女「怖い話をしようよ!」(57)

男「は?」

女「怖い話」

男「・・・」

女「夏だしさ」

男「しねえよ」

女「え!? なんで!? 夏なんだよ!?」

男「いや、夏だろうが冬だろうが、怖い話はしねえよ」

女「怖がりなの?」

男「・・・」

女「夏なんだよ?」

男「うるせえよ、なんなんだお前、何回夏アピールするつもりだこの野郎」

女「だってー」

男「脳内でやれ」

女「脳内?」

男「お前の脳内でお前が怖い話をして、お前の脳内でお前が怖がって、お前の脳内でお前が死ぬ」

女「なによそれ! そんなの全然おもしろくないし! ていうか最後! 最後おかしいから!」

男「うるせえな、大声出すなよ」

女「・・・」

男「・・・」

女「ねえ」

男「・・・」

女「ねえねえねえ、ねーえ!」

男「ああああ! あんだようっせえな!」

女「つまんない!」

男「知るかぼけ」

女「つまんないつまんないつまんなーい!!!」

男「・・・解った解った、いいこと教えてやるよ」

女「え?」

男「爪あるだろ、爪」

女「つめ? うん」ワクワク

豆腐好きなの?

男「自分の爪によ、指かけて」

女「うんうん」ワクワク

男「こう、ベリッと剥がしたらよ・・・」

女「いやいやいや!!!」

男「つまんなくなくなるぜ」

女「それはつまんなくなくなるっていうか、それどころじゃなくなるだけじゃん!」

男「うるせえな、じゃあお前、ボールペン持ってるか?」

女「え? うん、このカバンの中に・・・」ゴソゴソ

男「それで目ん玉をブスッと・・・」

女「だから!」

男「ああ?」

女「なんかもっとこう・・・痛くないのでお願いします」

男「うるせえな・・・自分で考えろよ。自分で処理しろ」

女「そっか・・・。じゃあ、歌います」

男「はあ!?」

>>5
好きでも嫌いでもないです。

女「ぬーすんだバーイクとガリガリくんとTシャツとわーたーしー」

男「・・・」

女「アブラゼミのよーなー断末魔ー」

男「・・・」

女「断末魔ーわたしの断末魔ー」

男「・・・」

女「あとガリガリくんとTシャツとわたーしー」

男「・・・」

女「を全部ひいていった盗まれたバーイクー」

男「・・・」

女「Tシャツ着てガリガリくん食べーてたらーバイクにひかれた私のだんまつ・・・」

男「おい!」

女「ん?

男「なんだその歌は」

女「私が作った曲! 『怨念』っていうタイトル」

男「違う歌にしろ・・・」

女「えー」

男「ていうか歌うな。静かにしててくれ」

女「えーなんで!?」

男「なんでって、だからよ・・・あー! いらいらする!」

女「どうしたの? 大丈夫?」

男「てめーのせいだよ!」

女「なーんだ、私のせいだったのか。私のバカバカ☆反省☆」キャピッ

男「殺す」

女「やーめーてーくーだーさーいー」

男「なにビブラートさせてんだよ! 本当に殺すぞ! あああああ! むかつく! 大体なんなんだよ今日は! 最悪な日じゃねえか! 財布は落とすし仕事はとちるしよ!」

女「最低なあとには最高が来るさっ(☆v☆)」

男「あげくの果てにゃ、こんな訳のわからねえやつとこんなとこに閉じ込められてよ! おらー! いつまでこんなとこに閉じ込めとくつもりなんだよ! いつ動くんだよこのエレベーターはよ!」ガンガン!

女「まあまあ、短気は損気よ」

男「ていうかてめー馴れ馴れしいんだよ! 初対面だろうがよ!」

女「あ、そっか、自己紹介してなかったね。女と申します」

男「聞いてねえんだよそんなことはよー!」

女「名前は大事よ」

男「うるせえええ!」

女「歌います」

男「歌うなああああ!」

女「あいたーくてーあいたーくてー震えたーからーどうなるー」

男「うるせえええええええ!」

女「まあまあ、こういうのも一期一会。袖触れ合うも多生の縁。出会いを楽しみましょうよ」

男「出せえええ! 俺をここから出せえええ!」

女「騒がしい人だなあ」

男「出せっつってんだろうがこらあああ!」ガンガンガン!

