高垣楓「隣のプロデューサー」 (54)

・モバマスのSS

・書き溜めありなのでさくっと終わる予定

・関連作
 高垣楓「プロデューサーの家が……」(高垣楓「プロデューサーの家が……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436105363/))
 P「隣の楓さん」(P「隣の楓さん」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437053307/))
 これらの続編です

・基本的に
 Pの家が焼けたよ! 楓さんの隣の部屋に住む事になったよ! 部屋が中の扉で繋がってるよ!
 これだけ把握してれば読めますが、前作も読んでもらえたらもらえたら嬉しいです。

それでは初めて行きます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439121923

/夜・CG事務所

ガチャ

楓「ただ今帰りました」

海「あ、楓さん。お帰りっ!」

楓「海ちゃん、ただいま。ちひろさんは?」

海「急な来客で、社長と一緒に応接室で対応中。ウチはまぁ、ちょっとしたお留守番、みたいな?」

楓「ふふ、それはお疲れ様。プロデューサーは……まだお仕事よね」

海「うん。まだ帰ってきてないみたい」

楓「そう。じゃあ、ちょっと待ってようかしら」

海「それじゃ、座って待ってれば? 折角ソファ空いてるし」

楓「ええ、そうさせてもらうわね。よいしょっと……」キラッ

海「ん? お、楓さん、可愛いネックレスしてるね!」

楓「これのこと? ふふ、ありがとう。私も、気に入ってるの」

海「今まで見た事なかった気がするけど、買ったの?」

楓「買ったわけじゃないの。これは……そうね、この間、日頃からお世話になってる人にプレゼントしてもらったものなの」

海「ふーん。でもその人、随分キザな事する人だねぇ」

楓「あら、どうして?」

海「そのデザイン、カエデの葉っぱでしょ? プレゼントに名前に因んだものなんて、ねぇ。まあ楓さんに似合ってるけどさっ!」

楓「その人も、自覚はあったのかもしれないわ。ちょっと照れてたから」

海「へぇ~。その人って、男の人?」

楓「一応、そうだけれど」

海「ふーん。その人、実は楓さんに気があったりして!」ニヤニヤ

楓「……ふふ、どうなんでしょうね」

ガチャ

P「ふぅ……ただ今帰りました。ってあれ、ちひろさんいないし」

楓「プロデューサー、お帰りなさい」

海「お、Pさんお帰り。ちひろさんなら今、社長と来客対応中だよー」

P「げ、マジで。誰だかわかるか?」

海「○×テレビの人」

P「ちょっと行ってくるか……。ふぅ、楓さん、悪いけどもうちょっと待ってて下さい」

楓「はぁい」

楓(Pさん、ちょっと元気がなかった……かな?)

海「あれ、今日は飲みにでも行くの?」

楓「ふふ、まぁそんなところね」

海「そればっかりはウチにはわからない世界だなぁ。でも、体だけは気を付けてよ?」

楓「勿論です♪」


楓(……プロデューサーが私に、か)

楓(ううん、きっとこれ以上は考えちゃダメ、よね。今はこうして一緒に居られる、それだけでいいんだから)

