えーっと……なんだ。久しぶり、だな」

まつり「あ……なん、で」

「違う違う、ここではこうじゃなかったな」

P「失礼を。徳川まつり様の結婚相手に立候補しました、Pと申します」

P「……迎えに来たぞ。まつり」

まつり「どうして、プロデューサーさんがここにいるんです……?」

P「色々あってな」

まつり「プロデューサーさん、まさかおぼっちゃまだったのですか?」

P「いや、そうじゃない」

まつり「それじゃあ、じゃあ」

P「あれこれ聞く前に、俺から。一つだけ答えてくれ」

まつり「何を、ですか?」

P「お前さえいいなら……俺は、お前と結婚したい」

まつり「な、ななな、急に何を言い出すのですか?!」

P「だってそういう場面なんだろ?ここは」

まつり「それは、そうなのですけど」

P「俺はお前が好きだ、まつり。だからここに来た」

まつり「嘘、なのです。それはまつりをここから出すための方便で」

P「冗談じゃない。なんなら今ここで証明してもいい」

まつり「証明って何を、んむっ!?」

P「……ん」

まつり「ん、む……」

まつり「……ぷは……いきなりすぎ、なのです」

P「でも気持ち、伝わっただろ?」

まつり「……はい」

まつり「でも、姫にキスをする時は……もっと、ロマンチックにお願いしたいのです」

P「残念ながらそんな余裕はないみたいでな。約束では俺とお前が会えるのはあと数分くらいしかないんだ」

まつり「じゃあもし、もしですよ。まつりとプロデューサーさんの結婚が認められたら……そしたら……」

まつり「もっと、してくれますか……?」

P「ああ」

まつり「それなら今は我慢するのです。でもちゃんと約束、守ってくださいね?」

P「当たり前だ」

まつり「それじゃあもう一回だけ……約束のキスを、お願いしたいのです」

P「わかったよ。それじゃあ……」

まつり「ん……」

―――翌日 徳川家 家主の部屋―――

まつり父「……まさか、君がここに来るとはね」

P「こんにちは。お父様」

まつり父「なんだ。もう結婚した気分か」

P「あ、いや、そうじゃなくてですね」

まつり父「まぁいい。それで一般人だった君がどんな手を使ったんだ?聞かせてみてくれないか?」

P「ただ、俺は運が良かっただけですよ」

P「借した恩を、返してもらっただけです」

―――パーティー会場―――

まつり叔母「残念ながら、この話はなかった事に」

P「(やっぱり、俺じゃダメなのか……?)」

桃華「……あら?」

桃華「ご機嫌よう。徳川様、箱崎様。そして……プロデューサー様?」

P「あ、あの時の……」

まつり叔母「これはこれは櫻井様。こんにちは」

星梨花「えっ、あの。こんにちは……」

P「どうして君が、ここに?」

桃華「それはこちらの台詞ですわ。何故アナタ様がここに……」

P「それはその……」

まつり叔母「ふむ。そちらの彼、櫻井様ともお知り合いで?」

桃華「……なるほど。今が恩返しの時、なんですわね?きっと」

桃華「徳川様。彼はわたくしの元執事でもあり、実は数年前、櫻井に仕えておりました」

P「えっ!?」

星梨花「あ、あの?!」

桃華「(アナタ様は黙って見ているだけでいいですわ。これは恩返しなんですから♪)」

まつり叔母「なんと、櫻井家にも……?」

桃華「ええ。ただ、彼はわたくしがとても有能な執事として、星梨花様の執事を募集していた箱崎家に推薦いたしましたの」

まつり叔母「なるほど……」

桃華「少なからず彼はわたくしとの関係もありますわ。わたくしからも彼をまつり様の夫に推薦させていただきます」

桃華「そして彼がまつり様の夫になった場合、櫻井家からも支援を行わせていただきますわ♪」

まつり叔母「箱崎家、水瀬家、櫻井家……三つのパイプを持っている、なるほど大変魅力的ですね」

まつり叔母「わかりました。私からの推薦枠の一人に加えておきましょう」

P「本当ですか?!」

まつり叔母「ですが決めるのはまつり自身ですから。それをお忘れなきように」

P「わかっております。ありがとうございました!」

まつり叔母「それでは私はこれで……」

桃華「なんとかなりましたわね」

P「びっくりしたよ。君が櫻井家だなんて……」

桃華「あえてあの時は苗字は伏せましたし……改めて、櫻井桃華ですわ」ペコリ

伊織「ちょ、ちょっとアンタ!」

桃華「あら、水瀬様。ご機嫌よう」

伊織「ご機嫌よう……じゃないわ。なんでアンタが櫻井の一人娘さんと知り合いなのよ」