女「うわー、超扉蹴ってるー。うるせー」

ガクン!

男「うお!」

女「おお?」

ムーン・・・・

女「動き始めたね」

男「やっとだよ・・・」

女「そういえば私、トイレ行きたかったのだった。助かった」

男「くそっ、このエレベーターの管理会社、クレームつけまくってやる」

ムーン・・・・ピタ

女「トイレ、トイレ、ん?」

男「一階についたな」

女「いや、あの・・・」

男「あん?」

女「階の表示盤が・・・」

男「表示盤がなんだってんだよ」チラッ



男「・・・は?」


Nobody knows

男「ノーバディ、ノウズ? なんだこりゃ、故障か?」

ウィーン

女「あ、開いた」

男「よし・・・って、うわああああ!」

女「!」

男「な、な、な、な、なんだこれ! ど、どこだよここは!」

女「うわあ・・・。草原だあ・・・」

エレベーターを抜けると、そこは草原だった。夜の底が白くなった。

男「・・・って、そんなバカな話があるかあ! どうなってんだよ! なんでエレベーターから出たら・・・あれ?」

女「ん?」

男「お、おい。・・・俺らが出てきた扉はどこいった?」

女「え? 扉ならそこに・・・あれ?」

男「嘘だろ・・・」

女「なくなっちゃった・・・」

肉塊「ようこそ『誰も知らない世界』に」

男「・・・」

女「・・・」

男「うおおおお!! なんじゃこれええ!?」

肉塊「しかしあなた方がここにいらっしゃり、この世界を知ってしまった時点で、この世界は矛盾をはらむことになりました」

男「え? え? え? なにこれ。え? これが喋ってんの? え? だってこれ、肉の・・・え?」

女「そうなんですか、よろしく。私は女です。ちなみに今の一番の夢はトイレに行くことです」

肉塊「しかし全て世界は矛盾と不条理を食べて成長するものですのでご心配なく」

女「そういう心配はあれですけど、膀胱の許容量的なあれが心配です」

肉塊「しかし何が起こるかは解りませんし、解ってはいけないのです。だからこそこの世界は世界であり続けるのです」

女「ええいもう単刀を直入しますけどトイレ貸してください」

男「お前なに普通に会話してんだよ!」

女「え?」

男「いやまあ今のが会話になってたかどうかは微妙なとこだけどよ、お前これどう見ても人外のものじゃねえか! ていうかこれ肉の・・・え? まじでなに? これ」

おっさん「俺だー!」

男「・・・」

女「・・・」

肉塊「・・・」

おっさん「・・・」

男「誰だー!!」ガーン!

おっさん「俺だー!」

男「いやだから誰だよ!」

女「お父さん!」

男「はあああ!?」

おっさん「違うよー!」

女「あ、そうなんですか、失礼しました」

男「違うのかよ! なんなんだよお前ら!」

おっさん「俺は俺だよー! お前の父親ではないよー! でもお前の父親に似てるのは俺だよー!」

男「あああ・・・もう訳わかんねえ・・・頭いてえ」

女「うん、あなた、私のお父さんに似てる。そっくり」

おっさん「そうだよー! 俺はお前の父親に似ているのだよー」

女「うん、本当にそっくり」

おっさん「お前が来たからだよー! お前が来たから俺はお前の父親に似ているのだよー! そして俺は知ってるんだよーお前トイレにいきたいんだろーがよー」

女「え? う、うん」

おっさん「こいつに小便ひっかけるんだー!」

女「え? こいつって」

肉塊「・・・」

女「いや無理でしょ!」

男「(そこはまともなのか)」

おっさん「そうだよー! それは無理だろうが! ってお前が思うだろうことを俺は実は知っていたのだ」

女「・・・は?」イラッ

おっさん「トイレってあれだろーがよー!」

女「え? うわっ」

男「い、いつのまに公衆便所が」

おっさん「いってらっしゃい」

女「え? あ、はい、行ってきます!」バビュン!!!