/夜・マンションへの道中

楓「お仕事お疲れ様でした」

P「いえいえ、楓さんこそ」

楓「Pさん、今日はお疲れですか?」

P「ん、いやそんなことはないですけど。知っての通り、ここのところはしっかり睡眠時間も取れてますし」

楓「そうですよね……それなら、いいんですけど」

P「むしろ楓さんは大丈夫ですか? ここのところ仕事詰まってますから」

楓「ええ。無理しすぎず、楽しんでお仕事させてもらってます。お仕事はわーくわーくが一杯ですから」

P「はは、楓さんらしいなぁ。まあ、そう言ってもらえればプロデューサー冥利に尽きますよ」

楓「Pさんの下で、楽しんでお仕事させてもらってるのは本当ですから。私だけじゃなくて、皆もきっと」

P「そうですかねぇ。そうだと嬉しいですけど」

楓「私が保証しますよ」フフ

P「なんだか、それだけでちょっと自信が出てくる気がしますよ」ハハ

P「そう言えば、ちょっと意外だったんですけど」

楓「はい?」

P「僕が事務所に帰ってきた時、随分海と仲良さそうに喋ってましたね」

P「いや、仲が悪いとか思ってたわけじゃないですけどね。なんとなく、最近は奏やトライアドと一緒にいる印象が強かったので」

楓「そうですか? 海ちゃんとは結構仲が良いんですよ。仕事の事だけじゃなく、アクセサリの事とか、いろいろ話しますし」

P「あー、この間もそんなこと言ってましたっけ。あのアクセサリ屋さんにもよく行くとか」

楓「ええ。あ、そういえば海ちゃんがさっき言ってましたよ」

P「何をですか?」

楓「Pさんはキザだ、って」クスクス

P「えっ」

楓「このネックレスの事を聞かれたので、Pさんの事をぼかして教えたんです」

楓「そうしたら、名前に因んだものをプレゼントにするなんて、その男はキザだーって」

P「う、まいったなぁ……やっぱり女性の目にはそう映るものなんですかね」

楓「うーん、どうでしょう。確かに、そう取る人もいるかもしれませんね」

楓「でも、私はそういう所がPさんの良い所だと思いますよ」フフッ

P「……いやはや、なんか恥ずかしいですね」ポリポリ

楓「それに……――」

P「それに?」

楓「……いえ、何でもありません」ニコ

楓(海ちゃんが言ってたもう一つの事は……言えないわよね)


楓「Pさんが帰ってきた時と言えば、来客の方はどのようなご用だったんですか? 局の方が直接いらっしゃるのは、珍しいですけど」

P「ああ、あれは先日向こうの都合でトラブった事の謝罪です。そこまで大事じゃなかったのに、わざわざ来て下さって」

楓「まぁ……随分とご丁寧な方なんですね」

P「ええ、本当に。ところで、実はその○×テレビの方から、お詫びにと美味しい日本酒を頂きまして」

楓「」ピクッ

P「社長やちひろさんはあまり日本酒を飲まれないそうなので、僕が頂いてきちゃったんですけど」

楓「まぁ。それじゃあ……」

P「ええ、明日は僕も楓さんも朝早く行かなきゃいけない用事はないですし」

楓「今日は日本酒で一杯やるとしましょう♪」

P「ですね」グッ

楓「この間母が漬物を送ってきてくれたので、それをおつまみにしましょうか。茄子に胡瓜に人参に……いろいろありますよ」

P「お、いいですね。日本酒に漬物はイケるからなぁ」

楓「ふふ、母の漬物はとても美味しいですから。楽しみにしててください」

P「了解です……っと。ふぅ」

楓(やっぱりPさんは少しお疲れかしら……少し飲んだら、今日は、早めに切り上げた方がよさそうね)

/夜中・楓の部屋

P「ええ! そんなもんだから本当に、トライアドのライブは大成功でしたよ! ファンも大喜びでしたし! それに何より……」

楓「何より、凛ちゃんも加蓮ちゃんも奈緒ちゃんも、みんな楽しそうでしたもんね」フフ

楓(……Pさん、思ったより酔うの早いなぁ。まだ、いつもなら酔わないくらいの量なのに)チビチビ

P「ホントにそうなんですよ!! あいつらが楽しんでライブをやってくれたのが、何より嬉しいんです、僕は!」

楓「私も見てて、鳥肌が立ちっちゃいました。あんな風に楽しみながらファンと一体になって、沸かせるライブをしてみたいですね」

楓「そういう意味じゃ、あんなパフォーマンスが出来る凛ちゃん達にちょっとだけ嫉妬、です」

P「楓さんなら絶対にできます! それは僕が保証しますよ!!」

P「それにまだ企画の前段階ですけど、あれ以上の規模のライブを、って話だってあるんですから!」

楓「まぁ、そうなんですか? それは楽しみです」

楓「って、あの、Pさん」

P「はひ?」

楓(はひって)

