ベンヤミン「出エジプトするぜ!」 (9)
~アラビア半島のどこか~
男「キボンヌ」
女「ワロタ」
男「流れ壊すな」
女「ごめんなさい」
男「いや、いいんだ」
男「君が謝ってくれれば」
男「僕はバンバンジーなのさ」
女「え……? ばんばん……?」
男「あいや、万々歳ってことさ」
女「うふふ、あなたって面白いね」
男「なら友達になっておくれよ」
女「えっ? でも私、純情な女の子だし……」
女「いいのかな?」
男「君が何者だろうが構わない。僕は君と仲良くなりたい」
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女「なら、いいよ。友達になったげる」
男「うっし!」
ラオス「僕はラオスと云ふんだ。現在無職」
ラケル「私はラケル。近くの荒野で羊の放牧をしてるの」
ラオス「ところで、僕ら名前が結構似てるよね。ラオスとラケル」
ラオス「国を創るにはもってこいだと思うのよね」
ラケル「ふぅん、面白そうね」
ラオス「では子作りしよう」
ラケル「ちょ、ちょっと待って!」
ラオス「どしたの」
ラケル「私とあなた、友達関係でしょ!?」
ラオス「うん、友達」
ラケル「どうして恋人でもないのに、子作りなんかしようとするの!?」
ラオス「君と僕だけで国が維持できると思うかい? 子孫を繁栄させねば、僕ら二人の計画は早くも頓挫するよ?」
ラケル「た、確かに……」
ラオス「あははははははは」
ラケル「うふふふふふふふ」
こうして子作りが完了した
赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ」
ラケル「元気な男の子だよ……」
ラオス「この子の名前はベンヤミンだ。今さっき思いついた」
ラオス「ベンヤミン、しっかり育つんだよ。世界の命運は君の手にあるのだから」
ベンヤミン「うん! 父ちゃん!」
ラオス「わ、いつの間に育っとる!?」
ラオス「かぐや姫かっての」
ラケル「凄いわねブグフォ!!」ブシャア
ラオス「ラケルーーーッ!!!!」
ラケル「じ、持病のヘルニアが……おげえぇ……」
ラケル「世界はあなたとベンヤミンに託すわ。きっとイイ女を捕まえるのよ……」
ラオス「待て! 逝くな!」
ラケル「」
ラオス「ああああああああああ!!!」
ベンヤミン「父ちゃん」
ラオス「よく聞け! 母さんは死んだ!」
ラオス「辛いだろうが、耐えてくれ!」
ベンヤミン「……大丈夫だよ」
ベンヤミン「母ちゃんの分まで僕、頑張って生きるよ」
ベンヤミン「生きて生きて、きっと究極男子になってやる!」
ラオス「よし!」
ラオス「それでいいんだベンヤミン!」
ラオス「父さんは信じているぞ!」
ベンヤミン「うん! ありがとう!」
ラオス「ではまず、ここから西のエジプトに行きたまえ!」
ベンヤミン「エジプト? あのスフィンクスのあるエジプトに?」
ラオス「そうだ! エジプトのギザに行き、仕事を貰うのだ!」
ベンヤミン「どうして?」
ラオス「大事を成すには、小さなことからコツコツと。努力は必ず報われる。まずは労働して生活費を稼ぐのだ!」
ベンヤミン「イエッサー!」
ラオス「うむ、なら行けィ! 二度とここに戻ってくるな! いいか!? 二度とだぞ!」
ベンヤミン「は〜い!」
ラオス「見ているかい、ラケル」
ラオス「僕達の子が、早くも巣から旅立とうとしているよ」
ラオス「ベンヤミンの行く道を」
ラオス「ずっと明るく照らし出してね」
第1章【ラオスとラケルとベンヤミン】・完
〜20年後・エジプトのギザ〜
ラオスの息子・ベンヤミンはエジプト軍に捕まり奴隷として過酷な日々を過ごしていた。
ベンヤミン「くそぅ」
ベンヤミン「どこで道を誤ったんだ、俺は」
ベンヤミン「イスラエル人でさえなければ」
ベンヤミン「エジプトの貴族の子として、生まれてさえいれば」
ベンヤミン「こんな酷い、腐った痰壺の中にいるみてぇな生活せずに済んだのに!」
ベンヤミン「憎むぞ親父、恨むぞババア」