男「(おお・・・ダッシュだ)」

おっさん「・・・」

男「あ、え、ええと・・・」

飲みにいってきます。


オモシロイデスカこれ?

あ、トリップつけときます。
携帯の方が楽でいいや。

おっさん「…」

男「聞いていいかな。ここって、なんなの?」

おっさん「…」

男「お、おい」

おっさん「…」

男「おいって!」

おっさん「…」

男「シカトしてんじゃねーよ!」

少女「それは誰にも解らないの」

男「うわあああ!また増えた!どっから沸いて出てくんだよ、どいつもこいつも…え?」

男「…え。お前って…え?」

少女「違うよ」

男「…ええと…?」

少女「私はあなたの知っている人に似ているけれど、その人ではないの」

男「…」

おっさん「そうだよー!」

男「うわなんだお前、いきなり喋ってんじゃねえよ!」

おっさん「お前が来たからこいつはこいつの姿なんだよー!でもこいつはこいつなんだよー!」

男「ちょっと待て、ちょっと待て。考えさせてくれ。とりあえずお前ちょっと黙れ」

おっさん「いいよー」

男「お前は、俺の知ってるあいつじゃない?」

少女「うん」

男「そうか…うん、まあ、そこはどうでもいいわ。ええとさ、なんていうかさ、…どうなってんの、これ。ここ、どこなの?」

少女「だから、それは誰も解らない。知らないの。誰も知らない世界なの」

肉塊「しかしあなた方がここにいらっしゃった時点でこの世界は矛盾をはらむことになりました」

男「おい、うっせーぞ肉、黙ってろ。出荷するぞこの野郎」

肉塊「…」

男「まあ、まあ、まあ、そこもどうでもいいや。訳わかんねえけど、別に理解したいわけじゃねえし。ええとさ、どうやったら帰れんの?」

少女「…」

男「…」

少女「…」

男「え、何その沈黙」

少女「もう一度言うね。誰も知らないの」

男「…うん、いや、うん、…え?」

少女「誰も知らないの」

男「…」

女「いやー危なかった。コンマの世界だった。私はコンマの世界で戦う女であったよ」スタスタスタ

男「はあああああああああああああああ!!!!??」

女「うお!!」ビクッ

男「なんだそれなんだそれなんだそれ!!じゃあなんだよ、俺らはどうなるんだよ!」

肉塊「どうなるこうなるああなる。そういった概念がこの世界にはないのです」

男「はあ!?」

肉塊「あるがままに委ねる。世界はあなたの味方でもあり敵でもあり、全ての支配者でもあります。予測は世界を支配することを意味します。すると世界は裏返ります。それは世界を歪めることなのです。歪んだ世界は複雑な憎しみ、複雑な争い、複雑な悲しみを生みます」

男「…」

女「(これ、どこから声出してんだろう)」

男「なに言ってんのか全然わかんねえよ」

少女「つまり、この世界では予測は許されないの。だからあなたたちがどうなるかも解らない」

肉塊「しかしあなた方は、予測を良しとする世界からやってきた。あなた方がいらっしゃったことにより、この世界は矛盾をはらんだ。この世界は変わろうとしています。変わろうとしています、などと私が予測しているのがその証拠です」

女「(うわああ…なんだこれ、見れば見るほど気持ち悪いなあ)」ゴクリ

少女「とにかく行きましょう」

男「え?は?どこに?」

少女「さあ。でも、動くことが大事です」

肉塊「ここは誰も知らない世界。しかし私たちはあなたに知られ、存在を得ました。しかしそれも矛盾。存在する、という絶対が、知られる、という主観に内包されるわけはないのです。しかし私たちはあなた方がいらっしゃったことによって存在を得ました。矛盾。矛盾。矛盾。しかし世界はその矛盾すら内包して膨らむのです」