楓「あの、そろそろ飲むのをやめた方が……今日は、大分酔ってらっしゃるみたいですし」

P「いえいえ! まだだいじょーぶですから! っとと……」パシャッ

楓「ああ、零しちゃって……ほら、今日はこれ以上は、めっ、ですよ。いいですか?」

P「うーん……楓さんに『めっ』されちゃ、仕方ないですね」

楓「そうして下さい。片づけの方は私がやっておきますから」

P「ああ、ありがとうございます」


楓「……立てますか?」

P「うーん、多分大丈夫でーす!」

楓「もう……今のPさんみたいな人は大抵大丈夫じゃありません。私、よく知ってますから」

楓「ほら、肩貸しますから、ね」

P「ありがとうございますかえでさん」

楓「お気になさらないで下さい。お隣さんの誼、です……よいしょ」

P「……楓さんって」

楓「はい?」

P「とっても細いのに、なんだか柔らかいんですねぇ」

楓「な、何言ってるんですか、もう」カァ

楓(もう……本当に酔ってるのね、Pさん)

楓(でもそういうPさんも、意外とかっちりしてて、男性らしいというか、なんというか)

楓(こんなに間近で触れたのは初めてだから、知らなかった)

楓(……)

楓(……正直、ちょっとドキドキする、かも)

/夜中・Pの部屋

楓「よいしょ……っと」ドサッ

P「ふー、ありがとうございます」

楓「シャワーとかは明日の朝にして、今日はゆっくり寝て下さいね」

P「はーい……」

楓「気持ち悪いとか、そういうのはないですか?」

P「あー、それは大丈夫です」

楓「それならよかったです。すいません、Pさん。呑むのに付き合わせちゃって」

P「いやいや、今回は呑もうって言ったの、僕ですし」

P「あ、お漬物美味しかったって、お母様にお礼を言っておいて下さいねー……あーすいませんだめだ、寝そう」

楓「ふふ、母には伝えておきます。それじゃ、お休みなさいPさん」

P「……おやすみなさーい」

バタン

/翌朝・楓の部屋

楓(朝起きて、とりあえずシャワーを浴びたり、事務所へ行く諸々の準備をした)

楓(昨日はお皿を流しに置くだけにしたから、それを洗って、ゴミも出した。なんてことはない、普通の朝)

楓(そして、ふと時計を見てみれば、いつもならそろそろ事務所に向けて出ている時間だった)

楓(一緒に出る時であれば、いつもはPさんがこちらの扉をノックしてくる……はず、なんだけれど)

楓「……Pさん、今日は遅いな」

楓(時間だし、私からノックしてもいい、わよね?)

トン トン トン

P『……はい』

楓(あれ? なんだか元気がないような……)ガチャ

P「おはようございます楓さん。あー、昨日はなんかすいませんでした、ホント」

楓「いいえ、私だって今まで色々と迷惑かけてしまってますし、お互い様ですよ」

楓「あの、それよりもそろそろ出る時間ですけど、どうしますか?」

P「あれ、もうそんな時間か……参ったなぁ」ポー

楓「……Pさん?」

P「ああいや、すいません、すぐ準備するので――」

楓「ちょっと動かないで下さいね」ピト

P「ちょ、楓さん、何を」

P(楓さんが、いきなりおでこを、僕のおでこに、っていうかまつ毛永いし顔が近い!)