ベンヤミン「ただ、ここにゃイスラエル人が監督をやってるとの噂だ」
ベンヤミン「モーセ……イスラエル人のくせに、俺らをこきつかうイケてない野郎」
ベンヤミン「本人はエジプト気取ってんだろうが、臭うんだよな」
ベンヤミン「イスラエル臭ってヤツ?」
ベンヤミン「ア〜〜岩が重てェよォ!」
現場監督A「岩を下ろすな! 運べ!」
ベンヤミン「うるせぇな、俺はクッソ重たい岩を運んでんだよ。簡単にいかねぇこたァ、一目瞭然だろが」
ベンヤミン「逆らうな?」
ベンヤミン「るっせェ逆らってねーよ、俺は現在進行形で岩をはこ」
ヒュン
ベンヤミン「ぶへぇ!」
ベンヤミン「いきなり鞭を振るうなって、分かった分かった」
ベンヤミン「すみませんすみません」
ベンヤミン「あんだって? 謝る暇あるなら、一つでも多く岩を運べだァ?」
ベンヤミン「黙れやゴルぶへぇ!」
ベンヤミン「マヂ最悪」グスン
ベンヤミン「負けるな俺」
ベンヤミン「今にこんな劣悪な環境」
ベンヤミン「パパッと抜け出してやんよ!」
〜夜〜
ベンヤミン「あ〜痛ェ」
ベンヤミン「昼間の鞭が効いてるぜ」
ベンヤミン「ババアに会いてぇよくそぉ」
モーセ「おい、奴隷」
ベンヤミン「あ? なんだこのヒゲ面」
モーセ「貴様がベンヤミンか」
ベンヤミン「そうだよ、役人さん。ラオスの息子・ベンヤミンだよ。なんか文句あっか」
モーセ「私はモーセだ」
ベンヤミン「なに!?」
ベンヤミン「イスラエル人のモーセか!?」
モーセ「シッ、声が大きい」
モーセ「いいかベンヤミン」
モーセ「私はイスラエルの民を救いに来た」
ベンヤミン「救う!? お前がか!?」
モーセ「……私がイスラエル人。そんなもの、ただの馬鹿げた噂と思っていた」
モーセ「しかし、聞いてしまったのだ」
モーセ「これまで乳母として見ていたイスラエルの婦人が、私の実母であることを」
ベンヤミン「誰が言ったんだよ」
モーセ「私の養母……川で私を拾ったファラオのお妃様よ」
モーセ「たちまちファラオの耳にも入った。そしてちょうどその頃エジプト人の同僚をブチのめしていた私は、追放されたのだ」
ベンヤミン「どうりで最近、姿を見なかったわけね〜。納得納得」
モーセ「私は追放された地にて、主に出会った」
ベンヤミン「主?」
ベンヤミン「ラオスのことかい?」
モーセ「誰だそれは」
ベンヤミン「俺の親父さ」
モーセ「貴様の親父なぞ知らん」
ベンヤミン「じゃあなんだよ! 一体!」
モーセ「『私はある』という名前だと仰られていた」
ベンヤミン「私は……あるゥ!?」
ベンヤミン「意味不すぎて草も生えんわ」
ベンヤミン「ちょっとモーセさん、煉瓦に頭でもぶつけたんですか?」
ベンヤミン「場合によっちゃ、ブチッとのめすよ?」
モーセ「待てベンヤミン、早まるな」
モーセ「話術が堪能でないこの私が、勇気を振り絞り同胞へ話しているのだ」
ベンヤミン「で、誰なんすか」
モーセ「神……だな」
ベンヤミン「神?」
モーセ「全てを超越した存在のことだ」
モーセ「主が私に言った」
モーセ「イスラエルの民を救えと」
ベンヤミン「おいおいモーセさんよ」
ベンヤミン「話がぶっ飛んでて訳が分からねぇが、要はエジプトを潰すんだろ?」
モーセ「そうだ」
ベンヤミン「でもよ、少し調子が良すぎるんじゃねーの」
ベンヤミン「今まで散々贅沢の限りを尽くしといてさ。恩を仇で返すようなモンだろ」
モーセ「あの時はまだ私は未熟だった」
モーセ「だってそうだろう、幼い頃からエジプトにいたのだ。奴隷であるイスラエル人が同胞であるとは、まさか思うわけがない」
モーセ「だが」
モーセ「今は違う。追放されて、主に会って、貴様と話して、ようやく理解した」
モーセ「これは、私の『けじめ』だ。主の民になるための、大切な試練なのだよ」
ベンヤミン「なるほど……お前もお前なりに思うところがあるのね」
ベンヤミン「ならラオスの息子・ベンヤミンも協力しないわけにゃいかねぇな!」
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