女「とう!」ゲシッ

肉塊「あふん」

男「蹴ったー!」

女「うわああ柔らかあい生温かあい気持ちわるうい」ゾゾゾ

男「なにやってんのお前」

おっさん「おまえらー!」

男「は?」

おっさん「おまえら自己紹介をしあいなさいということを俺は言いたいのだー」

男「自己紹介?」

女「あ、そうだよ、私、あなたの名前、まだ聞いてない」

男「…必要ねえだろ別に」

おっさん「何故ならばおまえらの中でおまえらの存在をより明確にするためだー!」

男「なんなんだよお前らさっきから存在がどうこうとか訳わかんねえよ」

女「女です」

男「は?」

女「女です。よろしく。20歳です。割と可愛いと言われる機会が多いですが、それはあくまでペット的な可愛さであるなとちゃんと自覚しておりますちくしょう告白とかされてえ!」

男「…」

女「女です」

男「解ったって」

女「女です!よろしく!」

男「解ったって!男だ。よろしく」

女「おお。男くん。よろしく」

おっさん「俺だー!」

男「うっせー!」

女「ていうかそのキャラどうにかなんないの?お父さんの顔でそういう感じなの、見ててすごい不愉快なんだけど」

おっさん「俺は俺なだけだよー!」

女「まあいいけど。ていうかここ何なの?」

男「わかんねえんだとよ」

女「え?」

少女「そう。ここは『誰も知らない世界』だから、何故あなたたちがここにいるのか、誰も知らないの」

女「…?」

男「いや、なんつうんだ、じゃあさ、お前らは何なの?何者なんだよ」

少女「それも知らない」

男「…や、もうさ、そんなのあり得ねえだろ。自分自身が何なのかも知らねえって意味わかんねえよ」

肉塊「自分自身が何なのか。それはとても興味深い命題です。それを興味深く思える私も興味深い」

男「なあ、もうこの肉、どっかに捨ててきていいか?」

少女「ごめんなさいね。私たちも混乱しているの。今までは私たちが何者か、なんて考える必要がなかったの。でも、今は、それをあなたたちに伝える必要がある。何故ならば、あなたたちは『知る』という特権をあらかじめ与えられている人たちだし、そういうあなたたちがここに存在しているということは、『知らせる』ということに意味が出来たってことだから。そして私たちには意欲が生じてしまったの」

男「…だめだ」

女「ん?」

男「こいつだけは話が解る奴だと思ってたのに、結局、訳わかんねえことばっか言ってきやがる」

少女「…」

女「…自分のことが、誰だか解らないの?」

少女「え?」

女「私、馬鹿だから勘違いしてるかも知れないんだけど、だったらごめんね、私はね、よく解んないけど、あなたの話を聞いてたら、あなたたちは自分が何なのか解ってないってことなのかなって思ったんだけど」

少女「解る…解らない…どちらでもないし、どちらでもある」

男「もういいわ」

女「…え?何が?」

男「あのさ、お前らの訳解らねえ話を聞いてる暇、ねえんだよ。解る?俺は帰りたいわけ。な?で、なんだ、お前らじゃ、わかんねえんだろ?俺がどうやって帰ったらいいのかよ」

少女「…ええ」

男「連れてこいよ」

少女「…?」

男「いいから連れてこいよ。解る奴を連れてこいっつってんだよ!」

少女「そんなの、いない」

男「いないじゃねーんだよ!どうすんだよ、じゃあ!え?俺はどうなるんだよこら!」

少女「ごめんなさい」

男「謝ってんじゃねえよ、謝られてもなんにもなんねえんだよ、いいから帰せよ!俺を帰せっつってんだよ!」


少女「ごめんなさい…」


男「…!」

女「どしたん?」

男「…」

女「おーい」

男「…いや…、なんでもない…」

女「そう?でも困ったなあ、私も帰りたいし」

ドンドコドンドコ

女「ほ?」

ドンドコドンドコ

男「な、なんの音だ?」



ドンドコドンドコ

女「な、なんか、近付いてきてない?」

ドンドコドンドコ

男「なんだよ、なんなんだよ!」ブルブル

ドンドコドンドコドンドコドンドコドンドコドンドコドンドコドンドコドンドコドンドコドンドコドンドコ…!