楓「……やっぱり。Pさん、体温計持ってますか?」

P「え、いや、そういえば部屋燃えて以来、買い直してないですけど」

楓「今、部屋から持ってきますから、少し待っててくださいね」

P「は、はい」

ピピピッ

楓「熱、どうですか?」

P「……38度です」

楓「やっぱり風邪ですね。ひょっとして、昨日妙に酔うのが早かったのも」

P「ええ、多分昨日の夜から少し体調がおかしかったんでしょうね」

P「しかし、流石にこの熱じゃ事務所行くわけにもいかないか。いや、体調管理も出来ないなんて社会人失格ですね」ハハ

楓「いえ、その……私のせいかもしれません」シュン

P「え、なんでです?」

楓「昨日、なんとなくPさんお疲れかな、とは思ってたんです。いつもより溜息とか、ついてらっしゃいましたし」

楓「でも、早く切り上げれば大丈夫かなと思って、お酒呑んじゃいましたから……昨日、やめましょうって言えばよかったな、と」

P「いやいや、昨日も言いましたけど、呑みましょうって言ったのは僕ですし。そこは気にしないでください」

楓「でも……」

P「これは、自分の体調の悪さに気づかなかった僕の責任です。だから、楓さんが気に病まないでください。ね?」

楓「……わかりました。私はもう事務所に行きますけど、お医者さんに行ったら、ゆっくりしてて下さいね」

P「ええ、了解です。えーっと、とりあえずまずはちひろさんに連絡しないと……」

楓「それじゃ、行ってきます」

P「あ、はい。行ってらっしゃい」



楓「……」フム

楓「……よし」ピッ

/朝・CG事務所

楓「おはようございます」

ちひろ「おはようございます、楓さん。あの、プロデューサーなんですけど、今日は」

楓「病欠、ですよね?」

ちひろ「あら、ご存じなんですか?」

楓「ええ、連絡を頂きまして」

ちひろ「そうでしたか。そういうわけなので、すいませんけれど今日は仕事先は一人でお願いします」

ちひろ「私は、薫ちゃん達年少組についてくれって頼まれたので」

楓「わかりました。あ、でも事務の方はどうされるんですか?」

ちひろ「そっちは社長と、あと留美さんにつかさちゃんが手伝ってくれます」

楓「それなら頼もしいですね」

ちひろ「ええ。いざプロデューサーが欠けると、プロデュースに事務にこなしてたバイタリティの凄さを実感しますね……」

楓「はやく良くなるといいですね、プロデューサー」

ちひろ「重い症状じゃないといいんですけど……いつも元気な方ですから、ちょっと心配ですね」

ガチャ

加蓮「おはようございまーす」

奏「おはよう、ちひろさん」

ちひろ「あら、加蓮ちゃんに奏ちゃん。早速なんだけど、今日はプロデューサーが――」

ヴーッ ヴーッ

楓(あ、返信来たかしら)ピッ

海『おはよう楓さん。聞きたい事って何?』

楓『海ちゃんは、お料理は得意かしら』

海『んー、まあそれなり、かな? 両親が忙しいときは、弟達に作ったりしてたし』

海『何か作り方知りたい料理でもあるん?』

楓(よかった)ホッ

楓『そんなところです。実は、ちょっと教えてほしいことがあるの』

/昼・休憩中

タカガキサンキュウケイハイリマース

楓「ふぅ……」

楓「……」ピッ

楓『プロデューサー、体調はいかがですか?』

P『熱がまだ下がらないです。医者には、風邪の上に疲労が重なったせいだろうって言われました』

楓『とりあえず、重い病気とかじゃなくてよかったです』

P『僕もそう思います。お医者さんによれば、2、3日もすれば良くなるだろうってことでした』

楓『分かりました。今日ですけど、私は夕方には帰れると思うので、暖かくして寝ていて下さいね』

P『了解です』

楓『お大事に』ピッ

楓(……さて、帰りに買い物して帰らないとね)

/夕方・Pの部屋

P(……ん、もう日が傾いてる。昼に楓さんにLINE貰ってから、ずっと寝てたのか)

P(まだぼーっとするし、この感じじゃあんまり熱下がってないな)

カァ カァ

P(烏の声……寝込んだのなんて久しぶりだけど、こんなに寂しいものだっけ)