桃華「水瀬様のプロダクションまで道案内をしていただきましたの。今回のはそのお礼をさせていただいたワケですわ」

伊織「道案内って……」

桃華「借りた恩は返す。それが櫻井家の家訓ですわ」

星梨花「あ、あの、とりあえず外に行きませんか?さっきから周りの人がチラチラこっちを見てて……」

伊織「わ、わかったわよ」

桃華「そうですわね。ここでわたくし達が集まっているのは印象が悪いかもしれませんし」

P「それにしても、よかったのか?」

桃華「何がですの?」

P「勝手にあんな約束しちゃって」

桃華「あら、言いませんでした?」

P「何を?」

桃華「わたくしの両親は過保護で過保護で―――外には出してくれませんけど、お願いしたら、なんでも聞いてくださるんですのよ♪」

―――徳川家 家主の部屋―――

まつり父「箱崎に水瀬に櫻井……なるほど、君は恵まれていたわけだ」

P「そうですね。凄く、恵まれていたんだと思います」

まつり父「昨日、まつりが私のところに来たよ」

P「……そう、ですか」

まつり父「あの人じゃないと嫌だ。あの人と結婚できないのなら、私は徳川家なんて辞めてやる、とかなんとか」

P「ははは……まつりらしい」

まつり父「全く。誰に似てあんなに我が儘に育ったのか」

まつり父「しょうがないから君とまつりの結婚を許すことにしたよ。一人娘に縁を切られたらたまらんのでね」

P「なんか、申し訳ないです」

まつり父「謝る必要はないよ。ただ、君にはまつりの夫としてふさわしい人になってもらう」

まつり父「暫くは婚約という形になるが……よろしいかね?」

P「はい」

まつり父「……プロデューサー君、いや、P君と呼んだ方がいいか」

P「なんでしょうか?」

まつり父「まつりを、頼んだよ。どうやら君は、まつりの王子様、らしいからね」

P「……はいっ!」

―――数ヵ月後 結婚式場―――

P「……あー。緊張するな、やっぱり」

まつり「Pさんは胸を張っていればいいのです」

P「どうかな俺、変じゃないかな?」

まつり「いつも通り、かっこいいのですよ」

P「まつりがそう言ってくれるなら安心だ」

まつり「……皆さんに、感謝しなくちゃいけませんね」

P「そうだな。みんなのおかげでこうして、まつりと結婚できるんだから」

P「そうだ。みんなからメッセージがあるみたいだぞ」

まつり「どんなですか?」

P「伊織からは……【幸せになりなさいよ。この伊織ちゃんが手伝ってあげたんだからね!】だって。伊織らしいな」

まつり「いつもの伊織なのです」

P「小鳥さんから、【二人共お幸せに!ブーケは任せるぴよ!】……だって」

まつり「小鳥さんも相変わらずなのです」

P「新堂さんや桃華からも届いてるな」

まつり「新堂さんと桃華さんにも、お礼を言わなくちゃですね」

P「最後に……星梨花から」

まつり「星梨花さん……」

星梨花『ご結婚、おめでとうございます。星梨花です』

星梨花『何を書けばいいのかわからないのですが、えーっと、プロダクションはいつも通りです』

星梨花『今は【PRINCESS】じゃなくて、私と伊織さん、それに新人さんの三人で【The Strawberry】というユニットを組んでいます』

星梨花『毎日が大変で……でも、楽しいです』

星梨花『たまにでいいですから、プロダクションにも顔を出してくれると嬉しいです』

星梨花『それではどうかお幸せに!お二人が末永くある事を心から願っています!』

まつり「星梨花さん……本当に、ありがとうなのです」

P「あいつにも一緒にお礼を言いに行かなくちゃな」

まつり「そうですね」

P「それじゃあそろそろ時間だ。準備はいい?」

まつり「Pさんこそ、準備はいいのですか?」

P「俺は大丈夫」

まつり「まつりは大丈夫じゃないのです」

P「何かあったか?」

まつり「ん」

P「……え?」

まつり「キスがまだなのです」

P「いや待て。これから誓いのキスとかもあるんだぞ?」

まつり「誓いのキスとはまた別なのです」

P「ええ……」

まつり「姫の我が儘を叶えるのも、王子様の務めなのですよ?」

P「……はいはい。じゃあ目を閉じろ」

まつり「はい……」

まつり「……大好き、だよ。私の王子様……♪」


おわり

お疲れ様でした。

まつり姫の親愛200の台詞にやられて、このSSを書き上げました。
可愛いですよね、まつり姫。ファンになります。

それではここまで読んでくださった方々、ありがとうございました!

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