男「…と、止まった」

女「??」キョロキョロ

男「な、なんだったんだ?」

女「う、う、う、う、う」

男「な、なんだよ、どした」

女「う、う、上」

男「うえ?」チラ

餃子「……」フワフワ

男「……」

女「……」

男「……」

女「餃子が、浮いてるね」

男「……」

女「濡れそぼっているよ。あれはきっと水餃子」ゴクリ

餃子「お前らどうやってここに来た」

男「!」

女「あれも喋るんだ……」

餃子「どうやってここにきたかと聞いている」

男「解った。これは夢だ」

女「エレベーターに乗ってたらここに着きました」

餃子「エレベーター?」

男「ちゅうことはあれだな、これって明晰夢」

女「来たいと思って来たわけじゃなくて、気付いたらここにいたんです」

餃子「望みもしないものを世界は受け入れない」

男「明晰夢かー。初めてだなー」

女「……」

餃子「何を望んだ。何を望む」

女「…?」

男「よく解んねえな…俺は別に何も望んでねえよ。帰りたい。それだけだ」

餃子「そうか。了解した。お前たちは正しい手順でここに来たわけではないのだな」

女「正しい手順?」

男「おいおい、話を広げるな。訳の解らねえ話はもうたくさんだ。どうやったら帰れるのか。それだけ教えろよ」

女「(この人超偉そうで感じ悪いな…)」

餃子「とにかくお前たちはこの世界を滅ぼしうる」

男「…は?」

肉塊「予測」

女「うわ! 急に喋んないでよ!」ビクーン

餃子「その通りだ。予測がこの世界に紛れ込んだ。お前たちもすでに以前の存在とはかけ離れてしまった」

少女「…」コクン

女「え? え? 何の話?」ヒソヒソ

男「知るかよ俺に聞くな」ヒソヒソ

餃子「かくいう私も、もはや変わってしまっているな。解らないな。どうすればいいのか」

おっさん「保守と改革にわかれるんじゃねーのかと思うんだがよー!」

餃子「そうだな。その二人の存在…というより、その存在が及ぼす影響を良しとしないものもいるだろう」

少女「でも彼らは何も出来ない」

餃子「その通りだ」

男「おいこら!」

女「わあ!」ドキーン

男「さっきから訳の解らねえ話ばっかしやがって! 説明しろや!」

女「いきなり大きな声出さないでよー」

少女「私が説明します。
ここは、『誰も知らない世界』…。現実世界で全てを捨てた魂の行き着く先。
何かを知りたい。何かを考えたい。その全てを放棄した、哀れな魂の拠り所」

女「…ってことは、あなたも?」

少女「そう。私たちは自らの容貌を止める必要がない。誰の意識にもひっかかることはないし、誰と比較されることもない。だから、今の私たちがこのような容貌をしているのは、この世界の住人ではない、あなたたちの影響なの」

男「…」

少女「そして、あなたたちの影響はそれだけに止まらない。あなたたちはこの世界にないものを沢山持ち込んでしまった。考えるということ。知りたいと思うこと。あなたたちに出会ってしまった私たちは、その毒に侵され、狂い始めてしまっている」

女「…」

少女「誤解しないでね、恨んでいるというわけじゃないわ」

餃子「もちろん。恨み、という概念もこの世界には有り得ない」

肉塊「そう、この世界には何もない。あるのは私たちの存在それだけ。永久に続く、無と有のたゆたい」

話がどんどん訳解らなくなってますね! 雰囲気で読んでください!