P(学生の頃は親がいて、社会人になってからは寝込むほどの風邪なんかひかないで)

P(ああ、そもそも本当に1人きりなのが随分久しぶりなのか。最近は、時間さえあればいつも楓さんが一緒だったし)

P(……)

P「……楓さん」






楓「あ、Pさん。起きたんですか?」




P「……は!? 楓さん!?」

楓「はい。貴方の育てたアイドル、高垣楓ですよ」ニコ

P「いやそれは加蓮の……というか、あの、いつお帰りに?」

楓「1時間位前でしょうか。仕事が、思ったよりも早く終わりましたから」

楓「あ、扉をノックするのが習慣でしたけど……今日はノックせずに入らせてもらっちゃいました。すいません」ペコリ

P「いや、それはいいんですけど、一体また、どうして……」

楓「どうしてって……Pさん、風邪ひいてらっしゃいますから。看病をしようと思ったんです。ほら、おでこ」

P「え? あ、これタオルですか」ヒンヤリ

楓「はい。帰ってきたら、少し辛そうに呻いてらしたので」

P「すいません、ありがとうございます……」

楓「気にしないでください。こういう時のためのお隣さんですから」

P「でも風邪がうつったら」

楓「うーん……昨日一緒に呑んだりした以上、今更気にしても仕方ないかなと思いますけど。同じお漬物に箸をつけてますし」

P「……それはまぁ、そうかもしれませんけど、でもアイドルに看病させるのは」

楓「もう……Pさん。私、引っ越すときにも言いましたよね? Pさんの為に私が出来る事、させて下さいって」

楓「今、こうやって寝込んでるPさんを見てるだけなんてできません。アイドルとしてだけじゃなく、隣の住人としても」

楓「ですから……ね?」

P「それを言われると、弱いですね」

P「…あの、それじゃお願いしても、いいですか?」

P(……楓さんがいて、嬉しかったのは事実だしな)

楓「ふふっ、任せてください。ところでPさん、ご飯は食べましたか?」

P「あ、いえ。まだですが」

楓「それじゃ、準備しますから。横になって、少し待っていて下さい。私の部屋で作ってきますので」

楓「あ、あとポカリ。ここ置いておきますから飲んでくださいね。汗、けっこうかいてるみたいですから」

P「何から何まで、すいません」

/暫し後・Pの部屋

楓「はい、お待たせしました」

P「お、これは……うどん、ですか? 随分細切れですけど」

楓「ええ。うどんを細かく切って、クタクタに煮込んだものです。風邪ひいてる人には、とてもいいらしいですよ」

楓「本当はお粥を作ろうと思ったんですけど、海ちゃんに作り方を聞いたら、料理に慣れてない人はこっちの方が簡単だから、と」

P「ああ、海に聞いて……ありがとうございます。それじゃ、いただきますね」

楓「どうぞ召し上がれ」

P「……ああ、なんだか温まるなぁ。優しい味で、体に染みるみたいです」

楓「よかった」ホッ

P「いやぁ、ほんと美味しいです。おかわりしたいくらいです」

楓「そう言ってもらえて嬉しいですけど、今日は朝から何も食べてないんですからゆっくり食べて下さいね」

楓「うどんは、どーんと構えて逃げませんから」フフッ

P「ははは、すいません」

楓「何だか食べてる時のPさんって、少し子供っぽいですね」

P「えっ、そうですか?」

楓「ええ。ちょっとかわいいです」

P「か、かわいいって。もう、からかうのはやめてください」

楓「はぁい」



楓(うどん、Pさんに喜んでもらえたみたいで、よかった)

楓(こうやって作ったものを喜んで食べてもらえるのは、嬉しいかも……)

楓(もうちょっと、お料理勉強しようかな)

/夜・Pの部屋

楓「まだ早い時間ですけど……今日は仕事しないで、ゆっくり寝て下さいね。まだ、熱が下がりきってないんですから」

P「ええ、わかりました。うどんとか看病とか、本当にありがとうございます」

楓「治るまで、きっちり看病してあげますからね。あ、寝る前に体を拭くのは忘れないで下さいね」

P「はい」

楓「……なんだったら、拭いてあげましょうか?」

P「さすがにそれはまずいですから」

楓「ふふっ」

P「まったく……それじゃ楓さん。おやすみなさい」

楓「はい。おやすみなさい。お大事に、です」

バタン

P(風邪をひいて寝込んで、熱も下がらなくて。良い事なんて無い筈なのに……)

P(楓さんに、こうして看病してもらって、嬉しいと思ってしまってる自分が居る)

P(なんというか、隣に住んでる時点で大分今更ではあるけど……プロデューサー失格かもしれない、な……)ウトウト


―――――

―――

/3日後朝・CG事務所

P「ちひろさん、ご迷惑をおかけしました。今日から復帰です」

ちひろ「元気になられてよかったです! 事務を手伝ってくれた留美さんとつかさちゃんに、後でお礼言っておいてくださいね」

P「勿論です。今度、時間あるときに晩御飯でもおごるとしますか」

楓「あのー、居酒屋に行くなら、私もご一緒したいなー、なんて……」

楓「私、ここしばらく呑んでませんから」

P「いやいや、つかさがいるんですから行きませんよ……」

楓「残念」シュン

ちひろ「あら、楓さんが呑んでないなんて珍しいですね」

楓「私だっていっつも飲んでるわけじゃありませんよ? でも、ここしばらくは色々あったので」

ちひろ「そうなんですか?」

楓「ええ。プロデューサーが心配で心配で、お酒が喉を通らなかったり……」

P「何言ってるんですか」

楓「ふふ。でも、心配してたのは本当ですよ?」

P「わかってますって」

ガチャ

加蓮「おはようございまー……って、Pさん! 元気になったんだ!」

海「お、ホントだ。思ったより長引いたけど、良くなってよかったね!」

P「2人とも、迷惑かけて悪かったな。今日からまた頑張っていくから」

加蓮「Pさん、寝込むほどだったんでしょ? 寂しくなかった? ご飯はちゃんと食べた?」

P(昔の自分と少し重ねてるのかな)

P「ああ、寝込んだのなんて久しぶりだったけど、なんだか妙に寂しかったな。だから皆から連絡貰ったりして、嬉しかったよ」

P「ご飯の方もちゃんと食べてたから心配しないで大丈夫。っても、『ご飯』じゃなくて『うどん』だが」ハハ

加蓮「ん、そっか。風邪はぶり返しが怖いから、気を付けてね」

P「おう、ありがとさん」

海(Pさん、今うどんって言ったよね)

海(ちょっと調子が悪いから体に消化しやすいものを食べたいって言ってたけど、楓さんが聞いてきたのって、もしかして……?)チラ

楓「♪」

海(……いやまさか、ねぇ)

ちひろ「さ、プロデューサー。そろそろ始業時間ですよ! 加蓮ちゃんと海ちゃんも、レッスンあるから急いでくださいねー」

加蓮「はーい。さ、行こ、海」

海「あ、うん。それじゃあね、Pさん! 病み上がりなんだから、体気を付けなよっ!」

P「おう、行ってこい!」

楓「それじゃあ私も、奏ちゃんが来るまで台本の確認してますね」

P「了解です。何だったら会議室使いますか? 奏が来たら声かけるんで」

楓「あ、それじゃあお言葉に甘えて使わせていただきますね」ガチャ

ちひろ「そういえば、楓さん今日のお仕事はお昼からでしたね」

P「あー、そうですね」

ちひろ「にしては、来るの早いですけど……」

P「まぁ、そういうこともあるんじゃないですか?」

P(一緒に出てきたから、とは言えるわけないよなぁ)