女「(ど、どうしよう、全然意味が解んない・・・)」

男「で?」

少女「え?」

男「お前らが言ってることは何となく解ったよ」

女「(解ったの!? すげえ!)」

男「信じがてえけど、これが夢じゃないんなら、ここが俺のいた世界ではないって話は頷ける。餃子や肉が喋るくれーだしな」

女「(あ、はい! それくらいなら私も解る!」ビシッ

男「なに手ぇあげてんだ、お前」

女「い、いえ・・・」

男「つまりここはあれだ、嫌なことから逃げたくて、でも死にたくもない、あーどうしよう、あーもうやだやだ何も考えたくなーい、みたいなやつらが寄り集まってる糞みたいな世界ってことだ」

餃子「・・・大雑把だが、的確だ」

女「(的確なの!? じゃあ今の男くんの台詞って超悪口じゃん! 糞みたいな世界って!)」

肉塊「そう、死んではいないが生きてもない。我々がどのようにして今の境遇を得られたのかは覚えていません。その必要がないからです。というより、あらゆる『必要』がないからこそ、我々はこの世界に惹かれたのでしょう」

少女「そう、私達はそのような存在だった。意志も尊厳もない、存在だけの存在。でも、それが変わってしまった」

おっさん「お前たちが来たからだよー!」

男「なるほどね」

女「なるほどね(解んない! 解んないけどとりあえず!)」

男「まあそこらへんの事情はもういいよ。な? 大事なのは俺がどうやって帰れるかってことなんだよ」

美女「帰らんでもええやん」

女「わ」

男「また新キャラかよ・・・しかも今度はまたえらい綺麗なねーちゃんじゃねーか」

美女「言っとくけど自分らの存在、めっちゃ迷惑やねんで?」

少女「・・・逃げましょう」

女「え?」

少女「何だか良くない気がする・・・」

美女「逃げても無駄やって。ていうか逃がせへんし」

男「へえ・・・。逃がせへん。どうするんだよ、姉ちゃん」

美女「そら殺すのよ」グサ

女「!」

男「!」

おっさん「い・・てえだろうがよ」

美女「はあ? 何してんの自分。何かばっとんねん。あほちゃう?」グリグリグリ

おっさん「ああああああ!!!」

女「や、やめて!」

少女「逃げましょう! はやく!」

女「で、でも、お父さんが・・・」

少女「あれはあなたのお父さんじゃない!」

男「逃げるったってこんな隠れるところもない草原でどうしろってんだよ」

少女「いいから!」ダッ

男「ちっ」ダッ

女「あ、あ、待って!」ダッ

美女「待てやこらー! おいお前何しとんねん、手ぇ離せや、逃げられるやないか!」

おっさん「う、う、う、う」

美女「おいこら、お前正気か? しまいにはその目玉くりぬいたろかこら!」

おっさん「やっぱり・・・この世界は・・・間違ってるとおも・・うんだよ」

美女「だから何やこら、お前のその考えだけのためにこの世界滅びてもええっちゅんかこら!」

おっさん「滅びる・・・以外にも・・何か」

美女「ありえへん! ありえへんねん! 何でか教えたろか!? うちのこの怒りは、怒りという感情は、あいつらが来たから生まれたもんやないか! 怒り!? 何でうちが怒らなかんねん! この時点でうちの世界は滅んどんねん!」

おっさん「」

美女「怒るみたいな面倒くさいことしたないからうちらはこの世界にいんねんぞ! この世界の平和をあいつらは脅かす! 殺す以外にどんな選択肢があんねん言うてみろこらあああ!」

おっさん「」

美女「・・・・なに勝手に死んどんねん」


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女「はぁ、はぁ、はぁ」

男「だ、大分走ったなおい、はぁ、はぁ、はぁ」

餃子「まさかあんなに早く出てくるとはな」フワフワ

男「・・・て、いうかよ、お前飛んでる最中、ずーーーっと、どんどこどんどこうるせえんだよ! なにあれ!? 効果音!? 餃子が飛ぶ効果音がどんどこ!? 何重につっこめばいいんだよ!」

女「あのお父さ・・・おじさん、大丈夫かな・・・」

男「そういや肉もねえな」

少女「聞いてください。先ほどの女性。彼女がああいう行動を起こしたのも、あなたたちの影響です。ああいう存在を起こす存在は恐らくこれからも出てきます」

ひいっ、訂正。

×→ああいう存在を起こす存在は・・・
○→ああいう行動を起こす存在は・・・

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