ちひろ「そんなものでしょうかねぇ? さ、仕事始めましょうか」

P「了解です。えーっと、ライブの企画はと……」

/夜・マンションへの道中

P「本当にこの3日間、ありがとうございました」

楓「Pさんが元気になってよかったです」ニコ

P「本当に、仕事以外は色々炊事に洗濯に、いろいろやってもらっちゃって……申し訳ない限りですよ」

楓「それが、『Pさんの為に私が出来る事』でしたから。それに……」

P「お隣さんのよしみ、ですか?」

楓「ええ」

P「でも、流石に何かお礼をしないと」

楓「それは、日々十分していただいてるようなものですから。先日、このネックレスも頂きましたし」

P「うーん、そうは言ってもなぁ」

楓「そんな事より、です。病み上がりですけど、お仕事はどうでしたか?」

P「あー、一応問題はないですけど、まだちょっと本調子じゃない感じですね。なんとなく違和感があるというか」

P「しかしまぁ、アイドルの皆には随分心配してもらってたみたいで。ありがたい話ですよ」

楓「……かわいい女の子達に心配されてハーレム気分、ですか?」

P「え、いや、そんなつもりじゃ」

楓「ふんっ、どうだか」ツーン

P「え、ちょ、楓さん」

楓「……ふふ。冗談ですよ。それだけ、皆Pさんのことを信頼して、親身に思ってるんですよ」

P「信頼に応えるためにも、もう風邪はひかないようにしないといけませんね」ハハ

P(眼が半分本気だった気がする……)

楓(……ちょっと本気が入っちゃったかも)

P「ところで、今日はどうします? 呑みますか? さすがに僕はあまり呑まないとは思いますが」

楓「いえ。ここでぶり返したら大変ですし、やめておきましょう。しっかり治って時間的にも余裕があるときに、改めて」

P「気使ってもらっちゃってすいません」

楓「いいえ。何よりもPさんの体が第一ですから」

P「ありがとうございます。あ、そうだ。呑まないなら、偶にはカフェにで寄りますか。晩飯も兼ねて」

楓「あ、いいですね。あそこのカフェ、カレーがとっても美味しいんですよ。マスターのこだわりで」

P「そうなんですか? じゃあそれにしようかなぁ」

楓(……まだ本調子ではないそうだけど、すっかり元気そうね。本当に良かった)

楓(私の看病も、少しは意味があった……かな)

楓(……)

楓「あの、Pさん」

P「はい?」

楓「さっき言ってたお礼。やっぱり一つお願いがあるんですけど、いいですか?」

P「おお、勿論。僕に出来ることなら何でも言って下さい」

楓「もし今度、私が風邪をひいた時。その時は、看病してください」

P「え? そんなことですか」

楓「そんなことって、酷いと思います」プクー

P(かわいい)

P「いや、すいません。まあ風邪なんかひかないに越したことはないですけど……その時は、しっかり看病させてもらいますよ」

楓「……体も拭いてくれますか?」

P「流石にからかってるの、バレバレですから」

楓「ふふっ、ざーんねん」

楓(Pさんのアパートの火事から始まった、少し奇妙な隣人生活)

楓(この生活が始まって、はや数ヶ月)

楓(今まで以上に距離が近づいていたのは何となく感じていたけれど)

楓(今回の一件で、より近くなったような……そんな気がする)


楓「あ、ねぇPさん。ご飯の帰り、あのアクセサリ屋さんに寄ってもいいですか?」

P「ええ、いいですけど、またどうして」

楓「ふふ、実は――」

おしり、じゃない、おわりです。

というわけで、P、風邪をひく編でした。同居生活のお約束だと思うので、やっぱり入れてみました。
看護中のイチャコラとかポロリもあるよ!とか考えていたけど、流石に冗長になりかねないのでカット。機会があればどっかで書くかもしれません。
次は、また余裕が出来たら書いてみようと思います。

では、依頼出してきます。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年01月08日 (金) 06:14:31   ID: yB-0e5WW

やーよかった
このシリーズほんと好き

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